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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G10L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G10L
管理番号 1281774
審判番号 不服2013-7365  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-22 
確定日 2013-11-14 
事件の表示 特願2008-113202「音声合成方法、音声合成プログラムおよび携帯情報端末」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月12日出願公開、特開2009-265279〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】経緯

[1]手続の経緯
本願は、平成20年4月23日の出願(特願2008-113202号)であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成24年 5月15日(起案日)
意見書 :平成24年 6月25日
手続補正 :平成24年 6月25日
拒絶理由通知(最後) :平成24年10月22日(起案日)
意見書 :平成24年12月21日
手続補正 :平成24年12月21日
平成24年12月21日付け手続補正の
補正却下の決定 :平成25年 1月11日(起案日)
拒絶査定 :平成25年 1月11日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成25年 4月22日
手続補正 :平成25年 4月22日
前置審査報告 :平成25年 5月24日
審尋(当審) :平成25年 6月17日(起案日)
回答書 :平成25年 8月12日

[2]原審の査定、補正却下

〈原査定の理由(平成24年10月22日付け拒絶理由通知に記載した理由)の概略〉
本願の各請求項に係る発明は、下記の刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

記(刊行物等一覧)
刊行物1:特開2001-109487号公報
刊行物2:特開2007-087267号公報
刊行物3:特開2006-323827号公報

〈平成25年1月11日付補正却下の決定の概略〉
平成24年12月21日付け補正は、請求項1-13について減縮を目的とするものであるが、当該補正後の請求項1-13に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、この補正は同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により却下する。


【第2】補正の却下の決定(当審の判断)
平成25年4月22日付けの補正(以下「本件補正」という。)について次のとおり決定する。

《結論》
平成25年4月22日付けの補正を却下する。

《理由》

【第2-1】本件補正の内容

〈本件補正前の特許請求の範囲・明細書〉
平成24年12月21日付け手続補正は、補正却下の決定がなされているから、本件補正前の特許請求の範囲・明細書は、平成24年6月25日付け補正書で補正されたものである。

本件補正は特許請求の範囲についてする補正を含み、補正前特許請求の範囲の独立請求項である補正前請求項1,7,13の記載を、補正後請求項1,7,13とする補正であり、本件補正前および本件補正後の請求項1,7,13の記載は下記のとおりである。

記(補正前、平成24年6月25日付け補正によるもの)
【請求項1】
電子メールを含むテキストコンテンツを記憶するテキストコンテンツ記憶部と、
メールアドレスに関連したデータを記憶するアドレス帳データ記憶部と、
テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択部と、
前記コンテンツ選択部にて、いずれかの電子メールが選択された場合に、その選択された電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データ記憶部から取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成する処理部と、
前記処理部で得られた名前を含む文章のテキストデータを音声変換する音声変換再生部と、
を有する携帯情報端末。
【請求項7】
電子メールを含むテキストコンテンツを記憶すると共に、メールアドレスに関連したアドレス帳データを記憶する記憶ステップと、
テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択ステップと、
前記コンテンツ選択ステップにて、いずれかの電子メールが選択された場合に、その選択された電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データから取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成するテキストデータ生成ステップと、
前記テキストデータ生成ステップで得られた名前を含む文章のテキストデータを音声変換する音声変換ステップと、
を有する音声合成方法。
【請求項13】
電子メールを含むテキストコンテンツを記憶するテキストコンテンツ記憶部と、
メールアドレスに関連したデータを記憶するアドレス帳データ記憶部と、
テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択部と、
前記コンテンツ選択部にて、いずれかの電子メールが選択された場合に、その選択された電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データ記憶部から取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成する処理部と、
前記処理部で得られた名前を含む文章のテキストデータを音声変換する音声変換再生部として、
コンピュータを機能させる音声合成プログラム。

記(補正後、補正箇所を下線で示す。)
【請求項1】
電子メールを含むテキストコンテンツを記憶するテキストコンテンツ記憶部と、
メールアドレスに関連したデータを記憶するアドレス帳データ記憶部と、
ユーザの音声を認識した結果から指示入力内容を判定することで、テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択部と、
前記コンテンツ選択部にて、いずれかの電子メールが選択された場合に、その選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データ記憶部に登録された送信元であるとき、電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データ記憶部から取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成し、選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データ記憶部に登録された送信元でないとき、電子メールの送信元のアドレス情報を含む文章のテキストデータを生成する処理部と、
前記処理部で得られた名前を含む文章のテキストデータを音声変換する音声変換再生部と、
を有する携帯情報端末。
【請求項7】
電子メールを含むテキストコンテンツを記憶すると共に、メールアドレスに関連したアドレス帳データを記憶する記憶ステップと、
ユーザの音声を認識した結果から指示入力内容を判定することで、テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択ステップと、
前記コンテンツ選択ステップにて、いずれかの電子メールが選択された場合に、その選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データに登録された送信元であるとき、電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データから取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成し、選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データに登録された送信元でないとき、電子メールの送信元のアドレス情報を含む文章のテキストデータを生成するテキストデータ生成ステップと、
前記テキストデータ生成ステップで得られた名前を含む文章のテキストデータを音声変換する音声変換ステップと、
を有する音声合成方法。
【請求項13】
電子メールを含むテキストコンテンツを記憶するテキストコンテンツ記憶部と、
メールアドレスに関連したデータを記憶するアドレス帳データ記憶部と、
ユーザの音声を認識した結果から指示入力内容を判定することで、テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択部と、
前記コンテンツ選択部にて、いずれかの電子メールが選択された場合に、その選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データ記憶部に登録された送信元であるとき、電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データ記憶部から取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成し、選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データ記憶部に登録された送信元でないとき、電子メールの送信元のアドレス情報を含む文章のテキストデータを生成する処理部と、
前記処理部で得られた名前を含む文章のテキストデータを音声変換する音声変換再生部として、
コンピュータを機能させる音声合成プログラム。

〈補正内容〉
そして、その補正は、補正前請求項1,7,13に、上記下線を施した部分を追加記載して補正後請求項1,7,13とするものであり、これら各補正は、「部」(請求項1,13の「選択部」,「テキストデータを生成する処理部」)か「ステップ」(請求項7の「選択ステップ」,「テキストデータを生成するテキストデータ生成ステップ」)の違いはあるものの実質的に同じ内容の補正であり、いずれも、
(i)「コンテンツ選択部〔コンテンツ選択ステップ〕」についての
補正前特定事項である「テキストコンテンツを選択する」を、
補正後特定事項である「ユーザの音声を認識した結果から指示入力内容を判定することで、テキストコンテンツを選択する」に変更し(以下、「補正事項1」という)、
(ii)「テキストデータを生成する処理部〔テキストデータを生成するテキストデータ生成ステップ〕」についての
補正前特定事項である「その選択された電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データ記憶部から取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成する」を、
補正後特定事項である「その選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データ記憶部に登録された送信元であるとき、電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データ記憶部から取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成し、選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データ記憶部に登録された送信元でないとき、電子メールの送信元のアドレス情報を含む文章のテキストデータを生成する」に変更する(以下、「補正事項2」という)
ものである。

【第2-2】本件補正の適否1-補正の範囲(第17条の2第3項)

上記補正後特定事項が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「出願当初明細書等」という)に記載した事項の範囲内においてしたものか否かについて検討する。

ア 上記「補正事項1」の補正後特定事項が、出願当初明細書等に記載した事項の範囲内であることは、出願当初の段落【0031】(下記に記載)から明らかである。

イ 上記「補正事項2」の補正後特定事項は、
前半部分(a)「その選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データ記憶部に登録された送信元であるとき、電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データ記憶部から取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成し」と
後半部分(b)「選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データ記憶部に登録された送信元でないとき、電子メールの送信元のアドレス情報を含む文章のテキストデータを生成する」であるところ、
その前半部分(a)が、出願当初明細書等に記載した事項の範囲内であることは、出願当初の段落【0041】【0042】(下記に記載)から明らかである。
その後半部分(b)については、明細書にその明示の記載はないものの、
段落【0034】にあるように、そもそも、本願は、ユーザ情報や日時情報のテキストデータを選択されたテキストコンテンツに加えることを技術思想とするものであるところ、
「電子メールである場合、上記ユーザ情報は、例えばその電子メールの送信元情報と当該携帯電話端末の使用者情報」(段落【0041】)であり、「電子メールの送信元情報は、実際には電子メールアドレス情報であるが、携帯電話端末のアドレス帳内に当該電子メールアドレスに関連した名前等が登録されている場合には、上記送信元情報としてその名前を用いることができる。」(段落【0041】)とすることからすれば、
上記後半部分(b)も、出願当初明細書等に記載した事項の範囲内であるということができる。
そして、段落【0042】は、アドレス帳内に当該電子メールアドレスに関連した名前等が登録されている場合のことを説明するものであって、そうでない場合のことを含めた説明ではない、と理解される。

ウ 以上のとおり、本件補正は、「出願当初明細書等」に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

記(明細書の記載、注目部分に下線を施した。)
【0031】
コンテンツ選択インターフェース部1は、上記テキストコンテンツ記録メモリ3に記録されている各テキストコンテンツの中から、ユーザが所望のコンテンツを選択するためのインターフェース部である。当該コンテンツの選択は、上記テキストコンテンツ記録メモリ3に記録されている各テキストコンテンツの中からユーザが直接選択する場合と、ユーザからの起動指示入力に応じて当該携帯電話端末内のアプリケーションプログラムが起動した時に自動的に行われる場合とがある。なお、ユーザが選択指示を入力する場合、例えばディスプレイ画面上に複数のコンテンツ選択メニューが表示される。そして、ユーザにより、当該コンテンツ選択メニュー表示画面の中から、例えばキーやタッチパネル操作を通じて所望のコンテンツの選択指示が入力された時に、コンテンツ選択インターフェース部1は当該コンテンツを選択する。アプリケーションの起動に応じたコンテンツの選択は、例えばディスプレイ画面上の複数のアプリケーション起動アイコンがユーザにより選択指示されることにより、そのアプリケーションが起動した時に行われる。その他にも、コンテンツの選択は、音声認識を介した音声により行われても良い。この場合、上記音声認識・ユーザ指示判定部10において、ユーザの音声認識が行われ、その認識結果からユーザの指示入力内容が判定される。そして、その音声認識によるユーザ指示入力がコンテンツ選択インターフェース部1へ送られる。これにより、コンテンツ選択インターフェース部は、ユーザの音声指示入力に応じたコンテンツを選択する。
【0033】
同時に、演出判断部2は、当該選択されたテキストコンテンツに関連したユーザ情報、日時情報、BGM情報等を選択する。すなわち、演出判断部2は、コンテンツ選択インターフェース部1にてテキストコンテンツが選択されると、そのコンテンツに関連したユーザ情報が存在する場合にはそのユーザ情報をユーザ情報記録メモリ4から取り出す。また、演出判断部2は、選択されたテキストコンテンツに関連した日時情報が存在する場合にはその日時情報を日時情報記録部5から取り出す。同様に、演出判断部2は、選択されたテキストコンテンツに関連したBGMデータが存在する場合にはそのBGMデータをBGM記録メモリ6から取り出す。なお、テキストコンテンツとBGMデータとの関連付けがランダム設定になされている場合には、演出判断部2は、BGM記録メモリ6からランダムにBGMデータを取り出す。
【0034】
そして、演出判断部2は、それらユーザ情報や日時情報、BGMデータを基に、上記選択されたテキストコンテンツに演出を施す。
【0035】
すなわち例えば、上記ユーザ情報をユーザの名前等のテキストデータに変換し、同様に日時情報を日時等のテキストデータに変換して、それらユーザ名や日時等のテキストデータを上記選択されたテキストコンテンツの例えば前や途中、最後などに適宜付け加えるようにする。
【0041】
上記テキストコンテンツに演出が加えられる一例として、テキストコンテンツが受信電子メールである場合、上記ユーザ情報は、例えばその電子メールの送信元情報と当該携帯電話端末の使用者情報となされ、日時情報は、例えば現在の日時とその受信電子メールの受信日時となされる。なお、電子メールの送信元情報は、実際には電子メールアドレス情報であるが、携帯電話端末のアドレス帳内に当該電子メールアドレスに関連した名前等が登録されている場合には、上記送信元情報としてその名前を用いることができる。
【0042】
すなわち、当該受信電子メールをテキスト-音声変換により読み上げて音声出力することがユーザにより指示された場合、演出判断部2は、例えば、ユーザ情報記録メモリ4から使用者情報を取り出し、また、日時記録部5から現在日時情報を取り出して、それらの情報から、当該使用者への呼びかけと現在の日時を表すテキストデータを生成する。また同時に、演出判断部2は、図示しない電子メール受信部にて受信されて上記テキストコンテンツ記録メモリ3に記録された受信電子メールのデータから、送信元の名前を表すテキストデータと、その受信電子メールの受信日時を表すテキストデータを生成する。そして、演出判断部2は、それらテキストデータを適宜繋げて演出用のテキストデータを生成する。より具体的に説明すると、上記使用者氏名が例えば「A」で、現在日時が例えば「夜」の時間帯、送信元の名前が例えば「B」で、電子メール受信日時が例えば「4月8日午後6時30分」であるような場合、演出判断部2は、一例として「Aさんこんばんは、Bさんからのメールを午後6時30分に受信しました。」のようなテキストデータを演出用のデータとして生成する。その後、演出判断部2は、上述の演出用のテキストデータを、受信電子メールのタイトル及び本文のテキストデータの例えば前に付け加え、それらテキストデータをテキスト音声変換再生部7へ送る。

【第2-3】本件補正の適否2-補正の目的(第17条の2第5項)

上記「補正事項1」「補正事項2」が、特許法第17条の2第5項各号に該当するか否かについて検討する。

ア 上記「補正事項1」について
上記「補正事項1」は、補正後特定事項である「ユーザの音声を認識した結果から指示入力内容を判定することで、テキストコンテンツを選択する」は、
「コンテンツ選択部〔コンテンツ選択ステップ〕」についての補正前特定事項(発明を特定するために必要な事項)である「テキストコンテンツを選択する」について、その具体的“仕方”を付加して限定するものであり、かつ、補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号でいう特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。

イ 上記「補正事項2」について
上記「補正事項2」の上記前半部分(a)「その選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データ記憶部に登録された送信元であるとき、電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データ記憶部から取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成し」は、
「テキストデータを生成する処理部〔テキストデータを生成するテキストデータ生成ステップ〕」についての上記補正前特定事項である「その選択された電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データ記憶部から取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成する」について、
そのようにする条件を付加して限定するものであり、かつ、補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号でいう特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
上記「補正事項2」の上記後半部分(b)「選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データ記憶部に登録された送信元でないとき、電子メールの送信元のアドレス情報を含む文章のテキストデータを生成する」は、
上記「処理部〔生成ステップ〕」についての上記補正前特定事項(発明を特定するために必要な事項)である「その選択された電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データ記憶部から取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成する」に、追加して特定するものであるから、補正前請求項1,7,13を減縮するものではある。
しかし、上記後半部分(b)は、「アドレス情報を含む文章のテキストデータを生成する」ものであって、「名前を含む文章のテキストデータを生成する」とする上記補正前特定事項に対応するものではなく、その下位概念でもない。
上記後半部分(b)を追加特定することは、「処理部〔処理ステップ〕」についての上記補正前特定事項(発明を特定するために必要な事項)を限定したものとはいえず、新たな観点から発明を特定する事項を付加したというべきものである。
また、上記後半部分(b)を追加特定することが、請求項の削除,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないことは明らかである。
したがって、上記後半部分(b)の追加特定を含む請求項1,7,13についてする上記「補正事項2」を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項を目的とするもののいずれにも該当しない。

ウ まとめ
本件補正は特許請求の範囲についてする補正を含むところ、その補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項を目的とするもののいずれにもも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反しているものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【第2-4】本件補正の適否3
-独立特許要件(第17条の2第6項)についての予備的検討

本件補正は、上記【第2-3】のとおり却下すべきであるが、念の為、
仮に、本件補正が特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的するものに該当し、特許法第17条の2第5項の規定に適合するとしたとしても、補正後の請求項7に記載された発明(以下、「補正後発明」ともいう。)は、以下のとおり、上記刊行物1に記載された発明及び技術常識・周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126号第7項の規定に違反するから、特許法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

補正後の請求項7に記載された発明(補正後発明)が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は、以下のとおりである。

《特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由》

(1)補正後発明と補正前請求項7、引用刊行物
補正後発明は、補正前請求項7の下記要件B,Cについて、下線で示す部分の特定事項が追加されて下記要件BB、CCとなっている点でのみ、後記【第4】で検討する補正前請求項7と異なるものであり、
また、引用刊行物も同じく刊行物1である。
したがって、以下では、後記【第4】での検討を援用し、これを踏まえた上、異なる点について検討することとする。

記(補正前請求項7の要件B,C)
B :テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択ステップと、
C :前記コンテンツ選択ステップにて、いずれかの電子メールが選択された場合に、その選択された電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データから取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成するテキストデータ生成ステップと、

記(補正後発明(補正後請求項7)の要件BB,CC)
BB:ユーザの音声を認識した結果から指示入力内容を判定することで、テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択ステップと、
CC:前記コンテンツ選択ステップにて、いずれかの電子メールが選択された場合に、その選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データに登録された送信元であるとき、電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データから取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成し、選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データに登録された送信元でないとき、電子メールの送信元のアドレス情報を含む文章のテキストデータを生成するテキストデータ生成ステップと、

(2)対比,一致点・相違点
後記【第4】での検討を踏まえた上で、補正後発明と引用発明(刊行物1記載の発明、【第4】[2])を対比すれば、それらの一致点および相違点は、次のとおりである。
なお、引用発明が、「テキストコンテンツを選択することであって、いずれかの電子メールを選択するコンテンツ選択ステップ」を有しているといえることは、後記【第4】[3]ウで示した通りである。

[一致点]
A 電子メールを含むテキストコンテンツを記憶すると共に、メールアドレスに関連したアドレス帳データを記憶する記憶ステップと、
BB’テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択ステップと、
CC’前記コンテンツ選択ステップにて、いずれかの電子メールが選択された場合に、その選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データに登録された送信元であるとき、電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データから取り出し、その取り出した名前を含むテキストデータを生成し、選択された電子メールの送信元が、前記アドレス帳データに登録された送信元でないとき、電子メールの送信元のアドレス情報を含むテキストデータを生成するテキストデータ生成ステップと、
D’前記テキストデータ生成ステップで得られた名前を含むテキストデータを音声変換する音声変換ステップと、
を有する
E 音声合成方法。

[相違点1]
上記BB’の「テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択ステップ」が、
補正後発明では、「ユーザの音声を認識した結果から指示入力内容を判定することで、」なされるステップとするのに対して、
引用発明では、「ユーザの音声を認識した結果から指示入力内容を判定することで、」なされるとはしていない点。

[相違点2]
上記CC’及びD’の「名前を含むテキストデータ」(生成し、音声変換するとする「名前を含むテキストデータ」)が、
補正後発明では、「名前を含む文章のテキストデータ」であるのに対して、
引用発明では、「名前のテキストデータ」であって、
「名前を含む文章のテキストデータ」であるとはしておらず、
(以下、便宜上[相違点2-a]という。)

上記CC’の「アドレス情報を含むテキストデータ」(生成するとする「アドレス情報を含むテキストデータ」)が、
補正後発明では、「アドレス情報を含む文章のテキストデータ」であるのに対して、
引用発明では、「アドレス情報を含むテキストデータ」であって、
「アドレス情報を含む文章のテキストデータ」であるとはしていない点。
(以下、便宜上[相違点2-b]という。)

(3)相違点等の判断(容易想到性の判断)

ア 相違点2について
後記【第4】[5]で示したとおり、周知技術Aによれば、上記[相違点2-a]の克服は当業者の容易想到であるところ、
そのように、引用発明の「名前を含むテキストデータ」{「名前のテキストデータ」;s,tの「読み上げ氏名」}を、「名前を含む文章のテキストデータ」とするとき、
引用発明の「アドレス情報を含むテキストデータ」{「アドレス情報のテキストデータ」;s,tの「送信者のメールアドレス」}も、「アドレス情報を含む文章のテキストデータ」とするのが、自然である。
なぜなら、単に「アドレス情報」を音声提示するより、「アドレス情報を含む文章」を提示する方が、直後に読み上げるメールの送信者であることをより明確かつ丁寧に示すことができることは、「名前を含む文章」とする場合と同様であるし、また、「アドレス情報」の場合のみ「アドレス情報を含む文章」としない方が不自然であるからである。
したがって、[相違点2-b]の克服、すなわち、引用発明の、生成するとする「アドレス情報のテキストデータ」{s,tの「送信者のメールアドレス」}を、「アドレス情報を含む文章のテキストデータ」とすることも、当業者が容易になし得ることである。
以上、相違点2の克服は、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点1について

《補正後発明》
補正後発明の要件BBと要件Cの前半「前記コンテンツ選択ステップにて、いずれかの電子メールが選択された(場合に)」を併せた特定事項は、
「コンテンツ選択ステップ」が「ユーザの音声を認識した結果から指示入力内容を判定することで、テキストコンテンツを選択することであって、いずれかの電子メールを選択するコンテンツ選択ステップ」ということができ(参考;後記【第4】[3]ウ)、
読み上げる電子メールは一時に1つであるから、最終的にはいずれか1の電子メールを選択特定するものとはいい得るものの、
どのようなユーザの音声指示入力なのか、その具体を特定しないその記載ぶり、後記【第4】[3]ウでの検討、対応する明細書の記載{【第4】[3]ウで摘示した記載(「【0031】・・・時に行われる。」)と、これに続く「その他にも、コンテンツの選択は、音声認識を介した音声により行われても良い。この場合、上記音声認識・ユーザ指示判定部10において、ユーザの音声認識が行われ、その認識結果からユーザの指示入力内容が判定される。そして、その音声認識によるユーザ指示入力がコンテンツ選択インターフェース部1へ送られる。これにより、コンテンツ選択インターフェース部は、ユーザの音声指示入力に応じたコンテンツを選択する。」}等に照らせば、
ユーザの音声指示入力については、ユーザが直接最終的な1のメールを特定する指示入力をすることまで要求するものではなく、1のメールを特定するための(範囲限定等を含む)一部の音声指示入力をすることで足り、これを受けてプログラムやプログラムが組み込まれた装置(「選択インターフェース部」)が最終的な1のメールを選択するものを含むと解される。

《刊行物1の記載》
刊行物1の(K2)段落【0002】には「しかしながら、このようなメーラを用いた電子メールの表示処理では、受信した電子メール毎に、マウスやキーボードを含む端末の入力機器を所定の手順で繰り返し操作して表示させる必要があった。このため、上述の入力機器の操作に不慣れな利用者や操作をしたことのない利用者にとっては、その操作は煩雑でわかりにくいものであり、受信した電子メールを表示させるまでに時間及び手間を要することがあった。」とあることから、
刊行物1には、読み上げ処理における操作指示入力として、マウスやキーボードの操作を伴わない、これらに代わる周知の「音声指示入力」を採用する動機付けが認められる。
また、(K4)段落【0036】の「この音声読み出し条件登録部5の具体的な構成例としては、マウス、キーボード、ポインティングデバイス、あるいはタッチパネル等の利用者の入力操作に応じてデータ(条件)を入力する入力機器、または利用者の声を集音して入力するためのマイク及び入力した声を条件のデータに変換する変換器等が可能である。」は、実施例1の「音声読み出し条件登録部5」における登録する条件入力の例ではあるが、マウスやキーボードに代えて音声で入力することが示されていて、このことからみても、「音声指示入力」を採用する動機付けが認められる。

《周知技術B》
一般に、電子メールの音声による読み上げを装置に実行させる場合、
読み上げるメールを特定するためのユーザが行う指示入力として音声入力を採用することは周知技術にすぎない(例えば、下記周知例1?4等参照)。 また、音声入力指示を、読み上げる1のメールを選択する指示とすることも周知(周知例1,3,4)である。
そして、かかる音声入力指示においては、「ユーザの音声を認識した結果から指示入力内容を判定すること」は技術常識である。

《判断》
上記《刊行物1の記載》,《周知技術B》からすれば、刊行物1に接した当業者にとって、読み上げるメールを特定するのに、上記周知技術Bのユーザの音声指示入力を採用することは、当業者が容易に想起し得ることである。 そして、そのような音声指示入力を採用するとき、ユーザの音声を認識した結果から指示入力内容を判定することは技術常識であり当然のことである。
したがって、引用発明の、「テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択ステップ」を、「ユーザの音声を認識した結果から指示入力内容を判定することで、テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択ステップ」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

記(周知技術Bについての周知例1?4、
{}内は注目箇所の例示であり、〈〉内には認定事項を示した。)
○周知例1:特開2004-198488号公報
{【0035】
音声コマンド登録順序リスト32には、電子装置に設けられた機能を実行させるための複数のコマンドが登録されている。図5に示す音声コマンド登録順序リスト32は電子メール機能を対象としたコマンドが登録された例を示すもので、「読み上げ開始」「次メール読み上げ」「前メール読み上げ」「読み上げ終了」などのコマンドが登録されている。
【0054】
ここで、電子装置に設けられた電子メール読み上げ機能を利用して、電子メールを読み上げさせて、音声出力装置14(ヘッドホン(イヤホン))によって内容を聞く状況を想定する。
【0055】
まず、電子装置に対して電子メール読み上げ機能の実行を指示する。なお、電子メール読み上げ機能は、予め登録してある所定のコマンド音声を入力することで起動したものとする。電子メール読み上げ機能が起動されると、例えば「次のメールを読み上げますか」の音声メッセージを音声出力装置14(ヘッドホン(イヤホン))から出力させる。
【0056】
ユーザは、このメッセージに対して、操作コマンド「次メール読み上げ」に対して登録している「カチッ!」という音声を入力するために歯を1回噛み合わせる。この歯の噛み合わせによって発生した音声は、音声入力装置18(骨伝導マイク)によってピックアップされ、この入力された音声(コマンド音声)に対応する操作コマンド「次メール読み上げ」が判別されて実行される。
【0057】
同様にして、操作コマンド「読み上げ終了」に対して登録している「カチカチッ!」という音声を入力するために歯を2回噛み合わせることで、メールの読み上げを終了させることができる。また、操作コマンド「読み上げ開始」に対して登録している「カチカチカチッ!」という音声を入力するために歯を3回噛み合わせることで、最初からメールの内容を読み上げさせることができる。
こうして、音声入力によって電子装置に設けられた機能を操作することができる。}
〈例えば、音声コマンド「次メール読み上げ」「前メール読み上げ」等の音声コマンドは、読み上げる1のメールを選択するための音声入力指示である。〉

○周知例2:特開2004-240217 号公報
{図9等,【0058】
ここで、この説明を図4の受信メールの一覧を読み上げる場合を例にとって説明しなおす。図5は図4の表を読み上げる場合の読み上げ例を表示したものである。ユーザが図5の読み上げ文章を聞いているうちに、何らかの原因により、「2 送信者○×商事」の部分を聞き逃したとする。この場合、例えばユーザが「待て」と言う音声命令を発すると、ボイスブラウザがこれを認識し、再び「2 送信者○×商事・・・」から読み上げ始める。
【0064】
また、添付ファイルの有無も検索のキーとして使用できる。本発明の文書/音声変換装置の第3態様における第2実施形態を、図8に示す流れ図を用いて説明する。まず、並び替え処理が開始されると(S301)、ユーザは「日付順」、「添付ファイルのあるものから先に」などと、音声入力、またはDTMF信号などで並び換えの順を指定する(S302)。ボイスブラウザは図7のように展開された文書のデータをメモリから取り出し、指示された順に並び替えて読み上げ(S303)、この後処理を終了する(S304)。ここで、DTMF信号で並び替え条件を入力するときは、入力前に並び替え順の候補を読み上げて提示することなどができる。また、音声入力による指示も、フリーワードの認識やいくつかの選択肢の中から選ぶ形式など、指示の方法は問わない。
【0065】
本発明の文書/音声変換装置の第3態様における第3実施形態を、図9に示す処理の流れ図を用いて説明する。
【0066】
読み上げ選択処理が開始され(S401)、ユーザが「添付ファイルのあるもの以外」、「○×商事から受信したもののみ」、「請求と言う単語を含むもののみ」などと、音声入力またはDTMF信号などで読み上げる条件を指定する(S402)。このときの指示の方法は、上記した第2実施形態の場合と同様、どのような方法であるかを問わない。ボイスブラウザは図7のように展開された文書のデータをメモリから一つずつ順に読み出し(S403)、与えられた条件にマッチしていれば(S404の「YES」)、読み上げる(S405)。一つの処理が終わると、取り出したデータが最後のデータか否かを判断し(S406)、最後のデータであれば(S406の「YES」)処理を終了し(S407)、最後のデータでなければ(S406の「NO」)次のデータを読み出す。
【0067】
また、図8および図9に示した処理を組み合わせると、ユーザは例えば「請求と言う単語を含むものを日付の順に」などといった指定も可能となる。}
〈「添付ファイルのあるもの以外」、「○×商事から受信したもののみ」、「請求と言う単語を含むもののみ」、「請求と言う単語を含むものを日付の順に」等は、読み上げるメールを選択するための音声指示入力である。〉

○周知例3:特開平10-290256号公報
{図2,図7,【0038】入出力インターフェースコンピュータブロック20aは、入出力インターフェースコンピュータ21に、音声入力装置22、音声出力装置23、表示装置24、及び記憶装置25が接続されて構成され、エージェントコンピュータブロック20bは、エージェントコンピュータ26に、記憶装置27、記憶媒体27a、及びPCインターフェース28が接続されて構成される。
【0039】入出力インターフェースコンピュータブロック20aでは、入力されるユーザーの音声指示を音声入力装置22が音声指示データに変換して入出力インターフェースコンピュータ21に入力し、記憶装置25内に格納されている音声認識プログラムによりその音声指示データの内容を認識し、その認識した音声指示データから電子メールの送受信等の通信処理に係わる要求内容の分類及びその意味内容を記憶装置25内に格納された意味解析プログラムにより解析し、その解析結果をエージェントコンピュータブロック20bに出力する。
【0040】また、入出力インターフェースコンピュータブロック20aでは、ユーザーの指示に応じてパーソナルコンピュータ11が受信した電子メールの報告処理を行う際、エージェント装置20のエージェントコンピュータブロック20bからの受信件数や差出人に関するデータ、或いは受信電子メールの文章データ(或いは音声データ)や要約文章データ等を受信し、受信したデータを記憶装置14内に格納された音声変換プログラムにより音声データに変換して音声出力装置23により音声として出力させる。
【0048】そして、ユーザーから個別メールの読み上げ指示があった場合には、指示された個別メールを開封して文章データ(或いは音声データ)を読み出し、読み出した文章データ(或いは音声データ)を入出力インターフェースコンピュータブロック20aに出力して、音声出力装置23からメール文章を音声出力する。
【0087】ステップS23では、ユーザーに対して個別メールの読み上げに関する指示を音声により仰いで(例えば、「受信電子メールを個別に読み上げますか?」等の音声出力を行い)ステップS24に移行する。
【0088】ステップS24では、ユーザーから個別メールの読み上げの指示が有る場合にはステップS25に移行し、読み上げの指示が無い場合にはこのルーチンを終了する。
【0089】ステップS25では、ユーザーにより指示された個別メールを開封してメールの文面を読み出しステップS26に移行する。
【0090】ステップS26では、メールの文面を音声出力装置23から音声出力してこのルーチンを終了する。}
〈「個別メールの読み上げの指示」は、読み上げる1のメールを選択するための音声入力指示である。〉

○周知例4:特開2005-221289号公報
{図2,【0012】・・・(前略)音声での車両用経路誘導装置100への指示はマイク123から、音声入力部102内にある音声認識機能で認識し、走行経路演算部105に指示が伝えられる。一方、走行経路演算部105からのメールが着信したとの音声による通知や音声による走行誘導は、音声出力部101内にある音声合成機能により音声信号に変換され、スピーカ122より音声が出力される。
【0013】・・・(前略)走行経路演算部105はCPU、RAM、ROM等から構成されるマイクロプロセッサであり、メール文を認識し、認識したメール文を読み上げるために、音声出力部101の音声合成機能に出力する機能を有している。
【0015】
次に本第1の実施形態の動作を、図2のフローチャート及び図1に基づき説明する。先ず、携帯電話124のメールアドレスにメールが届いた時、メールが届いた旨、スピーカ122を用いて音声で運転者に伝えることにより外部情報を受信したと判定(メール着信)しており、運転者からの次のアクションに対する指示待ち状態となる。運転者はステアリングホイールボタン126、あるいはマイク123からの音声によるコマンド指示により、次のアクションを指示する。次のアクションとはメールを読み上げさせる(S201からS211)、定型文で返信する(S202からS213)、安全にメールを作成できる場所に誘導する(S202からS203)、特に何もしない(S202からS213)等である。メールを読み上げさせる場合(S211)には、読み上げた内容に相手が特定できる名前、連絡先(電話番号等)等があり、すなわち、このように読み上げた内容に基づいて相手が特定できれば(S212でYの場合)、ステアリングホイールボタン126、あるいはコマンド指示により、安全にメールを作成できる場所に誘導する次のアクション(S202からS203)に移り、(以下略)}
〈「次のアクション」が「メールを読み上げさせる」コマンド指示の場合、読み上げる1のメールを選択するものである。〉

ウ まとめ(相違点等の判断)
相違点1及び2に係る補正後発明の構成は、いずれも当業者に想到容易でない格別のものであるとはいえず、また、効果についてみても、相違点1及び2の克服をする構成の採用に伴って(奏するであろうと予測される効果に比して)格別顕著なものが本願発明にあるとも認められない。

(4)まとめ
補正後発明は、刊行物1に記載された発明および技術常識・周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

【第3】本願発明

平成25年4月22日付けの手続補正は上記のとおり却下する。
本願の請求項1から請求項13までに係る発明は、本願特許請求の範囲,明細書及び図面(平成24年6月25日付けの手続補正書により補正されたもの)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1から請求項13までに記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1,7,13に係る発明は、上記【第2-1】(平成24年6月25日付け補正によるもの)の請求項1,7,13に記載したとおりであり、このうち、請求項7に係る発明(以下、本願発明という)を要件A?Eに分説して再掲する。

記(本願発明(請求項7)、分説)
A :電子メールを含むテキストコンテンツを記憶すると共に、メールアドレスに関連したアドレス帳データを記憶する記憶ステップと、
B :テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択ステップと、
C :前記コンテンツ選択ステップにて、いずれかの電子メールが選択された場合に、その選択された電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データから取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成するテキストデータ生成ステップと、
D :前記テキストデータ生成ステップで得られた名前を含む文章のテキストデータを音声変換する音声変換ステップと、
を有する
E :音声合成方法。

【第4】査定の検討 (当審の判断)

[1]引用刊行物の記載
刊行物1:特開2001-109487号公報
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1には、以下の記載がある。
なお、下線は、注目箇所を示すために当審で施したものである。

〈特許請求の範囲〉
(K1)「【請求項1】 電子メールを受信して音声により再生する電子メールの音声再生装置であって、
メール選択条件を予め登録するための登録手段、
前記登録手段によって登録されたメール選択条件を登録情報として蓄積する登録情報蓄積手段、
前記登録情報蓄積手段に蓄積されている登録情報に基づいて、受信した電子メールを音声により再生するかどうかについて判断する判断手段、
前記判断手段からの指示に基づいて、前記受信した電子メールの少なくとも本文情報を音声データに合成する音声合成手段、及び前記音声合成手段からの音声データを再生し出力する音声出力手段、
を備えたことを特徴とする電子メールの音声再生装置。
【請求項2】 前記登録手段が、音声によって読み上げる電子メールを指定するための音声読み出し条件をメール選択条件として予め登録することを特徴とする請求項1に記載の電子メールの音声再生装置。
・・・
【請求項5】 前記登録手段が、電子メールに含まれるメールアドレスを送信者の読み上げ情報に変換する変換リストをメール選択条件として予め登録し、かつ前記変換リストに基づいて、受信した電子メールのメールアドレスを読み上げ情報に変換し音声によって再生するよう構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子メールの音声再生装置。」
・・・
【請求項10】 受信した電子メールを音声により再生する電子メールの音声再生方法であって、
メール選択条件を予め登録情報として登録し蓄積する登録蓄積ステップ、
前記登録蓄積ステップで蓄積された登録情報に基づいて、受信した電子メールを音声により再生するかどうかについて判断する判断ステップ、
前記判断ステップでの判断結果に基づいて、前記受信した電子メールの少なくとも本文情報を音声データに合成する音声合成ステップ、及び前記音声合成ステップで合成した音声データを再生し出力する音声出力ステップ、
を備えたことを特徴とする電子メールの音声再生装置。
【請求項11】 前記登録蓄積ステップにおいて、音声によって読み上げる電子メールを指定するための音声読み出し条件をメール選択条件として予め登録することを特徴とする請求項10に記載の電子メールの音声再生方法。
・・・
【請求項14】 前記登録蓄積ステップにおいて、電子メールに含まれるメールアドレスを送信者の読み上げ情報に変換する変換リストをメール選択条件として予め登録し、さらに前記変換リストに基づいて、受信した電子メールのメールアドレスを読み上げ情報に変換し音声によって再生する、
ことを特徴とする請求項10に記載の電子メールの音声再生方法。」

〈発明の属する技術分野、従来の技術、課題〉
(K2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子メールを受信して音声により再生する電子メールの音声再生装置、その音声再生方法、及び音声再生プログラムを記録した記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、インターネットに例示されるコンピュータネットワークでは、電子メール(Email)が情報伝達手段や情報交換手段として幅広く用いられている。通常、電子メールは、その送信先(宛先)を示したメールアドレスに従って様々な人々からコンピュータネットワークを通じて送信され受信者に到着する。電子メールは、周知のように、ウィンドウズ、マッキントッシュあるいはユニックスなどのオペレーティングシステム上で動作する電子メール処理用のソフトウェア(以下、”メーラ”ともいう)によって受信処理、送信処理、及び表示処理が行われて、受信者は表示された電子メールの本文内容を読むことができる。しかしながら、このようなメーラを用いた電子メールの表示処理では、受信した電子メール毎に、マウスやキーボードを含む端末の入力機器を所定の手順で繰り返し操作して表示させる必要があった。このため、上述の入力機器の操作に不慣れな利用者や操作をしたことのない利用者にとっては、その操作は煩雑でわかりにくいものであり、受信した電子メールを表示させるまでに時間及び手間を要することがあった。このような表示処理を省略して入力機器を操作したことのない利用者でも簡単に受信した電子メールを確認することができる方法として、受信した電子メールを音声によって再生する方法が実用化されつつある。具体的にいえば、この従来の音声によって再生する方法では、既知のテキスト音声合成手法を用いて受信した電子メール内のテキストデータを音声データに変換し音声によって再生して、受信した全ての電子メールを利用者に伝えていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、電子メールで送られてくる内容には様々なものが含まれており、上記のような従来の音声によって電子メールを再生する方法では利用者に不必要な内容のものまで音声で再生することがあった。特に、多数の電子メールが送信されてきた場合、利用者が所望する電子メールを再生するまでに時間を要したり、読む必要のない電子メールまで読み出してしまうといったことが生じて、メッセージの内容によっては利用者に不快感、疲労感、いらだちを与えてしまうという新たな問題点を生じることがあった。」

〈実施例1〉
《全体構成》
(K3)「【0033】《実施例1》
[電子メールの音声再生装置の構成]図1は、本発明の実施例1である電子メールの音声再生装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施例1の電子メールの音声再生装置10は、電子メール(Email)を蓄積するメール蓄積部1と、前記メール蓄積部1に蓄積された電子メールのヘッダ情報及び本文情報をそれぞれ抽出するメールヘッダ情報抽出部2及びメール本文情報抽出部3と、外部のメールサーバ100に接続され、当該装置の処理全般を行う情報処理部4とを備えている。音声再生装置10には、音声読み出し条件登録部5、前記音声読み出し条件登録部5によって登録された音声読み出し条件を登録情報として蓄積する登録情報蓄積部6、上記情報処理部4の指示に従って、受信した電子メールを音声データに合成する音声合成部7、及び前記音声合成部7からの音声データを再生し出力する音声出力部8が設けられている。本実施例1の音声再生装置10とメールサーバ100とは電話回線、またはLAN等のコンピュータネットワークを含んだデジタル回線によって接続されている。また、音声再生装置10とメールサーバ100との間の双方向のデータ通信は、例えば公知のPOP(Post Office Protocol)3と呼ばれる通信プロトコルに基づき行われている。尚、メールサーバ100は、いわゆるメールボックスを構成するサーバ装置であり、1名以上の各受信者(利用者)宛に1名以上の送信者から配送されてきた電子メールを集積して、利用者のリクエストに応じてその利用者宛の電子メールを音声再生装置10に送出する。

《メール蓄積部1,メールヘッダ情報抽出部2,メール本文情報抽出部3,登録情報蓄積部6,音声合成部7等》
(K4)「【0034】メール蓄積部1は、好ましくはハードディスク装置により構成され、情報処理部4によってメールサーバ100から取得された特定の利用者宛の電子メールを蓄積する。メールヘッダ情報抽出部2は、情報処理部4の指示に基づいて、メール蓄積部1に蓄積されている、電子メールの付帯情報であるヘッダ情報を抽出する。このヘッダ情報は、各電子メールの送信者の氏名、送信者のメールアドレス(例えばabc@def.co.jp)、タイトル、UIDL(Unique-ID Listing)番号と通常呼ばれるメール固有の番号、受信日時、文字コード情報、フォーマット情報、及び添付ファイル情報などの所定の情報を含んでいる。また、ヘッダ情報に含まれる各情報は、例えばパーソナルコンピュータによって構成された送信側の端末で電子メールが作成される毎に、その電子メールの作成者(送信者)の入力操作、またはその端末内で自動的に付加されて、メールサーバ100に送信される。メール本文情報抽出部3は、情報処理部4の指示に基づいて、メール蓄積部1に蓄積されている電子メールの本文内容(メッセージ)を示す本文情報を抽出する。
【0035】情報処理部4は、例えばCPUにより構成され、当該装置の各構成要素の制御を行う。情報処理部4は、図示を省略したモデム等の接続機器を介してメールサーバ100に接続されて、そのメールサーバ100に対して電子メールの取得、送信、削除、メール情報取得などの要求を出す。また、情報処理部4は、登録情報蓄積部6に蓄積されている登録情報に基づいて、受信した電子メールを音声によって再生するかどうかについて判断する判断手段を構成している。この情報処理部4は、後に詳述するように、ヘッダ情報に含まれたメールアドレスに基づき受信した電子メールの送信者を特定し、さらに上記メールアドレスが登録情報として登録情報蓄積部6に予め蓄積されているかどうかについて判定している。これにより、本実施例1の音声再生装置10は利用者が所望する電子メールだけを自動的に選択して音声によって再生することができる。尚、情報処理部4は、利用者からの指示または予め設定された時間間隔でメールサーバ100に対する上述の各要求を行う。
【0036】音声読み出し条件登録部5は、既知のデータ入力装置により構成され、メール選択条件を予め登録するための登録手段を構成している。尚、ここでいうメール選択条件とは、利用者が受信した電子メールのうち所定の処理を施す電子メールを選択するための条件であり、本実施例1の音声再生装置10では、音声読み出し条件登録部5は音声によって読み上げる電子メールを指定するための音声読み出し条件をメール選択条件として設定し登録する。より具体的には、音声読み出し条件登録部5は、例えば音声によって再生する電子メールの送信者のメールアドレスを音声読み出し条件として、登録情報蓄積部6に出力し登録する。この音声読み出し条件登録部5の具体的な構成例としては、マウス、キーボード、ポインティングデバイス、あるいはタッチパネル等の利用者の入力操作に応じてデータ(条件)を入力する入力機器、または利用者の声を集音して入力するためのマイク及び入力した声を条件のデータに変換する変換器等が可能である。
【0037】登録情報蓄積部6は、RAMあるいはハードディスク装置等のデータ記録装置により構成され、音声読み出し条件登録部5からの音声読み出し条件を登録情報として管理し保持する。尚、登録情報は、登録情報蓄積部6内で利用者毎に蓄積されている。音声合成部7は、情報処理部4の指示に基づいて、予め設定された公知の音声合成手法を用いて、メール本文情報抽出部3により抽出された電子メールの本文情報を音声データに合成する。この音声合成部7には、例えば中田和夫著「音声」(コロナ社、1995)に記載されているフォルマント合成、線形予測合成、偏自己相関合成、及び線スペクトル対合成手法の少なくとも1つの音声合成手法が予め設定されている。音声出力部8は、例えばスピーカを含んで構成され、音声合成部7によって合成された音声データを情報処理部4の指示に基づき再生し外部に出力する。これにより、予め選択された送信者からの電子メールが音声によって再生され、利用者に読み上げられる。」

《動作(実施例1)》
(K5)「【0038】[電子メールの音声再生装置の動作]以下、本実施例1の電子メールの音声再生装置10の動作について、図1を用いて説明する。尚、以下の説明では、送信者のメールアドレスからなる音声読み出し条件が利用者によって登録情報蓄積部6に登録情報として予め登録されている場合を例示して説明する。また、メールサーバ100は、複数の送信者から複数の受信者(利用者)宛に送られてきた多数の電子メールを各受信者のメールアドレスで管理し蓄積しているものとする。図1において、本実施例1の音声再生装置10は、まず情報処理部4がメールサーバ100内を検索して、利用者宛の全ての電子メールをメール蓄積部1に取り込み受信する。その後、情報処理部4は、受信した全ての電子メールのヘッダ情報を抽出するようメールヘッダ情報抽出部2に指示する。続いて、メールヘッダ情報抽出部2は、メール蓄積部1に取り込まれた全ての電子メールのヘッダ情報を取り出して、各ヘッダ情報から送信者のメールアドレスを抽出し情報処理部4に通知する。そして、情報処理部4は通知された送信者のメールアドレスに基づき各電子メールの送信者を特定し、さらに情報処理部4は上述の各メールアドレスが利用者によって登録情報蓄積部6に登録情報として記憶されているかどうかについて判定する。
【0039】上記メールアドレスが登録情報として記憶されていた場合、情報処理部4は音声によって再生すべき電子メールであると判断して、その対応する電子メールの本文情報を抽出するようメール本文情報抽出部3に指示する。そして、メール本文情報抽出部3は、情報処理部4から指定された電子メールの本文情報をメール蓄積部1内の電子メールから抽出して、情報処理部4を経て音声合成部7に出力する。続いて、音声合成部7は、入力した本文情報を音声データに合成して、情報処理部4を経て音声出力部8に出力する。これにより、利用者が予め指定した送信者からの電子メールだけが選択され、音声として読み上げられる。一方、上記メールアドレスが登録情報として記憶されていない場合、情報処理部4は音声によって再生すべき電子メールではないと判断して、その電子メールの読み上げを行わない。
【0040】以上のように、本実施例1の電子メールの音声再生装置10及びその音声再生方法では、登録情報蓄積部6が音声読み出し条件登録部5によって予め登録された音声読み出し条件を登録情報として蓄積している。さらに、情報処理部4は、登録情報蓄積部5に蓄積されている登録情報に基づいて、受信した電子メールを音声によって再生するかどうかについて判断している。具体的にいえば、登録情報登録部6は、登録情報として音声で再生する送信者のメールアドレスを予め蓄積する。情報処理部4は受信した電子メールの送信者のメールアドレスをメールヘッダ情報抽出部2から取得して、その取得した送信者のメールアドレスが登録情報として登録情報蓄積部6に記憶されているかどうかについて判定する。つまり、情報処理部4は取得したメールアドレスに基づいて、その電子メールの送信者を特定して、特定した送信者が利用者によって予め選択された送信者かどうかについて登録情報に基づき判定する。上述のメールアドレスが登録情報として記憶されている場合においてのみ、情報処理部4はその電子メールの本文情報を音声データに合成し再生するよう音声合成部7及び音声出力部8に指示している。これにより、本実施例1の電子メールの音声再生装置10及びその音声再生方法では、利用者が予め選択し指定した送信者からの電子メールだけを音声によって再生することができる。したがって、本実施例1の電子メールの音声再生装置10及びその音声再生方法では、利用者に多数の電子メールが送信されてきたときでも、利用者に不快感、疲労感、及びいらだちを与えることなく、利用者が所望する電子メールだけを自動的に選択して音声によって再生することができる。」

(K6)「【0041】尚、上述の説明では、送信者のメールアドレスを上記音声読み出し条件に利用する構成について説明したが、実施例はこれに限定されるものではなく、音声読み出し条件として受信した電子メールのタイトル、そのタイトルに含まれるキーワード、その本文に含まれるキーワード、または受信時間等の電子メールに含まれる所定の情報を設定することにより同様の効果を得ることができる。また、上述の説明以外に、音声合成部7がメールヘッダ情報抽出部2で抽出されたヘッダ情報に含まれる所定の情報を音声データに合成して、音声出力部8で音声によって再生する構成でもよい。具体的には、メールヘッダ情報抽出部2で抽出された送信者のメールアドレスを音声によって再生する構成でもよい。」

〈実施例4〉
(K7)「【0052】《実施例4》
[電子メールの音声再生装置の構成]図4は、本発明の実施例4である電子メールの音声再生装置の構成を示すブロック図である。この実施例では、電子メールの音声再生装置の構成において、電子メールに含まれるメールアドレスを送信者の読み上げ氏名に変換する変換リストをメール選択条件として登録するためのメールアドレス-読み上げ氏名変換登録部を設けた。さらに、上記変換リストに基づいて、受信した電子メールのメールアドレスを読み上げ氏名に変換し音声によって再生するよう構成した。それ以外の各部は、実施例1のものと同様であるのでそれらの重複した説明は省略する。図4に示すように、本実施例4の電子メールの音声再生装置40には、情報処理部4’に接続されたメールアドレス-読み上げ氏名変換登録部14及びメールアドレス-読み上げ氏名変換部15が設けられている。メールアドレス-読み上げ氏名変換登録部14は、上述の登録手段を構成するものであり、電子メールのメールアドレスを送信者の読み上げ氏名に変換する変換リストが利用者によって予めメール選択条件として設定され登録情報蓄積部6に出力される。これにより、変換リストは登録情報蓄積部6内で登録情報として管理、蓄積される。この変換リストでは、各メールアドレスに対して、利用者が電子メールの再生時に所望する読み上げ氏名が設定される。
【0053】具体的にいえば、変換リストには、例えばメールアドレス”tarou@def.co.jp”及び”jirou@zzz.co.jp”に対して、読み上げ氏名”太郎さん”及び”次郎さん”がそれぞれ設定される。これにより、利用者は、後に詳述するように、電子メールが音声によって再生されたとき、その電子メールの送信者の氏名を容易に判別し認識することができる。メールアドレス-読み上げ氏名変換部15は、情報処理部4’の指示に基づいて、メール蓄積部1に蓄積されている電子メールのメールアドレスを読み上げ氏名に変換する。詳細には、メールアドレス-読み上げ氏名変換部15は、メールヘッダ情報抽出部2からのメールアドレスと登録情報蓄積部6に蓄積されている変換リスト内のメールアドレスとの比較を行う。メールヘッダ情報抽出部2からのメールアドレスが変換リストに記載されていた場合、メールアドレス-読み上げ氏名変換部15はそのメールアドレスに対応付けられた読み上げ氏名を変換リストから取得して情報処理部4’に通知する。情報処理部4’は、通知された読み上げ氏名と、その読み上げ氏名に対応した電子メールの本文情報とを音声データに合成するよう音声合成部7に指示する。これにより、受信した電子メールの本文情報とともに、その電子メールの送信者の氏名が音声によって読み上げられ、利用者は受信した電子メールの送信者の氏名を容易に判別して認識することができる。
【0054】尚、上記の説明以外に、メールアドレス-読み上げ氏名変換部15での比較結果に基づいて、変換リスト(登録情報)に記載されているメールアドレス(送信者)からの電子メールだけを音声によって再生する構成でもよい。このように構成することにより、情報処理部4’での登録情報に基づく判断処理を省略することができ、上述の実施例1、2のものに比べて、当該装置全体の制御を行う情報処理部4’での処理負荷を軽減することができる。また、上述の説明では、電子メールの本文情報とともに変換リストから取得した送信者の読み上げ氏名を再生する構成について説明したが、実施例はこれに限定されるものではなく、例えば電子メールがメール蓄積部1に蓄積された時点でその電子メールの送信者の読み上げ氏名だけを再生する構成でもよい。このように構成することにより、メールアドレスのような比較的聞いても判からないような情報ではなく、電子メールを受信した時点でその電子メールの送信者の氏名を利用者に通知することができる。」

《動作(実施例4)》
(K8)「【0055】[電子メールの音声再生装置の動作]以下、本実施例4の電子メールの音声再生装置40の動作について、図4を用いて説明する。尚、以下の説明では、説明の簡略化のために、実施例1のものと異なる動作について主に説明する。図4において、本実施例4の音声再生装置40では、メールヘッダ情報抽出部2がメール蓄積部1に取り込まれた全ての電子メールのヘッダ情報を取り出して、各ヘッダ情報から送信者のメールアドレスを抽出しメールアドレス-読み上げ氏名変換部15に通知する。続いて、メールアドレス-読み上げ氏名変換部15は、通知された送信者のメールアドレスと登録情報蓄積部6に記憶されている変換リスト(登録情報)内のメールアドレスとの比較を行って、同一のメールアドレスが存在するかどうかについて検出する。そして、変換リストに記載されたメールアドレスが存在する場合、メールアドレス-読み上げ氏名変換部15は変換リストに基づきメールアドレスを読み上げ氏名に変換して、情報処理部4’に通知する。次に、情報処理部4’は、メールアドレス-読み上げ氏名変換部15から通知された読み上げ氏名と、その読み上げ氏名に対応する電子メールの本文情報とを音声データに合成するように、音声合成部7に指示する。そして、音声合成部7は、情報処理部4’の指示に基づいて、読み上げ氏名と本文情報とを含んだ音声データを生成し音声出力部8に出力する。その後、音声出力部8は、音声合成部7から入力した音声データを再生し出力する。
【0056】以上のように、本実施例4の電子メールの音声再生装置40及びその音声再生方法では、メールアドレス-読み上げ氏名変換登録部14が電子メールのメールアドレスを送信者の読み上げ氏名に変換する変換リストを登録情報蓄積部6に登録情報として予め登録している。メールアドレス-読み上げ氏名変換部15は、メールヘッダ情報抽出部2からのメールアドレスが登録情報蓄積部6に登録されている変換リストに含まれているかどうかについて検索して、変換リストに含まれたメールアドレスを読み上げ氏名に変換している。これにより、本実施例4の電子メールの音声再生装置40及びその音声再生方法では、受信した電子メールの本文情報とともに、その電子メールの送信者の氏名が音声によって読み上げられ、利用者は受信した電子メールの送信者の氏名を容易に判別して認識することができる。
【0057】尚、上述の実施例の説明以外に、変換リストに基づいて、送信者の読み上げ氏名に変換し読み上げ氏名を音声で再生する構成について説明したが、実施例はこれに限定されるものではなく、メールアドレスと利用者が所望する送信者の読み上げ情報との対応関係を変換リストに予め登録して、受信した電子メールを再生するときに上記所望する読み上げ情報も含めて音声で再生する構成でもよい。具体的には、メールアドレスを送信者の読み上げ氏名、所属部署等の読み上げ情報に変換する変換リストを予め登録して、登録した読み上げ情報と電子メールとを音声で再生する構成でもよい。これにより、利用者は受信した電子メールの送信者の個人情報を容易に判別して認識することができる。」

(K9)「【0075】尚、上述の各実施例の音声再生装置は、例えばパーソナルコンピュータを用いて構成することができる。また、上述の各実施例の構成を適宜組み合わせて、受信した電子メールの本文情報を少なくとも含んだ音声データを再生し音声で出力する構成でもよい。また、上述の各実施例における音声再生方法は、いずれもコンピュータ・プログラム化することができるので、コンピュータにより実行可能な記録媒体は本願の音声再生方法を提供することが可能である。ここでいうところの記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM、DVD、光磁気ディスク、リムーバブル・ハードディスク、及びフラッシュメモリを含むデータ記録装置である。」

[2]刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)

ア 全体,概要
刊行物1は、前掲(K2),請求項1,2,10,11,19,20、実施例1{(K3)}によれば、全般、「受信した電子メールを「音声によって読み上げる電子メールを指定するための音声読み出し条件をメール選択条件として予め登録」(請求項2)しておき、「登録情報に基づいて、受信した電子メールを音声により再生するかどうかについて判断」し、「判断結果に基づいて、前記受信した電子メールの少なくとも本文情報を音声データに合成」し「合成した音声データを再生し出力する」(請求項10)、電子メールを音声によって読み上げる「電子メールの音声再生装置」、「電子メールの音声再生方法」、「電子メールの音声再生プログラムを記録した記録媒体」であって、これにより、「不必要な内容のものまで音声で再生」されることによる不快感、疲労感、いらだちを防止しようとすることが記載されており、これに対応する実施例は、実施例1(図1)である。
そして、刊行物1には、実施例1の他、実施例2?8が記載されている。

イ 引用発明認定の基礎等(実施例4のもの、方法発明)
刊行物1の実施例4を基本に引用発明を認定する。
また、前掲(K9)段落【0075】に「上述の各実施例の音声再生装置は、例えばパーソナルコンピュータを用いて構成することができる。・・・また、上述の各実施例における音声再生方法は、いずれもコンピュータ・プログラム化することができるので、コンピュータにより実行可能な記録媒体は本願の音声再生方法を提供することが可能である。」とあることから、
引用発明として、電子メールを音声によって読み上げる方法であって、パーソナルコンピュータが実行する「電子メールの音声再生方法」の発明を認定することができ、この場合、パーソナルコンピュータに組み込まれたプログラムを実行することで、当該方法が実行されることは明らかである。
すなわち、引用発明として、『パーソナルコンピュータに組み込まれたプログラムを実行することで、パーソナルコンピュータが実行する、電子メールを音声によって読み上げる電子メールの音声再生方法』を認めることができる。 (→引用発明のv)

ウ 実施例4と実施例1(共通点、異なる点等)
実施例4のものは、実施例1と共通するものも多く、実施例4を示す図4と実施例1を示す図1との比較、「この実施例では、電子メールの音声再生装置の構成において、電子メールに含まれるメールアドレスを送信者の読み上げ氏名に変換する変換リストをメール選択条件として登録するためのメールアドレス-読み上げ氏名変換登録部を設けた。さらに、上記変換リストに基づいて、受信した電子メールのメールアドレスを読み上げ氏名に変換し音声によって再生するよう構成した。それ以外の各部は、実施例1のものと同様であるのでそれらの重複した説明は省略する。」(段落【0052】)からすれば、
実施例4のものは、メール蓄積部1,メールヘッダ情報抽出部2,メール本文情報抽出部3,登録情報蓄積部6,音声合成部7,音声出力部8については、基本的に実施例1のものと変わらず、
実施例4では、実施例1の「音声読み出し条件登録部5」が無く、代わりに、「メールアドレス-読み上げ氏名変換登録部14」,「メールアドレス-読み上げ氏名変換部15」が設けられ、「情報処理部4」(実施例1)が「情報処理部4’」(実施例4)となっていて、
実施例1では、「音声読み出し条件登録部5」に「メールアドレスが登録情報として記憶されている場合においてのみ、情報処理部4はその電子メールの本文情報を音声データに合成し再生するよう音声合成部7及び音声出力部8に指示している。これにより、本実施例1の電子メールの音声再生装置10及びその音声再生方法では、利用者が予め選択し指定した送信者からの電子メールだけを音声によって再生する」{(K5),段落【0040】}ようになっているが、
実施例4では、そうではなく、「メールアドレス-読み上げ氏名変換部15は、メールヘッダ情報抽出部2からのメールアドレスが登録情報蓄積部6に登録されている変換リストに含まれているかどうかについて検索して、変換リストに含まれたメールアドレスを読み上げ氏名に変換している。これにより、本実施例4の電子メールの音声再生装置40及びその音声再生方法では、受信した電子メールの本文情報とともに、その電子メールの送信者の氏名が音声によって読み上げられ」る{(K8),段落【0056】}ようになっている。具体的には、「登録情報蓄積部6に登録されている変換リスト」にメールアドレスがある場合、これを、「氏名」に変換して、例えば、「”太郎さん”」「”次郎さん”」(段落【0053】)と音声再生される。


エ 実施例4(図4)が実行する基本的方法等
前掲(K7)(K8)(特に段落【0055】)によれば、
・「メールアドレス-読み上げ氏名変換登録部14」が
「電子メールのメールアドレスを送信者の読み上げ氏名に変換する変換リストを登録情報蓄積部6に登録情報として予め登録している。」(段落【0056】)
・「メールヘッダ情報抽出部2」が、
「メール蓄積部1に取り込まれた全ての電子メールのヘッダ情報を取り出して、各ヘッダ情報から送信者のメールアドレスを抽出しメールアドレス-読み上げ氏名変換部15に通知する。」
・「メールアドレス-読み上げ氏名変換部15」は、
「通知された送信者のメールアドレスと登録情報蓄積部6に記憶されている変換リスト(登録情報)内のメールアドレスとの比較を行って、同一のメールアドレスが存在するかどうかについて検出する。そして、変換リストに記載されたメールアドレスが存在する場合、メールアドレス-読み上げ氏名変換部15は変換リストに基づきメールアドレスを読み上げ氏名に変換して、情報処理部4’に通知する。」
・「情報処理部4’」は、
「メールアドレス-読み上げ氏名変換部15から通知された読み上げ氏名と、その読み上げ氏名に対応する電子メールの本文情報とを音声データに合成するように、音声合成部7に指示する。」
・「音声合成部7」は、
「情報処理部4’の指示に基づいて、読み上げ氏名と本文情報とを含んだ音声データを生成し音声出力部8に出力する。」
・「音声出力部8」は、
「音声合成部7から入力した音声データを再生し出力する。」
・「これにより、本実施例4の電子メールの音声再生装置40及びその音声再生方法では、受信した電子メールの本文情報とともに、その電子メールの送信者の氏名が音声によって読み上げられ、利用者は受信した電子メールの送信者の氏名を容易に判別して認識することができる。」(段落【0056】)

これらのことから、実施例4のものが実行する(パーソナルコンピュータにインストールされたプログラムにより実行される)「電子メールの音声再生方法」の基本として、以下のステップを有する方法が認められる。

(a)電子メールをメール蓄積部1に取り込むステップの存在(同ステップの存在は明らかである。) (→引用発明のq)
(b)「電子メールのメールアドレスを送信者の読み上げ氏名に変換する変換リストを登録情報蓄積部6に」「予め登録する」ステップ
(→引用発明のp)
(c)「メール蓄積部1に取り込まれた全ての電子メールのヘッダ情報を取り出して、各ヘッダ情報から送信者のメールアドレスを抽出」するステップ (→引用発明のr)
(d)抽出した「送信者のメールアドレス」が「登録情報蓄積部6に記憶されている変換リスト」に「存在する場合」、「変換リストに基づきメールアドレスを読み上げ氏名に変換し」、「読み上げ氏名と、その読み上げ氏名に対応する電子メールの本文情報とを音声データに合成するように、音声合成部7に指示する」ステップ (→引用発明のs)
(e)当該指示に基づき、「音声合成部7」が「読み上げ氏名と本文情報とを含んだ音声データを生成し音声出力部8に出力」するステップ
(→引用発明のt)
(f)「音声出力部8」が「入力した音声データを再生し出力する」ステップ (→引用発明のu)

オ 音声再生される対象メール
また、実施例4の説明において、「尚、上記の説明以外に、メールアドレス-読み上げ氏名変換部15での比較結果に基づいて、変換リスト(登録情報)に記載されているメールアドレス(送信者)からの電子メールだけを音声によって再生する構成でもよい。」{(K7),段落【0054】、すなわち、この場合には、変換リスト(登録情報)に登録されていないメールアドレスのメール本文は音声再生されず、実施例1と同様の処理となる。}とされていることからすれば、
実施例4は、本来、そのように「変換リスト(登録情報)に記載されているメールアドレス(送信者)からの電子メールだけを音声によって再生する」ものではなく、「登録情報蓄積部6に登録されている変換リスト」にメールアドレスがある場合もない場合も、メール本文は音声再生されるものと解される。
〈メールアドレスは音声再生されるか、について〉
上記のとおり、「登録情報蓄積部6に登録されている変換リスト」にメールアドレスがある場合、これを、「氏名」に変換して、例えば、「”太郎さん”」「”次郎さん”」(段落【0053】)と音声再生されることは明らかであるが、
「登録情報蓄積部6に登録されている変換リスト」にメールアドレスがない場合について検討するに、
実施例1において「また、上述の説明以外に、音声合成部7がメールヘッダ情報抽出部2で抽出されたヘッダ情報に含まれる所定の情報を音声データに合成して、音声出力部8で音声によって再生する構成でもよい。具体的には、メールヘッダ情報抽出部2で抽出された送信者のメールアドレスを音声によって再生する構成でもよい。」(段落【0041】)とされていることからすれば、
実施例4で、「登録情報蓄積部6に登録されている変換リスト」にメールアドレスがない場合においても、これと同様、「メールヘッダ情報抽出部2で抽出された送信者のメールアドレスを音声によって再生する構成でもよい。」と解される。
加えて、「上述の各実施例の構成を適宜組み合わせて、受信した電子メールの本文情報を少なくとも含んだ音声データを再生し音声で出力する構成でもよい」(段落【0075】)とされていることや、
一般に、メール読み上げにおいて、送信者情報について何らの情報も読み上げずメール本文だけを読み上げることよりも、送信者情報についても併せて読み上げることの方がより自然であることからすれば、
「登録情報蓄積部6に登録されている変換リスト」にメールアドレスがない場合においては、(「氏名」には変換しないが)「送信者のメールアドレスを音声によって再生する」ものを認めることができる。

したがって、上記ステップ(d)(e)は、
(d')抽出した「送信者のメールアドレス」が「登録情報蓄積部6に記憶されている変換リスト」に「存在する場合」、「変換リストに基づきメールアドレスを読み上げ氏名に変換し」、「読み上げ氏名」(例えば、“太郎さん”)と、その読み上げ氏名に対応する電子メールの本文情報とを音声データに合成するように、音声合成部7に指示し、
抽出した「送信者のメールアドレス」が「登録情報蓄積部6に記憶されている変換リスト」に存在しない場合、送信者のメールアドレスと、送信者のメールアドレスに対応する電子メールの本文情報とを音声データに合成するように、音声合成部7に指示する、ステップと、
(→引用発明のs)
(e')当該指示に基づき、「音声合成部7」が「読み上げ氏名」又は「送信者のメールアドレス」と本文情報とを含んだ音声データを生成し音声出力部8に出力」するステップ (→引用発明のt)
となる。

カ 引用発明
以上によれば、引用発明として、下記の発明を認定することができる(便宜上、p?vに分説しておく)。

記(引用発明)
p :電子メールのメールアドレスを送信者の読み上げ氏名に変換する変換リストを登録情報蓄積部に予め登録するステップと、
q :電子メールをメール蓄積部に取り込むステップと、
r :メール蓄積部に取り込まれた全ての電子メールのヘッダ情報を取り出して、各ヘッダ情報から送信者のメールアドレスを抽出するステップと、
s :抽出した送信者のメールアドレスが登録情報蓄積部に記憶されている変換リストに存在する場合、変換リストに基づきメールアドレスを読み上げ氏名に変換し、読み上げ氏名(例えば、“太郎さん”)と、その読み上げ氏名に対応する電子メールの本文情報とを音声データに合成するように、音声合成部に指示し、
抽出した送信者のメールアドレスが登録情報蓄積部に記憶されている変換リストに存在しない場合、送信者のメールアドレスと送信者のメールアドレスに対応する電子メールの本文情報とを音声データに合成するように、音声合成部7に指示する、ステップと、
t :当該指示に基づき、音声合成部が読み上げ氏名又は送信者のメールアドレスと本文情報とを含んだ音声データを生成し音声出力部に出力するステップと、
u :音声出力部が入力した音声データを再生し出力するステップと、
を有する
v :パーソナルコンピュータに組み込まれたプログラムを実行することで、パーソナルコンピュータが実行する、電子メールを音声によって読み上げる電子メールの音声再生方法。

[3]本願発明と引用発明との対比(対応関係)

ア 要件E「音声合成方法。」について
上記p?vからなる引用発明の「音声再生方法。」も、全体として「音声合成方法。」といい得ることは明らかである。

イ 要件Aについて
A「電子メールを含むテキストコンテンツを記憶すると共に、メールアドレスに関連したアドレス帳データを記憶する記憶ステップと」

引用発明のqの「電子メールをメール蓄積部に取り込む」ことは、「電子メールを含むテキストコンテンツを記憶する」ことといえ、要件Aの前半である「電子メールを含むテキストコンテンツを記憶する」と実質的に相違しない。
引用発明のpの「電子メールのメールアドレスを送信者の読み上げ氏名に変換する変換リスト」は、個人の「メールアドレス」と個人の「読み上げ氏名」が対応づけられたものがリストになっているものと解せられ、したがって、「メールアドレスに関連したアドレス帳データ」ということができるものであり、また、「登録する」ことは「記憶する」ことでもあるから、引用発明のqのステップは、要件Aの後半と実質的に相違しない。
したがって、要件Aにおいて、本願発明と引用発明は相違しない。

ウ 要件B、要件Cの前半について
B「テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択ステップと、」
Cの前半「前記コンテンツ選択ステップにて、いずれかの電子メールが選択された(場合に)」

〈本願発明〉
本願発明の上記要件BとCの前半を併せた特定事項は、
「コンテンツ選択ステップ」が「テキストコンテンツを選択することであって、いずれかの電子メールを選択するコンテンツ選択ステップ」といえるところ、
その範囲について明細書の記載を参酌して検討するに、当該特定事項に対応する記載である
「【0031】
コンテンツ選択インターフェース部1は、上記テキストコンテンツ記録メモリ3に記録されている各テキストコンテンツの中から、ユーザが所望のコンテンツを選択するためのインターフェース部である。当該コンテンツの選択は、上記テキストコンテンツ記録メモリ3に記録されている各テキストコンテンツの中からユーザが直接選択する場合と、ユーザからの起動指示入力に応じて当該携帯電話端末内のアプリケーションプログラムが起動した時に自動的に行われる場合とがある。なお、ユーザが選択指示を入力する場合、例えばディスプレイ画面上に複数のコンテンツ選択メニューが表示される。そして、ユーザにより、当該コンテンツ選択メニュー表示画面の中から、例えばキーやタッチパネル操作を通じて所望のコンテンツの選択指示が入力された時に、コンテンツ選択インターフェース部1は当該コンテンツを選択する。アプリケーションの起動に応じたコンテンツの選択は、例えばディスプレイ画面上の複数のアプリケーション起動アイコンがユーザにより選択指示されることにより、そのアプリケーションが起動した時に行われる。(以下略)」
に照らせば、
ユーザから直接、特定の電子メールを指示する入力をしていずれかの電子メールを選択するステップ、すなわち、ユーザが特定の1のメールを特定する指示入力をすることも含むと理解されるが、そのようなステップに限らず、
『ユーザからの起動指示入力(例えばディスプレイ画面上の複数のアプリケーション起動アイコンがユーザにより選択指示される入力)に応じてアプリケーションプログラムが起動した時に、いずれか特定の1の電子メールが自動的に選択されるステップ』を含んでいうもの、と理解される。
そして、一般に“選択する”とは、複数のものからそのうちの幾つか又は1つを特定することを意味するから、その意味からすると、上記後者の『ユーザからの起動指示入力・・・自動的に選択されるステップ』では、ユーザが“選択”しているのではなく、プログラムやプログラムが組み込まれた装置が“選択”をしていると解するのが普通である。
このようなことからすれば、上記「テキストコンテンツを選択することであって、いずれかの電子メールを選択するコンテンツ選択ステップ」との特定事項は、ユーザーの指示入力を必須の要件とするものではなく、
プログラムやプログラムが組み込まれた装置が「いずれかの電子メールを選択するコンテンツ選択ステップ」を実行することで足りる要件というべきである。

〈引用発明〉
これに対し、引用発明は、v「パーソナルコンピュータに組み込まれたプログラムを実行することで、パーソナルコンピュータが実行する、電子メールを音声によって読み上げる電子メールの音声再生方法」であるところ、
複数の電子メールを同時に読み上げることは通常あり得ず、読み上げる電子メールは一時に1つと想定されるから、
引用発明において、少なくとも、読み上げが行われる際、すなわち、ステップsからuの一連のステップ(ステップs-ステップt-ステップu)の実行に際し、既に読み上げるべき電子メールがいずれかの1のメールに選択され特定されていることは明らかである。
すなわち、そのプログラム、プログラムが組み込まれたパーソナルコンピュータが「いずれかの電子メールを選択するコンテンツ選択ステップ」が実行されていることは明らかである。
また、一般に、パーソナルコンピュータに組み込まれた特定のプログラムを実行させる場合、ユーザがパーソナルコンピュータに組み込まれた種々のプログラムの中からその特定のプログラムを選択し、その特定のプログラムの実行を指示するのが通常であるから、引用発明もユーザがそのような読み上げるプログラムの起動を指示することで実行されると普通に想定される。
そして、引用発明では、そのようなユーザの指示によるプログラムの起動後、
具体的に、どのようにして、読み上げるべき電子メールをいずれか1のメールに選択し特定しているのか、
例えば、起動により受信し「メール蓄積部に取り込」んだ新着メールのうちから、
・古いもの/又は新しいものから順に1つづつ自動的に読み上げるのか、
・そうではなくて、ユーザの指示入力を待ち、ユーザの指示入力により条件に合致する又は1のメールを読み上げるのか、
等の具体的手法は不明であるが、いずれにせよ、
ユーザがそのような読み上げるプログラムの起動を指示した後、ユーザの指示入力により又は指示入力を待たずに、本願発明でいう「いずれかの電子メールを選択するコンテンツ選択ステップ」が実行されているというべきである。
以上のことからすれば、引用発明も、本願発明でいう「テキストコンテンツを選択することであって、いずれかの電子メールを選択するコンテンツ選択ステップ」を有しているといえ、
また、少なくともsからuの一連のステップは、そのような選択ステップでいずれかの電子メールが選択された場合に実行されるもの、と理解されるものである。
したがって、要件Bと要件Cの前半部において、本願発明と引用発明は相違しない。

エ 要件C,Dについて
C「前記コンテンツ選択ステップにて、いずれかの電子メールが選択された場合に、その選択された電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データから取り出し、その取り出した名前を含む文章のテキストデータを生成するテキストデータ生成ステップと、」
D「前記テキストデータ生成ステップで得られた名前を含む文章のテキストデータを音声変換する音声変換ステップと、
を有する」

引用発明の、sからuの一連のステップが、上記の通り、引用発明も有するといい得る「テキストコンテンツを選択することであって、いずれかの電子メールを選択するコンテンツ選択ステップ」にて「いずれかの電子メールが選択された場合に」なされるといい得ることは、上記のとおりである。

そして、sからuの一連のステップの、以下の内容
-sの「抽出した送信者のメールアドレスが登録情報蓄積部に記憶されている変換リストに存在する場合、変換リストに基づきメールアドレスを読み上げ氏名に変換し、読み上げ氏名(例えば、“太郎さん”)と、その読み上げ氏名に対応する電子メールの本文情報とを音声データに合成するように、音声合成部に指示し、」、
-tの「当該指示に基づき、音声合成部が読み上げ氏名」「と本文情報とを含んだ音声データを生成し音声出力部に出力するステップと、」、
-u「音声出力部が入力した音声データを再生し出力するステップと、
を有する」、
-vの「電子メールを音声によって読み上げる」
は、要件C,Dに対応するものであるところ、
引用発明のsの「読み上げ氏名(例えば、“太郎さん”)」は、「電子メールの送信元の名前」といえ、これがステップsにおいてアドレス帳データ(登録情報蓄積部に記憶されている変換リスト)から取り出していることは明らかであり、
また、ステップs,t,uにおいて、
・本願発明でいう「電子メールの送信元の名前」のテキストデータと、「電子メールの本文情報」に対応するテキストデータが生成されているといい得ること、
・そして、生成された、その「電子メールの送信元の名前」のテキストデータと、その「電子メールの本文情報」に対応するテキストデータを「音声変換」している、といい得ること、
以上は明らかである。

そして、この「名前のテキストデータ」も、本願発明の「名前を含む文章のテキストデータ」も、「名前を含むテキストデータ」といい得る点では一致している。
したがって、本願発明と引用発明は、
「前記コンテンツ選択ステップにて、いずれかの電子メールが選択された場合に」、「その選択された電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データから取り出し、その取り出した名前を含むテキストデータを生成するテキストデータ生成ステップと、」
「前記テキストデータ生成ステップで得られた名前を含むテキストデータを音声変換する音声変換ステップと、
を有する」点では相違が無く、
名前を含むテキストデータが、
本願発明では、「名前を含む文章のテキストデータ」であるのに対して、
引用発明では、「名前のテキストデータ」であって、「名前を含む文章のテキストデータ」であるとはしていない点で相違が認められる。

[4]一致点・相違点
以上の対比結果によれば、本願発明と引用発明との一致点および相違点は、次のとおりである。

[一致点]
A 電子メールを含むテキストコンテンツを記憶すると共に、メールアドレスに関連したアドレス帳データを記憶する記憶ステップと、
B テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択ステップと、
C’前記コンテンツ選択ステップにて、いずれかの電子メールが選択された場合に、その選択された電子メールの送信元の名前を前記アドレス帳データから取り出し、その取り出した名前を含むテキストデータを生成するテキストデータ生成ステップと、
D’前記テキストデータ生成ステップで得られた名前を含むテキストデータを音声変換する音声変換ステップと、
を有する
E 音声合成方法。

[相違点]
上記C’及びD’の「名前を含むテキストデータ」(生成し、音声変換するとする「名前を含むテキストデータ」)が、
本願発明では、「名前を含む文章のテキストデータ」であるのに対して、
引用発明では、「名前のテキストデータ」であって、
「名前を含む文章のテキストデータ」であるとはしていない点。

[5]相違点等の判断(容易想到性の判断)

(1)相違点の克服
引用発明を出発点とし、
〔相違点の克服〕
引用発明の「名前を含むテキストデータ」{「名前のテキストデータ」;s,tの「読み上げ氏名」}を、「名前を含む文章のテキストデータ」とすることで、
要件C,Dとなり、上記[相違点]は克服され、本願発明に至る。

(2)相違点についての判断(〔相違点の克服〕の容易想到性)

《周知技術A》
一般に、電子メールの読み上げをするのに、これから読み上げるメールの送信元を音声で提示するのに、名前を含む文章を音声で提示することは、ごく普通の周知(例えば、下記周知例a?f等参照)のことにすぎない。

《判断》
そうすると、刊行物1に接した当業者にとって、メール本文の読み上げ直前に、単に“太郎さん”と「読み上げ氏名」だけを音声出力して提示するよりも、例えば、“太郎さんからのメールです”等のように、名前を含む文章にし、これを音声出力して提示するようにした方が、直後に読み上げるメールの送信者であることをより明確かつ丁寧に示すことができることから、
引用発明の「読み上げ氏名」の音声出力に代えて、周知技術Aの名前を含む文章の音声出力を採用する動機付けが十分にあるということができる。
したがって、引用発明の、生成し、音声変換するとする「名前のテキストデータ」{s,tの「読み上げ氏名」}を、「名前を含む文章のテキストデータ」とすることは、当業者が容易になし得ることである。

記(周知技術Aについての周知例a?f、
{}内は注目箇所の例示である。)
○周知例a:特開2005-43968号公報
{【0035】
なお例えば、名称だけの音声を発生するだけではなく、「からのメールです」などの定型文を用意し、名称+定型文を音声合成して出力するようにしてもよい。この場合には、「井上さんからのメールです」と言う音声が発生される。
【0062】
なお、ステップS25での名称の音声出力において、単純に名称だけを読み上げるのではなく、例えば「さんからの電話です」などの定型文を用意し、名称に続いてこの定型文を読み上げるようにしてもよい。この場合、例えば「井上さんからの電話です」と音声出力した後に、音声データに基づくメッセージ音声の出力が行われる。
【0030】
図4は、本通信装置のCPU100で実行されるメール読み上げ処理の手順を示すフローチャートである。
【0031】
まず、ステップS01で、表示部107及び操作部108を利用してユーザがメール読み上げを選択指示したか否かを判断し、メール読み上げが選択指示された場合に、ステップS02へ進み、記憶部103に格納され、表示部107に表示された複数の受信メールデータ(図2)の中から、未読フラグがセットされた受信メール(新規メール)を検索し、こうした新規メールが存在する場合に、ステップS03へ進み、新規メールが無い場合には、ステップS01に戻る。
【0053】
図6及び図7は、第2の実施の形態におけるCPU100で実行されるメッセージデータ及びメールデータの音声再生処理の手順を示すフローチャートである。
【0054】
まず、ステップS11で、表示部107及び操作部108を利用してユーザがメールデータまたは音声データの読み上げを選択指示したか否かを判断し、読み上げが選択指示された場合に、ステップS12へ進み、記憶部103に格納され、表示部107に表示された複数のメッセージデータ及び受信メールデータ(図5)の中に、まだ音声再生が行われていない受信メール(新規メール)が存在するか否かを判別する。こうした新規メールが存在する場合に、ステップS13へ進み、新規メールが無い場合には、ステップS20へ進む。}

○周知例b:特開平9-307658号公報
{【0064】S727では、前回の利用で最後にアクセスしたメールの日付をユーザ情報記憶部108からとりだし、今回の読み込んだメールの日付に最も近いメールを選択する。メールの選択に前回アクセスした日付よりも、今回選択するメールの日付を新しいものにするという前提をつけてもよい。
【0065】今、新着メールが3件届いていて、2件めが選択されたとするS728にてヘッダ読み上げを開始する。
【0066】ヘッダはfrom(○○)とSubject(××)について、設定より一段階遅い速度で音声合成して出力する。Subject:が”RE:××”となっていたら、「××のリプライ」と音声合成して出力する。”RE:”が複数あっても「××のリプライ」という音声合成を1回だけ出力する。或いは、RE:の個数だけ「××のリプライ」という音声合成を繰り返して出力するように仕様を選択しても良い。Subjectに記述「××」がある場合「N通目は○○さんから××についてのメールです.」と音声合成して出力し、記述が無い場合「N通目は○○さんからのメールです.」と音声合成して出力する。}

○周知例c:特開2001-325191号公報
{図5?10,
【0063】次に、図10(A)に、図5(B)?図9(B)に示したような差出人の報知情報731,723,733,743,753を作成する為の、差出人変換報知テーブル,を示す。テーブルは、図5(B),図6(B),図8(B)に示したような個人情報の読み仮名を利用するテーブルである。また、テーブルは、図7(B),図9(B)に示したような個人情報の住所と読み仮名を利用するテーブルである。図10(A)のテーブル,では、報知情報に、“ ? さんからのメールです。”という文章を追加し、より分かり易く報知できるように変換する変換テーブルである。}

○周知例d:特開2001-236205号公報
{【0083】第一に、電子メールそのものを出力するのではなく、着信を知らせる音声データを出力する方法がある。この場合の出力データとしては、ビープ音などの着信音であってもよいし、音声メッセージ(「メールが到着しました」など)であってもよい。データベース上のアドレス帳と連動して、差出人アドレスから差出人を特定し、誰からのメールであるかを音声メッセージで流してもよい(「○○さんからのメールが到着しました」など)。なお、着信を知らせる音声データは、上記着信メッセージ処理部31にて作成される。}

○周知例e:特開2001-117828号公報
{【0003】従来、受信した電子メールのヘッダ部から送信元のメールアドレスを抽出し、抽出されたメールアドレスの最初の部分を1文字ずつ音声出力するシステムが提案されている。例えば、抽出したメールアドレスが、
【0004】
【外3】「yamada@aaa.bbb.ccc」
【0005】であると、メールアドレスの最初の部分である「yamada」を1文字ずつ、「y(ワイ)」、「a(エー)」、「m(エム)」、「a(エー)」、「d(ディー)」、「a(エー)」といった具合に各文字をその読みに従って音声出力する。
【0021】尚、コンピュータシステム100の構成は、図1及び図2に示す構成に限定されるものではなく、代わりに各種周知の構成を使用しても良い。先ず、コンピュータシステム100の電子メールの読み上げ機能を選択する場合のユーザの操作について、図3と共に説明する。図3は、電子メール機能のうち、電子メールの読み上げ機能を選択する際にディスプレイ102上に表示されるメール音声再生メニューを示す図である。電子メールの読み上げ機能は、例えばメール音声再生メニュー中のボタン1をマウス104でクリックすることにより選択される。電子メールの読み上げ機能が選択されると、例えばメール音声再生メニューの題名のウィンドウ内に表示されたリスト中の電子メールが、後述の如く読み上げられる。題名のウィンドウ内に表示されたリスト中のメールは、受信されてこれから読まれるものであっても、過去に受信されて既に読まれており、例えばメモリ部202内の受信簿に記録されているものであっても良い。
【0035】例えば、抽出されたアドレス部分が「yamada」であると、キーワードがFromの場合は読み上げ用メッセージ「?さんからのメールです」にローマ字かな変換処理の結果である「やまだ」が組み込まれて、「やまださんからのメールです」なるメッセージが生成される。同様にして、キーワードがToであれば、「?さん宛です」を用いて「やまださん宛です」なるメッセージが生成され、キーワードがCcであれば、「?に通知します」を用いて「やまださんに通知します」なるメッセージが生成され、キーワードがBccであれば、「?に通知しません」を用いて「やまださんに通知しません」なるメッセージが生成される。}

○周知例f:特開2002-23782号公報
{【0078】その結果、上記ローマ字読み判定部62によって、英文字列「TANAKATAROU」および英文字列「tanaka」がローマ字読みが可能であると判別されると、英文字列「TANAKATAROU」にはローマ字読み「たなかたろう」が付与され、英文字列「tanaka」にはローマ字読み「たなか」が付与されるのである。尚、後に、テキスト解析部61でFrom行に関する音声合成制御パラメータを生成する場合に、特定記号「<」,「@」間の英文字列のローマ字読み「たなか」に基づいて、「たなか」+「さんからのメールです」のごとく言葉を付け加えて音声合成制御パラメータを生成することも可能である。}

(3)まとめ(相違点等についての判断)
以上、引用発明を出発点として、上記〔相違点の克服〕をなすことで本願発明に達するところ、その克服は当業者が容易になし得ることである。
効果についてみても、〔相違点の克服〕をする構成の採用に伴って(奏するであろうと予測される効果に比して)格別顕著なものが本願発明にあるとも認められない。

なお、上記[3]ウでは、要件B「テキストコンテンツを選択するコンテンツ選択ステップ」と要件Cの前半「前記コンテンツ選択ステップにて、いずれかの電子メールが選択された(場合に)」が、ユーザーの指示入力を必須の要件とするものではないとして、引用発明と一致するとしたが、
仮に、かかる要件B・要件Cの前半が「ユーザーの指示入力」の存在を要件とするものといえ、このことが相違点となり得たとしても、
読み上げるメールを特定し選択するために、ユーザーの指示入力を受け付けることはごく普通のことにすぎないことから、かかる相違点の克服も当業者が容易になし得たことであるといえ、上記判断の結論が左右されることはない。

[6]まとめ(査定の検討(当審の判断))
本願発明は、刊行物1に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【第5】むすび
以上、本願の請求項7に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-13 
結審通知日 2013-09-17 
審決日 2013-09-30 
出願番号 特願2008-113202(P2008-113202)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G10L)
P 1 8・ 575- Z (G10L)
P 1 8・ 121- Z (G10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 祐希菊地 陽一  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 関谷 隆一
石丸 昌平
発明の名称 音声合成方法、音声合成プログラムおよび携帯情報端末  
代理人 特許業務法人信友国際特許事務所  

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