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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04M |
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管理番号 | 1281781 |
審判番号 | 不服2013-6352 |
総通号数 | 169 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-04-08 |
確定日 | 2013-12-03 |
事件の表示 | 特願2008-278896「通信端末」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月13日出願公開、特開2010-109620、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年10月29日の出願であって、平成24年7月30日付けで拒絶理由が通知され、同年10月9日付けで手続補正がされ、同年12月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年4月8日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1にかかる発明は、平成24年10月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 移動体通信網に接続されている基地局と移動体無線通信により通信を行う第1通信部と、 他端末と近距離無線通信により通信を行う第2通信部と、 再生可能なデータを再生し、自端末で再生中の前記データを前記第2通信部により前記他端末に配信し、当該他端末と前記データを同期再生するように制御している際に、前記第1通信部への着呼に応じた通話を行う場合、自端末における前記データの同期再生を停止すると共に、該データの同期再生の停止に依存することなく、前記第2通信部により前記他端末への前記データの配信を継続するように制御する制御部と、 を備える通信端末。」 (以下、本願の請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 第3 原査定の理由の概要 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・備考: 引用文献1には、携帯端末であって、再生装置に赤外線でデータを転送し、該再生装置で再生させている状態で、該携帯端末に着信があり、通話状態になっても、データ転送を継続することが記載されている(特に、【0008】、【0152】-【0163】、【図66】、【0199】-【0209】、【図84】、【図85】参照。)。 なお、引用文献2(特に、【0041】-【0050】、【図4】参照。)には、親機が音楽データを再生しながら該音楽データを子機に配信し、子機はこれを再生すること、引用文献3(特に、【0012】-【0049】、【図1】、【図6】、【図8】、【図9】-【図12】参照。)及び引用文献4(特に、【請求項9】、【0013】、【0020】、【0022】参照。)には、再生中に通話状態になると、再生を中断し、通話終了後に再開することが記載されている。 ------------------------------- 引用文献等一覧 引用文献1:特開2007-251428号公報 引用文献2:特開2008-236495号公報 引用文献3:特開2002-77458号公報 引用文献4:特開2006-135841号公報 第4 当審の判断 1.引用文献の記載事項 (1)引用文献1には、「データ転送機能を備えた携帯端末装置」に関し、図面とともに以下の記載がある。 イ.「【0001】 本発明は、通話機能とデータ転送機能を備えた携帯端末装置であって、データ転送中に電話着信があった場合にデータ転送を一時中断することを特徴とする携帯端末装置に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、携帯電話等の携帯端末装置においては、通話のみならず赤外線等により画像データや音楽データ等をデジタルテレビやビデオレコーダ等の外部機器に転送して再生させたり、外部機器から画像データ等をダウンロードして携帯端末装置にて再生等することが可能となっている。しかしながらデータを送受信中に電話の着信があった場合、着信を優先して処理するためにデータの送受信を中断したり、中断したデータの送受信を初めからやり直さなければならない等の問題が生じていた。」 ロ.「(実施形態19) 【0152】 (実施形態19:概要)実施形態19は、通話が開始等された場合にデータの転送を一時中断させずに継続させ、データ転送を継続させる場合に、データ転送先でのデータ処理を制御する携帯端末装置について説明する。」 上記引用文献1の記載及び図面、並びにこの分野における技術常識を考慮すると、 上記イ.には、引用文献1は、「通話機能とデータ転送機能を備えた携帯端末装置であって、データ転送中に電話着信があった場合にデータ転送を一時中断することを特徴とする携帯端末装置」に関するものであることが示されている。 そして、「データ転送機能」とは、「赤外線等により画像データや音楽データ等をデジタルテレビやビデオレコーダ等の外部機器に転送して再生させる」機能であるといえる。 また、上記ロ.には、「携帯端末装置」で「通話が開始等された場合」にも「データの転送を一時中断させずに継続させる」ことが記載されている。 したがって、引用文献1には、「通話機能と赤外線等により画像データや音楽データ等を外部機器に転送して再生させるデータ転送機能とを備えた携帯端末装置であって、通話が開始等された場合にデータの転送を一時中断させずに継続させる携帯端末装置。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。 (2)引用文献2には、「電話システム」に関し、図面とともに以下の記載がある。 イ.「【0005】 そこで、本発明は、デジタル音楽信号を送受信するための無線機器を別途設けることなく、親機(電話機)から子機(携帯機器)への音楽データの送信をスムーズに行うことができる電話システムを提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 前記課題を解決する本発明は、携帯機器と、携帯機器を子機として登録可能な電話機と、を備える電話システムであって、前記電話機は、登録した携帯機器に対して、定期的にビーコンを送信する送信手段と、前記送信手段により送信するビーコンに、音楽データを付加する付加手段と、を備え、前記携帯機器は、前記ビーコンから取得した前記音楽データを再生する再生手段を備えることを特徴とする。 【0007】 ここで、「ビーコン」とは、電話機と携帯機器とを同期させるために電話機から一定間隔で送信するパケットのことをいう。 【0008】 本発明によれば、電話機から携帯機器に対して定期的に送信されるビーコンに、音楽データを付加するので、デジタル音楽信号を送受信するための無線機器を別途設けることなく、音楽データの送信がスムーズとなる。」 ロ.「【0046】 ステップS7の後は、親機1aのCPU11は、選択した音楽データを、音声LSI17を介してスピーカ28で再生するとともに、選択した音楽データをビーコンに付加し、そのビーコンを配信先の子機に対して送信する。ここで、選択した音楽データのデータ量が大きい場合には、親機1aのCPU11は、音楽データをビーコンに付加する際、複数の送信スロットTS1?TS4に順次割り当てる。これにより、親機1aと配信先の子機とで所定の音楽が良好に再生されることとなる(S8)。」 上記引用文献2の記載及び図面、並びにこの分野における技術常識を考慮すると、 上記イ.には、引用文献2が「親機(電話機)から子機(携帯機器)への音楽データの送信」を行う「携帯機器を子機として登録可能な親機を備える電話システム」に関するものであることが示されている。 そして、「親機」は「親機と子機とを同期させるために親機から一定間隔で送信するパケットであるビーコンに音楽データを付加する手段を備える」ものといえる。 また、上記ロ.には、「親機は選択した音楽データを再生しながら該音楽データビーコンに付加し、そのビーコンを配信先の子機に対して送信し、親機と子機とで所定の音楽を再生する」ことが記載されている。 したがって、引用文献2には、「親機(電話機)から子機(携帯機器)への音楽データの送信を行う、携帯機器を子機として登録可能な親機を備える電話システムであって、 親機は、親機と子機とを同期させるために親機から一定間隔で送信するパケットであるビーコンに音楽データを付加する手段を備え、 親機は選択した音楽データを再生しながら該音楽データビーコンに付加し、そのビーコンを配信先の子機に対して送信し、親機と子機とで所定の音楽を再生する電話システム。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。 2.対比 本願発明と引用発明1とを対比すると、 「移動体通信網に接続されている基地局と移動体無線通信により通信を行う第1通信部と、 他端末と近距離無線通信により通信を行う第2通信部と、 自端末のデータを前記第2通信部により前記他端末に配信し、前記第1通信部への着呼に応じた通話を行う場合、前記第2通信部により前記他端末への前記データの配信を継続するように制御する制御部と、 を備える通信端末。」の点で一致している。 他方、本願発明と引用発明1は、 本願発明の「通信端末」は、「再生可能なデータを再生し、自端末で再生中の前記データを前記第2通信部により前記他端末に配信し、当該他端末と前記データを同期再生するように制御している際に、前記第1通信部への着呼に応じた通話を行う場合、自端末における前記データの同期再生を停止すると共に、該データの同期再生の停止に依存することなく、前記第2通信部により前記他端末への前記データの配信を継続するように制御する制御部」を有するものであるのに対し、引用発明1の「携帯端末装置」は、「データの再生」を行うものではなく、自端末で再生中のデータを他端末に配信することによる「同期再生」の制御、また、第1通信部への着呼に応じた通話を行う場合の「同期再生を停止する」制御について示されていない点において相違する。 上記相違点について検討する。 引用発明2における、親機と子機とを同期させる「同期」は、「電話システム」としての動作に関する同期であって、本願発明における、データ再生に関する「同期再生」は、例えば、明細書の【0004】に示されるように、共有コンテンツの再生順序や再生タイミングを各通信端末間で調整するものであるから、技術的に異なる概念であり、引用発明2において、「音楽データ」が、「親機と子機とを同期させるために親機から一定間隔で送信するパケットであるビーコン」に付加されたものであるとしても、データ再生に関する「同期再生」がなされているか否かは不明なものである。 加えて、引用発明2の「電話システム」は、親機と子機とからなるものであり、親機への着信時には子機も着信状態となることが明らかなものであるから、引用発明2における「データ」の「配信」に関し、「第1通信部への着呼に応じた通話を行う場合」、「第2通信部により前記他端末への前記データの配信を継続するように制御する」という、引用発明1の技術的事項を直ちに結びつけることも困難である。 したがって、本願発明は、引用発明1に、引用発明2を適用することにより容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2013-11-20 |
出願番号 | 特願2008-278896(P2008-278896) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04M)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 梶尾 誠哉 |
特許庁審判長 |
竹井 文雄 |
特許庁審判官 |
山中 実 矢島 伸一 |
発明の名称 | 通信端末 |
代理人 | 大倉 昭人 |
代理人 | 杉村 憲司 |