• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1281848
審判番号 不服2011-25677  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-29 
確定日 2013-11-21 
事件の表示 特願2001-98287「皮膚機能改善剤」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月9日出願公開、特開2002-293739〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年3月30日の出願であって、平成23年4月13日付けで拒絶理由が通知され、同年6月17日に手続補正がなされるとともに同日受付けで意見書が提出されたが、同年8月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成24年1月18日受付けで審判請求書の請求の理由の手続補正書(方式)が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年6月17日受付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】コウジ酸を有効成分とすることを特徴とする皮膚機能正常化用外用剤。」

第3 引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本出願前である平成10年8月11日に頒布された「特開平10-212225号公報」(原査定の引用文献4。以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、以下、下線は当審で付したものである。

(1a)「【請求項1】コウジ酸および/またはその誘導体を有効成分とすることを特徴とする抗シワ剤。」

(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、皮膚外用の抗シワ剤に関するものであり、より詳しくは、コウジ酸および/またはその誘導体を有効成分とし、角層の乾燥性変化に由来するシワを防いでくすみをなくす抗シワ剤に関する。」

(1c)「【0004】
【本発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、角層の乾燥性変化に由来するシワを防いでくすみを無くす安全性の高い抗シワ剤を提供することにある。」

(1d)「【0005】
【課題を解決するための手段】くすみはその原因も現象も多種多様であり、明確な定義づけが困難であるが、(1)皮膚表面の毛細血管の萎縮や血行不良、(2)毛細血管中のヘモグロビンの減少、(3)角質層の重層化・肥厚化、(4)つやの低下を伴う角質層の低下、(5)皮膚のハリ減少に伴う形態的要素の劣化などがくすみの発生に関係すると考えられている。本発明者らは、特にこれらの要因のうち、(3)ないし(5)の視点を重視した。すなわち、季節、環境、体調などの影響で皮膚表面が乾燥状態となる場合「つや感」が減少し、くすみを感じると考えられる。また、角質層が乱れ、ハリが減少したり軽度のシワが生じてくると、皮膚表面には様々な凹凸ができ、陰影を有するようになり結果として皮膚の明るさが減少するものと考えられる。
【0006】そこで、本発明者らは、真皮の弾力性の低下に由来するシワではなく、皮膚乾燥によって生じる表皮性変化、いわゆる小ジワに対する改善作用を有し、くすみを無くす安全性の高い物質を探索すべく鋭意研究を重ねた結果、コウジ酸および/またはその誘導体が当該目的を達成する素材であるという新たな知見を得て、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明によれば、コウジ酸および/またはその誘導体を有効成分とする抗シワ剤が提供される。」

(1e)「【0009】本発明の抗シワ剤は、化粧料、医薬部外品として許容し得るクリームや乳液などの外用の形態で患部に直接塗布するなどして使用されるが、この場合のコウジ酸および/またはその誘導体の配合量は、製剤全体に対して、0.001ないし10重量%、好ましくは0.1ないし5重量%の範囲である。
【0010】本発明の抗シワ剤の剤型は、外用施用上適するものであれば特に制限はなく、前述したように、クリームや乳液などの他にローション、エッセンス、ゲル剤、ペースト剤、軟膏及びチンキ剤等の塗布剤型、エアゾール剤、スプレー剤等の噴霧剤型、パップ剤、プラスター剤等の貼付剤型、バスソルト等の浴用剤型など公知の形態で幅広く使用に供されるものである。」

(1f)「【0012】
【実施例】次に実験および処方例を開示して本発明を説明するが、これらの開示は本発明の好適な態様を示すものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0013】<試験例1>レプリカ法による皮膚表面の観察測定
a)試験方法
紫外線照射によりレプリカスコアの1の評価になった肌(皮溝・皮丘の消失があり、広範囲の各層の剥離が認められるもの)を有する50名の被験者をランダムに2群に振り分け、第1群には処方例1で調製したクリームを、第2群には基剤(処方例1のクリームから有効成分コウジ酸を除いたもの)を0.3±0.1g、1日2回、12時間おきに塗布し、塗布開始時と塗布後1週間の皮膚の表面状態をレプリカに採り、その結果を実体顕微鏡(20倍)にて観察した。レプリカは、熊谷らの方法〔SCCJ.Vol 19,No.1(1985)P.9ないし19〕に準拠して皮膚表面に速乾性のシリコン系合成ゴムを使用してネガレプリカを採り、これにポリサルファイド系合成ゴムを充填してポジレプリカを採った。また、被験者の肌診断を目視で行い肌のくすみ度合を併せて評価した。
【0014】b)試験結果
クリーム使用前の皮膚表面のレプリカの判定に対し、本発明のクリームを塗布した皮膚は著明な皮膚の表面状態の改善が認められた。結果を表1に示す。
【0015】

【0016】<皮膚表面状態の評価分類>
評価1:皮溝・皮丘の消失、広範囲の角層の剥離が認められる。皮膚表面の観察結果、くすみが激しい。
評価2:皮溝・皮丘が不明瞭であり、角層の剥離が認められる。皮膚表面の観察結果、かなりくすみがある。
評価3:皮溝・皮丘は認めるが、平坦であり一方向に流れている。皮膚表面の観察結果、ややくすんでいる。
評価4:皮溝・皮丘が明瞭である。皮膚表面の観察結果、ほとんどくすみが感じられない。
評価5:皮溝・皮丘が鮮明で網目状に整っている。皮膚表面の観察結果、くすみがなく透明感が感じられる。
上記結果から明らかなとおり、コウジ酸は優れたくすみ防止効果を有することが立証された。
【0017】<試験例2>ハーフフェイス法による小ジワ改善効果
a)試験方法
本発明のエッセンス(処方例9)を、30名の女性(33?55才)に朝晩の1日2回、顔面に連続塗布し、3カ月後に小ジワの改善の程度を調べた。顔面の塗布は、ハーフフェイス法で左右に行い、一方には本発明のエッセンスを、他方側にはコントロールとしてコウジ酸を含まないもの(基剤のみ)を塗布し評価した。
【0018】b)試験結果
エッセンス使用前に対する小ジワの改善度を判定した結果、本発明のエッセンスに明らかな小ジワ改善効果が認められた。また、連続使用による皮膚異常は何ら認められなかった。結果を表2に示す。下記結果から明らかなとおり、コウジ酸は優れた小ジワ改善効果を有することが立証された。
【0019】



(1g)「【0020】
【処方例】以下に本発明の抗シワ剤の処方例を示す。処方例中、「適量」とは、処方全体で100重量%になる割合を意味する。
<処方例1>クリーム(1) (重量%)
1.コウジ酸 1.00
2.ヒアルロン酸ナトリウム水溶液 2.00
3.ポリエチレングリコール400 3.00
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(25E.O.) 5.00
5.ステアリン酸 5.00
6.アボカド油 1.00
7.アルモンド油 10.00
8.dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液 5.00
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
10.エデト酸二ナトリウム 0.01
11.精製水 適 量」

(1h)「【0028】
<処方例9>エッセンス (重量%)
1.コウジ酸 1.00
2.ウロカニン酸 0.50
3.イソプロパノール 0.50
4.ベンジルアルコール 0.05
5.ケフィラン水溶液 1.50
6.ヤシ油脂肪族モノエタノールアミド 2.00
7.ステアリン酸 0.50
8.リノレン酸 0.50
9.アボカド油 2.00
10.タートル油 3.00
11.肝臓抽出液 0.04
12.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
13.1%カルボキシビニルポリマー水溶液 5.00
14.胎盤抽出液 0.14
15.エデト酸二ナトリウム 0.01
16.精製水 適 量
上記の処方例1ないし9は、いずれも表に示したのと同様に、本発明の目的において満足する効果を有する製剤であることが確認された。」

(1i)「【0029】
【発明の効果】本発明によれば、コウジ酸および/またはその誘導体を含有した、抗シワ剤が提供され、この抗シワ剤は、角層の乾燥性変化に由来する小ジワを防ぐことによって持続的に肌の透明度を保持することができる安全性に優れた化粧料である。」

第4 引用例に記載された発明
引用例1の上記(1a)によれば、引用例1には次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。

「コウジ酸および/またはその誘導体を有効成分とする抗シワ剤。」

第5 対比
本願発明と引用例1発明を対比する。

1 引用例1発明の「コウジ酸および/またはその誘導体」の選択肢の一つである「コウジ酸」は、本願発明の「コウジ酸」と一致する。

2 引用例1には、引用例1発明の「抗シワ剤」について、上記(1b)に「本発明は、皮膚外用の抗シワ剤に関する」と記載されていることから、本願発明の「皮膚機能正常化用外用剤」とは、「皮膚用外用剤」である点で共通する。

3 以上のことから、両発明は、次の一致点及び一応の相違点を有する。

一致点:
「コウジ酸を有効成分とする皮膚用外用剤。」

相違点:
「皮膚用外用剤」が、本願発明では、「皮膚機能正常化用外用剤」であるのに対し、引用例1発明では、「抗シワ剤」である点

第6 判断
そこで、上記一応の相違点について検討する。

1 引用例1には、引用例1発明の「抗シワ剤」に関して、角層の乾燥性変化に由来するシワを防いでくすみをなくすためのものであることが記載されている(上記(1b)、(1c)参照)。
そして、季節、環境、体調などの影響で皮膚表面が乾燥状態となる場合「つや感」が減少し、くすみを感じると考えられること、皮膚乾燥によって生じる表皮性変化、いわゆる小ジワに対する改善作用を有し、くすみを無くす安全性の高い物質としてコウジ酸が有効であること(上記(1d)参照)、角層の乾燥性変化に由来する小ジワを防ぐことによって持続的に肌の透明度を保持することができることが記載されている(上記(1i)参照)。
実施例においては、「<試験例1>レプリカ法による皮膚表面の観察測定」として、処方例1のクリーム(処方は、上記(1g)参照)を、紫外線照射によりレプリカスコアの1の評価になった肌(皮溝・皮丘の消失があり、広範囲の各層の剥離が認められるもの)を有する被験者に、1日2回、12時間おきに塗布し、塗布開始時と塗布後1週間の皮膚の表面状態について、レプリカによる判定と目視での評価を行ったところ、皮溝・皮丘が鮮明で網目状に整っており、皮膚表面の観察結果、くすみがなく透明感が感じられるという、顕著な皮膚の表面状態の改善が認められたことが示されている(上記(1f)参照)。
また、「<試験例2>ハーフフェイス法による小ジワ改善効果」では、処方例9のエッセンス(処方は、上記(1h)参照)を、朝晩の1日2回、顔面に連続塗布し、3カ月後の小ジワの改善の程度を調べたところ、明らかな小ジワ改善効果が認められたことが記載されている(上記(1f)参照)。

2 ここで、下記文献Aにも示されるとおり、皮溝・皮丘が鮮明で網目状に整っている状態は肌のきめが細かい状態であり、また、皮膚表面の角層の水分量は、肌のしなやかさ、なめらかさ、柔軟性、透明感など、肌のきれいさに関係することが知られており、肌が健康的できれいな状態であるために適切な水分量の存在が必要、すなわち、適度に保湿されている必要があることが知られている。
そうしてみると、引用例1の上記1で示した記載及び実施例の結果からみて、引用例1発明の「抗シワ剤」は、季節、環境、体調などの影響による皮膚表面の乾燥状態を改善し、きめが細かく保湿性のよい肌とし、それを持続的に保持できるものであるといえる。

文献A:鈴木正人監修、機能性化粧品III、株式会社シーエムシー、2000年1月1日、213頁
(A1)「角層の水分量は肌の性状と密接な関係がある。肌が健康的できれいな状態であるためには少なくとも角層に適切な水分量が存在してなくてはならない。角層の水分は化粧品学的に肌のしなやかさ,なめらかさ,柔軟性あるいは透明感等,肌がきれいな状態である条件に大きな影響を与えている。」(213頁5?7行)
(A2)「肌表面のキメは皮溝・皮丘からなる紋様を呈しており,あらゆる方向からの伸縮に対応できる形状となっている。健康的できれいな肌におけるキメの形状は非常に細かく,皮溝・皮丘が明瞭で網目状を呈する。一方,キメの皮溝・皮丘の深さ,間隔,数あるいは方向性は肌状態,季節間あるいは加齢に伴って変化することが知られている。」(213頁16?19行)

3 一方、本願発明の「皮膚機能正常化用外用剤」について、本願の明細書段落【0001】には、「コウジ酸の有する潜在的作用によって生体内バランスを調整し、皮膚本来の機能を維持・正常化する外用の皮膚機能改善剤」と記載されている。
さらに、明細書段落【0014】には、「特に皮膚科学の側面からホメオスタシスの問題に取組み、皮膚機能の正常化を促す素材を探索し続け鋭意研究を重ねてきた。その結果、トータルケア用の化粧料素材としてコウジ酸が最適であるという新たな知見を得て、本発明を完成させたものである。」こと、同【0019】には、「本発明において、前記コウジ酸がどのような作用機序で本発明の目的である皮膚機能正常化をなし得るのかについて、その詳細は不明であるが、ホメオスタシス維持に深く関係する免疫系への関与、特にT細胞等の適度な増殖・分化や活性化によるものと考えている。」のように説明されている。

4 ところで、本願明細書の実施例では、段落【0028】?【0032】に記載の「<試験例1>レプリカ法による皮膚表面の観察測定」で、レプリカスコアの1の評価になった肌(ハリ、ツヤの消失と広範囲の肌荒れが認められ、キメも荒く、乾燥状態が激しい肌)を有する被験者に処方例1で調製したクリームを、1日2回、12時間おきに4週間塗布し、塗布開始時と塗布終了後2週間目の皮膚の表面状態をレプリカによる判定と、目視による評価を行ったところ、肌にハリ、ツヤが十分あり、柔軟性が感じら、皮膚表面の観察結果、肌のキメが整っており、十分な潤いが感じられ健康的であるという結果が得られたことが示されている。
さらに、段落【0033】?【0037】の「<試験例2>ハーフフェイス法による保湿性改善効果」で、本発明のエッセンス(処方例9)を、乾燥肌タイプの女性に朝晩の1日2回、顔面に連続塗布し、2カ月後に保湿性の改善の程度を伝導度で調べたところ、明らかな皮膚の保湿能改善効果が認められたことが示されている。

5 これら、本願明細書の記載からすると、本願発明の「皮膚機能正常化」について、具体的に確認されているのは、皮膚表面の乾燥状態を改善し、肌のきめが整っており、保湿性が高い状態に正常化することだけである。

6 そうしてみると、引用例1発明の「抗シワ剤」が奏する、季節、環境、体調などの影響による皮膚表面の乾燥状態を改善し、きめが細かく保湿性のよい肌とし、それを持続的に保持できるという効果は、本願発明の「皮膚機能正常化用外用剤」が奏する効果と実質的に相違するものでない。
しかも、引用例1記載の<試験例1>で上記効果が確認されている処方例1のクリームは、本願明細書記載の<試験例1>で効果を確認している処方例1のクリームと同一の処方であり、引用例1記載の<試験例2>の処方例9のエッセンスは、本願明細書記載の<試験例2>の処方例9のエッセンスとほぼ同じ処方である。その他にも引用例1記載の処方例2、4、6は、それぞれ本願明細書記載の処方例2、4、6のものと同一であるし、引用例1記載の処方例3、5は、それぞれ本願明細書記載の処方例3、5とほぼ同じ処方である。

7 ここで、上記3のとおり、本願明細書には、本願発明の「皮膚機能正常化」は、ホメオスタシス維持に深く関係する免疫系への関与、特にT細胞等の適度な増殖・分化や活性化によるものと推論されているのに対し、引用例1には、そのような考察はなされていない。
しかしながら、本願明細書には、既に述べたとおり、皮膚表面の状態と保湿性が確認されているのみであり、免疫系への関与などを調べた結果も、両者の関連性についても示されておらず、皮膚機能正常化が上記免疫系への関与等によるものと客観的に理解できるものではない。
したがって、本願発明の「皮膚機能正常化用外用剤」と引用例1発明の「抗シワ剤」とは、単なる文言上でのみ相違するものであって、物(処方)自体及び皮膚上で奏される作用効果において実質的に相違するものでないと言わざるを得ない。

8 仮に、本願発明の作用効果が免疫系への関与によるものであったとしても、本願発明は、「皮膚機能正常化用外用剤」に係るものであって、当該外用剤におけるコウジ酸の新たな作用機序を見出したに過ぎず、それを発見したことで新たな用途が提供されたというものでもないから、引用例1発明と相違するものでない。
よって、相違点1は実質的な相違点とは認められない。

9 さらに進んで、引用例1発明の「抗シワ剤」が、本願発明とは「単なる文言上でのみ相違するもの」ではないとして検討しても、引用例1に記載されているように、皮膚表面の乾燥状態を改善し、キメを整え、くすみがなく、小ジワが改善された状態にし、それを持続的に保持することができたことについて、皮膚本来の健康的できれいな状態に回復したものと定義づけ、「皮膚機能正常化」と表現することは、当業者が容易に想到し得たことであるということができる。
そして、既に述べたとおり、本願発明の効果は、引用例1に記載の効果と変わるところはないし、全く同じ処方の皮膚用外用剤を同じような部位に同じような条件で使用することを開示するものであるから、当然に同等の効果を奏する程度のものである。

10 審判請求人の主張について
審判請求人は、平成23年6月17日受付け意見書において、引用例1に記載のものは予防を前提にしたものであり、皮膚本来の調節機能を正常化するためのものではない旨、及び、平成24年1月18日受付けの審判請求書の手続補正書(方式)において、引用例1も記載のものは、対症療法的なものであるのに対し、本願発明はトータルケア的なものであって、ホメオスタシスの問題に立脚して完成するに至った全く新しいカテゴリーに基づく技術的思想であり、使用部位が特定されず、長期に渡り継続的な投与を前提としているものであって、寧ろ引用例1に記載のものとは使用態様が異なる旨主張している。
しかしながら、既に検討したとおり、本願明細書には、審判請求人が主張するようなトータルケア的な効果やホメオスタシスの問題を改善できることについて、それがどのような状態を意味するかが明確には示されておらず、免疫系への関与が推論されているに留まり、T細胞等の増殖・分化や活性化などについてした実験結果が示されているものでもない。
また、引用例1に記載のものも、上記(1e)に示されるとおり、使用部位を特定するものではないし、上記(1f)の実施例で確認されているとおり、予防というより寧ろ改善を目的として、例えば三カ月にわたり使用を続けるようなものである。
よって、審判請求人の上記主張は採用し得ない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-19 
結審通知日 2013-09-24 
審決日 2013-10-07 
出願番号 特願2001-98287(P2001-98287)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大島 彰公  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 関 美祝
田村 明照
発明の名称 皮膚機能改善剤  
代理人 久保山 隆  
代理人 加藤 久  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ