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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L |
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管理番号 | 1281868 |
審判番号 | 不服2013-1531 |
総通号数 | 169 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-01-28 |
確定日 | 2013-11-21 |
事件の表示 | 特願2008-329830「硬化性組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月 8日出願公開、特開2010-150381〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成20年12月25日を出願日とする特許出願であって、平成24年5月24日付けで拒絶理由が通知され、同年7月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月22日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成25年1月28日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2.本願発明について 1.本願の請求項1?5に係る発明は、平成24年7月27日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものであると認める。また、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「下式(1)で表される反応性ケイ素基を1分子中に平均して1.2個以上4個以下有し、数平均分子量が10000以上、30000以下である重合体(A)100質量部、および 下式(2)で表される反応性ケイ素基を1分子中に平均して0.8個以上1.2個未満有し、数平均分子量が5500以上、12000以下であり、かつ前記重合体(A)よりも数平均分子量が小さい重合体(B)1?200質量部を含有することを特徴とする硬化性組成物。 -Si(OR^(1))_(3) …(1) (式中、R^(1)は炭素数1?6の1価の有機基を表わす。) -Si(R^(2))(OR^(3))_(2) …(2) (式中、R^(2)は炭素数1?18の1価の脂肪族炭化水素基を表わし、R^(3)は炭素数1?6の1価の有機基を表わす。)」 2.原査定の拒絶理由の概要 原査定の拒絶の理由とされた、平成24年5月24日付け拒絶理由通知書に記載した理由2は、この出願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に外国において頒布された刊行物である国際公開第2005/073322号に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.当審の判断 (1)刊行物に記載された事項 本願の出願日前に頒布された刊行物である国際公開2005/073322号(以下、「刊行物1」、という。)には、以下の記載がある。なお、下線を当審で付した。 (あ) 「請求の範囲 [1] 下記一般式(1)においてaが3である反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)と、下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基を一分子当たり平均0.5個?1.5個含有する有機重合体(B)からなる硬化性組成物。 -Si(R^(1)_(3-a))X_(a) (1) (式中、R^(1)は、炭素数1?20のアルキル基、炭素数6?20のアリール基、炭素数7?20のアラルキル基または(R’)_(3)SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R^(1)が2個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR’は炭素数1?20の1価の炭化水素基であり、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するときは、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは1、2、または3を示す。) [2] 有機重合体(B)の反応性ケイ素基が、一般式(1)においてaが2である反応性ケイ素基である請求項1記載の硬化性組成物。 [3] 有機重合体(B)の反応性ケイ素基が、一般式(1)においてaが3である反応性ケイ素基である請求項1記載の硬化性組成物。 [4] 有機重合体(B)が、反応性基を有する有機重合体1モルに対して、その反応性基と反応可能な官能基と一般式(1)で表される反応性ケイ素基とを併有する化合物0.5モル以上1.5モル以下を反応して得られる重合体である請求項1?3のいずれかに記載の硬化性組成物。 [5] 有機重合体(A)および(B)の主鎖骨格がともにオキシアルキレン系重合体である請求項1?4のいずれかに記載の硬化性組成物。 [6] 有機重合体(B)が、実質的に1個の一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有する請求項1?5のいずれかに記載の硬化性組成物。 [7] 有機重合体(B)の分子量が8000以下である請求項1?6のいずれかに記載の硬化性組成物。 [8] 有機重合体(B)が分子中にウレタン結合、ウレア結合を有しない請求項1?7のいずれかに記載の硬化性組成物。 [9] 有機重合体(A)が分子中にウレタン結合、ウレア結合を有しない請求項1?8のいずれかに記載の硬化性組成物。 [10] 有機重合体(B)の分子量が、有機重合体(A)の分子量よりも1000以上小さい請求項1?9のいずれかに記載の硬化性組成物。」 (い) 「[0011] 本発明において有機重合体(A)に必須の反応性ケイ素基は、下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基のうち、a=3で表される基である。 -Si(R^(1)_(3-a))X_(a) (1) (式中、R^(1)は、炭素数1?20のアルキル基、炭素数6?20のアリール基、炭素数7?20のアラルキル基または(R’)_(3)SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R^(1)が2個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR’は炭素数1?20の1価の炭化水素基であり、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するときは、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは1、2、または3を示す。) 上記Xで示される加水分解性基は特に限定されず、従来公知の加水分解性基であれば好適に使用できる。具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましいが、加水分解性が穏やかで取り扱い易いという点から、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基が特に好ましい。 [0012] 反応性ケイ素基としては、特に制限されないが、加水分解活性の高い点と加水分解性が穏やかで取り扱い易い点から、トリアルコキシ基が好ましく、具体的な官能基としてはトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロペニルオキシシリル基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。具体的には、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基が好ましい。トリアルコキシシランを使用した場合は、有機重合体(A)の硬化性組成物の復元性、耐久性、耐クリープ性の改善効果が特に大きい。 [0013] 有機重合体(A)の反応性ケイ素基は1分子あたり平均して少なくとも1個存在するのが好ましく、より好ましくは1.1?5個、さらに好ましくは1.2?5個存在する。有機重合体(A)1分子中に含まれる反応性ケイ素基の数が1個未満になると、硬化性が不十分になり、良好なゴム弾性が出難く、その硬化物の復元性、耐久性、耐クリープ性も発現しにくくなる。反応性ケイ素基は有機重合体(A)分子鎖の末端に存在してもよく、内部に存在してもよい。反応性ケイ素基が分子鎖の末端に存在すると、最終的に形成される硬化物に含まれる有機重合体(A)成分の有効網目鎖量が多くなるため、高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなる。」(第3頁19行-第4頁19行) (う) 「[0030] 本発明の反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)および有機重合体(B)の主鎖骨格には特に限定はなく、例えばその主鎖骨格は一般に知られているオキシアルキレン系重合体、ビニル系重合体、飽和炭化水素系重合体、ポリエステル系重合体、ポリウレタン等の有機重合体を使用することができる。 [0031] 本発明の有機重合体(A)の主鎖骨格は、室温で液状で低温特性が良好で、粘度が低く、かつ良好な相溶性を有することから、オキシアルキレン系重合体であることが好ましい。」(第8頁11行-17行) (え) 「[0034] オキシアルキレン系重合体の分子量には特に制限はないが、GPC測定におけるポリスチレン換算での数平均分子量が500?100,000であることが好ましい。更には取り扱いの容易さ等から1,000?70,000であることが好ましい。数平均分子量が500未満であると硬化物が脆くなるため好ましくなく、100,000を越えると重合体の粘度が高くなりすぎるため好ましくない。」(第8頁末行-第9頁4行) (お) 「反応性ケイ素基含有有機重合体(B)の反応性ケイ素基は特に限定されるものではなく、前述の一般式(1)で示される反応性ケイ素基有する有機重合体(A)における反応性ケイ素基と同様なものが問題なく使用できる。なかでも加水分解活性の高い点と加水分解性が穏やかで取り扱い易い点からアルコキシシリル基が好ましく、具体的にはジメチルモノメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジイソプロペニルオキシシリル基およびトリイソプロペニルオキシシリル基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。 [0083] 一般式(1)でa=2である場合は、有機重合体(A)単独の硬化物の脆さを改善する効果が高く、すなわち硬化物のモジュラスを適度に低下させ、良好な伸びを確保することができ、また、貯蔵安定性も確保しやすいため好ましい。具体的には、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、メチルジイソプロペニルオキシシリル基からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、なかでも加水分解活性の高い点からメチルジメトキシシリル基が好ましい。」(第19頁15行-末行) (か) 「[0097] (B)成分の分子量には制限はないが、好ましくは8,000以下、さらに好ましくは5,000以下が(A)成分へ混合した後の作業性等の点から好ましい。分子量が8,000以上の場合は、有機重合体(A)の低粘度化への効果が少なくなる。」(第22頁16行-18行) (き) 「[0099] 本発明の反応性ケイ素基含有有機重合体(B)の使用量については特に限定はないが、反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対し、0.1重量部から200重量部の範囲で使用することが好ましく、1重量部から100重量部の範囲がより好ましい。使用量が0.1重量部より少ない場合は、本発明の効果が得られない場合があり、200重量部より多い場合は有機重合体(A)が有する良好な復元性、耐久性、耐クリープ性を損なうことがある。」(第22頁21行-26行) (く) 「[0142] 以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、水酸基含有オキシアルキレン重合体の場合、数平均分子量を以下のように求める。末端構造を水酸基と不飽和基であると仮定し、水酸基量をJIS K1557に準拠した方法で、不飽和基量をJISK0070に準拠した方法により求め、イニシエータの末端数を考慮して求めた分子量を数平均分子量と定義する。分子量分布(Mw/Mn)はGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)分析装置により溶媒としてテトラヒドロフランを用いて求めた。」(第37頁15行-21行) (け) 「[0169][表1] 」(第44頁末行-第45頁末行) (こ) 「[0171][表2] 」(第46頁末行-第47頁末行) (2)引用発明 刊行物1には、摘示(あ)の請求項1、2、5?7及び10より、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「下記一般式(1)においてaが3である反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)と、下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基を一分子当たり平均0.5個?1.5個含有する有機重合体(B)からなる硬化性組成物であって、 有機重合体(B)の反応性ケイ素基が、一般式(1)においてaが2である反応性ケイ素基であり、実質的に1個の一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有し、 有機重合体(A)および(B)の主鎖骨格がともにオキシアルキレン系重合体であり、 有機重合体(B)の分子量が8000以下であり、有機重合体(A)の分子量よりも1000以上小さい硬化性組成物。 -Si(R^(1)_(3-a))X_(a) (1) (式中、R^(1)は、炭素数1?20のアルキル基、炭素数6?20のアリール基、炭素数7?20のアラルキル基または(R’)_(3)SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R^(1)が2個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR’は炭素数1?20の1価の炭化水素基であり、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するときは、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは1、2、または3を示す。)」 (3)対比・判断 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)」は、本願発明の「反応性ケイ素基を有する重合体(A)」に相当する。 引用発明の「実質的に1個の反応性ケイ素基を有し、有機重合体(B)の分子量が有機重合体(A)の分子量よりも1000以上小さい有機重合体(B)」は、本願発明の「反応性ケイ素基を1分子中に平均して0.8個以上1.2個未満有し、かつ前記重合体(A)よりも数平均分子量が小さい重合体(B)」に相当する。 重合体(B)について、引用発明の「分子量が8000以下であり」は、本願発明の「数平均分子量が5500以上、12000以下であり」と重複一致する。 そうすると、本願発明と引用発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「反応性ケイ素基を有する重合体(A)、および 反応性ケイ素基を1分子中に平均して0.8個以上1.2個未満有し、数平均分子量が5500以上、12000以下であり、かつ前記重合体(A)よりも数平均分子量が小さい重合体(B)を含有することを特徴とする硬化性組成物。」 <相違点1> 重合体(A)の反応性ケイ素基について、本願発明は、「下式(1)で表される反応性ケイ素基 -Si(OR^(1))_(3) …(1) (式中、R^(1)は炭素数1?6の1価の有機基を表わす。)」であるのに対し、引用発明は、「下記一般式(1)においてaが3である反応性ケイ素基 -Si(R^(1)_(3-a))X_(a) (1) (式中、R^(1)は、炭素数1?20のアルキル基、炭素数6?20のアリール基、炭素数7?20のアラルキル基または(R’)_(3)SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R^(1)が2個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR’は炭素数1?20の1価の炭化水素基であり、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するときは、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは1、2、または3を示す。)」である点。 <相違点2> 重合体(A)の1分子中の反応性ケイ素基の平均の数について、本願発明は、「1.2個以上4個以下」と特定されているのに対し、引用発明は、そのような特定を有さない点。 <相違点3> 重合体(A)の数平均分子量について、本願発明は、「10000以上、30000以下」と特定されているのに対し、引用発明は、そのような特定を有さない点。 <相違点4> 重合体(B)の反応性ケイ素基について、本願発明は、「下式(2)で表される反応性ケイ素基 -Si(R^(2))(OR^(3))_(2) …(2) (式中、R^(2)は炭素数1?18の1価の脂肪族炭化水素基を表わし、R^(3)は炭素数1?6の1価の有機基を表わす。)」であるのに対し、引用発明は、「下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基であって一般式(1)においてaが2である -Si(R^(1)_(3-a))X_(a) (1) (式中、R^(1)は、炭素数1?20のアルキル基、炭素数6?20のアリール基、炭素数7?20のアラルキル基または(R’)_(3)SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R^(1)が2個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR’は炭素数1?20の1価の炭化水素基であり、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するときは、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは1、2、または3を示す。)」である点。 <相違点5> 重合体(A)および(B)の使用割合について、本願発明は、「重合体(A)100質量部、および重合体(B)1?200質量部を含有する」と特定されているのに対し、引用発明は、そのような特定を有さない点。 相違点について検討する。 相違点1について 引用発明の有機重合体(A)の反応性ケイ素基について、刊行物1(摘示(い))には、反応性ケイ素基は、加水分解活性の高い点と加水分解性が穏やかで取り扱い易い点から、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基が好ましいことが記載されているところ、これらはいずれも本願発明の「下式(1)で表される反応性ケイ素基 -Si(OR^(1))_(3) …(1) (式中、R^(1)は炭素数1?6の1価の有機基を表わす。)」に相当する。 そうすると、本願発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)であれば、反応性ケイ素基を刊行物1の記載に基いて反応性ケイ素基として好ましいとされているトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基に限定することにより本願発明の「下式(1)で表される反応性ケイ素基 -Si(OR^(1))_(3) …(1) (式中、R^(1)は炭素数1?6の1価の有機基を表わす。)」を満足するものとする程度のことは容易になしうると認められる。 また、本願発明において反応性ケイ素基が「下式(1)で表される反応性ケイ素基 -Si(OR^(1))_(3) …(1) (式中、R^(1)は炭素数1?6の1価の有機基を表わす。)」であることにより当業者に予測できない格別顕著な効果が奏されているわけでもない。 相違点2について 引用発明の有機重合体(A)の反応性ケイ素基の一分子当たりの数について、刊行物1(摘示(い))には、好ましくは1.2?5個であることが記載されているところ、この数値範囲は、本願発明の「1.2個以上4個以下」と重複一致する。 そうすると、当業者であれば、反応性ケイ素基の一分子当たりの数を刊行物1の記載に基いて限定することにより本願発明の「1.2個以上4個以下」を満足するものとする程度のことは容易になしうると認められる。 また、本願発明において反応性ケイ素基の一分子当たりの数が「1.2個以上4個以下」に限定されていることにより当業者に予測できない格別顕著な効果が奏されているわけでもない。 相違点3について 引用発明の有機重合体(A)の分子量(数平均分子量)について、刊行物1(摘示(う)、(え))には、数平均分子量が1,000?70,000であることが好ましいことが記載されているところ、この数値範囲(1,000?70,000)は、本願発明の「10000以上、30000以下」と重複一致する。 そうすると、当業者であれば、有機重合体(A)の数平均分子量を刊行物1の記載に基いて限定することにより本願発明の「10000以上、30000以下」を満足するものとする程度のことは容易になしうると認められる。 また、本願発明において重合体(A)の数平均分子量が「10000以上、30000以下」に限定されていることにより当業者に予測できない格別顕著な効果が奏されているわけでもない。 相違点4について 引用発明の有機重合体(B)の反応性ケイ素基について、刊行物1(摘示(お))には、反応性ケイ素基は、加水分解活性の高い点と加水分解性が穏やかで取り扱い易い点から、メチルジメトキシシリル基が好ましいことが記載されているところ、メチルジメトキシシリル基は、本願発明の「下式(2)で表される反応性ケイ素基 -Si(R^(2))(OR^(3))_(2) …(2) (式中、R^(2)は炭素数1?18の1価の脂肪族炭化水素基を表わし、R^(3)は炭素数1?6の1価の有機基を表わす。)」に相当する。 そうすると、当業者であれば反応性ケイ素基を刊行物1の記載に基いて反応性ケイ素基として好ましいとされているメチルジメトキシシリル基に限定することにより本願発明の「下式(2)で表される反応性ケイ素基 -Si(R^(2))(OR^(3))_(2) …(2) (式中、R^(2)は炭素数1?18の1価の脂肪族炭化水素基を表わし、R^(3)は炭素数1?6の1価の有機基を表わす。)」を満足するものとする程度のことは容易になしうると認められる。 また、本願発明において重合体(B)の反応性ケイ素基が「下式(2)で表される反応性ケイ素基 -Si(R^(2))(OR^(3))_(2) …(2) (式中、R^(2)は炭素数1?18の1価の脂肪族炭化水素基を表わし、R^(3)は炭素数1?6の1価の有機基を表わす。)」に限定されていることにより当業者に予測できない格別顕著な効果が奏されているわけでもない。 相違点5について 有機重合体(A)および(B)の使用割合について、刊行物1(摘示(き))には、有機重合体(A)100重量部に対し1重量部から100重量部の範囲がより好ましいことが記載されているところ、この数値範囲は、本願発明の「重合体(A)100質量部、および重合体(B)1?200質量部を含有する」に相当する。 そうすると、当業者であれば有機重合体(A)および(B)の使用割合を刊行物1の記載に基いて限定することにより本願発明の「重合体(A)100質量部、および重合体(B)1?200質量部を含有する」を満足するものとする程度のことは容易になしうると認められる。 また、本願発明において重合体(A)および(B)の使用割合が「重合体(A)100質量部、および重合体(B)1?200質量部を含有する」に限定されていることにより当業者に予測できない格別顕著な効果が奏されているわけでもない。 したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたと認められる。 第3.請求人の主張について (1) 審判請求人は、審判請求書(第6頁26行-第7頁25行)において「上記2.で述べたように、引用文献1に記載の発明は組成物の低粘度化を課題としており、組成物の低粘度化を達成するために、有機重合体(B)の分子量は小さい方が好ましいことが示唆されています。 したがって引用文献1の実施例において、Mnが3000以下の有機重合体(B)に代えて、Mnが5500以上の重合体(B)を用いる動機づけはありません。・・すなわち、本願出願時明細書の[実施例]の[表1]に示されるように、重合体(B)のMnを高くすると、M50、M100が高くなる傾向があることは、本願発明で初めて見出されたことです。したがって、重合体(B)のMnを5500?12000と高くすることにより、硬化物が柔らかくなるのが抑制される(M50、M100が高くなる)という本願発明1の効果は、引用文献1に記載されていない有利な効果であって、引用文献1に記載されている効果とは異質な効果であり、技術水準から当業者が予測できたものでない効果であります。 したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明から当業者が容易になし得た発明ではなく、進歩性を有すると思量します。」と主張している。 (2) 請求人の主張は、要するに本願発明1は、刊行物1の実施例に記載された発明から想到容易とはいえない、と主張するものであるにすぎない。 そして、刊行物1には上記認定の引用発明が記載されており、本願発明は、引用発明から想到容易であるのは上述のとおりである。 請求人の主張は、上記判断を左右しない。 第4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、原査定の理由は妥当であり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-09-18 |
結審通知日 | 2013-09-24 |
審決日 | 2013-10-07 |
出願番号 | 特願2008-329830(P2008-329830) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C08L)
P 1 8・ 113- Z (C08L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 一宮 里枝 |
特許庁審判長 |
蔵野 雅昭 |
特許庁審判官 |
小野寺 務 須藤 康洋 |
発明の名称 | 硬化性組成物 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 柳井 則子 |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 鈴木 三義 |