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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61L
管理番号 1281898
審判番号 不服2012-20130  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-12 
確定日 2013-11-20 
事件の表示 特願2007-289459「空気処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月22日出願公開、特開2008-114078〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は、平成19年11月7日(パリ条約による優先権主張 2006年11月7日(FR)フランス)の出願であって、平成24年6月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成24年10月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、請求項3について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(補正前の請求項3)
「空気流(F)が通過する空間に拡散する空気処理剤を収容する通気性の容器(1)を備える空気処理装置であって、前記空間内に取り付けるための装着手段(180)(190)を備え、前記装着手段(180)(190)は、前記空間を包囲する壁体(10)に、前記容器(1)を取外し可能に取り付けうるようになっており、前記装着手段(180)(190)は、前記容器(1)に取り付けられ、
前記容器(1)は、前記壁体(10)に対して回転させることによって、壁体(10)に装着されるようになっていることを特徴とする空気処理装置。」

(補正後の請求項3)
「空気流(F)が通過する空間に拡散する空気処理剤を収容する通気性の容器(1)を備える空気処理装置であって、前記空間内に取り付けるための装着手段(180)(190)を備え、前記装着手段(180)(190)は、前記空間を包囲する壁体(10)に、前記容器(1)を取外し可能に取り付けうるようになっており、前記装着手段(180)(190)は、前記容器(1)に取り付けられ、
前記空気処理装置は、前記容器(1)が前記壁体(10)に対して回転することによって装着されるようになっており、
前記装着手段(190)は、前記壁体(10)に形成された開口を貫通し、この開口とバヨネット式に協働するようになっていることを特徴とする空気処理装置。」

2.補正の適否
上記補正は、請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項である「壁体(10)に装着される」態様について、「前記容器(1)は、前記壁体(10)に対して回転させることによって、壁体(10)に装着される」の記載を「前記空気処理装置は、前記容器(1)が前記壁体(10)に対して回転することによって装着される」と表現を改めるとともに、「前記装着手段(190)は、前記壁体(10)に形成された開口を貫通し、この開口とバヨネット式に協働するようになっている」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、前記本件補正後の請求項3に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された実願平2-120157号(実開平4-76511号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1a)「2.実用新案登録請求の範囲
ブロアの運転によつて車室内に臨んで開放された吹出し口から送風する空気調和装置を備えた車両において、
前記ブロアから前記吹出し口に至る風路の途中に、芳香剤類を着脱自在に設けたことを特徴とする車室内用芳香剤類の取付部構造。」(1ページ4行?10行)

(1b)「第1図は上記エアコンユニット2概略斜視図で、このエアコンユニット2は上記ブロア1の吐出口に接続部2aを介して接続されている。」(4ページ16行?18行)

(1c)「接続部2aの側端部には、第4図に示すように、空洞部10が形成されている。なお、この空洞部10のブロア1側の面には開口11が形成されている。また、第2図に示すように、接続部2aの下側には下側フランジ2dが設けられており、この下側フランジ2dの上記空洞部10に重なる部分には、第3図に示すように着脱孔12が形成されている。
そして、上記空洞部10には、第1図および第2図に示すように棒状の容器に収容された消臭剤や芳香剤などの芳香剤類20が収容されている。なお、固形の消臭剤や芳香剤を棒状に形成したものであっても構わない。この芳香剤類20は上紀棒状容器の下端部にゴムなどの弾性体で形成した栓体21が取り付けられ、この栓体21が上記着脱孔12に嵌合して該芳香剤類20を空洞部10内に位置させて保持するようにしてある。」(5ページ13行?6ページ9行)

(1d)「他方、上記芳香剤類20を上記空洞部10内に収めた状態で、前記配風部2cを構成する壁体の一部であって該芳香剤類20が対向した部分に、第2図および第4図に示すように吸込み開口22が形成されている。すなわち、この吸込み開口22によって、空洞部10を介してエアコンユニット2の内外部が連通している。」(6ページ10行?16行)

(1e)「空気調和装置を運転するとブロア1が作動して、外気あるいは内気が吸い込まれて、エアコンユニット2に送り込まれる。そして、該送風は接続部2aを通過し、配風部2cに案内されてエアコンユニット2内に拡散することになる。このときこの送風の流速によって、前記吸込み開口22からエアコンユニット2の外部の空気が吸い込まれる。この吸込み開口22に臨んで前記芳香剤類20が配設されているから、該エアコンユニット2に吸い込まれる空気にはこの芳香剤類20の放つ芳香が含まれることになる。
そして、ブロア1による送風は、エアコンユニット2を通過してヒ-タユニット3に送り込まれ、該ヒータユニット3から所望の吹出し口4を通って車室内に送風される。
したがって、車室内に上記芳香剤類20の芳香が放たれることになる。」(6ページ19行?7ページ15行)

(1f)「本実施例では、芳香剤類20をブロア1とエアコンユニット2との接続部2aに配設したものを示したが、空気調和装置を構或する部品の一部であって送風に芳香を含ませることができる位置であれば、他の箇所であっても構わない。」(7ページ19行?8ページ3行)

芳香剤類20と栓体21の組み合わせを一つの装置とみれば、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「棒状容器に収容された消臭剤や芳香剤などの芳香剤類20及び栓体21からなる装置であって、棒状容器の下端部に栓体21が取り付けられ、この栓体21が下側フランジ2dに形成された着脱孔12に嵌合して該芳香剤類20を空洞部10内に位置させて着脱自在に保持する装置。」

(2)対比
引用発明の「空洞部10」は、引用文献の第4図や、吸込み開口22からエアコンユニット2の外部の空気が吸い込まれ、該エアコンユニット2に吸い込まれる空気に芳香剤類20の放つ芳香が含まれる(記載(1e))ことを考慮すると、本願補正発明の「空気流(F)が通過する空間」に相当し、この空間に消臭剤や芳香剤などが拡散することは明らかである。そして、引用発明の「消臭剤や芳香剤など」は、本願補正発明の「空気処理剤」に相当する。
引用発明は、棒状容器に収容された消臭剤や芳香剤などが容器外の空間に拡散するものであるから、引用発明の「棒状容器」は、少なくとも消臭剤や芳香剤などを拡散させるに足る程度の通気性を有することが明らかであり、本願補正発明の「通気性の容器(1)」に相当する。
引用発明の「芳香剤類20及び栓体21からなる装置」は、本願補正発明の「空気処理装置」に相当する。
引用発明の「栓体21」、「下側フランジ2d」、「着脱孔12」は、それぞれ、本願補正発明の「装着手段(180)(190)」、「壁体(10)」、「壁体(10)に形成された開口」に相当し、引用発明の「棒状容器の下端部に栓体21が取り付けられ」は、本願補正発明の「前記装着手段(180)(190)は、前記容器(1)に取り付けられ」に相当する。そして、引用発明の「栓体21が下側フランジ2dに形成された着脱孔12に嵌合して該芳香剤類20を空洞部10内に位置させて着脱自在に保持する」は、本願補正発明の「前記装着手段(180)(190)は、前記空間を包囲する壁体(10)に、前記容器(1)を取外し可能に取り付けうるようになっており」及び「前記装着手段(190)は、前記壁体(10)に形成された開口を貫通し」に相当する。

よって、本願補正発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「空気流が通過する空間に拡散する空気処理剤を収容する通気性の容器を備える空気処理装置であって、前記空間内に取り付けるための装着手段を備え、前記装着手段は、前記空間を包囲する壁体に、前記容器を取外し可能に取り付けうるようになっており、前記装着手段は、前記容器に取り付けられ、
前記装着手段(190)は、前記壁体(10)に形成された開口を貫通している空気処理装置。」

[相違点]
本願補正発明は、「空気処理装置は、前記容器(1)が前記壁体(10)に対して回転することによって装着されるようになっており」、「装着手段(190)は、前記壁体(10)に形成された開口とバヨネット式に協働するようになっている」のに対し、引用発明は、「栓体21が下側フランジ2dに形成された着脱孔12に嵌合」するものである点。

(3)判断
装着手段として、回転することにより装着し、バヨネット式に協働するようになっている手段は、例えば、特開平1-159624号公報(特許請求の範囲、図面)、特開昭59-97620号公報(1ページ右欄6行?9行、図面)、特公昭42-18651号公報(特許請求の範囲、図面)に例示するように周知技術であり、空気処理装置の分野においても、バヨネット結合することは、審尋にて示した特表2003-536039号公報(【0021】)、特開2006-289171号公報(【0016】、【0021】)、特開2006-7195号公報(【0028】)に示すように、普通に採用される手段にすぎない。
そして、引用発明において、芳香剤類20を空洞部10内に位置させて着脱自在に保持するための手段として、適宜の装着手段を採用し得ることが当業者には理解できるから、該装着手段として上記周知技術を採用することにより、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願補正発明が、引用発明及び周知技術から予測できない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年9月15日(提出日)の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものである(第2[理由]1.補正の内容の概要 (補正前の請求項3)参照。)。

第4 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第2[理由]2.補正の適否 (1)引用文献」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から「前記装着手段(190)は、前記壁体(10)に形成された開口を貫通し、この開口とバヨネット式に協働するようになっている」との限定事項を省き、「前記空気処理装置は、前記容器(1)が前記壁体(10)に対して回転することによって装着される」を「前記容器(1)は、前記壁体(10)に対して回転させることによって、壁体(10)に装着される」と表現を改めたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 2.(3)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、平成25年5月17日付け回答書において、補正案を提示するが、そもそも、補正案に法的根拠は無いし、仮に補正案を考慮しても、引用文献の記載(1a)、記載(1f)によれば、芳香剤類を「下側フランジ2d」以外に設けることも予定の範囲内といえるから、補正案における「前記壁体(10)は、車室の空調機(201)の内側に配置される導管を区画し」との構成に困難性は認められず、結論は左右されない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-19 
結審通知日 2013-06-25 
審決日 2013-07-08 
出願番号 特願2007-289459(P2007-289459)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安積 高靖三崎 仁  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 紀本 孝
二ッ谷 裕子
発明の名称 空気処理装置  
代理人 中馬 典嗣  
代理人 竹沢 荘一  

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