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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A44B
管理番号 1281918
審判番号 不服2013-5851  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-02 
確定日 2013-11-22 
事件の表示 特願2007-172651「連結具」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月15日出願公開、特開2009- 6079〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成19年6月29日の出願であって、平成25年1月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年4月2日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に同日付けで手続補正書が提出されたものである。そして、同年6月19日付けで審尋がなされたが、指定期間内に回答書が提出されなかったものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成25年4月2日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
「雌雄部材(2C;4,4A,4B)からなる連結具(1C)であって、
前記雌部材(2C)は、係合部を有する本体部(21C)と、ベルト通し孔部(22C)からなり、
前記雄部材(4,4A,4B)は、係合部を有する本体部(41,41A,41B)と、ベルト通し孔部(42,42A,42B)からなり、
前記雌部材(2C)の前記本体部(21C)の正面表面をカバーする正面板(23C)は、連結完成時において、前記雄部材(4,4A,4B)の前記ベルト通し孔部(42,42A,42B)を遮蔽するに足りる長さの前方延長部(231C)を有するとともに、前記雌部材(2C)の前記ベルト通し孔部(22C)をも遮蔽するに足りる長さの後方延長部(232)を有する
ことを特徴とする連結具(1C)。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

3.刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2002-112807号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、一般にベルトアジャスターと呼ばれ、一端にベルト装着部を備えた直方形の雌体と、一端にベルト装着部を備え雌体に差込む平板状の雄体とからなるバックルであって、ベルトの厚さに左右されることなく的確に締め付け調整ができるバックルであり、しかも簡易施錠機構を装備させることができ、生協などが取り扱う宅配商品のパッケージに用いる締結ベルト、あるいは旅行用鞄などの締結ベルトに用いられるバックルに関するものである。」

イ 「【0034】
【発明の実施の形態】以下、この発明のバックルの実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0035】この発明のバックルは、図1に示す第1実施例のバックル、図11に示す第2実施例のバックル、図23に示す第3実施例のバックル、図32に示す第4実施例のバックルおよび図35に示す第5実施例のバックルはともに、ソケットと称する雌体1と、プラグと称する雄体2と、キー3の3部材から構成され、雌体1は雄体2を収納できる収納空間部6を有するハウジング5から形成され、雄体2は収納空間部6に差し込むことができる差込板30と、他端側にベルトBを取り付け調整することができる調整部31を装備し、キー3は特定の形状を有し、雌体1に差し込むことにより雌体1と雄体2の施錠を解錠して、雄体2を抜脱するバックルである。雌体1、雄体2、キー3は、それぞれポリアミド、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリプチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂またはこれらの樹脂に耐摩耗性強化材を加えた射出成形手段によって成形して形成する。
【0036】図1に示す第1実施例のバックルは、図2?4に示すように、雌体1は緩やかな傾斜曲線を描く上面板7と下面が水平状の下面板8を平行する側壁9で囲み内側に収納空間部6を設けた長方体形のハウジング5から形成され、分厚く形成された側のハウジング5の端部に大きく開口する差込口10を形成し、薄く形成された側のハウジング5の端部にキー挿入孔が設けられている。雄体2の差込板30を差込口10より挿入し、雄体2のベルト調整部31がハウジング5の上面板7、下面板8、側壁9により外部から隠蔽される形態で収納空間部6内へ収納される。
【0037】ハウジング5における上面板7の裏面の中央の斜面に図3、4に示すように先端がキー挿入孔11側に向いたフック状の係止部15を左右に2個突設し、この係止部15の前方中央の水平面に小突起16を突設して挿入孔11から平板状の物品の侵入を阻止できる形に形成する。さらに左右の係止部15の両側に下面が水平状の突条を突設して挿入されるキー3の上方への可撓を防ぐガイド条17を突設し、差込口10側の上面板7の裏面に差込口10から一定の長さの下面が水平条の突出条を突設して挿入される雄体2の円弧状に隆起する支持壁33をガイドするガイド突条19を設けて、雄体2が収納空間部6内においてがたつくことを防止する。ハウジング5の差込口10と反対側のハウジング5の下面板8にベルトを取り付けることができる透孔20を設けてベルト取付部12を設けてベルトBの一端を取り付ける。
【0038】一方雄体2は図5、6に示すように、基杆29を横設し、この基杆29の前方に平板状の差込板30を突設し、差込板30の略中央に両側と後方を切離し先端を起点として後端が上方へ弾力的に突出する板状の被係止部32を設け、被係止部32の両側に差込板30から起立する突条を設けて挿入されるキー3の先端が当接できる当接部37を形成する。基杆29の両端には後方に向かって円弧状に隆起する板状の支持壁33を設け、この支持壁33の基杆29側の上部にベルトBを引っ掛ける引掛杆34を架設し、支持壁33の中央に一端にベルトBを係止できる係止部39を備えた係止杆35を架設し、さらに支持壁33の後端の下部に挿通されたベルトBを載置できる載置杆36を架設する。
・・・(中略)・・・
【0040】以上説明したバックルの使用態様は、まず雄体2のベルト調整部31にベルトBを取り付けるが、ベルトの一端を雌体1のハウジング5の取付部12に取り付け、他端の先端を載置杆36の上側を通して引掛杆34に引っ掛けて捲回し、係止杆35の係止部39を通して外側へ引き出し、この状態で雄体2の差込板30を図9に示すように雌体1のハウジング5の差込口10から差し込み、被係止部32を係止部15に係止させる。この状態において、ベルト調整部31の上方は上面板7によって外部より隠蔽され、ベルト調整部31の下方は下面板8により外部から隠蔽され、係止杆35と下面板8との間にベルトBを通し、ベルトBが水平状態となるように支持している。この時、ベルトBの他端寄りである上側のベルトBを矢印方向へ引っ張るとベルトBは移動し、図示せぬ物品に巻き回されたベルトBを引き締めに余裕がある限り更に緊締することができる。ベルトBを緩めるには矢印方向と逆方向にベルトBを移動させなければならないが、ベルト調整部31がハウジング5により隠蔽されているのでベルトBを触ることができないほか、ベルトBが下面板8及び載置杆36によって水平状態に支持され、ベルトBを係止杆35の係止部39との当接より離れる方向に移動させることができないため、下側のベルトBを引っ張ってもその作用がベルトBを係止部39に圧接するよう働き、ベルトBを緩めるべく移動させることができない。」

ウ 上記ア及びイの記載を参照しつつ、図1ないし図6及び図9によると、次の事項が見てとれる。
(ア)雌体1が、係止部15を有するハウジング5と、ベルトを取り付けることができる透孔20からなること、
(イ)雄体2が、被係止部32を有する差込板30とベルト調整部31からなること、
(ウ)上面板7が雌体1のハウジング5の上面すなわち正面表面をカバーしていること、及び
(エ)上面板7は、雌体1と雄体2の連結完成時において、雄体2のベルト調整部31を遮蔽するに足りる長さの差込口10側の部分を有していること。

上記のアないしウの事項から、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「雌体1及び雄体2からなるバックルであって、
前記雌体1は、係止部15を有するハウジング5と、ベルトを取り付けることができる透孔20からなり、
前記雄体2は、被係止部32を有する差込板30とベルト調整部31からなり、
前記雌体1の前記ハウジング5の正面表面をカバーする上面板7は、前記雌体1と前記雄体2の連結完成時において、前記雄体2の前記ベルト調整部31を遮蔽するに足りる長さの差込口10側の部分を有しているバックル。」

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「雌体1」、「雄体2」及び「バックル」は、本願発明における「雌部材(2C)」、「雄部材(4,4A,4B)」及び「連結具(1C)」に相当する。また、引用発明における「雌体1」及び「雄体2」は、本願発明における「雌雄部材(2C;4,4A,4B)」に相当する。
引用発明における「係止部15」、「ハウジング5」及び「ベルトを取り付けることができる透孔20」は、本願発明における雌部材の「係合部」、「本体部(21C)」及び「ベルト通し孔部(22C)」に相当する。
引用発明における「被係止部32」、「差込板30」及び「ベルト調整部31」は、本願発明における雄部材の「係合部」、「本体部(41,41A,41B)」及び「ベルト通し孔部(42,42A,42B)」に相当する。
引用発明における「ハウジング5の正面表面をカバーする上面板7」は、本願発明における「本体部(21C)の正面表面をカバーする正面板(23C)」に相当する。
引用発明における「差込口10側の上面板7の部分」は、雌体1と雄体2の連結完成時において、雄体2のベルト調整部31を遮蔽するに足りる長さを有しているから、本願発明における「連結完成時において、前記雄部材(4,4A,4B)の前記ベルト通し孔部(42,42A,42B)を遮蔽するに足りる長さの前方延長部(231C)」に相当する。
してみると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「雌雄部材からなる連結具であって、
前記雌部材は、係合部を有する本体部と、ベルト通し孔部からなり、
前記雄部材は、係合部を有する本体部と、ベルト通し孔部からなり、
前記雌部材の前記本体部の正面表面をカバーする正面板は、連結完成時において、前記雄部材の前記ベルト通し孔部を遮蔽するに足りる長さの前方延長部を有する
連結具。」

[相違点]
本願発明においては、雌部材の正面板は、連結完成時において、雌部材のベルト通し孔部を遮蔽するに足りる長さの後方延長部を有するのに対し、引用発明においては、雌部材(雌体1)の正面板(上面板7)はそのような後方延長部を有していない点。

上記相違点について検討する。
それぞれ係合部を有する本体部とベルト通し孔部を具備した雌部材及び雄部材からなる連結具において、雌部材のベルト通し孔部を遮蔽する後方延長部を雌部材の正面板に設けることは、例えば、原査定において周知例として例示された米国特許第5551131号明細書(FIG.1?3)、特開昭58-58001号公報(第1図)及び特開2002-10804号公報(図13、14)に記載されており、本願出願前に周知の事項である。
また、上記のような連結具において、ベルトの取付部が露呈していると外観上好ましくないという課題も知られている(上記の特開2002-10804号公報(【0005】参照)。
したがって、引用発明において、雌部材(雌体1)のベルト通し孔部(ベルトを取り付けることができる透孔20)を遮蔽することは、当業者が必要に応じて適宜になし得ることであり、前記した周知の事項のように、雌部材の正面板(上面板7)に雌部材のベルト通し孔部を遮蔽する後方延長部を設けて、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願発明のように、雄部材のベルト通し孔部と雌部材のベルト通し孔部の両方を遮蔽する構成とすることにより、当業者が予期し得ない格別顕著な効果が奏されるとは認められない(上記の特開2002-10804号公報(図13、14)には、雄部材と雌部材の両方のベルト通し孔部を遮蔽した連結具が記載されている)。

以上のことから、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-27 
結審通知日 2013-09-30 
審決日 2013-10-11 
出願番号 特願2007-172651(P2007-172651)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A44B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西本 浩司  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 渡邊 真
熊倉 強
発明の名称 連結具  
代理人 岡本 昭二  

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