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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B66C |
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管理番号 | 1281998 |
審判番号 | 不服2013-5275 |
総通号数 | 169 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-03-21 |
確定日 | 2013-12-11 |
事件の表示 | 特願2007- 55050「バケットの駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月18日出願公開、特開2008-214047、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年3月6日の出願であって、平成24年2月3日付けで拒絶理由が通知され、同年4月9日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年2月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月21日に拒絶査定に対する審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は、平成24年4月9日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。 「 【請求項1】 バケットの開閉動作を、バケットに搭載した磁石モータにて駆動される油圧ポンプから供給される作動油によってバケットシリンダを操作して行うようにしたバケットの駆動装置であって、クレーンのクラブ上にモータ制御装置を設置するとともに、バケットシリンダに作動油を供給する油圧回路の作動油の圧力値の信号をON、OFFの接点信号として出力するようにし、該信号を前記モータに電力を供給する動力線を介して、前記モータ制御装置に導入してモータ制御装置に予め設定した回転数パターンによってモータの回転数を制御し、前記バケットシリンダを操作するようにしたことを特徴とするバケットの駆動装置。 【請求項2】 油圧回路の作動油の圧力値を、油圧回路に設けた圧力センサにより検出するようにしたことを特徴とする請求項1記載のバケットの駆動装置。 【請求項3】 油圧回路の作動油の圧力値を、モータの電流値により検出するようにしたことを特徴とする請求項1記載のバケットの駆動装置。 【請求項4】 バケットシリンダを操作しない場合に、モータを停止することを特徴とする請求項1、2又は3記載のバケットの駆動装置。」 第3 原査定の拒絶の理由の概要 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項1-3 ・引用文献1 ・備考 引用文献1記載の発明は、油圧回路の油圧値に基づいてモータの回転数を段階的に制御するものであり、実質的に予め設定した回転数パターンによってモータの回転数を制御していると認められる(特に、【0018】-【0022】、図1参照)。 また、モータを磁石モータとする点、モータ制御装置をクレーンのクラブ上に設置する点は、当業者が適宜設計し得る事項である。 ・請求項4 ・引用文献等1,2 ・備考 シリンダを操作しない場合にモータを停止することは、従来周知の事項である(例えば、文献2の【0014】等参照)。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2001-80875号公報 2.実願平05-2983号(実開平6-61882号)のCD-ROM 第4 当審の判断 1.引用文献1記載の発明 (1)前記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 バケットの開閉動作を、電動モータにて駆動される油圧ポンプから供給される作動油によってバケットシリンダを操作して行うようにした油圧バケットにおいて、前記バケットシリンダに作動油を供給する油圧回路の油圧値に基づいて、前記電動モータの回転数を制御する可変速度制御装置を配設したことを特徴とする油圧バケット。 【請求項2】 可変速度制御装置にインバータ制御装置を用いたことを特徴とする請求項1記載の油圧バケット。 【請求項3】 油圧回路の油圧値を、油圧回路に設けた圧力センサにより検出するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の油圧バケット。 【請求項4】 油圧回路の油圧値を、電動モータの電流値により検出するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の油圧バケット。 【請求項5】 油圧回路の油圧値を、油圧回路に設けたリリーフ弁の動作により検出するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の油圧バケット。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項5】) (イ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、油圧バケットに関し、特に、バケットの開閉動作を、電動モータにて駆動される油圧ポンプから供給される作動油によってバケットシリンダを操作して行うようにした油圧バケットにおいて、必要以上の油圧ポンプの稼働を防止し、バケットの開閉動作を高頻度に行っても、作動油の温度の上昇を抑制してバケットの安定した挟持力を維持できるようにした油圧バケットに関するものである。」(段落【0001】) (ウ)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところで、この油圧バケットにおいて、バケットの開閉動作を確実に行ってごみを挟持するとともに、挟持したごみをこぼれ落ちることなく確実に保持するために、油圧ポンプPoを駆動する電動モータMの電流値の変化を検出し、この電流値の変化時間を設定値と比較することにより、挟持力を一定時間保持し続けるようにしている。 【0005】しかしながら、このようにすると、挟持力を一定時間保持し続けることができるものの、上記のとおり、この油圧バケットにおいては、バケットシリンダSを操作する油圧ポンプPoを、定速で回転する電動モータMにより駆動するようにしているため、バケットが閉じた後は、電動モータMに大きな負荷がかかって温度が上昇するだけでなく、作動油の圧力値が高くなって、作動油がリリーフ弁Rを通過することによって、作動油の温度が上昇することとなる。 【0006】そして、作動油の温度が上昇すると、作動油の粘度が低くなり、油圧回路の油圧値が低下して、必然的にバケットの挟持力が減少し、ごみを確実に挟持することができなくなったり、さらには、バケットの吊り上げ時に挟持したごみがバケットからこぼれ落ちるという問題が発生することが予想される。 【0007】また、油圧ポンプPoを駆動する電動モータMは、大きな負荷がかかった状態で定速で回転するため、バケットが閉じた後も消費電力は変わらず、バケットの開閉動作時の負荷増大も相俟って、消費電力が大きくなるという問題があった。 【0008】そして、これらの問題点は、ダイオキシン等の有害物質の発生量を低減するために長時間の連続稼働の要請が高まっているごみ処理場に設置される油圧バケットにおいて、特に、顕著に現れるため、これに対する対策が急務となっている。 【0009】本発明は、上記従来の油圧バケットの有する問題点に鑑み、バケットの開閉動作を、電動モータにて駆動される油圧ポンプから供給される作動油によってバケットシリンダを操作して行うようにした油圧バケットにおいて、必要以上の油圧ポンプの稼働を防止し、バケットの開閉動作を高頻度に行っても、作動油の温度の上昇を抑制してバケットの安定した挟持力を維持できるようにした油圧バケットを提供することを目的とする。」(段落【0004】ないし【0009】) (エ)「【0017】図1?図2に、本発明の油圧バケットの一実施例を示す。この油圧バケットは、従来の油圧バケットと同様、電動モータ4にて駆動される油圧ポンプ3から供給される作動油によってバケットシリンダ1を操作して行うように構成されており、オイルタンク5の作動油を、電動モータ4にて駆動される油圧ポンプ3によって、電磁切換弁2を介してバケットシリンダ1へ供給する油圧回路を備え、バケットの開閉動作を制御するようにしている。 【0018】この場合において、油圧ポンプ3を駆動する電動モータ4の回転数を制御する可変速度制御装置7、例えば、インバータ制御装置を配設するようにする。 【0019】また、油圧回路の適宜位置には、油圧回路の油圧値を表示する圧力計6及び油圧値を検出する圧力センサ9を配設するようにするとともに、余剰の作動油を逃がすリリーフ弁10を接続するようにする。 【0020】また、油圧ポンプ3を駆動する電動モータ4の電源回路には、電動モータ4に流れる電流値を検出する電流センサ8を配設するようにする。 【0021】そして、この油圧バケットは、バケットの開閉動作を、電動モータ4にて駆動される油圧ポンプ3から供給される作動油によってバケットシリンダ1を操作して行う際に、バケットシリンダ1に作動油を供給する油圧回路の油圧値に基づいて、可変速度制御装置7により電動モータ4の回転数を制御するようにし、これにより、油圧回路の油圧が所要の油圧値を維持しながら、必要以上の油圧ポンプ3の稼働を防止して、バケットの開閉動作を高頻度に行っても、作動油の温度の上昇を抑制してバケットの安定した挟持力を維持することができるようにしている。なお、可変速度制御装置7により行う電動モータ4の回転数の制御は、例えば、高速回転、中速回転、低速回転のように段階的に行うことも、無段階に行うこともできる。 【0022】この場合、油圧回路の油圧値の検出は、油圧回路に設けた圧力センサ9の出力に基づいて、油圧回路の油圧値が設定した油圧値に達したことを検出することにより行うようにしたり、電動モータ4に流れる電流値を検出する電流センサ8の出力に基づいて、電動モータ4に流れる電流値が設定した電流値に達したことを検出することにより行う(本実施例のように、可変速度制御装置7にインバータ制御装置を用いた場合には、電動モータ4に流れる電流値を検出することにより電動モータ4のトルク値を測定することができ、この電動モータ4のトルク値により、油圧回路の油圧値を知ることができる。)ようにしたり、油圧回路に設けたリリーフ弁10の動作に基づいて、油圧回路の油圧値が設定した油圧値に達したことを検出することにより行うようにすることができる。なお、この油圧回路の油圧値の検出は、上記の各手段のうちの1つの手段を選択して用いるようにしても、2つ以上の手段を組み合わせてを用いるようにしてもよい。」(段落【0017】ないし【0022】) (オ)「【0024】まず、バケットを開動作させる。バケットを開動作する場合は、電磁切換弁2のソレノイドaを励磁することにより、電動モータ4にて駆動される油圧ポンプ3から供給される作動油によってバケットシリンダ1を操作する。バケットが開くと、電磁切換弁2のソレノイドaを解除すると電磁切換弁2は中立位置に戻り、バケットは、そのまま開いた状態を維持する。バケットを開動作する場合は、負荷が小さいことから、通常、油圧ポンプ3から供給される作動油の吐出量が大となるように、油圧ポンプ3を駆動する電動モータ4の回転数を制御するようにして、作業を効率化するようにする。 【0025】次に、バケットを開いた状態で、バケットをごみ山上に降下させる。バケットがごみ山上に着地することにより、バケットの重量にてバケットの挟持爪がごみ山内に侵入し、次に、バケットを閉動作することにより、ごみを掴むことができる。バケットを閉動作する場合は、電磁切換弁2のソレノイドbを励磁することにより、電動モータ4にて駆動される油圧ポンプ3から供給される作動油によってバケットシリンダ1を操作する。そして、通常は、この状態で、バケットの開閉動作を数回繰り返すこと(沈み掴み)により、バケットによるごみの掴み量を増大させながら、ごみを確実に掴むようにする。バケットを沈み掴みする場合は、特に、掴み時の負荷が大きくなることから、通常、少なくとも掴み時の油圧ポンプ3から供給される作動油の吐出量が小となるように、油圧ポンプ3を駆動する電動モータ4の回転数を、クレーンの巻下動作及びバケットの開閉動作と連動して、自動制御するようにして、作業を効率化するようにする。 【0026】次に、バケットを閉動作させ、ごみを圧縮しながら挟持するとともに、挟持したごみをこぼれ落ちることなく確実に保持するようにする。バケットを閉動作する場合は、バケットを沈み掴みする場合と同様、電磁切換弁2のソレノイドbを励磁することにより、電動モータ4にて駆動される油圧ポンプ3から供給される作動油によってバケットシリンダ1を操作する。バケットを閉動作する場合は、負荷が大きくなることから、通常、油圧ポンプ3から供給される作動油の吐出量が小となるように、油圧ポンプ3を駆動する電動モータ4の回転数を制御するようにする。」(段落【0024】ないし【0026】) (カ)「【0027】ところで、このバケットの閉動作を確実に行ってごみを挟持するとともに、挟持したごみをこぼれ落ちることなく確実に保持するために、挟持力を一定時間保持し続けるように、バケットシリンダ1を操作する必要がある。従来は、この操作によって、バケットが閉じた後は、電動モータ4に大きな負荷がかかって温度が上昇するだけでなく、作動油の圧力値が高くなって、作動油がリリーフ弁を通過することによって、作動油の温度が上昇するという問題があったが、本実施例においては、バケットシリンダ1に作動油を供給する油圧回路の油圧値に基づいて、可変速度制御装置7により電動モータ4の回転数を制御、具体的には、図2に示すように、油圧回路の油圧値Pが設定した油圧値γ_(1)、γ_(2)に達したことを検出することにより、可変速度制御装置7により電動モータ4の回転数を増減する(P<γ_(1):回転数を上げる、P>γ_(2):回転数を下げる)ようにし、これにより、油圧回路の油圧が所要の油圧値(γ_(1)?γ_(2))を維持しながら、必要以上の油圧ポンプ3の稼働を防止して、バケットの開閉動作を高頻度に行っても、作動油の温度の上昇を抑制してバケットの安定した挟持力を維持することができるようにしている。」(段落【0027】) (2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(カ)並びに図面の記載からみて、次のことがわかる。 (キ)上記(1)の(ア)及び(エ)並びに図1の記載からみて、実施例の油圧バケットは、バケットを駆動制御するものであり、また、バケットの開閉動作を、電動モータ4にて駆動される油圧ポンプ3から供給される作動油によってバケットシリンダ1を操作して行うようにしたものであることが分かる。 また、実施例の油圧バケットは、電動モータ4の回転数を制御する可変速度制御装置7が設置されているといえる。 (ク)上記(1)の(ア)ないし(カ)並びに図1及び2の記載からみて、バケットシリンダ1に作動油を供給する油圧回路の作動油の油圧値の信号は、出力されるようにしており、該信号は、可変速度制御装置7に導入されて可変速度制御装置7に予め設定した油圧値γ_(1)、γ_(2)に達したことを検出することにより、可変速度制御装置7により電動モータ4の回転数を増減することによって電動モータ4の回転数が制御され、前記バケットシリンダ1が操作されることが分かる。 (3)上記(1)及び上記(2)の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「バケットの開閉動作を、電動モータ4にて駆動される油圧ポンプ3から供給される作動油によってバケットシリンダ1を操作して行うようにしたバケットを駆動制御する油圧バケットであって、可変速度制御装置7を設置するとともに、バケットシリンダ1に作動油を供給する油圧回路の作動油の油圧値の信号を出力するようにし、該信号を前記可変速度制御装置7に導入して油圧値γ_(1)、γ_(2)に達したことを検出することにより、可変速度制御装置7により電動モータ4の回転数を増減することによって電動モータ4の回転数を制御し、前記バケットシリンダ1を操作するようにしたバケットを駆動制御する油圧バケット。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「油圧ポンプ3」は、その機能、構造及び技術的意義からみて、本願発明における「油圧ポンプ」に相当し、以下同様に、「バケットシリンダ1」は「バケットシリンダ」に、「バケットを駆動制御する油圧バケット」は「バケットの駆動装置」に、「可変速度制御装置7」は「モータ制御装置」に、「油圧値」は「圧力値」に、それぞれ相当する。 また、引用発明における「電動モータ4」は、「電動モータ」という限りにおいて、本願発明における「磁石モータ」に相当し、以下同様に、 「油圧値γ_(1)、γ_(2)に達したことを検出することにより、可変速度制御装置7により電動モータ4の回転数を増減すること」は、「回転数制御手順」という限りにおいて、「モータ制御装置に予め設定した回転数パターン」に、 それぞれ相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点1>及び<相違点2>で相違する。なお、( )内に、相当する本願発明の発明特定事項を示す。 <一致点> 「バケットの開閉動作を、電動モータにて駆動される油圧ポンプから供給される作動油によってバケットシリンダを操作して行うようにしたバケットの駆動装置であって、モータ制御装置を設置するとともに、バケットシリンダに作動油を供給する油圧回路の作動油の圧力値の信号を出力するようにし、該信号を前記モータ制御装置に導入してモータ制御装置に予め設定した回転数制御手順によって電動モータの回転数を制御し、前記バケットシリンダを操作するようにしたバケットの駆動装置。」 <相違点1> 電動モータに関し、 本願発明においては、「バケットに搭載した磁石モータ」であるのに対し、引用発明においては、「電動モータ」であるが、「磁石モータ」であるか否か及び搭載位置が不明である点(以下、「相違点1」という。)。 <相違点2> モータ制御装置の設置、油圧回路の作動油の圧力値の信号及び電動モータの回転数の制御に関し、 本願発明においては、「クレーンのクラブ上にモータ制御装置を設置するとともに、バケットシリンダに作動油を供給する油圧回路の作動油の圧力値の信号をON、OFFの接点信号として出力するようにし、該信号をモータに電力を供給する動力線を介して、前記モータ制御装置に導入してモータ制御装置に予め設定した回転数パターンによってモータの回転数を制御し、前記バケットシリンダを操作するようにした」のに対し、 引用発明においては、「可変速度制御装置7(モータ制御装置)を設置するとともに、バケットシリンダ1(バケットシリンダ)に作動油を供給する油圧回路の作動油の油圧値(圧力値)の信号を出力するようにし、該信号を前記可変速度制御装置7(モータ制御装置)に導入して油圧値γ_(1)、γ_(2)に達したことを検出することにより、可変速度制御装置7(モータ制御装置)により電動モータ4の回転数を増減することによって電動モータ4の回転数を制御し、前記バケットシリンダ1(バケットシリンダ)を操作するようにした」が、可変速度制御装置7(モータ制御装置)の配置が「クレーンのクラブ上」であるか否か不明であり、油圧値(圧力値)の信号が「ON、OFFの接点信号として出力するようにし、該信号をモータに電力を供給する動力線を介して、」可変速度制御装置7(モータ制御装置)に導入しているのか否か不明である点(以下、「相違点2」という。)。 4.当審の判断 上記各相違点について以下に検討する。 (1)相違点1について 電動モータとして磁石モータがあることは周知の事項である。 また、引用発明は電動モータであるが、特定の形式に限定されるものではない。 よって、引用発明において、電動モータとして磁石モータを採用し、その際バケットに搭載することは設計上の事項にすぎない。 なお、請求人も「モータに磁石モータであるACサーボモータを使用することにより、可変速(停止を含む)で、かつ、高効率化及び軽量化が可能なバケットの駆動装置を構成することができる。」(本願明細書の段落【0003】参照。)と本発明の前提技術としている。 (2)相違点2について 引用文献1には、モータ制御装置の設置位置を「クレーンのクラブ上」とする点について記載も示唆もないほか、設計事項であるとする理由も見い出せない。仮に、前記の点が設計事項であるとしても、引用発明において、前記の点を特定することにより生じるモータ制御装置とバケット(モータ)との間を接続する信号線に付随するノイズ等の問題点を解消するという新たな課題は引用文献1からは導き出せない。 また、少なくとも、「バケットシリンダに作動油を供給する油圧回路の作動油の圧力値の信号をON、OFFの接点信号として出力する」点及び「該信号をモータに電力を供給する動力線を介して、前記モータ制御装置に導入」する点は、いずれも拒絶理由通知及び拒絶査定において提示したいずれの文献にも記載も示唆もない。 このため、前記新たな課題の解決手段として採用した前記の「バケットシリンダに作動油を供給する油圧回路の作動油の圧力値の信号をON、OFFの接点信号として出力する」点及び前記の「該信号をモータに電力を供給する動力線を介して、前記モータ制御装置に導入」する点は仮に周知の事項であるとしても、そもそも引用発明に当該周知の事項を採用して相違点2の如く構成する動機付けが存在しない。 そうすると、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項とはいえないし、また、当業者が容易になし得ることともいえない。 (3)請求項2ないし4に係る発明について 請求項2ないし4に係る発明はいずれも本願発明である請求項1に係る発明の発明特定事項を全て含むものであるから、請求項2ないし4に係る発明も少なくとも上記(1)及び(2)で検討したこととと同じ理由により、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、請求項1ないし4に係る発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の拒絶の理由によっては、本願発明を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2013-11-27 |
出願番号 | 特願2007-55050(P2007-55050) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B66C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 藤村 聖子 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
久島 弘太郎 柳田 利夫 |
発明の名称 | バケットの駆動装置 |
代理人 | 森 治 |