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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16J
管理番号 1282077
審判番号 不服2012-23807  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-30 
確定日 2013-11-28 
事件の表示 特願2007-82890号「接続部シール構造」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月9日出願公開、特開2008-240916号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年3月27日の出願であって、平成24年8月28日付け(発送日:9月4日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年11月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。
なお、平成24年3月26日付けの手続補正は、平成24年8月28日付けで決定をもって却下された。

第2 平成24年11月30日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年11月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成24年11月30日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
第1の部品と第2の部品との接続部にシール部材が介在し、前記第1の部品の接続部に第1凹凸条が形成され、前記第2の部品の接続部に第2凹凸条が形成され、前記シール部材は、前記第1凹凸条に嵌合する第1嵌合部が一面に設けられ、前記第2凹凸条に嵌合する第2嵌合部が他面に設けられ、前記第1及び第2嵌合部に肉厚方向の圧入代を備える接続部シール構造において、
前記シール部材は、前記第1及び第2嵌合部が設けられる環状のシール本体部から外周方向に張り出す張出部を有し、前記張出部が前記第1及び前記第2の部品の接続部より外側に出ていること、
前記シール部材は、前記張出部の端部に前記張出部に対して直交する方向に伸びる把持部を有すること、
前記把持部の軸線方向の全長(X2)が、前記シール部材の軸線方向の全長(X3)より大きいこと、
前記第1嵌合部は、第1環状溝を備え、前記第1環状溝の開口部より奥側に、前記第1環状溝の内側に前記第1環状溝の圧入代が設けられ、前記第1環状溝の開口部と前記第1環状溝の圧入代との間に設けられる段差により、前記第1凹凸条の環状突起を前記第1環状溝の開口部から前記第1環状溝の圧入代へ案内するための第1ガイド部が設けられていること、
前記第2嵌合部は、第2環状溝を備え、前記第2環状溝の開口部より奥側に、前記第2環状溝の内側に前記第2環状溝の圧入代が設けられ、前記第2環状溝の開口部と前記第2環状溝の圧入代との間に設けられる段差により、前記第2凹凸条の環状突起を前記第2環状溝の開口部から前記第2環状溝の圧入代へ案内するための第2ガイド部が設けられていること、
前記第1ガイド部、前記第2ガイド部及び前記把持部が、軸線方向に平行に形成されていることにより、前記シール部材を前記第1及び前記第2凹凸条に圧入を開始する時に、前記シール部材の前記第1及び前記第2環状溝が、前記第1及び前記第2凹凸条に対して平行に保持されていること、
を特徴とする接続部シール構造。」
と補正された。(なお、下線は補正箇所を示す。また、「前記シール部材の軸線方向の全長(X3)」は「前記シール本体部の軸線方向の全長(X3)」の誤記と認められるので、以下の検討においては「シール本体部の軸線方向の全長(X3)」とする。)

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1嵌合部」、「第2嵌合部」及び「把持部」について、「前記第1嵌合部は、第1環状溝を備え、前記第1環状溝の開口部より奥側に、前記第1環状溝の内側に前記第1環状溝の圧入代が設けられ、前記第1環状溝の開口部と前記第1環状溝の圧入代との間に設けられる段差により、前記第1凹凸条の環状突起を前記第1環状溝の開口部から前記第1環状溝の圧入代へ案内するための第1ガイド部が設けられていること」、「前記第2嵌合部は、第2環状溝を備え、前記第2環状溝の開口部より奥側に、前記第2環状溝の内側に前記第2環状溝の圧入代が設けられ、前記第2環状溝の開口部と前記第2環状溝の圧入代との間に設けられる段差により、前記第2凹凸条の環状突起を前記第2環状溝の開口部から前記第2環状溝の圧入代へ案内するための第2ガイド部が設けられていること」及び「前記第1ガイド部、前記第2ガイド部及び前記把持部が、軸線方向に平行に形成されていることにより、前記シール部材を前記第1及び前記第2凹凸条に圧入を開始する時に、前記シール部材の前記第1及び前記第2環状溝が、前記第1及び前記第2凹凸条に対して平行に保持されていること」を限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
(1)刊行物1(特開2006-316805号公報)の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物1には、「フランジ配管どうしの接続構造」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与、以下同様。)

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ配管どうしの接続構造に係り、詳しくは、半導体製造や医療・医薬品製造、食品加工、化学工業等の各種技術分野の製造工程で取り扱われる高純度液や超純水の配管系等において用いられるフランジ配管どうしを連通接続させるための接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フランジ配管どうしを、それらの流体通路どうしに亘って流体の往来が自在となるように接続させる手段としては、一方のフランジ配管である第1フランジ配管の第1フランジ部と、他方のフランジ配管である第2フランジ配管の第2フランジ部とを、これらの間にリング状のガスケットを介して複数のボルト・ナットを用いて締め付け固定させる構造を採るのが一般的であった。このような例としては、特許文献1や特許文献2において開示されたものが知られている。」

イ 「【0036】
〔実施例1〕
実施例1によるフランジ配管どうしの接続構造は、図1に示すように、円管状の流体通路4を有した管状部1Aの端部に、この管状部1Aより大径で断面円形の第1フランジ部1Bを有するPTFE等のフッ素樹脂(合成樹脂の一例)製の第1フランジ配管1の第1フランジ部1Bと、円管状の流体通路4を有した管状部2Aの端部に、この管状部2Aよりも大径で断面円形の第2フランジ部2Bを有するPTFE等のフッ素樹脂(合成樹脂の一例)製の第2フランジ配管2の第2フランジ部2Bとを、第1フランジ部1Bと第2フランジ部2Bとの間に介在するリング状のガスケットGを介して連通接続するフランジ配管どうしの接続部として構成されている。
【0037】
実施例1においては、第1フランジ配管1と第2フランジ配管2とは互いに同一のものであって互いに共通の軸心Pを有しており、図2に示すように、第1フランジ部1Bと第2フランジ部2Bとが、これらの間で挟まれるリング状のガスケットGを介してシール状態で接続されている。両フランジ部1B,2Bどうしは引寄せ機能を有した維持手段Iによって互いにガスケットGを介して引寄せられ、この引寄せ作用により第1フランジ部1Bの端面に形成される第1シール端部t1とガスケットGの一端面との間、及び第2フランジ部2Bの端面に形成される第2シール端部t2とガスケットGの他端面との間で夫々互いに嵌合して嵌合シール部3が形成され、かつ、その嵌合シール部3が形成された接合状態が維持される。
【0038】
図2に示す両フランジ配管1,2どうしの接続部においては、第1フランジ部1Bの端面に形成される第1シール端部t1と、第2フランジ部2Bの端面に形成される第2シール端部t2とは同一構造であるため、第1シール端部t1についてのみ説明し、第2シール端部t2については同一符号又は対応する符号を付してその説明を省略するものとする。第1シール端部t1は、流体通路4を開口する第1フランジ部1Bの端面における流体通路4の開口端部の外径側部分に、流体通路4と同心状に形成される環状突起11を有して構成されている。また、第1シール端部t1は、環状突起11の内外に形成される環状押え突起12,13、及びこれら環状押え突起(環状押え部分の一例)12,13と環状突起11との間に形成される奥窄まり状の谷部14,15を有している。
【0039】
さて、ガスケットGは、図2?図5に示すように、管状の流体経路Wと左右一対の環状溝51,51とを有するPFAやPTFE等のフッ素樹脂製でリング状のものに構成されている。流体経路Wは、第1フランジ配管1の流体通路4と第2フランジ配管2の流体通路4とを連通する箇所であり、その内径r3は、各流体通路4,4の内径r1,r2と互いに同径に形成されている。一対の環状溝51,51は、第1及び第2フランジ部1B,2Bの端面に形成された第1シール端部t1の環状突起11、及び第2シール端部t2の環状突起21のそれぞれに嵌合自在な溝に形成されている。
【0040】
ガスケットGの断面形状は、左右一対の環状溝51,51と、これら環状溝51,51を形成するための内周壁54及び外周壁55とを有するとともに、一対の環状溝51,51は深さ及び幅が同一となる左右対称であり、かつ、内及び外周壁54,55も左右対称であって、第1及び第2フランジ配管1,2の軸心P方向に沿う縦中心Z、及び、その縦中心線Zに直交する横中心線Xの双方に関して線対称(ほぼ線対称でも良い)となる略H状の形状に形成されている。内周壁54の左右端部は、内周面54aである流体経路Wの左右端部が先拡がり状に外向き傾斜するテーパ内周面52a,52aに形成されるとともに、外周壁55の左右端部も、その外周面55aの左右端部が内向き傾斜するテーパ外周面53a,53aに形成されている。
【0041】
第1フランジ配管1の第1フランジ部1Bにおける第1シール端部t1の環状突起11、及び第2フランジ配管2の第2フランジ部2Bにおける第2シール端部t2の環状突起21のそれぞれの内及び外径側には、環状押え突起12,13,22,23が形成されている。これらは、ガスケットGにおける環状溝51を形成すべく軸心P方向に突出形成された内外の環状シール突起52,53が、環状溝51と環状突起11,21との嵌合によって内外に拡がり変形するのを阻止して、良好なシール性を発揮させる役割を持つ。
【0042】
上記環状押え突起に関する構造を、ガスケットGと上第1シール端部t1とについて説明する。図5に示すように、内外の環状押え突起12,13は対称のものであり、これらと環状突起11とで囲まれた谷部14,15が奥窄まり状となるように環状突起側の側周面が傾斜したテーパ外周面12a及びテーパ内周面13aを有する先窄まり状の環状突起に形成されている。つまり、第1シール端部t1は、環状突起11とその内外の両側に形成される環状押え突起12,13及び谷部14,15の総称である。
【0043】
ガスケットGの内外の周壁54,55の左端部(図5における左)は、環状押え突起12,13のテーパ外周面12aとテーパ内周面13aのそれぞれに当接するテーパ内周面52aとテーパ外周面53aを有して14,15に入り込み自在な先窄まり状の環状シール突起52,53を有している。そして、接合状態(図1参照)においては、内外の周壁54,55の左端部である環状シール突起52,53が対応する谷部14,15に入り込み、第1シール端部t1のテーパ外周面12aとガスケットGのテーパ内周面52aとが圧接され、かつ、第1シール端部t1のテーパ内周面13aとガスケットGのテーパ外周面53aとが圧接されるように構成されている。
【0044】
つまり、ガスケットGの左端部には、環状溝51とその内外の環状シール突起52,53とで左シール部g1が形成されており、同様に右端部には右シール部g2が形成されている。左シール部g1は第1シール端部t1と嵌合して嵌合シール部3を形成し、右シール部g2は第2シール端部t2と嵌合して嵌合シール部3を形成する。
【0045】
嵌合シール部3の嵌合構造を、第1シール端部t1とガスケットGの左シール部g1について詳細に説明すると、図4、図5に示すように、内外の谷部14,15どうし、及び内外の環状シール突起52,53どうしは互いに対称であって、内外の谷部14,15全体の挟角α°と内外の環状シール突起52,53全体の尖り角β°との間には、α°<β°という関係が設定されている。好ましくはα°+(5?15°)=β°という関係に設定すると良い。この構成により、第1シール端部t1の環状突起11と環状溝51とが嵌り合った接合状態(後述)では、内環状押え突起12と内環状シール突起52とは、それらのテーパ外周面12aとテーパ内周面52aとが最内径側部分で圧接される状態となり(図5の仮想線を参照)、流体通路Wを通る流体がこれら外内のテーパ周面12a,52aどうしの間に入り込むのことをも阻止する二次シール部S2として機能する利点が得られる。
【0046】
第1の環状突起11の幅d1と左環状溝51の幅d2との間には、d1>d2という関係が設定されており、好ましくはd1×(0.6?0.8)=d2という関係に設定すると良い。そして、第1の環状突起11の突出長さh1と左環状溝51の深さh2との間にはh1<h2という関係が設定されている。これらの構成により、第1の環状突起11と左環状溝51とが、詳しくは、第1の環状突起11の内外の両側周面と相対応する左環状溝51の内外の側周面とが強く圧接され、流体の漏れを阻止する優れたシール性能を発揮する一次シール部S1が形成されるとともに、内環状押え突起12のテーパ外周面12aと内環状シール突起52のテーパ内周面52aとが必ず当接することになり、前述した二次シール部S2が良好に形成される利点がある。」

ウ 「【0049】
なお、図4に仮想線で示すように、ガスケットGの外周壁55に外径突出するリング状の脱着フランジfを一体形成しておけば、第1又は第2フランジ部1B,2BからガスケットGを抜出す際に、工具や手指で脱着フランジfを引張る等して外し易くすることができるという利点がある。この場合、脱着フランジfの厚みは、接合状態における第1及び第2フランジ部1B,2Bどうしの間隙よりも小さい値とする。」

エ 記載事項イの「ガスケットGは、・・・左右一対の環状溝51,51とを有する」及び「一対の環状溝51,51は、第1及び第2フランジ部1B,2Bの端面に形成された第1シール端部t1の環状突起11、及び第2シール端部t2の環状突起21のそれぞれに嵌合自在な溝に形成されている」から、リング状のガスケットGは、第1シール端部t1と嵌合する一端面には、環状溝51を備え、第2シール端部t2と嵌合する他端面には、環状溝51を備えているということができる。また、「第1の環状突起11の幅d1と左環状溝51の幅d2との間には、d1>d2という関係が設定されており、・・・、第1の環状突起11と左環状溝51とが、詳しくは、第1の環状突起11の内外の両側周面と相対応する左環状溝51の内外の側周面とが強く圧接され、流体の漏れを阻止する優れたシール性能を発揮する一次シール部S1が形成される」ことから、一対の環状溝51,51は圧入代を備えており、嵌合シール部3に肉厚方向の圧入代を備えているといえる。

オ 記載事項ウ及び図4の図示内容によれば、リング状のガスケットGは、外周壁55に外径突出するリング状の脱着フランジfを有している。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合して、本願補正発明に則って整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「第1フランジ配管1と第2フランジ配管2との接続部にリング状のガスケットGが介在し、前記第1フランジ配管の第1フランジ部1Bに環状突起11、環状押え突起12,13を有する第1シール端部t1が形成され、前記第2フランジ配管の第2フランジ部2Bに環状突起21、環状押え突起22,23を有する第2シール端部t2が形成され、前記リング状のガスケットGは、前記第1シール端部t1と一端面が嵌合して嵌合シール部3を形成し、前記第2シール端部t2と他端面が嵌合して嵌合シール部3を形成し、嵌合シール部3に肉厚方向の圧入代を備える接続構造において、
前記リング状のガスケットGは、外周壁55に外径突出するリング状の脱着フランジfを有し、
前記第1シール端部t1と嵌合する一端面には、環状溝51を備え、前記環状溝51の内側に前記環状溝51の圧入代が設けられ、
前記第2シール端部t2と嵌合する他端面には、環状溝51を備え、前記環状溝51の内側に前記環状溝51の圧入代が設けられている
接続構造。」

(2)刊行物2(特開平7-133869号公報)の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物2には、「ガスケット」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

カ 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、流体管路中の継ぎ手部に配設されるガスケットに関するものである。」

キ 「【0013】
【実施例】以下本発明の実施例を図面について説明すると、図1は本発明のガスケット(30)を直径方向に切断した状態を示す斜視図、そして図2は断面拡大図であって、本実施例におけるガスケット材(1) は合成ゴムでもって形成され、管の端部間において締め付けられる台形状をなした外周部(5) とこの外周部(5) の外側に管の外周側に位置する延長部(6) を備えたリング状をなしている。
【0014】本発明は、弾性材料で形成されたリング状ガスケット材(1) と、接液側外周面(1A)および締め付け圧縮される両側面(1B)(1C)がフッ素系樹脂の薄肉被覆材(2)でもって被覆されてなるガスケットにおいて、上記ガスケット材(1) の接液側外周面(1A)側と対接する被覆材(2) の内面側に上記ガスケット(1) の外周部(5) 内に埋入可能な長方形状の突起(4) を設け、この被覆材(2) をガスケット材(1) の加硫成形時に、成形されるガスケット材(1) の接液側外周面(1A)および両側面(1B)(1C)に位置させ同時加硫接着してこの突起(4) をガスケット材(1) の外周部(5) 内に埋入させ、ガスケット材(1) の接液側外周面(1A)および締め付け圧縮される両側面(1B)(1C)を、厚さ0.5mmのフッ素系樹脂の被覆材(2) により被覆して図2に示したようなガスケット(30)となしている。
【0015】図3は上記ガスケット(30)を管(20)(20)の端面に介装し、袋ナット(21)でもって締め付けシールした状態の部分断面図を示している。」

上記記載事項及び図1?3の図示内容を総合すれば、刊行物2には、次の事項が記載されているものと認められる。
「管の継ぎ手部に配設されるリング状ガスケット材1において、リング状ガスケット材1は、外周部5の外側の管の外周側に、管20に沿った方向に延びている延長部6を有し、延長部6の管20に沿った方向の全長が、外周部5の管20に沿った方向の全長より大きいこと。」

(3)刊行物3(特開2005-140230号公報)の記載事項
本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物3には、「流体機器の接続部シール構造」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

ク 「【技術分野】
【0001】
この発明は、流体用機器に係り、その接続部のシール構造に関する。」

ケ 「【0016】
[第1の実施形態]
以下、本発明の流体用機器の接続部シール構造を具体化した第1の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1に、本発明の流体用機器としてのマニホールドタイプの薬液弁1を断面図により示す。図2に、その薬液弁1を分解断面図により示す。この薬液弁1は、マウンティングプレート2と、同プレート2上に固定された樹脂よりなるマニホールドベース3と、同ベース3上に固定された樹脂よりなるバルブ部4とを備える。この実施形態では、マニホールドベース3とバルブ部4を互いに接続することにより薬液弁1が構成される。この実施形態では、マニホールドベース3が本発明の第1の部品に相当し、バルブ部4が本発明の第2の部品に相当する。この実施形態では、マニホールドベース3及びバルブ部4の流路ブロック9はともに、PTFEより形成される。
【0018】
マニホールドベース3には、流路5が形成される。マニホールドベース3の上面には、流路5に通じる流路口6が形成される。この流路口6の周囲が、マニホールドベース3の接続部7となっている。
・・・略・・・
【0020】
マニホールドベース3の接続部7と流路ブロック9の接続部19との間には、本発明の樹脂よりなるシール部品としてのH形リング20が介在される。この実施形態で、H形リング20は、PTFEよりやや硬いPFAにより形成される。
【0021】
図3に、上記した接続部7,19を拡大断面図に示す。マニホールドベース3の接続部7とH形リング20の対応部位には、互いに凹凸の関係で嵌合する凹凸条21,22がそれぞれ形成される。同じく、流路ブロック9の接続部19とH形リング20の対応部位には、互いに凹凸の関係で嵌合する凹凸条23,24がそれぞれ形成される。
【0022】
図4に、H形リング20を拡大断面図により示す。このH形リング20は、その断面がH形をなしている。H形リング20は、肉厚なリング形状をなし、その下面において、矢印Xで示す肉厚方向(半径方向)中央に周溝25が形成され、リング状の凹凸条22をなしている。同じく、H形リング20は、その上面において、矢印Xで示す肉厚方向(半径方向)中央に周溝26が形成され、リング状の凹凸条24をなしている。この実施形態で、各周溝25,26の内壁には、図4に破線で囲むように、H形リング20の肉厚方向(半径方向)に厚みを有する圧入代27が設けられる。
【0023】
図5に、上側の周溝26の断面形状を示す。周溝26は、テーパ状の開口部26aと、その下側に位置する上段部26b及び下段部26cとを含む。上段部26bの幅W1は下段部26cの幅W2よりやや広く設定され、その幅の差分ΔWが下段部26cに対応して設けられた圧入代27となっている。つまり、周溝26の下段部26cの相対向する内側部分が圧入代27となっている。
【0024】
図6に、H形リング20に対応する各接続部7,19の凹凸条21,23の一部を拡大断面図により示す。下側の接続部7の凹凸条21は、円周状の段部の半径方向中央に、H形リング20の周溝25に対応する周凸条21aを有し、円環状に構成される。上側の接続部19の凹凸条23は、円周状の段部の半径方向中央に、H形リング20の周溝26に対応する周凸条23aを有し、円環状に構成される。各周凸条21a,23aの肉厚方向の幅W3は、H形リング20の各周溝25,26の上段部25b,26bの幅W1と同じに設定される。上記のように各接続部7,19のシール構造が構成される。
【0025】
従って、上記した接続部シール構造によれば、樹脂よりなるマニホールドベース3の接続部7と樹脂よりなる流路ブロック9の接続部19を互いに接続するとき、マニホールドベース3の凹凸条21とH形リング20の凹凸条22とを互いに嵌合し、流路ブロック9の凹凸条23とH形リング20の凹凸条24とを互いに嵌合する。これにより、各凹凸条21,23の周凸条21a,23aがH形リング20の各周溝25,26に嵌合されるとき、各周溝25,26の圧入代27により各周凸条21a,23aがその肉厚方向(半径方向)に締まり嵌めされる。つまり、各周凸条21a,23aがその半径方向の両側から押圧され、各凹凸条21,23とH形リング20との間がシールされる。このため、マニホールドベース3と流路ブロック9の接続部7,19が互いにH形リング20を介して確実にシールされる。・・・略・・・」

コ 上記記載事項ケ及び図5、6によれば、凹凸条22について、周溝25を備え、周溝25の開口部より奥側に、前記周溝25の内側に前記周溝25の圧入代27が設けられ、周溝25の開口部と前記周溝25の圧入代27との間に段差が形成されており、この段差により、凹凸条21の周凸条21aを前記周溝25の開口部から前記周溝25の圧入代27へ案内するための上段部25bが設けられているということができる。また、凹凸条24について、周溝26を備え、周溝26の開口部より奥側に、前記周溝26の内側に前記周溝26の圧入代27が設けられ、周溝26の開口部と前記周溝26の圧入代27との間に段差が形成されており、この段差により、凹凸条23の周凸条23aを前記周溝26の開口部から前記周溝26の圧入代27へ案内するための上段部26bが設けられているということができる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合して、整理すると、刊行物3には、以下の発明(以下「刊行物3発明」という。)が記載されているものと認められる。

「第1の部品(マニホールドベース3)と第2の部品(流路ブロック9)との接続部にシール部品(H形リング20)が介在し、前記第1の部品の接続部とシール部品の対応部位には、互いに凹凸の関係で嵌合する凹凸条21,22が形成され、前記第2の部品の接続部とシール部品の対応部位には、互いに凹凸の関係で嵌合する凹凸条23,24がそれぞれ形成され、シール部品には肉厚方向に厚みを有する圧入代27が設けられる接続部シール構造において、
前記凹凸条22は、周溝25を備え、前記周溝25の開口部より奥側に、前記周溝25の内側に前記周溝25の圧入代27が設けられ、前記周溝25の開口部と前記周溝25の圧入代27との間に設けられる段差により、前記凹凸条21の周凸条21aを前記周溝25の開口部から前記周溝25の圧入代27へ案内するための第1ガイド部が設けられ、
前記凹凸条24は、周溝26を備え、前記周溝26の開口部より奥側に、前記周溝26の内側に前記周溝26の圧入代27が設けられ、前記周溝26の開口部と前記周溝26の圧入代27との間に設けられる段差により、前記凹凸条23の周凸条23aを前記周溝26の開口部から前記周溝26の圧入代27へ案内するための第2ガイド部が設けられている接続部シール構造。」

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明を対比すると、その機能、構造からみて、引用発明の「第1フランジ配管1」は、本願補正発明の「第1の部品」に相当し、以下同様に、
「第2フランジ配管2」は「第2の部品」に、
「リング状のガスケットG」は「シール部材」に、
「第1フランジ配管の第1フランジ部1B」は「第1の部品の接続部」に、
「環状突起11、環状押え突起12,13を有する第1シール端部t1」は「第1凹凸条」に、
「第2フランジ配管の第2フランジ部2B」は「第2の部品の接続部」に、
「環状突起21、環状押え突起22,23を有する第2シール端部t2」は「第2凹凸条」に、
「接続構造」は「接続部シール構造」に、
それぞれ、相当する。
また、引用発明の「前記第1シール端部t1と一端面が嵌合して嵌合シール部3を形成」することは、一端面は第1シール端部t1と嵌合するのであるから、本願補正発明の「第1凹凸条に嵌合する第1嵌合部が一面に設けられ」ることに相当し、同様に、「第2シール端部t2と他端面が嵌合して嵌合シール部3を形成」することは、「第2凹凸条に嵌合する第2嵌合部が他面に設けられ」ることに相当する。さらに、引用発明の「嵌合シール部3に肉厚方向の圧入代を備える」ことは、本願補正発明の「第1及び第2嵌合部に肉厚方向の圧入代を備える」ことに相当する。
そして、引用発明の「脱着フランジf」は、リング状のガスケットGの外周壁55に外径突出するものであるから、本願補正発明の「張出部」と「第1及び第2嵌合部が設けられる環状のシール本体部から外周方向に張り出す張出部」という限りにおいて、一致する。
また、引用発明の「第1シール端部t1と嵌合する一端面には、環状溝51を備え、前記環状溝51の内側に前記環状溝51の圧入代が設けられ」ることは、本願補正発明の「第1嵌合部は、第1環状溝を備え、前記第1環状溝の開口部より奥側に、前記第1環状溝の内側に前記第1環状溝の圧入代が設けられ、前記第1環状溝の開口部と前記第1環状溝の圧入代との間に設けられる段差により、前記第1凹凸条の環状突起を前記第1環状溝の開口部から前記第1環状溝の圧入代へ案内するための第1ガイド部が設けられていること」と、「第1嵌合部は、第1環状溝を備え、前記第1環状溝の内側に前記第1環状溝の圧入代が設けられること」という限りにおいて、一致し、同様に、「第2シール端部t2と嵌合する他端面には、環状溝51を備え、前記環状溝51の内側に前記環状溝51の圧入代が設けられ」ることは、本願補正発明の「第2嵌合部は、第2環状溝を備え、前記第2環状溝の開口部より奥側に、前記第2環状溝の内側に前記第2環状溝の圧入代が設けられ、前記第2環状溝の開口部と前記第2環状溝の圧入代との間に設けられる段差により、前記第2凹凸条の環状突起を前記第2環状溝の開口部から前記第2環状溝の圧入代へ案内するための第2ガイド部が設けられていること」と、「第2嵌合部は、第2環状溝を備え、前記第2環状溝の内側に前記第2環状溝の圧入代が設けられること」という限りにおいて、一致する。

よって、本願補正発明の用語に倣って整理すると、本願補正発明と引用発明とは、
[一致点]
「第1の部品と第2の部品との接続部にシール部材が介在し、前記第1の部品の接続部に第1凹凸条が形成され、前記第2の部品の接続部に第2凹凸条が形成され、前記シール部材は、前記第1凹凸条に嵌合する第1嵌合部が一面に設けられ、前記第2凹凸条に嵌合する第2嵌合部が他面に設けられ、前記第1及び第2嵌合部に肉厚方向の圧入代を備える接続部シール構造において、
前記シール部材は、前記第1及び第2嵌合部が設けられる環状のシール本体部から外周方向に張り出す張出部を有すること、
第1嵌合部は、第1環状溝を備え、前記第1環状溝の内側に前記第1環状溝の圧入代が設けられること、
第2嵌合部は、第2環状溝を備え、前記第2環状溝の内側に前記第2環状溝の圧入代が設けられること、
を備える接続部シール構造。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、「張出部が前記第1及び前記第2の部品の接続部より外側に出ていること」、「前記シール部材は、前記張出部の端部に前記張出部に対して直交する方向に伸びる把持部を有すること」及び「前記把持部の軸線方向の全長(X2)が、前記シール本体部の軸線方向の全長(X3)より大きいこと」を備えているのに対して、引用発明は、張出部(脱着フランジf)を有しているものの、把持部を備えていない点。

[相違点2]
第1及び第2嵌合部について、本願補正発明は、「前記第1嵌合部は、第1環状溝を備え、前記第1環状溝の開口部より奥側に、前記第1環状溝の内側に前記第1環状溝の圧入代が設けられ、前記第1環状溝の開口部と前記第1環状溝の圧入代との間に設けられる段差により、前記第1凹凸条の環状突起を前記第1環状溝の開口部から前記第1環状溝の圧入代へ案内するための第1ガイド部が設けられていること」及び「前記第2嵌合部は、第2環状溝を備え、前記第2環状溝の開口部より奥側に、前記第2環状溝の内側に前記第2環状溝の圧入代が設けられ、前記第2環状溝の開口部と前記第2環状溝の圧入代との間に設けられる段差により、前記第2凹凸条の環状突起を前記第2環状溝の開口部から前記第2環状溝の圧入代へ案内するための第2ガイド部が設けられていること」を備えているのに対して、引用発明は、第1及び第2環状溝(環状溝51)を備えるものの、段差、ガイド部を備えていない点。

[相違点3]
本願補正発明は、「前記第1ガイド部、前記第2ガイド部及び前記把持部が、軸線方向に平行に形成されていることにより、前記シール部材を前記第1及び前記第2凹凸条に圧入を開始する時に、前記シール部材の前記第1及び前記第2環状溝が、前記第1及び前記第2凹凸条に対して平行に保持されていること」を備えているのに対して、引用発明は、第1ガイド部、第2ガイド部及び把持部を備えていない点。

4.当審の判断
(1)相違点1について
刊行物2には、上記2.(2)のとおり、「管の継ぎ手部に配設されるリング状ガスケット材1において、リング状ガスケット材1は、外周部5の外側の管の外周側に、管20に沿った方向に延びている延長部6を有し、延長部6の管20に沿った方向の全長が、外周部5の管20に沿った方向の全長より大きいこと。」が記載されている。この延長部6は、管20に沿って形成されていることから、シール性を高めたり、位置決め作用をなすことは自明であって、このリング状ガスケット材は、本願補正発明や引用発明のシール部材と同様、第1の部品と第2の部品との接続部に設けられるシール部材に関するものであり、技術分野が共通するものである。
そして、刊行物2に記載された事項の「リング状ガスケット材1は、外周部5の外側の管の外周側に、管20に沿った方向に延びている延長部6を有」することは、本願補正発明の「張出部が前記第1及び前記第2の部品の接続部より外側に出ていること」及び「前記シール部材は、前記張出部の端部に前記張出部に対して直交する方向に伸びる把持部を有すること」を充足するものであり、また、刊行物2に記載された事項の「延長部6の管20に沿った方向の全長が、外周部5の管20に沿った方向の全長より大きいこと」は、本願補正発明の「前記把持部の軸線方向の全長(X2)が、前記シール本体部の軸線方向の全長(X3)より大きいこと」に相当するものである。
ところで、引用発明では、張出部としての着脱フランジfが小さく形成されているにすぎないが、張出部を第1の部品と第2の部品との接続部より外側まで形成し、張出部に対して直交する方向に伸びる形状として位置決め用の凸部として取り付けの際の利便性を図ることは、刊行物2に記載された事項の他にも、例えば、特開2005-325853号公報(段落【0042】、【0043】、図8、図9参照。)に記載されているように、管の継ぎ手部に用いられるシール部材の形状として、特別なものではない。
してみると、引用発明において、張出部としての着脱フランジfを、取り付けの利便性を図るため第1及び第2の部品の接続部より外側に出るようにし、張出部の端部に前記張出部に対して直交する方向に伸びる把持部を形成し、把持部の軸線方向の全長(X2)を、シール本体部の軸線方向の全長(X3)より大きくして、上記相違点1に係る本願補正発明のようにすることは、刊行物2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
本願補正発明と刊行物3発明を対比すると、その機能、構造からみて、刊行物3発明の「第1の部品(マニホールドベース3)と第2の部品(流路ブロック9)との接続部にシール部品(H形リング20)が介在し、前記第1の部品の接続部とシール部品の対応部位には、互いに凹凸の関係で嵌合する凹凸条21,22が形成され、前記第2の部品の接続部とシール部品の対応部位には、互いに凹凸の関係で嵌合する凹凸条23,24がそれぞれ形成され、シール部品には肉厚方向に厚みを有する圧入代27が設けられる接続部シール構造」は、本願補正発明の「第1の部品と第2の部品との接続部にシール部材が介在し、前記第1の部品の接続部に第1凹凸条が形成され、前記第2の部品の接続部に第2凹凸条が形成され、前記シール部材は、前記第1凹凸条に嵌合する第1嵌合部が一面に設けられ、前記第2凹凸条に嵌合する第2嵌合部が他面に設けられ、前記第1及び第2嵌合部に肉厚方向の圧入代を備える接続部シール構造」に相当し、同様に、
「前記凹凸条22は、周溝25を備え、前記周溝25の開口部より奥側に、前記周溝25の内側に前記周溝25の圧入代27が設けられ、前記周溝25の開口部と前記周溝25の圧入代27との間に設けられる段差により、前記凹凸条21の周凸条21aを前記周溝25の開口部から前記周溝25の圧入代27へ案内するための上段部25bが設けられ」ていることは、「前記第1嵌合部は、第1環状溝を備え、前記第1環状溝の開口部より奥側に、前記第1環状溝の内側に前記第1環状溝の圧入代が設けられ、前記第1環状溝の開口部と前記第1環状溝の圧入代との間に設けられる段差により、前記第1凹凸条の環状突起を前記第1環状溝の開口部から前記第1環状溝の圧入代へ案内するための第1ガイド部が設けられていること」に、
「前記凹凸条24は、周溝26を備え、前記周溝26の開口部より奥側に、前記周溝26の内側に前記周溝26の圧入代27が設けられ、前記周溝26の開口部と前記周溝26の圧入代27との間に設けられる段差により、前記凹凸条23の周凸条23aを前記周溝26の開口部から前記周溝26の圧入代27へ案内するための上段部26bが設けられ」ていることは、「前記第2嵌合部は、第2環状溝を備え、前記第2環状溝の開口部より奥側に、前記第2環状溝の内側に前記第2環状溝の圧入代が設けられ、前記第2環状溝の開口部と前記第2環状溝の圧入代との間に設けられる段差により、前記第2凹凸条の環状突起を前記第2環状溝の開口部から前記第2環状溝の圧入代へ案内するための第2ガイド部が設けられていること」に、それぞれ、相当し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成が刊行物3発明に開示されている。
そして、刊行物3発明は、第1の部品と第2の部品との接続部に設けられるシール構造に関するものであり、引用発明と技術分野を同じくするものであって、かつ、シール性能を高めるためにシール部品に圧入代を設けるという共通の構造を有するものであるから、引用発明のシール部品に刊行物3発明を適用する動機付けはあるといえる。
したがって、上記相違点2に係る構成とすることは、刊行物3発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
上記のとおり、相違点1及び相違点2に係る構成とすることは、刊行物2に記載された事項及び刊行物3発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことであり、そのものでは、把持部は管の軸線方向に平行に形成されるものであって、かつ、シール部材の組み付け性を考慮すると、第1ガイド部及び第2ガイド部も管の軸線方向に平行に形成されるといえるから、結局、第1ガイド部、第2ガイド部及び把持部が、軸線方向に平行に形成されるものである。そして、このように第1ガイド部、第2ガイド部及び把持部が、軸線方向に平行に形成されたものは、シール部材を第1及び第2凹凸条に圧入を開始する時に、前記シール部材の第1及び第2環状溝が、前記第1及び前記第2凹凸条に対して平行に保持されることとなるから、上記相違点3に係る構成とすることは、刊行物2に記載された事項及び刊行物3発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことと言わざるをえない。

本願補正発明が奏する作用効果は、引用発明、刊行物2に記載された事項及び刊行物3発明から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項及び刊行物3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成24年11月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成23年9月9日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1の部品と第2の部品との接続部にシール部材が介在し、前記第1の部品の接続部に第1凹凸条が形成され、前記第2の部品の接続部に第2凹凸条が形成され、前記シール部材は、前記第1凹凸条に嵌合する第1嵌合部が一面に設けられ、前記第2凹凸条に嵌合する第2嵌合部が他面に設けられ、前記第1及び第2嵌合部に肉厚方向の圧入代を備える接続部シール構造において、
前記シール部材は、前記第1及び第2嵌合部が設けられる環状のシール本体部から外周方向に張り出す張出部を有し、前記張出部が前記第1及び前記第2の部品の接続部より外側に出ていること、
前記シール部材は、前記張出部の端部に前記張出部に対して直交する方向に伸びる把持部を有すること、
前記把持部の軸線方向の全長(X2)が、前記シール本体部の軸線方向の全長(X3)より大きいこと、
を特徴とする接続部シール構造。」
なお、「シール部材の軸線方向の全長(X3)」は「シール本体部の軸線方向の全長(X3)」の誤記と認められるので、上記のように認定した。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及び2とその記載事項は、上記「第2」「2.(1)及び(2)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、「第1嵌合部」、「第2嵌合部」及び「把持部」についての「前記第1嵌合部は、第1環状溝を備え、前記第1環状溝の開口部より奥側に、前記第1環状溝の内側に前記第1環状溝の圧入代が設けられ、前記第1環状溝の開口部と前記第1環状溝の圧入代との間に設けられる段差により、前記第1凹凸条の環状突起を前記第1環状溝の開口部から前記第1環状溝の圧入代へ案内するための第1ガイド部が設けられていること」、「前記第2嵌合部は、第2環状溝を備え、前記第2環状溝の開口部より奥側に、前記第2環状溝の内側に前記第2環状溝の圧入代が設けられ、前記第2環状溝の開口部と前記第2環状溝の圧入代との間に設けられる段差により、前記第2凹凸条の環状突起を前記第2環状溝の開口部から前記第2環状溝の圧入代へ案内するための第2ガイド部が設けられていること」及び「前記第1ガイド部、前記第2ガイド部及び前記把持部が、軸線方向に平行に形成されていることにより、前記シール部材を前記第1及び前記第2凹凸条に圧入を開始する時に、前記シール部材の前記第1及び前記第2環状溝が、前記第1及び前記第2凹凸条に対して平行に保持されていること」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、上記「第2」「3.及び4.」検討した相違点1で相違するものである。
相違点1については、上記「第2」「4.(1)」に記載したとおり、刊行物2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことであるから、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-27 
結審通知日 2013-10-01 
審決日 2013-10-16 
出願番号 特願2007-82890(P2007-82890)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16J)
P 1 8・ 575- Z (F16J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河内 誠  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 山岸 利治
島田 信一
発明の名称 接続部シール構造  
代理人 特許業務法人コスモス特許事務所  

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