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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1282103
審判番号 不服2013-10480  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-05 
確定日 2013-11-28 
事件の表示 特願2007-305745「ピラード容器」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月11日出願公開、特開2009-126563〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成19年11月27日の出願であって、平成24年4月19日付けで拒絶理由が通知され、同年6月22日に手続補正がなされ、平成24年9月21日付けで拒絶理由が通知され、同年11月22日に手続補正がなされたが、平成25年3月12日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成25年6月5日に本件審判の請求がなされ、面接を求める意向が示されたが、当審より面接日の調整を試みたところ、同年9月17日に代理人永井浩之弁理士から面接希望を取り消す旨の電話回答がなされたものである。

第2.本願発明について
1.本願発明
本件出願の請求項1ないし4に係る発明は、平成24年11月22日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1には次のとおり記載されている。
「側部と、
側部上方に設けられたフランジ部と、
側部下方に設けられた底部とを備え、
側部は雌型と雄型との間に配置されたプラスチック製の側部ブランクと、側部ブランク間の隙間に射出された射出樹脂からなり、縦方向に延びる第1ピラー部とを有し、
第1ピラー部はピラー枠体を構成するとともに、
側部ブランクは薄型フィルムからなり、
ピラー枠体は側部ブランク内面に射出された射出樹脂からなる第2ピラー部と、第1ピラー部下部に連結され底部を構成する底部ピラー部とを更に有し、
底部ピラー部は底部周縁を構成する底部周縁ピラー部と、底部中央部を構成する底部中央ピラー部とを有し、
側部ブランクは雌型に吸着され、底部周縁ピラー部は、底部中央ピラー部より高さが高く、第2ピラー部は縦方向に延び、第1ピラー部および第2ピラー部は側部ブランク内面に設けられ環状方向に延びる連結ピラー部により連結されていることを特徴とするピラード容器。」(以下、「本願発明」という。)

2.刊行物等
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-297064号公報(以下、「引用例1」という。)には以下の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
合成樹脂により成形した容器本体の胴壁に、紙により形成したカバー体をインモールド成形により剥離可能に貼着し、容器の廃棄の際にカバー体を容器本体から外して分別廃棄を行うようにした二重容器は、従来より知られている・・・・
【0003】
しかしながら、上記特許文献1記載の二重容器では、分別廃棄するために容器本体(第一の容器体1)からカバー体(第二の容器体2)を外す際に、カバー体から剥離可能部6をミシン目7を介して引き裂いて外し、次いで、カバー体の残部を剥がすため、剥離に手間どり、分別が簡単でないという問題があった。
また、容器内の内容物が熱いものである場合は、容器を手で保持できるようにするために、カバー体の厚さをある程度厚いものにする必要があり、」「【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、紙製のカバー体を貼着した容器として、支持枠とカバー体とからなる容器であって、支持枠は、合成樹脂によって成形され、上枠と、支柱と、底壁を具えた底枠とからなり、カバー体は、紙を主材料として形成され、インモールド成形によりその側端縁が支柱に貼着され、カバー体の一方の側端縁にタブが設けられ、他方の側端縁に重ね合わされており、上端縁と下端縁が、それぞれ上枠の側周壁と底枠の側周壁に貼着されていることを特徴とする構成を採用する。」
「【実施例1】
【0013】
図1に示すように、本発明の容器は、容器支持枠Aと、容器支持枠Aとインモールド成形によって一体化され、容器の外壁を形成するカバー体Bによって構成されている。
【0014】
図2、3に示すように、容器支持枠Aは、PPその他の透明または半透明な合成樹脂で形成され、上枠1と支柱2、底枠3とからなっている。
上枠1は、上端にフランジ4を突設した側周壁5からなり、フランジ4の所定の位置には、把手6が設けられており、側周壁5の下端からは、支柱2が垂設されている。
支柱2は、中央に突条7が突設された一定巾の接着部8によって構成されている。
底枠3は、支柱2の下端に連設され、容器の脚部9を形成する側周壁10と底壁11とからなっている。」
「【0018】
容器の成形は、射出成形金型の雌型の型面にカバー体Bを吸着し、次いで、容器支持枠Aの型面を形成した雄型を型締めして、透明または半透明の合成樹脂を圧入することによってインモールド成形する。
その際、カバー体Bの側端縁の間の隙間によって、支柱2の突条7が形成され、雄型の型面によって接着部8が成形される。
【0019】
成形にあたって、カバー体Bの裏面は、支持枠Aと同材質の合成樹脂製のフィルム12であるから、支柱2の接着部8、上枠1、底枠3の側周壁5、側周壁10に強く接着され、また、支柱2の裏面を広げるように接着部8を形成することによって、カバー体Bとの接着面を広くし、接着性を高めることができる。
また、タブ16の裏面は、他方の側端縁14bの印刷面に接合しており、合成樹脂フィルムが積層されていても、接着性は弱くなっており、タブ16を簡単に引き剥がすことができるようになっている。
【0020】
次に、本発明容器の使用態様と作用効果について説明する。
本発明の容器は、飲料用容器として使用され、内容物を充填した後、フランジ4の上面にシールが貼着された後に、商品として店頭に陳列する。」
また、【図1】から、本発明の容器が、側部と、側部上方に設けられた上枠と、側部下方に設けられた底枠とを備えること、【図2】から、底部周縁を構成する側周壁10の高さが、底部中央部を構成する底壁11より高いことが看取できる。
以上の記載、及び、【図1】?【図5】によれば、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。
「側部と、側部上方に設けられた上枠と、側部下方に設けられた底枠とを備える容器であって、射出成形金型の雌型の型面にカバー体Bを吸着し、次いで、容器支持枠Aの型面を形成した雄型を型締めして、透明または半透明の合成樹脂を圧入することによってインモールド成形され、容器支持枠は、上枠1と支柱2、底枠3とからなり、底枠3は、支柱2の下端に連設され、容器の脚部9を形成する側周壁10と底壁11とからなっており、底部周縁を構成する側周壁10の高さが、底部中央部を構成する底壁11より高くされている容器。」

3.対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「容器支持枠」は、本願発明の「ピラー枠体」に相当し、引用例1記載の発明の「カバー体」は、本願発明の「側部ブランク」に相当する。
また、引用例1記載の発明の「上枠」「支柱」「底枠」「側周壁」「底壁」「容器」は、それぞれ本願発明の「フランジ部」「第1ピラー部」「底部ピラー部」「底部周縁ピラー部」「底部中央ピラー部」「ピラード容器」に相当する。
そうすると、両者は、
「側部と、
側部上方に設けられたフランジ部と、
側部下方に設けられた底部とを備え、
側部は雌型と雄型との間に配置された側部ブランクと、側部ブランク間の隙間に射出された射出樹脂からなり、縦方向に延びる第1ピラー部とを有し、
第1ピラー部はピラー枠体を構成するとともに、
ピラー枠体は、第1ピラー部下部に連結され底部を構成する底部ピラー部とを更に有し、
底部ピラー部は底部周縁を構成する底部周縁ピラー部と、底部中央部を構成する底部中央ピラー部とを有し、
側部ブランクは雌型に吸着され、底部周縁ピラー部は、底部中央ピラー部より高さが高くされているピラード容器。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]本願発明では、ピラー枠体は、側部ブランク内面に射出された射出樹脂からなり縦方向に延びる第2ピラー部を有し、第1ピラー部および第2ピラー部は側部ブランク内面に設けられ環状方向に延びる連結ピラー部により連結されているのに対し、引用例1に記載の発明では、この点について特定されていない点。
[相違点2]
本願発明では、側部ブランクがプラスチック製の薄型フィルムであるのに対し、引用例1に記載の発明では、裏面に合成樹脂製のフィルムを接着した紙によって形成されている点。

4.相違点の検討
そこで、上記相違点について検討する。
[相違点1について]
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭59-31367号(実開昭60-142716号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、
「高温殺菌したジュース類、酒等を高温状態のうちに充填し、充填物の温度が低下しても、容器胴部が変形せず、・・・・複合容器を提供すること」(明細書第5頁12行-第5頁16行)、
「容器の胴部と底部を形成する可撓性ラベル材と、容器の内側に、射出成型法によつて形成した熱可塑性合成樹脂製の、上縁開口リブ、下縁底リブ、これら双方のリブを連結する側壁リブより構成される骨組によって、前記可撓性ラベル材の端部を接合してなる複合容器において、・・・・環帯状部内側には熱可塑性合成樹脂製の環状リブを、前記側壁リブに連接して形成されてなること」(明細書第5頁18行-第6頁9行)、
及び、
「第11図は、本考案に係る複合容器の他の例の斜視図であり、側壁リブ90のほかに、上縁開口リブから下縁底リブに達する側壁補強用縦リブ91を、側壁リブ90に平行に側壁の内側に形成した例を示した」(明細書第12頁19行-第13頁3行)
ことが記載されており、複合容器の胴部変形等を考慮して、側壁リブ90および側壁補強用縦リブ91が、側壁の内側に形成された環状リブ12により連結されているものが開示されている。(ここで上記「側壁リブ90」は、本願発明でいう「第1ピラー部」に相当し、上記「側壁補強用縦リブ91」は、本願発明でいう「第2ピラー部」に相当し、上記「環状リブ」は、本願発明でいう「連結ピラー部」に相当する。)

引用例1記載の発明と引用例2記載の事項は、側部とフランジ部と底部とを備える容器をインモールド成形する点で共通しているし、また、引用例1記載の発明においても、容器内の内容物が熱いものである場合が想定されており(段落【0003】)、内容物を高温状態のうちに充填し、フランジの上面にシールが貼着された後に(段落【0020】)、充填物の温度が低下すると、容器の内圧が減少して胴部変形を生じやすいことは、明らかであるから、このような胴部変形を防止するため、引用例1記載の発明において、引用例2記載のリブ構造を採用することは、当業者であれば容易に思いつくことである。
そうすると、引用例1記載の発明において、側部ブランク内面に第2ピラー部と環状リブとを形成し、第1ピラー部および第2ピラー部が連結ピラー部により連結されるようにして、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点2について]
容器をインモールド成形するために、器壁を構成する可撓性ラベル材としてプラスチック製の薄型フィルムを用いることは、例えば、引用例2、特開2003-291940号公報にも示されるように、周知の技術である。

しかも、本願発明が奏する効果も、当業者が予測できたものであり、格別なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載の発明、及び、上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-30 
結審通知日 2013-10-01 
審決日 2013-10-17 
出願番号 特願2007-305745(P2007-305745)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 二ッ谷 裕子
渡邊 真
発明の名称 ピラード容器  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 永井 浩之  
代理人 磯貝 克臣  
代理人 堀田 幸裕  

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