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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02F |
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管理番号 | 1282108 |
審判番号 | 不服2013-8166 |
総通号数 | 169 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-05-07 |
確定日 | 2013-12-24 |
事件の表示 | 特願2005-379710「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月12日出願公開、特開2007-178896、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件出願は、平成17年12月28日の出願であって、平成23年12月26日付け、及び平成24年5月1日付けで手続補正がなされ、同年12月28日付けで同年5月1日付けの手続補正は却下されると同時に拒絶の査定がなされ、平成25年5月7日に拒絶査定に対する審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲、及び明細書を補正する手続補正がなされ、これらに対し、同年7月8日付けで審尋がなされた。なお、審判請求人から、回答書の提出はなかった。 第2.平成25年5月7日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)の適否 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、 「画素の集合からなる表示画面を有する液晶表示装置であって、 1つの画素のそれぞれは、 n型液晶による液晶分子が傾くように制御された表示制御領域に複数の円周形状にくり抜かれた同心円構造を有するホールを複数個有する画素電極を備え、前記同心円構造は、中心から四方に連結線が設けられていることを特徴とする液晶表示装置。」 と補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。) 2.補正の適否 本件補正は、補正前の平成23年12月26日付け手続補正書に記載の請求項1を削除し、補正前の請求項2を補正後の請求項1とすると共に補正前の請求項2に係る発明を特定するために必要な事項である「(ホールの)同心円構造」に関し、「同心円構造は、中心から四方に連結線が設けられている」と限定するものであって、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項の規定に違反するところはない。 そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)引用例 (ア)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された「特開2005-91640号公報 」(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 ・「一対の第1の基板と、第2の基板との間に、電気光学物質を封入してなるノーマリーブラックモードの電気光学装置であって、 前記第1の基板は、電極を備え、 前記第2の基板は、画素電極と、前記画素電極に対応して設けられているスイッチング素子と、前記スイッチング素子を介して前記画素電極に信号を供給するための配線とを備え、 前記第1の基板および第2の基板の少なくとも一方の基板には反射膜が設けられているとともに、隣接する前記画素電極間であって、前記配線が設けられていない側の前記反射膜の一部に、非形成部が設けられていることを特徴とする電気光学装置。」(【請求項1】) ・「前記第1の基板および第2の基板の少なくとも一方の基板は、画素領域において前記電気光学物質の配向を規制する配向規制手段を備えることを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の電気光学装置。」(【請求項7】) ・「前記配向規制手段は、前記電極および前記画素電極の少なくとも一方の電極に設けられているスリットを含むことを特徴とする請求項7に記載の電気光学装置。」(【請求項8】) ・「1.液晶表示装置の基本構造 まず、図2?図4を参照して、本発明の第1実施形態の電気光学装置としての液晶表示装置の基本構造、すなわち、セル構造や配線、あるいは位相差板および偏光板について具体的に説明する。なお、図2は、本発明に係る第1実施形態の電気光学装置としての液晶表示装置に使用される液晶パネル200の外観を示す概略斜視図であり、図3は、液晶パネル200の模式的な概略断面図であり、図4は、アクティブマトリクス配線の配線例を示す図である。 また、図2に示される液晶パネル200は、二端子型非線形素子としてのTFD素子(Thin Film Diode)31を用いたアクティブマトリクス型構造を有する液晶パネル200であって、図示しないもののバックライトやフロントライト等の照明装置やケース体などを、必要に応じて、適宜取付けることにより、液晶表示装置となる。」(段落【0030】) ・「(2)配線 図2に示すように、第2のガラス基板27の内面(第1のガラス基板13に対向する表面)上に、マトリクス状の画素電極20を形成し、第1のガラス基板13の内面(第2のガラス基板27に対向する表面)上には、複数のストライプ状の電極19を形成することが好ましい。また、画素電極20を、非線形素子31を介して配線26に対して導電接続するとともに、もう一方の電極19を、配線28に対して導電接続することが好ましい。 そして、画素電極20と電極19との交差領域がマトリクス状に配列された多数の画素を構成し、これら多数の画素の配列が、全体として液晶表示領域Aを構成することになる。 また、図4に、ドライバICおよびTFD素子を用いたアクティブマトリクス配線の具体的な配線例を示す。すなわち、Y方向に延在する複数の配線26と、X方向に延在する複数の電極19とから構成されており、各交差部分において画素50が構成されている。また、各画素50において、液晶表示要素51と、TFD素子31とが直列接続されている。」(段落【0032】) ・「また、図6(a)?(c)に例示されるように、第1の基板における電極19には、配向制御をするための第1のスリット41が設けてあるとともに、当該第1のスリット41の平面形状が実質的に円形であることが好ましい。 この理由は、このような第1のスリットを形成することにより、液晶分子の配向方向を制御して、視角特性に優れた画像表示を得ることができるためである。また、かかる第1のスリットの平面形状を実質的に円形とすることにより、全方位に対して視角特性に優れた画像表示を得ることができるためである。 ここで、第1のスリットを形成した場合の液晶分子の配向制御については、以下のようになされる。すなわち、液晶層において電圧非印加状態では、液晶分子は、例えば、垂直配向膜によって、垂直方向に配向する。一方、液晶層において電圧印加状態になると、図7に示すように、負の誘電異方性を有する液晶分子は、その長軸が電気力線Eに対して垂直になるように配向する。そして、第1のスリット41の周辺における電気力線Eは、垂直方向対して傾くために、第1のスリット41の周辺の液晶分子は、第1のスリット41を中心に放射状に倒れるように配向する。よって、あらゆる方向からの画像表示の視認に対しても、優れた画像表示を認識することができる。」(段落【0039】) ・「また、第1の基板12における電極19に設ける第1のスリット41の数は特に制限されるものではく、図6(a)に示すように、画素領域それぞれに対して1個設けることも好ましく、図6(b)?(c)に示すように、画素領域それぞれに対して複数個設けることも好ましい。 ただし、画素電極の形状と相俟って、一つの画素領域においてバランスよく配向制御して、全方位に対して視角特性を向上させることができることから、図6(c)に示すように、画素領域それぞれに対して3個設けることがより好ましい。」(段落【0040】) また、図6(b)、(c)から、以下の事項が看取できる。 ・「1つの画素のそれぞれは、配向規制手段である複数個の実質的に円形にくり抜かれた形状のスリットを有する。」 これらの記載事項、及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「一対の第1の基板と、第2の基板との間に、電気光学物質を封入してなるノーマリーブラックモードの電気光学装置としての液晶表示装置であって、前記第1の基板は、電極を備え、前記第2の基板は、画素電極と、前記画素電極に対応して設けられているスイッチング素子と、前記スイッチング素子を介して前記画素電極に信号を供給するための配線とを備えて、画素電極と電極との交差領域がマトリクス状に配列された多数の画素を構成し、これら多数の画素の配列が、全体として液晶表示領域を構成することになり、1つの画素のそれぞれにおいて、前記第2の基板は、画素領域において前記電気光学物質の配向を規制する配向規制手段を備え、前記配向規制手段は、前記画素電極に設けられている複数個の実質的に円形にくり抜かれた形状のスリットを含み、液晶層において電圧印加状態になると、スリットの周辺の液晶分子は、スリットを中心に放射状に倒れるように配向する電気光学装置としての液晶表示装置。」 (イ)引用例2 同様に引用された、本願の出願前に頒布された「特開2000-47217号公報 」(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 ・「第1基板と、第2基板と、該第1基板と該第2基板との間に挟持された液晶層とを有し、該第1基板と該第2基板とは、それぞれ該液晶層側に、第1電極と第2電極とを有し、該第1電極と、該第2電極と、該第1および第2電極によって電圧が印加される該液晶層の領域とが、表示の単位となる絵素領域を規定し、該絵素領域は該液晶層の液晶分子が軸対称配向する複数のサブ絵素領域を有する、液晶表示装置であって、該第1電極および該第2電極の少なくとも一方は、該絵素領域内に、規則的に配置された複数の開口部を有し、該サブ絵素領域は、多角形の角および辺の少なくとも一方に該開口部を有するサブ電極領域で規定される、液晶表示装置。」(【請求項1】) ・「前記第1電極は、マトリクス状に配置された複数の絵素電極を含み、該複数の絵素電極のそれぞれは、スイッチング素子を介して、走査線および信号線に接続され、前記第2電極は、該複数の絵素電極に対向する対向電極であって、該複数の絵素電極のそれぞれが、前記少なくとも1つのサブ電極領域を有する請求項1に記載の液晶表示装置。」(【請求項2】) ・「図1(a)に示すように、液晶層40に電圧が印加されていない状態においては、液晶分子40aは、垂直配向膜26及び36による配向規制力によって、垂直配向膜26及び36の表面に対して垂直に配向する。図1(b)に示すように、液晶層40に電圧を印加した状態においては、負の誘電異方性を有する液晶分子40aは、分子長軸が電気力線Eに対して垂直になるように配向する。開口部24aの周辺における電気力線Eは、基板21及び基板31の表面に対して傾くので、開口部24aの周辺の液晶分子40aは、開口部24aを中心に放射状に倒れるように配向する。その結果、サブ絵素領域60内の液晶分子40aは、軸対称状に配向する。」(段落【0025】) ・「(実施形態4)上記の実施形態1?3においては、液晶層40の材料として、負の誘電異方性を有するネマティック液晶材料を用いた。本実施形態においては、上記の液晶材料にカイラル剤(例えば、S811:メルク社製)を添加した。液晶層40におけるカイラルピッチが、約18μmになるようにカイラル剤を添加した。なお、カイラル剤をツイスト角90°、すなわちセル厚のおおむね4倍のピッチになるように添加するのは、以下の理由による。まず、電界印加時に90°ツイスト構造とすることによって、従来のTNモードの液晶表示装置と同様に、光の利用効率および白表示の色バランスを最適化することできる。カイラル剤の添加量が少なすぎると、電界印加時のツイスト配向が不安定になることがあり、カイラル剤の添加量が多すぎると、電圧無印加時の垂直配向が不安定化する場合がある。」(段落【0047】) また、図2から、以下の事項が看取できる。 ・「開口部24aは、円形状にくり抜かれた形状である。」 これらの記載事項、及び図示内容を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「第1基板と、第2基板と、該第1基板と該第2基板との間に挟持されたネマティック液晶材料を用いた液晶層とを有し、該第1基板と該第2基板とは、それぞれ該液晶層側に、第1電極と第2電極とを有し、該第1電極と、該第2電極と、該第1および第2電極によって電圧が印加される該液晶層の領域とが、表示の単位となる絵素領域を規定する液晶表示装置であって、該第1電極は、該絵素領域内に、規則的に配置された複数の円形状にくり抜かれた形状の開口部を有し、前記第1電極は、マトリクス状に配置された複数の絵素電極を含み、液晶層に電圧を印加した状態においては、開口部の周辺の液晶分子は、開口部を中心に放射状に倒れるように配向する液晶表示装置。」 (ウ)引用例3 同様に引用された、本願の出願前に頒布された「特開2003-186017号公報 」(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。 ・「【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示装置に関する。」(段落【0001】) ・「同様に、図49(B)に示されるように、液晶分子の傾斜方位が8通りになるような画素電極4902のパターン、図49(C)に示されるように、同心円状の画素電極4903のパターンなど、さまざまなバリエイションが可能である。図49(A)?(C)の画素電極4901?4903は、それぞれ連結された1つの画素電極である。」(段落【0184】) また、上記の段落【0184】の記載、及び図49(C)から、以下の事項が示されているといえる。 ・「1つの画素電極は、複数個の切り欠き部を有し、複数個の切り欠き部は、それぞれ直径の異なる円形状にくり抜かれた形状で、全体としてみると1つの同心円構造となり、前記同心円構造は、中心から一方に連結線が設けられている。」 これらの記載事項、及び図示内容を総合すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「複数個の切り欠き部を有し、複数個の切り欠き部は、それぞれ他の切り欠き部の直径と異なる円形状にくり抜かれた形状で、複数個の切り欠き部を全体としてみると1つの同心円構造となり、前記同心円構造は、中心から一方に連結線が設けられている1つの画素電極を備えた液晶表示装置。」 (2)引用発明1に関して (ア)対比 本願補正発明と引用発明1とを対比すると、 後者における「液晶表示領域」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「表示画面」に相当し、以下同様に、「電気光学装置としての液晶表示装置」は「液晶表示装置」に、「『配向規制手段』、及び『スリット』」は「ホール」に、それぞれ相当する。 また、後者における「『電気光学物質』、及び『液晶層』」と前者における「n型液晶」とは、「液晶」との概念で共通する。 また、後者における「液晶表示領域」は、多数の画素の配列により、全体として構成されているから、「画素の集合からなる」といえる。 また、後者において、液晶層において電圧印加状態になると、スリットの周辺の液晶分子は、スリットを中心に放射状に倒れるように配向するから、「液晶層による液晶分子が傾くように制御された」といえる。 また、後者における「画素」が、「液晶層による液晶分子が傾くように制御された表示制御領域」を有することは、明らかである。 したがって、両者は、 「画素の集合からなる表示画面を有する液晶表示装置であって、 1つの画素のそれぞれは、 液晶による液晶分子が傾くように制御された表示制御領域にくり抜かれたホールを複数個有する画素電極を備える液晶表示装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 液晶に関し、本願補正発明は、「n型液晶」であるのに対し、引用発明1は、この点につき、明らかでない点。 [相違点2] ホールが、本願補正発明では、「複数の円周形状に」くり抜かれた「同心円構造を有」し、「前記同心円構造は、中心から四方に連結線が設けられている」のに対し、引用発明1では、実質的に円形にくり抜かれた形状のスリットである点。 (イ)判断 (イ-1)新規性について 上記のとおり、引用発明1は、上記相違点1、及び2に係る本願補正発明の発明特定事項を具備していない。 したがって、本願発明が、引用発明1であるとすることはできない。 (イ-2)進歩性について 上記相違点1、び2について以下検討する。 引用発明3は、上記(1)(ウ)のとおりであって、引用発明3における「1つの画素電極」は、「1つの画素に対応している」ものであることは、明らかである。 そして、引用発明3の複数個の「切り欠き部」は、その機能、作用等からみて、本願補正発明の複数個の「ホール」に相当するということができる。しかしながらが、本願補正発明の「ホール」は、「複数の円周形状にくり抜かれた同心円構造を有する」ものであるのに対し、引用発明3の「切り欠き部」は、「それぞれ他の切り欠き部の直径と異なる円形状にくり抜かれた形状」のものであるから、両者は、そもそもその形状において異なるものである。 してみると、引用発明1、及び3には、少なくとも上記相違点2に係る本願補正発明の「複数の円周形状にくり抜かれた同心円構造を有するホール」との発明特定事項を備えていない。 また、仮に、引用発明1の「スリット」に引用発明3の「切り欠き部」を適用したとしても、引用発明1のスリットの「実質的に円形にくり抜かれた形状」が、引用発明3の切り欠き部の「それぞれ他の切り欠き部の直径と異なる円形状にくり抜かれた形状」に置き換わり、引用発明1の画素電極に設けられている複数個のスリットの一つ一つが他のスリットの直径と異なる円形状にくり抜かれた形状となるものが想定されるにとどまる。してみると、引用発明1の「スリット」に引用発明3の「切り欠き部」を適用したとしても、上記相違点2に係る本願補正発明の「複数の円周形状にくり抜かれた同心円構造を有するホール」との発明特定事項を備えることはできない。 また、他に引用発明1、及び3に基づいて、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を備えるものとなすことを、当業者が容易に想到し得たといえる根拠も見当たらない。 そして、本願補正発明は、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「以上のように、実施の形態2によれば、画素電極の形状を複数の同心円をくり抜いた形状とすることによっても、全方位に対する視認性を改善した液晶表示装置を容易に得ることができる。」(段落【0020】)、及び「さらに、製造段階においては、画素電極の形状を変更するだけであり、従来と同様のプロセスで、全方位に対する視認性を改善した液晶表示装置を容易に製造可能である。さらに、画素電極の形状、例えば、画素電極の大きさあるいは画素電極間のくり抜きの距離等の設計自由度を増すことができる。」(段落【0021】)という作用効果を奏するものである。 したがって、上記相違点1を検討するまでもなく、本願補正発明は、引用発明1、及び3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (3)引用発明2に関して (ア)対比 本願補正発明と引用発明2とを対比すると、 後者における「表示の単位となる絵素領域」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「表示制御領域」に相当し、以下同様に、「ネマティック液晶材料を用いた液晶層」は「n型液晶」に、「開口部」は「ホール」に、「『第1電極』、及び『絵素電極』」は「画素電極」に、それぞれ相当する。 また、後者において、第1電極が、マトリクス状に配置された複数の絵素電極を含む液晶表示装置であるから、「絵素領域の集合からなる表示画面を有する」ものであることは、明らかである。 また、後者における「表示の単位となる絵素領域」が、「1つの画素」に備えられていることは、明らかである。 また、後者において、液晶層に電圧を印加された状態においては、開口部の周辺の液晶分子が、開口部を中心に放射状に倒れるように配向するから、「液晶層による液晶分子が傾くように制御された」といえる。 したがって、両者は、 「画素の集合からなる表示画面を有する液晶表示装置であって、 1つの画素のそれぞれは、 n型液晶による液晶分子が傾くように制御された表示制御領域にくり抜かれたホールを複数個有する画素電極を備える液晶表示装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点3] ホールが、本願補正発明では、「複数の円周形状に」くり抜かれた「同心円構造を有」し、「前記同心円構造は、中心から四方に連結線が設けられている」のに対し、引用発明2では、円形状にくり抜かれた形状の開口部である点。 (イ)判断 (イ-1)新規性について 上記のとおり、引用発明2は、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項を具備していない。 したがって、本願発明が、引用発明2であるとすることはできない。 (イ-2)進歩性について 上記相違点3について以下検討する。 上記(2)(イ)に示したとおり、本願補正発明の「ホール」と引用発明3の「切り欠き部」とは、そもそもその形状において異なっている。 してみると、引用発明2、及び3には、少なくとも上記相違点3に係る本願補正発明の「複数の円周形状にくり抜かれた同心円構造を有するホール」との発明特定事項を備えていない。 また、仮に、引用発明2の「開口部」に引用発明3の「切り欠き部」を適用したとしても、引用発明1のスリットの「円形状にくり抜かれた形状」が、引用発明3の切り欠き部の「それぞれ他の切り欠き部の直径と異なる円形状にくり抜かれた形状」に置き換わり、引用発明2の絵素電極に設けられている複数個の開口部の一つ一つが他の開口部の直径と異なる円形状にくり抜かれた形状となるものが想定されるにとどまる。してみると、引用発明1の「開口部」に引用発明3の「切り欠き部」を適用したとしても、上記相違点2に係る本願補正発明の「複数の円周形状にくり抜かれた同心円構造を有するホール」との発明特定事項を備えることはできない。 また、他に引用発明2、及び3に基づいて、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を備えるものとなすことを、当業者が容易に想到し得たといえる根拠も見当たらない。 そして、本願補正発明は、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を具備することにより、上記(2)(イ)に示したとおりの本願明細書に記載の作用効果を奏するものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明2、及び3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (4)むすび 以上のとおりであって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定の規定に適合する。 第3.本願の発明について 本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2013-12-11 |
出願番号 | 特願2005-379710(P2005-379710) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(G02F)
P 1 8・ 121- WY (G02F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 森江 健蔵 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 吉野 公夫 |
発明の名称 | 液晶表示装置 |
代理人 | 上田 俊一 |
代理人 | 吉田 潤一郎 |
代理人 | 梶並 順 |
代理人 | 曾我 道治 |