• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1282192
審判番号 不服2012-18583  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-24 
確定日 2013-11-29 
事件の表示 特願2009-157190「遊技機、及び演出制御基板」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月20日出願公開、特開2011- 10832〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年7月1日の出願であって、平成24年6月27日付け(発送:7月2日)で拒絶査定され、これに対し、同年9月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされ、当審において、同年11月5日付け(発送:11月6日)で審査官の前置報告書に基づく審尋を行い、同年12月27日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成24年9月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年9月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、補正前の請求項1?5に記載された
「【請求項1】
遊技球の入賞に応じて抽選を行う主制御基板と、該主制御基板からの制御信号に基づいて所定の演出処理を行う演出制御基板とを備えた遊技機であって、
前記主制御基板は、
該主制御基板のスペック情報を含むコマンドを前記演出制御基板に送信するコマンド送信手段を備え、
前記演出制御基板は、
前記主制御基板が第1のスペックの場合に用いられる第1演出用データと、前記主制御基板が第2のスペックの場合に用いられる第2演出用データとを含む演出用データ記憶手段と、
前記主制御基板からの前記コマンドに基づいて、前記第1演出用データ又は前記第2演出用データの何れかを用いて演出を実行する演出実行手段とを備え、
前記コマンド送信手段は、電源復旧時に前記スペック情報を含むコマンドを送信し、
前記演出実行手段は、前記コマンドに基づいて前記第1演出用データ又は前記第2演出用データの何れかを選択し、該選択した演出用データを用いて電源復旧以後の演出を実行する遊技機。
【請求項2】
前記コマンド送信手段は、電源投入時に前記スペック情報を含むコマンドを送信し、
前記演出実行手段は、前記コマンドに基づいて前記第1演出用データ又は前記第2演出用データの何れかを選択し、選択した演出用データを用いて電源投入以後の演出を実行する、請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記第1演出用データは、複数の演出と、該複数の演出の出現確率を示すデータとを記憶した第1演出テーブルを含み、
前記第2演出用データは、前記複数の演出と、前記第1演出テーブルに記憶されたデータが示す出現確率とは異なる、前記複数の演出の出現確率を示すデータとを記憶した第2演出テーブルを含み、
前記演出実行手段は、前記第1演出テーブル又は前記第2演出テーブルに記憶された演出を前記出現確率を示すデータに基づく抽選によって選択することにより演出を実行する、請求項1又は2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記演出用データ記憶手段は、出現率が0に設定された演出内容を含む、請求項1から3の何れかに記載の遊技機。
【請求項5】
遊技球の入賞に応じて抽選を行う主制御基板からの制御信号に基づいて所定の演出処理を行う演出制御基板であって、
前記主制御基板が第1のスペックの場合に用いられる第1演出用データと、前記主制御基板が第2のスペックの場合に用いられる第2演出用データとを含む演出用データ記憶手段と、
前記主制御基板からのスペック情報を含むコマンドに基づいて、前記第1演出用データ又は前記第2演出用データの何れかを選択して演出を実行する演出実行手段とを備え、
前記演出実行手段は、前記主制御基板から電源復旧時に受信する前記スペック情報を含むコマンドに基づいて前記第1演出用データ又は前記第2演出用データの何れかを選択し、該選択した演出用データを用いて電源復旧以後の演出を実行する、演出制御基板。」という発明を、
「【請求項1】
遊技球の入賞に応じて抽選を行う主制御基板と、該主制御基板からの制御信号に基づいて所定の演出処理を行う演出制御基板とを備えた遊技機であって、
前記主制御基板は、
該主制御基板のスペック情報を含むコマンドを前記演出制御基板に送信するコマンド送信手段を備え、
前記演出制御基板は、
前記主制御基板が第1のスペックの場合に用いられ、各演出の出現確率を示す複数種類の演出テーブルを有する第1演出用データと、前記主制御基板が第2のスペックの場合に用いられ、各演出の出現確率を示す複数種類の演出テーブルを有する第2演出用データとを含む演出用データ記憶手段と、
前記主制御基板からの前記コマンドに基づいて、前記第1演出用データを構成する演出テーブル及び前記第2演出用データを構成する演出テーブルのうちの何れか1つを用いて演出を実行する演出実行手段とを備え、
前記コマンド送信手段は、電源復旧を条件に前記スペック情報を含むコマンドを送信し、
前記演出実行手段は、前記コマンドに基づいて前記第1演出用データを構成する演出テーブル及び前記第2演出用データを構成する演出テーブルのうちの何れか1つを選択し、選択した演出用データを用いて電源復旧以後の演出を実行する遊技機。
【請求項2】
前記コマンド送信手段は、電源投入時に前記スペック情報を含むコマンドを送信し、
前記演出実行手段は、前記コマンドに基づいて前記第1演出用データを構成する演出テーブル及び前記第2演出用データを構成する演出テーブルのうちの何れか1つを選択し、選択した演出用データを用いて電源投入以後の演出を実行する、請求項1に記載の遊技機。」という発明に変更することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。

(2)補正の適否
本件補正は、特許請求の範囲について、以下に挙げる補正事項を含むものである。

(a)補正前の請求項3?5を削除する補正。

(b)補正前の請求項1における「前記主制御基板が第1のスペックの場合に用いられる第1演出用データと、前記主制御基板が第2のスペックの場合に用いられる第2演出用データとを含む演出用データ記憶手段と、」という事項を、
「前記主制御基板が第1のスペックの場合に用いられ、各演出の出現確率を示す複数種類の演出テーブルを有する第1演出用データと、前記主制御基板が第2のスペックの場合に用いられ、各演出の出現確率を示す複数種類の演出テーブルを有する第2演出用データとを含む演出用データ記憶手段と、」とする補正。

(c)補正前の請求項1における「前記第1演出用データ又は前記第2演出用データの何れかを用いて演出を実行する演出実行手段と」という事項を、
「前記第1演出用データを構成する演出テーブル及び前記第2演出用データを構成する演出テーブルのうちの何れか1つを用いて演出を実行する演出実行手段と」とする補正。

(d)補正前の請求項1における「前記コマンド送信手段は、電源復旧時に前記スペック情報を含むコマンドを送信し、」という事項を、
「前記コマンド送信手段は、電源復旧を条件に前記スペック情報を含むコマンドを送信し、」とする補正。

(e)補正前の請求項1における「前記演出実行手段は、前記コマンドに基づいて前記第1演出用データ又は前記第2演出用データの何れかを選択し、該選択した演出用データを用いて電源復旧以後の演出を実行する」という事項を、
「前記演出実行手段は、前記コマンドに基づいて前記第1演出用データを構成する演出テーブル及び前記第2演出用データを構成する演出テーブルのうちの何れか1つを選択し、選択した演出用データを用いて電源復旧以後の演出を実行する」とする補正。

(f)補正前の請求項2における「前記演出実行手段は、前記コマンドに基づいて前記第1演出用データ又は前記第2演出用データの何れかを選択し、選択した演出用データを用いて電源投入以後の演出を実行する、」という事項を、
「前記演出実行手段は、前記コマンドに基づいて前記第1演出用データを構成する演出テーブル及び前記第2演出用データを構成する演出テーブルのうちの何れか1つを選択し、選択した演出用データを用いて電源投入以後の演出を実行する、」とする補正。

上記補正事項についてそれぞれ検討する。

補正事項(a)については、請求項の削除を目的とするものに該当する。

補正事項(b)については、「前記主制御基板が第1のスペックの場合に用いられる第1演出用データ」、「前記主制御基板が第2のスペックの場合に用いられる第2演出用データ」を具体的に特定するものであるから、限定的減縮を目的とするものに該当する。
しかしながら、「前記主制御基板が第1のスペックの場合に用いられ、各演出の出現確率を示す複数種類の演出テーブルを有する第1演出用データと、前記主制御基板が第2のスペックの場合に用いられ、各演出の出現確率を示す複数種類の演出テーブルを有する第2演出用データとを含む演出用データ記憶手段と、」とする点は、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)には記載されていない。以下、その理由を説明する。

段落【0115】には「また、各演出の出現確率を変更するだけで、スペックに応じて全く異なる演出を実行することも可能である。図12は、スペックに応じて異なる演出を実行するための演出テーブルの一例を示した図である。なお、図12では、演出の選択のための乱数は、0?99まで変動するものとして、各演出に割り当てられた当選番号の個数が示されている。図12に示すように、演出テーブル10及び演出テーブル20には、それぞれ同じ演出を示すデータが格納されているが、それぞれの演出の出現確率が異なる。例えば、スペックAでは、演出テーブル10の演出5は当選番号が0個設定されているため、スペックAでは、演出5の演出が実行されることはない。しかしながら、スペックBでは、演出テーブル20の演出5は当選番号が5個設定されているため、スペックBでは、演出5が実質的に新たに追加されている。このようにして、各演出の当選番号(出現確率を示すデータ)を変更することにより、スペックの変更に応じて新たな演出を追加したり、削除したりすることができる。」と、
段落【0139】には、「また、他の実施形態では、演出制御部400のROM402は、着脱可能な外付けの記憶手段(不揮発性メモリ等)であってもよい。この場合において、より柔軟に演出を変更することができる。すなわち、上述した例では、メイン制御部100用データとメイン制御部120用データとがROM402に記憶されたが、ROM402を着脱可能とし、これらのデータとは異なるデータを記憶した記憶手段に交換することによって、同じスペックでも異なる演出用のデータを選択することができる。図15は、他の実施形態における演出制御部の構成を示す図である。図15に示されるように、演出制御部400のROM402の一部又は全部が、外部記憶手段411又は412に代替されてもよい。外部記憶手段411及び412は、演出制御部400に着脱可能に接続される。外部記憶手段411には、スペックA用データ1とスペックB用データ1とが記憶されている。また、外部記憶手段412には、スペックA用データ2とスペックB用データ2とが記憶されている。スペックA用データ1とスペックA用データ2とは、スペックA用の演出データであるが、互いに異なるデータである。このように、演出用データを外部記憶手段に記憶することにより、当該外部記憶手段を交換するだけで、演出を容易に変更することができる。」と記載されており、
外部記憶手段411(スペックA用データ1とスペックB用データ1とが記憶)と外部記憶手段412(スペックA用データ2とスペックB用データ2とが記憶)とを交換可能とすることにより、スペックA(「第1のスペック」に相当)の場合に用いられる第1演出用データ、スペックB(「第2のスペック」に相当)の場合に用いられる第2演出用データを、それぞれ、スペックA用データ1とスペックA用データ2の2種類、スペックB用データ1とスペックB用データ2の2種類、設けた点が記載されている。
しかしながら、補正事項(b)の「前記主制御基板が第1のスペックの場合に用いられ、各演出の出現確率を示す複数種類の演出テーブルを有する第1演出用データと、前記主制御基板が第2のスペックの場合に用いられ、各演出の出現確率を示す複数種類の演出テーブルを有する第2演出用データとを含む演出用データ記憶手段と、」とする構成は、
第1のスペックの場合に用いられる複数種類の演出テーブルを有する第1演出用データ、及び、第2のスペックの場合に用いられる複数種類の演出テーブルを有する第2演出用データが、全て1つの内部記憶手段(ROM)に記憶されており、外部記憶手段を交換することなく、いつでも、第1演出用データの複数種類の演出テーブル、及び、第2演出用データの複数種類の演出テーブル、から何れか1つの演出テーブルを選択できるものを含むものであるが、
外部記憶手段を交換することなく、いつでも、第1演出用データの複数種類の演出テーブル、及び、第2演出用データの複数種類の演出テーブル、から何れか1つの演出テーブルを選択できるようにした点は、当初明細書等には記載されていない。
また、補正事項(b)は、いつでも、第1演出用データの複数種類の演出テーブル、及び、第2演出用データの複数種類の演出テーブル、から何れか1つの演出テーブルを選択できるようにしたものを含むものであるから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるともいえない。
よって、補正事項(b)は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

補正事項(c)、(e)及び(f)については、補正事項(b)において、「第1演出用データ」及び「第2演出用データ」が「各演出の出現確率を示す複数種類の演出テーブルを有する」と限定されたことに伴い、「演出を実行する演出実行手段」が用いる演出データは、「第1演出用データを構成する演出テーブル及び第2演出用データを構成する演出テーブルのうちの何れか1つ」であると具体的に特定するものであるから、限定的減縮を目的とするものに該当する。
しかしながら、補正事項(c)、(e)及び(f)は、補正事項(b)と同様に、第1のスペックの場合に用いられる複数種類の演出テーブルを有する第1演出用データ、及び、第2のスペックの場合に用いられる複数種類の演出テーブルを有する第2演出用データが、全て1つの内部記憶手段(ROM)に記憶されており、外部記憶手段を交換することなく、いつでも、第1演出用データの複数種類の演出テーブル、及び、第2演出用データの複数種類の演出テーブル、から何れか1つの演出テーブルを選択できるものを含むものである。
よって、補正事項(c)、(e)及び(f)は、補正事項(b)と同様に、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

補正事項(d)については、「電源復旧時に」という記載を「電源復旧を条件に」と補正することにより、「前記コマンド送信手段」が「前記スペック情報を含むコマンドを送信」するタイミングを、「電源復旧時」とするものだけでなく、電源復旧から所定時間経過後とするもの等、「電源復旧時」でないタイミングでコマンドを送信するものが含まれるように拡張されたから、限定的限縮を目的とするものに該当するとはいえない。
また、「前記コマンド送信手段は、電源復旧を条件に前記スペック情報を含むコマンドを送信し、」とする点は、当初明細書等には記載されていない。以下、その理由を説明する。

段落【0009】には「本発明では、コマンド送信手段は、電源投入時又は電源復旧時に上記スペック情報を含むコマンド(電源投入コマンド)を送信してもよい。この場合において、演出実行手段は、上記コマンドに基づいて第1演出用データ又は第2演出用データの何れかを選択し、選択した演出用データを用いて電源投入又は電源復旧以後の演出を実行する。」と、
段落【0010】には「上記によれば、遊技機の電源投入時又は電源復旧時に主制御基板のスペックを判別することができ、電源投入又は電源復旧以降は、主制御基板のスペックに応じた演出を実行することができる。」と記載されており、
コマンド送信手段が、電源復旧時に上記スペック情報を含むコマンドを送信する点は記載されているが、コマンド送信手段がスペック情報を含むコマンドを送信するタイミングを、電源復旧から所定時間経過後であるもの、電源復旧後の所定条件が成立したタイミングであるもの等、「電源復旧時」でないタイミングにするものを含むようにした点は、当初明細書等には記載されていない。
また、補正事項(d)は、コマンド送信手段がスペック情報を含むコマンドを送信するタイミングを、電源復旧から所定時間経過後であるもの等、「電源復旧時」でないタイミングにするものを含むようにしたものであるから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるともいえない。
よって、補正事項(d)は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

また、上記補正事項(d)の補正前の記載は明瞭であるから、上記補正事項(d)は明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当するとはいえず、請求項の削除、誤記の訂正を目的とするものにも該当するといえない。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

しかしながら、事案に鑑み、本件補正が特許法第17条の2第3項及び第5項の規定に違反しないものと仮定して、本件補正により補正された請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討を続けることとする。

(3)引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由(平成24年2月8日付け拒絶理由通知)において引用文献1として引用された特開2003-199909号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。
(ア)「【0007】パチンコ遊技機には、可変表示装置、発光体およびスピーカ等の演出用の電気部品を用いた演出内容にさほどの変わりはないが、大当りの発生確率等の仕様が替わっているシリーズ機がある。例えば、同様の演出内容(可変表示装置に表示される背景やキャラクタが共通している)による演出を行うAシリーズにおけるシリーズ機としてのa機種、b機種は、大当りの発生確率等の仕様が同一ではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】a機種とb機種とは異機種ではあるが、演出内容にさほど変わりはないので、演出制御手段の構成を同じにすることがコスト等の面から得策である。しかし、演出制御手段の構成を同じにしたのでは、演出内容が全く同一になって、a機種とb機種との違いは大当りの発生確率等の仕様が異なるだけになってしまう。すなわち、a機種とb機種との間で演出内容に差を設けることが難しい。」
(イ)「【0010】そこで、本発明は、遊技制御手段の構成の変更を少なくしつつ、同一シリーズの他機種に比べて演出内容に差を付けることができる遊技機を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の態様の遊技機は、表示状態が変化可能な可変表示装置(例えば可変表示装置9)を含み、変動開始の条件の成立(例えば始動入賞口14への遊技球の入賞)に応じて可変表示装置に表示される識別情報の可変表示を開始し、可変表示装置に可変表示される識別情報の表示結果が所定の表示態様(例えば左中右の識別情報が揃う)となった場合に遊技者に有利な状態(例えば大当り遊技状態)に制御可能となる遊技機であって、複数種類の機種で共通に用いられ遊技機に設けられた演出用の電気部品(例えば可変表示装置9)を制御するための演出制御手段(例えば表示制御用CPU101を含む表示制御手段)と、機種により少なくとも一部の制御内容が異なり遊技の進行を制御するとともに、遊技の進行状況に応じて演出制御手段にコマンド(例えば表示制御コマンド)を送信する遊技制御手段(例えばCPU56等)とを備え、遊技制御手段が、遊技機への電力供給開始時に、複数種類の機種のうちのいずれの機種であるのかを判別可能な機種判別コマンド(例えばEXTデータに機種コードが設定された初期化コマンド)を演出制御手段に送信し、変動開始の条件が成立すると識別情報の複数種類の可変表示態様のうちいずれの可変表示態様を実行するのかを特定可能な変動パターンコマンド(例えば80XX(H)の表示制御コマンド)を演出制御手段に送信し、複数種類の可変表示態様には、複数種類の機種において共通使用される変動パターンコマンドによって共通に用いられるものがあり、演出制御手段が、複数種類の機種のそれぞれに対応した複数種類の演出用データを記憶する記憶手段(例えばROM102)を有し、演出用データが、変動パターンコマンドが受信されたときに、可変表示装置に表示される識別情報の表示結果が所定の表示態様となること、または最後に表示される識別情報以外の識別情報が前記所定の表示態様となる条件を満たすことを事前に報知するための予告演出(例えばリーチ予告や大当り予告)の少なくともいずれかを行うか否かを決定するためのデータ例えば予告振り分けテーブル)を含むとともに、機種が異なると予告演出を行うか否かの選択率が異なるように構成され(例えば予告振り分けテーブル中の予告する/しないの振り分け方が異なる)、演出制御手段が、遊技制御手段から受信した機種判別コマンドにもとづいて機種を判別し、判別した機種に対応した演出用データ(例えば機種に対応した予告振り分けテーブル)を用いて予告演出を行うか否かの決定を行うことを特徴とする。」
(ウ)「【0013】第1の態様において、演出用データは変動パターンコマンドの種類に応じていずれの態様の予告演出を行うのかを決定するためのデータ(例えば予告振り分けテーブル)を含み、機種が異なると予告演出の実行内容が異なる(例えば予告振り分けテーブル中の予告の種類の振り分け方が異なる)ように構成されていてもよい。」
(エ)「【0035】次に、パチンコ遊技機1の裏面の構造について図3を参照して説明する。図3は、遊技機を裏面から見た背面図である。」
(オ)「【0057】次に遊技機の動作について説明する。図7は、主基板31における遊技制御手段(CPU56およびROM,RAM等の周辺回路)が実行するメイン処理を示すフローチャートである。なお、遊技制御手段は、同一シリーズの機種でも、機種が異なると、少なくとも一部の制御内容が異なる。遊技機に対して電源が投入され、リセット端子の入力レベルがハイレベルになると、CPU56は、ステップS1以降のメイン処理を開始する。メイン処理において、CPU56は、まず、必要な初期設定を行う。」
(カ)「【0068】バックアップありを確認したら、CPU56は、バックアップRAM領域のデータチェック(この例ではパリティチェック)を行う(ステップS9)。遊技機への電力供給が停止する際に実行される電力供給停止時処理において、チェックサムが算出され、チェックサムはバックアップRAM領域に保存されている。ステップS9では、算出したチェックサムと保存されているチェックサムとを比較する。不測の停電等の電力供給停止が生じた後に復旧した場合には、バックアップRAM領域のデータは保存されているはずであるから、チェック結果(比較結果)は正常(一致)になる。チェック結果が正常でないということは、バックアップRAM領域のデータが、電力供給停止時のデータとは異なっていることを意味する。そのような場合には、内部状態を電力供給停止時の状態に戻すことができないので、電力供給の停止からの復旧時でない電源投入時に実行される初期化処理を実行する。
【0069】チェック結果が正常であれば、CPU56は、遊技制御手段の内部状態と表示制御手段等の電気部品制御手段の制御状態を電力供給停止時の状態に戻すための遊技状態復旧処理を行う(ステップS10)。そして、バックアップRAM領域に保存されていたPC(プログラムカウンタ)の退避値がPCに設定され、そのアドレスに復帰する。遊技状態復旧処理においてPCが電力供給停止時前の状態に復元され、かつ、各種データ(例えば各乱数を生成するためのカウンタ)がバックアップRAMに保存されていることから、遊技機への電力供給が停止した後所定時間(バックアップRAMのデータ保持可能期間)内に電力供給が復旧すれば、例えば、後述する判定用乱数、表示用乱数および初期値用乱数を生成するためのカウンタのカウント値は、電力供給停止時前の状態から継続されることになる。
【0070】初期化処理では、CPU56は、まず、RAMクリア処理を行う(ステップS11)。また、所定の作業領域(例えば、特別図柄判定用乱数カウンタ、特別図柄判定用バッファ、プロセスフラグ、払出コマンド格納ポインタ、賞球中フラグ、球切れフラグ、払出停止フラグなど制御状態に応じて選択的に処理を行うためのフラグ)に初期値を設定する作業領域設定処理を行う(ステップS12)。さらに、球払出装置97からの払出が可能であることを指示する払出許可状態指定コマンドを払出制御基板37に対して送信する処理を行う(ステップS13)。
【0071】また、演出制御基板(ランプ制御基板35、音制御基板70、図柄制御基板80)を初期化するための初期化コマンドを各演出制御基板に送信する処理を実行する(ステップS14)。初期化コマンドとして、可変表示装置9において表示される初期図柄を示すコマンド(図柄制御基板80に対して)や賞球ランプおよび球切れランプの消灯を指示するコマンド(ランプ制御基板35に対して)等がある。そして、初期化コマンドには、機種を示す情報が含まれている。つまり、遊技制御手段は、遊技機への電力供給開始時に、複数種類の機種のうちのいずれの機種であるのかを判別可能な機種判別コマンドを演出制御手段に送信するように構成されている。
【0072】そして、2ms毎に定期的にタイマ割込がかかるようにCPU56に設けられているCTCのレジスタの設定が行われる(ステップS15)。すなわち、初期値として2msに相当する値が所定のレジスタ(時間定数レジスタ)に設定される。
【0073】初期化処理の実行(ステップS11?S15)が完了すると、メイン処理で、表示用乱数更新処理(ステップS17)および初期値用乱数更新処理(ステップS18)が繰り返し実行される。表示用乱数更新処理および初期値用乱数更新処理が実行されるときには割込禁止状態とされ(ステップS16)、表示用乱数更新処理および初期値用乱数更新処理の実行が終了すると割込許可状態とされる(ステップS19)。表示用乱数更新処理および初期値用乱数更新処理が実行されるときには割込禁止状態になっているので、それらの乱数更新処理が実行されている最中に後述する2msタイマ割込が生じ割込処理で乱数更新処理が実行され、カウント値に矛盾が生じてしまうことが防止される。」
(キ)「【0084】図9は、CPU56が実行する特別図柄プロセス処理のプログラムの一例を示すフローチャートである。図9に示す特別図柄プロセス処理は、図8のフローチャートにおけるステップS25の具体的な処理でもある。CPU56は、特別図柄プロセス処理を行う際に、変動短縮タイマ減算処理(ステップS310)および始動口スイッチ通過確認処理(ステップS311)を行った後に、内部状態(この例では特別図柄プロセスフラグ)に応じて、ステップS300?S309のうちのいずれかの処理を行う。
【0085】変動短縮タイマ減算処理は、始動記憶(始動口スイッチ14aがオンしたことの記憶)の記憶可能最大数に対応した個数設けられている変動短縮タイマを減算する処理である。そして、後述する特別図柄大当り判定処理(ステップS301)において、例えば、変動短縮タイマの値が0になっていて、かつ、低確率状態(通常状態)では始動記憶数が始動記憶の最大値、確変状態では始動記憶数が「2」以上であれば、図柄の変動パターンとして変動時間が短縮されたパターンを用いることに決定される。また、始動口スイッチ通過確認処理は、始動口スイッチ14aがオンしたときに所定の各乱数値を取得して記憶する処理である。
【0086】ステップS300?S309において、以下のような処理が行われる。」
(ク)「【0088】特別図柄大当り判定処理(ステップS301):始動入賞があったときに記憶された各種乱数を格納するバッファ等の内容をシフトする。シフトの結果、押し出されたバッファの内容にもとづいて大当りとするか否かを決定する。なお、バッファは、始動入賞の記憶可能最大数だけ用意されている。また、シフトによって押し出されたバッファの内容は、最も前に生じた始動入賞に応じた内容である。そして、大当りとすることに決定した場合には、大当りフラグをセットする。その後、ステップS302に移行するように特別図柄プロセスフラグの値を変更する。」
(ケ)「【0108】コマンド91XX(H)、92XX(H)および93XX(H)は、特別図柄の左中右の停止図柄を指定する表示制御コマンドである。「XX」には図柄番号が設定される。また、コマンドA000(H)は、特別図柄の可変表示の停止を指示する表示制御コマンドである。コマンドBXXX(H)は、大当り遊技開始から大当り遊技終了までの間に送出される表示制御コマンドである。そして、コマンドC000(H)?EXXX(H)は、特別図柄の変動および大当り遊技に関わらない可変表示装置9の表示状態に関する表示制御コマンドである。図柄制御基板80の表示制御手段は、主基板31の遊技制御手段から上述した表示制御コマンドを受信すると図14に示された内容に応じて可変表示装置9および普通図柄表示器10の表示状態を変更する制御を行う。
【0109】コマンドC000(H)?EXXX(H)のうちE1XX(H)は、遊技制御手段が遊技機に対する電力供給開始時に実行する初期化処理におけるステップS14で送信する初期化コマンドであるが、そのEXTデータは機種を表示している。例えば、図15に示すように、EXTデータが01(H)であれば機種aを示し、02(H)であれば機種bを示し、04(H)であれば機種cを示す。すなわち、シリーズにおける各機種のうち機種aに搭載されている遊技制御手段は初期化コマンドとしてE101(H)を送信する。具体的には、ROM54に機種aを示すデータが格納され、CPU56がそのデータにもとづいてコマンドE101(H)を作成して送信する。また、機種bに搭載されている遊技制御手段は初期化コマンドとしてE102(H)を送信し、機種cに搭載されている遊技制御手段は初期化コマンドとしてE104(H)を送信する。
【0110】この実施の形態では、同一シリーズ機において、機種a、機種b、機種cとは、背景予告の振り分けが異なっている。どのような背景予告を行うのかは、表示制御手段等の演出制御手段によって決定されるのであるが、背景予告の振り分けが異なるとは、可変表示装置9における各変動パターンにおいて、予告1?4(図6参照)がどの程度の割合で出現するのかの確率が異なっていることである。また、機種a?cの間で、同一の客待ちデモ表示の表示制御コマンドC000(H)を受信した表示制御手段が、機種によって異なる態様で客待ちデモンストレーション画面を可変表示装置9に表示させることができる。また、機種a?cの間で、同一の大当り表示開始時の表示制御コマンドB200(H)等を受信した表示制御手段が、機種によって異なる態様(例えばキャラクタの動き方を変えたり色を変えたりする)で大当り遊技中の表示演出を行うこともできる。さらに、表示制御手段は、可変表示装置9の表示画面の一部に機種名を表示してもよい。表示制御手段は、遊技機への電力供給開始時に、初期化コマンドを受信しているので機種名を認識できている。よって、例えば、客待ちデモ表示の表示制御コマンドC000(H)を受信したら、機種に応じたデモンストレーション画面を可変表示装置9に表示させる制御を行うとともに、その画面において機種名を表示させる。このような表示は、例えば、表示制御用CPU101が、VDP102に対してデモンストレーション画面を表示するように指示するとともに、機種名を示す命令を与えることによって実現できる。VDP102は、命令に応じて、画面データ中の一部に機種名を示す画面データを挿入する。」
(コ)「【0149】図25は、図21に示されたメイン処理におけるステップS701の初期化処理の一例を示すフローチャートである。初期化処理において、表示制御用CPU101は、まず、CPUに内蔵されている内蔵デバイスを初期化するための処理(例えば内蔵デバイスを制御するためのレジスタの設定)を行う(ステップS721)。次いで、割込許可状態にして(ステップS722)、主基板31から初期化コマンドを受信するのを待つ(ステップS723)。初期化コマンド等の表示制御コマンドは、図24に示された割込処理で受信され、受信バッファ(図23参照)に格納される。従って、ステップS723では、受信バッファに初期化コマンドが格納されたか否かを確認する。なお、ステップS723の処理の前に監視タイマをスタートさせ、監視タイマがタイムアウトする前に初期化コマンドを受信できなかった場合には、可変表示装置9にコマンド受信異常が発生した旨を表示するようにしてもよい。
【0150】初期化コマンドを受信した場合には、RAMの内容を初期化し(ステップS725)、VDP103を初期化し(ステップS725)、可変表示装置9に初期画面を表示させるための制御を行う(ステップS726)。また、タイマ割込の初期設定を行う(ステップS727)。
【0151】次に、表示制御用CPU101は、受信した初期化コマンドの2バイト目(EXTデータ)を確認する。EXTデータが01(H)であれば、図15に示されたように遊技機は機種aである。また、EXTデータが02(H)であれば、図15に示されたように遊技機は機種bである。そして、EXTデータが04(H)であれば、図15に示されたように遊技機は機種cである。
【0152】上述したように、この実施の形態では、同一シリーズ機において、機種a、機種b、機種cとは、背景予告の振り分けが異なっている。すなわち、機種aでは表示制御手段は機種a用の背景予告の振り分けを行い、機種bでは表示制御手段は機種b用の背景予告の振り分けを行い、機種cでは表示制御手段は機種c用の背景予告の振り分けを行う。
【0153】従って、表示制御用CPU101は、初期化コマンドのEXTデータが01(H)であれば機種a用として用意されている予告振り分けテーブルaを使用することにする(ステップS728,S729)。また、初期化コマンドのEXTデータが02(H)であれば機種b用として用意されている予告振り分けテーブルb使用することにする(ステップS730,S731)。そして、01(H)でもなく02(H)でもない場合には、機種c用として用意されている予告振り分けテーブルc使用することにする(ステップS732)。
【0154】以上のように、この実施の形態では、表示制御手段は、遊技制御手段から送信される初期化コマンドに含まれる機種データに応じて予告振り分けテーブルを選択する。なお、予告振り分けテーブルa,b,cは、表示制御手段におけるROM102に格納されている。従って、機種a?cにおいて、表示制御手段(具体的には表示制御用CPU101が実行する表示制御プログラム)を変更することなく、予告演出に関して演出内容を異ならせることができる。」
(サ)「【0166】図28に示すように、高確率時の通常変動役物予告X1(変動パターン番号20)、高確率時の通常変動役物予告Y1(変動パターン番号21)、高確率時通常変動(変動パターン番号38)および短縮表示(変動パターン番号39)の場合には、背景予告がなされない。また、例えば、変動パターン番号9の「ロング役物予告Y1当り再」では、39/43の割合で予告1の背景予告が実行され、4/43の割合で予告2の背景予告が実行されることが示されている。
【0167】予告演出の振り分けは、予告決定用乱数1を用いて行われる。例えば、変動パターン番号9の「ロング役物予告Y1当り再」の予告選択テーブルには、予告1に対応した39種類の数値(数値データ)が設定され、予告2に対応した4種類の数値が設定されている。そして、表示制御手段は、抽出した予告決定用乱数1の値が、予告1に対応した39種類の数値のうちのいずれかに一致したら予告1の態様の背景予告を実行し、予告2に対応した4種類の数値のうちのいずれかに一致したら予告2の態様の背景予告を実行することに決定する。なお、変動パターン番号8の変動パターンについてだけでなく、全ての変動パターンについての予告選択テーブルに、選択されうる予告種類に対応した数値が設定されている。また、各変動パターンについて、選択されうる予告種類に対応した数値の個数の和は43である。」
(シ)「【0169】図30は、図27に示された表示制御プロセス処理における予告選択処理(ステップS801)を示すフローチャートである。予告選択処理において、表示制御用CPU101は、まず、予告演出(背景予告)を行わない変動パターンが指定されているか否か確認する(ステップS811)。この実施の形態では、機種aにおいて、予告演出を行わない変動パターンは、高確率時の通常変動役物予告X1、高確率時の通常変動役物予告Y1、高確率時通常変動および短縮表示の場合である(図28参照)。予告演出を行わない変動パターンが指定されている場合にはステップS817に移行する。
【0170】ステップS811において予告演出を行う可能性のある変動パターンが指定されていると判断した場合には、表示制御用CPU101は、予告乱数カウンタ1のカウント値を読み出し、読み出した値を予告決定用乱数値1とする(ステップS812)。さらに、受信した変動パターン指定の表示制御コマンドに対応した予告選択テーブルを選択する(ステップS813)。
【0171】ステップS813では、機種に応じた予告振り分けテーブルが用いられる。すなわち、初期化処理において機種a?cのいずれかに応じた予告振り分けテーブルa?cのいずれかが使用されることに決定されているので、そこで決定した予告振り分けテーブルが用いられる。例えば、機種aでは、図28に示された予告振り分けテーブルが用いられる。
【0172】図28に示されたように、演出用データは、予告演出を行うことを示す数値データ(予告1、2、3または4に対応した数値データ)と予告演出を行わないことを示す数値データ(予告なしに対応した数値データ)とを含む。そして、演出制御手段としての表示制御手段は、数値(具体的には予告乱数カウンタ1のカウント値)を所定時間(この例では16.7ms)毎に更新する数値更新手段(表示制御手段におけるステップS705のカウンタ更新処理を実行する部分)を有し、図30に示されたように、数値更新手段が更新した数値を抽出し、抽出した数値と演出用データにおける数値データとを比較することによって予告演出を行うか否かを決定する。また、演出用データは、予告演出の態様を示す数値データ(予告1、2、3または4に対応した数値データ)を含み、表示制御手段は、数値更新手段が更新した数値を抽出し、抽出した数値と演出用データにおける数値データとを比較することによっていずれの態様の予告演出を行うのかを決定する。」
(ス)「【0176】図33は、表示制御プロセス処理における図柄変動中処理(ステップS803)を示すフローチャートである。図柄変動中処理において、表示制御用CPU101は、予告開始時間決定用タイマがタイムアウトしたか否か確認する(ステップS831)。タイムアウトしていたら、既に決定されている予告演出(具体的にはステップS820において作業領域に設定された予告指定値)にもとづく表示が行われるようにVDP103を制御する(ステップS832)。ここで、予告演出を実行するためのパターンテーブル(タイマ設定値と制御実行テーブルの組み合わせが複数集まったデータ)を用いて予告演出を実行するようにしてもよいが、変動パターンテーブル毎に設定されているプロセスデータを、さらに、予告演出の種類に応じて細分化して設定しておき、実現される変動パターンおよび実行される予告演出に応じたプロセスデータを使用するようにしてもよい。変動パターンおよび予告演出に応じたプロセスデータを使用する場合には、予告演出の表示制御は、図柄の可変表示とともに、プロセスデータの内容に応じて実行される。」
(セ)「【0184】図37は、機種bで用いられる予告振り分けテーブルbの構成例を示す説明図である。なお、この実施の形態では、機種bにおいて、機種aで用いられる変動パターンコマンド(8000(H)?8026(H)の変動パターン指定の表示制御コマンド)と同一の変動パターンコマンドが用いられるが、例えば、機種bでは、機種aで用いられる変動パターンコマンドのうちの一部のみが用いられるように構成されていてもよい。すなわち、変動パターンコマンドには、複数種類の機種で共通に用いられるものがあれば、全く同一構成でなくてもよい。
【0185】図37に示す予告振り分けテーブルbが図28に示された機種a用の予告振り分けテーブルaと異なる点は、通常変動(変動パターン番号1)において背景予告が行われないように設定されていることである。また、ロング・役物予告Y1・当り再(変動パターン番号9)およびリーチAに含まれる変動パターン(変動パターン番号10?変動パターン番号17)における背景予告の振り分け方が異なっている。
【0186】従って、機種bでは変動パターン番号1、20、21、38および39の図柄の変動について背景予告を行わず、機種aでは変動パターン番号20、21、38および39の図柄の変動について背景予告を行わないので、機種bと機種aとでは、背景予告を行うか否かの選択率が異なっている。また、変動パターン番号10?変動パターン番号17の図柄の変動について、機種bと機種aとでは、予告1?4の出現率が異なっている。すなわち、遊技制御手段が実行する遊技制御プログラムおよび表示制御手段が実行する表示制御プログラムを変更することなく、予告演出を実行するか否かの選択率と、各変動パターンについて予告の出現率を異ならせることができる。」
(ソ)「【0192】以上に説明したように、上記の実施の形態では、遊技制御手段が、遊技機への電力供給開始時に、複数種類の機種のうちのいずれの機種であるのかを判別可能な機種判別コマンドを演出制御手段としての表示制御手段に送信し、変動開始の条件が成立すると識別情報の複数種類の可変表示態様のうちの1つの可変表示態様を特定可能な変動パターンコマンドを演出制御手段に送信し、変動パターンコマンドには複数種類の機種a?cで共通に用いられるものがあるように構成されているが、図39に示すように、表示制御手段が、複数種類の機種a?cのそれぞれに応じた演出用データを記憶する記憶手段を有し、演出用データには、変動パターンコマンドの種類に応じて所定の予告演出を行うか否かと、いずれの態様の予告演出を行うのかを決定するためのデータとが含まれ、機種が異なると予告演出を行うか否かの選択率が異なるように構成されるとともに、機種が異なると予告演出の実行内容が異なるように構成されている。そして、表示制御手段は、遊技制御手段から受信した機種判別コマンドにもとづいて機種を判別し、判別した機種に対応した演出用データにもとづいて可変表示装置9による演出制御を行う。
【0193】従って、機種a?cが含まれるシリーズにおいて、遊技制御手段が実行する遊技制御プログラムを変更することなく、または軽微な変更を施すだけで、各機種毎に演出内容を変え、演出のバリエーションを変化させることができる。また、各機種毎に演出内容を変えるにあたって、遊技制御手段は、機種判別コマンド以外のコマンドを変更する必要もない。そして、機種が異なると予告演出の実行内容が異なるように演出用データが構成されているので、遊技制御プログラムを変更することなく、機種毎に予告演出の信頼度(リーチになる信頼度または大当りになる信頼度)を異ならせることができる。また、機種が異なると予告演出の実行内容が異なるように演出用データが構成されているので、遊技制御プログラムを変更することなく、機種毎に予告演出の実行内容を異ならせることができる。」
(タ)「【0196】
【発明の効果】以上のように、請求項1記載の発明では、遊技機を、遊技制御手段が、遊技機への電力供給開始時に、複数種類の機種のうちのいずれの機種であるのかを判別可能な機種判別コマンドを演出制御手段に送信し、変動開始の条件が成立すると識別情報の複数種類の可変表示態様のうちいずれの可変表示態様を実行するかを特定可能な変動パターンコマンドを演出制御手段に送信し、複数種類の可変表示態様には複数種類の機種において共通使用される変動パターンコマンドによって共通に用いられるものがあり、演出制御手段が、複数種類の機種のそれぞれに対応した複数種類の演出用データを記憶する記憶手段を有し、演出用データが、変動パターンコマンドが受信されたときに、可変表示装置に表示される識別情報の表示結果が所定の表示態様となること、または最後に表示される識別情報以外の識別情報が所定の表示態様となる条件を満たすことを事前に報知するための予告演出の少なくともいずれかを行うか否かを決定するためのデータを含むとともに、機種が異なると予告演出を行うか否かの選択率が異なるように構成され、演出制御手段が、遊技制御手段から受信した機種判別コマンドにもとづいて機種を判別し、判別した機種に対応した演出用データを用いて予告演出を行うか否かの決定を行うように構成したので、遊技制御手段が実行する遊技制御プログラムを変更することなく、各機種毎に演出内容を変え、演出のバリエーションを変化させることができる効果がある。特に、遊技制御プログラムを変更することなく、機種毎に予告演出の実行内容を異ならせることができる。」

以上、上記(ア)ないし(タ)の記載及び図面の記載を総合すると、引用例1には、
「主基板31における遊技制御手段のCPU56は、特別図柄プロセス処理の特別図柄大当り判定処理(ステップS301)において、始動入賞があったときに大当りとするか否かを決定し、演出制御基板である図柄制御基板80の表示制御手段は、主基板31の遊技制御手段から表示制御コマンドを受信すると内容に応じて演出用の電気部品である可変表示装置9の表示状態を変更する制御を行い、パチンコ遊技機1には、可変表示装置9を制御する図柄制御基板80、主基板31が設置され、
主基板31における遊技制御手段がパチンコ遊技機1に対する電力供給開始時に実行する初期化処理で初期化コマンドを送信するものであり、初期化コマンドには、機種を示す情報が含まれており、初期化コマンドのEXTデータが01(H)であれば機種aを示し、02(H)であれば機種bを示し、
図柄制御基板80における表示制御手段の表示制御用CPU101は、初期化コマンドを受信した場合には、受信した初期化コマンドのEXTデータを確認し、EXTデータが01(H)であれば、パチンコ遊技機1は機種aであり、EXTデータが02(H)であれば、パチンコ遊技機1は機種bであるとし、
表示制御用CPU101は、初期化コマンドのEXTデータが01(H)であれば機種a用として用意されている予告振り分けテーブルaを、初期化コマンドのEXTデータが02(H)であれば機種b用として用意されている予告振り分けテーブルbを、使用することにし、
機種bで用いられる予告振り分けテーブルbでは、機種aで用いられる変動パターンコマンド(8000(H)?8026(H)の変動パターン指定の表示制御コマンド)と同一の変動パターンコマンドが用いられるが、機種b用の予告振り分けテーブルbが機種a用の予告振り分けテーブルaと異なる点は、変動パターン番号1において背景予告が行われないように設定されていること、変動パターン番号10?変動パターン番号17の図柄の変動について、予告1?4の出現率が異なっていることであり、
予告振り分けテーブルa,bは、表示制御手段におけるROM102に格納されており、
表示制御用CPU101は、使用することに決定された予告振り分けテーブルを用いて、予告演出を行うか否かを決定し、決定された予告演出にもとづく表示が行われるように制御し、
不測の停電等の電力供給停止が生じた後に復旧したが、バックアップRAM領域のデータのチェック結果が正常でない場合には、電力供給の停止からの復旧時でない電源投入時に実行される初期化コマンドの送信(ステップS14)を含む初期化処理(ステップS11?ステップS15)を実行し、チェック結果が正常であれば、遊技制御手段の内部状態と表示制御手段の制御状態を電力供給停止時の状態に戻すための遊技状態復旧処理を行う(ステップS10)パチンコ遊技機1」の発明が開示されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明」という。)。

(4)対比
引用発明と本願補正発明とを対比する。

引用発明の「主基板31」は本願補正発明の「主制御基板」に相当する。以下同様に、
「図柄制御基板80」は「演出制御基板」に、
「パチンコ遊技機1」は「遊技機」に、
「機種を示す情報」は「スペック情報」に、
「機種a」は「第1のスペック」に、
「出現率」は「出現確率」に、
「予告振り分けテーブルa」は「第1演出用データ」に、
「機種b」は「第2のスペック」に、
「予告振り分けテーブルb」は「第2演出用データ」に、
「ROM102」は「演出用データ記憶手段」に、それぞれ相当する。

さらに、引用例1の記載等からみて、以下のことがいえる。

a.引用発明のパチンコ遊技機1は、主基板31における遊技制御手段のCPU56は、特別図柄プロセス処理の特別図柄大当り判定処理(ステップS301)において、始動入賞があったときに大当りとするか否かを決定し、演出制御基板である図柄制御基板80の表示制御手段は、主基板31の遊技制御手段から表示制御コマンドを受信すると内容に応じて演出用の電気部品である可変表示装置9の表示状態を変更する制御を行い、パチンコ遊技機1には、可変表示装置9を制御する図柄制御基板80、主基板31が設置されており、
遊技機の技術分野において、「始動入賞」が「遊技球の入賞」に基づいて行われることは技術常識であり、「始動入賞があったときに大当りとするか否かを決定する」ことは当該技術分野の技術常識を考慮すると「抽選」であるといえるから、
引用発明のパチンコ遊技機1は本願補正発明の「遊技球の入賞に応じて抽選を行う主制御基板と、該主制御基板からの制御信号に基づいて所定の演出処理を行う演出制御基板とを備えた遊技機」に相当する構成を実質的に具備しているといえる。

b.引用発明のパチンコ遊技機1は、主基板31における遊技制御手段がパチンコ遊技機1に対する電力供給開始時に実行する初期化処理で初期化コマンドを送信するものであり、初期化コマンドには、機種を示す情報が含まれており、初期化コマンドのEXTデータが01(H)であれば機種aを示し、02(H)であれば機種bを示すものであり、
図柄制御基板80における表示制御手段の表示制御用CPU101は、初期化コマンドを受信した場合には、受信した初期化コマンドのEXTデータを確認するから、
引用発明のパチンコ遊技機1は本願補正発明の「前記主制御基板は、該主制御基板のスペック情報を含むコマンドを前記演出制御基板に送信するコマンド送信手段を備え」る構成を実質的に具備しているといえると共に、
「前記コマンド送信手段は、前記スペック情報を含むコマンドを送信」する点で共通しているといえる。

c.引用発明のパチンコ遊技機1は、主基板31における遊技制御手段がパチンコ遊技機1に対する電力供給開始時に実行する初期化処理で初期化コマンドを送信するものであり、
図柄制御基板80における表示制御手段の表示制御用CPU101は、初期化コマンドを受信した場合には、受信した初期化コマンドのEXTデータを確認し、EXTデータが01(H)であれば、パチンコ遊技機1は機種aであり、EXTデータが02(H)であれば、パチンコ遊技機1は機種bであるとし、
表示制御用CPU101は、初期化コマンドのEXTデータが01(H)であれば機種a用として用意されている予告振り分けテーブルaを、初期化コマンドのEXTデータが02(H)であれば機種b用として用意されている予告振り分けテーブルbを、使用することにし、
機種bで用いられる予告振り分けテーブルbでは、機種aで用いられる変動パターンコマンド(8000(H)?8026(H)の変動パターン指定の表示制御コマンド)と同一の変動パターンコマンドが用いられるが、機種b用の予告振り分けテーブルbが機種a用の予告振り分けテーブルaと異なる点は、変動パターン番号1において背景予告が行われないように設定されていること、変動パターン番号10?変動パターン番号17の図柄の変動について、予告1?4の出現率が異なっていることであり、
予告振り分けテーブルa,bは、表示制御手段におけるROM102に格納されており、
表示制御用CPU101は、使用することに決定された予告振り分けテーブルを用いて、予告演出を行うか否かを決定し、決定された予告演出にもとづく表示が行われるように制御するものであるから、
引用発明のパチンコ遊技機1は、本願補正発明と「前記演出制御基板は、前記主制御基板が第1のスペックの場合に用いられ、各演出の出現確率を示す」「演出テーブルを有する第1演出用データと、前記主制御基板が第2のスペックの場合に用いられ、各演出の出現確率を示す」「演出テーブルを有する第2演出用データとを含む演出用データ記憶手段と、前記主制御基板からの前記コマンドに基づいて、前記第1演出用データを構成する演出テーブル及び前記第2演出用データを構成する演出テーブルの」「何れか」「を用いて演出を実行する演出実行手段とを備え」ている点、
「前記演出実行手段は、前記コマンドに基づいて前記第1演出用データを構成する演出テーブル及び前記第2演出用データを構成する演出テーブルの」「何れか」「を選択し、選択した演出用データを用いて」「演出を実行する」点で共通しているといえる。

以上のことから、引用発明と本願補正発明は、
<一致点>
「遊技球の入賞に応じて抽選を行う主制御基板と、該主制御基板からの制御信号に基づいて所定の演出処理を行う演出制御基板とを備えた遊技機であって、
前記主制御基板は、
該主制御基板のスペック情報を含むコマンドを前記演出制御基板に送信するコマンド送信手段を備え、
前記演出制御基板は、
前記主制御基板が第1のスペックの場合に用いられ、各演出の出現確率を示す演出テーブルを有する第1演出用データと、前記主制御基板が第2のスペックの場合に用いられ、各演出の出現確率を示す演出テーブルを有する第2演出用データとを含む演出用データ記憶手段と、
前記主制御基板からの前記コマンドに基づいて、前記第1演出用データを構成する演出テーブル及び前記第2演出用データを構成する演出テーブルの何れかを用いて演出を実行する演出実行手段とを備え、
前記コマンド送信手段は、前記スペック情報を含むコマンドを送信し、
前記演出実行手段は、前記コマンドに基づいて前記第1演出用データを構成する演出テーブル及び前記第2演出用データを構成する演出テーブルの何れかを選択し、選択した演出用データを用いて演出を実行する遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願補正発明は、「前記主制御基板が第1のスペックの場合に用いられ、各演出の出現確率を示す複数種類の演出テーブルを有する第1演出用データと、前記主制御基板が第2のスペックの場合に用いられ、各演出の出現確率を示す複数種類の演出テーブルを有する第2演出用データとを含む演出用データ記憶手段と、
前記主制御基板からの前記コマンドに基づいて、前記第1演出用データを構成する演出テーブル及び前記第2演出用データを構成する演出テーブルのうちの何れか1つを用いて演出を実行する演出実行手段とを備え」ているのに対して、
引用発明は、機種a用、及び、機種b用の予告振り分けテーブルが、機種a用の予告振り分けテーブルaと、機種b用の予告振り分けテーブルbと、の1種類ずつであり、
演出を行うときに用いる予告振り分けテーブルが、機種a用の予告振り分けテーブルa、及び、機種b用の予告振り分けテーブルbの何れかであるため、このような構成でない点。
<相違点2>
本願補正発明は、「前記コマンド送信手段は、電源復旧を条件に前記スペック情報を含むコマンドを送信し、
前記演出実行手段は、前記コマンドに基づいて前記第1演出用データを構成する演出テーブル及び前記第2演出用データを構成する演出テーブルのうちの何れか1つを選択し、選択した演出用データを用いて電源復旧以後の演出を実行する」のに対して、
引用発明は、機種を示す情報を含む初期化コマンドを送信するのが、電源投入時と、不測の停電等の電力供給停止が生じた後に復旧したが、バックアップRAM領域のデータのチェック結果が正常でない場合であり(チェック結果が正常であれば送信しない)、
演出を行うときに用いる予告振り分けテーブルが、機種a用の予告振り分けテーブルa、及び、機種b用の予告振り分けテーブルbの何れかであるため、このような構成でない点。

(5)判断
<相違点1>について
遊技機において、各演出の出現確率を示す演出テーブルを複数種類設け、複数種類の演出テーブルのうち何れか1つを用いて演出を実行することは、特開2006-198034号公報(時刻に応じて参照される演出テーブルが変更される、演出テーブル(1)?(4)が、複数種類の演出テーブルに相当。段落【0041】?【0052】、図4?9等参照。)、特開2009-90147号公報(あと何回でリーチあるいは大当たりになるか等に応じて設定されるテーブルが異なる、予告演出決定用テーブルW?Zが、複数種類の演出テーブルに相当。段落【0172】?【0179】、図4?9等参照。)、特開2008-188296号公報(曜日等に応じて使い分ける、第1?2状態時テーブルが、複数種類の演出テーブルに相当。段落【0189】?【0197】、【0247】?【0248】、【0252】、図11?12参照)に記載されているように周知(以下、「周知技術」という。)であるから、
引用発明の「機種a用の予告振り分けテーブルa」及び「機種b用の予告振り分けテーブルb」に、上記周知技術を適用して、「機種a用の予告振り分けテーブルa」及び「機種b用の予告振り分けテーブルb」がそれぞれ複数種類ずつある構成とし、「予告振り分けテーブル」を選択するとき、複数種類の「機種a用の予告振り分けテーブルa」及び「機種b用の予告振り分けテーブルb」、のうち何れか1つを用いて演出を実行する構成として、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことにすぎない。

<相違点2>について
「第1演出用データ」及び「第2演出用データ」が有する「各演出の出現確率を示す」「演出テーブル」が、それぞれ「複数種類」あり、
「演出を実行する演出実行手段」が用いる「演出テーブル」が、「前記第1演出用データを構成する演出テーブル及び前記第2演出用データを構成する演出テーブルのうちの何れか1つ」であるようにする点については、上記「<相違点1>について」において既に検討している。
原査定の拒絶の理由(平成24年2月8日付け拒絶理由通知)において引用文献2として引用された特開2006-167429号公報(電源復帰時には、バックアップデータがない場合に、初期図柄表示コマンドと機種データを繋げたコマンドを出力し、機種に対応する初期図柄表示を指示し、初期化ジョブを終了して主制御部メインジョブに復帰し、以降機種に応じた演出を行う点、バックアップデータがある場合に、復帰画面指定コマンドと機種データを繋げたコマンドを出力し、図柄指定コマンドを出力し、初期化ジョブを終了して主制御部メインジョブに復帰し、以降機種に応じた演出を行う点、が記載されている。以下、「引用例2」という。段落【0090】?【0091】、【0094】?【0097】、【0104】?【0105】、【0163】?【0177】、図6、12、15?16、18、27等[特に、段落【0166】?【0171】、図27]参照。)には、コマンド送信手段が、電源復帰時にスペック情報を含むコマンドを送信し、演出実行手段が、コマンドに基づいて第1演出用データ及び第2演出用データのうちの何れか1つを選択し、選択した演出用データを用いて電源復旧以後の演出を実行する点が記載されているから、
引用発明に、引用例2に記載された発明を適用して、電源復旧時にコマンドを送信し、演出実行手段が電源復旧以降の演出を実行するようにすると共に、
引用発明に、上記周知技術を適用して、第1演出用データを構成する複数種類の演出テーブル、及び、第2演出用データを構成する複数種類の演出テーブル、のうちの何れか1つを用いて演出を実行するようにし、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことにすぎない。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明、引用例2に記載された発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のように、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本願補正発明は、特許法第29条2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(6)本件補正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反し、仮に当該規定に違反しないとしても、特許法第17条の2第5項の規定に違反し、また仮に当該規定に違反しないとしても、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成24年9月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項1に係る発明は、平成23年12月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。

そして、その請求項1により特定される発明は次のとおりである。
「【請求項1】
遊技球の入賞に応じて抽選を行う主制御基板と、該主制御基板からの制御信号に基づいて所定の演出処理を行う演出制御基板とを備えた遊技機であって、
前記主制御基板は、
該主制御基板のスペック情報を含むコマンドを前記演出制御基板に送信するコマンド送信手段を備え、
前記演出制御基板は、
前記主制御基板が第1のスペックの場合に用いられる第1演出用データと、前記主制御基板が第2のスペックの場合に用いられる第2演出用データとを含む演出用データ記憶手段と、
前記主制御基板からの前記コマンドに基づいて、前記第1演出用データ又は前記第2演出用データの何れかを用いて演出を実行する演出実行手段とを備え、
前記コマンド送信手段は、電源復旧時に前記スペック情報を含むコマンドを送信し、
前記演出実行手段は、前記コマンドに基づいて前記第1演出用データ又は前記第2演出用データの何れかを選択し、該選択した演出用データを用いて電源復旧以後の演出を実行する遊技機。」(以下、この発明を「本願発明」という。)

一方、原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-199909号公報(引用例1)に記載された発明は、前記2.(3)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.(2)で検討した本願補正発明から、実質的な変更とならない特定事項を除き、「演出用データ記憶手段」に記憶されている「第1演出用データ」及び「第2演出用データ」が「各演出の出現確率を示す複数種類の演出テーブルを有する」との限定、「演出を実行する演出実行手段」を用いる演出用データが、「第1演出用データを構成する演出テーブル及び第2演出用データを構成する演出テーブルのうちの何れか1つ」であるとの限定、を付加した部分を削除すると共に、
「コマンド送信手段」のコマンド送信タイミングについて、「電源復旧時」以外を含む「電源復旧を条件」という拡張された記載を、「電源復旧時」に戻したものである。

そうすると、本願発明は、本願補正発明の「コマンド送信手段」のコマンド送信タイミングについて、「電源復旧を条件」という拡張された記載にする点以外のすべての構成を含み、さらに本願補正発明の上記2.(4)に記載した<相違点1>、及び、<相違点2>のうち<相違点1>と重複する「演出を実行する演出実行手段」を用いる演出用データが、「第1演出用データを構成する演出テーブル及び第2演出用データを構成する演出テーブルのうちの何れか1つ」である点を本願補正発明から削除したものであり、
本願発明と引用発明との相違点は、前記2.(4)に記載した<相違点1>を削除し、<相違点2>を以下の<相違点A>に変更したものとなる。

<相違点A>
本願発明は、「前記コマンド送信手段は、電源復旧時に前記スペック情報を含むコマンドを送信し、
前記演出実行手段は、前記コマンドに基づいて前記第1演出用データ又は前記第2演出用データの何れかを選択し、該選択した演出用データを用いて電源復旧以後の演出を実行する」のに対して、
引用発明は、機種を示す情報を含む初期化コマンドを送信するのが、電源投入時と、不測の停電等の電力供給停止が生じた後に復旧したが、バックアップRAM領域のデータのチェック結果が正常でない場合である(チェック結果が正常であれば送信しない)ため、このような構成でない点。

(3)判断
<相違点A>について
引用例2には、前記2.(5)の「<相違点2>について」において、コマンド送信タイミングが「電源復旧時」であることを含めて既に検討しているように、コマンド送信手段が、電源復帰時にスペック情報を含むコマンドを送信し、演出実行手段が、コマンドに基づいて第1演出用データ及び第2演出用データのうちの何れか1つを選択し、選択した演出用データを用いて電源復旧以後の演出を実行する点が記載されているから、
引用発明に、引用例2に記載された発明を適用して、電源復旧時にコマンドを送信し、演出実行手段が電源復旧以降の演出を実行するようにし、上記相違点Aに係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことにすぎず、
本願発明も、引用発明、引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-01 
結審通知日 2013-10-02 
審決日 2013-10-18 
出願番号 特願2009-157190(P2009-157190)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 恵一澤田 真治  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 瀬津 太朗
長崎 洋一
発明の名称 遊技機、及び演出制御基板  
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ