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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1282203
審判番号 不服2012-14457  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-27 
確定日 2013-11-27 
事件の表示 特願2009-535475「無線通信におけるマルチキャリア及びシングルキャリア多重化方式の併用」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月15日国際公開、WO2008/057969、平成22年 3月18日国内公表、特表2010-508791〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,2007年11月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年11月1日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成24年3月23日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成24年7月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成23年12月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項14に記載された
「【請求項14】
マルチキャリア多重化方式またはシングルキャリア多重化方式に従って動作させる指示を,ユーザ装置(UE)に送信すること,
シングルキャリア多重化方式に従って動作させる指示が送信される場合,連続リソースブロックを前記UEに割り当てること,及び
指示された多重化方式に従って前記UEから受信された送信の処理を実行すること,
を含む方法。」
という発明(以下,「本願発明」という。)を,平成24年7月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項12に記載された
「【請求項12】
マルチキャリア多重化方式またはシングルキャリア多重化方式に従って動作させる指示を,ユーザ装置(UE)に送信すること,
シングルキャリア多重化方式に従って動作させる指示が送信される場合,前記UEの送信モードがLFDM(Localized Frequency Division Multiplexing)のとき,連続リソースブロックを前記UEに割り当て,前記UEの送信モードがIFDM(Interleaved Frequency Division Multiplexing)のとき,非連続等間隔のリソースブロックを前記UEに割り当てること,及び
指示された多重化方式に従って前記UEから受信された送信の処理を実行すること,
を含む方法。」
という発明(以下,「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無,補正の目的要件
本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において,シングルキャリア多重化方式に従って動作させる指示が送信される場合のUEに対するリソースブロックの割り当てに関し,本願発明は,連続リソースブロックをUEに割り当てることを含むことのみを規定しているのに対し,補正後の発明は,「前記UEの送信モードがLFDM(Localized Frequency Division Multiplexing)のとき,連続リソースブロックを前記UEに割り当て,前記UEの送信モードがIFDM(Interleaved Frequency Division Multiplexing)のとき,非連続等間隔のリソースブロックを前記UEに割り当てること」を含むとの限定を付加して特許請求の範囲を減縮するものであるから,特許法第17条の2第3項の規定(新規事項)及び同法第17条の2第5項の規定に(補正の目的)に適合している。

(2)独立特許要件
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下検討する。

ア.補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

イ.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2006/109492号(以下,「引用例」という。)には,「送信装置,受信装置および移動通信システム並びに送信制御方法」として図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「 [0003] 第4世代移動通信方式において移動局から基地局へのリンク(以下,上りリンクと呼ぶ)については,以下の無線アクセス方式が提案されている。シングルキャリア伝送方式では,例えばDS-CDMA(direct sequence code division multiple access) 方式,IFDMA(Interleaved Frequency Division Multiple Access) 方式,可変拡散率・チップ繰り返しファクタ(VSCRF-CDMA: Variable Spreading and Chip Repetition Factors-CDMA) 方式が提案されている。マルチキャリア伝送方式では,例えばOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing) 方式,Spread OFDM,マルチキャリア符号分割多元接続(MC-CDMA: Multi-Carrier Code Division Multiple Access) 方式,VSF-Spread OFDM(Variable Spreading Factor Spread OFDM) 方式が提案されている。
[0004] シングルキャリア方式は,端末の消費電力に関して,ピーク電力が小さいので,送信電力増幅器のバックオフを小さくでき,電力効率がよい。
[0005] シングルキャリア方式の一例として,VSCRF-CDMA方式について,図1を参照して説明する(例えば,特許文献1参照)。
[0006] 拡散部1は,符号乗算部2と,符号乗算部2と接続された繰り返し合成部8と,繰り返し合成部8と接続された移相部10とを備える。
[0007] 符号乗算部2は,送信信号に拡散符号を乗算する。例えば,乗算器4は,所与の符号拡散率SFの下で定められたチャネリゼーションコードを送信信号に乗算する。さらに,乗算器6は,スクランブルコードを送信信号に乗算する。
[0008] 繰り返し合成部8は,拡散後の送信信号を,時間的に圧縮し,所定数回(CRF回)反復する。チップ繰り返しが適用された送信信号は,くしの歯状の周波数スペクトラムを示す。繰り返し数CRFが1に等しい場合の構成および動作は,通常のDS-CDMA方式の場合と等しくなる。
[0009] 移相部10は,移動局毎に固有に設定された所定の周波数分だけ送信信号の位相をずらす(シフトさせる)。
[0010] VSCRF-CDMA方式において,CRF>1の場合,例えばCRF=4の場合には,図2Aに示すように,各ユーザの使用する周波数スペクトラムが,くしの歯状に全帯域にまたがって分散配置される。この場合,ユーザ固有の周波数オフセットが,割り当てられた帯域幅よりも小さくなる。
[0011] 一方,CRF=1の場合には,図2Bに示すように,各ユーザの使用するスペクトラムが,ブロック上にまとまって配置される。この場合,ユーザ固有の周波数オフセットが,割り当てられた帯域幅よりも大きくなる。
[0012] また,周波数領域で,くしの歯状の周波数スペクトラムを得る無線アクセス方式が提案されている(例えば,非特許文献1および2参照)。
[0013] この無線アクセス方式を適用する送信装置30は,図3に示すように,拡散されたデータ系列が入力されるFFT部12と,FFT部12と接続されたレート変換部14と,レート変換部14と接続された周波数領域信号生成部16と,周波数領域信号生成部16と接続されたIFFT部18と,IFFT部18と接続されたGI付加部20と,GI付加部20と接続されたフィルタ22とを備える。
[0014] 高速フーリエ変換(FFT)部12は,拡散されたデータ系列をQチップ毎にブロック化して高速フーリエ変換を行うことにより,周波数領域に変換する。その結果,周波数領域においてQ個のシングルキャリアの信号が得られる。ここで,拡散されたデータ系列は,図1を参照して説明した拡散部1において,乗算器6の出力信号に相当する。
[0015] レート変換部14は,Q個のシングルキャリアの信号を所定数回,例えばCRF回繰り返す。その結果,N_(sub)=Q×CRF個のシングルキャリアの信号が生成する。
[0016] 周波数領域信号生成部16は,くしの歯状のスペクトラムとなるように周波数軸上で各シングルキャリアの信号をシフトさせる。例えば,CRF=4に相当する処理を行う場合には,各シングルキャリアの信号の間に零を3つ配置する。その結果,図2Aおよび図2Bを参照して説明したくしの歯状の周波数スペクトラムが形成される。
[0017] IFFT部18は,周波数軸上で各シングルキャリアの信号をシフトさせることにより得られたくしの歯状のスペクトラムを高速逆フーリエ変換する。
[0018] ガードインターバル付加部20は,送信する信号にガードインターバルを付加する。ガードインターバルは,伝送するシンボルの先頭または末尾の一部を複製することによって得られる。フィルタ22は,送信信号に対して帯域制限を行う。」(1?3頁)

(イ)「[0027] しかしながら,上述した背景技術には以下の問題がある。
[0028] シングルキャリア方式は,シンボル長が小さいため,マルチパス干渉により,特に高速信号伝送時に受信品質が劣化する問題がある。
[0029] また,マルチキャリア方式は,端末の消費電力に関して,ピーク電力が大きくなるため,バックオフを大きくする必要があり,電力効率が悪くなる問題がある。
[0030] そこで本発明においては,シングルキャリア型の無線アクセス方式とマルチキャリア型の無線アクセス方式とを切り替えることができる送信装置,受信装置および移動通信システム並びに送信制御方法を提供することを目的としている。
課題を解決するための手段
[0031] 上記課題を解決するため,本発明の送信装置は,シングルキャリア方式の通信システムおよびマルチキャリア方式の通信システムで使用できる送信装置であって,無線アクセス方式を切り替える切り替え手段と,切り替えられた無線アクセス方式に応じて高速フーリエ変換および直並列変換の一方が行われた拡散後のチップ系列に対して,無線リソースを割り当て,周波数領域の信号を生成する周波数領域信号生成手段と,前記周波数領域の信号に対して高速逆フーリエ変換を行い,送信信号を生成する送信信号生成手段とを備えることを特徴の1つとする。
[0032] このように構成することにより,シングルキャリア型の無線アクセス方式とマルチキャリア方式の無線アクセス方式とを,共通化したモジュールにより実現することができ,シングルキャリア型の無線アクセス方式とマルチキャリア方式の無線アクセス方式とにより通信を行うことができる。
[0033] また,本発明の受信装置は,送信装置が使用する無線アクセス方式を決定する無線アクセス方式決定手段と,決定された無線アクセス方式を示す情報を通知する通知手段とを備えることを特徴の1つとする。
[0034] このように構成することにより,送信装置が使用する無線アクセス方式を決定し,通知することができる。」(4?5頁)

(ウ)「[0059] 切り替え部106は,基地局200から通知された無線アクセス方式を示す情報がシングルキャリア方式であるかマルチキャリア方式であるかを判断する。また,切り替え部106は,通知された無線アクセス方式を示す情報がシングルキャリア方式であると判断した場合には入力された拡散されたチップ系列をFFT部108に入力し,マルチキャリア方式であると判断した場合には入力された拡散されたチップ系列をS/P変換部110に入力する。また,切り替え部106は,通知された無線アクセス方式を示す情報をフィルタ120に入力する。
[0060] 例えば,切り替え部106は,基地局200からの報知情報に基づいてアクセス方式を決定する。この場合,基地局200は,後述する無線アクセス方式決定部402において,各ユーザ(移動局)にシングルキャリア方式を使用させるかマルチキャリア方式を使用させるかを決定し,図8に示すように,決定された無線アクセス方式を示す制御情報を通知する。
(中略)
[0064] また,例えば,切り替え部106は,ユーザ(移動局)毎に決定された無線アクセス方式に基づいて,シングルキャリア方式であるかマルチキャリア方式であるかを判断するようにしてもよい。この場合,各ユーザの基地局までの距離に応じてアクセス方式を切り替えるようにしてもよいし,各ユーザの送信電力の余裕に応じてアクセス方式を切り替えるようにしてもよい。
[0065] 例えば,各ユーザの基地局200までの距離に応じてアクセス方式を切り替える場合,各ユーザの基地局200までの距離に相当する量として,例えばパスロスを使用する。この場合,移動局300は下りリンクで,例えば下りパイロット信号の受信電力を使用してパスロスを測定し,測定されたバスロスを示す情報を上りリンクで基地局200に通知する。
[0066] 基地局200に備えられた受信装置の無線アクセス方式決定部402は,受信したパスロスの値が,所定の閾値よりも大きい場合,自基地局200と移動局300との距離が大きいと判断しシングルキャリア方式を使用することを決定し,図10に示すように,ユーザ個別の共通制御情報として,移動局300に通知する。
[0067] また,基地局200に備えられた受信装置の無線アクセス方式決定部402は,受信したパスロスが,所定の閾値よりも小さい場合,自基地局200と移動局300との距離が小さいと判断しマルチキャリア方式を使用することを決定し,図10に示すように,ユーザ個別の共通制御情報として,移動局300に通知する。
[0068] このようにすることにより,移動局と基地局との距離に応じて,移動局毎に無線アクセス方式を制御することができる。」(11?13頁)

(エ)「[0096] FFT部108は,拡散されたデータ系列をQチップ毎にブロック化して高速フーリエ変換を行うことにより,周波数領域に変換し,レート変換部112に入力する。その結果,周波数領域においてQ個のシングルキャリアの信号が得られる。
[0097] 直並列変換部(S/P)110は,Q個毎に直列的な信号系列(ストリーム)を並列的な複数の信号系列に変換し,レート変換部112に入力する。
[0098] レート変換部112は,FFT部108から出力されたQ個のシングルキャリアの信号を所定数回,例えばCRF回繰り返す。その結果,N_(sub)=Q×CRF個のシングルキャリアの信号が生成する。また,レート変換部112は,直並列変換部(S/P)110から出力された並列的なQ個の信号系列毎に周波数領域信号生成部114に入力する。
[0099] 一方,無線リソース割り当て制御部122は,基地局200より通知された各物理チャネルへの無線リソース割り当てを示す報知情報および各ユーザに対するスケジューリングの結果を示す情報に基づいて,各物理チャネルに割り当てる周波数ブロックおよび時間を制御する。
[0100] また,無線リソース割り当て制御部122は,各物理チャネルに周波数ブロックおよび時間を割り当てる場合に,複数の周波数ブロックのトランスミッション タイム インターバル(TTI: Transmission Time Interval)長を単位としたある時間に対して,無線リソースを割り当てるように制御するようにしてもよい。
[0101] ここで,共有データチャネルのスケジューリングについて,図13-図14を参照して説明する。共有データチャネルは,後述するが,基地局200におけるスケジューリングに基づいて割り当てられる。
[0102] 周波数ブロックは,図13に示すように,固定的に周波数が割り当てられる周波数分割多元接続での時間領域におけるスケジューリングの制御情報に基づいて割り当てられる。この場合,高速データレートのユーザに対しては複数の周波数ブロックが割り当てられる。このようにすることにより,各ユーザは予め割り当てられた周波数ブロックのみを使用する。このため,送信装置100は,受信装置400がチャネル状態情報(CQI: Channel Quality Indicator)を測定できるように送信する他の周波数ブロックのパイロットチャネルを予め送信する必要がない。
[0103] 最適な周波数ブロックの帯域幅としては,例えば,1.25-5MHzである。周波数ブロックの帯域幅を広くすることにより,周波数ブロック内でマルチユーザダイバーシチの効果を大きくすることができる。
[0104] シングルキャリア伝送が行われる場合には,データレートにしたがって,各ユーザに対して割り当てられる帯域幅は可変としてもよい。
[0105] また,あるユーザのトラヒックサイズが周波数ブロックのペイロードサイズよりも大きい場合には,1周波数ブロックが排他的に1ユーザにより使用されるようにしてもよい。
[0106] 周波数ブロック上に配置されたさらに狭いFDMA(localized FDMA)が,複数の低データレートユーザにより使用される。すなわち,図2Aおよび図2Bを参照して説明したように,各ユーザの使用するスペクトラムが,ブロック上にまとめて,周波数ブロック内に配置される。また,各ユーザの使用する周波数スペクトラムが,くしの歯状に周波数ブロック内にまたがって,分散配置されるようにしてもよい。他のユーザは,くしの歯状のスペクトラムを使用する。共有データチャネルに対しては,主にlocalized FDMAを使用するようにしてもよい。」(17?18頁)

上記記載及び図面の記載並びに当該技術分野の技術常識を考慮すると,
a.上記(イ)の[0031],[0033],上記(ウ)の[0060],[0066],[0067],図10の記載によれば,基地局200は,各ユーザ(移動局)が使用する無線アクセス方式として,シングルキャリア方式を使用させるかマルチキャリア方式を使用させるかを決定し,決定された無線アクセス方式を示す制御情報を各ユーザ(移動局)に通知するから,引用例には「マルチキャリア方式またはシングルキャリア方式を示す制御情報を,ユーザ(移動局)に送信すること」が記載されているといえる。

b.上記(ア)の[0008],[0010],[0011],[0013]?[0016],上記(エ)の[0106],図2A,図2Bの記載によれば,シングルキャリア方式が使用される場合,繰り返し数CRFを1としたとき,図2Bのように各ユーザの使用するスペクトラムがブロック上にまとまって配置されるようになり,繰り返し数CRFを1よりも大きいものとしたとき,図2Aのように各ユーザの使用する周波数スペクトラムがくしの歯状に全帯域にまたがって分散配置されるようになることが記載されていると認められる。
そして,上記(イ)の[0031],上記(エ)の[0099]?[0105],図13の記載によれば,基地局がユーザ(移動局)に対して無線リソースを図2A又は図2Bとなるように割り当てているといえる。
したがって,引用例には「シングルキャリア方式を示す制御情報が送信される場合,CRFを1としたとき,スペクトラムがブロック上にまとまって配置されるような無線リソースを前記移動局に割り当て,CRFを1よりも大きいものとしたとき,周波数スペクトラムがくしの歯状に全帯域にまたがって分散配置されるような無線リソースを前記移動局に割り当てること」が記載されていると認められる。

以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「マルチキャリア方式またはシングルキャリア方式を示す制御情報を,ユーザ(移動局)に送信すること,
シングルキャリア方式を示す制御情報が送信される場合,CRFを1としたとき,スペクトラムがブロック上にまとまって配置されるような無線リソースを前記移動局に割り当て,CRFを1よりも大きいものとしたとき,周波数スペクトラムがくしの歯状に全帯域にまたがって分散配置されるような無線リソースを前記移動局に割り当てること,
を含む方法。」

ウ.対比・判断
(ア)引用例の[0003]の記載(上記イ.(ア)参照。)に照らせば,引用発明の「マルチキャリア方式」,「シングルキャリア方式」は多重化(Multiple Access)時に使用されるアクセス方式を意味することは明らかであり,各ユーザ(移動局)は制御情報により示された無線アクセス方式を使用するのであるから,当該制御情報は「マルチキャリア多重化方式またはシングルキャリア多重化方式に従って動作させる指示」といえる。また,「各ユーザ(移動局)」を「ユーザ装置(UE)」と称するのは任意である。
したがって,補正後の発明と引用発明とは,「マルチキャリア多重化方式またはシングルキャリア多重化方式に従って動作させる指示を,ユーザ装置(UE)に送信すること」の点で一致している。

(イ)本願明細書の【0005】,【0032】,【0056】?【0059】,図2B,図8,図9の記載によれば,補正後の発明の「連続リソースブロック」とは「連続する複数のサブキャリアのセット」を意味し,「非連続等間隔のリソースブロック」とは「等間隔な複数のサブキャリアのセット」を意味すると認められる。そして,引用発明の「スペクトラムがブロック上にまとまって配置されるような無線リソース」は引用例の図2Bから明らかなように連続する複数のサブキャリアからなるといえるから,補正後の発明の「連続リソースブロック」に相当する。また,引用発明の「周波数スペクトラムがくしの歯状に全帯域にまたがって分散配置されるような無線リソース」は引用例の図2Aから明らかなように等間隔な複数のサブキャリアからなるといえるから,補正後の発明の「非連続等間隔のリソースブロック」に相当する。
したがって,補正後の発明と引用発明とは,下記の相違点1は別として,「シングルキャリア多重化方式に従って動作させる指示が送信される場合,第1のとき,連続リソースブロックを前記UEに割り当て,第2のとき,非連続等間隔のリソースブロックを前記UEに割り当てること」の点で一致している。

したがって,補正後の発明と引用発明とを対比すると,両者は,以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「マルチキャリア多重化方式またはシングルキャリア多重化方式に従って動作させる指示を,ユーザ装置(UE)に送信すること,
シングルキャリア多重化方式に従って動作させる指示が送信される場合,第1のとき,連続リソースブロックを前記UEに割り当て,第2のとき,非連続等間隔のリソースブロックを前記UEに割り当てること
を含む方法。」

(相違点1)
「第1のとき」,「第2のとき」が,補正後の発明はそれぞれ「前記UEの送信モードがLFDM(Localized Frequency Division Multiplexing)のとき」,「前記UEの送信モードがIFDM(Interleaved Frequency Division Multiplexing)のとき」であるのに対し,引用発明はそれぞれ「CRFを1としたとき」,「CRFを1よりも大きいものとしたとき」である点。

(相違点2)
補正後の発明は,更に「指示された多重化方式に従って前記UEから受信された送信の処理を実行すること」なる構成を有するのに対し,引用発明は当該構成を明らかにしていない点。

以下,上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
一般に通信相互のモードに応じた動作をなすことは通信技術において普通に行われていることであるから,移動局の送信モードに応じて無線リソースの割り当て方を変えることは適宜なし得ることである。そして,スペクトラムがブロック上にまとまって配置されるような無線リソースを使用して送信することは「LFDM(Localized Frequency Division Multiplexing)」といえ,周波数スペクトラムがくしの歯状に全帯域にまたがって分散配置されるような無線リソースを使用して送信することは「IFDM(Interleaved Frequency Division Multiplexing)」いえるから,移動局がこのような送信を行う場合をそれぞれ「前記UEの送信モードがLFDM(Localized Frequency Division Multiplexing)のとき」,「前記UEの送信モードがIFDM(Interleaved Frequency Division Multiplexing)のとき」と称するのは任意である。
したがって,引用発明において「CRFを1としたとき」を「前記UEの送信モードがLFDM(Localized Frequency Division Multiplexing)のとき」とし,「CRFを1よりも大きいものとしたとき」を「前記UEの送信モードがIFDM(Interleaved Frequency Division Multiplexing)のとき」とすることは容易になし得ることである。

(相違点2について)
引用例の[0032](上記イ.(イ)参照)にも記載されているように,基地局がユーザ(移動局)に通知した無線アクセス方式により,基地局とユーザ(移動局)とが通信を行うことができるのであるから,基地局はユーザ(移動局)に通知した無線アクセス方式に従って移動局から受信した信号の処理,すなわち,復調処理を行っていることは自明である。したがって,相違点2は格別ではない。

そして,補正後の発明の作用効果も,引用発明に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。

したがって,補正後の発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定にも違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成24年7月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は,上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ.引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで,本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ.対比・判断」の項で検討したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-19 
結審通知日 2013-06-25 
審決日 2013-07-16 
出願番号 特願2009-535475(P2009-535475)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04J)
P 1 8・ 575- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 智彦  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 新川 圭二
藤井 浩
発明の名称 無線通信におけるマルチキャリア及びシングルキャリア多重化方式の併用  
代理人 白根 俊郎  
代理人 福原 淑弘  
代理人 高倉 成男  
代理人 野河 信久  
代理人 河野 直樹  
代理人 中村 誠  
代理人 峰 隆司  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 竹内 将訓  
代理人 砂川 克  
代理人 岡田 貴志  
代理人 佐藤 立志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 井関 守三  

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