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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06K 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06K |
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管理番号 | 1282478 |
審判番号 | 不服2011-20872 |
総通号数 | 170 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-09-28 |
確定日 | 2013-12-05 |
事件の表示 | 特願2008-119572「電車の改札システム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月16日出願公開、特開2008-251024〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成13年8月24日を出願日とする特願2001-255154号の一部を平成20年5月1日に新たな特許出願としたものであって、平成23年3月29日付けで拒絶理由通知がなされ、同年6月6日付けで手続補正がなされたが、同年6月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月28日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、当審において、平成24年3月8日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、同年4月23日に回答書が提出され、これに対し、平成25年6月28日付けで、平成23年9月28日付けでなされた手続補正に対する補正却下の決定がなされるとともに、拒絶理由通知がなされ、同年8月28日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2.当審拒絶理由通知時の発明の詳細な説明 当審拒絶理由通知時の発明の詳細な説明は、上記平成20年5月1日付けの明細書記載の、概略次のとおりである。(下線は当審付与。) <当審拒絶理由通知時の発明の詳細な説明> 「 【0019】 また、ICカード機能部6は、携帯電話端末機5と情報データの入出力を行うためのI/O装置8と、情報データを記憶するためのメモリ15と、情報データの送受信を行うためのアンテナ18を有する送受信部16と、集積回路を含むCPU17と、から構成される。また、送受信部16は、リーダ/ライタ装置35と無線回線を介して情報の送受信が行われる。 ・・・(中略)・・・ 【0031】 図2は本実施形態のシステム図である。なお、図2において、図1と共通する部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。 【0032】 図示のように、ICカード機能部6aは電源供給装置20を備える。電源供給装置20は、携帯電話端末機5の電源9からICカード機能部6aが動作するための電力を受けて、ICカード機能部6aの各部へその電力を供給するための装置である。電源供給装置20は、ICカード機能部6aのアンテナ18がリーダ/ライタ装置の磁界領域45内に存在する時のみ作動し、ICカード機能部6aの各部に電力が供給される。 【0033】 このように、ICカード機能部6aには、電源供給手段としての電源供給装置20が備えられ、所定の通信距離を得るのに必要な電力が携帯電話端末2aの電源から供給される。また、無駄な電力の消耗を避けるため、必要最低限の時間(通信時間相当)のみ、電力がICカード機能部6aの各部に供給されるようにした。そのため、ICカード機能部6aとリーダ/ライタ装置35との通信距離を伸ばすことが可能であるとともに、無駄な電力を使用することがない。また、ICカード機能部6aに供給する電力と通信距離の設定によりICカード機能部6aのアンテナ18を小さくすることも可能である。」 第3.当審拒絶理由通知時の特許請求の範囲 当審拒絶理由通知時の特許請求の範囲は、上記平成23年6月6日付けの手続補正書の特許請求の範囲記載のとおりのものであり、これは概略次のとおりのものである。 <補正前の特許請求の範囲> 「【請求項1】 人が通過する改札口とICカード機能部(6a)を備えた携帯電話端末機(5)とからなる電車の改札システムであって、前記改札口には電磁波を発信する発信回路(37)と、前記電磁波が影響する磁界内に前記ICカード機能部が存在した場合にそれを検知するアンテナを(40)を備えた通信部(38)を有するリーダ/ライタ装置(35)が設けられ、前記携帯電話端末機(5)は提携会社と情報データの送受信をするための携帯電話端末用アンテナ(14)と、前記通信部(38)と送受信をするためのICカード機能部用アンテナ(18)を有し、また前記携帯電話端末機(5)はCPU(13)を内蔵し、 前記ICカード機能部(6a)はCPU(17)を内蔵し、前記CPU(13)は、前記ICカード機能部と情報データの入出力を行うためのI/O装置(7)、携帯電話端末の操作を行うための操作部(10)、携帯電話端末機(5)内の通信部(11)および情報を表示するための表示部(12)を制御し、前記CPU(17)は前記携帯電話端末機(5)と情報データの入出力を行うためのI/O装置(8)、前記アンテナ(18)を備えた送受信部(16)及びメモリ(15)、電源供給装置(20)を制御し、前記メモリ(15)には定期券の有効期限または残金が記憶され、前記ICカード機能部(6a)の送受信部(16)は前記リーダ/ライタ装置(35)が発信する電磁波を検出し、前記電源供給装置(20)は前記検出信号を受けて前記ICカード機能部(6a)の各部への電源供給を開始し、前記ICカード機能部用アンテナ(18)が前記リーダ/ライタ装置の磁界領域内に存在するときのみ作動し、且つ前記CPU(17)が決定する通信時間相当のみ前記電源(9)からの電力を前記ICカード機能部の各部へ供給するとともに、前記CPU(17)の指示に基づいて前記電源供給を停止することを特徴とする電車の改札システム。」 第4.当審拒絶理由通知 上記当審拒絶理由通知で通知された拒絶理由は、概略以下のとおりものである。 『・・・(前略)・・・ 2)本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項及び第4項に規定する要件を満たしていない。 (1) ・請求項 1 請求項1には、「前記CPU(17)は・・・電源供給装置(20)を制御」すること、及び、「前記電源供給装置(20)は前記検出信号を受けて前記ICカード機能部(6a)の各部への電源供給を開始し、前記ICカード機能部用アンテナ(18)が前記リーダ/ライタ装置の磁界領域内に存在するときのみ作動」することが記載されている。前記記載から、請求項1に係る発明には、「CPU(17)」が「電源供給装置(20)」のON制御を行う態様も含まれているが、明細書等を参酌しても、「CPU(17)」が「電源供給装置(20)」のON制御を行う態様については記載されていない。よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。 (2) 請求項1には、「前記CPU(17)は・・・電源供給装置(20)を制御」すること、及び、「前記電源供給装置(20)は前記検出信号を受けて前記ICカード機能部(6a)の各部への電源供給を開始し、前記ICカード機能部用アンテナ(18)が前記リーダ/ライタ装置の磁界領域内に存在するときのみ作動」することが記載されている。しかしながら、本願の明細書等を参酌しても、どのようにして、「CPU(17)」が「電源供給装置(20)」のON制御を行うのかについて記載されておらず、「CPU(17)」に制御される「電源供給装置(20)」が、「検出信号を受けて前記ICカード機能部(6a)の各部への電源供給を開始し、前記ICカード機能部用アンテナ(18)が前記リーダ/ライタ装置の磁界領域内に存在するときのみ作動」させることをについて、明細書及び図面には、当業者が発明を実施することができる程度に記載されているとはいえない。』 第5.平成25年8月28日付け手続補正 上記平成25年8月28日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、特許請求の範囲を下記本件補正後の特許請求の範囲のとおりに補正するとともに、明細書の段落【0011】を下記本件補正後の段落【0011】に補正するものである。 (下線は該手続補正書記載のとおりのもの。) <本件補正後の特許請求の範囲> 「【請求項1】 人が通過する改札口とICカード機能部(6a)を備えた携帯電話端末機(5)とからなる電車の改札システムであって、前記改札口には電磁波を発信する発信回路(37)と、前記電磁波が影響する磁界内に前記ICカード機能部が存在した場合にそれを検知するアンテナを(40)を備えた通情部(38)を有するリーダ/ライタ装置(35)が設けられ、前記携帯電話端末機(5)は提携会社と情報データの送受信をするための携帯電話端末用アンテナ(14)と、前記通信部(38)と送受倍をするためのICカード機能部用アンテナ(18)を有し、また前記携帯電話端末機(5)はCPU(13)を内蔵し、前記ICカード機能部(6a)はCPU(17)を内蔵し、前記CPU(13)は、前記ICカード機能部と情報データの入出力を行うためのI/O装置(7)、携帯電話端末の操作を行うための操作部(10)、携帯電話端末機(5)内の通信部(11)および情報を表示するための表示部(12)を制御し、前記CPU(17)は前記携帯電話端末機(5)と情報データの入出力を行うためのI/O装置(8)、前記アンテナ(18)を備えた送受信部(16)及びメモリ(15)、電源供給装置(20)を制御し、前記メモリ(15)には定期券の有効期限または残金が記憶され、前記ICカード機能部(6a)の送受信部(16)は前記リーダ/ライタ装置(35)が発信する電磁波を検出し、 前記CPU(17)は前記電源供給装置(20)を制御して前記ICカード機能部(6a)の各部への電源供給を開始し、前記ICカード機能部用アンテナ(18)が前記リーダ/ライタ装置の磁界領域内に存在するときのみ作動し、 且つ前記CPU(17)が決定する通信時間相当のみ前記電源(9)からの電力を前記ICカード機能部の各部へ供給するとともに、前記CPU(17)の指示に基づいて前記電源供給を停止することを特徴とする電車の改札システム。」 <本件補正後の段落【0011】> 「【0011】 本発明に係る電車の改札システムは、人が通過する改札口とICカード機能部(6a)を備えた携帯電話端末機(5)とからなる電車の改札システムであって、前記改札口には電磁波を発信する発信回路(37)と、前記電磁波が影響する磁界内に前記ICカード機能部が存在した場合にそれを検知するアンテナを(40)を備えた通情部(38)を有するリーダ/ライタ装置(35)が設けられ、前記携帯電話端末機(5)は提携会社と情報データの送受信をするための携帯電話端末用アンテナ(14)と、前記通信部(38)と送受倍をするためのICカード機能部用アンテナ(18)を有し、また前記携帯電話端末機(5)はCPU(13)を内蔵し、前記ICカード機能部(6a)はCPU(17)を内蔵し、前記CPU(13)は、前記ICカード機能部と情報データの入出力を行うためのI/O装置(7)、携帯電話端末の操作を行うための操作部(10)、携帯電話端末機(5)内の通信部(11)および情報を表示するための表示部(12)を制御し、前記CPU(17)は前記携帯電話端末機(5)と情報データの入出力を行うためのI/O装置(8)、前記アンテナ(18)を備えた送受信部(16)及びメモリ(15)、電源供給装置(20)を制御し、前記メモリ(15)には定期券の有効期限または残金が記憶され、前記ICカード機能部(6a)の送受信部(16)は前記リーダ/ライタ装置(35)が発信する電磁波を検出し、 前記CPU(17)は前記電源供給装置(20)を制御して前記ICカード機能部(6a)の各部への電源供給を開始し、前記ICカード機能部用アンテナ(18)が前記リーダ/ライタ装置の磁界領域内に存在するときのみ作動し、 且つ前記CPU(17)が決定する通信時間相当のみ前記電源(9)からの電力を前記ICカード機能部の各部へ供給するとともに、前記CPU(17)の指示に基づいて前記電源供給を停止するようにした。」 第6.平成25年8月28日付け意見書 上記平成25年8月28日付け意見書における意見は以下のとおりのものである。(下線は該意見書記載のとおりのもの。) <意見の内容> 『(1) 平成25年6月28日起案の拒絶理由通知書において、貴官は、平成23年6月6日付けの手続補正書に基づいて請求項1に係る発明について理由1)として特開2001-223631号公報(引用文献1)、特開2000-341763号公報(引用文献2)、特開平8-315092号公報(引用文献3)、特開2001-188889号公報(引用文献4)を挙げて特許法第29条第2項の規定により、また理由2)として特許法第36条第6項及び同条第4項に規定する要件を満たしていないので特許を受けることができないと認定されました。 (2)補正内容 出願人は、段落【0021】と【0032】の内容を追加して新請求項1としました。補正後の請求項1は下記の通りです。 『(請求項1)人が通過する改札口とICカード機能部(6a)を備えた携帯電話端末機(5)とからなる電車の改札システムであって、前記改札口には電磁波を発信する発信回路(37)と、前記電磁波が影響する磁界内に前記ICカード機能部が存在した場合にそれを検知するアンテナを(40)を備えた通情部(38)を有するリーダ/ライタ装置(35)が設けられ、前記携帯電話端末機(5)は提携会社と情報データの送受信をするための携帯電話端末用アンテナ(14)と、前記通信部(38)と送受倍をするためのICカード機能部用アンテナ(18)を有し、また前記携帯電話端末機(5)はCPU(13)を内蔵し、前記ICカード機能部(6a)はCPU(17)を内蔵し、前記CPU(13)は、前記ICカード機能部と情報データの入出力を行うためのI/O装置(7)、携帯電話端末の操作を行うための操作部(10)、携帯電話端末機(5)内の通信部(11)および情報を表示するための表示部(12)を制御し、前記CPU(17)は前記携帯電話端末機(5)と情報データの入出力を行うためのI/O装置(8)、前記アンテナ(18)を備えた送受信部(16)及びメモリ(15)、電源供給装置(20)を制御し、 前記メモリ(15)には定期券の有効期限または残金が記憶され、前記ICカード機能部(6a)の送受信部(16)は前記リーダ/ライタ装置(35)が発信する電磁波を検出し、 前記CPU(17)は前記電源供給装置(20)を制御して前記ICカード機能部(6a)の各部への電源供給を開始し、前記ICカード機能部用アンテナ(18)が前記リーダ/ライタ装置の磁界領域内に存在するときのみ作動し、 且つ前記CPU(17)が決定する通信時間相当のみ前記電源(9)からの電力を前記ICカード機能部の各部へ供給するとともに、前記CPU(17)の指示に基づいて前記電源供給を停止することを特徴とする電車の改札システム。』 (2)補正後の請求項1の特徴 補正後の請求項1の発明特定要件は段落【0021】と【0032】を根拠とする下記の2点です。 (A)ICカード機能部6のCPU(17)が、接続されている装置、即ちICカード機能部(6a)の全体の制御を行う。 (B)ICカード機能部(6a)に含まれる電源供給装置(20)は、携帯電話端末機5の電源9からICカード機能部(6a)が動作するための電力を受けて、ICカード機能部(6a)の各部へその電力を供給する。 (3)補正後の本願発明と引用文献の比較 引用文献1乃至4のいずれにも上記(A)に記載したCPU(17)と、(B)に記載した本願発明の電源供給装置(20)に相当する電源装置のどちらの記載もありません。 貴官は、『そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び引用例2?4記載の技術から当業者が容易に予測できるものであって、格別のものとはいえない。』と認定されていますが、引用文献1乃至4のいずれにも(A)と(B)の記載がないので、上記の認定は補正後の本願発明には該当しません。 また、貴官は、『すなわち、(平成23年9月28日付けの手続補正書による)補正後の請求項1は、その記載からして、次の発明特定事項(a)を含んでいるものと認められる。(a)前記CPU(17)は前記検出の信号を受けてもリセットせずに前記電源供給装置(20)を制御して前記ICカード機能部(6a)の各部への電振供給を開始し、前記ICカード機能部用アンテナ(18)が前記リーグ/ライク装置の磁界領域内に存在するときのみ作動する態様』と認定されていますが、補正後の請求項1には(a)の記載はなく、補正後の特許特定要件は上記(A)と(B)となり、(a)が含まれないことは明らかです。 更に貴官は、「どのようにしてCPU(17)が電源供給装置(20)のON制御をするのかについての記載」がないと認定されています。しかし、本願明細書の図2を見ればCPU(17)と電源供給部(20)がバスラインで接続されていますのでCPU(17)がバス制御で電源供給部(20)のON制御をすることは当業者にとって自明です。 (4)結論 以上に述べました通り、補正後の本願の発明特定要件(A)と(B)を特徴とする本願発明はどの引用文献にも記載がなく、またどの引用文献からも当業者が容易に想到できたものでもありませんので、拒絶理由は解消した者と考えます。』 第7.当審判断 そこで、上記本件補正後の特許請求の範囲及び明細書の記載が上記当審拒絶理由通知において指摘した不備を解消しているものであるか否かについて検討する。 1.当審拒絶理由通知の2)の(1)で指摘の不備について 当審拒絶理由通知の2)の(1)で指摘した本件補正前の請求項1の「前記CPU(17)は・・・電源供給装置(20)を制御」すること、及び、「前記電源供給装置(20)は前記検出信号を受けて前記ICカード機能部(6a)の各部への電源供給を開始し、前記ICカード機能部用アンテナ(18)が前記リーダ/ライタ装置の磁界領域内に存在するときのみ作動」することに関する記載は、本件補正後の請求項1においても「前記CPU(17)は前記電源供給装置(20)を制御して前記ICカード機能部(6a)の各部への電源供給を開始し、前記ICカード機能部用アンテナ(18)が前記リーダ/ライタ装置の磁界領域内に存在するときのみ作動し、」と実質的に変更されていない。また、明細書の補正も同様に、この点に関して実質的に変更するものではない。 この点について、意見書では上記第6.のとおり、「本願明細書の図2を見ればCPU(17)と電源供給部(20)がバスラインで接続されていますのでCPU(17)がバス制御で電源供給部(20)のON制御をすることは当業者にとって自明です。」と主張しているが、図2にはCPU(17)と電源供給部(20)との間に線が引かれているものの、明細書にはこの線に関する説明はない。また、CPU(17)と電源供給部(20)との関係についても、明細書には、段落【0019】に「また、ICカード機能部6は、携帯電話端末機5と情報データの入出力を行うためのI/O装置8と、情報データを記憶するためのメモリ15と、情報データの送受信を行うためのアンテナ18を有する送受信部16と、集積回路を含むCPU17と、から構成される。」、段落【0032】に「図示のように、ICカード機能部6aは電源供給装置20を備える。電源供給装置20は、携帯電話端末機5の電源9からICカード機能部6aが動作するための電力を受けて、ICカード機能部6aの各部へその電力を供給するための装置である。電源供給装置20は、ICカード機能部6aのアンテナ18がリーダ/ライタ装置の磁界領域45内に存在する時のみ作動し、ICカード機能部6aの各部に電力が供給される。」との記載がある程度であり、これらの記載からは、電源供給装置20は、携帯電話端末機5の電源9からCPU(17)等が動作するための電力を受けて、CPU(17)等へその電力を供給することは読み取ることはできるものの、「CPU(17)と電源供給部(20)がバスラインで接続され」ていることまでは読み取ることはできない。 仮に「CPU(17)と電源供給部(20)がバスラインで接続され」ているとしても、「CPU(17)がバス制御で電源供給部(20)のON制御をする」構成が「当業者にとって自明」であるとは認められない。そして、「CPU(17)がバス制御で電源供給部(20)のON制御を」しない構成は、技術常識に照らし合わせてみても特に矛盾するものではない。(例えば、特開2001-6061号公報(段落【0003】、【0019】、【0021】?【0023】及び【0025】?【0026】)に記載されているように、送信装置からの電波の受信時にスイッチングによって電池から処理ロジック等に電源を供給することが知られている。) これらのことから、上記意見書における「本願明細書の図2を見ればCPU(17)と電源供給部(20)がバスラインで接続されていますのでCPU(17)がバス制御で電源供給部(20)のON制御をすることは当業者にとって自明です。」という主張を認めることはできない。よって、「CPU(17)」に制御される「電源供給装置(20)」が、「検出信号を受けて前記ICカード機能部(6a)の各部への電源供給を開始し、前記ICカード機能部用アンテナ(18)が前記リーダ/ライタ装置の磁界領域内に存在するときのみ作動」させることについて、明細書及び図面に記載されているとはいえない。 したがって、当審拒絶理由通知の2)(1)で指摘したように、本件補正後の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。 2.当審拒絶理由通知の2)(2)で指摘の不備について 上記1.で示したように、「前記電源供給装置(20)は前記検出信号を受けて前記ICカード機能部(6a)の各部への電源供給を開始し、前記ICカード機能部用アンテナ(18)が前記リーダ/ライタ装置の磁界領域内に存在するときのみ作動」することに関して、明細書及び図面に記載されているとはいえない。 したがって、当審拒絶理由通知の2)(2)で指摘したように、明細書及び図面には、本件補正後の請求項1に係る発明について、当業者が発明を実施することができる程度に記載されているとはいえない。 第8. 以上のとおり、本願は、依然として特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、原査定を取り消し、本願は特許をすべきものであるとの審決をすることができるものではない。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-09-24 |
結審通知日 | 2013-10-01 |
審決日 | 2013-10-21 |
出願番号 | 特願2008-119572(P2008-119572) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(G06K)
P 1 8・ 536- WZ (G06K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 圓道 浩史 |
特許庁審判長 |
山崎 達也 |
特許庁審判官 |
原 秀人 仲間 晃 |
発明の名称 | 電車の改札システム |
代理人 | 小山 有 |