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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01M |
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管理番号 | 1282572 |
審判番号 | 不服2012-14703 |
総通号数 | 170 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-07-31 |
確定日 | 2013-12-04 |
事件の表示 | 特願2009-271179「害虫駆除方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月 4日出願公開,特開2010- 46095〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は,1999年7月21日を国際出願日とする出願(受理官庁:米国特許商標庁)の一部を特許法第44条第1項の規定により分割して平成16年4月28日に新たな出願とした特願2004-133789号の一部をさらに特許法第44条第1項の規定により分割して平成21年11月30日に新たな特許出願としたものであって,平成24年3月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされ,同年9月13日に手続補正がなされたものである。 2 本願発明 本願の請求項1乃至19に係る発明は,平成23年6月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至19に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち請求項1に係る発明は,次のとおりである。 「各々が無線通信回路を有する複数の害虫駆除装置を設置する工程, 第一の前記害虫駆除装置から無線通信により情報を受け取るように携帯型探知器を配置する工程,および 第二の前記害虫駆除装置から無線通信により情報を受け取るように前記携帯型探知器の位置を変更する工程を含み, 前記第二の害虫駆除装置が前記第一の害虫駆除装置から隔てられている,方法。」(以下「本願発明」という。) 3 引用刊行物の記載内容 原査定の拒絶の理由に引用され,本願国際出願日前に頒布された刊行物である国際公開第98/18319号パンフレット(以下,「刊行物1」という。)には,「REMOTE MONITORING SYSTEM FOR DETECTING TERMITES『シロアリを検出するための遠隔監視システム』」に関して,図面と共に,次の事項が記載されている(当該国際公開に係る外国語特許出願について国内公表された特表2001-502914号公報参照。)。 (1a)「Figure 1 shows a schematic representation of an example remote monitoring system, including a data collection unit that communicates with a host system at a remote location to provide data obtained from sensors located at the target site. Figure 2 shows a schematic representation of another example remote monitoring system configuration, including a data collection unit that communicates with a plurality of sensors using a plurality of individual communication links. Figure 3 shows a schematic representation of another example remote monitoring system configuration, including a data collection unit that communicates with sensors using individual wireless communication links. Figure 4 shows an example sensor used in the remote monitoring systems shown for example in Figures 1 and 2, the sensor being placed in a monitoring station housing and connected to a cable which communicates with the data collection unit. Figure 5a and 5b show two views of an example monitoring station housing lid and attached monitoring device, with sensor circuit thereon, for use in connection with a remote monitoring system of the present invention.」(特許協力条約規則第26規則の規定に基づき補充された明細書第3頁第13?第27行) (1b)「The preferred embodiment of the invention is an integral part of an integrated pest management system featuring two repeatable steps: (1) population monitoring/capturing (hereinafter referred to as monitoring), and (2) delivery of a toxicant to a pest through the use of a toxicant-containing matrix. The monitoring step of the process comprises monitoring particular location or locations to detect any termite activity. This step may further comprise capturing termites. 」(同,第4頁第10?第15行) (1c)「One example of how methods of the subject invention can be applied to the control of subterranean termites is as follows: A hole of appropriate dimension can be made in the soil for positioning of the station housing. The station housing is placed into the hole. The monitoring device is placed inside the station housing. A cover can be placed over the station housing and the cover secured to the surface of the ground. Alternatively, the monitoring device can be placed inside station housing which is then inserted or hammered into the soil until the station housing opening is near the soil surface. ・・・ The monitoring device can be interrogated periodically for evidence of termite infestation. Inspection of the monitoring device can be performed weekly, bi-weekly, monthly, etc. as needed or desired. Because termites are known to chew through soft metal, thin strips of conductive metal may be incorporated into the monitoring device and connected to an electronic device. When termites chew through the thin metal, the circuit is broken, thus evidencing the presence of termites. 」(同,第4頁第27行?第5頁第10行) (1d)「Each zone may contain a few as one sensor, as is shown for example in Figure 2, or as many as a plurality of sensors, as is shown for example in Figure 1. Instead of hard-wire components, such as cables, the system may instead be configured such that the sensors communicate with the data collection unit over independent wireless links formed using wireless communication devices, as shown for example in Figure 3. The on-site data collection unit is configured to register data relating to each sensor or groups of sensors either continuously, or at regular intervals (such as hourly, daily, weekly, etc.), or pursuant to a specified schedule, or on demand (real-time monitoring). 」(同,第5頁第25行?第6頁第2行) (1e)「The preferred remote monitoring device is composed of cellulose materials that are intended to be fed upon by termites. As shown for example in Figure 4, the sensor, or monitoring device with associated circuit, is placed in the monitoring station housing that is planted in soil. Termite feeding in sensors can be readily detected as termites easily chew through the relatively thin circuit tracing while chewing the cellulose material. Preliminary studies indicate that, even under a humid and warm climate, the sensor circuit may remain conductive for a long as six months or more in the absence of termite activity.」(同,第8頁第3?第10行) (1f)「Upon the detection of the presence of termites in the monitoring device, the monitoring device can be removed from the station housing (or soil) and replaced with a toxicant-containing matrix, in a toxicant delivery device (bait tube). Termites that are captured in the monitoring device can be extracted and gently tapped into an upper chamber of the toxicant delivery device. This upper chamber is the recruiters' chamber. In order to exit, the termites must then move through the toxicant-containing matrix to reach the exit points. No toxicant needs to be used unless termites are detected from the monitoring procedure (or are otherwise known to be present), thereby eliminating the use of any unnecessary toxicant. When termites are detected, the toxicant-containing matrix is utilized until no termite activity is detected in the toxicant delivery device. At that time, monitoring devices can be used again. In addition to the practice of replacing monitoring devices with toxicant delivery devices, another embodiment of the invention comprises a monitoring device which remains in place and a toxicant delivery device which can be added to, or fitted around, the monitoring device if the need arises to deliver toxicant.」(同,第10頁第21行?第11頁第3行) (1g)個別無線リンクを使用してセンサと通信するデータ収集装置を含む遠隔監視システム構成の例を示す図3をみると,「監視装置(センサ)」は,左右に二つあり,一方のセンサと他方のセンサは隔てられていることが明らかであり,これら二つのセンサは,独立した個別無線リンクを使用して現場のデータ収集装置と通信し,それぞれのセンサからの情報をデータ収集装置が個別に受け取るように構成されていることがみてとれる。 [参考:特表2001-502914号公報の上記記載事項(1a)が(1a’)に該当する] (1a’) 「図1は,目標現場に位置するセンサから得られるデータを提供するために,遠隔地にあるホストシステムと通信するデータ収集装置を含む遠隔監視システムの一例を示す図である。 図2は,複数の個別通信リンクを使用して複数のセンサと通信するデータ収集装置を含む遠隔監視システム構成の別の例を示す図である。 図3は,個別無線通信リンクを使用してセンサと通信するデータ収集装置を含む遠隔監視システム構成の別の例を示す図である。 図4は,図1および図2に示される遠隔監視システムで使用されるセンサの一例であって,監視ステーションハウジング内に設置され,データ収集装置と通信するケーブルに接続されるセンサを示す。 図5aおよび図5bは,本発明の遠隔監視システムとともに使用するための監視ステーションハウジング蓋および取り付けられた監視装置の一例を示す平面図であり,その上にセンサ回路がある。 」 (1b’) 「本発明の好ましい実施形態は,以下の2つの反復可能なステップを特徴とする統合型害虫管理システムの一体化した一部である。これは,(1)集団の監視/捕獲(これ以降監視として言及する),および(2)発生源(matrix)を含む毒物を使用することによる害虫への毒物の送達である。プロセスの監視ステップは,シロアリの活動を検出するために単一または複数の特定の場所を監視することを含む。このステップは,さらに,シロアリの捕獲を含むことがある。」 (1c’) 「本発明の方法が地下のシロアリの抑制にどのように適用できるのかということに関する一例は,以下の通りである。 適当な寸法の穴が,ステーションハウジングの位置決定のために地中に作られる。ステーションハウジングはその穴の中に配置される。監視装置は,ステーションハウジングの内側に配置される。カバーがステーションハウジングの上にかぶせられ,地表に固定される。あるいは,監視装置は,ステーションハウジングの開口部が地表近くになるまで土の中に差し込まれるか,打ち込まれたステーションハウジングの内側に設置することができる。・・・。 監視装置は,シロアリの侵入の証拠がないか定斯的に問い正す(interrogate)ことができる。監視装置の検査は,必要や希望に応じて,毎週,隔週,毎月などで実行することができる。シロアリが柔らかな金属を食い破ることが知られているため,導電性金属の薄片が監視装置の中に組み込まれ,電子装置に接続されることがある。シロアリが薄い金属を食い破ると,回路が破壊され,したがってシロアリが存在することを証明する。」 (1d’) 「各ゾーンは,例えば図2に示すように,1つのセンサを数個,または例えば図1に示すように複数のセンサーを多く含むことがある。ケーブルのような配線された構成部品の代わりに,システムは,センサを例えば図3に示すような無線通信装置を使用して形成し,独立した無線リンク上でデータ収集装置と通信するように構成することもある。現場のデータ収集装置は,各センサまたはセンサのグループに関するデータを連続的に,または(毎時,毎日,毎週などの)定期的な間隔で,あるいは指定された予定で,あるいは要求に応じて(リアルタイム監視)登録するように構成される。」 (1e’) 「好ましい遠隔監視装置は,シロアリによって常食にされることが意図されるセルロースでできた物質から構成される。例えば図4に示すように,センサ,すなわち対応する回路付きの監視装置は,地中に打ち込まれる監視ステーションハウジング内に配置される。シロアリがセルロースでできた物質を噛んでたどっていき,比較的に薄い回路を食い破ることでセンサ内で食べているシロアリを簡単に検出することができる。予備的な研究は,湿気のある暖かい気候でさえ,センサ回路は,シロアリの活動がない場合には6ヶ月以上導電性のままとなる可能性があることを示している。 」 (1f’) 「監視装置内でシロアリの存在が検出されると,監視装置がステーションハウジング(または土)から取り外され,毒物送達装置(餌管)の中に入った発生源を含む毒物と置換することができる。監視装置内に捕獲されたシロアリは,抽出され,毒物送達装置の上部チェンバー内にゆっくりとたたいて入れることができる。この上部チェンバーは,リクルーター(recruiter)のチェンバーである。したがって,シロアリは,出るためには,出口点にある発生源を含んだ毒物の中を通りぬけなければならない。シロアリが監視手順から検出され(あるいは,存在することが知られていない)限り,毒物が使用される必要はなく,それにより不必要な毒物の使用が排除される。シロアリが検出されると,シロアリの活動が毒物送達装置内で検出されなくなるまで,発生源を含む毒物が活用される。その時点で,監視装置は再び使用することができる。監視装置を毒物送達装置と置換する慣行に加えて,本発明の別の実施形態は,適所に残る監視装置,および毒物を送達する必要が生じた場合に監視装置に付加する,またはその周りに取り付けることができる毒物送達装置を含む。」 上記記載事項(1a)?(1g)及び図面の記載によれば,刊行物1には,次の発明が記載されているものと認められる。 「2つの反復可能なステップを特徴とする統合型害虫管理システムの一体化した一部であって,シロアリの活動を検出するため単一または複数の特定の場所の監視,および毒物を使用することによる害虫への毒物の送達であり,監視装置内でシロアリの存在が検出されると,毒物送達装置は,ステーションハウジング(または土)から監視装置が取り外され,毒物送達装置の中に入った発生源を含む毒物と置換することができ,監視装置を毒物送達装置と置換する慣行に加えて,毒物を送達する必要が生じた場合に監視装置に付加する毒物送達装置を含んでおり,センサ,すなわち対応する回路付きの監視装置は,地中に打ち込まれる監視ステーションハウジング内に配置され,隔てられた一方のセンサと他方のセンサ等の複数のセンサを無線通信装置を使用して形成し,独立した無線リンク上で現場のデータ収集装置と通信し,データ収集装置は,各センサまたはセンサのグループに関するデータを登録するように構成されている,遠隔監視システム。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。) 4 対比 本願発明と刊行物1記載の発明を対比する。 (a)本願発明の「害虫駆除装置」について,発明の詳細な説明には,「『害虫駆除装置』とは,広く,1つ又は2つ以上の種の害虫を感知し,検知し,監視し,餌でおびき寄せ,給餌し,毒を与え,すなわち全滅させるために使用される任意の装置を広く意味するものとする。」(段落【0006】参照)と記載されているから,「害虫駆除装置」とは,害虫を駆除するために使用される任意の装置を広く意味し,監視装置と共に駆除装置を設置するような態様までをも含むものと解釈される。 そうすると,刊行物1記載の発明の「毒物を送達する必要が生じた場合に監視装置に付加する毒物送達装置を含んでおり,センサ,すなわち対応する回路付きの監視装置は,地中に打ち込まれる監視ステーションハウジング内に配置され,一方のセンサと他方のセンサ等の複数のセンサを無線通信装置を使用して形成し,独立した無線リンク上で現場のデータ収集装置と通信」は,独立した無線リンクがあり,毒物送達装置を含んでいるので,本願発明の「各々が無線通信回路を有する複数の害虫駆除装置」に相当し,刊行物1記載の発明の「地中に打ち込まれる監視ステーションハウジング内に配置」は,本願発明の「設置する工程」に相当する。 (b)本願発明の「方法」は,何をする方法か明確でないので,発明の詳細な説明をみると,発明の詳細な説明には,「本発明の更に別の形態は,特徴的な害虫駆除システムを含む。このシステムは,多数の害虫駆除装置と,害虫駆除装置からデータを収集する探知器とを含む。この探知器は,害虫駆除装置の各々と個々に無線通信を行い得る形態とされた携帯型の形態とすることができる。」(段落【0007】参照)と記載されているから,本願発明の「方法」は,「害虫駆除システム」により実現される方法と解釈される。 そうすると,刊行物1記載の発明の,「遠隔監視システムがその一部を構成する統合型害虫管理システム」により実現される方法は全体として,本願発明の「方法」に相当するといえる。 (c)刊行物1記載の発明において,各センサからの情報をデータ収集装置が個別に受け取るように構成されているから,「一方のセンサ」と「他方のセンサ」は,それぞれ,本願発明の「第一の害虫駆除装置」と「第二の害虫駆除装置」に相当する。 また,刊行物1記載の発明における「現場のデータ収集装置」と,本願発明の「携帯型探知器」とは,共に,害虫駆除装置から無線通信により情報を受け取るものであるから,「情報収集装置」で共通し, 本願発明における「情報を受け取るように携帯型探知器を配置する工程」および「情報を受け取るように前記携帯型探知器の位置を変更する工程」は,いずれも,「携帯型探知器で情報を受け取るようにすること」であると解せるから,これらと,刊行物1記載の発明における「現場のデータ収集装置と通信し」「データを登録するように構成されている」とは,「情報収集装置で情報を受け取るようにすること」で共通する。 したがって,両者は, 「各々が無線通信回路を有する複数の害虫駆除装置を設置する工程, 第一の前記害虫駆除装置から無線通信により情報収集装置で情報を受け取るようにする工程,および 第二の前記害虫駆除装置から無線通信により前記情報収集装置で情報を受け取るようにする工程を含み, 前記第二の害虫駆除装置が前記第一の害虫駆除装置から隔てられている方法。」である点で一致し,次の点で相違している。 [相違点] 本願発明では,情報収集装置が携帯型探知器であって,第一の害虫駆除装置から情報を受け取るように配置し,その位置から,第二の害虫駆除装置から情報を受け取るように位置を変更するのに対し, 刊行物1記載の発明では,情報収集装置である,現場のデータ収集装置が携帯型であるとの限定はなく,位置の変更も限定されていない点。 5 判断 上記相違点について検討する。 従来から,例えば地中に配置される埋設物等からの情報を受け取るために移動しうる装置(本願発明の「携帯型探知器」に相当。)を用いることは,例えば,特開平10-105861号公報,特開平9-26320号公報,特開平7-43460号公報等にみられるように周知の技術であり,無線通信手段の選択において,各種通信手段を選択することは当業者であれば必要に応じて適宜なし得ることにすぎないので,刊行物1記載の発明の現場のデータ収集装置として周知の携帯型探知器を採用し,必要に応じて配置位置を変更することは,当業者が容易に想到しうることである。 そして,本願発明全体の効果は,刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。 したがって,本願発明は,刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 以上のとおり,本願発明は,刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-07-08 |
結審通知日 | 2013-07-09 |
審決日 | 2013-07-23 |
出願番号 | 特願2009-271179(P2009-271179) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A01M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木村 隆一 |
特許庁審判長 |
高橋 三成 |
特許庁審判官 |
杉浦 淳 住田 秀弘 |
発明の名称 | 害虫駆除方法及び装置 |
代理人 | 大森 規雄 |
代理人 | 鈴木 康仁 |
代理人 | 小林 浩 |
代理人 | 藤田 尚 |