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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1282577
審判番号 不服2012-18579  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-24 
確定日 2013-12-04 
事件の表示 特願2009-110381「異なるドープ部分を備えた太陽電池およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月 2日出願公開、特開2010- 74134〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成21年 4月30日 特許出願(パリ条約による優先権主張2008 年9月16日 台湾)
平成23年 6月29日 拒絶理由通知(同年7月5日発送)
平成23年10月 3日 意見書・手続補正書
平成24年 5月18日 拒絶査定(同年5月22日送達)
平成24年 9月24日 本件審判請求・手続補正書
平成25年 1月17日 審尋(同年1月22日発送)
平成25年 4月19日 回答書

第2 平成24年9月24日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年9月24日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の概略
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に、

「異なるドープ部分を備えた太陽電池の製造方法であって、少なくとも、
基板を準備する工程と、
ヘビードープ部分と、前記ヘビードープ部分の下方に設けられているライトドープ部分とを有するドープ層を形成する工程と、
前記ドープ層の前記ヘビードープ部分を除去する工程と、
前記ドープ層の前記ヘビードープ部分を除去した後に、パターンニングされた拡散防止層を形成する工程と、
前記パターンニングされた拡散防止層をマスクとして、露出している前記ドープ層の前記ライトドープ部分を更にドーピングして、ヘビードープ領域を形成する工程と、
前記パターンニングされた拡散防止層を除去する工程と、
反射防止層を形成する工程と、
前記ヘビードープ領域の上方に形成されているパターンニングされた金属ペーストを前記反射防止層上に形成する工程と、
前記金属ペーストを加熱して、太陽電池の金属電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする異なるドープ部分を備えた太陽電池の製造方法。」

とあったものを、

「異なるドープ部分を備えた太陽電池の製造方法であって、少なくとも、
基板を準備する工程と、
ヘビードープ部分と、前記ヘビードープ部分の下方に設けられているライトドープ部分とを有するドープ層を前記基板の一面上に形成する工程と、
前記ドープ層の前記ヘビードープ部分を除去する工程と、
前記ドープ層の前記ヘビードープ部分を除去した後に、パターンニングされた拡散防止層を形成する工程と、
前記パターンニングされた拡散防止層をマスクとして、前記基板の一面上において露出している前記ドープ層の前記ライトドープ部分及び該ライトドープ部分の下方の前記基板の部分だけを更にドーピングして、ヘビードープ領域を形成する工程と、
前記パターンニングされた拡散防止層を除去する工程と、
反射防止層を形成する工程と、
前記ヘビードープ領域の上方に形成されているパターンニングされた金属ペーストを前記反射防止層上に形成する工程と、
前記金属ペーストを加熱して、太陽電池の金属電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする異なるドープ部分を備えた太陽電池の製造方法。」
(当審注:下線は、請求人が補正箇所に付した下線である。)

と補正する補正事項を含むものである。
上記補正事項は、
補正事項1:ドープ層を形成する場所を「前記基板の一面上に」限定する補正事項、
補正事項2:「更にドーピングして、ヘビードープ領域を形成する」場所について、「前記パターンニングされた拡散防止層をマスクとして、露出している前記ドープ層の前記ライトドープ部分」であったものを、「前記パターンニングされた拡散防止層をマスクとして、前記基板の一面上において露出している前記ドープ層の前記ライトドープ部分及び該ライトドープ部分の下方の前記基板の部分だけ」に限定する補正事項、
からなる。
上記補正事項1、2は、何れも、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定する要件を満たすか)否かについて検討する。

2 引用する刊行物と引用発明
(1) 引用する刊行物
ア 記載事項
本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2000-183379号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(当審注:下線は、引用発明の認定と特に関連する箇所に、当審が付加したものである。)。

(ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶系半導体に不純物の熱拡散を施し、その表面側の電極部分に非電極部分より高濃度に不純物を拡散して光電変換効率が高いpn接合型の太陽電池を形成する太陽電池の製造方法に関する。」

(イ) 「【0002】
【従来の技術】従来、pn接合型の標準的な太陽電池は、例えばp型の結晶系半導体として、抵抗率0.3?1Ωcmのp型の結晶シリコン(以下結晶シリコンをc-Siという)を使用し、このp型のc-Si基板の表面側(受光面側)にn型不純物を熱拡散し、pn接合を形成して製造される。
【0003】そして、この太陽電池は、一般に、拡散層深さ(接合深さ)が0.5μm,n層の不純物密度が2?4×10^(-20)cm^(-3)であり、この場合、n層の最表面領域では不純物密度(表層濃度)が10^(21)cm^(-3)と非常に高くなるため、この領域における少数キャリアの寿命が再結合によって短くなり、光電変換効率が低い欠点がある。
【0004】一方、電気を取出すという側面からは、不純物密度を高くして極力低抵抗にすることが望ましい。
【0005】そこで、○1拡散表面に酸化・エッチングを施して拡散層深さを0.2?0.3μmに浅くし、n層の不純物濃度を1桁小さくして短波長域での光応答性を改善したり、○2電極が形成される電極部分の直列抵抗を下げるために不純物を多量に添加してn^(+)層でなく、n^(++)層を形成したりして光電変換効率を改善することが試みられ、その結果、図2に示すセル構造の光電変換効率が高いpn接合型の太陽電池が考案されている。
【0006】この図2の太陽電池はp型半導体基板1の表面側にn層2が形成され、このn層2の非電極部分の表面は反射防止膜3で覆われ、電極部分の表面にはいわゆるくし型電極としての格子状電極パターンの表面Ag電極4が設けられている。
【0007】また、半導体基板1の裏面側にはキャリアの再結合を防止するため、p^(+)層(ハイドープ層)5を介して裏面電極としての背面Al電極6及び背面Ag電極7が設けられている。
【0008】そして、n層2の電極が形成されない非電極部分(受光部分)は、キャリアの再結合を防止するため、低濃度ドープ層すなわちn^(+)層2aであり、ほぼ表面Ag電極4の直下の電極部分は低抵抗にするため、n^(+)層2aより多量に不純物を含んだ高濃度ドープ層すなわちn^(++)層2bである。
【0009】つぎに、この図2の太陽電池の従来の製造方法を、図3の製造工程図を参照して説明する。まず、図3の(a)に示すように3×10^(15)?4×10^(16)cm^(-3)の不純物濃度のp型半導体基板1を用意する。
【0010】この半導体基板1は、一般に、(100)の主面を有するc-Si基板からなり、その表面(受光面)は、光の反射を低減するため、多くの微細なピラミッド状の凹凸を有するテクスチャ表面に形成される。
【0011】このテクスチャ表面は、数パーセントのNaOHを含む溶液中でイソプロピルアルコールを添加しながら、半導体基板1を80℃?90℃に20?30分間加熱処理して形成される。
【0012】そして、拡散ガスとして例えばPOCl_(3) ガスを含む雰囲気中において、半導体基板1に850℃で30分間熱拡散処理を施し、図3の(b)に示すように半導体基板1の全面に例えば0.4μmの厚さのn^(+)層2aを形成する。
【0013】さらに、酸素ガス雰囲気中において半導体基板1を1000℃で60分間酸化処理し、図3の(c)に示すようにn^(+)層2aを覆う拡散マスク用のSiO_(2)の酸化膜8を形成する。
【0014】そして、フォトリソグラフィ工程により酸化膜8の表面に、半導体基板1の表面側の非電極部分のみを覆うパターンの図3の(d)のレジスト膜9を形成し、ドライエッチング工程により酸化膜8のマスクパターン加工を施し、基板1の表面の電極部分の酸化膜8を除去し、この加工後にレジスト膜9を除去する。
【0015】つぎに、例えばPOCl_(3)ガスを含む雰囲気中において、半導体基板1に例えば900℃で40分間熱拡散処理を施し、図3の(e)に示すように半導体基板1の表面側のほぼ電極直下の部分にn^(++)層2bを形成し、この形成後、半導体基板1を10%のHFを含む溶液中に1分間浸漬し、不要になったレジスト膜9及びn^(+)層2a,n^(++)層2bの表面に形成されたリンガラスを除去する。
【0016】さらに、図3の(f)に示すように半導体基板1の表面側のn^(+)層2a,n^(++)層2bが形成するn層2の表面に、反射防止膜3を約70?80nmの厚さに形成し、図中の破線外側の不要なn^(++)層2bを除去するため、反射防止膜3の表面に耐酸性のレジスト膜10をスクリーン印刷法により塗布し、乾燥して形成する。
【0017】そして、HFとHNO_(3)とを1:3の割合いで含む混酸(HF:HNO_(3)=1:3)で半導体基板1をエッチングし、基板1の前記の不要なn^(++)層2bを除去し、この除去後、トルエン,キシレン等の溶剤でレジスト膜10も除去し、図3の(g)に示すように半導体基板1の表面にn層2,反射防止膜3を積層形成する。
【0018】つぎに、半導体基板1の裏面にAgを含むペーストと,Alを含むペーストとを用いてスクリーン印刷法等でそれぞれ所定のパターンに塗布して乾燥した後、半導体基板1を700℃?800℃で熱処理し、半導体基板1の裏面に約20μmの厚さの背面Al電極6を焼成する。
【0019】このとき、背面Ag電極7も形成される。その際、アルミとシリコンが合金化し、半導体基板1のAl電極6に接した部分にp^(+)層5が形成され、このp^(+)層5は約5μmのほぼ厚さであり、BSF(Back Surface Field)効果を生じる。
【0020】さらに、反射防止膜3の表面にスクリーン印刷法等でAgを含むペーストを塗布して乾燥した後、半導体基板1を600℃?700℃で熱処理し、約20μmの厚さの表面Ag電極4を焼成する。
【0021】このとき、Agを含むペースト(銀ペースト)はガラスフリットを含み、表面Ag電極4は反射防止膜3を通してn^(++)層2bとオーミック接続される。」(表記の都合上、丸数字は「○1」の様に置き換えた(【0005】段落中の2箇所である。)また、【0014】に「…レジスト膜9を除去する。」とあるところ、【0015】にも「…図3の(e)に示すように…不要になったレジスト膜9…を除去する」とあって両者の記載が矛盾する。ここで、図3(e)には酸化膜8が描かれ、同図(f)には酸化膜8が描かれていないことから、【0015】において除去する「レジスト膜9」は、「酸化膜8」の誤記と認められる。)
(ウ)上記(イ)【0014】?【0015】の記載を踏まえて図3(e)を見ると、上記(イ)【0015】に記載されたn^(++)層2bを形成する「半導体基板1の表面側のほぼ電極直下の部分」とは、酸化膜8を除去した下方のn^(+)層2aの部分、及びその下方のp型半導体基板1の部分であることが理解できる。

イ 引用発明
上記アの記載によれば、刊行物には以下の太陽電池の製造方法が記載されている。
「以下の(a)?(i)の工程を備える太陽電池の製造方法。
(a)p型半導体基板1を用意する工程。
(b)拡散ガスとして例えばPOCl_(3) ガスを含む雰囲気中において、半導体基板1に850℃で30分間熱拡散処理を施し、半導体基板1の全面に例えば0.4μmの厚さのn^(+)層2aを形成する工程。
(c)酸素ガス雰囲気中において半導体基板1を1000℃で60分間酸化処理し、n^(+)層2aを覆う拡散マスク用のSiO_(2)の酸化膜8を形成する工程。
(d)フォトリソグラフィ工程により酸化膜8の表面に、半導体基板1の表面側の非電極部分のみを覆うパターンのレジスト膜9を形成し、ドライエッチング工程により酸化膜8のマスクパターン加工を施し、基板1の表面の電極部分の酸化膜8を除去し、この加工後にレジスト膜9を除去する工程。
(e)POCl_(3)ガスを含む雰囲気中において、半導体基板1に例えば900℃で40分間熱拡散処理を施し、半導体基板1の表面側のほぼ電極直下の部分、すなわち酸化膜8を除去した下方のn^(+)層2aの部分、及びその下方のp型半導体基板1の部分にn^(++)層2bを形成し、この形成後、半導体基板1を10%のHFを含む溶液中に1分間浸漬し、不要になった酸化膜8及びn^(+)層2a,n^(++)層2bの表面に形成されたリンガラスを除去する工程。
(f)半導体基板1の表面側のn^(+)層2a,n^(++)層2bが形成するn層2の表面に、反射防止膜3を約70?80nmの厚さに形成し、反射防止膜3の表面に耐酸性のレジスト膜10をスクリーン印刷法により塗布し、乾燥して形成する工程。
(g)HFとHNO_(3)とを1:3の割合いで含む混酸(HF:HNO_(3)=1:3)で半導体基板1をエッチングし、基板1の前記の不要なn^(++)層2bを除去し、この除去後、トルエン,キシレン等の溶剤でレジスト膜10も除去し、半導体基板1の表面にn層2,反射防止膜3を積層形成する工程。
(h)半導体基板1の裏面にAgを含むペーストと,Alを含むペーストとを用いてスクリーン印刷法等でそれぞれ所定のパターンに塗布して乾燥した後、半導体基板1を700℃?800℃で熱処理し、半導体基板1の裏面に約20μmの厚さの背面Al電極6を焼成する工程。
(i)反射防止膜3の表面にスクリーン印刷法等でAgを含むペーストを塗布して乾燥した後、半導体基板1を600℃?700℃で熱処理し、約20μmの厚さの表面Ag電極4を焼成することにより、表面Ag電極4は反射防止膜3を通してn^(++)層2bとオーミック接続される工程。」(以下「引用発明」という。)

3 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「太陽電池の製造方法」は、「(b)…n^(+)層2aを形成する工程」と「(e)…n^(++)層2bを形成…する工程」を備えており、引用発明の製造方法で製造された太陽電池は、「n^(+)層2a」と「n^(++)層2b」の異なるドープ部分を備えている。
してみると、引用発明の「(b)…n^(+)層2aを形成する工程」と「(e)…n^(++)層2bを形成…する工程」を備える「太陽電池の製造方法」は、本願補正発明の「異なるドープ部分を備えた太陽電池の製造方法」に相当する。
(2)引用発明の「(a)p型半導体基板1を用意する工程」は、本願補正発明の「基板を準備する工程」に相当する。
(3)本願補正発明の「ヘビードープ部分と、前記ヘビードープ部分の下方に設けられているライトドープ部分とを有するドープ層を前記基板の一面上に形成する工程」と、引用発明の「(b)拡散ガスとして例えばPOCl_(3) ガスを含む雰囲気中において、半導体基板1に850℃で30分間熱拡散処理を施し、半導体基板1の全面に例えば0.4μmの厚さのn^(+)層2aを形成する工程」を対比する。
引用発明の「n^(+)層2a」は、本願補正発明の「ドープ層」の「ライトドープ部分」に相当する。そうすると、両者は、「ライトドープ部分を有するドープ層を前記基板の面上に形成する工程」の点で共通する。
(4)本願補正発明の「前記ドープ層の前記ヘビードープ部分を除去した後に、パターンニングされた拡散防止層を形成する工程」と、引用発明の「(c)酸素ガス雰囲気中において半導体基板1を1000℃で60分間酸化処理し、n^(+)層2aを覆う拡散マスク用のSiO_(2)の酸化膜8を形成する工程」及び「(d)フォトリソグラフィ工程により酸化膜8の表面に、半導体基板1の表面側の非電極部分のみを覆うパターンのレジスト膜9を形成し、ドライエッチング工程により酸化膜8のマスクパターン加工を施し、基板1の表面の電極部分の酸化膜8を除去し、この加工後にレジスト膜9を除去する工程」を対比する。
引用発明の「拡散マスク用のSiO_(2)の酸化膜8」は、本願補正発明の「拡散防止層」に相当する。そして、引用発明において、「酸化膜8」に「マスクパターン加工」が施されることは、本願補正発明の「拡散防止層」が「パターンニング」されることに相当する。そうすると、両者は、「パターンニングされた拡散防止層を形成する工程」の点で一致する。
(5)本願補正発明の「前記パターンニングされた拡散防止層をマスクとして、前記基板の面上において露出している前記ドープ層の前記ライトドープ部分及び該ライトドープ部分の下方の前記基板の部分を更にドーピングして、ヘビードープ領域を形成する工程」と、引用発明の「(e)POCl_(3)ガスを含む雰囲気中において、半導体基板1に例えば900℃で40分間熱拡散処理を施し、半導体基板1の表面側のほぼ電極直下の部分、すなわち酸化膜8を除去した下方のn^(+)層2aの部分、及びその下方のp型半導体基板1の部分にn^(++)層2bを形成」することを対比する。
引用発明の「酸化膜8」が本願補正発明の「拡散防止膜」に相当し、以下同様に、「n^(+)層2a」が「ライトドーピング部分」に、「n^(++)層2b」が「ヘビードーピング部分」にそれぞれ相当する。
してみると、両者は「前記パターンニングされた拡散防止層をマスクとして、前記基板の面上において露出している前記ドープ層の前記ライトドープ部分及び該ライトドープ部分の下方の前記基板の部分を更にドーピングして、ヘビードープ領域を形成する工程」の点で一致する。
(6)引用発明の「(e)…、半導体基板1を10%のHFを含む溶液中に1分間浸漬し、不要になった酸化膜8…を除去する工程」は、本願補正発明の「前記パターンニングされた拡散防止層を除去する工程」に相当する。
(7)引用発明の「(f)…反射防止膜3を約70?80nmの厚さに形成し、…乾燥して形成する工程」は、本願補正発明の「反射防止層を形成する工程」に相当する。
(8)本願補正発明の「前記ヘビードープ領域の上方に形成されているパターンニングされた金属ペーストを前記反射防止層上に形成する工程」及び「前記金属ペーストを加熱して、太陽電池の金属電極を形成する工程」と、引用発明の「(i)反射防止膜3の表面にスクリーン印刷法等でAgを含むペーストを塗布して乾燥した後、半導体基板1を600℃?700℃で熱処理し、約20μmの厚さの表面Ag電極4を焼成することにより、表面Ag電極4は反射防止膜3を通してn^(++)層2bとオーミック接続される工程」を対比する。
引用発明の「Agを含むペースト」は本願補正発明の「金属ペースト」に相当し、以下同様に、「熱処理」することは「加熱」することに、「表面Ag電極4を焼成すること」は「金属電極を形成する」ことに、それぞれ相当する。してみると、両者は相当関係にある。
(9)以上のことから、本願補正発明と引用発明は、
「異なるドープ部分を備えた太陽電池の製造方法であって、少なくとも、 基板を準備する工程と、
ライトドープ部分を有するドープ層を前記基板の面上に形成する工程と、 パターンニングされた拡散防止層を形成する工程と、
前記パターンニングされた拡散防止層をマスクとして、前記基板の面上において露出している前記ドープ層の前記ライトドープ部分及び該ライトドープ部分の下方の前記基板の部分を更にドーピングして、ヘビードープ領域を形成する工程と、
前記パターンニングされた拡散防止層を除去する工程と、
反射防止層を形成する工程と、
前記ヘビードープ領域の上方に形成されているパターンニングされた金属ペーストを前記反射防止層上に形成する工程と、
前記金属ペーストを加熱して、太陽電池の金属電極を形成する工程と、を含む異なるドープ部分を備えた太陽電池の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:基板の面上にライトドープ部分を有するドープ層を形成する工程が、本願補正発明では、「ヘビードープ部分と、前記ヘビードープ部分の下方に設けられているライトドープ部分とを有するドープ層を前記基板の」「面上に形成する工程」及び「前記ドープ層の前記ヘビードープ部分を除去する工程」であるのに対し、引用発明では、「半導体基板1の全面に例えば0.4μmの厚さのn^(+)層2aを形成する工程」である点。

相違点2:本願補正発明では、「ヘビードープ部分と、前記ヘビードープ部分の下方に設けられているライトドープ部分とを有するドープ層」を形成する領域が「基板の一面上」であり、ヘビードープ領域を形成する領域が、「前記基板の一面上において露出している前記ドープ層の前記ライトドープ部分及び該ライトドープ部分の下方の前記基板の部分だけ」であるのに対し、引用発明では、基板の一面とともに基板の側面、及び裏面もドーピングしている点。

4 判断
(1)相違点1について
本願補正発明の「ライトドープ部分」と引用発明の「n^(+)層2a」は、何れも短波長域での応答性を改善するものであり、同様の技術上の意義を有するものである(本願の発明の詳細な説明における「【発明の効果】【0013】…、太陽電池のエミッタ領域に低濃度のドープ層を形成して、太陽電池における短い波長の周波数応答性を効果的に改善することができる。」との記載、刊行物における「【0005】そこで、○1拡散表面に酸化・エッチングを施して拡散層深さを0.2?0.3μmに浅くし、n層の不純物濃度を1桁小さくして短波長域での光応答性を改善したり、…して光電変換効率を改善することが試みられ、その結果、図2に示すセル構造の光電変換効率が高いpn接合型の太陽電池が考案されている」との記載を参照。)ところ、「ライトドープ部分」を形成する方法として、表面に形成された高濃度不純物領域を除去することにより形成する方法は、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2003-101055号公報(【0033】?【0035】)に記載されるように、周知技術であるから、引用発明において前記周知技術を採用し、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。
(2)相違点2について
半導体基板に不純物領域を形成する方法として、熱拡散による方法とイオンインプランテーションによる方法は、何れも周知の方法であるところ、熱拡散で形成した場合には、基板の裏面や側面にも不純物領域が形成され、エッチングで除去する必要があること、この手間を省くには、イオンインプランテーションで不純物領域を形成すれば良いことは、例えば、特開平8-23111号公報(「【0024】…熱拡散で形成した場合は、n領域がウエーハの裏面2bや側面(図示せず)にも形成されるので、これはエッチングで除去する。この手間を省くため、n領域2aの形成をイオンインプランテーションで行ってもよい。」との記載を参照。)に記載されるよう周知技術である。
そうすると、引用発明において、n^(+)層2a、n^(++)層2bを形成する方法として、熱拡散による方法に代えてイオンインプランテーションによる方法を採用し、基板の裏面や側面をエッチングする手間を省き、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(3)本願補正発明の効果について
そして、本願補正発明が奏する作用効果は、引用発明と上記周知技術に基いて当業者が容易に予測しうる程度のものである。

(4)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明と上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成23年10月3日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「異なるドープ部分を備えた太陽電池の製造方法であって、少なくとも、
基板を準備する工程と、
ヘビードープ部分と、前記ヘビードープ部分の下方に設けられているライトドープ部分とを有するドープ層を形成する工程と、
前記ドープ層の前記ヘビードープ部分を除去する工程と、
前記ドープ層の前記ヘビードープ部分を除去した後に、パターンニングされた拡散防止層を形成する工程と、
前記パターンニングされた拡散防止層をマスクとして、露出している前記ドープ層の前記ライトドープ部分を更にドーピングして、ヘビードープ領域を形成する工程と、
前記パターンニングされた拡散防止層を除去する工程と、
反射防止層を形成する工程と、
前記ヘビードープ領域の上方に形成されているパターンニングされた金属ペーストを前記反射防止層上に形成する工程と、
前記金属ペーストを加熱して、太陽電池の金属電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする異なるドープ部分を備えた太陽電池の製造方法。」(以下「本願発明」という。)

2 引用する刊行物と引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から、上記「第2 1」に記載した補正事項1、2の限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 4」に記載したとおり引用発明と周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明と周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-02 
結審通知日 2013-07-09 
審決日 2013-07-23 
出願番号 特願2009-110381(P2009-110381)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 昌伸  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 畑井 順一
星野 浩一
発明の名称 異なるドープ部分を備えた太陽電池およびその製造方法  
代理人 板谷 康夫  

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