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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1282578
審判番号 不服2012-19030  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-28 
確定日 2013-12-04 
事件の表示 特願2008-531272「携帯通信装置に触覚メッセージを提供する方法とシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月22日国際公開、WO2007/033244、平成21年 2月26日国内公表、特表2009-508446〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明

本願は、平成18年9月13日(パリ条約による優先権主張、外国庁受理2005年9月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年7月12日付けで拒絶理由が通知され、同年10月20日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出され、平成23年7月12日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年10月14日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、平成24年5月16日付けで補正却下されるとともに拒絶査定され、これに対して同年9月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年10月20日付け手続補正書により補正された、特許請求の範囲、請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
通信サービスを提供するサービスキャリアから通信信号を受信するとともに、当該通信信号に含まれる複数のイベントに関連する各触覚コードに対応する制御信号を予め記憶しているメモリを有する携帯通信装置が、
前記通信信号に含まれているイベントを抽出するステップと、
前記抽出するステップによって抽出されたイベントに関連する触覚コードに対応する制御信号を前記メモリから選択して読み出すステップと、
前記読み出すステップによって読み出された制御信号を振動アクチュエータに出力して、前記抽出されたイベントに関連した触覚コードに固有の触覚効果で当該振動アクチュエータを振動させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。」

2.引用発明
これに対して、原審の拒絶理由に引用された特開平11-4282号(以下、「引用例」という。)には、「バイブレータ付き移動体電話機」として、図面とともに、以下の事項が記載されている。
イ.「【請求項1】着信を使用者に通知する方法としてバイブレータを振動させる手段を有するバイブレータ付き移動体電話機において、
発信者に応じてバイブレータの振動パターンすなわちオン、オフパターンを変化させることを特徴とするバイブレータ付き移動体電話機。
【請求項2】請求項1記載のバイブレータ付き移動体電話機において、
電話番号を登録する手段と、
前記登録電話番号に対応してバイブレータの振動パターンを登録する手段と、
着信時の発番号通知と前記登録電話番号とを照合し、発番号通知に該当する登録電話番号があれば、該登録電話番号に対応した振動パターンでバイブレータを振動させる手段とを具備してなるバイブレータ付き移動体電話機。」(2頁1欄)

ロ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、PHS電話機や携帯電話機などの移動体電話機に係り、特に、着信を使用者に通知する方法としてバイブレータを振動させる手段を有するバイブレータ付き移動体電話機に関する。」(2頁1欄)

ハ.「【0008】CPU11には、発番号通知確認部20、データ登録部21、振動パターン割当部22、バイブレータ駆動回路23が接続され、バイブレータ駆動回路23の出力には着信を振動で使用者に通知するバイブレータ24が接続される。
【0009】前記データ登録部21は、予想される発信者毎に、着信時のバイブレータ24の振動パターン(オン、オフパターン)に関するデータを登録するもので、図3に示すように、発信者毎に電話番号、氏名(名称)、割り当てた個別の振動パターン番号を登録する。

・・・・ 途中略 ・・・・

【0010】振動パターン割当部22は、図1に示すように、バイブレータの振動パターン番号毎の振動パターンを記憶する。ここでは、振動パターン番号「1」に対応して、オン状態が連続した振動パターン(標準振動パターンでもある)を記憶し、振動パターン番号「2」に対応して、オン時間とオフ時間がほぼ等しい振動パターンを記憶する。さらに、振動パターン番号「3」に対応して、オン時間が長く、オフ時間が短い振動パターンを記憶しており、以下同様にして、振動パターン番号毎に、異なるオン、オフパターンの振動パターンを記憶する。
【0011】発番号通知確認部20は、着信時に発番号通知ありかの判断を行う。そして、発番号通知ありと判断されると、CPU11により、その発番号通知に該当した電話番号がデータ登録部21に登録されているか照合され、データ登録部21に登録されていれば、その電話番号に対応する個別振動パターン番号、あるいはグループ番号およびグループ別振動パターン番号が読み出され、さらに振動パターン番号に対応した振動パターンが振動パターン割当部22から読み出され、その振動パターンでバイブレータ駆動回路23を動作させる。」(3頁3?4欄)

ニ.「【0014】一方、発番号通知に該当する電話番号がデータ登録部21に登録されており、しかも、いま、入力装置12により予め個別モードであるように設定されていると(ステップS36)、発番号通知に該当する電話番号の個別の振動パターン番号がデータ登録部21から読み出される(ステップS37)。たとえば、該当する電話番号が図3の「0301111111」であれば、振動パターン番号「3」が読み出される。そして、この振動パターン番号「3」が読み出された結果、振動パターン割当部22から図1の上から3番目に記したような振動パターン、すなわち、オン時間が長く、オフ時間が短い振動パターンが読み出され(ステップS38)、この振動パターンでバイブレータ駆動回路23が動作してバイブレータ24が同様のパターンで振動することになる(ステップS42)。」(3頁4欄)

ホ.「【0016】このように、上記移動体電話機では、発信者毎に、あるいは発信者のグループ毎にバイブレータ24の振動パターンすなわちオン、オフパターンが異なるので、地下鉄内やディスコやカラオケBOX内などの騒音の激しい場所でも、また耳の不自由な人達にとっても発信者を識別できる。しかも、このオン、オフパターンを異ならせる方法によれば、振動量を単に変化させる方法と違って、電話機が鞄等に収容されていて振動が間接的に伝わってくる場合でも、振動状態を正確に把握することができ、発信者を正確に知ることができる。」(4頁5欄)

上記引用例の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、

上記イ.には、「着信時の発番号通知」と登録された「電話番号」とを照合し、「発番号通知に該当する電話番号に対応した振動パターンでバイブレータを振動させる手段」を備えた「バイブレータ付き移動体電話機」が示されている。

上記ハ.には、「発番号通知に該当した電話番号に対応する個別振動パターン番号が読み出され、さらに振動パターン番号に対応した振動パターンが振動パターン割当部22から読み出され、その振動パターンでバイブレータ駆動回路が動作する」ことが記載されている。

上記ニ.及び図5には、
ステップS37として、発番号通知に該当する電話番号の個別の振動パターン番号がデータ登録部21から読み出されること、
ステップS38として、振動パターン番号が読み出された結果、振動パターン割当部22から振動パターンが読み出されること、
ステップS42として、読み出された振動パターンでバイブレータ駆動回路23が動作してバイブレータ24が同様のパターンで振動することが示されている。
したがって、
「着信時の発番号通知に該当する電話番号の個別の振動パターン番号をデータ登録部21から読み出すステップ(S37)と、」
「前記振動パターン番号を読出すステップで読出された振動パターン番号に相当する振動パターンを振動パターン割当部から読み出すステップ(S38)と、」
「前記振動パターン割当部から読み出すステップによって読み出された振動パターンでバイブレータ駆動回路23が動作してバイブレータ24が同様のパターンで振動するステップ(S42)と、」が記載されているといえる。

したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「着信時の発番号通知に該当した電話番号に対応する個別振動パターン番号が読み出され、さらに振動パターン番号に対応した振動パターンが振動パターン割当部から読み出され、その振動パターンでバイブレータ駆動回路が動作する手段を備えたバイブレータ付き移動体電話機が、
着信時の発番号通知に該当する電話番号の個別の振動パターン番号をデータ登録部から読み出すステップと、
前記振動パターン番号を読み出すステップで読み出された振動パターン番号に相当する振動パターンを振動パターン割当部から読み出すステップと、
前記振動パターン割当部から読み出すステップによって読み出された振動パターンでバイブレータ駆動回路が動作してバイブレータが同様のパターンで振動するステップと、
を含む方法。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する

引用発明の「バイブレータ付き移動体電話機」は、上記ロ.に示されるように、「携帯電話機」などであり、電話機は通信装置の1つであるから、「携帯通信装置」であるといえる。

引用発明の「着信時の発番号通知」は、「通信サービスを提供するサービスキャリアから受信される」ものであって、着信が生起したことを知らせる「通信信号に含まれ」、いずれの発信者からの着信が生じたかを特定する情報である。
一方、本願発明の「イベント」は、発明の詳細な説明の【0022】に「通信イベント」として「音声通話、電子メールまたはテキストもしくはマルチメディアの形式のメッセージ」からなる「通信信号」が例示され、【0023】に「サービスキャリアイベント」として「サービス領域への移動、微弱キャリア信号、モバイルサービスプランによって割り当てられる時間の経過、ローミングアラート、携帯通信装置の電源投入および電源遮断」の「利用者への通知」が例示され、また、【0027】には「接続イベント」として「電子メールの送信、SMSメッセージの送信、通話中断、通話接続、通話接続時間の経過、プッシュツートーク使用可能アラート、プッシュツートーク受信アラートおよび回線輻輳中のプッシュツートークアラート」の「接続」が例示され、特に、【0030】には、『接続イベントの「ソース」は、通話イベント(例えば発呼者の電話番号、発信者のe-メールアドレスを明確に特定または特徴とする特性に関連付けてもよい。』と示されているように、「発呼者の電話番号を明確に特定または特徴とする特性に関連付けする」ことを含んだ、「通信信号」、「利用者への通知」、「接続」、等を意味するものである。
したがって、引用発明の「着信時の発番号通知」は、着信接続時に発呼者電話番号を特定するものであって、「発呼者の電話番号を明確に特定または特徴とする特性に関連付けする」ものであるから、本願発明の「イベント」に包含されるものである。そして、同時に、本願発明の「通信サービスを提供するサービスキャリアから通信信号を受信するとともに、当該通信信号に含まれる」ものといえる。

引用発明の「振動パターン番号」は、発呼者の電話番号を使用者に通知する際にどのようなパターンで振動を行うかを示す番号(コード)であり、振動は「触覚」を介して使用者に通知を与えるものといえるので、本願発明の「イベントに関連する触覚コード」に相当する。

引用発明の「振動パターン」は、上記ハ.に示されるよう、オン、オフパターンでバイブレータ駆動回路を動作させるものであるから制御信号といえ、本願発明の「制御信号」に相当する。

引用発明の「振動パターン割当部」は、上記ハ.の【0010】、【0011】に示されるよう、振動パターン番号毎の振動パターンを予め記憶しておき、振動パターン番号に対応して読み出しを行うものであるから、本願発明の「予め記憶しているメモリ」に相当する。
そして、引用発明の「振動パターン割当部」は、バイブレータ付き移動体電話機が「有する」ことは明らかである。

引用発明の「振動パターンを振動パターン割当部から読み出すステップ」は、振動パターンを「選択して」読み出すものといえ、本願発明の「触覚コードに対応する制御信号を前記メモリから選択して読み出すステップ」に相当する。

引用発明の「バイブレータ」は、明らかに、本願発明の「振動アクチュエータ」に相当する。

引用発明の「振動パターンでバイブレータ駆動回路が動作して」は、バイブレータを駆動する回路に振動パターンを与えるものといえ、本願発明の「制御信号を振動アクチュエータに出力」に相当する。

引用発明の「バイブレータが同様のパターンで振動するステップ」は、上記ホ.に示されるように、バイブレータ付き移動体電話機の使用者が、それぞれの「振動」の「パターン」を触覚により識別するための「ステップ」であって、識別のための「固有の触覚効果」を有するものといえ、本願発明の「触覚コードに固有の触覚効果で当該振動アクチュエータを振動させるステップ」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。

<一致点>
「通信サービスを提供するサービスキャリアから通信信号を受信するとともに、当該通信信号に含まれるイベントに関連する各触覚コードに対応する制御信号を予め記憶しているメモリを有する携帯通信装置が、
イベントに関連する触覚コードに対応する制御信号を前記メモリから選択して読み出すステップと、
前記読み出すステップによって読み出された制御信号を振動アクチュエータに出力して、イベントに関連した触覚コードに固有の触覚効果で当該振動アクチュエータを振動させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。」

<相違点>
<相違点1>
本願発明は、「複数」のイベントに関連したものであるのに対し、引用発明のイベントは「着信時の発番号通知」のみに関するものである点。
<相違点2>
本願発明は、「通信信号に含まれているイベントを抽出するステップ」を有するものであるのに対し、引用発明は、当該ステップについて明示されていない点。

上記相違点について検討する。

まず、相違点1について検討する。
本願発明の「複数」のイベントについて、イベントの「数」が「複数」であるとも、イベントの「種別」が「複数」であるとも解させるところ、「複数」を、各触覚コードに対応させる「イベントの数」であるとすると、引用発明のごとくイベントの種別が「着信時の発番号通知」のみであっても、各触覚コードに対応させるイベントの数は、登録された電話番号に対応して「複数」存在し、上記相違点1は、実質的な相違ではない。
また、本願発明の、「複数」のイベントが、イベントの種別が異なる「複数」であるとしても、電話着信時、メールやメッセージ受信時、アラーム設定日時等の「複数」の種別のイベントに対して、それぞれ異なるバイブレータ設定を行うことは、本願出願前に周知の技術であり(例えば、「取扱説明書(基本編) FOMA F900iT,NTT DoCoMoグループ,2004年8月,第3版,118,158頁」、「取扱説明書(アプリケーション編) FOMA F900iT,NTT DoCoMoグループ,2004年8月,第3版,113,202頁」を参照。)、引用発明の技術を、「複数」の種別のイベントに対応させて用いることは当業者が容易に想到し得るものである。

相違点2について検討する。
各触覚コードにイベントを対応させるには、各イベントを特定することが必要となるものであり、引用発明においても、着信時、「通信信号に含まれているイベント(発番号通知)を抽出するステップ」を用いて、各イベントを特定することは当業者が適宜なし得ることである。

そして、本願発明に関する作用・効果も引用発明および周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

4.結語
以上のとおり、本願発明は引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-03 
結審通知日 2013-07-09 
審決日 2013-07-22 
出願番号 特願2008-531272(P2008-531272)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 仲間 晃宮田 繁仁  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 山本 章裕
矢島 伸一
発明の名称 携帯通信装置に触覚メッセージを提供する方法とシステム  
代理人 藤田 和子  

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