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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03M |
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管理番号 | 1282627 |
審判番号 | 不服2012-25115 |
総通号数 | 170 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-12-19 |
確定日 | 2013-12-19 |
事件の表示 | 特願2011-521079「データ変換のシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月 4日国際公開、WO2010/014089、平成23年12月 8日国内公表、特表2011-529671〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は,2008年7月30日を国際出願日とする出願であって,平成24年9月4日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 その請求項5に係る発明は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,平成24年8月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項5に記載されたとおりの次のものと認める(以下,「本願発明」という。)。 「【請求項5】 ディジタル化されたAC信号のデータ変換方法であって, 前記ディジタル化されたAC信号を受け取るステップと, 非線形変換された信号を作成するために所定の伝達関数を使用して前記ディジタル化されたAC信号を非線形変換するステップであって,前記所定の伝達関数が,所定の基準点に関して,前記非線形変換された信号を生成し,前記所定の伝達関数が,前記所定の基準点からの距離に関連して,前記ディジタル化されたAC信号のディジタル値を二者択一的に圧縮又は増幅するように構成されるものと, 前記非線形変換された信号を転送するステップと を含む方法。」 2.引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-72723号公報(以下,「引用例」という。)には,「折線圧縮伸張回路」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「本発明の目的は,上記した従来技術の欠点をなくし,複雑な折線圧縮伸張を少ない容量で効率よく記録又は伝送できる折線圧縮伸張回路を提供するにある。 本発明は,圧縮したデータにオフセットを与えることによって圧縮したデータが入力と1対lに対応するようにし,レンジビットを用いないで効率よく折線圧縮伸張を行うようにしたものである。 以下本発明の実施例を14ビットのデータを5折線で13ビットに圧縮する場合について図面に基づき説明する。第3図は本発明の実施例を示す構成図,第4図はその圧縮特性図である。第3図において1は入力端子,2は出力端子,3は圧縮-伸張切換信号入力端子,4はマスタークロック信号入力端子,5はスタート信号入力端子,6はシフトレジスタを示し,15,16,17,18,19はそのシリアル,レフトシフト,ライトシフト,クロック,ロード信号入力端子である。7は加算器,8はラッチ回路,9はレベル比較回路,10,11は記憶回路(ROM),12はカウンタ,13はAND回路,14はインバータ,33はDフリップフロップである。」(2頁左上欄14行?同頁右上欄15行) (2)「第3図において圧縮の場合は,A/D変換器(図示せず)によって14ビット・デジタルデータに変換された信号が入力端子1に入力される。その入力データの最上位の符号ビットはライン31を通して出力端子2にそのまま出力される。残りの下位13ビットはシフトレジスタ6及びレベル比較器9に入力される。そしてスタート信号入力端子5にスタート信号が入力されることによってシフトレジスタ6のロード及びカウンタ12,フリッププロップ33のクリアが行われ動作を開始する。ROMl0には各レンジの境界の値が,ROM11には各レンジに対応したオフセットの値があらかじめ記憶されており,マスタークロック信号入力端子4のマスタークロック信号をカウンタ12でカウントして得られるレンジの数つまりカウンタ12の出力に応じて出力される。まず,レンジ(1)とレンジ(2)の境界の値がROM10より出力され,レベル比較器9で入力端子1の入力データと比較される。入力データ21が大きい場合は比較器9の出力23が“High”レベルになりシフトレジスタ6のデータ(シフトレジスタ6の出力は入力端子1のデータに対して第2図のようになる)を1ビットシフトさせて次のステップへ進む。入力データ21が小さい場合は入力端子1のデータがレンジ(1)にあると判断し,比較器9の出力24が“High”レベルになり入力データにオフセット(レンジ(1)の場合は0)を加算器7で加算した値(加算器7の出力は入力端子1のデータに対して第4図のようになる)をラッチ回路8でラッチして出力とする。同時にDフリップフロップ33の出力37を“Low”レベルにしてラッチ回路8が次の信号をラッチしないようにする。 次に,レベル比較器9で入力データとレンジ(2),レンジ(3)の境界の値とを比較し,入力データが大きい場合にはシフトレジスタ6のデータをさらに1ビットシフトさせ,入力データが小さい場合には入力端子1のデータがレンジ(2)にあると判断し,入力データを1ビットシフトした値にレンジ(2)のオフセット(512)を加えた値が出力される。 最後に,入力データは最大レベルと比較される。当然入力データの方が小さくなり,入力データを2ビットシフトした値にレンジ(3)のオフセット(2048)を加えた値が出力される。このようにして圧縮の動作は完了する。なお,出力は13ビットのうち下位12ビットに符号ビットを加えて13ビットデータとする。表1に圧縮の例を示す。ただし表1では符号ビットは無視している。 表 1 (略) オフセット量を適当に選ぶことによって(実施例ではそれぞれ0,512,2048に選定),圧縮されたデータが連続につながるようにする。このオフセット量は折線の境界が変わればそれに応じて変わる。」(2頁右上欄17行?3頁左上欄15行) 上記(1),(2)の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると, (a)上記(2)の第1段落の「第3図において圧縮の場合は,A/D変換器(図示せず)によって14ビット・デジタルデータに変換された信号が入力端子1に入力される。」の記載によれば,A/D変換器から入力端子1に入力する14ビット・デジタルデータは「デジタル化された信号」といえ,「デジタル化された信号を入力すること」が記載されているといえる。 また,上記(1)の第3段落の「14ビットのデータを5折線で13ビットに圧縮する場合について図面に基づき説明する。」の記載によれば,14ビットのデータを13ビットに圧縮する方法が記載されているといえ,当該方法は「デジタル化された信号のデータ変換方法」といえる。 したがって,引用例には「デジタル化された信号のデータ変換方法であって,前記デジタル化された信号を入力すること」が記載されていると認められる。 (b)上記(2)及び表1の記載,並びに第4図の記載によれば,入力データ(x)の値が0?1023及び0?-1023のレンジ(1)については変換式y=xにより圧縮データ(y)を出力し,入力データ(x)の値が1024?6143及び-1024?-6143のレンジ(2)については変換式y=x/2±512(入力データが正の場合は+512,負の場合は-512。)により圧縮データ(y)を出力し,入力データ(x)の値が6144?8191及び-6144?-8191のレンジ(3)については変換式y=x/4±2048(入力データが正の場合は+2048,負の場合は-2048。)により圧縮データ(y)を出力すると認められる。 したがって,引用例には「変換された信号を作成するために所定の変換式を使用して前記デジタル化された信号を変換する処理であって,前記所定の変換式が,所定のレンジに関して,前記変換された信号を生成し,前記所定の変換式が,前記所定のレンジに関連して,前記デジタル化された信号のデジタル値を変換するように構成される」ことが記載されていると認められる。 (c)上記(1)の第1段落の「複雑な折線圧縮伸張を少ない容量で効率よく記録又は伝送できる折線圧縮伸張回路を提供する」の記載によれば,引用例には「変換された信号を伝送すること」が記載されていると認められる。 以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が開示されていると認める。 「デジタル化された信号のデータ変換方法であって, 前記デジタル化された信号を入力すること 変換された信号を作成するために所定の変換式を使用して前記デジタル化された信号を変換する処理であって,前記所定の変換式が,所定のレンジに関して,前記変換された信号を生成し,前記所定の変換式が,前記所定のレンジに関連して,前記デジタル化された信号のデジタル値を変換するように構成されるものと, 前記変換された信号を伝送することと を含む方法。」 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると, (1)本願発明の「ディジタル化された」,「受け取る」,「転送する」と,引用発明の「デジタル化された」,「入力する」,「伝送する」とは,表記が異なるのみであって,実質的な差異は無い。また,引用発明の「所定の変換式」は本願発明の「所定の伝達関数」に相当することは明らかである。更に,各動作を「・・・するステップ」と称することは任意である。 (2)本願明細書の【0045】の記載によれば,本願発明の「非線形変換」は,伝達関数が圧縮と増幅との両方を含むものであって,必ずしも「圧縮および増幅をも非線形とする」ことまで含むものではないと認められる。また,本願の図5,図6の記載及び本願明細書の【0052】,【0053】の記載に照らせば,データ変換により振幅は全体的に約250から約30に圧縮されるのであるから,本願発明の「非線形変換」は,絶対的な意味での「増幅」,「圧縮」のみならず,ある部分の圧縮率が他の部分の圧縮率と異なる相対的な意味での「増幅」,「圧縮」を含むと認められる。 一方,引用発明の「変換」も,引用例の表1や第4図からも明らかなように,入力データの値に基づいて圧縮の度合いが異なるから,全体として「非線形変換」といえる。 (3)本願明細書の【0048】の記載によれば,本願発明の「所定の基準点」は,「AC信号ゼロ交差点」,すなわち,ディジタル化されたAC信号の値0を含むものであり,また,同【0042】の記載によれば,本願発明の「所定の基準点からの距離」は,基準点からの垂直距離,すなわち,「電圧」に対応するディジタル化されたAC信号の値を含むものと認められる。 一方,引用発明の「所定のレンジ」は,入力データ(x)の値により規定されるものであるから,値0である基準点からの距離(すなわち,入力データ(x)の値の大きさ。)により規定されるものであることは明らかである。 したがって,本願発明と引用発明とは,下記の相違点2は別として「非線形変換された信号を作成するために所定の伝達関数を使用して前記ディジタル化された信号を非線形変換するステップであって,前記所定の伝達関数が,所定の基準点に関して,前記非線形変換された信号を生成し,前記所定の伝達関数が,前記所定の基準点からの距離に関連して,前記ディジタル化された信号のディジタル値を圧縮するように構成される」点で差異はない。 したがって,本願発明と引用発明とを対比すると,両者は,以下の点で一致し,また,相違している。 (一致点) 「ディジタル化された信号のデータ変換方法であって, 前記ディジタル化された信号を受け取るステップと, 非線形変換された信号を作成するために所定の伝達関数を使用して前記ディジタル化された信号を非線形変換するステップであって,前記所定の伝達関数が,所定の基準点に関して,前記非線形変換された信号を生成し,前記所定の伝達関数が,前記所定の基準点からの距離に関連して,前記ディジタル化された信号のディジタル値を圧縮するように構成されるものと, 前記非線形変換された信号を転送するステップと を含む方法。」 (相違点1)「ディジタル化された信号」に関し,本願発明は「ディジタル化されたAC信号」であるのに対し,引用発明は「AC」であることが明らかにされていない点。 (相違点2)「所定の伝達関数」に関し,本願発明は「ディジタル化されたAC信号のディジタル値を二者択一的に圧縮又は増幅するように構成される」のに対し,引用発明は「二者択一的に圧縮又は増幅するように構成される」ことが明らかにされていない点。 以下,上記各相違点についての検討する。 (相違点1について) 引用例の第4図の記載に照らせば,入力データは正負の値をとり得るものであり,また,記録又は伝送するデータとしてACデータは普通に採用されていることに鑑みれば,引用発明において「デジタル化された信号」を「ディジタル化されたAC信号」とすることは格別ではない。 (相違点2について) 非線形変換として,低レベルの信号を増幅し,高レベルの信号を圧縮するような変換は周知であり(例えば,引用例の第2図(低レベルの入力データについては増幅(y=2x)しており,高レベルの入力データについては圧縮(y=x/2)している。),原審の拒絶理由に引用された特開昭56-156039号公報の第1図参照。),どのような非線形性を持たせるかは設計上の選択事項に過ぎないから,引用発明において「所定の変換式」を「二者択一的に圧縮又は増幅するように構成されるもの」とすることは,当業者が適宜採用し得ることである。 そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。 4.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-07-26 |
結審通知日 | 2013-07-29 |
審決日 | 2013-08-09 |
出願番号 | 特願2011-521079(P2011-521079) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H03M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 北村 智彦 |
特許庁審判長 |
菅原 道晴 |
特許庁審判官 |
山本 章裕 田中 庸介 |
発明の名称 | データ変換のシステムおよび方法 |
代理人 | 星野 修 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 中村 彰吾 |