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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1282654 |
審判番号 | 不服2011-16009 |
総通号数 | 170 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-07-25 |
確定日 | 2013-12-18 |
事件の表示 | 特願2001-566638「抱合エストロゲンの医薬組成物並びにエストロゲン化合物を含む混合物の分析法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月20日国際公開,WO01/68074,平成16年 1月 8日国内公表,特表2004-500396〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成13年(2001年)3月5日(パリ条約による優先権主張2000年3月10日,米国)を国際出願日とする出願であって,拒絶理由通知に対して平成22年4月2日付けで手続補正がなされたが,その後平成23年3月22日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成23年7月25日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年7月25日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正事項 平成23年7月25日付けの手続補正(以下,「本件補正」ともいう。)により,特許請求の範囲の請求項1は, 補正前の 「【請求項1】 エストロゲン化合物の混合物を含む組成物であって、前記混合物中には、天然から得られたウマ抱合エストロゲン製品に存在する不純物が存在せず、前記混合物は抱合エストロン、抱合エクイリン、抱合Δ8,9-デヒドロエストロン、抱合17α-エストラジオール、抱合17α-ジヒドロエクイリン、抱合17β-ジヒドロエクイリン、抱合17β-エストラジオール、抱合エクイレニン、抱合17α-ジヒドロエクイレニン、および抱合17β-ジヒドロエクイレニンの塩を含み、前記混合物は、天然から得られたウマ抱合エストロゲンに存在する同じ必須なエストロゲン化合物を含み、 抱合エストロンの塩と、抱合エクイリンの塩との合計量の割合は、70ないし95重量%であり、抱合エストロンの塩に対する抱合エクイリンの塩の存在割合は、0.25ないし0.75である、前記組成物。」 から, 補正後の 「【請求項1】 エストロゲン化合物の混合物を含む組成物であって、前記混合物中には、天然から得られたウマ抱合エストロゲン製品に存在する不純物が存在せず、前記エストロゲン化合物の混合物は抱合エストロン、抱合エクイリン、抱合Δ8,9-デヒドロエストロン、抱合17α-エストラジオール、抱合17α-ジヒドロエクイリン、抱合17β-ジヒドロエクイリン、抱合17β-エストラジオール、抱合エクイレニン、抱合17α-ジヒドロエクイレニン、および抱合17β-ジヒドロエクイレニンの塩から成り、 抱合エストロンの塩と、抱合エクイリンの塩との合計量の割合は、70ないし95重量%であり、抱合エストロンの塩に対する抱合エクイリンの塩の存在割合は、0.25ないし0.75である、前記組成物。」 へ補正された。 2.補正の目的 上記請求項1についての補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記混合物は抱合エストロン、…および抱合17β-ジヒドロエクイレニンの塩を含み、前記混合物は、天然から得られたウマ抱合エストロゲンに存在する同じ必須なエストロゲン化合物を含み、」を「前記エストロゲン化合物の混合物は抱合エストロン、…および抱合17β-ジヒドロエクイレニンの塩から成り、」に限定したものであり,かつ,本件補正後の請求項1に記載された発明と本件補正前の請求項1に記載された発明とは,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下「平成18年改正前」ともいう)の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当するといえる。 なお,本願明細書【0016】によれば,補正前の請求項1に記載された抱合エストロン等の10種類のエストロゲン化合物は,「天然から得られたウマ抱合エストロゲンに存在する必須エストロゲン化合物」であるから,本件補正前の請求項1に記載された「前記混合物は、天然から得られたウマ抱合エストロゲンに存在する同じ必須なエストロゲン化合物を含み、」なる記載は,上記10種類のエストロゲン化合物を含むという事項に対し,さらなる限定を付加するものではない。 3.独立特許要件 そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」ともいう。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,すなわち,平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か,について以下に検討する。 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された本願優先権主張の日の前に頒布された刊行物である「国際公開第97/04753号」(以下,「引用例1」ともいう。)には,次のことが記載されている(以下において下線は当審で付した。また,引用例1は英文で記載されているため,以下には訳文を記載する。)。 (1-1)「米国薬局方(USP23)に記載されている抱合エストロゲンは、エストロン硫酸ナトリウムとエクイリン硫酸ナトリウムの混合物であり、全部または一部がウマの尿から得られるか、またはエストロンとエクイリンから合成的に得られる。」(6頁28行?同頁31行) (1-2)「本発明の抱合エストロゲンは水性アルコール性溶液中に溶解される。エクイリン/エストロンの比率は約0.35?約0.65の範囲である。それらを70%水と30%エタノールの溶液中に溶解する。これらのステロイドは,例えばOrganic LaGrange of Chicago(Illinois)から購入することができる。抱合エストロゲンの典型的な濃度を表1に示す。抱合エストロゲンの希薄溶液を,抱合エストロゲン溶液の施用時に流動化させた適当な有機賦形剤にスプレーする。 表1 抱合エストロゲンの組成 抱合エストロゲン パーセント^(*) エストロン硫酸ナトリウム 52.5 - 61.5 エクイリン硫酸ナトリウム 22.5 - 30.5 エストロン硫酸ナトリウムと エクイリン硫酸ナトリウムの合計 79.5 - 88.0 随伴抱合エストロゲン パーセント^(*) 17α-エストラジオール硫酸ナトリウム 2.5 - 9.5 17α-ジヒドロエクイリン硫酸ナトリウム 13.5 - 19.5 17β-ジヒドロエクイリン硫酸ナトリウム 0.5 - 4.0 シグナル抱合エストロゲン不純物/他の物質 パーセント^(*) 17β-エストラジオール硫酸ナトリウム 2.25%以下 17α-ジヒドロエクイレニン硫酸ナトリウム 3.25%以下 17β-ジヒドロエクイレニン硫酸ナトリウム 2.75%以下 エクイレニン硫酸ナトリウム 5.50%以下 Δ^(8,9)デヒドロエストロン硫酸ナトリウム 6.25%以下 ^(*)USP 23,Second Supp.,May 15,1995中のアッセイにより計算したエストロゲン組成のパーセント」(15頁9行?同頁最終行) 上記摘示事項(1-2)によれば,引用例1には,次の発明が記載されている。 「抱合エストロゲンを含む水性アルコール性溶液であって,前記抱合エストロゲンの組成が, エストロン硫酸ナトリウム 52.5 - 61.5% エクイリン硫酸ナトリウム 22.5 - 30.5% 17α-エストラジオール硫酸ナトリウム 2.5 - 9.5% 17α-ジヒドロエクイリン硫酸ナトリウム 13.5 - 19.5% 17β-ジヒドロエクイリン硫酸ナトリウム 0.5 - 4.0% 17β-エストラジオール硫酸ナトリウム 2.25%以下 17α-ジヒドロエクイレニン硫酸ナトリウム 3.25%以下 17β-ジヒドロエクイレニン硫酸ナトリウム 2.75%以下 エクイレニン硫酸ナトリウム 5.50%以下 Δ^(8,9)デヒドロエストロン硫酸ナトリウム 6.25%以下 であり, エストロン硫酸ナトリウムと,エクイリン硫酸ナトリウムとの合計の割合は,79.5?88.0%であり,エクイリン/エストロンの比率は,約0.35?約0.65の範囲である,前記溶液。」(以下,「引用発明」ともいう。) (2)対比,判断 そこで,本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「抱合エストロゲンを含む水性アルコール性溶液」は,本願補正発明の「エストロゲン化合物の混合物を含む組成物」に相当する。 (イ)引用発明の「エストロン硫酸ナトリウム」,「エクイリン硫酸ナトリウム」,「17α-エストラジオール硫酸ナトリウム」,「17α-ジヒドロエクイリン硫酸ナトリウム」,「17β-ジヒドロエクイリン硫酸ナトリウム」,「17β-エストラジオール硫酸ナトリウム」,「17α-ジヒドロエクイレニン硫酸ナトリウム」,「17β-ジヒドロエクイレニン硫酸ナトリウム」,「エクイレニン硫酸ナトリウム」,「Δ^(8,9)デヒドロエストロン硫酸ナトリウム」は,それぞれ本願補正発明の「抱合エストロン」,「抱合エクイリン」,「抱合17α-エストラジオール」,「抱合17α-ジヒドロエクイリン」,「抱合17β-ジヒドロエクイリン」,「抱合17β-エストラジオール」,「抱合17α-ジヒドロエクイレニン」,「抱合17β-ジヒドロエクイレニン」,「抱合エクイレニン」,「抱合Δ^(8,9)-デヒドロエストロン」の「塩」に相当する。 (ウ)上記摘示事項(1-2)の表1には,抱合エストロゲンとして,エストロン硫酸ナトリウムのような大きな割合を占めるものだけでなく,17β-エストラジオール硫酸ナトリウムのような小さな割合を有するものまで記載されているから,表1には,この組成において存在する抱合エストロゲンが全て記載されていると解するのが妥当であり,引用発明の抱合エストロゲンは,エストロン硫酸ナトリウム等の10種類の抱合エストロゲンから成ると言い得る。 (エ)引用発明の「エストロン硫酸ナトリウムと,エクイリン硫酸ナトリウムとの合計の割合は,79.5?88.0%」との記載における「%」が重量%を意味することは明らかであり,引用発明の「エストロン硫酸ナトリウムと,エクイリン硫酸ナトリウムとの合計の割合は,79.5?88.0%」は,本願補正発明の「抱合エストロンの塩と、抱合エクイリンの塩との合計量の割合は、70ないし95重量%」に包含されている。 (オ)上記摘示事項(1-2)の「エクイリン/エストロンの比率は約0.35?約0.65の範囲である。」との記載は,抱合エストロゲンについての記載なので,引用発明の「エクイリン/エストロンの比率は,約0.35?約0.65の範囲である」との記載における「エクイリン」および「エストロン」は,それぞれ「エクイリン硫酸ナトリウム」および「エストロン硫酸ナトリウム」を意味すると解するのが妥当である。 してみれば,引用発明の「エクイリン/エストロンの比率は,約0.35?約0.65の範囲である」との記載は本願補正発明の「抱合エストロンの塩に対する抱合エクイリンの塩の存在割合は、0.25ないし0.75である」に包含されている。 したがって,本願補正発明は, 「エストロゲン化合物の混合物を含む組成物であって、前記エストロゲン化合物の混合物は抱合エストロン、抱合エクイリン、抱合Δ8,9-デヒドロエストロン、抱合17α-エストラジオール、抱合17α-ジヒドロエクイリン、抱合17β-ジヒドロエクイリン、抱合17β-エストラジオール、抱合エクイレニン、抱合17α-ジヒドロエクイレニン、および抱合17β-ジヒドロエクイレニンの塩から成り、 抱合エストロンの塩と、抱合エクイリンの塩との合計量の割合は、79.5?88.0重量%であり、抱合エストロンの塩に対する抱合エクイリンの塩の存在割合は、約0.35?約0.65である、前記組成物。」 である点において引用発明と一致し,以下の点で相違している。 <相違点> 本願補正発明においては,「前記混合物中には、天然から得られたウマ抱合エストロゲン製品に存在する不純物が存在せず、」と特定されているのに対し,引用発明においては,かかる特定がない点 そこで,上記相違点について検討する。該相違点における「天然から得られたウマ抱合エストロゲン製品に存在する不純物が存在せず」との記載は,本願明細書【0015】の記載からみて,例えば,インジカン,硫酸ベンジルアルコール,馬尿酸,安息香酸,およびクレアチニンといったエストロゲン化合物以外の化合物が実質的にないことを意味するものである。 上記摘示事項(1-1)によれば,エストロン硫酸ナトリウム等の抱合エストロゲンとして,ウマの尿から得た化合物も合成的に得た化合物も適宜選択して使用されていたと言うことができ,引用発明において,エストロン硫酸ナトリウム等の抱合エストロゲンとして,合成的に得た化合物を使用してみることは当業者が容易になし得ることである。そして,合成的に得た化合物を使用して組成物とした場合,そのような組成物には,「天然から得られたウマ抱合エストロゲン製品に存在する不純物」は存在しないものと解される。 なお,上記摘示事項(1-2)によれば,引用例1には,使用する抱合エストロゲンを「Organic LaGrange of Chicago(Illinois)」から購入できることが記載され,他方,本願明細書【0020】には,「エストロゲン化合物および/またはその混合物は、…イリノイ州シカゴ所在Organics/Lagrange…を含む種々の業者から商業的に入手できる。」と記載されており,引用例1には本願明細書に示されるのと同じ入手元が記載されていることを付言する。 そして,本願明細書をみても,本願補正発明が上記相違点に係る構成を採用することによって,当業者の予想を超える格別に顕著な効果を奏するとは認められない。 してみれば,本願補正発明は,その優先権主張の日の前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4.むすび よって,本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願に係る発明は,平成22年4月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?36に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」ともいう。)は,次のとおりのものである。 「【請求項1】 エストロゲン化合物の混合物を含む組成物であって、前記混合物中には、天然から得られたウマ抱合エストロゲン製品に存在する不純物が存在せず、前記混合物は抱合エストロン、抱合エクイリン、抱合Δ8,9-デヒドロエストロン、抱合17α-エストラジオール、抱合17α-ジヒドロエクイリン、抱合17β-ジヒドロエクイリン、抱合17β-エストラジオール、抱合エクイレニン、抱合17α-ジヒドロエクイレニン、および抱合17β-ジヒドロエクイレニンの塩を含み、前記混合物は、天然から得られたウマ抱合エストロゲンに存在する同じ必須なエストロゲン化合物を含み、 抱合エストロンの塩と、抱合エクイリンの塩との合計量の割合は、70ないし95重量%であり、抱合エストロンの塩に対する抱合エクイリンの塩の存在割合は、0.25ないし0.75である、前記組成物。」 1.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1の記載事項,およびこれから認定される引用発明は,上記「第2 3.(1)」に記載したとおりである。 2.対比,判断 本願発明における,「前記混合物は抱合エストロン、…および抱合17β-ジヒドロエクイレニンの塩を含み、前記混合物は、天然から得られたウマ抱合エストロゲンに存在する同じ必須なエストロゲン化合物を含み、」は,本願補正発明の「前記エストロゲン化合物の混合物は抱合エストロン、…および抱合17β-ジヒドロエクイレニンの塩から成り、」を包含する。 そうすると,本願補正発明が,上記「第2 3.」のとおり,その優先権主張の日の前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである以上,本願補正発明の範囲を包含する本願発明も,同じ理由により,引用例1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。 したがって,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3.むすび 以上のとおり,本願請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-07-22 |
結審通知日 | 2013-07-23 |
審決日 | 2013-08-07 |
出願番号 | 特願2001-566638(P2001-566638) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 前田 亜希 |
特許庁審判長 |
内田 淳子 |
特許庁審判官 |
岩下 直人 前田 佳与子 |
発明の名称 | 抱合エストロゲンの医薬組成物並びにエストロゲン化合物を含む混合物の分析法 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 河村 英文 |
代理人 | 有原 幸一 |