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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C08B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C08B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 C08B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 C08B
管理番号 1282724
審判番号 不服2012-23536  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-28 
確定日 2014-01-08 
事件の表示 特願2004-275758「セルロースエステル及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月 6日出願公開、特開2006- 89574、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年 9月22日の出願であって、手続の経緯は、概略以下のとおりである。
平成22年 8月25日付 拒絶理由通知
平成22年10月28日 手続補正
平成23年 8月31日付 拒絶理由通知
平成23年11月 4日 手続補正
平成24年 8月30日付 拒絶査定
平成24年11月28日 審判請求・手続補正
平成25年 3月21日付 審尋
平成25年 5月16日 回答

第2 平成24年11月28日付の手続補正の却下の決定
[補正の却下の結論]
平成24年11月28日付の手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成24年11月28日付の手続補正は、平成23年11月 4日付の手続補正により補正された特許請求の範囲を補正しようとするものであり、その補正前後の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。

(補正前)
【請求項1】硫酸触媒の存在下、セルロースをアシル化剤でアシル化した後、熟成してエステル化度を調整し、セルロースエステルを製造する方法であって、所定のエステル化度に到達した後、熟成工程において、反応開始から反応の停止までに、塩基を連続的に又は少なくとも3回に分けて間欠的に添加して、残存硫酸の存在下で、熟成する熟成工程と、反応系中の残存硫酸を完全に中和するための完全中和工程とを含むセルロースエステルの製造方法。
【請求項2】熟成工程の反応開始から反応の停止までの間に、塩基を添加する操作を少なくとも4回繰り返す請求項1記載の製造方法。
【請求項3】熟成工程での反応を温度20?60℃で行う請求項1記載の製造方法。
【請求項4】熟成工程の反応開始時に、当初の硫酸触媒量に対して25?90当量%の塩基を添加する請求項1記載の製造方法。
【請求項5】硫酸の存在下、セルロースと無水酢酸とを反応させてアセチル化した後、熟成してアセチル化度を調整し、セルロースアセテートを製造する方法であって、塩基として、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物から選択された少なくとも一種を用いる請求項1?4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】請求項1?5のいずれかに記載の方法で得られたセルロースエステルであって、グルコース単位の6-位のアシル基平均置換度が0.91?1.0であり、残存硫酸量が10?150ppmであるセルロースエステル。
【請求項7】グルコース単位の2-位、3-位及び6-位のアシル基平均置換度が下記式(I)及び(II)を満足し、残存硫酸量が20?130ppmである請求項6記載のセルロースエステル。
DS2+DS3≧1.95 (I)
DS6≧0.91 (II)
(式中、DS2はグルコース単位の2-位のアシル基平均置換度、DS3はグルコース単位の3-位のアシル基平均置換度、DS6はグルコース単位の6-位のアシル基平均置換度を示す)
【請求項8】 カルシウム含量10?110ppm、残存硫酸量25?110ppm、残存硫酸に対するカルシウムの化学当量比0.5?3.0、粘度平均重合度230?380、および平均酢化度58?62.5%のセルローストリアセテートである請求項6記載のセルロースエステル。
【請求項9】請求項1?5のいずれかに記載の方法で得られたセルロースエステルで構成されているセルロースエステルフィルム。
【請求項10】液晶表示装置用光学補償フィルム又は偏光板の保護フィルムである請求項9記載のセルロースエステルフィルム。

(補正後)
【請求項1】グルコース単位の6-位のアシル基平均置換度が0.91?1.0であり、残存硫酸量が10?150ppmであり、かつ粘度平均重合度が230?380であるセルロースアセテート。
【請求項2】グルコース単位の2-位、3-位及び6-位のアシル基平均置換度が下記式(I)及び(II)を満足し、残存硫酸量が20?130ppmである請求項1記載のセルロースアセテート。
DS2+DS3≧1.95 (I)
DS6≧0.91 (II)
(式中、DS2はグルコース単位の2-位のアシル基平均置換度、DS3はグルコース単位の3-位のアシル基平均置換度、DS6はグルコース単位の6-位のアシル基平均置換度を示す)
【請求項3】カルシウム含量10?110ppm、残存硫酸量25?110ppm、残存硫酸に対するカルシウムの化学当量比0.5?3.0、および平均酢化度58?62.5%のセルローストリアセテートである請求項2記載のセルロースアセテート。
【請求項4】請求項1?3のいずれかに記載のセルロースエステルで構成されているセルロースアセテートフィルム。
【請求項5】液晶表示装置用光学補償フィルム又は偏光板の保護フィルムである請求項4記載のセルロースアセテートフィルム。

補正後の請求項1に記載された発明(以下これらを請求項に記載された順に「補正後発明」という。)は、「セルロースアセテート」という物の発明であるのに対し、補正前の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された発明(以下これらを請求項に記載された順に「補正前発明1」などという。)は、製造方法の発明であるから、補正後発明は、補正前発明1?5に対応するものではない。一方、補正前発明6と補正後発明とは、セルロースエステルの発明であるので、この補正は、補正前の請求項6を補正後の請求項1に変更する、以下の補正を含むものと認められる。
(1)補正前の請求項6に記載された「請求項1?5のいずれかに記載の方法で得られたセルロースエステル」との特定を削除する。
(2)補正前の請求項6の「セルロースエステル」を「セルロースアセテート」に変更する。

2 目的要件
上記1(1)の補正が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものであるかを検討する。
上記1(1)の補正は、補正前発明6の「請求項1?5のいずれかに記載の方法で得られた」という事項により特定されるものを、その特定事項を有しない補正後発明に変更する補正であるから、特許請求の範囲の減縮には当たらず、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものには該当しない。また、上記1(1)の補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1、3号又は4号に掲げる事項を目的とするものであるともいえない。

3 むすび
以上のとおり、1(1)の補正を含むものである平成24年11月28日付の手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明
平成24年11月28日付の手続補正は上記のとおり却下されたから、本件出願において特許を受けようとする発明は、平成23年11月 4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載されたとおりの事項により特定されるものであると認められる。

第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、請求項6?10に記載された発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1?5に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるというものである。

第5 当審の判断
1 刊行物及び刊行物の記載
原査定において引用された引用文献1?5は、本願出願日前に頒布されたことが明らかなものである(以下、これらを順に「刊行物1」などという。)。
刊行物1.特開平11-005851号公報
刊行物2.国際公開第2004/076490号
刊行物3.特開平09-255701号公報
刊行物4.特開2000-314811号公報
刊行物5.特開2002-131536号公報
これら刊行物には、以下の記載がある。
(1)刊行物1.特開平11-005851号公報の記載
1ア「【0043】【実施例】[合成例1]α-セルロース含量が約97重量%の木材パルプを解砕後、同パルプ100重量部に対し、100重量部の氷酢酸を均一に散布し、室温で90分間攪拌混合した。予め冷却した無水酢酸245重量部、酢酸365重量部および硫酸9重量部の混合液中に、パルプを投入して、攪拌混合し、45℃以下で酢化反応を進行させた。反応系は、初期の段階では不均一な繊維状であったが、反応の進行と共に不透明な餅状から、淡黄色透明な水飴状に変化した。水飴状の反応混合物中に、未酢化の繊維片が見出されなくなったときを反応終了点とした。反応開始から反応終了まで約250分を要した。酢化反応終了時に、26.2重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、過剰に存在する無水酢酸を加水分解すると共に硫酸の一部を中和し、これにより酢化反応を停止した。反応終了時の反応計内の残存触媒硫酸は、計算値で4重量部であった。
【0044】次に、反応液を30分間で約60℃に昇温しながら、7.4重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を添加した。この後、系内浴濃度が約85重量%となるように水を添加して、さらに昇温させて70℃に安定させた。70℃で30分間熟成反応を続けた。反応終了時、約10.9重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、硫酸を完全に中和し、反応を停止した。反応終了溶液は、激しく攪拌しながら多量の10重量%酢酸水溶液を投入して、セルロースアセテートを析出、分離させた。析出したセルロースアセテートを濾別により収集後、実質的に酢酸が含まれなくなるまで水洗した。その後、脱水および乾燥して、粉末のセルロースアセテートを得た。得られたセルロースアセテートの粘度平均重合度は、300であった。前述した手塚他の方法に従い、得られたセルロースアセテートをプロピオニル化処理した後、^(13)C-NMRによる測定によって、2位、3位および6位のアセチル置換度を求めた。その結果、2位と3位のアセチル置換度の合計は1.95、6位のアセチル置換度は0.91、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計は、2.86であった。」
1イ「【0045】[実施例1]室温において、合成例1で得られたセルロースアセテート17重量部、酢酸メチル/メタノール/n-ブタノール混合溶媒(混合比=80/15/5重量%)80.28重量部およびトリフェニルホスフェート(可塑剤)2.72重量部を混合した。室温では、セルロースアセテートは溶解せずに混合溶媒中で膨潤した。得られた膨潤混合物は、溶解せずにスラリーを形成していた。次に、膨潤混合物を二重構造の容器に入れた。混合物をゆっくり撹拌しながら外側のジャケットに冷媒として水/エチレングリコール混合物を流し込んだ。これにより内側容器内の混合物を-30℃まで冷却した(冷却速度:8℃/分)。混合物が均一に冷却されて固化するまで(30分間)、冷媒による冷却を継続した。
【0046】容器の外側のジャケット内の冷媒を除去し、代わりに温水をジャケットに流し込んだ。内容物のゾル化がある程度進んだ段階で、内容物の撹拌を開始した。このようにして、室温まで加温した(加温速度:8℃/分)。さらに、以上の冷却および加温の操作を、もう一回繰り返した。冷却溶解法により得られた溶液(またはスラリー)の状態を、常温(23℃)で静置保存したまま観察し、以下のA、BおよびCの三段階で評価したところ、Bの評価が得られた。
A:20日間経時しても、透明性と均一性を保持し、良好な溶解性と溶液安定性を示す。
B:攪拌終了時には、透明性と均一性を呈して良好な溶解性を示すが、一日経時すると相分離を生じ、不均一な状態となる。
C:攪拌終了直後から不均一なスラリーを形成し、透明性と均一性のある溶液状態を示さない。」
1ウ「


1エ「【0070】実施例1で得られたセルロースアセテート溶液100重量部と、上記の微粒子を含む希釈ドープ8重量部をスタチックミキサーを用いて充分に混合した後、表面温度が20℃のステンレス支持体上に流延した。流延量は、乾燥の厚さが80μmになるように調整した。60℃の乾燥風で乾燥し、揮発分量が30重量%の段階で、支持体からフイルムを剥離した。剥離したフイルムを100℃で60分乾燥し、セルロースアセテートフイルムを得た。」
(2)刊行物2.国際公開第2004/076490号の記載
2ア「本発明では、硫酸の存在下でセルロースをアシル化(特にアセチル化剤でアセチル化)したのち、脱アシル化する[特に、加水分解(熟成)する]セルロースエステル(セルロースアセテート、特に、セルローストリアセテート)の前記製造方法において、通常、触媒として使用する硫酸を中和剤[特に、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウム塩類(炭酸マグネシウムなどの無機酸のマグネシウム塩、酢酸マグネシウムなどの有機酸のマグネシウム塩など)などのマグネシウム成分]により少なくとも部分的に中和した後の適当な段階で、耐熱安定剤としてのカルシウム成分[特に、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウム塩類(炭酸カルシウムなどの無機酸のカルシウム塩、酢酸カルシウムなどの有機酸のカルシウム塩など)など]を添加する場合が多い。・・・
セルロースエステル中の硫酸量を低減する方法としては
(1)酢化反応時に水を添加する。
(2)中和時に添加する水の滴下速度を遅くする。
(3)触媒として用いる硫酸量を少なくする。
(4)中和前あるいは熟成中の温度を高くする。
などの方法を取ることができる。必要に応じてこれらの方法を適宜組み合せ、硫酸量を削減することができる。」(22頁2段落?24頁1行)
2イ「実施例6?9
以下に実施例6から9を記載する。
[酢酸綿の調製]
実施例1と同様に、広葉樹クラフト法パルプ(α-セルロース含量98.5%)100重量部に氷酢酸50重量部を散布して前処理活性化させた後、氷酢酸445重量部、無水酢酸265重量部、硫酸8.3重量部からなる混合物を添加し、常法によりエステル化を行った。加水を行った後、中和剤として酢酸マグネシウムを添加して、実施例1と比較して約10℃高い温度にて約70分熟成を行い、希酢酸中に吐出して、セルローストリアセテートを沈殿させ、得られた沈殿を4分割した上で、脱水、純水で洗浄することにより固液を分離し、酢化度(平均酢化度)60.8%、粘度平均重合度303の実施例6?8及び参考例1のセルローストリアセテート(CTA)を得た。
[後処理]
上記のセルローストリアセテートのフレークを5?30ppmの濃度の異なる水酸化カルシウム水溶液にそれぞれ浸漬して処理した後、濾別し乾燥することにより、表1に記載の金属成分を含むセルローストリアセテートを得た。更に湿熱安定性、溶液流延製膜法によるフィルムの剥離性を評価した結果についても表1に記載した。
【表1】

」(33頁最下行?34頁表1)
2ウ「実施例3,4
以下に実施例3および4を記載する。
[酢酸綿の調製]
(合成工程)
α-セルロース含量が約98.5%の木材パルプ(水分含量:7.3重量%)を解砕した。パルプ100重量部に対して、30重量部の氷酢酸を均一に散布し攪拌した後、室温で90分間放置した。予め冷却した無水酢酸270重量部、酢酸380重量部および98%硫酸7重量部の混合液中に、パルプを投入し、混合した。反応温度を、外部冷却/加温によって、反応開始時の0℃から60分後に37℃に直線的に昇温し、さらに90分間37℃に保持した。このようにしてセルロースアセテートを合成した。
(熟成工程)
合成したセルロースアセテートのドープに酢酸水溶液を加え、温度を54℃に上げて、115分間保持してセルロースアセテートを熟成した。混合比は、セルロースアセテート499重量部に対して、酢酸(アセチル基供与体)1930重量部、水64重量部、硫酸(触媒)21重量部であった。よって、酢酸(アセチル基供与体)に対する水の量は、11モル%であった。得られた溶液を30℃で3時間保持して、セルロースアセテートを熟成した。
熟成終了後、酢酸マグネシウム水溶液を加えて攪拌した。得られた溶液を10重量%酢酸水溶液中に加え、得られた沈澱を二分割した上で濾別、純水の温水にて各々流水洗浄、脱液を行って、実施例3および4の湿綿を採取した。
(セルロースアセテートの分析)
製造した実施例3および4セルロースアセテートについて、2位の置換度(2DS)、3位の置換度(3DS)、6位の置換度(6DS)および重合度を測定した。置換度の測定は、手塚(Tezuka, Carbohydr. Res. 273,83(1995) )の方法に従い実施した。すなわち、試料セルロースアセテートの遊離水酸基をピリジン中で無水プロピオン酸によりプロピオニル化する。得られた試料を重クロロホルムに溶解し、炭素13のスペクトルを測定する。アセチル基のカルボニル炭素のシグナルは169ppmから171ppmの領域に、高磁場から2位、3位、6位の順で、プロピオニル基のカルボニル炭素のシグナルは、172ppmから174ppmの領域に同じ順序で現れる。それぞれ対応する位置でのアセチルとプロピオニルの存在比から、もとのセルロースアセテートにおけるアセチル基の分布を求めることができる。この手法にて分析したところ、6DSは0.901、2DSは0.945、3DSは0.941であった。重合度(平均重合度)は284であった。これらの数値について実施例3および4について有意な差は認められなかった。
[後処理]
この酢酸綿について実施例1、2、5から9及び比較例1から3と同様の後処理を行った。即ち実施例3と実施例4は濃度の異なる水酸化カルシウム水溶液に浸漬し、ろ別脱液を行い熱風乾燥を行った。更に湿熱安定性、溶液流延製膜法によるフィルムの剥離性を評価した。これらの結果を表2に記載する。
表2から明らかなとおり実施例3、4は湿熱安定性にも優れ、剥離性も良好である。
【表2】

」(35頁2段落?37頁表2)
(3)刊行物3.特開平09-255701号公報の記載
3ア「【0017】実施例3
実施例1で得られたセルロース溶液に60重量部のピリジン及び 120重量部の無水酢酸を加え、60℃で5時間反応を行った。反応浴を2000重量部の純水に投入し、生成物のセルロース・アセテートを回収した。得られたセルロース・アセテートの平均酢化度、重量平均重合度を元のセルロース試料の重量平均重合度とともに表1に示す。・・・


(4)刊行物4.特開2000-314811号公報の記載
4ア「【実施例】以下の様にしてトリアセチルセルロースを作製した。
【0090】〈トリアセチルセルロースの作製〉
(TAC1)セルロース原料として綿化リンター100質量部を解砕し、40質量部の酢酸を添加し、40℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8質量部、無水酢酸260質量部、酢酸350質量部を添加し、36℃で120分間エステル化を行った。24%酢酸マグネシウム水溶液11質量部で中和した後、63℃で30分間ケン化熟成し、トリアセチルセルロースを得た。これを10質量倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(質量比))を用いて、室温で150分間撹拌した後、濾過、乾燥させて精製トリアセチルセルロースTAC1を得た。
【0091】(TAC2)セルロース原料として綿化リンター100質量部を解砕し、40質量部の酢酸を添加し、40℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8質量部、無水酢酸260質量部、酢酸350質量部を添加し、36℃で240分間エステル化を行った。24%酢酸マグネシウム水溶液20質量部で中和した後、63℃で30分間ケン化熟成し、トリアセチルセルロースを得た。これを20質量倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(質量比))を用いて、室温で120分間撹拌した後、濾過、乾燥させて精製トリアセチルセルロースTAC2を得た。
【0092】(TAC3)TAC2のセルロース原料を針葉樹木材パルプに変更した以外は同様にして精製トリアセチルセルロースTAC3を得た。
【0093】(TAC4)TAC2のエステル化時間を180分に変更した以外は同様にしてアセチルセルロースTAC4を得た。
【0094】(TAC5)TAC4のセルロース原料を針葉樹木材パルプに変更した以外は同様にして精製トリアセチルセルロースTAC5を得た。
【0095】表1には作製した各種のトリアセチルセルロースの本発明に係わる成分量及び特性値の測定結果を示した。
【0096】
【表1】


(5)刊行物5.特開2002-131536号公報の記載
5ア「【請求項1】セルロースエステルを有機溶媒に溶解させた溶液を、支持体上に流延し溶媒を蒸発させてフィルムを形成することにより得られるセルロースエステルを含む偏光板保護フィルムの製造方法であって、該セルロースエステルが下記(1)から(5)を満たすセルロースエステルであることを特徴とする偏光板保護フィルムの製造方法。
(1)アセチル基の置換度:1.75から2.15
(2)プロピオニル基の置換度:0.60から0.80
(3)アルカリ土類金属の含有量:1から50ppm
(4)残留硫酸量(硫黄元素の含有量として):1から50ppm
(5)遊離酸量:1から100ppm」(特許請求の範囲の請求項1)
5イ「【0054】実施例3
アセチル基の置換度1.94プロピオニル基の置換度0.63、アルカリ土類金属量8ppm、残留硫酸量(硫黄元素として)25ppm、遊離酸量70ppm極限粘度1.54 水分率0.9質量%を含有するセルロースアセテートプロピオネート(平均粒径150μm)を100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート4質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、塩化メチレン295質量部、エタノール56質量部を用いて実施例1と同様にしてドープを得た。また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)7質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)5質量部、及びAEROSILR972V(日本アエロジル社製)1質量部を塩化メチレン94質量部とエタノール6質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調整した。上記ドープ及び紫外線吸収剤溶液を用いて実施例1と同様にして、膜厚120μmのセルロースエステルフィルムを得た。
【0055】得られたセルロースエステルフィルムを用いて実施例1と同様にしてアルカリ鹸化処理セルロースエステルフィルム、偏光板及び液晶表示装置を得た。
【0056】実施例4
アセチル基の置換度2.11、プロピオニル基の置換度0.65、アルカリ土類金属量30ppm、残留硫酸量(硫黄元素として)50ppm、遊離酸量50ppm、極限粘度1.72、水分率0.5質量%を含有するセルロースアセテートプロピオネート(平均粒径1000μm)を100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート4質量部、塩化メチレン295質量部、エタノール56質量部を用いて実施例1と同様にしてドープを得た。また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)10質量部、及びAEROSIL R972V(日本アエロジル社製)1質量部を塩化メチレン94質量部とエタノール6質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調整した。上記ドープ及び紫外線吸収剤溶液を用いて実施例1と同様にして、膜厚140μmのセルロースエステルフィルムを得た。」

2 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、合成例1にセルロースをアセチル化して、粘度平均重合度が300、2位と3位のアセチル置換度の合計は1.95、6位のアセチル置換度は0.91、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計は、2.86であるセルロースアセテートを得たことが記載されているから、刊行物1には、当該合成例1のセルロースアセテートの発明が記載されているといえる(これを「引用発明1」という。)。
(引用発明1)
「α-セルロース含量が約97重量%の木材パルプを解砕後、同パルプ100重量部に対し、100重量部の氷酢酸を均一に散布し、室温で90分間攪拌混合し、予め冷却した無水酢酸245重量部、酢酸365重量部および硫酸9重量部の混合液中に、パルプを投入して、攪拌混合し、45℃以下で酢化反応を行い、酢化反応終了時に、26.2重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、酢化反応を停止した後、反応液を30分間で約60℃に昇温しながら、7.4重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を添加し、この後、系内浴濃度が約85重量%となるように水を添加して、さらに昇温させて70℃に安定させ、70℃で30分間熟成反応を続け、約10.9重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、硫酸を完全に中和し、反応を停止して得られた、粘度平均重合度300、2位と3位のアセチル置換度の合計が1.95、6位のアセチル置換度が0.91、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.86のセルロースアセテート。」
また、刊行物1には、合成例1で得られたセルロースアセテートすなわち引用発明1のセルロースアセテートを使い実施例1で得られたセルロースエステル溶液を用いて、セルロースアセテートフィルムを製造したことが記載されている(1ア?1イ、1エ)から、刊行物1には、当該セルロースアセテートフィルムの発明が記載されているといえる(これを「引用発明2」という。)。
(引用発明2)
「引用発明1のセルロースアセテートを材料として用いたセルロースアセテートフィルム。」

3 対比・判断
(1)請求項6について
ア 対比
本願の請求項6は、請求項1?5を引用する形式で記載されているので、請求項6において請求項1を引用する場合の発明(以下「本願発明1」という。)を、他の請求項を引用しない形式で書き直すと、以下のようになる。
(本願発明1)
「硫酸触媒の存在下、セルロースをアシル化剤でアシル化した後、熟成してエステル化度を調整し、セルロースエステルを製造する方法であって、所定のエステル化度に到達した後、熟成工程において、反応開始から反応の停止までに、塩基を連続的に、又は少なくとも3回に分けて間欠的に反応系中の硫酸触媒1当量に対して1回当たり0.2?0.8当量で添加して、残存硫酸の存在下で、熟成した後、反応系中の残存硫酸を完全に中和する熟成工程とを含むセルロースエステルの製造方法で得られたセルロースエステルであって、グルコース単位の6-位のアシル基平均置換度が0.91?1.0であり、残存硫酸量が10?150ppmであり、かつ粘度平均重合度が230?380であるセルロースエステル。」
本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「セルロースアセテート」は、セルロースのアセチルエステルであるから、本願発明1における「セルロースエステル」に該当する。また、引用発明1における「酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)」は、硫酸の中和に用いられており、本願発明1における「塩基」に該当する物質である。そして、引用発明1における当該塩基の添加のうち、「酢化反応終了時に、26.2重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、酢化反応を停止した」という操作は、酢化反応を停止させると同時に熟成反応を開始させるものであり、「反応液を30分間で約60℃に昇温しながら、7.4重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を添加し」は、これに続けて「この後、系内浴濃度が約85重量%となるように水を添加して、さらに昇温させて70℃に安定させ、70℃で30分間熟成反応を続け、」と記載されていることから、本願発明1における「熟成反応において、反応開始から反応の停止までに、塩基を」「追加」することに該当する。そして、引用発明1において、酢化反応に用いた硫酸が9重量部であって、硫酸の分子量が98であり、酢酸マグネシウムの分子量が142であるから、硫酸触媒を全て中和するために必要な酢酸マグネシウムの量は、9×142/98=13重量部である。これは30%水溶液に換算すると、13/(30/100)=43重量部である。そして、酢化反応の停止の際に、塩基の添加量が30%水溶液で26.2重量部であるから、酢化反応の停止後の反応系に残存する硫酸量を完全に中和するために必要な塩基は、30%水溶液の量では43-26.2=16.8重量部であるので、熟成工程における7.4重量部の塩基の30%水溶液の添加は、このときに反応系に残存する硫酸量に対して、7.4/16.8=0.44である。この0.44は、本願発明1において、反応開始から反応の停止までに、塩基を添加する際の添加量である「反応系中の硫酸触媒1当量に対して1回当たり0.2?0.8当量」に該当する。そして、引用発明1におけるその後の塩基追加である「約10.9重量部の酢酸マグネシウム水溶液(30重量%)を加え、硫酸を完全に中和し」は、本願発明1における「残存硫酸を完全に中和する」ことに該当する。
そうすると、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致する。
(本願発明1と引用発明1の一致点)
硫酸触媒の存在下、セルロースをアシル化剤でアシル化した後、熟成してエステル化度を調整し、セルロースエステルを製造する方法であって、所定のエステル化度に到達した後、熟成工程において、塩基を反応系中の硫酸触媒1当量に対して1回当たり0.2?0.8当量で1回添加して、残存硫酸の存在下で、熟成した後、反応系中の残存硫酸を完全に中和する熟成工程とを含むセルロースエステルの製造方法で得られたセルロースエステルであって、グルコース単位の6-位のアシル基平均置換度が0.91?1.0の範囲内であり、粘度平均重合度が230?380の範囲内のものである点
一方、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で相違する。
(本願発明1と引用発明1の相違点1)
本願発明1は、セルロースエステルを製造する際の熟成工程において、反応開始から反応の停止までに、塩基を「連続的に、又は少なくとも3回に分けて間欠的に」添加することを含む方法で得られたものであるのに対し、引用発明1のものは、セルロースエステルを製造する際の熟成工程において、反応開始から反応の停止までに、塩基を「1回」だけ添加することを含む方法で得られたものである点
(本願発明1と引用発明1の相違点2)
本願発明1は、「残存硫酸量が10?150ppm」と特定されているのに対し、引用発明1は、残存硫酸量が10?150ppmであるか明らかでない点

イ 判断
刊行物2には、セルロースエステル中の硫酸量を低減する方法として「(1)酢化反応時に水を添加する。 (2)中和時に添加する水の滴下速度を遅くする。 (3)触媒として用いる硫酸量を少なくする。 (4)中和前あるいは熟成中の温度を高くする。 などの方法を取ることができる。」との記載(2ア)があり、実施例6?9(2イ)では、実施例1?5のセルロースエステルよりも硫酸量低減されたセルロースエステルを得ていると認められる。しかし、刊行物2には、本願発明1におけるように、熟成工程において、反応開始から反応の停止までに、塩基を連続的に、又は少なくとも3回に分けて添加する製造方法は記載されておらず、また、熟成工程をそのようにして行うことを示唆する記載もない。
刊行物3?5をみても、本願発明1におけるように、熟成工程において、反応開始から反応の停止までに、塩基を連続的に、又は少なくとも3回に分けて添加する製造方法は記載されておらず、また、熟成工程をそのようにして行うことを示唆する記載もない。
そして、硫酸を触媒とするセルロースのアセチル化によるアセチルセルロースの製造について、プラスチック化学の教科書である「プラスチック材料講座17 繊維素系樹脂」日刊工業新聞社発行、昭和45年、63?64頁に「酢化ドープが均一となり、未反応線維を認めなくなったらただちに加水して過剰の無水酢酸を分解し,酢化反応を停止させるとともに浴中の酢酸濃度を70?95%にして熟成工程に移る.熟成工程中に起こるおもな反応は,セルロースに結合したアセチル基の脱離(酢化度の低下),結合した硫酸基の脱離(大部分は加水時に起こる)およびセルロース主鎖の解裂(重合度の低下)などである.・・・これらの各反応は熟成浴中の酢酸濃度(加水量),遊離硫酸量および温度によってその速度が支配される.」と記載されていることからもわかるように、熟成工程においては、セルロースに結合した硫酸の脱離だけでなく、セルロースに結合したアセチル基の脱離、重合度の低下が同時に起こるものであるという技術常識がある。そうすると、刊行物1?5に、セルロースエステルのグルコース単位の6-位のアシル基平均置換度(6DS)、残存硫酸量、粘度平均重合度のうちの一部の物性値が請求項6に記載された範囲内であるものが記載されていても(1ウ、2イ、2ウ、3ア、4ア、5ア)、通常の方法で残りの物性値を変化させた場合に、請求項6に記載された特定事項の全てを備えるセルロースエステルとなるものではない。
これに対し、明細書の比較例1?3と実施例1?3からみれば、本願発明1は、硫酸触媒の存在下、セルロースをアシル化剤でアシル化した後、熟成してエステル化度を調整し、セルロースエステルを製造する方法の熟成工程において、反応開始から反応の停止までに、塩基を連続的に、又は少なくとも3回に分けて間欠的に反応系中の硫酸触媒1当量に対して1回当たり0.2?0.8当量で添加することを含む方法で得たことにより、グルコース単位の6-位のアシル基平均置換度(6DS)と粘度平均重合度の両者が所定の範囲内であると同時に、残存硫酸量が低いという、従来の方法では得られないセルロースエステルとなっていると認められる。
したがって、本願発明1が、セルロースエステルを製造する際の「熟成工程において、反応開始から反応の停止までに、塩基を連続的に、又は少なくとも3回に分けて間欠的に反応系中の硫酸触媒1当量に対して1回当たり0.2?0.8当量で添加する」ことを含む方法で得られたセルロースエステルである点は、刊行物1?5に記載された発明に基づいて当業者が出願前に容易に想到し得たものであるとはいえないので、相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、刊行物1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本願の請求項6において、請求項1を引用する場合の発明である本願発明1が刊行物1?5に記載された発明に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものでないのであるから、これと同様の理由で、請求項6において請求項1をさらに限定して特定する記載が付加された請求項2?5を引用する場合の発明が刊行物1?5に記載された発明に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないことは明らかである。

(2)請求項7及び8について
請求項7及び8は、請求項6を引用してこれをさらに限定する形式で記載されている。そして、上記(1)で述べたとおり、請求項6に記載された発明が刊行物1?5に記載された発明に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、請求項6に記載された発明がより限定された発明である請求項7及び8に記載された発明が刊行物1?5に記載された発明に基づいて当業者が出願前に容易に発明をすることができたものであるといえないことは明らかである。

(3)請求項9について
ア 対比
請求項9は、請求項1?5を引用する形式で記載されているので、請求項9において請求項1を引用する場合の発明(以下、「本願発明2」という。)を、他の請求項を引用しない形式で書き直すと、以下のようになる。
(本願発明2)
「硫酸触媒の存在下、セルロースをアシル化剤でアシル化した後、熟成してエステル化度を調整し、セルロースエステルを製造する方法であって、所定のエステル化度に到達した後、熟成工程において、反応開始から反応の停止までに、塩基を連続的に、又は少なくとも3回に分けて間欠的に反応系中の硫酸触媒1当量に対して1回当たり0.2?0.8当量で添加して、残存硫酸の存在下で、熟成した後、反応系中の残存硫酸を完全に中和する熟成工程とを含むセルロースエステルの製造方法で得られたセルロースエステルであって、グルコース単位の6-位のアシル基平均置換度が0.91?1.0であり、残存硫酸量が10?150ppmであり、かつ粘度平均重合度が230?380であるセルロースエステルから構成されているセルロースエステルフィルム。」
本願発明2と引用発明2を対比すると、引用発明2のフィルムは、引用発明1のセルロースアセテートを材料とするフィルムであるから、セルロースアセテートから構成されているフィルムであるといえる。そして、引用発明2のフィルムの材料であるセルロースアセテートはセルロースエステルの一種であるから、請求項9に記載された発明におけるセルロースエステルに該当し、引用発明2におけるセルロースアセテートは、セルロースの酢化反応すなわちアセチル化反応と熟成を含む製造方法によって得られたものであるといえるから、引用発明2そうすると、請求項9に記載された発明と引用発明2とは、以下の点で一致する。
(本願発明2と引用発明2の一致点)
セルロースをアシル化反応及び熟成反応を含む製造方法で得られたセルロースエステルで構成されているセルロースエステルフィルム。
(本願発明2と引用発明2の相違点)
本願発明2は、フィルムを構成するセルロースエステルを製造する際の「熟成工程において、反応開始から反応の停止までに、塩基を連続的に、又は少なくとも3回に分けて間欠的に反応系中の硫酸触媒1当量に対して1回当たり0.2?0.8当量で添加する」ことを含む方法で得られたものであるのに対し、引用発明2は、フィルムを構成するセルロースエステルを製造する際の熟成工程において、反応開始から反応の停止までに、塩基を連続的に、又は少なくとも3回に分けて間欠的に反応系中の硫酸触媒1当量に対して1回当たり0.2?0.8当量で添加することを含むものではない点

イ 判断
上記アの本願発明2と引用発明2の相違点は、上記(1)アにおける本願発明1と引用発明1の相違点1と実質的に同じものであるから、上記(1)イで検討したのと同じ理由で、本願発明2は、刊行物1?5に記載された発明に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本願の請求項9において、請求項1を引用する場合の発明である本願発明2が刊行物1?5に記載された発明に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、これと同様の理由で、請求項9において請求項1をさらに限定して特定する記載が付加された請求項2?5を引用する場合の発明が刊行物1?5に記載された発明に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないことは明らかである。

(4)請求項10について
請求項10は請求項9を引用してこれをさらに限定する形式で記載されている。そして、上記(3)で述べたとおり、請求項9に記載された発明が刊行物1?5に記載された発明に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、請求項9に記載された発明がより限定された発明である請求項10に記載された発明が刊行物1?5に記載された発明に基づいて当業者が出願前に容易に発明をすることができたものであるといえないことは明らかである。

5 まとめ
したがって、請求項6?10に記載された発明は、いずれも刊行物1?5に記載された発明に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである、とはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、請求項6?10に記載された発明は、いずれも刊行物1?5に記載された発明に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできないから、本願は、原査定の理由によっては、拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審決日 2013-12-20 
出願番号 特願2004-275758(P2004-275758)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (C08B)
P 1 8・ 121- WY (C08B)
P 1 8・ 113- WY (C08B)
P 1 8・ 537- WY (C08B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三木 寛  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 齋藤 恵
村守 宏文
発明の名称 セルロースエステル及びその製造方法  

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