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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1282732
審判番号 不服2012-13879  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-20 
確定日 2013-12-18 
事件の表示 特願2000-374131「半導体素子の銅金属配線形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月10日出願公開、特開2001-217205〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年12月8日(パリ条約に基づく優先権主張 1999年12月22日、大韓民国)を出願日とする特許出願であって、平成22年12月20日付けの拒絶理由通知に対して平成23年4月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年3月14日付けで拒絶査定がなされた。
それに対して、同年7月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、同年11月19日付けで審尋がなされ、それに対する回答書は提出されなかった。

第2 補正の却下の決定
【結論】
平成24年7月20日に提出された手続補正書による補正を却下する。

【理由】
1 補正の内容
平成24年7月20日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の明細書の特許請求の範囲の請求項1?46を、補正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1?42に補正するものであり、補正前後の請求項1は各々以下のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
半導体素子を形成するための各種の要素が形成された半導体基板上に層間絶縁膜を形成し、前記層間絶縁膜にコンタクトホール及びトレンチを形成した後、前記コンタクトホール及びトレンチを含む層間絶縁膜の表面に拡散障壁層を形成する段階と、
反応チャンバ及びリキッドデリバリシステムを有する銅蒸着装置において、(hfac)Cu(DMB)を銅前駆体として用いる有機金属化学気相蒸着法により、前記コンタクトホール及びトレンチが埋め込まれるように銅を蒸着する段階と、
化学的機械的研磨処理して銅金属配線を形成する段階とを含み、
前記リキッドデリバリシステムが、バブラーであり、
前記バブラーを用いた銅蒸着条件が、
前記バブラーのキャニスタの温度を30?70℃の範囲内とし、
前記バブラーのキャニスタから前記反応チャンバに至るガスライン及びソースラインの温度を前記バブラーのキャニスタの温度と同一に維持することを含む
ことを特徴とする半導体素子の銅金属配線形成方法。」

(補正後)
「【請求項1】
半導体素子を形成するための各種の要素が形成された半導体基板上に層間絶縁膜を形成し、前記層間絶縁膜にコンタクトホール及びトレンチを形成した後、前記コンタクトホール及びトレンチを含む層間絶縁膜の表面に拡散障壁層を形成する段階と、
反応チャンバ及びリキッドデリバリシステムを有する銅蒸着装置において、(hfac)Cu(DMB)を銅前駆体として用いる有機金属化学気相蒸着法により、前記コンタクトホール及びトレンチが埋め込まれるように銅を蒸着する段階と、
化学的機械的研磨処理して銅金属配線を形成する段階とを含み、
前記リキッドデリバリシステムが、バブラーであり、
前記バブラーを用いた銅蒸着条件が、
前記バブラーのキャニスタの温度を30?70℃の範囲内とし、
前記バブラーのキャニスタから前記反応チャンバに至るガスライン及びソースラインの温度を前記バブラーのキャニスタの温度と同一に維持させ、
前記反応チャンバのシャワーヘッドと前記反応チャンバのサセプタプレートとの間隔を1?50mmの範囲内とすることを特徴とする半導体素子の銅金属配線形成方法。」

2 補正事項の整理
本件補正による補正事項を整理すると、次のとおりである。

(1)補正事項1
補正前の請求項1、12、24、35の「することを含むことを特徴とする半導体素子の銅金属配線形成方法。」を、「させ、 前記反応チャンバのシャワーヘッドと前記反応チャンバのサセプタプレートとの間隔を1?50mmの範囲内とすることを特徴とする半導体素子の銅金属配線形成方法。」と補正して、各々補正後の請求項1、11、22、32とすること。

(2)補正事項2
補正前の請求項24の「前記ベイパライザから前記反応チャンバに至るガスライン及びソースラインの温度を前記ベイパライザの熱交換器の温度と同一温度?20℃高い温度の範囲に維持」を、「前記ベイパライザから前記反応チャンバに至るガスライン及びソースラインの温度を前記ベイパライザの熱交換器の温度と同一温度或いは5?20℃高い温度の範囲に維持」と補正して、補正後の請求項22とすること。

(3)補正事項3
補正前の請求項8、19、31、42を削除するとともに、当該削除に伴って補正前の請求項の番号及び引用する請求項の番号を補正すること。

3 新規事項追加の有無及び補正の目的についての検討
(1)補正事項1について
補正事項1により補正された部分は、本願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。また、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面を「当初明細書等」という。)の0035段落、0037段落、0039段落、及び0041段落等に記載されているものと認められるから、補正事項1は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、補正事項1は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項1は、補正前の請求項1、12に記載されていた発明特定事項である「反応チャンバ及びリキッドデリバリシステムを有する銅蒸着装置において、(hfac)Cu(DMB)を銅前駆体として用いる有機金属化学気相蒸着法により、前記コンタクトホール及びトレンチが埋め込まれるように銅を蒸着する段階」、
補正前の請求項24、35に記載されていた発明特定事項である「反応チャンバ及びリキッドデリバリシステムを有する銅蒸着装置において、(hfac)Cu(DMB)を銅前駆体として用いる有機金属化学気相蒸着法により、前記コンタクトホール及びトレンチが埋め込まれるように銅層を形成する段階」について、「前記反応チャンバのシャワーヘッドと前記反応チャンバのサセプタプレートとの間隔を1?50mmの範囲内」に限定するものであるから、特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって、補正事項1は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たす。

(2)補正事項2について
補正事項2により補正された部分は、当初明細書の0039段落等に記載されているものと認められるから、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、補正事項2は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項2は、補正前の請求項24に記載されていた発明特定事項である「前記ベイパライザから前記反応チャンバに至るガスライン及びソースラインの温度」について、「前記ベイパライザの熱交換器の温度と同一温度?20℃高い温度の範囲に維持」から「前記ベイパライザの熱交換器の温度と同一温度或いは5?20℃高い温度の範囲に維持」に限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって、補正事項2は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たす。

(3)補正事項3について
補正事項3は、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。
したがって、補正事項3は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たす。
また、補正事項3が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすことは明らかである。

(4)新規事項追加の有無及び補正の目的についての検討のまとめ
以上検討したとおりであるから、本件補正は特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件を満たす。
そして、本件補正は特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであるのか否か)について、以下において更に検討する。

4 独立特許要件について
(1)補正後の発明
本願の本件補正による補正後の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、請求項1に記載されている事項により特定される、上記1の「(補正後)」の箇所に記載したとおりのものであり、再掲すると次のとおりである。

「【請求項1】
半導体素子を形成するための各種の要素が形成された半導体基板上に層間絶縁膜を形成し、前記層間絶縁膜にコンタクトホール及びトレンチを形成した後、前記コンタクトホール及びトレンチを含む層間絶縁膜の表面に拡散障壁層を形成する段階と、
反応チャンバ及びリキッドデリバリシステムを有する銅蒸着装置において、(hfac)Cu(DMB)を銅前駆体として用いる有機金属化学気相蒸着法により、前記コンタクトホール及びトレンチが埋め込まれるように銅を蒸着する段階と、
化学的機械的研磨処理して銅金属配線を形成する段階とを含み、
前記リキッドデリバリシステムが、バブラーであり、
前記バブラーを用いた銅蒸着条件が、
前記バブラーのキャニスタの温度を30?70℃の範囲内とし、
前記バブラーのキャニスタから前記反応チャンバに至るガスライン及びソースラインの温度を前記バブラーのキャニスタの温度と同一に維持させ、
前記反応チャンバのシャワーヘッドと前記反応チャンバのサセプタプレートとの間隔を1?50mmの範囲内とすることを特徴とする半導体素子の銅金属配線形成方法。」

(2)引用刊行物に記載された発明
ア 本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開平11-330244号公報(以下「引用例1」という。)には、図1及び11?16とともに次の記載がある(ここにおいて、下線は当合議体が付加したものである。)。

(ア)「【0010】
【実施例】本発明は、集積回路(IC)内のデバイスを相互接続する導体に関する。そのようなICは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、非同期DRAM(SDRAM)および読み出し専用メモリ(ROM)を含んでいる。他のICは、用途特定集積回路(ASIC)または何らかのロジック回路を含んでいる。標準的には、複数のICが並列にウェファ上に形成される。処理が終了した後、ウェファはICを分離させるように刻まれ、個々のチップとなる。次にこのチップがパッケージされて、最終製品となる。最終製品は、例えばコンピュータ装置、セルラ電話機、個人用ディジタル端末(PDA)および他の電子製品のような消費者製品に用いられる。
【0011】より特定すれば、本発明は一般的には集積回路(IC)の製造における相互接続を形成するために用いられるダマシン構造に関する。そのようなダマシン構造は、単独層ダマシン構造、多層ダマシン構造およびスロット化されたダマシン構造を含んでいる。単独層ダマシン構造においては、単に1つの単独金属ラインだけが形成(ビアなし)されている。多層ダマシン構造では、ラインおよび/またはビアの組み合わせが使用されており、スロット化されたダマシン構造では、ダマシン構造のビアレベルが導電性ワイヤとして用いられている。」

(イ)「【0012】図1を参照すると、集積回路構造の断面図が示されている。示されているように、この構造はシリコンウェファのような基板を含んでいる。ガリウム砒素、ゲルマニウム、シリコンオンインシュレータ(SOI)または他の半導体材料のような他の半導体基板もまた有用である。望ましい電気的特性を達成するために、この基板は例えば低度に、または高度に添加物によってドープされることができる。
【0013】この基板は、基板内に、および/または基板上に形成された(詳細には示されていない)フィーチャーを含んでいる。このフィーチャーはICを形成するデバイスに相当している。IC上に含まれるのは、以前に規定されたデバイス層120であり、ここにおいて他の導電性層との接触が必要となっている。実例を挙げるために、デバイス層はフィーチャーよりも空間的に上にあるものして説明するが、該層は同じ層内にあってよいことは勿論である。デバイス層120は、例えば下側金属化層の一部を表している。あるいは、デバイス層は、高度にドープされたシリコン、ポリシリコン層、または例えばトランジスタのソースまたはドレイン領域のような何らかの型式の能動デバイスの一部である。1つの実施例においては、デバイス層120はDRAM ICのビットラインを表している。」

(ウ)「【0036】図11以下を参照すると、絶縁層230が基板201を覆うように形成され、デバイスフィーチャー及びデバイス層220を覆っている。絶縁層は例えば、デバイスフィーチャーを導電層から絶縁する中間レベル誘電体として働いている。絶縁層は、SiO_(2)、PSG、BPSG、のような誘電体材料または他の誘電体材料を含んでいる。絶縁層の標準的な厚さは、約0.9?2.0ミクロン厚である。平坦な上面231を備えるために、絶縁層は、標準的に平坦化される。
【0037】絶縁層はパターン化されて、その中にデュアル・ダマシン構造245を提供する。そのようなデュアル・ダマシン構造は、リケタ氏他によるVLSI多層相互接続会議(1995年)会報、及び全ての目的から本明細において参照として組み込まれているエデルスタイン氏他による1997年のIEDM会議に説明されているような一般的な技術を用いて形成される。説明上、デュアル・ダマシン構造はトレンチ部分242とビア部分244とを含んでいる。トレンチは例えば、上張り金属化層を表している。この金属化層はビアによって下張りデバイス層220とコンタクトされるべきである。上張り金属は、例えば導電性ラインである。導電性ラインを表す他のデュアル・ダマシン構造は、電気的コンタクトが望まれている他の規定された領域を覆うように位置決めされる。トレンチ部分とビア部分との深さ及び幅は、シート抵抗及び用いられる材料のような、設計パラメータに依存している。
【0038】図12を参照すると、ライナ237が、誘電層の表面、及びダマシン構造のトレンチ及びビア部分を下張りして、絶縁層230を覆うようにデポジットされている。ライナ層237は、以前に説明されたライナ層137又は157と類似している。ダマシン構造を満たす材料に拡張された結晶粒配向ランダムさを与えるライナは、低配向された結晶粒及び/又はアモルフォス特性を有する材料を含んでいる。そのような材料は、例えば、TiN、炭素、黒鉛、貴金属、近貴金属、希土類金属、耐熱性材料、又はランダム結晶粒配向及び/又はアモルフォス特性を有する他の材料を含んでいる。
【0039】1つの実施例においては、ライナは例えば、結果的にライナが拡張された結晶粒配向ランダムさ及び/又はアモルフォス特性を有するような処理条件の下でのCVD又はPVDによってデポジットされたTiNを含んでいる。材料の結晶粒オリエンテーションランダムさ及び/又はアモルフォス特性を拡張させるライナをデポジットするための他の技術もまた、有用である。随意的に、(示されていない)サブライナ層がライナ237の下に設けられる。これは層間のコンタクト抵抗を改善する接着層として働き、そして引き続いてデポジットされるTiNフィルムへの核となり、そしてそれを成長させるためのテンプレートを備える。Tiのような材料はサブライナ層を形成するのに有用である。
【0040】導電層258は、下張り層237が形成された後、例えばCVD、PVD、I-PVD、又は他の技術によってデポジットされる。導電層は、例えばAl,Cu,又はWを含んでいる。他の導電材料もまた、有用である。導電材料がダマシン構造を満たすのを確実にするため、標準的にはオーバーフィルが利用される。
【0041】図13に示されるように、ライナ237及び導体258からの過剰な材料は次に、磨かれ、平坦表面231を提供する。磨きは、誘電層230をポリッシュストップとして利用して、例えば化学機械ポリッシュ(CMP)によって実行される。ライナ及び導体材料は誘電層の表面から除去され、平坦表面231及び、その内壁を内張りするライナ237を有するダマシン構造を出現させる。説明されたように、ライナはダマシン構造内の導電材料をランダム結晶粒配向を有するようにさせ、それによってそのエレクトロマイグレーション寿命を改善させる。
【0042】図14を参照すると、ダマシン構造の表面がエッチされ、表面231より下の導電材料とライナにくぼみが付けられる。このくぼみは、領域255を提供する。この領域の中にライナ材料が提供されて、デュアル・ダマシン構造が本発明によるライナで封入される。標準的には、このくぼみはライナ237の厚さにおおよそ等しい。磨き効率に依存して、このくぼみは、引き続く磨きステップによる材料除去による付加的深さを含むことができる。
【0043】図15に示されているように、ライナ層239は表面231上にデポジットされて、くぼみを満たす。図16を参照すると、ライナ239はCMPによって磨かれ、結果としてデュアル・ダマシン構造260はライナ262と、そしてさらなる処理のための平坦表面251とによって封入される。ライナによってデュアル・ダマシン構造を封入することによって、導体材料がランダム結晶粒配向を有するようにされ、改善された信頼性が達成される。」

イ 以上を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「デバイスが形成された半導体基板201を覆うように、デバイスを導電層から絶縁するための絶縁層230が形成され、
絶縁層230がパターン化されて、絶縁層内にトレンチ部分242とビア部分244とを含むデュアル・ダマシン構造245が形成され、
TiNからなるライナ237が、絶縁層230の表面、及びダマシン構造245のトレンチ部分242及びビア部分244を下張りして、絶縁層230を覆うように堆積される段階と、
ライナ237が形成された後、Cuからなる導電層258が、ダマシン構造245を満たすようにCVDによって堆積される段階と、
化学機械ポリッシュ(CMP)によって過剰な材料が研磨されて、ダマシン構造245にライナ237とCuからなる導電層258が埋め込まれた構造を得る段階とを含む集積回路内のデバイスを相互接続する導体の形成方法。」

ウ 本願の優先権主張の日前の1999年8月15日に外国において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である Sang-Woo Kang, Sang-Ho Han, Shi-Woo Rhee,"(hfac)Cu(I)(MP) (hfac=hexafluoroacetylacetonate, MP=4-methyl-1-pentene) and (hfac)Cu(I)(DMB) (DMB=3,3-dimethyl-1-butene) for the chemical vapor deposition of copper film",Thin Solid Films,Volume 350, Issues 1-2,Pages 10-13 (以下「引用例2」という。)には、図1?2とともに次の記載がある。

(ア)「Abstract
New organometallic precursors for the metal organic chemical vapor deposition (MOCVD) of copper, (hfac)Cu(I)(MP) (hfac=hexafluoroacetylacetonate, MP=4-methyl-1-pentene) and (hfac)Cu(I)(DMB) (DMB=3,3-dimethyl-1-butene) were studied. Copper films could be deposited at the precursor vaporization temperature of 45 and 35℃. The deposition rate was about four to seven times higher than previously reported precursors such as (hfac)Cu(VTMS) (VTMS=vinyltrimethylsilane), (hfac)Cu(ATMS) (ATMS=allyltrimethylsilane) and (hfac)Cu(VCH) (VCH=vinylcyclohexane). The copper films deposited from these two precursors had a resistivity of about 2.0 μΩ cm in the deposition temperature range of 150 to 200℃.」(10ページ中段の「Abstract」の項)
(当審訳:要約
銅の有機金属化学気相成長(MOCVD)のための新しい有機金属の前駆体である(hfac)Cu(I)(MP)(hfac=ヘキサフルオロアセチルアセトネート、MP=4-メチル-1-ペンテン)と(hfac)Cu(I)(DMB)(DMB=3,3-ジメチル-1-ブテン)が検討された。銅薄膜は45と35℃の前駆体気化温度で堆積することができた。その堆積速度は、(hfac)Cu(VTMS)(VTMS=ビニルトリメチルシラン)、(hfac)Cu(ATMS)(ATMS=アリルトリメチルシラン)、(hfac)Cu(VCH)(VCH=ビニルシクロヘキサン)のような、従来報告された前駆体よりも約4?7倍高かった。これらの2種の前駆体から堆積した銅薄膜は、150?200℃の堆積温度範囲で約2.0μΩcmの抵抗率であった。)

(イ)「1. Introduction
Copper is an important material in the advanced metallization for ultralarge-scale integrated (ULSI) circuits due to its lower electrical resistivity (1.67 μΩ cm for Cu, vs. 2.7 μΩ cm for Al), higher electomigration resistance (up to 4 orders of magnitude greater than Al) and higher resistance to stress-induced deformation. There are also reported advantages for copper in terms of the device performance such as greater speed and smaller resistance-capacitance (RC) time constants.
In considering methods to deposit copper, chemical vapor deposition (CVD) processes have several advantages such as the ability to achieve conformal coverage and the possibility of selective deposition. Currently, a challenging issue is to develop MOCVD precursors of deposing a high-purity metal film at low temperature and a high deposition rate. It is also important to understand the effect of the difference in molecular structure on the property of the copper precursor. The molecular structure of Cu(I) precursor is (β-diketonate)Cu(I)-L (L=Lewis base ligand or neutral ligand). The nature of the neutral ligand L is known to affect the precursor properties and the properties of the copper thin film derived from MOCVD [1-3] and the effect of the neutral ligand on the Cu(I) precursor has been rarely reported.
In this study, new liquid precursors for the deposition of copper films, (hfac)Cu(I)(MP) (hfac=hexafluoroacetylacetonate, MP=4-methyl-1-pentene) and (hfac)Cu(I)(DMB) (DMB=3,3-dimethyl-1-butene) were studied. The molecular structures of these two precursors are shown in Fig. 1.」(10ページ左欄1行?右欄11行)
(当審訳:1.はじめに
銅は、その低い電気抵抗率(Cuは1.67μΩcmに対して、Alは2.7μΩcm)、高いエレクトロマイグレーション耐性(Alよりも最大4桁大きい)、ストレス誘発性変形耐性ゆえに、超大規模集積回路(ULSI)のための高度な金属被覆における重要な材料である。また、より高速かつ小さいRC時定数などのデバイス性能の面で、銅の利点が報告されている。
銅の堆積方法の検討に際し、化学気相成長(CVD)プロセスは、コンフォーマルのカバレージを達成する能力、及び選択的な堆積の可能性のようないくつかの利点がある。現在、取り組むべき課題は、低温および高い堆積付着速度で高純度金属薄膜を堆積させるMOCVD前駆体を開発することである。銅前駆体の特性上の分子構造の違いによる影響を理解することも重要である。1価の銅前駆体の分子構造は、(β-ジケトネート)Cu(I)-L(L=ルイス塩基配位子、又は中性配位子)である。中性配位子Lの性質は、前駆体の特性、及びMOCVDによる銅薄膜の特性に影響を与えることが知られているが[1-3]、1価の銅前駆体における中性配位子の影響は、ほとんど報告されていない。
この研究では、銅薄膜堆積用の新しい液体前駆体である(hfac)Cu(I)(MP)(hfac=ヘキサフルオロアセチルアセトネート、MP=4-メチル-1-ペンテン)と(hfac)Cu(I)(DMB)(DMB=3,3-ジメチル-1-ブテン)が検討された。これらの2種の前駆体の分子構造は図1に示される。)

(ウ)「2. Materials and methods
New liquid precursors, (hfac)Cu(I)(MP) and (hfac)Cu(I)(DMB) were supplied by Nano-Tera Materials, Inc. MOCVD was carried out in a system consisting of a cold wall stainless-steel reactor with downward vertical flow arrangement. Films were deposited on a Si wafer coated with sputter deposited titanium nitride (TiN). The precursor was evaporated from a stainless steel bubbler maintained at appropriate temperature (45 and 35℃) and carried to the reactor by Ar carrier gas at a rate of 50 sccm. Total pressure in the reactor was adjusted at 0.3 Torr by a throttle valve between the pump and the reactor. The deposition rate was calculated from the increase in weight of the substrate and conformed by cross-sectional scanning electron microscopy (XSEM). The resistivity was measured with a four-point probe (Veeco). The surface morphology and the roughness of the film was observed using a scanning electron microscopy (SEM, JEOL JSM-840A) and atomic force microscope (AFM, Park Scientific Instruments Autoprobe-CP).」(10ページ右欄12行?11ページ左欄10行)
(当審訳:2.材料及び方法
新しい液体前駆体である(hfac)Cu(I)(MP)と(hfac)Cu(I)(DMB)は、ナノ-テラマテリアルズ社によって供給された。MOCVDは、ダウンフロー型のコールドウォール・ステンレススチール反応炉から成るシステムで行われた。薄膜は、スパッタ堆積した窒化チタン(TiN)で覆われたSiウェーハに堆積させた。前駆体は、適切な温度(45と35℃)に維持されたステンレススチールのバブラーから蒸発させられ、50 sccmの速さでArキャリヤーガスによって反応炉に導かれた。反応炉中の全圧は、ポンプと反応炉の間の絞り弁によって0.3トールに調節された。堆積速度は基板の重量の増加から計算され、横断面の走査型電子顕微鏡法(XSEM)によって一致させられた。抵抗率は四端子法(Veeco社)で測定された。薄膜の表面モフォロジと粗さは、走査型電子顕微鏡法(SEM, JEOL社 JSM-840A)および原子間力顕微鏡(AFM, Park Scientific Instruments社 Autoprobe-CP)を使用して測定された。)

(エ)「3. Results and discussion
Cu film was deposited on TiN at various temperatures and the deposition rate was measured as a function of the deposition temperature. Arrhenius plot of the deposition rates from the two precursors along with others to compare is shown in Fig. 2. The deposition rate of copper film from (hfac)Cu(I)(MP) was about four times higher than previously reported precursors such as (hfac)Cu(I)(VTMS) [4] (VTMS=vinyltrimethylsilane), (hfac)Cu(I)(ATMS) [2, 5] (ATMS=allyltrimethylsilane) and (hfac)Cu(I)(VCH) [3, 6] (VCH=vinylcyclohexane) and that from (hfac)Cu(I)(DMB) is about seven times higher at the same precursor vaporization temperature at 45℃. At the low precursor vaporization temperature (35℃), the deposition rate from (hfac)Cu(I)(MP) was about two times higher than that from previously reported precursors.」(11ページ左欄11行?右欄13行)
(当審訳:3.結果及び考察
銅薄膜は、様々な温度でTiN上に堆積させ、堆積速度は、堆積温度の関数として測定された。2種の前駆体での堆積速度のアレニウス・プロットが、比較のために他の結果と一緒に図2に示される。45℃の同じ前駆体気化温度において、(hfac)Cu(I)(VTMS)(VTMS=ビニルトリメチルシラン)[4]、 (hfac)Cu(I)(ATMS)(ATMS=アリルトリメチルシラン)[2, 5]、(hfac)Cu(I)(VCH)(VCH=ビニルシクロヘキサン)[3, 6]のような従来報告された前駆体よりも、(hfac)Cu(I)(MP)での銅薄膜の堆積速度は約4倍高く、(hfac)Cu(I)(DMB)での堆積速度は約7倍高かった。より低い前駆体気化温度(35℃)において、(hfac)Cu(I)(MP)での堆積速度は、従来報告された前駆体からの堆積速度より約2倍高かった。)

(3)補正発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「デバイスが形成された半導体基板201」、「デバイスを導電層から絶縁するための絶縁層230」、「ビア部分244」、「トレンチ部分242」は、各々補正発明の「半導体素子を形成するための各種の要素が形成された半導体基板」、「層間絶縁膜」、「コンタクトホール」、「トレンチ」に相当する。
また、TiNが、Cuの拡散の障壁として機能することは、当業者における技術常識であるから、引用発明の「TiNからなるライナ237」は、補正発明の「拡散障壁層」に相当する。
したがって、引用発明の「デバイスが形成された半導体基板201を覆うように、デバイスを導電層から絶縁するための絶縁層230が形成され、 絶縁層230がパターン化されて、絶縁層内にトレンチ部分242とビア部分244とを含むデュアル・ダマシン構造245が形成され、 TiNからなるライナ237が、絶縁層230の表面、及びダマシン構造245のトレンチ部分242及びビア部分244を下張りして、絶縁層230を覆うように堆積される段階」は、補正発明の「半導体素子を形成するための各種の要素が形成された半導体基板上に層間絶縁膜を形成し、前記層間絶縁膜にコンタクトホール及びトレンチを形成した後、前記コンタクトホール及びトレンチを含む層間絶縁膜の表面に拡散障壁層を形成する段階」に相当する。

イ 引用発明の「CVD」、「Cu」は、各々補正発明の「化学気相蒸着法」、「銅」に相当する。
したがって、引用発明の「ライナ237が形成された後、Cuからなる導電層258が、ダマシン構造245を満たすようにCVDによって堆積される段階」と、補正発明の「反応チャンバ及びリキッドデリバリシステムを有する銅蒸着装置において、(hfac)Cu(DMB)を銅前駆体として用いる有機金属化学気相蒸着法により、前記コンタクトホール及びトレンチが埋め込まれるように銅を蒸着する段階」とは、「化学気相蒸着法により、前記コンタクトホール及びトレンチが埋め込まれるように銅を蒸着する段階」である点で共通する。

ウ 引用発明の「化学機械ポリッシュ(CMP)」は、補正発明の「化学的機械的研磨処理」に相当する。
また、引用発明の「ダマシン構造245にライナ237とCuからなる導電層258が埋め込まれた構造」による「集積回路内のデバイスを相互接続する導体」は、補正発明の「半導体素子の銅金属配線」に相当する。
したがって、引用発明の「化学機械ポリッシュ(CMP)によって過剰な材料が研磨されて、ダマシン構造245にライナ237とCuからなる導電層258が埋め込まれた構造を得る段階とを含む集積回路内のデバイスを相互接続する導体の形成方法」は、補正発明の「化学的機械的研磨処理して銅金属配線を形成する段階とを含」む「半導体素子の銅金属配線形成方法」に相当する。

エ したがって、補正発明と引用発明とは、
「半導体素子を形成するための各種の要素が形成された半導体基板上に層間絶縁膜を形成し、前記層間絶縁膜にコンタクトホール及びトレンチを形成した後、前記コンタクトホール及びトレンチを含む層間絶縁膜の表面に拡散障壁層を形成する段階と、
化学気相蒸着法により、前記コンタクトホール及びトレンチが埋め込まれるように銅を蒸着する段階と、
化学的機械的研磨処理して銅金属配線を形成する段階とを含む半導体素子の銅金属配線形成方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
「前記コンタクトホール及びトレンチが埋め込まれるように銅を蒸着する段階」の「化学気相蒸着法」について、補正発明は、「反応チャンバ及びリキッドデリバリシステムを有する銅蒸着装置において、(hfac)Cu(DMB)を銅前駆体として用いる有機金属化学気相蒸着法」と特定され、さらに、
「前記リキッドデリバリシステムが、バブラーであり、
前記バブラーを用いた銅蒸着条件が、
前記バブラーのキャニスタの温度を30?70℃の範囲内とし、
前記バブラーのキャニスタから前記反応チャンバに至るガスライン及びソースラインの温度を前記バブラーのキャニスタの温度と同一に維持させ、
前記反応チャンバのシャワーヘッドと前記反応チャンバのサセプタプレートとの間隔を1?50mmの範囲内とする」と特定されているのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点。

(4)相違点についての当審の判断
ア 引用例2には、上記(2)ウに摘記したように、銅薄膜を、液体前駆体として(hfac)Cu(I)(DMB)を用いた有機金属化学気相成長(MOCVD)により形成すること、このMOCVDは、ダウンフロー型の反応炉から成るシステムで行われたこと、前駆体(hfac)Cu(I)(DMB)は、適切な温度(45℃)に維持されたステンレススチールのバブラーで蒸発させられ、キャリヤーガスによって反応炉に導かれたこと、45℃の前駆体気化温度において、(hfac)Cu(I)(DMB)での堆積速度は、従来報告された前駆体よりも約7倍高かったこと、がそれぞれ記載され、超大規模集積回路(ULSI)の金属被覆工程への適用が示唆されている。
ここで、引用例2に記載された「バブラー」は、反応炉に前駆体を供給するために、液体前駆体を蒸発させるものであるから、補正発明の「リキッドデリバリシステム」に相当し、引用例2記載された「反応炉」及び「バブラー」を有する「銅薄膜」の「MOCVD」を行うための装置は、補正発明の「反応チャンバ及びリキッドデリバリシステムを有する銅蒸着装置」に相当する。また、引用例2に記載された「適切な温度(45℃)に維持されたステンレススチールのバブラー」にキャニスタ(容器)があることは技術常識であり、そのキャニスタの温度が45℃であることは自明である。
すなわち、引用例2には、超大規模集積回路(ULSI)の金属被覆工程に適用できる銅薄膜形成技術であって、反応チャンバ、及びバブラーからなるリキッドデリバリシステムを有する銅蒸着装置において、(hfac)Cu(DMB)を銅前駆体として用いる有機金属化学気相蒸着法に関する技術が示され、さらに、銅蒸着条件として、バブラーのキャニスタの温度を45℃とする技術が示されていると言える。

イ また、一般に、バブラーを用いたリキッドデリバリシステムにおいて、バブラーのキャニスタ(容器)から反応チャンバに至るガスライン乃至ソースラインにおける前駆体の凝縮、分解を防ぐために、ガスライン乃至ソースラインの温度をバブラーのキャニスタの温度と同一に維持することは、下記周知例1及び2に記載されているように、当業者における周知技術である。

ウ そして、補正発明の「前記反応チャンバのシャワーヘッドと前記反応チャンバのサセプタプレートとの間隔を1?50mmの範囲内とする」ことは、本願明細書の0035段落を根拠にするものと認められるが、0035段落には「シャワーヘッド80とサセプタプレート90との間隔は、1?50mmとする。」と記載されているのみであって、本願明細書には、他の間隔との比較等は何ら示されておらず、「1?50mm」という範囲に臨界的意義があるとは認められない。
一方、ダウンフロー型のCVD装置に、シャワーヘッドとサセプタプレートを備えることは、下記周知例3及び4に記載されているように、通常のことであって、シャワーヘッドとサセプタプレートとの間隔として、「1?50mm」に包含される10?20mmや0.25インチ(6.35mm)?0.5インチ(12.7mm)は、下記周知例3及び4に記載されているように、通常用いられている値である。

エ そうすると、引用発明の「ライナ237が形成された後、Cuからなる導電層258が、ダマシン構造245を満たすようにCVDによって堆積される段階」における「CVD」について、引用例2の記載に基づいて、反応チャンバ、及びバブラーからなるリキッドデリバリシステムを有する銅蒸着装置において、(hfac)Cu(DMB)を銅前駆体として用いる有機金属化学気相蒸着法とし、銅蒸着条件が、バブラーのキャニスタの温度を45℃とするとともに、周知技術を考慮して、バブラーのキャニスタから反応チャンバに至るガスライン乃至ソースラインの温度をバブラーのキャニスタの温度と同一に維持させることで、ガスライン乃至ソースラインにおける前駆体の凝縮、分解を防ぐものとし、また、反応チャンバのシャワーヘッドとサセプタプレートとの間隔を例えば10?20mm程度とすることは、当業者が容易になし得たことである。
よって、引用発明において、引用例2の記載、及び周知技術に基づいて、相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものである。

(ア)周知例1:特開平2-190473号公報
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である上記周知例1には、第1図とともに次の記載がある。

「・・(略)・・反応容器の外で常温で固相の原料をバブラーに入れ、加熱により液相に融解し、液相の該原料に対するキャリヤガスのバブリングにより気相の原料ガスを得、該原料ガスを配管及び弁を経て反応容器に供給する構造のプラズマCVD用原料ガス供給装置が検討されている。この場合、配管を経ての原料ガスの供給中に該配管の温度が低いと、原料ガスが該配管の内面に析出し、これが不純物の原因となる。これを避けるためには、配管及び弁の外周にヒータを巻き付けて加熱を行う必要がある。
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、ヒータを巻き付けての加熱では、配管及び弁を均一に加熱することが難しく、いずれかの部分に温度が低い箇所が生ずると、そこに原料ガスの析出が生ずる問題点があった。
本発明の目的は、配管及び弁を均一に加熱することができるプラズマCVD用原料ガス供給装置を提供する。
[課題を解決するための手段]
上記の目的を達成するための本発明の構成を説明すると、本発明は常温で固相の原料をバブラー内で液相に融解し、液相の前記原料に対するキャリヤガスのバブリングにより気相の原料ガスを得、該原料ガスを配管及び弁を介してプラズマCVD用反応容器内に供給するプラズマCVD用原料ガス供給装置において、前記バブラー、前記配管及び前記弁が恒温槽内に収容されていることを特徴とする。
[作用]
このようにバブラー、配管及び弁を恒温槽内に収容すると、配管や弁を容易に均一に加熱できる。
[実施例]
・・(略)・・
このような作業中、バブラー10、・・(略)・・第1?第3キャリヤガス配管15?17、バブリング用キャリヤガス配管13、外部原料ガス配管11、・・(略)・・は恒温槽22内で均一に加熱されている。
従って、これらの各部に対する原料ガスの析出は生じない。また恒温槽22と反応容器1との間の短い外部原料ガス配管11の部分、及び反応容器1内の内部原料ガス配管8も、恒温槽22内と同じ温度にヒータ23、9で加熱されている。」(1ページ右下欄14行?3ページ右下欄11行)

(イ)周知例2:特開平3-39476号公報
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である上記周知例2には、図とともに次の記載がある。

「(従来の技術)
従来、化合物半導体やセラミック高温超伝導体の薄膜を成長させるCVD装置では、凝縮性の成膜ガスを使用することがあり、この場合、該CVD装置の成膜用反応管へ成膜ガスを送るガス導入管、制御用のバルブ及び成膜ガスを発生させるバブラーのガス導入装置を線ヒータなどで加熱し、成膜ガスがガス導入管内で凝縮したり或いは凝縮によってガス導入管が詰まることを防止している。
(発明が解決しようとする課題)
前記のように、線ヒータなどをガス導入管やバルブに巻き付けて加熱するように構成したものは、均一に加熱することができず、部分的に温度の高いところと低いところとが発生し、温度の低いところに成膜ガスが凝縮してガス導入管の詰まりを起こす欠点があった。また成膜ガスの種類によっては、温度を高くしすぎると分解を起こすものがあり、この場合、分解が生ずると望む膜質が得られなくなる。更に、低温部を成膜ガスが凝縮しない温度にすると、高温部では成膜ガスの分解反応が発生する不都合があることが分った。」(1ページ右下欄8行?2ページ左上欄10行)
「(実施例)
本発明の実施例を別紙図面に基づき説明するに、図面に於いて符号(1)はCVD装置の成膜用反応管、(2)は該成膜用反応管(1)へ成膜ガスを導入するガス導入装置を示す。該ガス導入装置(2)は、Cu(DPM)_(2)その他の原料物質のガスを発生させるバブラー(3)と、該バブラー(3)で発生したガス(蒸気)を制御用の空気圧作動型のバルブ(4a)や手動型のバルブ(4b)等のバルブ(4)を介在した導入ガス管(5)とで構成され、これらの構成部品はオーブン(6)内に収められて恒温状態に加熱される。
該ガス導入装置(2)は、原料物質が1種類の場合、1個のバブラー(3)が設けられるが、この場合バルブ(4)及び導入ガス管(5)と共に1つのオーブン(6)に収め、該オーブン(6)の温度と該バブラー(3)内の物質のガスを発生させるに適した温度に制御する。これによって、ガス導入装置(2)の全体をガスが凝縮或いは分解しない恒温状態に維持され、良好なCVD処理を行える。」(2ページ右下欄14行?3ページ左上欄13行)

(ウ)周知例3:特開平9-186111号公報
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である上記周知例3には、図2とともに次の記載がある。

「【0016】本発明に係る成膜処理装置38、40は、ウエハ表面に金属薄膜、例えばアルミニウム膜を熱CVDにより成膜する装置であり、図2及び図3に基づいてこの成膜処理装置38、40について説明する。・・(略)・・
【0017】この処理容器56内には、例えばアルミナ製の円板状の載置台68が設けられ、この載置台68の下面中央部には下方に延びる円筒状の脚部70が一体的に形成され、この脚部70の下端は上記容器底部56Aの給電線挿通孔58の周辺部にOリング等のシール部材72を介在させてボルト74等を用いて気密に取り付け固定される。・・(略)・・
【0018】・・(略)・・
【0019】また、処理容器56の天井部には、シャワーヘッド96が一体的に設けられた天井板98がOリング等のシール部材100を介して気密に取り付けられており、上記シャワーヘッド96は載置台68の上面の略全面を覆うように対向させて設けられ、載置台68との間に処理空間Sを形成している。このシャワーヘッド96は処理容器56内に処理ガスをシャワー状に導入するものであり、シャワーヘッド96の下面の噴射面102には処理ガスを噴出するための多数の噴射孔102Aが形成される。
【0020】・・(略)・・尚、このシャワーヘッド98と載置台68との間の距離Lは略10?20mm程度に設定されている。」

(エ)周知例4:特開平8-255760号公報
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である上記周知例4には、図2とともに次の記載がある。

「【0017】
【発明の実施の形態】本発明は、典型的な単一ウエハ、CVD、半導体ウエハ処理リアクタに至って断面図である図2について一般的に図示されている。図示されているように、リアクタ20は、内部にサセプタ26が配置されている処理チャンバ24を画成するハウジング22を含んでいる。サセプタ26は、チャンバをそれぞれ上部24a、下部24bに分ける。サセプタは、その上面で半導体ウエハ28をシャワーヘッド30の下で支持し、シャワーヘッド30は密接に間隔を開けて配置された孔の平面配列を有し、そこを通じて金属原子を含むガスがチャンバ24の中に放射され、ウエハ28上に堆積される。さらに、サセプタ26は、昇降機構32の動きの下で、ウエハ28の主要面に対して垂直の中心軸に沿って鉛直に移動可能であり、その周りに回転可能である。・・(略)・・
【0030】サセプタ26が上方に移動し続けるにつれて、それはシールドリング40を僅かにポンププレート42から上に持ち上げ、シールドリング40とポンププレート42間に曲がりくねった領域58を形成する。ウエハが、シャワーヘッド30からおよそ0. 250インチから0. 500インチ(6. 35から12. 7mm)にあるときの位置で、サセプタ26は停止し、処理が始められる。・・(略)・・」

オ 相違点についての判断のまとめ
補正発明と引用発明との相違点についての判断は以上のとおりであるから、補正発明は、周知技術を勘案することにより引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)独立特許要件についてのまとめ
以上検討したとおり、補正発明は、周知技術を勘案することにより引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項をいう。以下同じ。)の規定に違反する。

5 補正の却下の決定のむすび
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成24年7月20日に提出された手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?46に係る発明は、平成23年4月4日に提出された手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1?46に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載されている事項により特定される、上記第2 1の「(補正前)」の箇所に記載したとおりのものである。
一方、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開平11-330244号公報(引用例1)には、上記第2 4(2)ア?イに記載したとおりの事項、及び発明(引用発明)が記載されているものと認められ、本願の優先権主張の日前に外国において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である Sang-Woo Kang, Sang-Ho Han, Shi-Woo Rhee,"(hfac)Cu(I)(MP) (hfac=hexafluoroacetylacetonate, MP=4-methyl-1-pentene) and (hfac)Cu(I)(DMB) (DMB=3,3-dimethyl-1-butene) for the chemical vapor deposition of copper film",Thin Solid Films,Volume 350, Issues 1-2,Pages 10-13 (引用例2)には、上記第2 4(2)ウに記載したとおりの事項が記載されているものと認められる。
そして、本願発明に対して技術的限定を加えた発明である補正発明は、上記第2 4において検討したとおり、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も当然に、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-18 
結審通知日 2013-07-23 
審決日 2013-08-05 
出願番号 特願2000-374131(P2000-374131)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲辻▼ 弘輔  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 加藤 浩一
早川 朋一
発明の名称 半導体素子の銅金属配線形成方法  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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