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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B01D 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 B01D 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 B01D 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B01D |
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管理番号 | 1282752 |
審判番号 | 不服2013-11371 |
総通号数 | 170 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-06-18 |
確定日 | 2014-01-07 |
事件の表示 | 特願2007- 89984「膜カートリッジ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月16日出願公開、特開2008-246356、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年3月30日の出願であって、平成24年5月15日付けで拒絶理由が通知され、同年7月9日に手続補正書と意見書が提出され、同年10月31日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年12月11日に手続補正書と意見書が提出されたが、平成25年3月29日付けで平成24年12月11日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がされたので、平成25年6月18日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされたものである。 そして、当審において、平成25年8月21日付けで審査官により作成された前置報告書について、同年9月27日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は同年11月26日付けで回答書を提出した。 第2 平成25年6月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のとおり補正するものである。 (補正前) 「濾板の表面に濾過膜を配置し、濾過膜と濾板との間の通液流路に連通する集液部を濾板の所定位置に設けてなる膜カートリッジであって、 濾板に集液部から離間する方向に沿ってバイパス流路を形成してなり、バイパス流路は当該流路に沿って隣接する通液流路の近領域に対して不連通で、一端が集液部に向けて開口し、他端が集液部から離間した遠領域に向けて開口することを特徴とする膜カートリッジ。」 (補正後) 「濾板の表面に濾過膜を配置し、濾過膜と濾板との間の通液流路に連通する集液部を濾板の所定位置に設けてなる膜カートリッジであって、 濾板に前記集液部から離間する方向に沿ってバイパス流路を形成してなり、前記バイパス流路は、前記バイパス流路に沿って隣接し、かつ前記集液部に近い通液流路の近領域に対して不連通で、一端が前記集液部に向けて開口し、他端が前記集液部から離間した通液流路の遠領域に向けて開口し、 バイパス流路を通ることなく近領域の通液流路を流れる膜透過液と、近領域の通液流路を流れることなく遠領域の通液流路からバイパス流路に流れる膜透過液とが同一の前記集液部へ流入することを特徴とする膜カートリッジ。」(審決注:下線部は補正箇所を示す。) 2.補正の適否 2-1 明細書等に記載した事項の範囲内か 本件補正により、特許請求の範囲に新たに加入された上記補正事項が明細書等の記載事項の範囲内であることは、段落【0068】等の記載から、明らかである。 したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法(以下、「旧法」という。)第17条の2第3項の規定に違反するところはない。 2-2 目的は適合するか 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「膜カートリッジ」について、「バイパス流路を通ることなく近領域の通液流路を流れる膜透過液と、近領域の通液流路を流れることなく遠領域の通液流路からバイパス流路に流れる膜透過液とが同一の前記集液部へ流入する」との限定を付加する補正事項を含む。 そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、旧法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、他の補正事項は明りょうでない記載の釈明にあたり、いずれの補正事項も旧法第17条の2第4項の規定に違反するところはない。 2-3 独立特許要件はあるか (1)刊行物の記載事項 原審の補正却下及び前置報告において引用された特開2000-312815号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。 (サ)「【特許請求の範囲】 【請求項1】支持基材に膜を設けた平型膜エレメントを原液中に縦配置で浸漬し、平型膜エレメントの膜に濾過液を内側に向けて通過させる膜分離装置において、前記支持基材と膜との間を複数の互いに連通した区画に分けるように接着または融着したことを特徴とする浸漬型膜分離装置。」 (シ)「【0012】上記支持基材11と各膜15との間は、複数の互いに連通した区画に分けるように、図2に示すようなパタ-ンで接着剤または融着によって固着してある。この図2の(イ)に示すパタ-ンでは、並行ストライブ(審決注;「ストライブ」は「ストライプ」の誤記と認める。)で上下端連通の並列区画としてあり・・・。」 (ス)「 」 (2)刊行物1に記載された発明 記載事項(サ)によれば、刊行物1には、「支持基材に膜を設けた平型膜エレメントを原液中に縦配置で浸漬し、平型膜エレメントの膜に濾過液を内側に向けて通過させる膜分離装置において、前記支持基材と膜との間を複数の互いに連通した区画に分けるように接着または融着したことを特徴とする浸漬型膜分離装置」が記載されており、同(シ)(ス)によれば、「複数の互いに連通した区画に分けるように接着または融着」する具体例として、「並行ストライブで上下端連通の並列区画」とすることが記載されている。 したがって、刊行物1には、「支持基材に膜を設け、該支持基材と膜との間を並行ストライプで上下端連通の並列区画に分けるように接着した平型膜エレメント」に関する発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。 (2)対比 本願発明と刊行物1発明とを比較すると、刊行物1発明における「支持基材」、「膜」及び「平型膜エレメント」は、本願発明における「濾板」、「濾過膜」及び「膜カートリッジ」に相当するので、本願発明と刊行物1発明とは、「濾板の表面に濾過膜を配置し、濾過膜と濾板との間の通液流路に連通する集液部を濾板の所定位置に設けてなる膜カートリッジ」に関する発明である点で一致する。 他方、本願発明と刊行物1発明は次の点で相違する(以下、「相違点」という。)。 すなわち、本願発明の膜カートリッジは 「濾板に前記集液部から離間する方向に沿ってバイパス流路を形成してなり、前記バイパス流路は、前記バイパス流路に沿って隣接し、かつ前記集液部に近い通液流路の近領域に対して不連通で、一端が前記集液部に向けて開口し、他端が前記集液部から離間した通液流路の遠領域に向けて開口し、 バイパス流路を通ることなく近領域の通液流路を流れる膜透過液と、近領域の通液流路を流れることなく遠領域の通液流路からバイパス流路に流れる膜透過液とが同一の前記集液部へ流入する」 ものであるのに対し、刊行物1発明のものは、このようなバイパス流路を形成しているか明らかではない点。 (3)判断 上記相違点に関し、刊行物1発明において形成された、「支持基材と膜との間を並行ストライプで上下端連通の並列区画」に分けられた部分が、本願発明における「バイパス流路」に相当するかを検討する。 この点、たしかに該並行ストライプは支持基材と膜を接着して形成されているので、「並行ストライプで区画された一区画」は、「隣接する他の区画」に対しては「不連通」であるといえる。しかし、該「並行ストライプで区画された一区画」は、「他端が前記集液部から離間した通液流路の遠領域に向けて開口し」ているとはいえないので、「遠領域の通液流路」からの膜透過液を集液部へ流入させることができない。 このため、「並行ストライプで区画された一区画」は、「バイパス流路」に相当しないものと認める。また、刊行物1には、該「バイパス流路」を形成することについての示唆もない。 したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明ではないし、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、本件補正は、旧法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 3 まとめ 本件補正は、旧法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、旧法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから、本願の請求項1及び2に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものである。 これに対し、原査定の拒絶理由は、本願発明は、刊行物2に記載された発明であるか、刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易になしえたものであるというものであるので、これについて検討する。 刊行物2;特開平9-117644号公報 2 刊行物2に記載された発明 刊行物2の【特許請求の範囲】の【請求項1】には、「基板を平膜で覆い、基板と平膜との間に透過水の流通空間を形成すると共に、上記透過水の流通空間と連通する左右2本の採水管を立設した浸漬型膜分離装置の平膜エレメントにおいて、上記透過水の流通空間を上端から下に向かって途中までを左の採水管と連通する左流通空間と、右の採水管と連通する右流通空間に仕切ると共に、左流通空間の下と、右流通空間の下とを連通する流路を形成したことを特徴とする浸漬型膜分離装置の平膜エレメント。」に関する発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されている。 ここで、たしかに刊行物2発明では、透過水の流通空間が隔離手段により2つの流路に仕切られているので、一方の流路をバイパス流路とみることができなくもない。 しかし、本願発明における「バイパス流路」は、「バイパス流路に沿って隣接し、かつ集液部に近い通液流路の近領域に対して不連通で、一端が集液部に向けて開口し、他端が集液部から離間した通液流路の遠領域に向けて開口し」ているもので、これにより、バイパス流路を通ることなく近領域の通液流路を流れる膜透過水と、近領域の通液流路を流れることなく遠領域の通液流路からバイパス流路に流れる膜透過水は、同一の集液部に流入するものであって、濾過膜に作用する膜間差圧を膜全面において均等化し、濾過膜の膜面全体を濾過膜に利用できるという作用・効果を有するものである。 これに対し、刊行物2には、集液部を同一のものにする点については記載されていないし、これを同一のものにすることについての示唆や動機付けも記載されていない。 したがって、本願発明は、刊行物2に記載された発明ではないし、刊行物2に記載された発明から当業者が容易になしえたものとすることもできないので、原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 3 むすび 本願については、他に拒絶とすべき理由を発見しないので、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2013-12-19 |
出願番号 | 特願2007-89984(P2007-89984) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
WY
(B01D)
P 1 8・ 575- WY (B01D) P 1 8・ 121- WY (B01D) P 1 8・ 113- WY (B01D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 川島 明子、手島 理 |
特許庁審判長 |
真々田 忠博 |
特許庁審判官 |
吉水 純子 川端 修 |
発明の名称 | 膜カートリッジ |
代理人 | 特許業務法人森本国際特許事務所 |