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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1282778
審判番号 不服2012-2087  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-03 
確定日 2013-12-12 
事件の表示 特願2005-333595「体温測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月 7日出願公開、特開2007-135866〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成17年11月18日に出願されたものであって,平成23年3月15日付けの拒絶理由通知に対し同年5月19日付けで意見書及び手続補正書が提出され,さらに同年6月17日付けの最後の拒絶理由通知に対し同年8月10日付けで意見書が提出されたが,同年11月8日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成24年2月3日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。
そして,当審において,平成25年1月9日付けで前置報告書の内容が審尋され,これに対し同年3月18日付けで回答書が提出され,その後同年4月12日付けの拒絶理由通知に対し同年5月31日付けで意見書が提出され,同年6月26日付けの拒絶理由通知に対し同年8月26日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
この出願に係る発明は,平成25年8月26日付け手続補正により補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されたとおりのものと認められるところ,請求項1に係る発明は以下のとおりである。

「【請求項1】
被検者の体表面の適所に貼りつけて体温測定する体温測定装置であって,
温度測定部を有するICタグと,該ICタグの該表面を断熱して囲包する囲包部材と,該体表面への貼付けるための貼付部材と,前記温度測定部により測定された体温情報を読取る読み取り部と,を備え,
前記ICタグは,ロジック部を備え,コンピュータで読取り可能な記憶媒体であるRAMと,EEPROMと,小型化でき,かつ前記ICタグとの一体化が可能で,35?42℃の間で温度分解能が0.05℃である半導体型の温度センサであるC-MOS温度センサとを備え,
前記温度センサは,体温信号を,前記35?42℃の間の温度変化に対してほぼリニアにアナログ出力し,前記アナログ出力された前記体温信号は,暗号化処理され,アンテナ部を介して,ICタグ読み取り部から10?60毎に送信される13.56MHzの電磁波に同期して前記ICタグ読み取り部に前記体温信号が取得されるように前記ロジック部で制御され,
前記体温信号は表示部において,解熱剤の投与のメモ入力情報と併せて体温値のトレンド変化として表示されることを特徴とする体温測定装置。」 (以下「本願発明」という)

3 当審の拒絶理由通知
当審における拒絶理由通知の概略は,以下のとおりである。

本願の請求項1に係る発明は,本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-270051号公報(以下「刊行物1」という),特開2001-144255号公報(以下「刊行物2」という),特開昭63-133028号公報(以下「刊行物3」という)に開示された事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 刊行物の記載事項

(1)刊行物1には,図面とともに,次の事項が記載されている(下線は当審で付した)。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は温度測定対象の表面に予め装着して温度測定を行う温度測定装置に関し,特に例えば温度測定対象が人体で有る場合には,人体の衣服の外側から瞬時に且つ正確な温度測定を行うことができる温度測定装置及び温度検出方法に関する。」

「【0037】
【発明の実施の形態】[第一の実施の形態]図1は本発明の第一の実施の形態の温度測定装置が適用される測温システムの全体概要図である。図1において,被測温体に装着される被測温体装着装置1は外部装置であるリーダ2からの電波を受信して電力を供給され,かかる電力によって被測温体装着装置1において測温が行われてその測定結果が電波によって被測温体温度及びIDデータとしてリーダ2に送られる。…
【0038】図2は図1に示す第一の実施の形態の温度測定装置が適用される測温システムを機能ブロックによって模式化した全体概要図である。図2に示されるように,リーダ2はリーダ2本体にアンテナコイル3を備えてなり,係るアンテナコイル3を介してフィルムアンテナコイル4を備えた被測温体装着装置1との間で電波の送受信が行われる。図示されるようにリーダ2からはアンテナコイル3を介して被測温体装着装置1に電波による起電力が供給され,一方被測温体装着装置1からはリーダ2に対して温度データが電波によって送信される。リーダ2は図示されるようにシステムLSI5を搭載し,駆動電力を供給する電源回路6とアンテナコイル3に入出力する電波インターフェース7と基準クロツク信号を発生するクロック回路8,電波インターフェース7に入出力する電磁誘導結合回路9,さらに測温結果等を表示する液晶表示器10及び図示しない外部機器に接続するための外部機器接続回路11を有する。」

「【0040】一方,被測温体装着装置1は図示されるようにシステムLSIチップ12を搭載し,フィルムアンテナコイル4に入出力する電波インターフェース13と温度検出部14,電波インターフェース13に入出力する電磁誘導結合回路15を備え前記温度検出部14及び電波インターフェース13に入出力するシステムLSIチップ12は,インターフェース12aと温度検出部14の感温抵抗を検出してこれをデジタル温度の書込データに変換するA/D変換器12bとRAM12cとROM12dとCPU12eとEEPROM12fを備えて構成される。以上において温度検出部14は温度データ検出手段16及び密閉空気層17を備えて構成される。【0041】図3は前記被測温体装着装置1の側方断面図である。図3において,フィルム状制御基板18の上面にシステムLSIチップ12が搭載され,柔軟性シートとしての所定厚の不織布19の上面に前記フィルム状制御基板18が接着されており,この所定厚の不織布19にあけられた穴20内側の空気層21に露出する態様でチップサーミスタ22が前記フィルム状制御基板18の裏面に取り付けられている。また所定厚の不織布19の裏面には体表面貼り付け用の粘着材23が塗布されている。体表面に貼り付けられた所定厚の不織布19は,その中央にあけられた穴20によって形成された空間が体表面と前記フィルム状制御基板18の裏面との間に不織布19の所定厚さに近似する厚みの空気層21を形成することとなる。【0042】上述するように不織布19裏面は穴20部分を除く周囲に粘着材23が塗布されているため体表面に貼り付けた状態においては,空気層21は穴20によって形成された空間の中で閉じ込められ外気と遮断される。この遮断された空気層21温度は外気温度に影響されず,体表面温度を忠実に反映させることができ,この空気層21にはチップサーミスタ22が直接露出するように配置される。」

「【0044】以上のように,所定厚の不織布19の穴20によって形成された空間に位置させる温度データ検出手段としては温度値を抵抗値に変換する手段を採用することができる。係る温度値を抵抗値に変換する手段としては,前記チップサーミスタ22以外にフィルム状制御基板18に印刷されたサーミスタパターンや白金測温抵抗体でも良い。この場合,より薄い測温チップの抵抗体を取り付けて,測温チップが肌に直接触れない構造とする。
【0045】また温度値を電圧値に変換する手段として,ゼーベック効果を利用した熱電対素子やペルチェ効果を利用したPN接合素子やダイオード又は温度に比例した電圧出力のICチップを,不織布19の所定厚さによって生じる穴20によって形成された空間に収納する方式でも良い。
【0046】また所定厚の不織布19の穴20によって形成された空間に位置させる温度データ検出手段としては温度値を周波数に変換する手段を採用することができる。温度値を周波数に変換する手段として,マルチバイブレータ回路や発振回路又はV-Fコンバータによって,前記の温度値が抵抗値又は電圧値に変換された物理量をさらに周波数変換することにより,A/Dコンバータを介さずに直接に外部装置であるリーダ2に送信するためのチップICを,不織布19の所定厚さによって生じる穴20によって形成された空間に収納する方式でも良い。」

「【0054】第一の実施の形態の温度計ではフィルムアンテナコイル4,フィルム型サーミスタ,CPUを一枚のフィルム状制御基板18上に平面状に形成される。しかし,そのように必ずしも平面上に形成される必要はなく実施の態様によってフィルムアンテナコイル4,フィルム型サーミスタ,CPUチップ又はフィルム型CPUそれぞれを多層的に配置した構造を採用することもできる。」

「【0068】
【発明の効果】本発明は温度計測において,温度測定装置を無電池で駆動し且つ温度データを無線伝送する温度測定装置に関するものであり,特に被測温体表面に予め装着しておくことにより検温が必要な際に瞬時且つ正確な被測温体温度を外部装置により電波で測定できるため,被測温体が運動する場合であっても温度測定をリアルタイムでかつ連続的に行うことが可能となる。特に本発明は,被測温体が人体で有る場合には,人体表面に予め装着しておくことにより検温が必要な際に,体表面温度を定常状態に維持して衣服外側から瞬時に且つ正確に測定できるため,被測温体である人体が運動する場合であっても或いは被測温体である人が就寝中であっても無拘束の温度測定をリアルタイムで連続的に行うことが可能となる。従って動き回る幼児や腋下に隙間が大きくなる老人の体温測定に適している。また被験者が就寝中であっても気付かれずに随時体温測定が可能となる。」

以上の記載事項を総合すると,上記刊行物1には,以下の発明が記載されていると認められる。

「外部装置であるリーダ2からの電波を受信して電力を供給され,かかる電力によって測温が行われてその測定結果が電波によって被測温体温度及びIDデータとしてリーダ2に送られる,被測温体に装着される被測温体装着装置1であって,
リーダ2はリーダ2本体にアンテナコイル3を備えてなり,係るアンテナコイル3を介してフィルムアンテナコイル4を備えた被測温体装着装置1との間で電波の送受信が行われ,
リーダ2からはアンテナコイル3を介して被測温体装着装置1に電波による起電力が供給され,一方被測温体装着装置1からはリーダ2に対して温度データが電波によって送信され,
被測温体装着装置1はシステムLSIチップ12を搭載し,フィルムアンテナコイル4に入出力する電波インターフェース13と温度検出部14,電波インターフェース13に入出力する電磁誘導結合回路15を備え,
前記温度検出部14及び電波インターフェース13に入出力するシステムLSIチップ12は,インターフェース12aと温度検出部14の感温抵抗を検出してこれをデジタル温度の書込データに変換するA/D変換器12bとRAM12cとROM12dとCPU12eとEEPROM12fを備えて構成され,
温度検出部14は温度データ検出手段16及び密閉空気層17を備えて構成され,
フィルム状制御基板18の上面にシステムLSIチップ12が搭載され,柔軟性シートとしての所定厚の不織布19の上面に前記フィルム状制御基板18が接着され,この所定厚の不織布19にあけられた穴20内側の空気層21に露出する態様でチップサーミスタ22が前記フィルム状制御基板18の裏面に取り付けられ,所定厚の不織布19の裏面には体表面貼り付け用の粘着材23が塗布され,体表面に貼り付けられた所定厚の不織布19は,その中央にあけられた穴20によって形成された空間が体表面と前記フィルム状制御基板18の裏面との間に不織布19の所定厚さに近似する厚みの空気層21を形成することとなり,
体表面に貼り付けた状態においては,空気層21は穴20によって形成された空間の中で閉じ込められ外気と遮断され,この遮断された空気層21温度は外気温度に影響されず,体表面温度を忠実に反映させることができ,この空気層21にはチップサーミスタ22が直接露出するように配置され,
被測温体である人が就寝中であっても無拘束の温度測定をリアルタイムで連続的に行うことが可能となる被測温体装着装置1。」(以下「引用発明」という。)

(2)刊行物2には,図面とともに,次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0024】次に前述した如く構成される集積回路装置の具体的な例を,図5を参照して説明する。この集積回路装置は体温計を構成するもので,センシング回路をなす装置本体1は,感温素子としての抵抗1aを介して直列にリング状に接続した3個のインバータ回路1b,1c,1dと,2段のインバータ回路1b,1cの入出力間に位相差を付与する為のコンデンサ1eとにより構成されたリングオシレータとして実現される。【0025】このリングオシレータ(装置本体1)は,その感温素子をなす抵抗1aがCMOSウェルの抵抗として実現される場合,その抵抗値が1℃当たり0.3%(3000ppm)の変化を生じることを利用して,例えば1℃当たり0.3%の発振周波数の変化が生じるように設定される。また環境温度が36.0℃のとき,例えば100μSecの周期のパルス信号を,つまり10KHzのパルス信号を出力する如く,その回路定数が設定される。
【0026】ちなみにこの種の集積回路装置(体温計)を大量生産したときの発振周波数のバラツキが最大2.0%であったとすると,この2%の発振周波数のずれは温度に換算して
2.0 [%] ÷ 0.3 [%/℃] ≒ 7.0 [℃]
もの大幅なずれを生じることになる。この点,体温計としては,一般的には34.0?42.0℃の温度測定範囲において,0.01℃?0.1℃の分解能で温度(体温)を計測する必要があり,上述した発振周波数のずれは到底許容されない。換言すれば感温素子をなす抵抗1aをCMOSウェル抵抗により実現した場合,その発振周波数の大きなバラツキが否めないことに起因して,従来では専ら感温素子としてサーミスタ等の別部品を用いているのが実情である。
【0027】そこでこの集積回路装置においては,該集積回路装置を恒温槽に収納する等して一定の動作環境下におき,例えば36.0℃の温度環境に設定する。そしてこの状態で,例えば10MHzの電磁波エネルギを給電して集積回路装置を作動させ,演算制御部5の下で装置本体1(リングオシレータ)の出力(パルス信号)を検出し,その校正データを求めるものとなっている。」

「【0033】従って36.0℃でのリングオシレータの出力を,上述したパルス数からなる校正データとして不揮発性メモリ6に記憶しておけば,この校正データを用いて実際の使用環境においてリングオシレータの出力として求められるパルス数が示す計測温度を,簡易にして効果的に補正することが可能となる。従ってリングオシレータの出力特性自体を,前述した薄膜抵抗のトリミング等によって校正しなくても,また製造に起因する出力特性のバラツキが最大2.0%と大きくても,その出力が示す計測温度を不揮発性メモリ6に取得された校正データを用いて補正(校正)することができるので,その出力または出力特性を簡易に校正することができる。」

「【0049】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係る集積回路装置によれば,電磁波として給電されるエネルギをコイルを介して受電して内部電源を生成し,所定の動作環境下における装置本体の出力を検出することで,その校正データを不揮発性メモリに取得するので,装置本体の出力の所期の特性からずれやバラツキを簡易にして効果的に補正(校正)することができる。」

(3)刊行物3には,図面とともに,次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「[産業上の利用分野]
本発明は測温部位に貼着して体温を測温し,測温データを無線送信する電子体温計に関する。」(第2頁左上第2?4行))

「第1図(a)において,1は柔軟で断熱性の被覆部材であって,その中に電子体温計の電子部品を被覆し,体温計全体としての柔軟な構造を保持する。このようなものとして,発泡ウレタンが用いられる。」(第2頁左下欄第12?16行)

「第1図(C)において,チップサーミスタ5の感温部はテープ7の略中央部に設けられた開口部7aを介して体表面に接触し,温度を検出する。その際に,断熱性被覆部材1は外部温を有効に遮断し,体表面の正確な温度測定を可能にする。」(第3頁左上欄第3?9行)

5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「被測温体装着装置1」は,被測温体である人に装着されるものであり,体表面に貼り付けられるものであるから,本願発明の「被検者の体表面の適所に貼りつけて体温測定する体温測定装置」に相当する。

イ 引用発明の「体表面貼り付け用の粘着材23」,「チップサーミスタ22」,「電波」,「CPU12e」及び「フィルムアンテナコイル4」が,それぞれ,本願発明の「該体表面へ貼り付けるための貼付部材」,「温度センサ」,「電磁波」,「ロジック部」及び「アンテナ部」に相当する。

ウ 一般に,ICタグとは,リーダからの電波を受信して起動し,IDデータ等をリーダに送る小型の電子装置と解されるところ,引用発明の「被測温体装着装置1」は「外部装置であるリーダ2からの電波を受信して電力を供給され,かかる電力によって測温が行われてその測定結果が電波によって被測温体温度及びIDデータとしてリーダ2に送られるもの」であり,「フィルム状制御基板18の上面にシステムLSIチップ12が搭載され,所定厚の不織布19の上面に前記フィルム状制御基板18が接着され,この所定厚の不織布19にあけられた穴20内側の空気層21に露出する態様でチップサーミスタ22が前記フィルム状制御基板18の裏面に取り付けられ,所定厚の不織布19の裏面には体表面貼り付け用の粘着材23が塗布され,体表面に貼り付けられるもの」であるから,リーダからの電波を受信して起動し,IDデータ等をリーダに送る小型の電子装置といえ,本願発明の「温度測定部を有するICタグ」を備えるものといえる。

エ 引用発明は,「測定結果が電波によって被測温体温度及びIDデータとしてリーダ2に送られるもので,リーダ2はアンテナコイル3に入出力する電波インターフェース7を有するもの」であるから,本願発明の「前記温度測定部により測定された体温情報を読取る読み取り部」を備えるものといえる。

オ 引用発明は,「RAM12cとCPU12eとEEPROM12fを備えて構成され」,また,「フィルム状制御基板18の上面にシステムLSIチップ12が搭載され,所定厚の不織布19の上面に前記フィルム状制御基板18が接着され,この所定厚の不織布19にあけられた穴20内側の空気層21に露出する態様でチップサーミスタ22が前記フィルム状制御基板18の裏面に取り付けられるもの」であるから,小型化でき,ICタグとの一体化が可能である温度センサといえる。
すると,引用発明のこれらの構成と,本願発明の「前記ICタグは,ロジック部を備え,コンピュータで読取り可能な記憶媒体であるRAMと,EEPROMと,小型化でき,かつ前記ICタグとの一体化が可能で,35?42℃の間で温度分解能が0.05℃である半導体型の温度センサであるC-MOS温度センサとを備え」るものとは,「前記ICタグは,ロジック部を備え,コンピュータで読取り可能な記憶媒体であるRAMと,EEPROMと,小型化でき,かつ前記ICタグとの一体化が可能である温度センサとを備え」る点で共通するといえる。

カ 引用発明は,温度検出部14の感温抵抗を検出してこれをデジタル温度の書込データに変換するのであるから,温度検出部14は体温信号をアナログ出力するものといえる。
また,引用発明は,「外部装置であるリーダ2からの電波を受信して電力を供給され,かかる電力によって測温が行われてその測定結果が電波によって被測温体温度及びIDデータとしてリーダ2に送られる被測温体装着装置1であって,フィルムアンテナコイル4に入出力する電波インターフェース13と,CPU12eを備え」るものである。
すると,引用発明のこれらの構成と本願発明の「前記温度センサは,体温信号を,前記35?42℃の間の温度変化に対してほぼリニアにアナログ出力し,前記アナログ出力された前記体温信号は,暗号化処理され,アンテナ部を介して,ICタグ読み取り部から10?60毎に送信される13.56MHzの電磁波に同期して前記ICタグ読み取り部に前記体温信号が取得されるように前記ロジック部で制御され」るものとは,「前記温度センサは,体温信号をアナログ出力し,前記アナログ出力された前記体温信号はアンテナ部を介して,ICタグ読み取り部から送信される電磁波に同期して前記ICタグ読み取り部に前記体温信号が取得されるように前記ロジック部で制御され」る点で共通する。

してみると,本願発明と引用発明とは,
「被検者の体表面の適所に貼りつけて体温測定する体温測定装置であって,
温度測定部を有するICタグと,該体表面への貼付けるための貼付部材と,前記温度測定部により測定された体温情報を読取る読み取り部と,を備え,
前記ICタグは,ロジック部を備え,コンピュータで読取り可能な記憶媒体であるRAMと,EEPROMと,小型化でき,かつ前記ICタグとの一体化が可能である温度センサとを備え,
前記温度センサは,体温信号をアナログ出力し,前記アナログ出力された前記体温信号はアンテナ部を介して,ICタグ読み取り部から送信される電磁波に同期して前記ICタグ読み取り部に前記体温信号が取得されるように前記ロジック部で制御される体温測定装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
温度センサについて,本願発明では「35?42℃の間で温度分解能が0.05℃である半導体型のC-MOS温度センサ」で「体温信号を,前記35?42℃の間の温度変化に対してほぼリニアに出力」するものであるのに対し,引用発明では「チップサーミスタ22」である点。

(相違点2)
本願発明は「該ICタグの該表面を断熱して囲包する囲包部材」を備えるのに対し,引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点3)
本願発明では体温信号が「暗号化処理され」るのに対し,引用発明ではそのような構成を備えていない点。

(相違点4)
本願発明では体温信号が10?60分毎に送信されるのに対し,引用発明では送信のタイミングは明示されていない点。

(相違点5)
送信される電磁波について,本願発明では「13.56MHz」を用いるのに対して,引用発明では無線周波数が不明な点。

(相違点6)
本願発明では「前記体温信号は表示部において,解熱剤の投与のメモ入力情報と併せて体温値のトレンド変化として表示される」のに対し,引用発明ではそのような構成を備えいていない点。

(相違点1について)
刊行物2には,「【0024】…集積回路装置は体温計を構成するもので,センシング回路をなす装置本体1は,感温素子としての抵抗1aを介して直列にリング状に接続した3個のインバータ回路1b,1c,1dと,2段のインバータ回路1b,1cの入出力間に位相差を付与する為のコンデンサ1eとにより構成されたリングオシレータとして実現され」,「【0025】…リングオシレータ(装置本体1)は,その感温素子をなす抵抗1aがCMOSウェルの抵抗として実現される場合,その抵抗値が1℃当たり0.3%(3000ppm)の変化を生じることを利用して,例えば1℃当たり0.3%の発振周波数の変化が生じるように設定される」と記載されているから,刊行物2の「体温計」は「温度変化に対してほぼリニアに出力するC-MOS温度センサ」といえ,一般的な体温計の測定範囲である「35?42℃の間の温度変化に対してほぼリニアに出力」するものとすることに格別の困難性はない。
また,刊行物2には,「【0026】…体温計としては,一般的には34.0?42.0℃の温度測定範囲において,0.01℃?0.1℃の分解能で温度(体温)を計測する必要があり…」と記載され,「【0033】…36.0℃でのリングオシレータの出力を…校正データとして不揮発性メモリ6に記憶しておけば,この校正データを用いて実際の使用環境においてリングオシレータの出力として求められるパルス数が示す計測温度を,簡易にして効果的に補正することが可能となる。」と記載されていることから,刊行物2の「体温計」は,「34.0?42.0℃の間で温度分解能が0.01℃?0.1℃である」といえる。
そして,刊行物1の段落【0044】?【0045】には,引用発明の「チップサーミスタ22」に代えて,温度値を抵抗値に変換する手段として,「温度に比例した電圧出力のICチップ」を用いる点が開示されているところ,温度に比例した電圧出力のICチップである点で共通する刊行物2の「CMOSウェル抵抗」を適用して,「温度変化に対してほぼリニアに出力するC-MOS温度センサ」とし,温度分解能については,刊行物2の記載事項に類似する「35?42℃の間で温度分解能が0.05℃」とすることに格別の困難性はない。
ここで,刊行物2は,発信装置であるリングオシレータとして実現されており,アナログ出力されるものではないが,温度値が抵抗値又は電圧値に変換された物理量をそのままアナログ出力するか,発信回路によって周波数変換することによりA/Dコンバータを介さずに送信できるようにするかは,例えば,刊行物2の段落【0045】?【0046】に記載されているように,当業者が適宜選択し得る設計的事項であるといえ,刊行物2のC-MOSウェル抵抗を「アナログ出力」させるものとして適用することに格別の困難性はない。

(相違点2について)
刊行物3には「測温部位に貼着して体温を測温し,測定データを無線送信する電子体温計において,柔軟で断熱性の被覆部材で,電子体温計の電子部品を被覆して,外部温を有効に遮断し,体表面の正確な温度測定を可能にする」電子体温計が開示されている。
そして,引用発明では,外気温度に影響されず体表面温度を忠実に反映させるために,チップサーミスタ22を外気と遮断された空気層21に露出するように取り付けられているところ,引用発明の電子体温計の電子部品たるチップサーミスタ22とシステムLSIチップを近接して設けるか,基板を挟んで両側に設けるかは,当業者が適宜選択し得る設計的事項であり,両者を近接して設けるものとして,「測温部位に貼着して体温を測定して測定データを無線送信する電子体温計」である点で引用発明と共通する刊行物3の上記開示事項を適用して,「該ICタグの該表面を断熱して囲包する囲包部材」とすることは,当業者が容易になし得たというべきである。

(相違点3について)
ICタグたるRFIDによる無線通信において,暗号化処理を行うことは,例えば,特開2003-144417号公報(【0024】…生体内情報検出部12より出力された体内環境の測定データを二値化したり、フラッシュROM24に記憶されている暗号化IDを用いてデータを暗号化したりする処理を行う。暗号化された生体内情報は、RF送受信部21で変調された後、身体外部の中継装置2に送信される。)に開示されているように周知技術であり,その適用に格別の困難性はない。

(相違点4について)
体温信号の送信タイミングは,例えば,特開平5-269088号公報(【0017】…1時間毎又は30分毎のように予め決められた時間間隔で…検出し,信号処理装置11で体温データとして処理し…RF送信機13で…電波としてアンテナ2から送信する。)に開示されているように,当業者が適宜設定し得る設計的事項であり,10?60分毎とすることに格別の困難性はない。

(相違点5について)
無線通信装置において,13.56MHzの電磁波を用いることは,例えば,特開2004-134981号公報(【0004】…Suicaカードも,13.56MHz帯の電磁波を用いて駅改札での乗車券の読み書きを非接触で行う…【0095】…電磁誘導により情報の伝達とともに電力伝送が可能である。一般に,250kHz以下あるいは13.56MHz帯の長・中波帯の電磁波を利用することが多い…)に開示されているように周知技術であり,その適用に格別の困難性はない。

(相違点6について)
体温信号が表示部において,投薬等のメモ情報と併せて体温値のトレンド変化として表示されるものは,例えば,特許第2706645号公報(段落【0061】,【0079】及び図9に示されるように,表示画面51に,投薬を含む医療行為の表52を表示すると共に,その医療行為に関連する数値データとして体温データを示す折れ線グラフ53が表52の日付けまたは24時間情報を時間軸として表示される点が開示されている。),並びに,特許第3525672号公報(段落【0007】には,時系列でグラフにて記録する体温表の一部として,看護婦所見を時系列に合致した領域に配置して表示することが開示され,また,図13の「熱発 37.5℃ 16°Asp-30mg」の記載は,解熱剤の投与のメモ入力情報を伺わせるものである。)に開示されているように周知技術である。
そして,引用発明は,被測温体である人の温度測定を連続的に行うものであるから,それらのデータを表示する際に,上記周知技術を適用して,体温信号が投薬等のメモ情報と併せて体温値のトレンド変化として表示されるようにすることに格別の困難性はなく,また,体温データと関連して投薬等のメモ情報を表示するのであれば,体温の降下に直接的に影響する解熱剤を含めることは,当業者が容易になし得たというべきである。

したがって,本願発明は,引用発明,刊行物2及び刊行物3の開示事項並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

(効果について)
本願発明の有する効果は,引用発明,刊行物2及び刊行物3の開示事項並びに周知技術から,当業者が予測できる範囲のものであり,格別顕著なものとはいえない。

6 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-04 
結審通知日 2013-10-08 
審決日 2013-10-24 
出願番号 特願2005-333595(P2005-333595)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 貴之渡▲辺▼ 純也多田 達也  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 藤田 年彦
信田 昌男
発明の名称 体温測定装置  
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