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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1282783
審判番号 不服2012-8300  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-08 
確定日 2013-12-12 
事件の表示 特願2007-188797「コンテンツ検索装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月 5日出願公開、特開2009- 26083〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成19年7月19日の出願であって、平成22年2月17日付けで審査請求がなされ、平成23年10月3日付けで拒絶理由通知(同年10月11日発送)がなされ、同年12月9日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、平成24年2月6日付けで拒絶査定(同年2月14日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成24年5月8日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成24年6月21日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、平成25年2月14日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年2月19日発送)がなされ、同年4月9日付けで回答書の提出があったものである。


第2 平成24年5月8日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成24年5月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成24年5月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成23年12月9日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8の記載

「 【請求項1】
1つ以上の文字列に関連する複数のコンテンツが記憶されたコンテンツ記憶手段と、文字列の意味に基づいて定まる文字列同士の上下又は並列関係を示す上下関係情報を含むシソーラスが記憶されたシソーラス記憶手段と、文字列が入力される入力手段と、前記シソーラス記憶手段により記憶された前記シソーラスを用いて、該シソーラスに含まれる文字列同士の関連度を、当該文字列同士の上下又は並列関係を示す前記上下関係情報に応じて定まる数値で示した関連度情報に基づき、前記入力手段により入力された入力文字列と関連する関連文字列を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された関連文字列に関連する前記コンテンツ、及び前記入力文字列に関連する前記コンテンツを前記コンテンツ記憶手段に記憶されたコンテンツから検索する検索手段と、を有するコンテンツ検索装置であって、
複数の文字列、及び該複数の文字列における文字列同士の上下又は並列関係を示す上下関係情報を含む文字列情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された文字列情報より前記上下又は並列関係を抽出して該文字列情報の構造を解析する解析手段と、
前記解析手段による解析結果に基づき、前記取得手段により取得された文字列情報を、前記シソーラス記憶手段に記憶されるシソーラスに反映することで該シソーラスを再構築するシソーラス構築手段と、
を備えたコンテンツ検索装置。
【請求項2】
前記文字列情報は、前記複数の文字列の各々の文字列と該文字列が属するカテゴリとが対応づけられた情報、及び前記カテゴリと該カテゴリが属するカテゴリとが対応づけられた情報を含む所属カテゴリ情報を含む請求項1に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項3】
前記シソーラス構築手段は、前記所属カテゴリ情報により、前記複数の文字列のうちの第1の文字列が属するカテゴリが更に属するカテゴリである上位カテゴリに属する第2の文字列を求め、該第2の文字列を前記第1の文字列の上位語とすることにより、前記シソーラスを再構築する請求項2に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項4】
前記シソーラス構築手段は、前記所属カテゴリ情報により、前記第1の文字列が属するカテゴリに属するカテゴリである下位カテゴリに属する第3の文字列を求め、該第3の文字列を前記第1の文字列の下位語とすることにより、前記シソーラスを再構築する請求項3に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項5】
前記文字列情報は、前記複数の文字列の各々の文字列に関連する情報である記事情報と、前記複数の文字列のうちの第4の文字列に関する記事情報に基づき、前記第4の文字列と前記複数の文字列のうちの第5の文字列を関連づける関連情報とを更に含み、
前記シソーラス構築手段は、前記第4の文字列が前記関連情報に関連づけられた前記第5の文字列を、前記第4の文字列の上位語及び下位語のいずれとも異なる並列語とすることにより、前記シソーラスを再構築する請求項4に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項6】
前記関連度情報を前記シソーラスに基づいて算出する算出手段を更に有し、
前記算出手段は、前記所属カテゴリ情報により、前記第2の文字列が属するカテゴリに属するカテゴリを求め、該カテゴリの数が多いほど、前記第1の文字列と前記第2の文字列との関連度情報が減少するように算出する請求項5に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項7】
前記算出手段は、前記所属カテゴリ情報により、前記第3の文字列が属するカテゴリに属するカテゴリを求め、該カテゴリの数が多いほど、前記第1の文字列と前記第3の文字列との関連度情報が減少するように算出する請求項6に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項8】
前記算出手段は、前記関連情報により、前記第4の文字列と関連づけられた前記第5の文字列以外の文字列の数が多いほど、前記第4の文字列と前記第5の文字列との関連度情報が減少するように算出する請求項6又は請求項7に記載のコンテンツ検索装置。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】
1つ以上の文字列に関連する複数のコンテンツが記憶されたコンテンツ記憶手段と、文字列の意味に基づいて定まる文字列同士の上下又は並列関係を示す上下関係情報を含むシソーラスが記憶されたシソーラス記憶手段と、文字列が入力される入力手段と、前記シソーラス記憶手段により記憶された前記シソーラスを用いて、該シソーラスに含まれる文字列同士の上下又は並列関係を示す前記上下関係情報に応じて定まる数値を関連度情報として当該文字列の組み合わせと共に記憶した関連度テーブルを参照し、前記入力手段により入力された入力文字列に対して所定値以上の関連度を有する文字列を関連文字列として抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された関連文字列に関連する前記コンテンツ、及び前記入力文字列に関連する前記コンテンツを前記コンテンツ記憶手段に記憶されたコンテンツから検索する検索手段と、を有するコンテンツ検索装置であって、
複数の文字列、及び該複数の文字列における文字列同士の上下又は並列関係を示す上下関係情報を含む文字列情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された文字列情報より前記上下又は並列関係を抽出して該文字列情報の構造を解析する解析手段と、
前記解析手段による解析結果に基づき、前記取得手段により取得された文字列情報を、前記シソーラス記憶手段に記憶されるシソーラスに反映することで該シソーラスを再構築するシソーラス構築手段と、
を備えたコンテンツ検索装置。
【請求項2】
前記文字列情報は、前記複数の文字列の各々の文字列と該文字列が属するカテゴリとが対応づけられた情報、及び前記カテゴリと該カテゴリが属するカテゴリとが対応づけられた情報を含む所属カテゴリ情報を含む請求項1に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項3】
前記シソーラス構築手段は、前記所属カテゴリ情報により、前記複数の文字列のうちの第1の文字列が属するカテゴリが更に属するカテゴリである上位カテゴリに属する第2の文字列を求め、該第2の文字列を前記第1の文字列の上位語とすることにより、前記シソーラスを再構築する請求項2に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項4】
前記シソーラス構築手段は、前記所属カテゴリ情報により、前記第1の文字列が属するカテゴリに属するカテゴリである下位カテゴリに属する第3の文字列を求め、該第3の文字列を前記第1の文字列の下位語とすることにより、前記シソーラスを再構築する請求項3に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項5】
前記文字列情報は、前記複数の文字列の各々の文字列に関連する情報である記事情報と、前記複数の文字列のうちの第4の文字列に関する記事情報に基づき、前記第4の文字列と前記複数の文字列のうちの第5の文字列を関連づける関連情報とを更に含み、
前記シソーラス構築手段は、前記第4の文字列が前記関連情報に関連づけられた前記第5の文字列を、前記第4の文字列の上位語及び下位語のいずれとも異なる並列語とすることにより、前記シソーラスを再構築する請求項4に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項6】
前記関連度情報を前記シソーラスに基づいて算出する算出手段を更に有し、
前記算出手段は、前記所属カテゴリ情報により、前記第2の文字列が属するカテゴリに属するカテゴリを求め、該カテゴリの数が多いほど、前記第1の文字列と前記第2の文字列との関連度情報が減少するように算出する請求項5に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項7】
前記算出手段は、前記所属カテゴリ情報により、前記第3の文字列が属するカテゴリに属するカテゴリを求め、該カテゴリの数が多いほど、前記第1の文字列と前記第3の文字列との関連度情報が減少するように算出する請求項6に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項8】
前記算出手段は、前記関連情報により、前記第4の文字列と関連づけられた前記第5の文字列以外の文字列の数が多いほど、前記第4の文字列と前記第5の文字列との関連度情報が減少するように算出する請求項6又は請求項7に記載のコンテンツ検索装置。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正後の請求項」という。)

に補正することを含むものである。

そして、本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である
「前記シソーラス記憶手段により記憶された前記シソーラスを用いて、該シソーラスに含まれる文字列同士の関連度を、当該文字列同士の上下又は並列関係を示す前記上下関係情報に応じて定まる数値で示した関連度情報に基づき、前記入力手段により入力された入力文字列と関連する関連文字列を抽出する抽出手段」を、
「前記シソーラス記憶手段により記憶された前記シソーラスを用いて、該シソーラスに含まれる文字列同士の上下又は並列関係を示す前記上下関係情報に応じて定まる数値を関連度情報として当該文字列の組み合わせと共に記憶した関連度テーブルを参照し、前記入力手段により入力された入力文字列に対して所定値以上の関連度を有する文字列を関連文字列として抽出する抽出手段」に、
限定するものであって、この限定によって、本件補正前後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。

したがって、本件補正の目的は、請求項に記載した発明特定事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの(以下、「限定的減縮」という。)に該当し、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられる事項を目的とするものであると解することができる。

2.独立特許要件

以上のように、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、補正前の請求項1に対して、限定的減縮を行ったものと認められる。そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)補正後の発明

本件補正により、本願補正発明は、前記「1.補正の内容」において、補正後の請求項1として引用した、次の記載のとおりのものである。

「1つ以上の文字列に関連する複数のコンテンツが記憶されたコンテンツ記憶手段と、文字列の意味に基づいて定まる文字列同士の上下又は並列関係を示す上下関係情報を含むシソーラスが記憶されたシソーラス記憶手段と、文字列が入力される入力手段と、前記シソーラス記憶手段により記憶された前記シソーラスを用いて、該シソーラスに含まれる文字列同士の上下又は並列関係を示す前記上下関係情報に応じて定まる数値を関連度情報として当該文字列の組み合わせと共に記憶した関連度テーブルを参照し、前記入力手段により入力された入力文字列に対して所定値以上の関連度を有する文字列を関連文字列として抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された関連文字列に関連する前記コンテンツ、及び前記入力文字列に関連する前記コンテンツを前記コンテンツ記憶手段に記憶されたコンテンツから検索する検索手段と、を有するコンテンツ検索装置であって、
複数の文字列、及び該複数の文字列における文字列同士の上下又は並列関係を示す上下関係情報を含む文字列情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された文字列情報より前記上下又は並列関係を抽出して該文字列情報の構造を解析する解析手段と、
前記解析手段による解析結果に基づき、前記取得手段により取得された文字列情報を、前記シソーラス記憶手段に記憶されるシソーラスに反映することで該シソーラスを再構築するシソーラス構築手段と、
を備えたコンテンツ検索装置。」

(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年10月3日付けの拒絶理由通知において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平10-91645号公報(平成10年4月10日出願公開。以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0007】〈具体例1の構成〉図1は、具体例1の検索フローチャートであり、また、図2は、具体例1の情報検索方法を実現するための情報検索装置のブロック図である。最初に、図2に沿って構成について説明した後に、図1に沿って検索手順について説明する。
【0008】〈情報検索装置の構成〉図2に示すように、この情報検索装置は、表示操作部1、シソーラス・ファイル部2、データベース部3、制御部4から構成されている。表示操作部1は、検索者が所望する情報を検索するのに必要な単語であるキーワードを入力したり、その検索の結果を表示したりする機能を有する。」

B 「【0009】シソーラス・ファイル部2には、複数の単語、単語の絶対重要度、単語同士の遠近度等のデータが格納されている。ここで、「単語」とは、例えば、コンピュータ、IC、真空管、歯車等を始めとする用語である。また、「単語の絶対重要度」とは、その単語の持つ意味や出現頻度等に基づき算定される、その単語の重要性であり、例えば、使用頻度が高い単語「IC」の絶対重要度は、やや使用頻度が低い単語「真空管」の絶対重要度よりも大きくなる。さらに、「単語同士の遠近度」とは、各単語の持つ一般的な意味に基づき算定される、単語同士の結び付きの程度をいい、例えば、単語「コンピュータ」と単語「IC」とは近い一方で、単語「コンピュータ」と単語「歯車」とは遠い等である(以下、距離が近い場合に「遠近度が小さい」といい、距離が遠い場合に「遠近度が大きい」という)。なお、単語同士の遠近度は、電気関係、化学関係等の特定分野において、単語同士が同時に使用されるか否かという共起度にも基づき算定されることが望ましい。例えば、分野を「初期のコンピュータ」に限定した場合に、単語「コンピュータ」と単語「歯車」とは、同時に出現する頻度が高くなる、即ち、共起度が大きくなるので、両単語の遠近度は小さくなる。」

C 「【0010】データベース部3には、学術誌や学界誌等を始めとする文献のデータが、JISコード等のコード形式で格納されている。情報検索において中心的な役割りを担う制御部4は、検出部4A、算出部4B、抽出部4C、検索部4Dから構成されている。検出部4Aは、入力されたキーワードに基づきシソーラス・ファイル部2から関連する単語を検出する。算出部4Bは、後述するように、検出された単語の相対重要度を算出する。抽出部4Cは、検出された単語の中から、一定以上の相対重要度を持つ単語を抽出する。検索部4Dは、データベース部3から、キーワードと抽出された単語を含む文献を検索する。」

D 「【0019】このように、入力されたキーワードに対し近い関係にある単語が、検索に有用であるか否かを決定するという、単語の抽出の段階において、従来の情報検索方法とは異なり、それらの単語自身の絶対重要度を用いずに、その単語に隣接する単語の絶対重要度等から算出した相対重要度を用いている。これにより、従来の情報検索方法では抽出されなかった、周辺に存在する単語との関係で重要であると認定されるべき単語を抽出することが可能となる。その結果、従来の情報検索方法に比べて、検索の意図をより明確にすることができるため、より精度高く情報を検索することができることになる。」

ここで、上記引用文献に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「情報検索装置は・・・データベース部3・・・から構成されている」との記載、上記Cの「データベース部3には、学術誌や学界誌等を始めとする文献のデータが、JISコード等のコード形式で格納されている」との記載からすると、引用文献には、「情報検索装置」が、
“文献のデータがコード形式で格納されているデータベース部”
を有する態様が記載されている。

(イ)上記Aの「情報検索装置は・・・シソーラス・ファイル部2・・・から構成されている」との記載、上記Bの「シソーラス・ファイル部2には、複数の単語、単語の絶対重要度、単語同士の遠近度等のデータが格納されている」との記載からすると、引用文献には、「情報検索装置」が、
“複数の単語、単語の絶対重要度、単語同士の遠近度等のデータが格納されているシソーラス・ファイル部”
を有する態様が記載されている。

(ウ)上記Aの「情報検索装置は、表示操作部1・・・から構成されている」、「表示操作部1は、検索者が所望する情報を検索するのに必要な単語であるキーワードを入力・・・する機能を有する」との記載からすると、引用文献には、「情報検索装置」が、
“キーワードを入力する表示操作部”
を有する態様が記載されている。

(エ)上記Aの「情報検索装置は・・・制御部4から構成されている」との記載、上記Cの「制御部4は、検出部4A、算出部4B、抽出部4C、検索部4Dから構成されている」、「検出部4Aは、入力されたキーワードに基づきシソーラス・ファイル部2から関連する単語を検出する」、「算出部4Bは、後述するように、検出された単語の相対重要度を算出する」、「抽出部4Cは、検出された単語の中から、一定以上の相対重要度を持つ単語を抽出する」、「検索部4Dは、データベース部3から、キーワードと抽出された単語を含む文献を検索する」との記載からすると、引用文献には、「情報検索装置」が、
“入力されたキーワードに基づきシソーラス・ファイル部から関連する単語を検出する検出部”と、
“検出された単語の相対重要度を算出する算出部”と、
“検出された単語の中から一定以上の相対重要度を持つ単語を抽出する抽出部”と、
“データベース部からキーワードと抽出された単語を含む文献を検索する検索部”
を有する態様が記載されている。

以上、(ア)ないし(エ)で指摘した事項を踏まえると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「文献のデータがコード形式で格納されているデータベース部と、複数の単語、単語の絶対重要度、単語同士の遠近度等のデータが格納されているシソーラス・ファイル部と、キーワードを入力する表示操作部と、入力されたキーワードに基づき前記シソーラス・ファイル部から関連する単語を検出する検出部と、前記検出された単語の相対重要度を算出する算出部と、前記検出された単語の中から一定以上の相対重要度を持つ単語を抽出する抽出部と、前記データベース部からキーワードと抽出された単語を含む文献を検索する検索部と、を有する情報検索装置。」

(3)参考文献に記載されている技術的事項

(3-1)参考文献1

本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2007-179490号公報(平成19年7月12日出願公開。以下、「参考文献1」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

E 「【0012】
本発明の他の目的は、シソーラス体系上の複数のファセットに属するキーワードを同時に検索条件として指定することを可能とする点にある。」

F 「【0068】
<本実施形態に係る加点用シソーラスキーワードに基づく第2のスコア算出処理詳細>
キーワード検索スコアリング部22により実行される第2のスコア算出処理は、加点用シソーラスキーワード入力部12に選択入力された加点用シソーラスキーワードと、検索対象の情報資源について予め定義されたスコアリング用シソーラスキーワードとの間の、シソーラスのファセット木構造上における距離を算出し、算出された距離に応じて重み付けされた一致度ないし関連度を数値化してスコアとする。入力される加点用シソーラスキーワードは、例えばディスプレイ装置上選択的に複数表示され得るシソーラスのファセット木構造上で、所望のノードを選択することにより、指定され得る。」

(3-2)参考文献2

上記平成25年2月14日付けの審尋で援用した上記平成24年6月21日付けの前置報告において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2003-108597号公報(平成15年4月11日出願公開。以下、「参考文献2」という。)には、図面(特に、図1及び図9等参照。)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

G 「【0027】検索要求拡張部104は、例えば、検索要求として指定された検索キーワードがオントロジー保持部108のオントロジーの見出しと一致する場合には、その見出しの関連語に関連度に応じた重みを付けて、検索要求として設定する。検索要求拡張部104によって拡張された検索要求は、再び検索要求記憶部102に記憶されるようになっている。
【0028】なお、オントロジー保持部108に格納されるオントロジーの内容、例えば、関係の種類や関連度の算出方法等については種々のものが考えられる。また、オントロジーの表現形式についても、ツリー構造、テーブル形式等自由に設定可能である。」

H 「【0050】図9はオントロジー保持部108内のオントロジーの一例を示している。図9の例では、見出し「パソコン」に対して、「PC」、「コンピュータ」、「コンピューター」が関連語として関連付けられており、関連度がいずれも1であることが示されている。また、図9では、見出し「価格」に対して、「値段」が関連度1の関連語として関連付けられていることが示されている。」

(3-3)参考文献3

上記平成25年2月14日付けの審尋で援用した上記平成24年6月21日付けの前置報告において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平5-324728号公報(平成5年12月7日出願公開。以下、「参考文献3」という。)には、図面(特に、図2参照。)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

J 「【要約】
【目的】 キーワードの関連語が存在する場合はその関連語の入力を不要にし、特にキーワードの関連語が多い情報の検索に際しての操作性を向上させること。
【構成】 関連語辞書からキーワードに関連する関連語を取り出し、その関連語とキーワードとを結合して新たなキーワードを作成し、この新たなキーワードによって情報記憶装置から検索対象の情報を検索する。」

K 「【0011】図2は、関連語処理装置5が持つ関連語辞書6の内容の一例を示す説明図であり、関連語辞書6はキーワード7と関連語8と関連度9から成っている。このうちキーワード7には、入力装置1から入力されるキーワードが格納され、また関連語8には、そのキーワードに関連する語が格納される。この場合、図示のように、「フロッピー」といった1つのキーワードに対し、「FD」、「ディスク」などといった複数の関連語がある場合は、キーワード7と関連語8と関連度9を一組として関連語の数だけ格納される。
【0012】関連度9は、キーワード7と関連語8の関連度を0から100の範囲で表現したもので、関連語辞書6の作成者が主観で決定した値であり、値が大きい程関連度が大きいことを示している。」

(3-4)参考文献4

上記平成25年2月14日付けの審尋で援用した上記平成24年6月21日付けの前置報告において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2006-309377号公報(平成18年11月9日出願公開。以下、「参考文献4」という。)には、図面(特に、図5参照。)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

L 「【要約】
【課題】 関連語辞書のデータベースを自動的に作成できる文書検索装置であって、従来よりも検索文に含まれる単語の関連語をより精度良く検出することで、さらなる文書検索の精度を上げることができる文書検索装置を提供する。
【解決手段】 検索文とその検索文内の単語を関連語に置き換えた検索文とにより、検索対象文書をベクトル検索する。そして、検索結果において、選択された件名に含まれる単語と、検索文に含まれる単語とを用いて関連語辞書のデータベースを自動生成する。」

M 「【0021】
図5は、関連語辞書DBの記憶するデータの構成を示す図である。
この図が示すように、関連語辞書DB106は、検索文に含まれる単語(被関連語)とその単語に関連する単語(関連語)と、それら単語の組合せにおける関連の強さを示す関連度a(0≦a≦1)とを対応付けて記憶する。なお、文書検索サーバ1は、後述の処理により関連語辞書DB106に記憶する被関連語と関連語の組合せについて、検索文が入力される度に、増加するか否かの判定処理や、増加、減少の処理を行う。また関連度aについても増加または減算する処理を行う。これにより、自動的に関連語辞書DB106の生成を行って管理者の労力を軽減し、また関連語辞書DB106の記憶する情報に基づいて、精度良い検索結果を出力する処理を行う。」

(3-5)参考文献5

本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2006-344010号公報(平成18年12月21日出願公開。以下、「参考文献5」という。)には、図面(特に、図6等参照。)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

N 「【0036】
これまでは、検索キーワードを含む文書を検索した場合の文書表示について説明したが、次に、検索キーワードをシソーラス展開して得た検索キーワードの関連語を含む文書を検索した場合の文書表示について図5を用いて説明する。
なお、シソーラス辞書手段2は、語に関連する関連語と、当該関連する度合いを示す関連度が設定されており、図6に例示するように、語「カラー」に関連度「0.4」で関連する関連語「プリンタ」と、語「カラー」に関連度「0.3」で関連する関連語「コピー」と、語「カラー」に関連度「0.8」で関連する関連語「色」とが設定されている。」

(3-6)参考文献6

上記平成24年2月6日付けの原審の拒絶査定において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2000-99515号公報(平成12年4月7日出願公開。以下、「参考文献6」という。)には、図面(特に、図3等参照。)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

P 「【要約】
【課題】 テキストの意味把握に利用される意味属性辞書を自動的に作成・構築する。
【解決手段】 インターネット上からタグ付き文書を収集する手段111と、タグ付き文書のタグのパターンとそのパターンに対応した文字列の意味階層構造を記述した構造変換ルールデータベース120と、該構造変換ルールデータベースを参照して、前記収集したタグ付き文書から各文字列の階層構造を抽出する手段112と、単語間の係り受けルールを記述した文法解析ルールデータベース130と、該文法解析ルールデータベースを参照して、前記階層構造の抽出された各文字列を単語に分割し、単語ごとの意味階層関係を辞書(意味属性辞書)140に記述する手段113とを設ける。」

Q 「【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、インターネット上のHTML文書などのタグ付き文書を利用して、意味属性辞書を自動で作成・構築することが可能であり、該辞書の作成コストを削減できる。また、定期的にHTML文書等を収集して、作成処理を繰り返し、辞書を自動的に更新することで、意味属性辞書の情報が古くなるのを防止できる。」

(3-7)参考文献7

本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平10-254883号公報(平成10年9月25日出願公開。以下、「参考文献7」という。)には、図面(特に、図27等参照。)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

R 「【0031】関連度演算部6は、分類の基準を学習する際において、分類済み文書記憶部1に記憶された各分類済み文書の文書分類先テーブル52の情報と、分類済み文書単語分割/頻度情報記憶部4に記憶された頻度情報とに基づき、各分野ごとに出現単語の頻度を集計し、この頻度集計の結果に基づき各単語と各分野との関連度を計算する。頻度集計結果及び各単語と各分野との関連度は、それぞれ頻度集計テーブル53及び関連度テーブル54として関連度情報記憶部7に記憶される。」

S 「【0123】この実施の形態2のシステムの構成を図27に示す。図27において、図1と同様の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。図27から分かるように、この実施の形態2の各構成要素は、シソーラス利用型複数分野語処理部21とシソーラス22以外は、図1の構成要素と同一である。シソーラス22には、各単語の意味概念の階層関係の情報を格納している。例えばシソーラス22は、単語「テニス」の上位概念として単語「球技」があり、単語「球技」の上位概念として単語「スポーツ」があるなど、各単語の階層的な上下関係の情報を記憶している。シソーラス利用型複数分野語処理部21は、図1(実施の形態1)における複数分野語処理部8に対応するものであり、基本的な処理動作は共通している。ただし、シソーラス利用型複数分野語処理部21は、共起ベクトルや文書共起ベクトルを作成する際に、このシソーラス22を利用して各共起単語の上位概念語を抽出し、この上位概念語をそれらベクトルに反映させる点が、図1の複数分野語処理部8と異なる。」

T 「実施の形態2のシステム構成図である」図27から、“関連度テーブルが記憶される「関連度情報記憶部7」と「シソーラス22」が別の記憶部に記憶される態様”が読み取れる。

(4)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(4-1)引用発明の「文献のデータ」は、上記Cの「学術誌や学会誌等を初めとする文献のデータ」との記載から、複数あることは明らかであるから、本願補正発明の「複数のコンテンツ」に相当する。また、引用発明の「文献のデータがコード形式で格納されている」との記載から、引用発明の「文献のデータ」も、1つ以上の文字列に関連するものであることは明らかである。
してみると、引用発明の「文献のデータがコード形式で格納されているデータベース部」は、本願補正発明の「1つ以上の文字列に関連する複数のコンテンツが記憶されたコンテンツ記憶手段」に相当するといえる。

(4-2)引用発明の「複数の単語、単語の絶対重要度、単語同士の遠近度等のデータが格納されているシソーラス・ファイル部」と、本願補正発明の「文字列の意味に基づいて定まる文字列同士の上下又は並列関係を示す上下関係情報を含むシソーラスが記憶されたシソーラス記憶手段」とは、“シソーラスが記憶されたシソーラス記憶手段”である点で共通する。

(4-3)引用発明の「(入力された)キーワード」は、本願補正発明の「(入力)文字列」に相当する。
してみると、引用発明の「キーワードを入力する表示操作部」は、本願補正発明の「文字列が入力される入力手段」に相当する。

(4-4)引用発明の「(シソーラス・ファイル部から検出された)単語」及び「(一定以上の相対重要度を持つ)単語」は、それぞれ、本願補正発明の「(シソーラスに含まれる)文字列」及び「(所定値以上の関連度を有する)文字列」に相当する。
ここで、引用発明の「相対重要度」とは、上記Dの「入力されたキーワードに対し近い関係にある単語が、検索に有用であるか否かを決定する・・・その単語に隣接する単語の絶対重要度等から算出した相対重要度を用いている・・・周辺に存在する単語との関係で重要であると認定されるべき単語を抽出することが可能となる」との記載等からすると、入力されたキーワードとシソーラス・ファイル部に含まれる単語がどのくらい近い関係にあるかを示す尺度に他ならず、本願補正発明の「関連度」に相当するといえる。
そうすると、引用発明の「入力されたキーワードに基づき前記シソーラス・ファイル部から関連する単語を検出する検出部と、前記検出された単語の相対重要度を算出する算出部と、前記検出された単語の中から一定以上の相対重要度を持つ単語を抽出する抽出部」とは、シソーラス・ファイル部により格納されたシソーラスを用いて、前記シソーラス・ファイル部に含まれる単語と表示操作部により入力されたキーワードとの関連度が所定値以上の単語を抽出することに他ならない。また、本願補正発明の「前記シソーラス記憶手段により記憶された前記シソーラスを用いて、該シソーラスに含まれる文字列同士の上下又は並列関係を示す前記上下関係情報に応じて定まる数値を関連度情報として当該文字列の組み合わせと共に記憶した関連度テーブルを参照し、前記入力手段により入力された入力文字列に対して所定値以上の関連度を有する文字列を関連文字列として抽出する抽出手段」とは、シソーラス記憶手段により記憶されたシソーラスを用いて、前記シソーラス記憶手段に含まれる文字列と入力手段による入力された入力文字列との関連度が所定値以上の文字列を抽出することに他ならない。
してみると、引用発明の「入力されたキーワードに基づき前記シソーラス・ファイル部から関連する単語を検出する検出部と、前記検出された単語の相対重要度を算出する算出部と、前記検出された単語の中から一定以上の相対重要度を持つ単語を抽出する抽出部」と、本願補正発明の「前記シソーラス記憶手段により記憶された前記シソーラスを用いて、該シソーラスに含まれる文字列同士の上下又は並列関係を示す前記上下関係情報に応じて定まる数値を関連度情報として当該文字列の組み合わせと共に記憶した関連度テーブルを参照し、前記入力手段により入力された入力文字列に対して所定値以上の関連度を有する文字列を関連文字列として抽出する抽出手段」とは、“シソーラス記憶手段により記憶されたシソーラスを用いて、前記シソーラス記憶手段に含まれる文字列と入力手段により入力された入力文字列との関連度が所定値以上の文字列を関連文字列として抽出する抽出手段”である点で共通するといえる。

(4-5)引用発明の「データベース部からキーワードと抽出された単語を含む文献を検索する検索部」とは、抽出手段により抽出された単語に関連する文献のデータ、及び入力されたキーワードに関連する文献のデータをデータベース部に記憶された文献のデータから検索する検索部に他ならない。
してみると、引用発明の「前記データベース部からキーワードと抽出された単語を含む文献を検索する検索部」は、本願補正発明の「前記抽出手段により抽出された関連文字列に関連する前記コンテンツ、及び前記入力文字列に関連する前記コンテンツを前記コンテンツ記憶手段に記憶されたコンテンツから検索する検索手段」に相当する。

(4-6)引用発明の「情報検索装置」は、入力されたキーワードに関連する文献のデータを検索するものであることから、本願補正発明の「コンテンツ検索装置」に相当するといえる。

以上から、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

1つ以上の文字列に関連する複数のコンテンツが記憶されたコンテンツ記憶手段と、シソーラスが記憶されたシソーラス記憶手段と、文字列が入力される入力手段と、前記シソーラス記憶手段により記憶された前記シソーラスを用いて、前記シソーラス記憶手段に含まれる文字列と入力手段により入力された入力文字列との関連度が所定値以上の文字列を関連文字列として抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された関連文字列に関連する前記コンテンツ、及び前記入力文字列に関連する前記コンテンツを前記コンテンツ記憶手段に記憶されたコンテンツから検索する検索手段と、を有することを特徴とするコンテンツ検索装置。

(相違点1)

シソーラス記憶手段に記憶するシソーラスに関して、本願補正発明が、「文字列の意味に基づいて定まる文字列同士の上下又は並列関係を示す上下関係情報を含む」ものであるのに対して、引用発明は、「複数の単語、単語の絶対重要度、単語同士の遠近度等のデータ」が、単語同士の上下関係情報を含むものであるか不明である点。

(相違点2)

抽出部に関して、本願補正発明が、「シソーラスに含まれる文字列同士の上下又は並列関係を示す前記上下関係情報に応じて定まる数値を関連度情報として当該文字列の組み合わせと共に記憶した関連度テーブルを参照し」て、「所定値以上の関連度を有する文字列」を抽出するものであるのに対して、引用発明は、「単語の相対重要度を算出」して、「一定以上の相対重要度を持つ単語」を抽出する点。

(相違点3)

本願補正発明が、「複数の文字列、及び該複数の文字列における文字列同士の上下又は並列関係を示す上下関係情報を含む文字列情報を取得する取得手段」と、「前記取得手段により取得された文字列情報より前記上下又は並列関係を抽出して該文字列情報の構造を解析する解析手段」と、「前記解析手段による解析結果に基づき、前記取得手段により取得された文字列情報を、前記シソーラス記憶手段に記憶されるシソーラスに反映することで該シソーラスを再構築するシソーラス構築手段」を備えることで、シソーラスを再構築できるのに対して、引用発明は、シソーラスを再構築する手段を備えていない点。

(5)当審の判断

上記相違点1ないし相違点3について検討する。

(5-1)相違点1について

シソーラスを木構造を用いて表現することは、従来から当業者が普通に採用している周知慣用技術に他ならない(必要であれば、上記参考文献1の上記F等参照。)。
してみると、引用発明においても、当該周知技術を採用し、複数の単語同士の関係を木構造を用いて、上下又は並列関係を示す上下関係情報を有するように構成すること、すなわち、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点1は格別なものではない。

(5-2)相違点2について

検索の技術分野において、検索に際して、予め作成して記憶してある関連度テーブルを参照して、入力された検索キーワードに関連する関連語を抽出する技術は、従来から当業者が普通に採用している周知慣用技術(必要であれば、上記参考文献2の上記G及び上記H、上記参考文献3の上記J及び上記K、上記参考文献4の上記L及び上記M、上記参考文献5の上記N等参照。)である。
また、シソーラスの木構造におけるキーワード間の関連度を、当該キーワード間の木構造上の距離に応じて数値化(本願補正発明の「上下関係情報に応じて定まる数値」に相当)してスコアとし、当該スコアによって検索対象のキーワードを抽出する技術についても、周知技術(必要であれば、上記参考文献1の上記E及び上記F等参照。)にすぎない。
そして、引用発明の「相対重要度」は、上記(4-4)で検討したとおり、入力されたキーワードとシソーラス・ファイル部に含まれる単語がどのくらい近い関係にあるかを示す尺度に他ならず、本願補正発明の「関連度」に相当するものである。
してみると、引用発明においても、当該周知技術等を採用し、シソーラス・ファイル部に含まれる単語間の「相対重要度」を数値化して、関連度テーブルとして当該単語と共に記憶しておき、検索に際して、当該関連度テーブルを参照して、入力されたキーワードと所定値以上の関連度を持つ単語を抽出するように構成すること、すなわち、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点2は格別なものではない。

(5-3)相違点3について

一般に、情報が古くなるのを防ぐために、辞書を更新するようにすることは、周知文献等を提示するまでもなく、当業者が普通に採用している周知慣用技術にすぎない。
そして、取得した文字列情報の構造を解析し、シソーラスを再構成する技術は、当該技術分野における周知技術(必要であれば、上記参考文献6の上記P及び上記Q等参照。)である。
してみると、引用発明においても、当該周知技術を採用し、シソーラス・ファイル部に格納されているシソーラス情報を再構築するように構成すること、すなわち、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点3は格別なものではない。

(5-4)小括

上記で検討したごとく、相違点1ないし相違点3は格別のものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.むすび

以上のように、本件補正は、上記「2.独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求の成否について

1.本願発明の認定

平成24年5月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年12月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「1つ以上の文字列に関連する複数のコンテンツが記憶されたコンテンツ記憶手段と、文字列の意味に基づいて定まる文字列同士の上下又は並列関係を示す上下関係情報を含むシソーラスが記憶されたシソーラス記憶手段と、文字列が入力される入力手段と、前記シソーラス記憶手段により記憶された前記シソーラスを用いて、該シソーラスに含まれる文字列同士の関連度を、当該文字列同士の上下又は並列関係を示す前記上下関係情報に応じて定まる数値で示した関連度情報に基づき、前記入力手段により入力された入力文字列と関連する関連文字列を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された関連文字列に関連する前記コンテンツ、及び前記入力文字列に関連する前記コンテンツを前記コンテンツ記憶手段に記憶されたコンテンツから検索する検索手段と、を有するコンテンツ検索装置であって、
複数の文字列、及び該複数の文字列における文字列同士の上下又は並列関係を示す上下関係情報を含む文字列情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された文字列情報より前記上下又は並列関係を抽出して該文字列情報の構造を解析する解析手段と、
前記解析手段による解析結果に基づき、前記取得手段により取得された文字列情報を、前記シソーラス記憶手段に記憶されるシソーラスに反映することで該シソーラスを再構築するシソーラス構築手段と、
を備えたコンテンツ検索装置。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成24年5月8日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成24年5月8日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」で検討した本願補正発明における「前記シソーラス記憶手段により記憶された前記シソーラスを用いて、該シソーラスに含まれる文字列同士の上下又は並列関係を示す前記上下関係情報に応じて定まる数値を関連度情報として当該文字列の組み合わせと共に記憶した関連度テーブルを参照し、前記入力手段により入力された入力文字列に対して所定値以上の関連度を有する文字列を関連文字列として抽出する抽出手段」の下線部の限定を省き、「前記シソーラス記憶手段により記憶された前記シソーラスを用いて、該シソーラスに含まれる文字列同士の関連度を、当該文字列同士の上下又は並列関係を示す前記上下関係情報に応じて定まる数値で示した関連度情報に基づき、前記入力手段により入力された入力文字列と関連する関連文字列を抽出する抽出手段」としたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記「第2 平成24年5月8日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(3)参考文献に記載されている技術的事項」ないし「(5)当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.回答書における主張について

なお、請求人は、前記回答書において、

『本願の請求項1に係るコンテンツ検索装置では、関連度テーブルとは別に、シソーラスを記憶したシソーラス記憶部を有しており、関連度テーブルには、該シソーラスに含まれる文字列および該文字列同士の関連度が記憶されます。このように、関連度テーブルとシソーラス記憶部の双方を備えた本願の請求項1に係るコンテンツ検索装置の構成は、引用文献1?7のいずれにも記載されておりません。
・・・(中略)・・・
以上のように、引用文献1?7には、関連度デーブルとシソーラス記憶部との双方を備えた本願発明に係る構成が記載されておらず、関連度テーブルとシソーラス記憶部との双方を備えることに対する動機付けもないので、引用文献1?7に記載された発明を知り得たと当業者といえども、本願の請求項1に記載された発明に容易に想到することができたとはいえないものと存じます。』

と主張しているが、関連度テーブルとシソーラス記憶部との双方を備えた構成は、周知技術(必要であれば、上記参考文献7の上記Rないし上記T等参照。)にすぎず、これを引用発明に適用することも、当業者が適宜に採用し得る設計事項にすぎないものである。

5.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-09 
結審通知日 2013-10-15 
審決日 2013-10-28 
出願番号 特願2007-188797(P2007-188797)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 和樹  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 田中 秀人
浜岸 広明
発明の名称 コンテンツ検索装置  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  
代理人 福田 浩志  

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