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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A62C
管理番号 1282826
審判番号 不服2012-24164  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-06 
確定日 2013-12-12 
事件の表示 特願2008-233042「消火栓装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月25日出願公開、特開2010- 63658〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本件出願は、平成20年9月11日の出願であって、平成24年6月11日付けで拒絶理由が通知され、平成24年8月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年9月6日付けで拒絶査定がなされ、平成24年12月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
したがって、本件出願の請求項1ないし4に係る発明は、平成24年8月16日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
筐体前面の消火栓扉を開いてホース収納部に内巻き状態で収納したノズル付きホースを引き出して放水する消火栓装置に於いて、
前記ホース収納部の、前記収納されたホースの最外周部と接触する部位に、前記ホース最外周部と前記ホース収納部との滑りを防止する摩擦部材を設けたことを特徴とする消火栓装置。」

2.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由において引用された、本件出願前に頒布された刊行物である特開2005-318972号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア.「【0018】
図1は本発明による消火栓装置の正面図である。図1において、消火栓装置1の筐体2の前面には消火栓扉4と消火器扉5が設けられている。消火栓扉4の内部には、後の説明で明らかにするように、先端にノズルを装着したホースを筐体内に内巻きして収納しており、消火栓扉4を開いてノズルを引き出し、扉内に設けている消火栓弁開閉レバーを操作することで消火ポンプ設備を起動して放水を行うことができる。」(段落【0018】)

イ.「【0022】
支持アーム7は上部で筐体に固定支持されたU字形であり、パイプ部材を使用している。この支持アーム7には、ほぼ中央外側から横及び背後に矩形に形成され上下に開口したホース収納枠8が装着され、筐体2内にホース9が内巻きした状態で収納されている。なお、支持アーム7には、後の説明で明かにするように、更に、上枠と下枠が上下の収納枠として装着されている。」(段落【0022】)

ウ.「【0040】
このようなホース収納枠8と支持アーム7からなるホース収納ユニット100にあっては、図3、図4のように消火栓扉4を開いてノズル14の付いたホース9を引き出して放水が終了した後に、ホース9をホース収納ユニット100に内巻き状態で巻き戻す際には、支持アーム7を上方に押し上げて手前に引くことで、筐体2側に固定されているホース収納枠8から取り外すことができ、支持アーム7を取り外した分、ホース収納枠8の開口部が広くなり、ホース収納枠8に対するホースを内巻きで戻す作業を容易に行うことができる。」(段落【0040】)

エ.「【0041】
図7はホース収納ユニットを筐体に対し着脱自在とした本発明の実施形態を示した説明図である。図7において、この実施形態においてホース収納ユニット100は、支持アーム7に対し一対のホース収納枠8、上枠21及び下枠22を溶接などにより固定して一体化しており、ホース収納枠8の側面の筐体2側には上下に分けて切欠23が形成されている。」(段落【0041】)

オ.「【0050】
図10はホース収納枠に着脱自在なホース内巻ガイドの説明図である。図10においてホース収納ユニット100に対し、この実施形態にあっては、ホース収納枠8の側面上部にホース内巻ガイド28を着脱自在に設けている。
【0051】
ホース内巻ガイド28はホース収納枠8の内側に位置して横方向に円弧状の端面を持つ波板からなるガイドプレート29を備え、ガイドプレート29の両端背後に係止片30を設けている。このためホース収納枠100に引き出したホースを内巻きする際には、ホース収納枠8に図示のようにホースガイド28をセットし、ホースガイド28におけるガイドプレート29の波形の溝に合わせてホースを内巻きすることで、内巻き作業における最初の第一列の内巻きについてホースを均一に巻き付けることができる。
【0052】
このように第一列の内巻きが均一にできると、二列以降の内巻きが一列目のホースの間に位置するように巻かれることから、それ以降についても均一に巻くことができ、ホース内巻き作業で途中でホースが不均一となって崩れたり、見栄えが悪くなることを防止できる。
【0053】
なおホース内巻ガイド28は、ホースの内巻き第一列の巻き付けが終了した後、あるいはホース内巻き作業が終了した後に、ホース収納ユニット100から取り外すことになる。このためホース内巻ガイド28は、ホース内巻き作業における治具として使用されることとなり、消火栓装置ごとに設ける必要がない分だけ、コスト的に安価にできる。」(段落【0050】ないし【0053】)

カ.「【0054】
図11はホース収納枠に固定設置したホース内巻ガイドの説明図である。図11において、ホース収納ユニット100におけるホース収納枠8の側壁の内側には、ホース巻き方向に円弧状に波溝を形成したホース内巻ガイド31が固定されている。このホース内巻ガイド31がホース収納枠8に設けられていることで、ホース巻込みの際の第一列の内巻きをホース内巻ガイド31の溝に沿ってできるため、ホースの内巻きを均一にでき、二列目以降が一列目の均一さに依存することから、全体として均一なホース内巻きが実現できる。」(段落【0054】)

(2)ここで、上記(1)ア.ないしカ.及び図面から、次のことが分かる。
サ.上記(1)ア.及びウ.並びに図2ないし4から、消火栓装置1は、筐体2の前面の消火栓扉4を開いてホース収納ユニット100に内巻き状態で収納したノズル14の付いたホース9を引き出して放水するものであることが分かる。

シ.上記(1)イ.ないしカ.並びに図3及び11から、ホース収納ユニット100の、収納されたホース9の最外周部と接触する部位に、円弧状の波溝を形成したホース内巻ガイド31を設けることが分かる。

(3)引用文献記載の発明
上記(1)及び(2)より、引用文献には、次の発明が記載されている。
「筐体2前面の消火栓扉4を開いてホース収納ユニット100に内巻き状態で収納したノズル14の付いたホース9を引き出して放水する消火栓装置1に於いて、
前記ホース収納ユニット100の、ホース収納枠8に、円弧状の波溝を形成したホース内巻ガイド31を設けた消火栓装置1。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

3.対比
本願発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「筐体2」、「消火栓扉4」、「ホース収納ユニット100」、「ノズル14の付いたホース9」及び「消火栓装置1」は、それぞれの技術的意義及び機能からみて、本願発明における「筐体」、「消火栓扉」、「ホース収納部」、「ノズル付きホース」及び「消火栓装置」に、それぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における「ホース収納枠8」は、上記2(1)オ.で摘記した「ホースガイド28におけるガイドプレート29の波形の溝に合わせてホースを内巻きすることで、内巻き作業における最初の第一列の内巻きについてホースを均一に巻き付けることができる。」という事項及び図3の記載からみて、収納されたホース9の内巻きの第1列が接触するところであることは明らかであるから、本願発明における「収納されたホースの最外周部と接触する部位」に相当する。
さらに、引用文献記載の発明における「円弧状の波溝を形成したホース内巻ガイド31」は、上記2(1)オ.で摘記した「ホース内巻き作業で途中でホースが不均一となって崩れたり、見栄えが悪くなることを防止できる。」という事項からみて、「ホース最外周部」が「ホース収納部」から崩れることを防止する機能、すなわち、ホース最外周部とホース収納部との滑りを防止する機能を有することは自明であるから、引用文献記載の発明における「円弧状の波溝を形成したホース内巻ガイド31」は、「ホース最外周部とホース収納部との滑りを防止する滑り防止部材」という限りにおいて、本願発明における「ホース最外周部とホース収納部との滑りを防止する摩擦部材」に相当する。

したがって、本願発明と引用文献記載の発明は、
「筐体前面の消火栓扉を開いてホース収納部に内巻き状態で収納したノズル付きホースを引き出して放水する消火栓装置に於いて、
前記ホース収納部の、前記収納されたホースの最外周部と接触する部位に、前記ホース最外周部と前記ホース収納部との滑りを防止する滑り防止部材を設けた消火栓装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
ホース最外周部と前記ホース収納部との滑りを防止する「滑り防止部材」が、本願発明においては、「摩擦部材」であるのに対し、引用文献記載の発明においては、「円弧状の波溝を形成したホース内巻ガイド31」である点(以下、「相違点」という。)。

4.判断
消火栓装置において、ホースが収納部から必要以上に繰り出されることを防止するために、ホースが接触する部位にゴム等の「摩擦部材」を設けることは周知の技術である(例えば、.特開2007-330713号公報の段落【0052】及び特開2001-246008号公報の段落【0016】等参照のこと。以下、「周知技術1」という。)。
また、滑り防止部材としてのゴム等の摩擦部材を「収納部」において用いることは周知の技術である(例えば、.特開2003-79461号公報の段落【0002】及び図1並びに特開平8-173261号公報の段落【0012】及び図2等参照のこと。以下、「周知技術2」という。)。
そうすると、引用文献記載の発明に周知技術2を参酌しつつ周知技術1を適用することにより、引用文献記載の発明におけるホース収納部に設けられた「円弧状の波溝を形成したホース内巻ガイド31」に代えて「摩擦部材」を採用して、相違点に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明は、全体でみても、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するとも認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-26 
結審通知日 2013-10-01 
審決日 2013-10-25 
出願番号 特願2008-233042(P2008-233042)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A62C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 達也  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 加藤 友也
中川 隆司
発明の名称 消火栓装置  
代理人 竹内 進  

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