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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1282847
審判番号 不服2013-16491  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-27 
確定日 2014-01-09 
事件の表示 特願2009- 77290「吸着盤」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月14日出願公開、特開2010-232359、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯と本件発明
本願は平成21年3月26日の出願であって、平成24年10月9日付拒絶理由通知に対し、平成24年12月5日に意見書と手続補正書が提出されたが、平成25年5月24日付で拒絶査定がなされたものであり、本件審判は、平成25年8月27日に該査定の取消を求めて請求されたものである。
本願の請求項1に係る発明は、平成24年12月5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおり、次のものと認める。
「 【請求項1】
複数の金属板を接合して形成される吸着盤であって、前記金属板のいずれも外周部に空隙を有さず、前記金属板のうち、表面が吸着面として機能する金属板の縁付近には、縁の寸前まで縁に向かって延びる直線状のスリットが縁の全周にわたって多数形成されており、各スリットは、表面が吸着面として機能する金属板を厚さ方向に貫通してその他の金属板に形成された吸気のための穴と連通し、ワークを真空吸着し得る吸着盤。」(以下、「本件発明」という。)

2.原査定の拒絶理由の概要
原審の平成25年5月24日付拒絶査定の理由は、概略、本願の請求項1に係る発明が、本願の出願前に頒布された、以下の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
刊行物1: 特開2008-119758号公報
刊行物2: 特表2003-508893号公報
刊行物3: 特開平11-315837号公報
刊行物4: 特開平1-293628号公報
刊行物5: 特開2007-142220号公報
刊行物6: 特開2007-242655号公報

3.刊行物に記載された発明または事項
3.1 刊行物1には、以下の記載が認められる。
a.「【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、ガラス、シリコンウエハ、樹脂、セラミック又は紙などからなるシート状のもの(以下「ワーク」という。)を吸着保持し得る吸着盤に関するものである。」
b.「【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の吸着盤を提供する。
1.複数の金属板を接合して構成される吸着盤であって、
前記金属板同士が、拡散接合法により、互いの原子の相互拡散により固相のまま接合され、
前記金属板には、吸着面を有するとともに、該吸着面に開口する、厚さ方向に貫通する孔部を有する第1金属板と、渦巻き状に連続し、厚さ方向に貫通する穴からなり、吸引源に接続された吸引管が接続される吸引口と連通する第1空洞部を有する第2金属板と、厚さ方向に貫通する穴からなり、前記孔部と前記第1空洞部とを連通させる第2空洞部を有する第3金属板とが含まれることを特徴とする吸着盤。
2.前記第1金属板の周面に突出部が設けられ、該突出部に前記吸引口が設けられていることを特徴とする前記1記載の吸着盤。
3.前記第2金属板に、前記吸引口が設けられていることを特徴とする前記1記載の吸着盤。
4.前記第1金属板により最上層及び最下層が構成されることを特徴とする前記1記載の吸着盤。
5.前記孔部、第1空洞部、第2空洞部及び吸引口から構成される一連の吸引構造を複数有するとともに、各吸引構造が独立していることを特徴とする前記1記載の吸着盤。」
c.「【実施例1】
【0008】
図1は、本発明の実施例1に係る吸着盤の構造を示す分解斜視図である。この図に示したように、本実施例に係る吸着盤は、複数の金属板が接合されて構成される。ここで、複数の金属板には、第1金属板1、第2金属板2及び第3金属板3が含まれる。また、これらの金属板同士は、拡散接合法により、互いの原子の相互拡散により固相のまま接合される。
【0009】
第1金属板1は、吸着面aを有するとともに、該吸着面aに開口する、厚さ方向に貫通する孔部bを有して構成される。ここで、吸着面aとは、ワーク7が接触し吸着される面をいい、本実施例では、第1金属板1の下面が吸着面aとなる。ワーク7としては、シート状のものが典型例として挙げられるが、これに限定されるものではなく、例えば、ブロック状のものであってもよい。孔部bの数量、大きさ及び配置は、任意に設定し得る。本実施例における孔部bは、図1に示したように、一定の直径を有し、放射状に多数点在するように設けられている。孔部bは、機械加工により形成されたものであってもよいが、孔部bの加工方法としては、エッチングを採用することが好ましい。エッチングによれば、孔部bの形状、配置及び大きさを自由に設定でき、しかも加工が容易である。
【0010】
第2金属板2は、渦巻き状に連続し、厚さ方向に貫通する穴からなる第1空洞部cを有して構成される。第1空洞部cは、ポンプなどから構成される吸引源に接続された吸引管9が接続される吸引口fと連通する。第1空洞部cは、孔部bと同様に、エッチングにより形成されることが好ましい。
【0011】
第3金属板3は、厚さ方向に貫通する穴からなる第2空洞部dを有して構成される。第2空洞部dは、第1金属板1に形成される孔部bと第2金属板2に形成される第1空洞部cとを連通させるように形成される。第2空洞部dは、孔部bと同様に、エッチングにより形成されることが好ましい。
【0012】
本実施例に係る吸着盤は、さらに第4金属板4を有して構成される。第4金属板4は、第2金属板2に形成された第1空洞部cの開口部を閉塞する働きをするものである。本実施例では、第4金属板4の周面に突出部eが設けられ、該突出部eに、厚さ方向に貫通する穴からなる吸引口fが設けられている。吸引口fは、第2金属板2の周面に設けられた突出部eに存する第1空洞部cの一端に連通する。そして、第2金属板2の下面側に開口する第1空洞部cの一端の開口部は、第3金属板3の周面に設けられた突出部eによって閉塞される。
【0013】
図2は、第1乃至第4金属板1?4を重ね合わせた状態を示す部分断面図である。この図に示したように、本実施例では、第4金属板4が最上層を構成し、第2金属板2及び第3金属板3が中間層を構成し、第1金属板1が最下層を構成するように、第1乃至第4金属板1?4が上記の拡散接合法により接合される。そして、第2金属板2に形成された第1空洞部cが吸引口fと連通し、さらに第1金属板1に形成されたすべての孔部bが、第3金属板3に形成された第2空洞部dを介して第1空洞部cに連通している。したがって、図3に示したように、吸引口fに吸引管9を接続して、吸着盤に内在する空気を直接吸引することができる。また、1つの吸引口fから空気を吸引することによって、第1金属板1の吸着面aに均一な吸着力を作用させることができる。
【0014】
また、本実施例によれば、第1乃至第4金属板1?4が、拡散接合法により、互いの原子の相互拡散により固相のまま接合され、しかも第1乃至第3金属板1?3における孔部b、第1空洞部c及び第2空洞部d以外の部分が互いに面接触で接合される構造であるため、変形や歪みが生じ難く、ワーク7に接触する第1金属板1の吸着面aの平面度を良好なものにすることができる。なお、孔部b、第1空洞部c及び第2空洞部dがエッチングにより形成されることにより、第1金属板1の吸着面aの平面度をより良好なものにすることができる。
【0015】
上記のように構成される吸着盤は、例えば、図3に示したように、ワーク7を積層する際の移送手段として用いられる。この場合に、本実施例によれば、1つの吸引口fから空気を吸引できるため、吸着盤の上部全体が吸引手段によって覆われることがない。」
上記を整理すると、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「複数の金属板を接合して形成される吸着盤であって、前記金属板のいずれも外周部に空隙を有さず、前記金属板のうち、表面が吸着面として機能する金属板には、孔部が多数形成されており、各孔部は、表面が吸着面として機能する金属板を厚さ方向に貫通してその他の金属板に形成された吸気のための穴と連通し、ワークを真空吸着し得る吸着盤。」
3.2 刊行物2には、
「真空吸着式のワークピースチャックにおいて、吸着面として機能する表面の縁付近に、間に矩形領域を形成する直線状の交差する溝が縁の全周にわたって多数形成されること。」
が記載されていると認める。
3.3 刊行物3には、
「流体ベアリングにおいて、ベアリング・プレートとして機能する表面には、縁の寸前まで縁に向かって延びる直線状の溝が縁の全周にわたって多数形成されること。」
が記載されていると認める。
3.4 刊行物4には、
「真空吸着式のウエハステージにおいて、吸着面として機能する表面には、リング状ウエハ吸着溝と、縁の寸前まで縁に向かって延びる直線状の連通溝が複数形成されること。」
が記載されていると認める。
3.5 刊行物5には、
「真空吸着式のワーク用チャックにおいて、吸着面として機能する表面に環状の吸着溝と、縁の寸前まで縁に向かって延びる直線状の連通溝が放射状に複数形成されること。」
が記載されていると認める。
3.6 刊行物6には、
「真空吸着式の半導体ウェーハ用固定キャリアにおいて、吸着面として機能する表面の周縁部付近には、半導体ウェーハの振動を抑制する抑制体を形成する、周縁部内面から中心方向に突出する櫛歯が、縁の全周にわたって多数形成されること。」
が記載されていると認める。

4.対比と判断
本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、前者では「表面が吸着面として機能する金属板の縁付近には、縁の寸前まで縁に向かって延びる直線状のスリットが縁の全周にわたって多数形成されており、各スリットは、表面が吸着面として機能する金属板を厚さ方向に貫通」するという発明特定事項を備えるのに対し、後者ではそのようなものでない点で相違する一方、両者はその余の発明特定事項では一致すると認められる。。
しかるに、刊行物2ないし6のいずれにも、該相違点に相当する構成が記載されているとも示唆されているとも認めることはできない。
そして、本件発明は上記発明特定事項を備えることにより、外枠を不要として、吸着可能な面積を最大限に拡大することが可能になるという作用効果を生じるものである。
したがって、本件発明が、刊行物1ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、原査定の理由によって拒絶することができない。
また、そのほかに、拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
.
 
審決日 2013-12-26 
出願番号 特願2009-77290(P2009-77290)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 崇文  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 長屋 陽二郎
豊原 邦雄
発明の名称 吸着盤  
代理人 特許業務法人センダ国際特許事務所  

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