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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11C
管理番号 1282850
審判番号 不服2013-13640  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-16 
確定日 2014-01-14 
事件の表示 特願2008-161032「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月 7日出願公開、特開2010- 3355、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成20年 6月19日の出願であって、平成24年 8月13日付けで拒絶理由が通知され、同年10月19日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成25年 4月 8日付けで拒絶査定がされ,これを不服として同年 7月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。


第2 平成25年 7月16日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)の適否

1 補正の内容
本件補正は、平成24年10月19日に提出された手続補正書によって補正された(以下、「本件補正前」という。)特許請求の範囲及び明細書を以下のように補正しようとするものである。
なお、下記事項における下線は、補正箇所を示すものである。

(1)本件補正前の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
書込み動作有効状態において書込みデータが書き込まれる不揮発性メモリと、
該書込み動作有効状態を示す有効状態指示信号に応答して該書込みデータを比較対象データとして利用可能にし、該不揮発性メモリからの読出しデータと、該利用可能にされた比較対象データとの比較結果を出力するチェック回路と、
該チェック回路の出力である該比較結果を外部に出力する経路と
を含み、
該チェック回路は、
該有効状態指示信号に応答して該書込みデータが該比較対象データとして書き込まれる第2のメモリと、
該不揮発性メモリからの読出しデータと該第2のメモリからの読出しデータとの比較結果を出力する比較回路と
を含み、 該有効状態指示信号により該第2のメモリの書き込み動作を制御することにより、該不揮発性メモリに該書込みデータが書き込まれる場合にのみ、該第2のメモリに該書込みデータが書き込まれ、
該不揮発性メモリの該読出しデータを外部に出力する経路が存在しないことを特徴とする半導体装置。」
と補正し、

(2)本件補正前の請求項2の構成の一部が新たな請求項1に追加されたことにより、重複事項を整理して
「【請求項2】
該第2のメモリは、揮発性メモリであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。」
と補正し、

(3)本件補正前の請求項8を削除し、

(4)本件補正前の請求項9を、上記補正事項(3)に伴う項番整理をして新たな請求項8とし、

(5)上記補正事項(1)による請求項1の補正に伴い、本件補正前の請求項10の一部を、新たな請求項9として、
「【請求項9】
該第2のメモリは、不揮発性であるチェック用メモリであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。」
と補正し、

(6)明細書の【0007】を、請求項1の上記補正に対応するように補正するものである。

2 補正の目的、新規事項及び一群の発明について
(1)上記補正事項(1)について
ア 本件補正前の「該有効化された比較対象データ」を「該利用可能にされた比較対象データ」とする補正は、特許法17条の2第5項4号に掲げる明りょうでない記載の釈明に該当し、新規な事項が追加されたものでもないから、特許法17条の2第3項に違反するところもない。
イ 本件補正前の「該チェック回路の出力である該比較結果を外部に出力する経路とを含み、該不揮発性メモリの該読出しデータを外部に出力する経路が存在しないこと」を「該チェック回路の出力である該比較結果を外部に出力する経路とを含み、該チェック回路は、該有効状態指示信号に応答して該書込みデータが該比較対象データとして書き込まれる第2のメモリと、該不揮発性メモリからの読出しデータと該第2のメモリからの読出しデータとの比較結果を出力する比較回路とを含み、該有効状態指示信号により該第2のメモリの書き込み動作を制御することにより、該不揮発性メモリに該書込みデータが書き込まれる場合にのみ、該第2のメモリに該書込みデータが書き込まれ、該不揮発性メモリの該読出しデータを外部に出力する経路が存在しないこと」とする補正は、「チェック回路」について、限定を加え、「該不揮発性メモリに該書込みデータが書き込まれる場合にのみ、該第2のメモリに該書込みデータが書き込まれ」ることを明確にするものであり、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正による請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、この補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、特許法17条の2第3項及び4項に違反するところもない。

(2)上記補正事項(2)及び(5)について
上記補正事項(2)及び(5)において、新たな請求項2は、本件補正前の請求項2の一部を新たな請求項1に付加すると共に、重複整理を行い、本件補正前の請求項2の一部とは異なる新たな構成が付加されて特許請求の範囲の減縮を行った請求項1を引用することで、結果として特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮が行われたものであり、新たな請求項9は、本件補正前の請求項10の一部を削除し前記新たな請求項1を引用したものであるから、新たな請求項9も結果として、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
また、両補正事項(2)及び(5)のいずれも特許法17条の2第3項及び4項に違反するところもない。

(3)上記補正事項(3)について
請求項8を削除することは、特許法17条の2第5項1号に掲げる請求項削除を目的とするものに該当し、特許法17条の2第3項及び4項に違反するところもない。

(4)上記補正事項(4)及び(6)について
上記補正事項(4)及び(6)は、いずれも特許法17条の2第5項4号に掲げる明りょうでない記載の釈明に該当し、新規な事項が追加されたものでもないから、特許法17条の2第3項に違反するところもない。


そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

3 独立特許要件について
(1)刊行物の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-188247号公報(以下、「刊行物」という。)には、「PROM内蔵マイコン」(発明の名称)に関して、第1図、第2図とともに以下の記載がある(なお、下線は当合議体にて付加したものである。)。

ア 「〔産業上の利用分野〕
この発明は、PROMを内蔵した半導体デバイスに関し、特にPROM内蔵のマイコンに関するものである。」(2頁左上欄3行?6行)

イ 「〔発明が解決しようとする課題〕
従来のPROM内蔵マイコンは、以上のように構成されているので、PROMに書き込まれたデータの検証をPROMライタなとで行う必要かあり、PROMのデータをデバイス外部に出力する手段を持つため、PROMの内容を容易に外部から読み取ることかでき、PROMの内容を秘密化するのが困難であるという問題点があった。
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、PROMの内容を容易に外部から読み取ることかできず、PROMの内容を秘密化することかできるPROM内蔵マイコンを得ることを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
この発明に係るPROM内蔵マイコンは、該マイコンの内部のPROMとRAMにデータを書き込み、マイコンコアに内蔵された比較回路を用いてPROMのデータを検証し、PROMの読み出しに制限を加えることによりPROM読み出しモードがなくても書き込みデータの検証が行えるようにしたものである。」(3頁右上欄8行?左下欄8行)

ウ 「以下、この発明の実施例を図について説明する。
第1図は本発明の実施例によるPROM内蔵マイコンのブロック構成を示す。
図において、1は製造後に使用者が書き込み可能で電源が供給されなくてもデータを保持することができ条件が整わないと読み出されないPROM、2は随時読み書き可能であらかじめ別の手段で検証可能であり電源が供給されないとデータか失われるRAM、3はデータバスと同じ幅のデータを一度に比較できる、マイコンの通常の演算機能を流用した比較回路、4,5はデータバスと同じ幅のデータを記憶できあらかじめ別の手段で検証可能である、マイコンの通常のレジスタを流用した複数のレジスタ、6は検証開始(PROM書き込み)時にリセットされ、検証結果が不一致であったときセットされる検証フラグ、7はPROMlへの書き込み動作でセットされ、検証結果が不一致であったときリセットされる書き込みフラグ、8はアドレスバス9、データバス10、複数のレジスタ4および5、比較回路3、検証フラグ6、書き込みフラグ7で構成されるマイコンコア、9は複数の信号線で構成されRAM2やPROMlや外部デバイスを区別し、RAM2またはPROM1の内部の任意のアドレスを選択するアドレスバス、10は複数の信号線で構成され任意のアドレスのPROM1やRAM2やレジスタ4,5や外部の回路との間でデータの授受を行うデータバス、11はマイコンモードか否かを示すマイコンモード線で、「1」のときマイコンモードを、「0」のときは書き込みモードか検証モードであることを示す。12は書き込みモードか検証モードかを示す書き込み/検証*モード線で、「1」のとき書き込みモードを、「0」のとき検証モードを示す。13はPROMにデータ書き込みを指示する書き込み線で、「1」のときにデータが書き込まれる。14はアドレスバス9、データバス10、PROM1、RAM2、マイコンコア8で構成されるPROM内蔵マイコンで、マイコン、書き込み、検証の3つのモードを持つ。(3頁右下欄2行?4頁左上欄末行)

エ 「次に第2図はこの発明の第1の実施例によるPROM内蔵マイコンの書き込み方法を示す模式図である。図において、15は一般的にPROM1に書き込む時に使用されるPROMライタ、16はデータバスの幅のデータを一度に比較できる外部比較回路、17はデータバスと同じ幅の書き込みデータを保持する保持レジスタ、18はデータバスと同じ幅の書き込みデータを保持し、該データを変更またはそのままで出力する第2保持レジスタ、19は介在回路である。」(4頁右上欄1行?10行)

オ 「次にこの発明の実施例によるPROM内蔵マイコンの動作を図について説明する。
PROM1の検証に先立って、あらかじめRAM2と複数のレジスタ4,5を検証しておく。RAM2とレジスタ4,5を使ってPROM1の検証をするためRAM2とレジスタ4,5の機能が正常である必要があるからである。
ここでPROM1とRAM2にデータを書き込む動作を詳細に説明する。PROMライタ15が図示しない手段でマイコンモード線11を「0」にし、書き込み/検証*モード線12を「1」にする。この書き込みモードでは図示しない手段によってアドレスバス9の複数の信号線のうち、PROM1とRAM2を区別する信号線が無視され、同時に検証フラグ6がリセットされる。
次に、上記同様に図示しない手段で、保持レジスタ17に、PROM1に書き込むデータがセットされる。PROMライタ15からアドレスバス9にアドレスを与え、保持レジスタ17からデータバス10にデータを与え、PROMライタ15からPROM内蔵マイコン14に書き込み線13を最小限の時間「1」にする。PROM1とRAM2を区別する信号線が無視されるため書き込み線13によってデータバス10を経て、PROM1とRAM2に同じデータが書き込まれる。」(4頁右上欄11行?左下欄15行)

カ 「次にPROM1のデータを検証する、本来の検証動作を詳細に説明する。まずマイコンコア8の比較回路3を用いてRAM2のデータと、PROM1のデータが等しいか否かを検証する。」(4頁右下欄19行?5頁左上欄2行)

キ 「一方PROM内蔵マイコン14内部では、本来の検証動作であるPROM1のデータとRAM2のデータとの検証が行われており、比較回路3を用いて第1と第2のレジスタ4,5のデータが一致するか否かを検証し、検証フラグ6に検証結果を蓄積する。検証結果が正しければ、検証フラグ6は変化せず、検証結果が正しくなければ検証フラグ6をセットし、書き込みフラグ7をリセットする。書き込みフラグ7がセットされていなければ検証動作は起こらないため、以後のデータは無視される。一組のデータの検証が終了したら第1と第2のレジスタの値を消去する。この手順を必要な回数繰り返す。最後に介在回路19が特別なアドレス、即ち検証フラグを読み出すためのPROM1とRAM2とは別のアドレスを入力し、検証フラグ6がデータバス10を経て介在回路19に読みだされる。PROM1の内容とRAM2の内容が1つでも異なっていれば、検証フラグ6の値は「0」であり、全て等しければ「1」となる。
以上のように、本発明の第1の実施例では、検証モードのとき書き込みフラグ7がセットされていなければ、1つのアドレスが与えられると、PROM内蔵マイコン14は外部に対しては書き込みフラグ7セツト時と同様の反応を示すが、PROM内蔵マイコン14内部では検証は行われない。書き込みフラグ7をセットするためには、書き込みモードで最低一回の書き込み、すなわち現在のデータの破壊を行う必要かあるため、検証モードを悪用してPROM1のデータを間接的に読みだすことが困難となる。また、検証結果が正しくなければ書き込みフラグ7がリセットされるため、一回の書き込みで1つのアドレスが示されるデータを破壊するという犠牲を伴う検証モードを悪用して、他のアドレスのデータを間接的に読み出すことが困難である。」(5頁左下欄5行?右下欄19行)

ク 「このように上記2つの実施例では、PROM内蔵マイコンの内部のPROMとRAMにデータを書き込み、マイコンコアに内蔵された比較回路を用いてPROMのデータを検証し、PROMの読み出しに制限を加えることによりPROM読み出しモードかなくても書き込みデータの検証が可能になり、PROMのデータを外部に読みだすことが困難であるため、PROMの内容を秘密化するのが容易である効果がある。」(6頁左下欄12行?末行)

ケ ここで、刊行物に記載されている、比較対象の「データ」を出力する「RAM2」、「PROM1」から読み出した「データ」を一時記憶する「レジスタ4」、「RAM2」から読み出した「データ」を一時記憶する「レジスタ5」及び「レジスタ4」と「レジスタ5」から読み出した「データ」を比較する「比較回路3」は全体としてチェック回路を構成しているといえる。

コ また、上記摘記事項ウの「7はPROMlへの書き込み動作でセットされ、検証結果が不一致であったときリセットされる書き込みフラグ、」という記載及び上記摘記事項キの「以上のように、本発明の第1の実施例では、検証モードのとき書き込みフラグ7がセットされていなければ、1つのアドレスが与えられると、PROM内蔵マイコン14は外部に対しては書き込みフラグ7セツト時と同様の反応を示すが、PROM内蔵マイコン14内部では検証は行われない。」という記載から、刊行物は、「PROMl」への書き込み動作が行われて「書き込みフラグ7がセット」された場合に、「比較対象のデータ」として「PROM1」に書き込まれた「データバス10」上の「データ」を利用可能にしているといえる。

サ 更に、上記摘記事項キの「一方PROM内蔵マイコン14内部では、本来の検証動作であるPROM1のデータとRAM2のデータとの検証が行われており、比較回路3を用いて第1と第2のレジスタ4,5のデータが一致するか否かを検証し、検証フラグ6に検証結果を蓄積する。・・(略)・・最後に介在回路19が特別なアドレス、即ち検証フラグを読み出すためのPROM1とRAM2とは別のアドレスを入力し、検証フラグ6がデータバス10を経て介在回路19に読みだされる。」との記載から、PROM1のデータ自体を直接外部に出力せず、PROM1とRAM2とのデータを、第1と第2のレジスタ4,5に保持し、比較した検証結果に基づくフラグのみが外部に読みだされるものである。

以上を総合すると、刊行物には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「マイコンモード線11を「0」にし、書き込み/検証*モード線12を「1」にし、書き込み線13を「1」にすることによって、データバス10上のデータが書き込まれるPROM1と、
前記PROMlへの書き込み動作が行われて書き込みフラグ7がセットされた場合に、比較対象のデータとしてPROM1に書き込まれたデータバス10上のデータを利用可能にし、前記PROM1から読み出したデータと比較対象のデータとして前記PROM1に書き込まれた前記データバス10上のデータとを比較して比較結果を出力するチェック回路と、
前記チェック回路の出力である前記比較結果を外部へ出力する前記データバス10と、
を含み、
前記チェック回路は、
PROM1とRAM2を区別する信号線が無視される書き込みモード状態の時に前記データバス10上のデータが前記比較対象のデータとして書き込まれるRAM2と、
前記PROM1から読み出したデータを一時記憶するレジスタ4と
前記RAM2から読み出したデータを一時記憶するレジスタ5と
前記レジスタ4の読み出しデータと前記レジスタ5の読み出しデータとを比較して前記比較結果を出力する比較回路3と、
を含み、
前記PROM1とRAM2を区別する信号線が無視される書き込みモード時にPROM1とRAM2に前記データバス10上の同じデータが書き込まれ、
前記PROM1のデータ自体を直接外部に出力せず、PROM1とRAM2の各データを第1と第2のレジスタ4,5に保持し、比較回路3で比較した検証結果に基づくフラグを外部に読み出すPROM内蔵マイコン。」

(2)対比
以下に,補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明では、「マイコンモード線11を「0」にし、書き込み/検証*モード線12を「1」にし、書き込み線13を「1」にすることによって、データバス10上のデータ」が「PROM1」に書き込まれているので、この状態は書込み動作有効状態であるといえる。したがって、引用発明の「マイコンモード線11を「0」にし、書き込み/検証*モード線12を「1」にし、書き込み線13を「1」にすることによって、データバス10上のデータが書き込まれるPROM1」は、補正発明の「書込み動作有効状態において書込みデータが書き込まれる不揮発性メモリ」に相当している。

イ 引用発明の「前記PROMlへの書き込み動作が行われて書き込みフラグ7がセットされた場合に、比較対象のデータとしてPROM1に書き込まれたデータバス10上のデータを利用可能にし、前記PROM1から読み出したデータと比較対象のデータとして前記PROM1に書き込まれた前記データバス10上のデータとを比較して比較結果を出力するチェック回路」と、補正発明の「該書込み動作有効状態を示す有効状態指示信号に応答して該書込みデータを比較対象データとして利用可能にし、該不揮発性メモリからの読出しデータと、該利用可能にされた比較対象データとの比較結果を出力するチェック回路」とは、「該書込み動作有効状態を示す所定の信号に応答して該書込みデータを比較対象データとして利用可能にし、該不揮発性メモリからの読出しデータと、該利用可能にされた比較対象データとの比較結果を出力するチェック回路」である点で一致している。

ウ 引用発明の「前記チェック回路の出力である前記比較結果を外部へ出力する前記データバス10」は、補正発明の「該チェック回路の出力である該比較結果を外部に出力する経路」に相当している。

エ 引用発明の「RAM2」は、補正発明の「第2のメモリ」に相当しており、引用発明の「PROM1とRAM2を区別する信号線が無視される書き込みモード状態」と補正発明の「該有効状態指示信号に応答して」とはいずれも「所定の状態」の時である。したがって、引用発明の「前記チェック回路は、PROM1とRAM2を区別する信号線が無視される書き込みモード時に前記データバス10上のデータが前記比較対象のデータとして書き込まれるRAM2と、前記PROM1から読み出したデータを一時記憶するレジスタ4と、前記RAM2から読み出したデータを一時記憶するレジスタ5と前記レジスタ4の読み出しデータと前記レジスタ5の読み出しデータとを比較して前記比較結果を出力する比較回路3と、を含み」と、補正発明の「該チェック回路は、該有効状態指示信号に応答して該書込みデータが該比較対象データとして書き込まれる第2のメモリと、該不揮発性メモリからの読出しデータと該第2のメモリからの読出しデータとの比較結果を出力する比較回路とを含み」とは、「該チェック回路は、該書込みデータが該比較対象データとして書き込まれる第2のメモリと、該不揮発性メモリからの読出しデータと該第2のメモリからの読出しデータとの比較結果を出力する比較回路とを含」んでいる点で一致している。

オ 引用発明の「前記PROM1とRAM2を区別する信号線が無視される書き込みモード時にPROM1とRAM2に前記データバス10上の同じデータが書き込まれ」ることと、補正発明の「該有効状態指示信号により該第2のメモリの書き込み動作を制御することにより、該不揮発性メモリに該書込みデータが書き込まれる場合にのみ、該第2のメモリに該書込みデータが書き込まれ」ることは、「該不揮発性メモリに該書込みデータが書き込まれる時に、該第2のメモリに該書込みデータが書き込まれ」ている点で一致している。

カ 引用発明の「前記PROM1のデータ自体を直接外部に出力せず、PROM1とRAM2の各データを第1と第2のレジスタ4,5に保持し、比較回路3で比較した検証結果に基づくフラグを外部に読み出すPROM内蔵マイコン」は、補正発明の「該不揮発性メモリの該読出しデータを外部に出力する経路が存在しないことを特徴とする半導体装置」に相当している。
キ したがって,補正発明と引用発明とは、

「書込み動作有効状態において書込みデータが書き込まれる不揮発性メモリと、
該書込み動作有効状態を示す所定の信号に応答して該書込みデータを比較対象データとして利用可能にし、該不揮発性メモリからの読出しデータと、該利用可能にされた比較対象データとの比較結果を出力するチェック回路と、
該チェック回路の出力である該比較結果を外部に出力する経路と
を含み、
該チェック回路は、
該書込みデータが該比較対象データとして書き込まれる第2のメモリと、
該不揮発性メモリからの読出しデータと該第2のメモリからの読出しデータとの比較結果を出力する比較回路と
を含み、
該不揮発性メモリに該書込みデータが書き込まれる時に、該第2のメモリに該書込みデータが書き込まれ、
該不揮発性メモリの該読出しデータを外部に出力する経路が存在しない半導体装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:
「所定の信号」が、補正発明は、「有効状態指示信号」であるのに対して、引用発明は、「前記PROMlへの書き込み動作が行われて書き込みフラグ7がセットされた」ことを示す信号である点。

相違点2:
「第2メモリ」が、本願補正発明は、「該有効状態指示信号に応答して該書込みデータが該比較対象データとして書き込まれる」「メモリ」であるのに対して、引用発明は、「PROM1とRAM2を区別する信号線が無視される書き込みモード状態の時に前記データバス10上のデータが前記比較対象のデータとして書き込まれる」「メモリ」である点。

相違点3:
「比較回路」によって、補正発明は、「該不揮発性メモリからの読出しデータと該第2のメモリからの読出しデータとの比較結果を出力」しているのに対して、引用発明は、「前記レジスタ4の読み出しデータと前記レジスタ5の読み出しデータとを比較して前記比較結果を出力」している点。

相違点4:
補正発明は、「該有効状態指示信号により該第2のメモリの書き込み動作を制御」することで、「該不揮発性メモリに該書込みデータが書き込まれる場合にのみ、該第2のメモリに該書込みデータが書き込まれ」るようにしているのに対して、引用発明は、「前記PROM1とRAM2を区別する信号線が無視される」ようにすることで、「書き込みモード時にPROM1とRAM2に前記データバス10上の同じデータが書き込まれ」ている点。

(3)判断
ア 相違点4について
引用発明は、「前記PROM1とRAM2を区別する信号線が無視される書き込みモード時にPROM1とRAM2に前記データバス10上の同じデータが書き込まれ」ている。即ち、PROM1への書き込みの条件に基づく制御をするのではなく、単に所定のモード時に、PROM1とRAM2へ、共通のデータバス10上の同じデータを書き込んでいるにすぎない。
一方、補正発明では、「揮発性メモリに該書込みデータが書き込まれる場合」という特定条件に基づき、その特定条件を示す「該有効状態指示信号により該第2のメモリの書き込み動作を制御」して、第2のメモリへの書き込みを行うものである。
そして、引用発明には、一方への書き込み条件に基づき他方の書き込みを制御するとの技術は開示も示唆もされておらず、当審において、他に当該制御方法を示す技術は発見できていない。

イ 相違点1?4について
相違点1?4は互いに関連した相違点でもあるので、再度相違点4を含めまとめて検討する。
補正発明において、「該不揮発性メモリに該書込みデータが書き込まれる場合にのみ、該第2のメモリに該書込みデータが書き込まれ」るように構成する理由は、補正発明の「不揮発性メモリ」には「データ」を書き込まずに、「比較回路」に「比較対象データ」を供給する「第2のメモリ」に対してのみ、例えば、オール1のような「データ」を書き込むことによって、「比較回路」の「比較出力」から「不揮発性メモリ」の記憶内容が流出するのを防ぐ為であることは明らかである。
したがって、引用発明のように「比較回路3」において、「PROM1」と「RAM2」の内容を直接比較せずに「レジスタ4」と「レジスタ5」を介して比較する場合には、引用発明が「前記PROM1とRAM2を区別する信号線が無視される書き込みモード時にPROM1とRAM2に前記データバス10上の同じデータが書き込まれ」るように構成されていたとしても「レジスタ4」と「レジスタ5」の制御状態によっては、補正発明のように「比較回路」の「比較出力」から「不揮発性メモリ」の記憶内容が流出するのを防ぐことはできないことは明らかである。
なお、引用発明では、「前記PROMlへの書き込み動作が行われて書き込みフラグ7がセットされた」場合にのみPROM内蔵マイコン14内部での検証動作が行われるようにすることで、「PROMl」の「データ」が「比較回路3」を介して外部へ流出しないようにしているので、補正発明のように「該不揮発性メモリに該書込みデータが書き込まれる場合にのみ、該第2のメモリに該書込みデータが書き込まれ」るように構成することは想定していないことは明らかである。

ウ 以上のとおりであるから、相違点1?4は、当業者といえども容易になし得たものとは認められない。
したがって、補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

4 補正の適否に関する結論
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし9に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2013-12-19 
出願番号 特願2008-161032(P2008-161032)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G11C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 滝谷 亮一  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 池渕 立
西脇 博志
発明の名称 半導体装置  
代理人 山口 昭則  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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