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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02K
管理番号 1282955
審判番号 不服2013-13605  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-16 
確定日 2014-01-14 
事件の表示 特願2007-309199「アウターロータモータ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月18日出願公開、特開2009-136076、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年11月29日の出願であって、平成24年9月20日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成24年9月25日)、これに対し、平成24年11月26日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年4月8日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成25年4月16日)、これに対し、平成25年7月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1-4に係る発明は、平成25年7月16日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ステータと、
当該ステータの外側を周方向に回転する円筒状のロータからなるアウターロータモータであって、
前記ステータは、所定間隔ごとに放射状に配設された複数本のティースと、当該ティースに巻き回されて形成されたコイルとからなり、
前記ロータには、当該ロータの軸方向に貫通するV字マグネットが埋設され、
当該V字マグネットは、前記ロータの周方向に所定間隔ごとに配設され、
前記V字マグネットは、2個の平板形状の永久磁石であるマグネットからなり、当該マグネットの側面の前記ロータ内周側である内側縁がそれぞれ接して形成され、
前記マグネットの間には、中空又は中実の棒状の楔ピンからなる非磁性材料が介在され、
前記マグネットは、前記ロータの内周に対する接線と平行となるように配設され、
前記ロータには、前記ロータの軸方向に貫通する貫通孔が形成され、
当該貫通孔は、前記V字マグネットの前記ロータに対する周方向両端の側面に沿って、前記V字マグネットごとに形成され、
前記V字マグネットのステータの中心に対する電気角が、168°?174°の範囲であることを特徴とする、アウターロータモータ(注:「アウターロータ」は誤記)。
【請求項2】
前記電気角が、168°であることを特徴とする、請求項1に記載のアウターロータモータ(注:「アウターロータ」は誤記)。
【請求項3】
前記ティースが18本であり、前記マグネットが12個であり、前記ロータ外径が300mmであり、前記ロータ内径が255mmであり、前記ステータ外径が253.4mmであり、前記V字マグネットの前記ロータに対する周方向両端の側面の前記ロータ内周面側の内側縁と前記ロータ内側面との距離は0.8mmであり、前記マグネットの厚みは8.0mmであり、前記電気角が168°であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載のアウターロータモータ(注:「アウターロータ」は誤記)。
【請求項4】
電気自動車のインホイールモータとして用いられることを特徴とする、請求項1?3のいずれかに記載のアウターロータモータ(注:「アウターロータ」は誤記)。」

上記補正前の請求項1のV字マグネットは当然にステータの中心に対する所定の電気角を有しており、上記補正は、当該電気角を実施例に基づいて168°?174°と限定するものであるから、特許請求の範囲の限定的減縮であり、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当する。
なお、出願時の特許請求の範囲の請求項2には、「前記V字マグネットの前記ステータの中心に対する電気角が、144°?174°であることを特徴とする請求項1に記載のアウターロータモータ。」と記載され、出願時の特許請求の範囲の請求項4には、「前記ロータには、前記ロータの軸方向に貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔は、前記V字マグネットの前記ロータに対する周方向両端の側面に沿って、前記V字マグネットごとに形成されることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のアウターロータモータ。」と記載されているから、「ロータには、前記ロータの軸方向に貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔は、V字マグネットの前記ロータに対する周方向両端の側面に沿って、前記V字マグネットごとに形成され、前記V字マグネットのステータの中心に対する電気角が、168°?174°の範囲である」アウターロータモータは、出願当初に記載されており、上記補正は新規事項の追加には該当しない。


3.独立特許要件
上記補正は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当するから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。


(1)原査定の理由の概要
平成24年9月20日付の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」として、請求項1に対して引用例1?4、請求項2?7に対して引用例1?5を挙げている。(引用例1は特開2002-233122号公報、引用例2は特開2004-301038号公報、引用例3は実願昭52-088453号(実開昭54-015217号)のマイクロフィルム、引用例4は特開2007-282393号公報、引用例5は特開2002-281722号公報)。


(2)当審の判断
(ア)引用例
原査定の拒絶の理由で引用した引用例1(特開2002-233122号公報)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

1-a「図1は本発明に係る実施の形態1のアウターロータモータ(以下の説明においてアウターロータモータをモータと略称する)100を電気自動車の車輪内に組み込んだ状態を示す断面図である。」(【0014】)

1-b「図2は、モータ100のロータ1とステータ3とを拡大して示す断面図である。実施の形態1のモータ100は、その仕様が12極18スロットであり、図2に示した部分はモータ全体の1/6モデルである。ロータ1は、ホイール11に固着されたロータコア6とそのロータコア6の内面に配置された永久磁石2とにより構成されている。ロータコア6は電磁鋼板を積層して実質的に円筒状に形成されており、その内径側の表面には凹部が等間隔で極数分の12個形成されている。それぞれの凹部内には永久磁石2が配置されており、ステータ3と対向するロータ1の内面は実質的に同一円周面に形成されている。ロータ1は上記のように構成されているため、隣り合う永久磁石2の間には鉄である電磁鋼板であるロータコア6が配置されている。即ち、ロータ1の回転方向における内面部分には、永久磁石2とロータコア6が交互に配置されている。
一方、ステータ3は、電磁鋼板を積層して形成したステータコア7とステータティース4とを有している。このステータティース4には巻線5が集中巻で施されている。センサ等でロータ1の磁極位置を検出して、ステータ3の巻線5に3相交流電流を流すことにより、モータ100にはトルクが発生する。
上記のように構成されたモータ100の永久磁石2の磁束方向であるd軸のインダクタンスとこのd軸から90゜進んだq軸のインダクタンスとが異なっている。本発明の実施の形態1のモータ100においては、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスとの違いを利用している。実施の形態1において、モータ100のd軸の磁束方向8と、d軸より電気角で90度進んだq軸の磁束方向9とを比べると、その磁束の大きさが異なっている。図2に示すように、実施の形態1のモータ100において、d軸の方向の磁束が永久磁石2を通るのに対して、q軸の方向の磁束は永久磁石2を通らないので、磁束が流れやすく、この結果、q軸インダクタンスの方がd軸インダクタンスより大きくなる。」(【0015】-【0017】)

1-c「《実施の形態3》次に、本発明に係る実施の形態3のアウターロータモータ(以下の説明においてアウターロータモータをモータと略称する)300について説明する。図5は、実施の形態3のモータ300のロータ301とステータ3とを拡大して示す断面図である。実施の形態3のモータ300は、その仕様が12極18スロットであり、図5に示した部分はモータ全体の1/6モデルである。実施の形態3のモータ300は、前述の実施の形態1のモータ100と実質的に同じように構成されており、異なる点はロータ301に回転方向における断面が山形形状(くの字形状)である永久磁石302が設けられている点である。従って、実施の形態3の説明において、ロータ301、ロータコア306及び永久磁石302以外は前述の実施の形態1と同じであるため同じ符号を付してその説明は省略する。
図5に示すように、ロータ301は、車輪のホイールに固着されたロータコア306とそのロータコア306の内面に永久磁石302が配置されて構成されている。ロータコア306は電磁鋼板を積層して実質的に円筒状に形成されており、その内部に複数の永久磁石302が埋設されている。複数の永久磁石302は、ロータ301において等間隔で極数分の12個が配置されている。図5に示すように、各永久磁石302の回転方向における断面は外周方向に突出した山形形状を有している。上記のように構成されたロータ301の内側近傍部分は、永久磁石302とロータコア306とが交互に配置されている。」(【0035】-【0036】)

1-d「例えば、図6に示すように、埋め込む永久磁石303の回転方向の断面形状を外周側が盛り上がった円弧状にしても良い。」(【0040】)

上記記載及び図面を参照すれば、複数本のステータティースは、所定間隔ごとに放射状に配設されている。
上記記載及び図面を参照すれば、山形形状(くの字形状)永久磁石は、ロータコアを軸方向に貫通し、ステータの中心に対する電気角が所定の範囲である。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「ステータと、
円筒状のロータからなるアウターロータモータであって、
前記ステータは、所定間隔ごとに放射状に配設された複数本のステータティースと、当該ステータティースに施された巻線とからなり、
前記ロータには、当該ロータの軸方向に貫通する山形形状(くの字形状)永久磁石が埋設され、
前記山形形状(くの字形状)永久磁石は、前記ロータにおいて等間隔で極数分の12個が配置され、
前記山形形状(くの字形状)永久磁石は、1個の永久磁石からなり、
前記山形形状(くの字形状)永久磁石のステータの中心に対する電気角が、所定の範囲である、アウターロータモータ。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

同じく、原査定の拒絶の理由で引用した引用例2(特開2004-301038号公報)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

2-a「図1および図2に示すように、本発明による密閉型電動圧縮機において、密閉シェル10の内部は、軸受部14aを有するメインフレーム14によって上部空間と下部空間とに区画されており、上部空間には冷媒を圧縮する例えばスクロール式の回転圧縮部12が収納され、下部空間にはアウターロータ型の永久磁石電動機(IPMモータ)11が収納されており、上記軸受部14aにて軸支されている回転軸13を介して永久磁石電動機11により回転圧縮部12を駆動することにより、冷媒入口17から戻された低圧冷媒が圧縮処理して高圧冷媒ガスとして出力される。
上記永久磁石電動機11は固定子16と、その周りに配置された回転子15とを含み、固定子16はメインフレーム14の軸受部14aに固定されている。回転子15は、その下部に設けられている支持部材17を介して回転軸13に連結されている。支持部材17は、固定子16の下部を避けるように皿形状として形成されており、その底部中央に回転軸13に対する連結孔を備えている。
図2を参照して、回転子15は、その外形を六角形として内側を中空としたヨーク15aを備えている。ヨーク15aには、各磁極ごとに複数個、この例では3個の永久磁石15b,15c,15dが埋め込まれている。
各永久磁石15b,15c,15dは、円弧形状などの曲線より遙かに成形し易い断面長方形として形成され、中央の永久磁石15bは長辺を回転子15の直径線と直交する状態で回転軸13の軸方向に沿って埋め込まれている。両側の永久磁石15c,15dは、その一方の各端部が回転子15の内周面側に向け傾斜するようにハ字形状に設けられている。
各永久磁石15b,15c,15dの各短辺側の間には、フラックスバリア15e,15fが設けられており、また、永久磁石15c,15dの短辺側と回転子15の内周面と間にも、フラックスバリア15g,15hが設けられている。」(【0020】-【0024】)

同じく、原査定の拒絶の理由で引用した引用例3(実願昭52-088453号(実開昭54-015217号)のマイクロフィルム)の第1図には、アウトロータ形永久磁石式同期電動機の磁石の側面のロータ内周側である内側縁がそれぞれ接して形成されることが示されている。

同じく、原査定の拒絶の理由で引用した引用例4(特開2007-282393号公報)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

4-a「なお、図11、図12に示すように、永久磁石4Aは、磁化方向が同一の2個の磁石片4A1,4A2が互いに非磁性のつなぎ部21を介して屈曲可能に連結されていてもよい。」(【0017】)

同じく、原査定の拒絶の理由で引用した引用例5(特開2002-281722号公報)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

5-a「アウタロータ3のロータコア9の径方向の全体の厚さをt0 、永久磁石11の径方向厚さをtとして、1/3≦t/t0 ≦2/3とし、またアウタロータ3の単極当たりの周方向長さをθ0 、永久磁石11の周方向長さをθとして、0.4≦θ/θ0 ≦0.9とすることで、ヨーク部12がt0 の2/3?1/3の幅寸法で確保されるとともに突極部13が少なくともθ0 の1/10は確保されるので、ヨーク部12と突極部13にて形成されるq軸方向の磁束パス15のインダクタンスLqが大きくなり、永久磁石11を通るd軸方向の磁束パス14のインダクタンスLdとの差が確保され、大きなリラクタンストルクが得られ、出力トルクを高くできる。解析結果によれば、同一のモータ外径Rの場合に、従来例のマグネットトルクのみを用いるものに対して2.3倍のトルクが得られた。」(【0028】)


(イ)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ステータティース」、「施された巻線」、「山形形状(くの字形状)永久磁石」、「永久磁石」は、それぞれ本願発明の「ティース」、「巻き回されて形成されたコイル」、「V字マグネット」、「永久磁石であるマグネット」に相当する。

その機能をも考慮すると、引用発明の「円筒状のロータからなるアウターロータモータ」は、本願発明の「ステータの外側を周方向に回転する円筒状のロータからなるアウターロータモータ」に相当し、引用発明の「ロータにおいて等間隔で極数分の12個が配置され」は、本願発明の「ロータの周方向に所定間隔ごとに配設され」に相当する。

引用発明の「前記山形形状(くの字形状)永久磁石のステータの中心に対する電気角が、所定の範囲」と、本願発明の「前記V字マグネットのステータの中心に対する電気角が、168°?174°の範囲」は、「前記V字マグネットのステータの中心に対する電気角が、所定の範囲」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「ステータと、
当該ステータの外側を周方向に回転する円筒状のロータからなるアウターロータモータであって、
前記ステータは、所定間隔ごとに放射状に配設された複数本のティースと、当該ティースに巻き回されて形成されたコイルとからなり、
前記ロータには、当該ロータの軸方向に貫通するV字マグネットが埋設され、
当該V字マグネットは、前記ロータの周方向に所定間隔ごとに配設され、
前記V字マグネットは、永久磁石であるマグネットからなり、
前記V字マグネットのステータの中心に対する電気角が、所定の範囲である、アウターロータモータ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
V字マグネットに関し、本願発明は、2個の平板形状の永久磁石であるマグネットからなり、当該マグネットの側面のロータ内周側である内側縁がそれぞれ接して形成され、当該マグネットの間には、中空又は中実の棒状の楔ピンからなる非磁性材料が介在するのに対し、引用発明は、1個の永久磁石からなる点。
〔相違点2〕
V字マグネットの配設に関し、本願発明は、ロータの内周に対する接線と平行となるように配設されるのに対し、引用発明は、ロータの内周に対する接線とどの様な関係になるのか特定されていない点。
〔相違点3〕
本願発明は、ロータの軸方向に貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔は、V字マグネットの前記ロータに対する周方向両端の側面に沿って、前記V字マグネットごとに形成されるのに対し、引用発明は、貫通孔を有していない点。
〔相違点4〕
V字マグネットのステータの中心に対する電気角に関し、本願発明は、168°?174°の範囲であるのに対し、引用発明は、所定の範囲であって角度が特定されていない点。


(ウ)判断
相違点1について
引用発明は、V字マグネットは1個の永久磁石から形成するものである。一方、本願発明は、V字マグネットは2個の平板形状の永久磁石であるマグネットから形成するものであって、その為に、マグネットの側面のロータ内周側である内側縁がそれぞれ接して形成され、当該マグネットの間には、中空又は中実の棒状の楔ピンからなる非磁性材料が介在させられているから、V字マグネットは、2枚の平板状のマグネットの一側縁のみを接して形成されるので、マグネットの加工の必要がなく、着磁作業も容易であり、平板状のマグネットをロータに埋設し、その間に楔ピンを打ち込むだけでの簡単な作業でV字マグネットを形成することができるという作用効果を奏する(平成24年11月29日付意見書「(4)本願発明」参照)。
各引用例には、V字マグネットは2個の平板形状の永久磁石であるマグネットから形成する点、及び、V字マグネットの間に中空又は中実の棒状の楔ピンからなる非磁性材料を介在させる点(楔ピンはV字マグネットを固定するものであり、引用例4のつなぎ部は2個の永久磁石の屈曲可能な連結のためである。)が示されておらず、また、作業性等を考慮して、引用例2のように磁極を複数個の平板形状の永久磁石であるマグネットから形成すること、及び、V字マグネットを2個の平板形状の永久磁石であるマグネットから形成すること(特開2004-23976号公報:先行技術文献)が何れも周知の事項であるとしても、引用発明において、1個の永久磁石から形成されるV字マグネットを2個の平板形状の永久磁石であるマグネットに代えて、しかも、作業性等を考慮して、2個の平板形状の永久磁石であるマグネットの側面のロータ内周側である内側縁がそれぞれ接して形成され、当該マグネットの間に、中空又は中実の棒状の楔ピンからなる非磁性材料を介在させることは、動機が存在せず、且つ引用例1?5には当該技術的事項の記載も示唆も無い。
そうであれば、引用発明において、1個の永久磁石から形成されるV字マグネットを2個の平板形状の永久磁石であるマグネットに代えて、当該2個の平板形状の永久磁石であるマグネットの側面のロータ内周側である内側縁がそれぞれ接して形成され、当該マグネットの間に、中空又は中実の棒状の楔ピンからなる非磁性材料を介在させることは、当業者が容易に考えられたものとすることはできない。

相違点2について
本願発明は、V字マグネットがロータの内周に対する接線と平行となるように配設され、V字マグネットの両側面のロータ内側面側の内側縁とロータ内周との間である狭絡部が最も小さくなるような配置とすることによって、マグネットトルクを有効に向上させるという作用効果を奏する(平成24年11月29日付意見書「(4)本願発明」参照)。一方、引用発明は、V字マグネットがロータの内周に対する接線とどの様な関係に配設されるか特定されておらず、しかも、1-d、図6を参照すれば、V字マグネットがロータの内周に対する接線と平行となるように配設することは想定されてはいない。また、各引用例には、V字マグネットがロータの内周に対する接線と平行となるように配設される点は記載も示唆も無い。
そうであれば、引用発明において、V字マグネットがロータの内周に対する接線と平行となるように配設して、マグネットトルクを有効に向上させることは、当業者が容易に考えられたものとすることはできない。

相違点3について
永久磁石型モータにおいて、リラクタンストルク向上のために貫通孔を設けることは、引用例を示すまでもなく周知の事項(例えば引用例2の「フラックスバリア」が相当)であるから、引用発明においてもリラクタンストルク向上のために貫通孔を設けることは当業者が容易に考えられることと認められる。

相違点4について
本願発明は、V字マグネットのステータの中心に対する電気角を168°?174°の範囲とすることにより、配設されるV字マグネットの数に左右されることなく、比較的大きなマグネットトルクを得るという作用効果を奏する(実施例及び審判請求書「【本願発明が特許されるべき理由】(1)本願発明の説明」参照)。
一方、引用発明は、V字マグネットが有るから、V字マグネットのステータの中心に対する電気角が所定の範囲ではあるが、角度が特定されておらず、しかも、1-bにあるように、リラクタンストルクも利用しようとするものである。
そうであれば、引用発明において、リラクタンストルクも利用しようとするV字マグネットを、比較的大きなマグネットトルクを得るために、電気角を168°?174°の範囲とすることへの動機付けは認められず、当業者が容易に考えられたものとすることはできない。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることはできないから、上記補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。また、本願発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、本願発明の発明の特定事項を全て含む請求項2?4に係る発明についても、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。


5.むすび
以上のとおり、本願については、原査定の特許法第29条第2項の規定に基づく拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2013-12-25 
出願番号 特願2007-309199(P2007-309199)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H02K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 仁科 雅弘  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 新海 岳
藤井 昇
発明の名称 アウターロータモータ  
代理人 藤沢 則昭  
代理人 藤沢 昭太郎  

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