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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1282978
審判番号 不服2010-9107  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-28 
確定日 2013-10-17 
事件の表示 特願2007-538605「植物栄養素により食料品の栄養価を高める方法及びそれにより得られた食品」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月 4日国際公開、WO2006/046222、平成20年 5月29日国内公表、特表2008-517618〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成16年10月26日を国際出願日とする出願であって,平成21年5月25日付けで拒絶理由通知書が出され,同年12月1日付けで手続補正がなされたが,同年12月21日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成22年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成22年4月28日付けの手続補正の補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年4月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
平成22年4月28日付けの手続補正は特許請求の範囲を補正するものであって,平成21年12月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に
「トマトの植物栄養素の健康利益有効量により食料品の栄養価を高める方法であって、トマトオレオレジン又はトマト成分を、食料品に、前記食料品の風味が前記オレオレジン又はトマト成分により実質的に影響を受けない量で加えることを含む方法。」とあったのを,
「トマトの植物栄養素の健康利益有効量により食料品の栄養価を高める方法であって、トマトオレオレジンを、食料品に、前記食料品を調製する過程で前記食料品の風味が前記オレオレジンにより実質的に影響を受けない量で加えることを含む方法。」(以下,「本願補正発明」という。)と補正することを含むものである。
上記補正は,補正前の請求項1に記載された、トマトの植物栄養素から「トマト成分」を削除して「トマトオレオレジン」に限縮し、さらに該栄養素を食料品に添加する時期を「前記食料品を調製する過程で」に限定するものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項
原査定で引用され,本願出願日前に頒布された刊行物である刊行物1には,以下の事項が記載されている。
刊行物1:特開2000-103733号公報(原査定の引用文献1)
そして,本願出願前に頒布された刊行物である刊行物2?4には,以下の事項が記載されている。
刊行物2:米国特許出願公開第2003/0203072号明細書
刊行物3:特表2002-543819号公報
刊行物4:特開平11-98972号公報

(1)刊行物1に記載された事項
[1a]「【0002】カロチノイド物質群に属するリコピンは、自然界に広く存在する。こうして、トマト1kg当たり約20mgのリコピン含量を有するトマトは、この赤色顔料の重要な天然資源である。
【0003】疫学上の研究は、トマトまたはトマト製品を頻繁に、かつ規則的に摂取することは、慢性的な疾患、特に心臓および循環系疾患、への罹病の危険を低下させ、かつ癌予防にプラスの影響を与えることを示した。リコピンのこの保護機能は非常に効果的な抗酸化剤としてのその作用に見られる。
【0004】食品および飼料産業においても、薬学的技術においてもリコピンは、例えば合成色素の代替品として重要な色素であり、かつ冒頭に挙げた理由から健康上の予防のための食品添加物として重要である。
【0005】
【従来の技術】リコピンの合成は、特にEP-A-382067およびEP-A-000140中に記載されている。WO97/48287はトマトからの天然カロチノイドとしてリコピンの抽出を記載している。
【0006】全てのカロチノイドと同様、リコピンは水に不溶性であり、一方油脂中には僅かな溶解性を示す。この限られた溶解性並びにその高い易酸化性は比較的粗大な粒状結晶リコピンを食品および飼料の着色に直接適用することを妨げている、それというのも粗大結晶の形での純粋な物質は余りにも不安定であり、不十分に吸収され、従って不良な着色結果に導くためである。
【0007】この作用物質が微細に分散した形で存在し、場合により保護コロイドで酸化に対して保護されている、特別に製造された製剤によってのみ、食品を直接着色する際に、改良された着色収率(color yield)が達せられる。
【0008】他のカロチノイドに比較して、リコピンの特に低い酸化安定性およびこれと結び付いた低い色の安定度もしくは貯蔵安定性を顧慮して、この製剤には特に高い要求がなされる。
【0009】カロチノイド一般には、多くの製剤並びにその製法が記載されている。
【0010】こうしてリコピンは、例えば商品名Lyc-O-Mato(R)(Fa.LycoRed,Israel)で、6%の油状分散液として得られる。WO97/48287によれば、リコピンはトマトからの天然のカロチノイドとして抽出される。油状分散液の高い粘度と結び付いて、Lyc-O-Mato(R)中の高いホスホリピド含量のために、この製剤の適用特性は、特に水分散性は十分ではない。」

(2)刊行物2に記載された事項
[2a]「[0005] The present invention discloses a good tasting rehydration beverage that when consumed during exercise, provides proper hydration and the correct isotonic concentration to maintain optimum performance and good health. The beverage of the present invention also provides the consumer with electrolytes, nutrients, and energy that may be lost during physical exertion, or to those lacking these vital nutrients. The beverage offers a cleaner taste than known isotonic beverages and has no negative aftertaste. 」
当審訳「本発明は、運動中に摂取すると、最適な運動効果及び健康を維持するための、適切な水分補給と正しい電解質濃度を提供する、良好な風味の水分補給飲料を開示するものである。本発明の飲料は、電解質、栄養素及びエネルギーを、運動中に失われる際に、又はそれらが不足している者に対して提供するものである。この飲料は既存のアイソトニック飲料よりすっきりとした風味を提示し、後味の悪さがないものである。」

[2b]「[0018] It should be understood that the present invention may be fortified with additional vitamins, minerals, amino acids and neutriceuticals.・・・Moreover, the present invention may also include other neutriceutical ingredients such as ・・・ lycopene (a tomato pigment known for its prevention of breast and prostate cancers and commercially available under the trade name Lyc-o-Mato), ・・・. 」
当審訳「追加のビタミン、ミネラル、アミノ酸および栄養補助成分で本発明が強化されるだろうことは理解されるべきである。・・・さらに、本発明は、リコピン(乳癌及び前立腺癌の予防効果が知られているトマト色素であり、商標Lyc-o-Matoの下で商業的に利用可能)、・・・等の他の栄養補助成分を含有してもよい。」

(3)刊行物3に記載された事項
[3a]「【0033】
本発明の抽出物は乾物基準で約1?約10重量%のカロテノイドおよび約0.05?約0.5重量%の他の抗酸化物質を含有する。
【0034】
好ましい態様では、抽出物はトマト抽出物でよく、リコペンその他の抗酸化物質、例えばβ-カロテン、α-トコフェロール、β-トコフェロール、δ-トコフェロール、γ-トコフェロール、ビタミンCおよび葉酸などを含有できる。このような複合体は例えば前立腺がん細胞増殖の制御に対しα-トコフェロールと共同するリコペンによる相乗性を有する(パストリら、「バイオロジカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コンミュニケーションズ」、582?585,250,3,1998)。
・・・
【0039】
リコピンを含有する抽出物は食品組成物100g当たり0.1-2gの量で使用することができる。」

[3b]「【0047】
例7 リコペンの豊富化した発酵乳
1?4%の脂肪を有する伝統的発酵乳を次のように製造する。全乳、低脂肪乳または双方の混合物を標準化後、例1で製造した0.5重量%のリコペン抽出物を添加する。全体はプレート交換機で殺菌し、液は発酵温度に冷却し、好熱性または中温性乳酸菌を添加し、<5のpHが得られるまでインキュベーションを行なった。
ポットへの充填および密封の次の操作は通例方法で行なった。
この発酵乳はカロテノイド、フラボノイドおよびビタミンを含む抗酸化物質の均衡化された配列により特にすぐれた栄養的プロフィルを有する。」

(4)刊行物4に記載された事項
[4a]「【特許請求の範囲】
【請求項1】 リコペンを含有することを特徴とする、便性改善作用を有する乳幼児用栄養組成物。」

[4b]「【0012】
【実施例1】
リコペン配合調製粉乳の製造
脱脂乳50.4kgに、乳清蛋白質濃縮物(WPC)1.58kgと乳糖9.24kg添加溶解した。これに水溶性ビタミン類(ビタミンB1 、B2 、B6 、B12、C、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、コリン、イノシトール)混合物及びミネラル類(炭酸カルシウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、クエン酸第一鉄ナトリウム、硫酸銅、硫酸亜鉛)混合物をそれぞれ75g添加溶解し、さらに脂溶性ビタミン類(ビタミンA、D、E、K)混合物、並びに5%リコペン溶液(マクテシム ケミカル ワークス社)0.03gを溶解した調製脂肪5.78kgを添加混合した。これらを均質化し、常法により殺菌処理した後、濃縮、乾燥して調製粉乳21kgを得た。得られた調製粉乳中のリコペン含量は、粉乳100g当たり7.0μgであった。
【0013】
【実施例2】
リコペン及びβ-カロチン配合蛋白質加水分解粉乳の製造
カゼイン粉末7kgを93kgの温湯に溶解し、pHを3.9に調整した後、56万単位のプロテアーゼM(天野製薬社)を添加し、46℃にて攪拌しながら6時間処理した。この溶液のpHを6.1に調整した後、3,000万単位のペプチダーゼR(天野製薬社)を添加し、46℃にて攪拌しながら16時間処理した。この加水分解処理液100kgに、タピオカ澱粉6kg、デキストリン30kg、ショ糖2.5kg、及び実施例1と同様の水溶性ビタミン類混合物及びミネラル類混合物をそれぞれ0.18kg添加溶解し、さらにパーム油カロチン懸濁液(ライオン社)80mgを添加した実施例1と同様の脂溶性ビタミン類を溶解したサフラワー油5kgを加えて混合した。これらを均質化し、常法により殺菌処理後濃縮乾燥し、蛋白質加水分解粉乳50kgを得た。得られた蛋白質加水分解粉乳の全固形分100g当たりのリコペン含量は2.3μg、及びβ-カロチン含量は30.4μgであった。
【0014】
【実施例3】
ヨーグルトの製造
脱脂粉乳10kgを50kgの温湯に溶解し、これに5%リコペン溶液1gを添加、混合した牛乳クリーム1kgを加え、均質化した後常法により殺菌した。これにラクトバチルス ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)及びストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)をスターターとして接種し、500ml容の容器に分注し、常法によりヨーグルトを製造した。このヨーグルトのリコペン含量は、製品全固形分100g当たり5.0μgであった。」

3 対比・判断
(1)刊行物1記載の発明
上記の記載[1a]の【0010】にはリコピンは水分散性が十分でないことが記載されているが、【0004】にリコピンは健康上の予防のための食品添加物であることが記載されており、油性食品への添加を考えれば、水分散性が十分でないとの性質がリコピンを食品に添加することを否定するものではないから、刊行物1には,以下の発明(以下,「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「トマトからの天然のカロチノイドとして抽出される、商品名Lyc-O-Mato(R)で、6%の油状分散液として得られるリコピンを、食品添加物として、健康上の予防のために食品に添加する方法。」

(2)本願補正発明と刊行物1発明との対比
ア 本願補正発明に係る「トマトオレオレジン」について、本願明細書【0013】には「記載の全体を通して、トマトオレオレジンという用語は、実質的に水に可溶性でないトマトの植物栄養素を含有する、トマトの脂質画分を意味する。」、同【0014】には「水に実質的に不溶性であるトマトオレオレジン及びトマト成分は、比較的高濃度の植物栄養素を含有し、例えば、リコピン、β-カロチン、フィトエン、フィトフルエン、トコフェロール、リン脂質及びフィトステロールである。」、同【0019】には「記載された本発明での使用に適したオレオレジンは、トマト又はトマト製品から得ることができる。市販のトマトオレオレジンの例は、Lycored Natural Products Industries Ltd.によるLyc-O-Mato(登録商標)である。」と記載されている。
以上の定義に鑑みれば、本願補正発明に係る「トマトオレオレジン」は、リコピンを始めとする水に不溶性のトマトの植物栄養素を含有した脂質画分であって、その好適例は「Lyc-O-Mato(登録商標)」である。
したがって、刊行物1発明の「商品名Lyc-O-Mato(R)」は、トマトから抽出される天然カロチノイドであるリコピンを6%の油状分散液として調整したものであるから、商品の種類及び配合成分の点からも、本願補正発明の「トマトの植物栄養素」であるところの「トマトオレオレジン」に相当する。

イ 刊行物1発明に係る「リコピンを、食品添加物として、健康上の予防のために食品に添加する方法」は、食品添加物を食品の調製過程で添加することが技術常識であることを鑑みると、本願補正発明の「トマトの植物栄養素の健康利益有効量により食料品の栄養価を高める方法であって」「トマトオレオレジンを、食料品に、前記食料品を調製する過程で」「加えることを含む方法」と、トマトオレオレジンを、食料品に、前記食料品を調製する過程で加えることを含む方法である点で共通する。

したがって,両発明は,
「トマトの植物栄養素であるところのトマトオレオレジンを、食料品に、前記食料品を調製する過程で加えることを含む方法。」という点で一致し,次の相違点を有する。

(相違点1)
トマトオレオレジンの配合量が,本願補正発明では「前記食料品の風味が前記オレオレジンにより実質的に影響を受けない量」であるのに対し,刊行物1発明ではそのような特定がなされていない点。
(相違点2)
トマトの植物栄養素であるところのトマトオレオレジンを、食料品に、前記食料品を調製する過程で加えることを含む方法が、本願補正発明は「トマトの植物栄養素の健康利益有効量により食料品の栄養価を高める方法」であるのに対し,刊行物1発明では健康上の予防のために食品に添加する方法である点。

(3)相違点についての検討
(相違点1について)
刊行物2?4に記載されているように、上記Lyc-O-Matoを含めてリコピンは、食品添加物として各種の食料品に既に広く用いられており(特に[2b][3b][4b]を参照。なお刊行物1に記載の「リコピン」と、刊行物3?4に記載の「リコペン」は同一化合物である。)、特に刊行物2では「水分補給飲料」,刊行物3では「発酵乳」、刊行物4では「調製粉乳」「蛋白質加水分解粉乳」「ヨーグルト」というように、上記リコピンは、トマトの風味を要しない食料品に添加されている。さらに言えば、刊行物2の[2a]には、当該水分補給飲料は良好な風味であるとも記載されている。
してみると、刊行物1発明において、上記Lyc-O-Matoを食品添加物として用いるにあたり、その添加量は[3a]【0039】に記載されているように当業者が適宜決定し得る事項であり、食料品自体の風味を考慮しながら、添加量を「前記食料品の風味が前記オレオレジンにより実質的に影響を受けない」程度に調整することは、当業者であれば容易になし得ることである。
(相違点2について)
刊行物1発明は、リコピンを、「健康上の予防のために食品に添加する方法」であって、さらに刊行物1[1a]【0003】では、トマト摂取による慢性疾患に対する罹病の危険低下や癌予防への機能に言及がなされ、「リコピンのこの保護機能は非常に効果的な抗酸化剤としてのその作用に見られる。」と記載されている。
また、刊行物2の[2b]において、Lyc-O-Matoは、乳癌及び前立腺癌の予防効果が知られており、水分補給飲料に対して「栄養補助成分」として添加される旨開示されている。
してみると、刊行物1発明のリコピンを「健康上の予防のために添加」することと、「トマトの植物栄養素の健康利益有効量により食料品の栄養価を高める」こととは、実質的に相違するものではない。
仮に相違するとしても、「健康上の予防のために添加」することを、「トマトの植物栄養素の健康利益有効量により食料品の栄養価を高める」とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

そして、本願発明の効果について検討するに、本願発明の詳細な説明【0006】?【0007】に記載の、食料品の風味はトマトの植物栄養素により実質的に影響を受けないという効果は、トマトオレオレジンの添加量の調整により当然奏されるものであり、刊行物1の記載事項及び周知技術から予測し得るものでしかない。

平成22年4月28日付け審判請求書には、刊行物1はトマトオレオレジンは水分散性が十分でなく、食料品への添加物としてふさわしくない旨を記載するものとの主張がなされているが、添加に適した食品、例えば油性食品を選択することで、この点は解消されるものといえる。なお、本願実施例1及び7においても、トマトオレオレジンを油性食品であるマーガリンに配合する例が記載されているから、上記刊行物1に関する主張を採用することはできない。

なお、平成24年3月6日付けの回答書に記載の補正案についても検討する。
審判請求人は、本願補正発明に対して、さらに限定を付して「トマトの植物栄養素の健康利益有効量により食料品の栄養価を高める方法であって、トマトオレオレジンを食料品に前記食料品の風味が前記オレオレジンにより実質的に影響を受けない量で加えることを含み、前記植物栄養素は調製過程で食料品に組み込まれ、前記トマトオレオレジンは、前記オレオレジンに安定性を付与するために、マイクロエマルション、エマルション、ビードレット、封入形態で添加され、又はトマト繊維に含まれる、方法。」とする補正案を提示する。
しかしながら、刊行物1においてLyc-O-Matoは油状分散液であるとの性質、並びにその水分散性に関する課題が開示されている以上、食品添加物としてのLyc-O-Matoの安定性や使用性の向上などを目的として、Lyc-O-Matoの剤型を適宜変更する程度のことは、当業者であれば容易になし得ることであり、それによる効果も予測し得るものでしかない。

(4)まとめ
したがって,本願補正発明は,刊行物1に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成22年4月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願請求項1?7に係る発明は,平成21年12月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであり,その請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,下記の事項により特定される発明である。
「トマトの植物栄養素の健康利益有効量により食料品の栄養価を高める方法であって、トマトオレオレジン又はトマト成分を、食料品に、前記食料品の風味が前記オレオレジン又はトマト成分により実質的に影響を受けない量で加えることを含む方法。」

2 引用刊行物およびその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物,および,その記載事項は上記「第2 2」に記載のとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記「第2」で検討した本願補正発明から,トマトの植物栄養素について,「トマトオレオレジン」から「トマトオレオレジン又はトマト成分」に拡張するものであり、さらに該栄養素を添加する時期に関する限定を解除するものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第2 3」に記載したとおり,刊行物1に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物1に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-05 
結審通知日 2012-07-10 
審決日 2012-07-23 
出願番号 特願2007-538605(P2007-538605)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
P 1 8・ 575- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 光本 美奈子  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 齊藤 真由美
▲高▼岡 裕美
発明の名称 植物栄養素により食料品の栄養価を高める方法及びそれにより得られた食品  
代理人 川口 義雄  
代理人 坪倉 道明  
代理人 大崎 勝真  
代理人 渡邉 千尋  

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