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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23D
管理番号 1283013
審判番号 不服2012-8085  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-02 
確定日 2013-12-24 
事件の表示 特願2008- 61187号「動物性油脂入りスプレッド」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月24日出願公開、特開2009-213412号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年3月11日の出願であって、平成24年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年5月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされ、その後、平成25年2月25日付けで審尋がなされ、平成25年4月24日に回答書が提出されたものである。

第2 平成24年5月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年5月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

1.補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に、
「食用油脂を含むスプレッドであって、イベリコ豚の豚脂を主要成分として含有し、豚脂が加熱殺菌されるかまたは豚脂の獸臭をマスキングする添加物が配合されていることを特徴とする、動物性油脂入りスプレッド。」
とあるのを、
「食用油脂を含むスプレッドであって、イベリコ豚の豚脂を主要成分として含有し、豚脂の獸臭をマスキングする添加物が配合されていることを特徴とする、動物性油脂入りスプレッド。」
とする補正を含むものである。

2.補正の目的
本件補正は、「豚脂が加熱殺菌されるかまたは豚脂の獸臭をマスキングする添加物が配合されている」と択一的に記載されていたものを、「豚脂の獸臭をマスキングする添加物が配合されている」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか。)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、「カモタマ,”カモノハシのタマゴ ラード”,2007年4月13日,インターネット<URL: http://ameblo.jp/kamonohashi-egg/entry-10030724706.html>」(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与。)。

ア.「今日はラードについてです。

ラードとは(豚脂):豚の脂を精製した食用油脂。豚の旨みがそのままラードに反映されるといわれているのでイベリコ豚やアグー豚のラードは高級品になっているという。

植物油に比べて酸化しにくいので、トンカツ等の揚げ物によく利用される。
また、ラーメンのスープに用いられた場合、表面で膜を張るためスープが冷めにくい。
よくラーメン屋で背油をチャッチャするのはそういう役目もあるのだ。
またヨーロッパの寒い地域では、バターなどのようにパンに付けて食べたりもする。→check

ちなみにスーパーなどの肉を売っているコーナーにある白い塊のようなものは牛脂が多い。
これをラード(豚脂)に対してヘット(牛脂)というらしい。

似ているものだがやはりそれぞれに特徴がある。
それぞれの特徴は
ラード:豚からできる油 クリーム状 融点は27-40度
ヘット:牛からできる油 やや固めの固形 融点は35-55度
また、やはり「鶏脂」や「羊脂」なる油もあるらしいのだが非常に少ないとのコトだ。

貧乏グルメの一つとしてラードご飯があるが融点が27-40度というのは好ましい。→check」

上記記載事項アを総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「バターなどのようにパンに付けて食べたりもするイベリコ豚のラード。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、文言の意味等からみて、
後者の「ラード」は、前者の「豚脂」に相当する。
そして、ラードは食用油脂であるから、後者の「バターなどのようにパンに付けて食べたりもするイベリコ豚のラード」は、前者の「食用油脂を含むスプレッド」といえる。
また、ラードは動物性油脂であるから、後者の「バターなどのようにパンに付けて食べたりもするイベリコ豚のラード」は、前者の「イベリコ豚の豚脂を主要成分として含有し」た「動物性油脂入りスプレッド」ともいえる。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。

(一致点)

「食用油脂を含むスプレッドであって、イベリコ豚の豚脂を主要成分として含有した、動物性油脂入りスプレッド。」

そして、両者は次の点で相違する。

(相違点)
動物性油脂入りスプレッドに、本願補正発明は、豚脂の獸臭をマスキングする添加物が配合されているのに対して、引用発明では、そのような特定がない点。

3-3.相違点の判断
パンに塗るスプレッドにおいて、食する人の嗜好を考慮して、その味の調整を行うことや、豚肉等の畜肉を調理する際に、肉の臭みである獣臭をマスキングするために、調味料、香辛料等の添加物を配合することは、一般に普通に行われていることである(例えば、前者については、特開2007-151547号公報【0024】?【0026】、【0034】?【0035】参照、後者について、国際公開第2006/062174号〔0003〕、〔0004〕参照。)。
また、ラードが濃厚な香味を有することも周知の事項であって(例えば、特開2005-320445号公報【0012】参照。)、その香味について、個人個人によって好き嫌いの程度に差があることも一般常識である。
そして、引用発明のイベリコ豚のラードにおいても、程度の差はあるとしても、人によっては好ましくない臭いである、畜肉由来の獣臭を有するものであるから、上記事項を勘案して、食する人の嗜好を考慮して、獣臭をマスキングするために、調味料、香辛料等の添加物を配合することは当業者が容易になし得たことである。

さらに、本願補正発明による効果も、引用発明及び周知の事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

なお、請求人は、平成25年4月24日付け回答書において、マスキングする添加物として、「塩、こしょう、クローブ、タイム、コリアンダー、オレガノ、オールスパイス、ナツメグおよびバジルからなる群から選択」することを特定する旨を述べているが、一般に、畜肉の調理において、肉の臭みをマスキングするために、調味料、香辛料等の添加物を配合することは、普通に行われていることであり、添加物として、塩、こしょう、クローブ、タイム、コリアンダー、オレガノ、オールスパイス、ナツメグおよびバジル等を選択することも当業者が適宜なし得た事項である。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年11月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「食用油脂を含むスプレッドであって、イベリコ豚の豚脂を主要成分として含有し、豚脂が加熱殺菌されるかまたは豚脂の獸臭をマスキングする添加物が配合されていることを特徴とする、動物性油脂入りスプレッド。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2」「3-1.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」「1.」の本願補正発明において、「豚脂の獸臭をマスキングする添加物が配合されている」とあったものを、「豚脂が加熱殺菌されるかまたは豚脂の獸臭をマスキングする添加物が配合されている」と択一的に特定したものである。
そうすると、本願発明の択一的に特定された事項のうち、「豚脂の獸臭をマスキングする添加物が配合されている」ことを選択した本願補正発明が、前記「第2」「3-3.」に記載したとおり、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由で、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-29 
結審通知日 2013-11-01 
審決日 2013-11-12 
出願番号 特願2008-61187(P2008-61187)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平塚 政宏  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官
山崎 勝司
小川 慶子
発明の名称 動物性油脂入りスプレッド  
代理人 中村 行孝  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 横田 修孝  

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