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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16C
管理番号 1283062
審判番号 不服2013-1726  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-30 
確定日 2013-12-26 
事件の表示 特願2007-217227「折り畳み式電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月12日出願公開、特開2009- 52581〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成19年8月23日の出願であって、平成24年10月25日付け(平成24年10月30日:発送日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年1月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成25年1月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年1月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本件発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、
「【請求項1】
表示部を有する第1筐体と、
複数の操作釦が配列された操作部を有する第2筐体と、
摺接部が設けられ第1筐体側に固定される第1カムと、前記摺接部が摺動するカム面が設けられ第2筐体側に固定される第2カムと、前記第1カムの前記摺接部と前記第2カムの前記カム面とを圧接させて前記第1筐体と前記第2筐体とを開閉方向に付勢する付勢部材と、を備え、前記第1筐体と前記第2筐体とを開閉可能に連結するヒンジユニットと、を備え、
前記第1筐体及び前記第2筐体の少なくとも一方の外周部には、重ね合わされた前記第1筐体と前記第2筐体の間に挿入する指先を案内するための案内形状部が形成され、
前記第2カムの前記カム面は、前記付勢部材によって、前記第1筐体及び前記第2筐体を閉じる方向に回転力を生じさせる第1傾斜面と、前記第1筐体及び前記第2筐体を開く方向に回転力を生じさせる第2傾斜面と、を有し、
前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面が、前記第1筐体及び前記第2筐体を閉じる方向の回転力から、前記第1筐体及び前記第2筐体を開く方向の回転力に切り替わるときに、前記第1筐体と前記第2筐体とがなす角度が20度以下になるように形成され、
前記第2傾斜面には、前記第1筐体と前記第2筐体とを所定の角度に開いた状態で一時停止させる一時停止部が形成されている折り畳み式電子機器。」
とあったものを
「【請求項1】
表示部を有する第1筐体と、
複数の操作釦が配列された操作部を有する第2筐体と、
摺接部が設けられ第1筐体側に固定される第1カムと、前記摺接部が摺動するカム面が設けられ第2筐体側に固定される第2カムと、前記第1カムの前記摺接部と前記第2カムの前記カム面とを圧接させて前記第1筐体と前記第2筐体とを開閉方向に付勢する付勢部材と、を備え、前記第1筐体と前記第2筐体とを開閉可能に連結するヒンジユニットと、を備え、
前記第1筐体及び前記第2筐体の少なくとも一方の外周部には、重ね合わされた前記第1筐体と前記第2筐体の間に挿入する指先を案内するための案内形状部が形成され、
前記第2カムの前記カム面は、前記付勢部材によって、前記第1筐体及び前記第2筐体を閉じる方向に回転力を生じさせる第1傾斜面と、前記第1筐体及び前記第2筐体を開く方向に回転力を生じさせる第2傾斜面と、を有し、
前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面が、前記第1筐体及び前記第2筐体を閉じる方向の回転力から、前記第1筐体及び前記第2筐体を開く方向の回転力に切り替わるときに、前記第1筐体と前記第2筐体とがなす角度が20度以下になるように形成され、
前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面に連続して形成された上傾斜面と、該上傾斜面に連続して形成されて前記第1筐体と前記第2筐体とを所定の角度に開いた状態で一時停止させる一時停止部と、該一時停止部に連続して形成された下傾斜面と、を有し、
前記一時停止部は、前記第2カムの軸方向に直交して形成された平坦面を有し、該平坦面に、前記摺接部が係合する係合凹部が形成され、
前記上傾斜面が前記係合凹部の底まで直線状に連続して形成され、前記平坦面が前記下傾斜面に隣接して形成されている折り畳み式電子機器。」
とする補正を含むものである。(下線は補正箇所を示すために審判請求人が付したものである。)

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項としての「第2傾斜面」に関して、「第1傾斜面に連続して形成された上傾斜面と、該上傾斜面に連続して形成されて」との限定、及び「一時停止部に連続して形成された下傾斜面と、を有し」との限定を付加し、「一時停止部」に関して、「一時停止部は、前記第2カムの軸方向に直交して形成された平坦面を有し、該平坦面に、前記摺接部が係合する係合凹部が形成され、前記上傾斜面が前記係合凹部の底まで直線状に連続して形成され、前記平坦面が前記下傾斜面に隣接して形成されている」との限定を付加すものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-311327号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】 本体に対して開閉可能に支持された蓋の軸部に固定された第1カム体と、
前記軸部と対向して前記本体に形成された収納部に回転不能且つ軸方向へスライド可能に収納された第2カム体と、
前記収納部へ収納され前記第2カム体を前記第1カム体に向かって付勢する付勢手段と、を備えたヒンジ機構であり、
前記第1カム体と前記第2カム体との突き合わせ面に、前記蓋の開放角度に応じて接離し面接状態から一部当接状態までの当接形態をとるカム面がそれぞれ形成され、前記カム面の一方に、前記蓋が前記本体に対して略90°の開放角度となったとき、他方のカム面を構成する頂部と係合する溝部が形成されたことを特徴とするヒンジ機構。」

イ.「【0003】そのヒンジ機構が使用された例として、図10に示す携帯電話52を説明する。この携帯電話52の蓋54(マイク56を備え、ダイヤルボタン58をカバーする機能を持つ)は、図11及び図12に示すようなヒンジ部材で本体60に対して開閉可能に支持されている(特開平8-204797号公報参照)。」

ウ.「【0019】また、このヒンジユニットを携帯電話に応用した場合、蓋を略90°の角度で停止させることができるので、携帯電話を机の上に立てて通話することが可能となる。」

エ.「【0020】
【発明の実施の形態】図1?図3には、本形態に係るヒンジユニット10が用いられた携帯電話12が示されている。
【0021】この携帯電話12の本体14の端部には、略角柱状の支持体16が設けられている。この支持体16の両側及びダイヤル部18は切り下げられており、蓋20を閉じたとき、本体14の外面と蓋20とが面一となるように工夫されている。
【0022】また、支持体16の両端部を挟むように蓋20から突設された二股の略円柱状の軸体22が、支持体16に回動可能に支持されている。支持体16には、軸体22と対向する面が開口した円筒状の収納部24が形成されている。収納部24の内周壁には、軸方向に沿ってガイド溝26が形成されている。このガイド溝26には、ヒンジユニット10を構成する第2カム体28の外周面から突設されたガイド突起30がスライド可能に挿入されている。
【0023】これによって、第2カム体28は、収納部24にスライド可能に保持され、また、支持体16に対して回転不能となっている。
【0024】また、図4及び図5に示すように、第2カム体28は、端部にカム面82が形成された円筒体で、シャフト34へ回転可能に挿通されている。また、シャフト34には、同じく端部にカム面32が形成された円筒状の第1カム体38が挿通されている。第1カム体38の外周面からは、突起80が突設されている。
【0025】図5及び図9(C)に示すように、カム面32、82は、蓋20の開放角度がθ=150°のとき、すなわち、シャフト34を中心としてガイド突起30と突起80が90°相対回転した位置で面接状態となり、蓋20を停止させるようになっている。また、カム面82の頂部82Aには、溝部84が形成されており、図8(C)に示すように、カム面32の頂部32Aが係合可能となっている。
【0026】一方、シャフト34の一端には、フランジ部40が形成されており、第1カム体38の抜け出しを阻止している。また、シャフト34の他端には、環状の溝42が形成されており、Eリング44が嵌め込まれる。このEリング44と第2カム体28との間には、圧縮コイルばね36が装着され、第2カム体28を第1カム体38に向かって付勢し、フリーの状態でカム面32とカム面82が面接状態となる。
【0027】また、図3に示すように、軸体22には、支持体16と対向する面が開口した円筒状の固定部46が形成されている。固定部46の内周壁には、軸方向に沿ってキー溝48が形成されている。このキー溝48には、第1カム体38の突起80が係合しており、シャフト34回りに、第1カム体38が蓋20と一体となって回転するようになっている。」

オ.「【0028】次に、本形態に係るヒンジユニット10の作用を説明する。 図6に示すように、蓋20が閉止した状態では、第1カム体38のカム面32の頂部32Aと、第2カム体28のカム面82の谷部82Bとが、噛み合っておらず、カム面32とカム面82が面接状態となっていない。すなわち、第1カム体38は、圧縮コイルばね36で付勢された第2カム体28に押されて、矢印F方向へシャフト34を中心として回転しようしており、蓋20を本体14に押圧している。このため、蓋20は、ガタ付くことなく本体14をカバーすることができ、蓋20を逆さにしても開放しない。
【0029】次に、図7に示すように、矢印M方向へ蓋20を、圧縮コイルばね36の付勢力に抗して開放させると、カム機能によって、第2カム体28が第1カム体38に押されるようにして、収納部24の奥方へ押し戻される。そして、第1カム体38のカム面82の頂部82Aと第2カム体28のカム面32の頂部32Aが突き合う位置まで開放させ(本形態では、この状態で蓋20の開放角度がθ=60°に設定されている)、さらに、蓋20を矢印M方向へ若干開放させると、カム面32の頂部32Aが滑って、蓋20が自然とM方向に開放する。すなわち、カム機能によって、圧縮コイルばね36の付勢力によって押される第2カム体28の軸方向への移動力が、第1カム体38の回転力に変換される。
【0030】そして、蓋20は、図8に示すように、カム面32の頂部32Aが、カム面82に形成された溝部84に係合して停止する。このとき、蓋20の開放角度が、θ=88°となるように設定されており、図2に示すように、蓋20を机の上等において携帯電話12の本体14を立てることができる。このため、携帯電話12を手に持たなくても通話することができる。
【0031】次に、図8の状態から、カム面32の頂部32Aが溝部84から離れるまで、蓋20を矢印M方向へ開放させると、カム機能によって、圧縮コイルばね36の付勢力によって押される第2カム体28の軸方向への移動力が、第1カム体38の回転力に変換される。そして、蓋20は、図9に示すように、カム面32とカム面82が面接し、具体的には、カム面32の頂部32Aがカム面82の谷部82Bと、カム面32の谷部32Bがカム面82の頂部82Aと係合して、蓋20が停止する(開放角度θ=150°)。」

上記記載事項及び図示内容から、以下の事項が認められる。
カ.記載事項アの「第1カム体と前記第2カム体との突き合わせ面に、前記蓋の開放角度に応じて接離し面接状態から一部当接状態までの当接形態をとるカム面がそれぞれ形成され」との記載から、第1カム体38のカム面32が第2カム体28のカム面82に摺動することが理解でき、【図6】ないし【図9】の各(C)の図示内容によれば、該カム面82には、「谷部82Bから頂部82Aに至る傾斜面」、「頂部82Aから溝部84を経由して谷部82Bに至る傾斜面」が連続して形成されており、該「頂部82Aから溝部84を経由して谷部82Bに至る傾斜面」は「頂部82Aから溝部84に至る傾斜面」、「溝部84」、「溝部84から谷部82Bに至る傾斜面」からなっており、該「頂部82Aから溝部84に至る傾斜面」が溝部84の底まで連続して形成され、さらに溝部84から連続して「溝部84から谷部82Bに至る傾斜面」が隣接して形成されている。

キ.記載事項オ(段落【0028】)の「図6に示すように、蓋20が閉止した状態では、第1カム体38は、圧縮コイルばね36で付勢された第2カム体28に押されて、矢印F方向へシャフト34を中心として回転しようしており、蓋20を本体14に押圧している。」との記載、及び【図6】の図示内容によれば、第1カム体38のカム面32が第2カム体28のカム面82の「谷部82Bから頂部82Aに至る傾斜面」で当接するときには、蓋20及び本体14に閉じる方向に回転力を生じさせている。

ク.記載事項オ(段落【0029】)の「第1カム体38のカム面82の頂部82Aと第2カム体28のカム面32の頂部32Aが突き合う位置まで開放させ(本形態では、この状態で蓋20の開放角度がθ=60°に設定されている)、さらに、蓋20を矢印M方向へ若干開放させると、カム面32の頂部32Aが滑って、蓋20が自然とM方向に開放する。すなわち、カム機能によって、圧縮コイルばね36の付勢力によって押される第2カム体28の軸方向への移動力が、第1カム体38の回転力に変換される。」との記載、段落【0031】の「図8の状態から、カム面32の頂部32Aが溝部84から離れるまで、蓋20を矢印M方向へ開放させると、カム機能によって、圧縮コイルばね36の付勢力によって押される第2カム体28の軸方向への移動力が、第1カム体38の回転力に変換される。そして、蓋20は、図9に示すように、カム面32とカム面82が面接し、・・・、蓋20が停止する」との記載、及び【図7】ないし【図9】の図示内容によれば、第1カム体38のカム面32が第2カム体28の「頂部82Aから溝部84に至る傾斜面」と「溝部84から谷部82Bに至る傾斜面」とで当接するときには、蓋20及び本体14に開く方向に回転力を生じさせている。また、「谷部82Bから頂部82Aに至る傾斜面」及び「頂部82Aから溝部84を経由して谷部82Bに至る傾斜面」が、蓋20及び本体14を閉じる方向の回転力から、前記蓋20及び前記本体14を開く方向の回転力に切り替わるときに、前記蓋20と前記本体14とがなす角度が60度であることが把握できる。

ケ.上記認定事項キ及びクから、圧縮コイルバネ36は、第2カム体28のカム面82を第1カム体38のカム面32に向かって付勢して蓋20と本体14とを開閉方向に付勢しているものといえる。

これら記載事項、図示内容及び認定事項を総合し、本願補正発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「マイクを有する蓋20と、
ダイヤル部18を有する本体14と、
カム面32が形成され蓋20の軸部に固定された第1カム体38と、前記カム面32が摺動するカム面82が形成され本体14に形成された収納部に回転不能に収納される第2カム体28と、前記第2カム体28の前記カム面82を前記第1カム体38の前記カム面32に向かって付勢して前記蓋20と前記本体14とを開閉方向に付勢する圧縮コイルバネ36と、を備え、前記蓋20と前記本体14とを開閉可能に支持するヒンジユニット10と、を備え、
前記第2カム体28の前記カム面82は、前記圧縮コイルバネ36によって、前記蓋20及び前記本体14に閉じる方向に回転力を生じさせる谷部82Bから頂部82Aに至る傾斜面と、頂部82Aから溝部84を経由して谷部82Bに至る傾斜面と、を有し、
谷部82Bから頂部82Aに至る傾斜面及び頂部82Aから溝部84を経由して谷部82Bに至る傾斜面が、前記蓋20及び前記本体14を閉じる方向の回転力から、前記蓋20及び前記本体14を開く方向の回転力に切り替わるときに、前記蓋20と前記本体14とがなす角度が60度になるように形成され、
頂部82Aから溝部84を経由して谷部82Bに至る傾斜面は、谷部82Bから頂部82Aに至る傾斜面に連続して形成された頂部82Aから溝部84に至る傾斜面と、該頂部82Aから溝部84に至る傾斜面に連続して形成されて前記蓋20と前記本体14とを88度に開いた状態で停止させる溝部84と、該溝部84に連続して形成された溝部84から谷部82bに至る傾斜面と、を有し、
前記溝部84は、前記カム面32が係合するように形成され、
頂部82Aから溝部84に至る傾斜面が前記溝部84の底まで連続して形成されている携帯電話12。」

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、
後者の「マイクを有する」「蓋20」と前者の「表示部を有する」「第1筐体」とは、「第1筐体」という限りにおいて共通する。
後者の「ダイヤル部18を有する」「本体14」は前者の「複数の操作釦が配列された操作部を有する」「第2筐体」相当し、
後者の「カム面32」は、前者の「摺接部」に相当し、後者の「カム面32が形成され蓋20の軸部に固定された」「第1カム体38」は、前者の「摺接部が設けられ第1筐体側に固定される」「第1カム」に相当する。
後者の「カム面82」は、前者の「カム面」に相当し、後者の「カム面32が摺動するカム面82が形成され本体14に形成された収納部に回転不能に収納される」「第2カム体28」と、前者の「摺接部が摺動するカム面が設けられ第2筐体側に固定される」「第2カム」に相当する。
後者の「第2カム体28のカム面82を第1カム体38のカム面32に向かって付勢して蓋20と本体14とを開閉方向に付勢する」「圧縮コイルバネ36」は、後者の「第1カムの摺接部と第2カムのカム面とを圧接させて第1筐体と第2筐体とを開閉方向に付勢する」「付勢部材」に相当する。
後者の「蓋20と本体14とを開閉可能に支持する」「ヒンジユニット10」は、後者の「第1筐体と第2筐体とを開閉可能に連結する」「ヒンジユニット」に相当する。
後者の「第2カム体28のカム面82は、圧縮コイルバネ36によって、蓋20及び本体14に閉じる方向に回転力を生じさせる」「谷部82Bから頂部82Aに至る傾斜面」は、前者の「第2カムのカム面は、付勢部材によって、第1筐体及び第2筐体を閉じる方向に回転力を生じさせる」「第1傾斜面」に相当する。
後者の「頂部82Aから溝部84を経由して谷部82Bに至る傾斜面」は前者の「第2斜面」に相当し、前者は回転力が生じない一時停止部を含めた該「第2傾斜面」が「開く方向に回転力を生じさせる」と表現しているので、この表現ぶりに合わせれば、同じく回転力が生じない溝部84を含めた「頂部82Aから溝部84を経由して谷部82Bに至る傾斜面」も蓋20及び本体14を開く方向に回転力を生じさせているといえるから、後者の「頂部82Aから溝部84を経由して谷部82Bに至る傾斜面」は、前者の「第1筐体及び第2筐体を開く方向に回転力を生じさせる」「第2傾斜面」に相当する。
後者の「谷部82Bから頂部82Aへ至る傾斜面及び頂部82Aから溝部84に至る傾斜面が、蓋20及び本体14を閉じる方向の回転力から、前記蓋20及び前記本体14を開く方向の回転力に切り替わるときに、前記蓋20と前記本体14とがなす角度が60度になるように形成され」ると、前者の「第1傾斜面及び第2傾斜面が、第1筐体及び第2筐体を閉じる方向の回転力から、前記第1筐体及び前記第2筐体を開く方向の回転力に切り替わるときに、前記第1筐体と前記第2筐体とがなす角度が20度以下になるように形成され」るとは、「第1傾斜面及び第2傾斜面が、第1筐体及び第2筐体を閉じる方向の回転力から、前記第1筐体及び前記第2筐体を開く方向の回転力に切り替わるときに、前記第1筐体と前記第2筐体とがなす角度が所定の角度になるように形成され」るという限りにおいて共通する。
後者の「谷部82Bから頂部82Aに至る傾斜面に連続して形成された」「頂部82Aから溝部84に至る傾斜面」は前者の「第1傾斜面に連続して形成された」「上傾斜面」に相当する。
後者の「蓋20と本体14とを88度に開いた状態で停止させる」「溝部84」は、前者の「第1筐体と前記第2筐体とを所定の角度に開いた状態で一時停止させる」「一時停止部」に含まれる。
後者の「溝部84に連続して形成された」「溝部84から谷部82Bに至る傾斜面」は前者の「一時停止部に連続して形成された」「下傾斜面」に相当する。
後者の「溝部84は、カム面32が係合するように形成され」ると、前者の「一時停止部は、第2カムの軸方向に直交して形成された平坦面を有し、該平坦面に、摺接部が係合する係合凹部が形成され」るとは、「一時停止部は、摺接部が係合する係合凹部が形成され」るという限りにおいて共通する。
後者の「頂部82Aから溝部84に至る傾斜面が前記溝部84の底まで連続して形成されている」と、前者の「上傾斜面が係合凹部の底まで直線状に連続して形成され、平坦面が下傾斜面に隣接して形成されている」とは「上傾斜面が係合凹部の底まで連続して形成されている」という限りにおいて共通する。
後者の「携帯電話12」は、蓋20と本体14とを開閉可能に支持するものであるから、後者の「折り畳み式電子機器」に含まれる。

そこで、両者は、本願補正発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「第1筐体と、
複数の操作釦が配列された操作部を有する第2筐体と、
摺接部が設けられ第1筐体側に固定される第1カムと、前記摺接部が摺動するカム面が設けられ第2筐体側に固定される第2カムと、前記第1カムの前記摺接部と前記第2カムの前記カム面とを圧接させて前記第1筐体と前記第2筐体とを開閉方向に付勢する付勢部材と、を備え、前記第1筐体と前記第2筐体とを開閉可能に連結するヒンジユニットと、を備え、
前記第2カムの前記カム面は、前記付勢部材によって、前記第1筐体及び前記第2筐体を閉じる方向に回転力を生じさせる第1傾斜面と、前記第1筐体及び前記第2筐体を開く方向に回転力を生じさせる第2傾斜面と、を有し、
前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面が、前記第1筐体及び前記第2筐体を閉じる方向の回転力から、前記第1筐体及び前記第2筐体を開く方向の回転力に切り替わるときに、前記第1筐体と前記第2筐体とがなす角度が所定の角度となるように形成され、
前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面に連続して形成された上傾斜面と、該上傾斜面に連続して形成されて前記第1筐体と前記第2筐体とを所定の角度に開いた状態で一時停止させる一時停止部と、該一時停止部に連続して形成された下傾斜面と、を有し、
前記一時停止部は、前記摺接部が係合する係合凹部が形成され、
前記上傾斜面が前記係合凹部の底まで連続して形成されている折り畳み式電子機器。」

そして、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
本願補正発明の電子機器は、「表示部を有する第1筐体」と「複数の操作釦が配列された操作部を有する第2筐体」を備えるのに対し、
引用発明の電子機器は、「マイクを有する蓋20」と「ダイヤル部18を有する本体14」を備える点。

[相違点2]
本願補正発明は、「第1筐体及び第2筐体の少なくとも一方の外周部には、重ね合わされた前記第1筐体と前記第2筐体の間に挿入する指先を案内するための案内形状部が形成され」、かつ「前記第1筐体と前記第2筐体とがなす角度が20度以下」で「前記第1筐体及び前記第2筐体を開く方向の回転力に切り替わる」のに対し、
引用発明は、蓋体20及び本体14に「案内形状部」が形成されておらず、前記蓋20及び前記本体14とがなす角度が60°で前記蓋20及び前記本体14を開く方向の回転力に切り替わる点。

[相違点3]
一時停止部に関し、
本願補正発明は、「第2カムの軸方向に直交して形成された平坦面を有し、該平坦面に、摺接部が係合する係合凹部が形成され、上傾斜面が前記係合凹部の底まで直線状に連続して形成され、前記平坦面が下傾斜面に隣接して形成されている」のに対し、
引用発明は、「平坦面」を有しておらず、頂部82Aから溝部84に至る傾斜面が溝部84の底まで「直線状」に連続して形成されているか明らかでない点。

4.判断
(1)[相違点1]について検討する。
折りたたみ式の携帯電話において、操作釦が配列された本体部と表示部とをヒンジユニットにより開閉可能に支持する形式のものは、従来周知(特表2004-533583号公報、特開2001-165144号公報等参照。)であるから、引用発明の電子機器において、「マイクを有する蓋20」と「ダイヤル部18を有する本体14」を備える形式のものから、表示部と本体部を備える形式のものに変更することは、当業者であれば適宜になし得ることである。
よって、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)[相違点2]について検討する。
折りたたみ式の携帯電話において、操作性の向上のために、表示部と本体部の外周部に、重ね合わされた前記表示部と本体部の間に挿入する指先を案内するための凹部を形成し、該凹部に指先を差し込んで表示部と本体部が開いた時に開方向の回転力を発生させることは従来周知の技術であり(前掲の特開2001-165144号公報の段落【0050】ないし【0052】及び【図2】を参照。)、携帯電話の技術分野において操作性を向上させることは一般的な課題であるところ、相違点1で検討したとおり、引用発明の電子機器において、「マイクを有する蓋20」と「ダイヤル部18を有する本体14」を備える形式のものから、表示部と本体部を備える形式のものに変更する際に、引用発明と周知技術に接した当業者であれば、引用発明に周知の技術を適用し、表示部と本体部の外周部に、重ね合わされた表示部と本体部の間に挿入する指先を案内するための凹部を形成し、該凹部に指先を差し込んで表示部と本体部が若干開いた時に開方向の回転力を発生させるようにすることは、当業者であれば想起し得ることである。その際に、凹部に指先を差し込んで表示部と本体部が開いた時の開閉角度は設計的事項であり、引用発明がフリップ角度(第1筐体及び第2筐体を閉じる方向の回転力から、前記第1筐体及び前記第2筐体を開く方向の回転力に切り替わるときに、前記第1筐体と前記第2筐体とがなす角度)である60°を超えると開方向の回転力が生じる構造に照らし、引用発明においてフリップ角度を60°から20°以下に変更することは困難性はない。
よって、引用発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)[相違点3]について検討する。
折りたたみ式の携帯電話の技術において、開閉途中のある一定の開閉角度範囲内で任意の開閉角度で一時停止できるフリーストップ型のヒンジユニットは本願明細書の段落【0004】にも記載されているように広く知られており、その具体的手法として、停止する溝に連続してカムの軸方向に直交して形成された平坦部を設けることも、従来周知の技術である。(.例えば、国際公開第2004/045097号公報の9頁8行ないし19行及び10頁15行ないし25行並びにFig.5及びFig.7の溝(grooves)782d及び表面(surface)78d、特開2006-144892号公報の段落【0021】及び【図5】の第2カム面13及び平坦カム面14を参照。)
そして、引用発明において、蓋20を開いて机上に立てる場合、机上の水平度等に応じて停止角度を調整する要望や、使用者の視線位置または好み等に応じて角度を調整する要望があることから、引用発明において蓋20と本体14の停止する角度を調整する動機付けは十分あるものといえる。
してみると、引用発明の蓋20と本体14とを88度に開いた状態で停止させる溝部84の構成において、従来周知の技術を適用し、該溝部84に連続して調整しろ分である平坦部を設けることは当業者であれば適宜になし得ることであり、そのような構造を採れば、平坦面に溝部84が形成され、該平坦面から谷部82Bに至る傾斜面が形成されることになる。
また、頂部82Aから溝部84に至る傾斜面が係合凹部の底まで「直線状」に連続して形成される点は単なる設計変更にすぎない。
よって、引用発明において、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

なお、請求人は回答書において、「一時停止部の定義、あるいは下傾斜面が上傾斜面よりも急峻である点について更に明確に特定すべく、限定事項を追加する用意がございます」と述べているが、一時停止部の定義及び下傾斜面が上傾斜面よりも急峻である点を補正したとしても、その点が上記判断に影響を及ぼすものでない。

(4)格別な効果について
本願補正発明による効果も、引用発明、及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成24年8月20日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「第2.[理由]1.」に記載したとおりである。

2.引用文献の記載事項
引用文献の記載事項は、前記「第2.2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、前記「第2.[理由]1.」に記載した限定事項を省くものである。そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、前記「第2.[理由]1.」の限定事項により減縮したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.3.及び4.」に記載したとおり、引用発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-25 
結審通知日 2013-10-29 
審決日 2013-11-12 
出願番号 特願2007-217227(P2007-217227)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16C)
P 1 8・ 121- Z (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 茂樹  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 森川 元嗣
冨岡 和人
発明の名称 折り畳み式電子機器  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 石橋 政幸  
代理人 緒方 雅昭  
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