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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E03C
管理番号 1283100
審判番号 不服2012-18375  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-20 
確定日 2014-01-14 
事件の表示 特願2004-134091号「節水部材及びそれを用いた節水具」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月10日出願公開、特開2005-314960号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年4月28日の出願であって、平成24年6月12日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成24年9月20日に本件審判が請求されるとともに、審判請求と同時に請求項2?8を削除する手続補正がなされ、その後、平成25年4月26日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年7月16日に回答書が提出されたものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記平成24年9月20日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
通水空間を有し、かつ外向きに突出する突出部を有する台座と、
通水空間を有し、前記台座に対して着脱可能に組み合わせられる円筒部材と、
前記台座と円筒部材との間に着脱可能に装着される複数枚の板状メッシュの重ね合わせからなり、前記複数枚の板状メッシュの組み合わせにより前記通水空間における吐水流量の調整をする節水部材と
を具備し、水流の生じる管路の途中から吐水出口に至るまでのいずれかの箇所において、前記突出部を介して該管路内に組み込まれるようにしたことを特徴とする節水具。」

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実公昭60-14835号公報には、水道蛇口用整流器に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「内部に網板10,11・・・・・・を支架した上下端開口する端筒状の整流器主体1の上面に、中心にネジ穴2を透設した蓋板3を装着固定し、更に蓋板3上には上端に輪縁4を隆成したネジ筒5を、その下端を上記ネジ孔2に螺挿するとともに、予め輪縁4と蓋板3との間に所要径のゴム筒6を嵌挿して突立してなる水道蛇口用整流器。」(実用新案登録請求の範囲)
(イ)「この考案は、水道の蛇口に取りつけて用いる整流器に関するものである。
水道の蛇口に整流器を取付けると、水流に抵抗を与えて飛散を防ぐとともに、水質を柔らげる効果があるとされ、この整流器はまた節水の目的にも利用されている。」(第1欄第10?15行)
(ウ)「この考案の整流器は、その取付部を蛇口の内部に挿入して固定するものであり、固定が着実であるとともに蛇口と同径あるいはそれ以下に作ることができるから、目立たないスマートな外観に形成することができる利点がある。」(第1欄第22?26行)
(エ)「この考案の実施例を図面について説明すると、全体は短筒状の整流器主体1の上面に、中心にネジ孔2を設けた蓋板3を螺挿するとともに、このネジ孔2に対して上端に輪縁4を隆成したネジ筒5を、その外面に予め蛇口の先端内部に適合する外径のゴム筒6を嵌装して、螺着したものである。」(第1欄第27行?第2欄第6行)
(オ)「なお、図の実施例においては整流器主体1は蛇口とはぼ等径で上下端開口する外筒7の内部に、ゆるく嵌合された内筒9、互に網目を45°ずらせて重合した網板10、スペーサー23、互に網目を45°ずらせて重合した網板11、スペーサー12、打抜網板13、スペーサー14、打抜網板15、上部内筒16、ゴム製ワツシヤー8、周縁に長孔を有する円板17、透孔18,18を有するとともに上下面に突条19を設けた抵抗板20、上記円板、抵抗板とともに内筒内に固嵌される円板21、これらを連ねる軸22で構成されているが、この型式に限るものではない。」(第2欄第6?17行)

すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が開示されているものということができる。
「水道の蛇口に取りつけると、水流に抵抗を与えて飛散を防ぐとともに、水質を柔らげる効果があるとされ、また節水の目的にも利用される、水道の蛇口に取りつけて用いる整流器であって、
全体は短筒状の整流器主体1の上面に、中心にネジ孔2を設けた蓋板3を螺挿するとともに、このネジ孔2に対して上端に輪縁4を隆成したネジ筒5を、その外面に予め蛇口の先端内部に適合する外径のゴム筒6を嵌装して、螺着したものであり、
整流器主体1は蛇口とはぼ等径で上下端開口する外筒7の内部に、ゆるく嵌合された内筒9、互に網目を45°ずらせて重合した網板10、スペーサー23、互に網目を45°ずらせて重合した網板11、スペーサー12、打抜網板13、スペーサー14、打抜網板15、上部内筒16、ゴム製ワツシヤー8、周縁に長孔を有する円板17、透孔18,18を有するとともに上下面に突条19を設けた抵抗板20、上記円板、抵抗板とともに内筒内に固嵌される円板21、これらを連ねる軸22で構成される水道蛇口用整流器。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-93009号公報(以下、「刊行物2」という。)には、節水栓に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0010】
【実施例】図1はこの発明に係る節水栓を示す斜視図、図2は図1に示した節水栓を示す断面図、図3は図1に示した節水栓の円筒体を示す斜視図、図4は図1に示した節水栓の円筒体を示す断面図、図5は図1に示した節水栓の移動体を示す斜視図、図6は図1に示した節水栓の移動体を示す断面図である。図に示すように、有底の円筒体1の端部にカラー2が設けられ、円筒体1の側部に四角形状の側部穴3が設けられ、円筒体1の内面のカラー2側に雌ネジ4が設けられ、移動体5の中央部に中央穴7が設けられ、移動体5の外周面に雌ネジ4と螺合する雄ネジ6が設けられ、移動体5の端部に一対の凹部8が設けられ、移動体5の雄ネジ6部に目盛9が設けられている。」
(イ)「【0011】図7は図1に示した節水栓の使用状態を示す図、図8は図7に示したパッキンを示す図である。図に示すように、樹脂等からなりかつ内面中央部に溝14を有するパッキン13がカラー2に取り付けられ、給水管10の端部と給水栓11の端部とによってパッキン13が挟まれ、袋ナット12が給水栓11の端部に設けられた雄ネジと螺合している。」
(ウ)「【0013】図9は図1に示した節水栓の他の使用状態を示す図である。図7に示した使用状態においては、給水管10内に円筒体1を位置させたが、図9に示すように、給水栓11内に円筒体1を位置させてもよい。そして、円筒体1に対する移動体5の位置が同一であっても、図7、図9に示した使用状態における節水栓部の流路抵抗は異なるから、給水栓11の給水口から給水される給水量の減少量を変化させることができる。」
(エ)「【0014】図10は図1に示した節水栓の他の使用状態を示す図、図11は図10に示した増径カラーを示す図、図12は図10に示したパッキンを示す図である。図に示すように、カラー2部に増径カラー17が設けられ、カラー2、増径カラー17に樹脂等からなるパッキン18が取り付けられている。」

すると、刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2記載の発明」という。)が開示されているものということができる。
「端部にパッキン13が取り付けられるカラー2が設けられ、側部に四角形状の側部穴3が設けられ、内面のカラー2側に雌ネジ4が設けられた有底の円筒体1と、
外周面に雌ネジ4と螺合する雄ネジ6が設けられた移動体5と、
が設けられ、
使用状態で、給水管10の端部と給水栓11の端部とによってパッキン13が挟まれる節水栓。」

(3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭56-100937号公報(以下、「刊行物3」という。)には、水道蛇口又は類似の衛生設備に取付けるための噴流調節器に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「この種の噴流調節器は公知でありかつ水道蛇口又は類似の衛生設備から流出する液体に、気体一般には空気を混入して均一な噴流を得るのに役立てられる。この種の噴流調節器は例えば洗面所、台所等の水道蛇口に多用される。」(第2頁左下欄第12?16行)
(イ)「即ち、噴流調節シーブの網目幅及び線材径の選択が噴流調節に著しい影響を与える。」(第3頁左上欄第13?14行)

3.対比・判断
(1)両発明の対応関係
(a)刊行物1記載の発明の「蓋板3」は、水がその内側をとおり抜けるものであることが自明であるので、本願発明の「通水空間を有し、前記台座に対して着脱可能に組み合わせられる円筒部材」に相当する。
(b)刊行物1記載の発明の「水道蛇口用整流器」は、「節水の目的にも利用される」ものであるので、本願発明の「節水具」に相当する。
(c)刊行物1記載の発明の「中心にネジ孔2を設けた蓋板3」と、本願発明の「通水空間を有し、かつ外向きに突出する突出部を有する台座」とは、前者が、「このネジ孔2に対して上端に・・ネジ筒5を・・螺着したもの」であって、該ネジ筒5の内部を通して水が流れ込むものであることが自明であるので、両者は、「通水空間を有する台座」である点で共通する。
(d)刊行物1記載の発明の「互に網目を45°ずらせて重合した網板10」「互に網目を45°ずらせて重合した網板11」「打抜網板13」「打抜網板15」は、「蓋板3を螺挿する」「整流器主体1」の「外筒7の内部に、ゆるく嵌合された」ものであるので、本願発明の「台座と円筒部材との間に着脱可能に装着される複数枚の板状メッシュの重ね合わせ」に相当する。
そして、刊行物1記載の発明の「網板10」「網板11」「打抜網板13」「打抜網板15」と、本願発明の「前記台座と円筒部材との間に着脱可能に装着される複数枚の板状メッシュの重ね合わせからなり、前記複数枚の板状メッシュの組み合わせにより前記通水空間における吐水流量の調整をする節水部材」とは、「台座と円筒部材との間に着脱可能に装着される複数枚の板状メッシュの重ね合わせからなる部材」である点で共通する。

(2)両発明の一致点
「通水空間を有する台座と、
通水空間を有し、前記台座に対して着脱可能に組み合わせられる円筒部材と、
台座と円筒部材との間に着脱可能に装着される複数枚の板状メッシュの重ね合わせからなる部材とを具備する節水具。」

(3)両発明の相違点
ア.台座が、本願発明は「外向きに突出する突出部を有」し、「水流の生じる管路の途中から吐水出口に至るまでのいずれかの箇所において、前記突出部を介して該管路内に組み込まれるようにした」ものであるのに対して、刊行物1記載の発明はそうでない点。
イ.台座と円筒部材との間に着脱可能に装着される複数枚の板状メッシュの重ね合わせからなる部材が、本願発明は「前記複数枚の板状メッシュの組み合わせにより前記通水空間における吐水流量の調整をする節水部材」であるのに対して、刊行物1記載の発明はそのようなものか不明な点。

4.本願発明の容易推考性の検討
(1)相違点ア.について
(a)刊行物2記載の発明の「カラー2」は、本願発明の「外向きに突出する突出部」に相当する。
そして、刊行物2記載の発明の「端部にパッキン13が取り付けられるカラー2が設けられ」「た有底の円筒体1」は、本願発明の「通水空間を有し、かつ外向きに突出する突出部を有する台座」に相当する。
(b)刊行物2記載の発明の「給水管10の端部と給水栓11の端部とによってパッキン13が挟まれ」た「使用状態」における節水栓の配置場所は、水流の生じる管路の途中から吐水出口に至るまでのいずれかの箇所であることが自明であるので、本願発明の「水流の生じる管路の途中から吐水出口に至るまでのいずれかの箇所」及び「管路内」に相当する。
そして、刊行物2記載の発明の「使用状態で、給水管10の端部と給水栓11の端部とによってパッキン13が挟まれる」ことは、「パッキン13」がカラー2に取り付けられたものであるので、本願発明の「水流の生じる管路の途中から吐水出口に至るまでのいずれかの箇所において、前記突出部を介して該管路内に組み込まれるようにしたこと」に相当する。
(c)刊行物2記載の発明の「節水栓」は、本願発明の「節水具」に相当する。
(d)そうすると、刊行物2記載の発明と本願発明とは、次の点で一致するものである。
「通水空間を有し、かつ外向きに突出する突出部を有する台座を具備し、水流の生じる管路の途中から吐水出口に至るまでのいずれかの箇所において、
前記突出部を介して該管路内に組み込まれるようにした節水具。」
(e)刊行物2記載の発明と、刊行物1記載の発明とは、節水の目的に利用される水道の流路に取付ける装置であるという基本構成で共通するものである。
そして、刊行物1記載の発明の整流器は、「水道の蛇口に取りつけて用いる」ものであるものの、「水質を柔らげる効果」や「節水の目的」に着目すると、必ずしも蛇口に配置する必然性が存在するものでもないので、刊行物1記載の発明の整流器を、刊行物2記載の発明の様にカラー2(本願発明の「突出部」に相当するもの。)を有するものとし、該カラー2を介して給水管10の端部と給水栓11の端部との間(本願発明の「管路内」に相当する場所。)に組み込まれるものとして、本願発明の相違点ア.の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点イ.について
(a)刊行物1記載の発明は、「網板10」「網板11」「打抜網板13」「打抜網板15」(本願発明の「複数枚の板状メッシュの組み合わせ」に相当するもの。)を有するものであるものの、刊行物1には、該「網板10」「網板11」「打抜網板13」「打抜網板15」がどのような機能を期待して配されたものであるかを特定する記載が存在しない一方、引用発明の「抵抗板20」は、その名称から、抵抗を与える機能のものであることが自明である。
そうすると、刊行物1記載の発明の整流器が「水流に抵抗を与えて飛散を防ぐとともに、水質を柔らげる効果があるとされ、また節水の目的にも利用される」ものであったとしても、それは整流器全体としての機能であり、当該記載を根拠として、刊行物1記載の発明の「網板10」「網板11」「打抜網板13」「打抜網板15」が、相違点イ.に係る構成の「複数枚の板状メッシュの組み合わせにより前記通水空間における吐水流量の調整をする節水部材」に相当するものとは言えない。
(b)さらに、刊行物3記載事項(イ)には、「噴流調節シーブの網目幅及び線材径の選択が噴流調節に著しい影響を与える」ことが記載されているが、当該影響は、刊行物3記載事項(ア)の「液体に、気体一般には空気を混入して均一な噴流を得る」ことに対するものと解するのが相当であり、網目幅及び線材径の選択により、水流に与える抵抗や、流量を調整することが記載されているものではない。
(c)そうすると、節水具に「複数枚の板状メッシュの組み合わせにより前記通水空間における吐水流量の調整をする節水部材とを具備」することは、刊行物1?3のいずれにも記載も示唆もされておらず、しかも、本願発明は、当該構成を備えることによって、明細書記載の「【0006】・・・板状メッシュを複数枚重ね合わせてなる節水部材を台座と円筒部材との間で着脱可能に装着する構成であるから、節水部材を取り替えるだけで吐水流量の調整を極めて簡便に行うことができるようになる。」という作用効果を奏するものと認められる。
したがって、本願発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の発明、及び刊行物3記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5.むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2013-12-12 
出願番号 特願2004-134091(P2004-134091)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E03C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊藤 昌哉鈴木 秀幹森次 顕  
特許庁審判長 杉浦 淳
特許庁審判官 中川 真一
住田 秀弘
発明の名称 節水部材及びそれを用いた節水具  
代理人 飯塚 義仁  
代理人 飯塚 義仁  

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