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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A01N
管理番号 1283120
審判番号 不服2013-2079  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-04 
確定日 2014-01-21 
事件の表示 特願2007-169796「アタマジラミ駆除用シャンプー」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月15日出願公開、特開2009- 7291、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年6月27日の出願であって、平成24年12月12日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年2月4日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされたものである。
そして、当審において、平成25年3月29日付けで審査官により作成された前置報告書について、同年10月22日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は同年11月19日付けで回答書を提出した。

第2 平成25年2月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「(a)シラミ駆除成分として3-フェノキシベンジル-d-シス・トランス-クリサンテマート、(b)発泡剤として一般式
【化1】

(R_(1)は炭素数8?16のアルキル基、R_(2)、R_(3)は炭素数1?2のアルキル基又はヒドロキシエチル基を表し、R_(2)、R_(3)は同一であっても異なっていてもよい)で表されるアルキルジメチルアミンオキサイド、(c)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである可溶化剤、及び(d)精製水を含有し、粘度が100cps以下(25℃)であるシャンプー組成物を、吐出口におけるネットの網目が30?300メッシュである泡吐出容器に収容してなり、吐出された泡を毛髪の根元に処理することによって、アタマジラミ駆除効果を増強させたことを特徴とするアタマジラミ駆除用シャンプー製品。」
と補正するものである。

2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載の発明を特定するために必要な事項である「多孔質膜」について、「ネット」と特定し、同じく補正前の「シラミ駆除効果を増強させたことを特徴とするシラミ駆除用シャンプー製品」を「アタマジラミ駆除効果を増強させたことを特徴とするアタマジラミ駆除用シャンプー製品」とアタマジラミ製品に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特許第3274223号公報(以下、「引用文献A」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.「【請求項1】 1)一般式
【化1】

(R_(1) は炭素数8?16のアルキル基、R_(2) 、R_(3) は炭素数1?2のアルキル基またはヒドロキシエチル基を表し、R_(2) 、R_(3) は同一であっても異なっていてもよい)で表されるアミンオキサイド、
2)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーおよび、
3)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる非イオン性界面活性剤、および薬効成分として3-フェノキシベンジル-d-シス・トランスクリサンテマートを含有することを特徴とするシャンプー組成物。
【請求項2】非イオン性界面活性剤が、1)前記一般式で表されるアミンオキサイド、2)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーおよび、3)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる請求項1記載のシャンプー組成物。」(特許請求の範囲の請求項1、2)

イ.「【産業上の利用分野】本発明は、薬効成分として3-フェノキシベンジル-d-シス・トランスクリサンテマート(以下、d-フェノトリンという)を物理的および化学的に安定な状態で含有する、刺激性の少ないシラミ駆除用シャンプー組成物に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】シャンプー組成物に配合される界面活性剤としては、皮膚や眼に対して低刺激であることが必要とされている。特に小学児童など幼年層への適用が多いアタマジラミの治療薬を考えた場合、極力刺激の少ない使用簡便なシラミ駆除剤が望まれていた。」(段落 【0001】?【0003】)

ウ.「【実施例】以下に実施例および実験例を用いて本発明を詳しく説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
<実験例1>実施例1?3、比較例1?2に示す組成のシャンプーを調製し、次の方法により性能評価を行った。
・・・
(実施例1)
【表5】
d-フェノトリン 0.4g
成分(A)アロモックス(登録商標)DMCW 8.0g
(ライオンアクソ゛(株) 製:アルキルシ゛メチルアミンオキサイト 30%含有)
プルロニック(登録商標)F-68 20.0g
(BASF製:POE(160)POP(30)フ゛ロックホ゜リマー)
ニッコール(登録商標)TO-10 5.0g
(日光ケミカルス゛ 製:ホ゜リオキシエチレン(20)ソルヒ゛タンモノオレエート)
成分(B)エデト酸ナトリウム 0.001g
香料 微量
塩酸 適量
精製水 全量100ml
上記成分(A)と精製水を適量混合撹拌した後、塩酸によりpH6に調整する、次いで、d-フェノトリンと成分(B)を添加攪拌し、残量の精製水を加えシャンプー組成物を得た。以下、同様の方法で実施例および比較例を得た。
(実施例2)
【表6】
d-フェノトリン 0.4g
成分(A)アロモックス(登録商標)DMCW 12.5g
(ライオンアクソ゛(株) 製:アルキルシ゛メチルアミンオキサイト゛ 30%含有)
プルロニック(登録商標)F-68 20.0g
(BASF製:POE(160)POP(30)フ゛ロックホ゜リマー)
ニッコール(登録商標)TO-10 5.0g
(日光ケミカルス゛ 製:ホ゜リオキシエチレン(20)ソルヒ゛タンモノオレエート)
成分(B)エデト酸ナトリウム 0.001g
香料 微量
塩酸 適量
精製水 全量100ml
(実施例3)
【表7】
d-フェノトリン 0.4g
成分(A)アロモックス(登録商標)DMCW 8.0g
(ライオンアクソ゛(株) 製:アルキルシ゛メチルアミンオキサイト゛ 30%含有)
プルロニック(登録商標)L-44 40.0g
(BASF製:POE(20)POP(20)フ゛ロックホ゜リマー)
ニッコール(登録商標)NP-10 3.75g
(日光ケミカルス゛ 製:ホ゜リオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル )
成分(B)エデト酸ナトリウム 0.001g
香料 微量
色素 微量
塩酸 適量
精製水 全量100ml」(段落【0010】?【0017】)

平成25年3月29日付け前置報告において引用された特開平9-20618号公報(以下、「引用文献B」という。)には、以下の事項が記載されている。

エ.「【発明の属する技術分野】本発明は、洗浄剤組成物が泡吐出容器に充填された皮膚洗浄用品に関する。より詳しくは、使用感が良好で、高い洗浄力を有し、しかも、クリーミーで保形性の良好な泡を吐出する皮膚洗浄用品に関する。」(段落 【0001】)

オ.「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の泡吐出容器に充填されている洗浄剤組成物は、泡密度が大きく、保形性が不十分であるという問題があった。このため、泡吐出容器から吐出された泡で皮膚をマッサージした場合、マッサージ中に泡が消えてしまい、十分なマッサージ感が得られないという問題があり、さらに落ちにくい汚れを十分に洗浄除去できないという問題もあった。この問題は、汗などに対しても落ちにくいメイクアップ製品や、水に対する溶解性が比較的低いポリマーを含有する高セット力の毛髪化粧料などの洗浄の場合に特に顕著であった。
本発明は、以上のような従来技術の課題を解決しようとするものであり、使用感が良好で、高い洗浄力を有し、しかも、クリーミーで良好な保形性の泡を吐出する皮膚洗浄用品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】本発明者らは、特定のノニオン界面活性剤と、アニオン系界面活性剤のなかでも特定のリン酸エステル系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤又はスルホン酸系界面活性剤とを配合してなる洗浄剤組成物を、多孔質膜を有する泡吐出容器に充填し、その容器から多孔質膜を経て吐出させた泡により、従来落ちにくいとされていた汚れを良好な使用感で且つ十分に洗浄できることを見出し、本発明を完成させるに至った。」(段落 【0004】?【0006】)

カ.「これらの両性界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤あるいはノニオン系界面活性剤は1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、それらの配合量は、洗浄剤組成物中に合計で好ましくは0.5?30重量%、より好ましくは1?20重量%である。また、本発明の皮膚洗浄用品に使用する洗浄剤組成物は、その粘度が高すぎると多孔質膜の透過が困難となり、クリーミーな泡が得られにくくなる。従って、25℃におけるその粘度を好ましくは1?100cps、より好ましくは1?50cpsとする。
・・・
本発明の皮膚洗浄用品は以上の洗浄剤組成物を泡吐出容器に充填したものであるが、このような泡吐出容器としては、多孔質膜を有するものを使用する。これによりクリーミーな泡を生成し、皮膚の洗浄時に良好な使用感を得ることができる。ここで、多孔質膜としては、例えばスポンジ、焼結体、ネットなどを例示することができる。中でも、多孔質膜に付着残存した洗浄剤組成物が乾燥固化して目詰まりを起こした場合に、次回の吐出時に泡の流れによって、直ちに固化物を溶解して目詰まりを解消できるという点から薄肉のネットを使用することが好ましい。この場合、ネットのメッシュとしては、好ましくは50?500メッシュ、より好ましくは150?400メッシュとする。この範囲のメッシュのネットを使用することにより、マッサージ性に優れ、クリーミーな泡を生成することができる。また、このようなメッシュの材質としては、ナイロン、ポリエステル等を好ましく例示することができる。」(段落 【0045】?【0048】)

キ.「実施例6
表4に示す組成の成分を使用する以外は実施例1と同様にしてシャンプー用の皮膚洗浄用品を製造した。次に、10名の専門パネラーにより、皮膚洗浄用品から吐出させた泡3gで、ポリマー系エアゾール(LPG)整髪料を0.1g使用して整髪した毛髪を洗髪したところ、整髪料をほぼ完全に洗い流すことができた。
【表4】

成分名 重量%
2-ヘキシルデシル硫酸ナトリウム 3
POE(4)2-ヘキシルデシル硫酸ナトリウム 2
POE(4)2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム 2
POE(3)-sec-アルキル(C12?C14)エーテル 5
POE(10)オクチルフェニルエーテル 3
POE(9)ノニルフェニルエーテル 3
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 1
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 1
ラウロイルメチルタウリンナトリウム 1
プロピレングリコール 10
エタノール 5
メチルパラベン 0.1
コハク酸 1
香料、色素 微量
精製水 バランス 」(段落 【0070】?【0071】)

平成25年3月29日付け前置報告において引用された特開2005-187359号公報(以下、「引用文献C」という。)には、以下の事項が記載されている。

ク.「【請求項1】
(A)アニオン界面活性剤と、(B)両性界面活性剤と、(C)低級アルコール及び/又は多価アルコールと、(D)カチオン性高分子化合物と、(E)油剤、シリコーン類、タンパク質加水分解物、アミノ酸及びカチオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の仕上がり向上成分とを含有し、粘度が30mPa・s以下であることを特徴とするノンエアゾール型泡吐出容器用毛髪洗浄剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のノンエアゾール型泡吐出容器用毛髪洗浄剤組成物が、ノンエアゾール型泡吐出容器に収容されてなることを特徴とするノンエアゾール型泡吐出毛髪洗浄剤製品。」(特許請求の範囲の請求項1、3)

ケ.「【技術分野】
本発明は、ノンエアゾール型泡吐出容器に収容され、泡状に吐出されて使用されるタイプのノンエアゾール型泡吐出容器用毛髪洗浄剤組成物に関する。」(段落 【0001】)

コ.「【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献3,4等の洗浄剤組成物のように、吐出に噴射剤を用いないノンエアゾール型の洗浄剤は、泡吐出容器内の泡の通路や泡を形成するための多孔体部分、噴出口などに目詰まりを生じやすいという問題がある。また、目詰まりが生じると、泡が吐出されなかったり、吐出された泡のきめ細かさ(クリーミー性)が不十分であったり、泡の保型性(安定性)がよくないなどの問題も生じる。このような目詰まりは、特に、カチオン性化合物や、洗髪後の仕上がり向上のための仕上がり向上成分を配合した場合に顕著に生じる。
そのため、従来のノンエアゾール型泡吐出容器用の毛髪洗浄剤組成物は、容器の目詰まりを防ぐために、仕上がり向上成分が配合されていなかったり、界面活性剤の量を少なくする必要がある。そのため、仕上がり感や泡立ちの点で不充分である。
本発明は、上記従来の課題に鑑み、これを解決しようとするものであり、容器から泡状に吐出される際の目詰まりがなく、クリーミーで安定した泡が得られ、しかも洗浄後のコンディショニング効果にも優れるノンエアゾール型泡吐出容器用毛髪洗浄剤組成物及びノンエアゾール型泡吐出毛髪洗浄剤製品を提供することを目的とする。」(段落 【0003】?【0005】)

サ.「以下、本発明のノンエアゾール型泡吐出容器用毛髪洗浄剤組成物をより詳細に説明する。
本発明のノンエアゾール型泡吐出容器用毛髪洗浄剤組成物(以下、単に毛髪洗浄剤組成物ということがある)は、(A)?(E)成分を含有するとともに、粘度が30mPa・s以下である必要がある。この粘度は、更に好ましくは20mPa・s以下である。
(A)?(E)成分を含有するとともに粘度が30mPa・s以下であることにより、目詰まりが生じにくく、クリーミーで安定した泡が得られ、しかも洗浄後のコンディショニング性にも優れたものとなる。
粘度の下限値としては、特に制限はないが、泡のクリーミー性、安定性等を考慮すると、10mPa・s以上であることが好ましい。
なお、本発明において、毛髪洗浄剤組成物の粘度は、温度25℃とした際に、B型粘度計でNo.2ローターを使用して60rpmで測定した値を意味する。
毛髪洗浄剤組成物の粘度は、配合する成分の種類や配合量、組成物中の固形分濃度等を調節することにより調節できる。例えば、(A)成分及び/又は(B)成分の配合量を減らす、(C)成分の配合量を増やす、(E)成分の配合量を減らす等の方法により、粘度を低減できる。粘度を高める場合は、これらとは逆にすればよい。また、粘度調整剤、増粘剤等を配合したり、その配合量を調節する等によっても行うことができる。」(段落 【0008】)

シ.「本発明の毛髪洗浄剤組成物は、ノンエアゾール型泡吐出容器用として好適に用いられる。すなわち、ノンエアゾール型泡吐出容器に収容して、ノンエアゾール型泡吐出毛髪洗浄剤製品とすることができる。また、本発明の毛髪洗浄剤組成物は、詰め替え用容器に収容して製品とし、消費者が、該詰め替え用容器からノンエアゾール型泡吐出容器に移し替えて使用する形態とすることもできる。
ノンエアゾール型泡吐出容器としては、特に限定されないが、例えば、一定量の毛髪洗浄剤組成物を一定量の空気と混合して発泡させ、シート状多孔体(メッシュ)を通して均一できめ細かい泡を吐出する種類の泡吐出容器が挙げられる。
このような、シート状多孔体(メッシュ)を通して泡を吐出する種類の泡吐出容器としては、ポンプ機構を備えたキャップの頭を手指で押圧することにより泡を吐出するフォーマーポンプ容器や、軟質容器の胴部を手指で押圧することにより泡を吐出するスクイズ容器が挙げられる。
また、シート状多孔体(メッシュ)を通して泡を吐出する種類の泡吐出容器の多孔体は、泡形成性の点から、100メッシュ以上のものが好ましく、100?400メッシュがより好ましく、200?350メッシュがさらに好ましい。また、多孔体の枚数は、2枚以上であることが、泡形成性の点から好ましい。」(段落 【0037】)

平成25年3月29日付け前置報告において引用された特開2007-145726号公報(以下、「引用文献D」という。)には、以下の事項が記載されている。

ス.「【請求項1】
(A)アニオン界面活性剤と、(B)一価の低級アルコール及び/又は多価アルコールと、(C)カチオン性高分子化合物を含有する毛髪洗浄剤組成物がノンエアゾール型泡吐出容器に収容されてなるノンエアゾール型泡吐出毛髪洗浄剤製品において、
前記ノンエアゾール型泡吐出容器の1回当たりの前記毛髪洗浄剤組成物の吐出量が1.7g以上であり、かつ前記毛髪洗浄剤組成物と空気との混合比率が1/12?1/25(g/cm^(3))であることを特徴とするノンエアゾール型泡吐出毛髪洗浄剤製品。
【請求項2】
前記毛髪洗浄剤組成物は、さらに(D)平均粒子径が0.15μm未満のアミノ変性シリコーン粒子、水及び乳化剤を含むエマルジョンを含有する請求項1記載のノンエアゾール型泡吐出毛髪洗浄剤製品。」(特許請求の範囲の請求項1、2)

セ.「【技術分野】
本発明は、ノンエアゾール型泡吐出毛髪洗浄剤製品、及び毛髪洗浄剤組成物に関する。」(段落 【0001】)

ソ.「【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1、2に記載のエアゾール型の泡吐出毛髪洗浄剤製品は、噴射剤を必要とするため、容器に収容された内容物を使い切った後に廃棄する際、安全面や環境面において問題がある。
また、エアゾール型の泡吐出毛髪洗浄剤製品は、内容物を使い切って、新たに毛髪洗浄剤組成物を容器へ詰め替えることができないなどの不具合がある。
一方、特許文献3?5に記載のノンエアゾール型の泡吐出毛髪洗浄剤製品の容器から吐出される毛髪洗浄剤組成物の吐出量は、液吐出タイプの毛髪洗浄剤製品に用いられている一般的な容器からの吐出量(容器から毛髪洗浄剤組成物を手に吐出させる操作1回当たり3g)と比較すると半分以下である。液吐出タイプの毛髪洗浄剤製品を用いたときと同等の性能を得るためには、容器から吐出される毛髪洗浄剤組成物の吐出量を同じにするために、操作回数を2倍以上にする必要があり、手間を要する。そのため、ノンエアゾール型の泡吐出毛髪洗浄剤製品は、液吐出タイプの毛髪洗浄剤製品と操作回数が同じ場合、毛髪洗浄剤組成物の使用量が少なくても対応可能な子供を対象としたシャンプー分野でなければ満足する性能(例えば、頭髪の洗浄性、洗浄後のコンディショニング性等)が得られず、汎用性に劣る。
これに対して、容器から吐出される毛髪洗浄剤組成物の吐出量を多く設定することによる解決策が考えられる。しかしながら、従来のノンエアゾール型泡吐出容器では、吐出量を多く設定した場合、泡の形成性が不安定になり、クリーミーな泡が得られず、洗髪しにくくなって使用性が悪くなるという問題がある。
また、従来のノンエアゾール型泡吐出容器では、洗浄後のコンディショニング性を付与するためにカチオン性高分子を配合した場合、泡の形成性が不安定になるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、容器からの1回当たりの毛髪洗浄剤組成物の吐出量を多く設定し、かつカチオン性高分子化合物を配合しても安定した泡が得られ、泡のクリーミー性と、洗いやすさ等の使用性と、洗浄後のコンディショニング性に優れたノンエアゾール型泡吐出毛髪洗浄剤製品を提供することを課題とする。」(段落 【0003】?【0008】)

(2)引用文献Aに記載された発明
引用文献Aには、上記摘示アの記載から、
「 1)一般式
【化1】

(R_(1) は炭素数8?16のアルキル基、R_(2) 、R_(3) は炭素数1?2のアルキル基またはヒドロキシエチル基を表し、R_(2) 、R_(3) は同一であっても異なっていてもよい)で表されるアミンオキサイド、
2)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーおよび、
3)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる非イオン性界面活性剤、および薬効成分として3-フェノキシベンジル-d-シス・トランスクリサンテマートを含有するシャンプー組成物」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3)対比
補正発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「薬効成分として3-フェノキシベンジル-d-シス・トランスクリサンテマート」は、補正発明における「(a)シラミ駆除成分として3-フェノキシベンジル-d-シス・トランス-クリサンテマート」に相当する。
引用発明の「3)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる非イオン性界面活性剤」は、補正発明における「(c)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである可溶化剤」に相当する。
引用発明の「1)一般式
【化1】

(R_(1) は炭素数8?16のアルキル基、R_(2) 、R_(3) は炭素数1?2のアルキル基またはヒドロキシエチル基を表し、R_(2) 、R_(3) は同一であっても異なっていてもよい)で表されるアミンオキサイド」は、補正発明における「(b)発泡剤として一般式
【化1】

(R_(1)は炭素数8?16のアルキル基、R_(2)、R_(3)は炭素数1?2のアルキル基又はヒドロキシエチル基を表し、R_(2)、R_(3)は同一であっても異なっていてもよい)で表されるアルキルジメチルアミンオキサイド」に相当する。
補正発明の「シャンプー製品」は、シャンプー組成物を容器に入れているものであるから、引用発明の「シャンプー組成物」を包含するといえる。

そうすると、引用発明と補正発明とは、

「(a)シラミ駆除成分として3-フェノキシベンジル-d-シス・トランス-クリサンテマート、(b)発泡剤として一般式
【化1】

(R_(1)は炭素数8?16のアルキル基、R_(2)、R_(3)は炭素数1?2のアルキル基又はヒドロキシエチル基を表し、R_(2)、R_(3)は同一であっても異なっていてもよい)で表されるアルキルジメチルアミンオキサイド、(c)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである可溶化剤を含有するシャンプー組成物。」の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
補正発明においては、「精製水を含有する」ものであるのに対して、引用発明においては、この点についての規定はない点。

<相違点2>
シャンプー組成物に関し、補正発明においては、「アタマジラミ駆除用シャンプー製品」として利用されるものであるのに対して、引用発明においては、このような規定はなされていない点。

<相違点3>
補正発明においては、「粘度が100cps以下(25℃)であるシャンプー組成物を、吐出口におけるネットの網目が30?300メッシュである泡吐出容器に収容してなり、吐出された泡を毛髪の根元に処理することによって、アタマジラミ駆除効果を増強させた」ものであるのに対して、引用発明においては、このような形態はとられていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
相違点1について
引用文献Aには、引用発明のシャンプー組成物を利用した実施例として精製水を含有した組成物が例示されている(摘示ウの実施例1?3)から、引用発明は精製水を含有するものを包含しており、相違点1は実質上の相違点ではない。

相違点2について
引用発明は、「特に小学児童など幼年層への適用が多いアタマジラミの治療薬を考えた場合、極力刺激の少ない使用簡便なシラミ駆除剤」(摘示イ)を得ることを発明が解決しようとする課題としてなされたものであるから、引用発明のシャンプー組成物は、「アタマジラミ駆除用シャンプー製品」としての用途が想定されているといえる。
そうすると、相違点2は、実質上の相違点ではない。

相違点3について
引用文献B?Dの摘示エ?ソの記載からみて、毛髪洗浄用のシャンプー製品として「ノンエアゾール型(吐出口に多孔質膜を用いるタイプ)の泡吐出容器を利用する」ことは、本願出願時における周知技術であり、そのシャンプーの粘度が100cps以下(25℃)であることや吐出口におけるネットの網目が30?300メッシュであることは、摘示カ、ク、サ、シからみて、一般的な数値範囲であると認められる。
そこで、引用発明に上記周知技術の適用容易性について検討する。
周知のシラミ駆除用シャンプーの利用方法は、以下の1)?3)に記載の手法であって、取り扱い上の注意として下記の記載がある容量80ml?100ml程度のものが市販されているものである。
「1)シラミが寄生している頭髪又は陰毛を水又はぬるま湯で予め濡らし、1回量(頭髪には10?20mL程度)を取り、毛の生え際に十分に行き渡るように又全体に均等になるようにシャンプーする。
2)シャンプーして5分間放置した後、水又はぬるま湯で十分に洗い流す。
3)この操作を1日1回、3日に1度ずつ(2日おきに)3?4回繰り返す。
・・・
[保管及び取り扱い上の注意]
本剤はシラミ駆除専用の医薬品です。通常のシャンプー等と区別して保管し、頭髪の洗浄の目的には使用しないで下さい。」
(シラミ駆除医薬品「スミスリン^(R)L シャンプータイプ」(大日本除虫菊(株)の説明http://www.kincho.co.jp/wnew/sumithrin_l/、「アースシラミとりシャンプー」(アース製薬(株))の説明http://www.earth-chem.co.jp/top01/shirami/shiramitori/shampoo.html/参照)

引用発明のシャンプー組成物は、アタマジラミ駆除のための薬剤であって、通常は、洗浄目的の使用を禁止されているものであること、及び、上記利用方法からみて、通常になされる毛髪洗浄用のシャンプーの利用方法からは大きく異なっており、特に、当該シャンプー組成物の適用回数等の用法用量が特定されていて、毛髪洗浄用のシャンプーとは異なった利用方法がとられているものである。
そうすると、引用文献B?Dに記載の「毛髪洗浄用のシャンプー」と引用発明の「シャンプー組成物」とは対象とする技術分野が異なっているといえる。
また、洗浄性とアタマジラミ駆除性は異なる効果であって、引用文献B?Dには、泡を利用することによりアタマジラミ駆除効果が高まることに関する記載はなく、従来知られていた発泡剤を用いたダニ・ノミの防除方法における泡の利用は容易に薬剤を散布できることや、散布時とつけてからの飛散防止のためであって(特開2002-114614号公報、特開平1-168216号公報、特開平11-35407号公報参照)、泡を利用することにより、アタマジラミの死虫率が向上することが当業者の技術常識であったということもできないことから、当業者が、補正発明の効果を予測可能であるということもできない。
以上のことから、シャンプー製品として「ノンエアゾール型(吐出口に多孔質膜を用いるタイプ)の泡吐出容器を利用する」という周知の方法を、引用発明のシャンプー組成物に適用することはできない。

したがって、補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

3.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-01-08 
出願番号 特願2007-169796(P2007-169796)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三上 晶子緒形 友美  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 富永 久子
大島 祥吾
発明の名称 アタマジラミ駆除用シャンプー  
代理人 沖中 仁  
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