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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1283184
審判番号 不服2013-13176  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-09 
確定日 2014-01-21 
事件の表示 特願2008-529019「Si含有膜の選択的堆積のための断続的堆積処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月 8日国際公開、WO2007/027275、平成21年 3月26日国内公表、特表2009-512997、請求項の数(24)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成18年6月22日(パリ条約による優先権主張 2005年8月30日 外国庁受理 米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年4月23日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月6日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成25年4月3日付けで拒絶査定がなされ、同年7月9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、当審において、同年7月31日付けで審査官により作成された前置報告書について、同年8月20日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は、同年10月25日付けで回答書を提出した。

[2]平成25年7月9日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
補正前の請求項4を削除し、補正前の請求項5-25をそれぞれ請求項4-24とするとともに、請求項23において補正前の「約500℃乃至約700℃」を「500℃乃至700℃」と補正し、請求項1、24において、「前記基板が500℃乃至700℃の範囲内の温度に保たれる」ことを限定ものである。

2.補正の適否
上記補正事項は、請求項の削除、明りょうでない記載の釈明(請求項23)、特許請求の範囲の減縮(請求項1、請求項24)を目的とするものに該当し、また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するものに該当するところはない。
したがって、上記特許請求の範囲の減縮を目的として補正された本願請求項1に係る発明、請求項1を直接あるいは間接的に引用する請求項2-22に係る発明、及び本願請求項24に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けられるものかどうかを検討する。
本件補正により補正された本願請求項1、請求項24に係る発明は、それぞれ以下のとおりである。
「【請求項1】
基板を処理する方法であって:
処理チャンバ内に前記基板を備える段階であって、前記基板は成長表面及び非成長表面を有する、段階;並びに
前記基板をHXガスにさらし、同時にSiCl_(4)、SiHCl_(3)、SiH_(2)Cl_(2)、SiH_(3)Cl、Si_(2)Cl_(6)又はそれらの少なくとも2つの組み合わせを有する塩素化シランガスのパルス周期に前記基板をさらすことにより、前記成長表面においてSi含有膜を選択的に形成する段階であって、前記基板が500℃乃至700℃の範囲内の温度に保たれる、段階;
を有する方法。」(以下、「本願補正発明1」という。)

「【請求項24】
基板を処理する方法であって:
処理チャンバ内に前記基板を備える段階であって、前記基板は成長表面及び非成長表面を有する、段階;並びに
前記基板をHXガスにさらし、同時にSiCl_(4)、SiHCl_(3)、Si
H_(2)Cl_(2)、SiH_(3)Cl、Si_(2)Cl_(6)又はそれらの少なくとも2つの組み合わせを有する塩素化シンランガスのパルス周期に前記基板をさらすことにより、前記成長表面においてSi膜又はSiGe膜を選択的に形成する段階であって、前記基板が500℃乃至700℃の範囲内の温度に保たれる、段階;
を有する方法。」(以下、「本願補正発明2」という。)

(2-1)刊行物の記載事項
審尋及び原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された特開平9-92621号公報(以下、「刊行物1」という。)、国際公開第2004/036631号(以下、「刊行物2」という。)には、それぞれ以下の事項が記載されている。

(1)刊行物1
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 化学的気相成長方法により、絶縁膜でパターニングされたシリコン基板に選択成長させ、臨界選択成長膜厚以上の膜厚の半導体薄膜の選択成長方法において、成膜材料ガスを断続的に基板に供給するとともに、ハロゲン系ガスを連続して供給することを特徴とする半導体薄膜の選択成長方法。」

(1b)「【0020】次に、Si-Ge薄膜の選択成長工程について説明する。
(1)まず、Si基板15を反応炉11内へ導入した後、自動開閉バルブ24及び25を開け、排気手段20,21及び22を用い、反応炉11内を例えば1×10^(-8)Paの超高真空に排気、清浄化する。……
……
【0021】次に、Siを含むIV族系水素希釈ガス供給部70から、例えば、水素希釈10%シラン(SiH_(4))ガスを自動開閉バルブ80を開き、排気手段23に流す。この状態のまま自動開閉バルブ81を開き、シランに加えてゲルマニウムを含むIV族系ガス供給部71から、例えば水素希釈1%ゲルマン(GeH_(4))ガスを排気手段23に流す。……更に、自動開閉バルブ82を開け、エッチングガス供給部72から、例えば、塩酸(HCl)ガスを排気手段23に流す。……この後、自動開閉バルブ80,81及び82を閉め、自動開閉バルブ50,51及び52によりシランガス、ゲルマンガス及び塩酸ガスが反応炉11へ供給される。この時、Si-Ge薄膜の選択成長が開始される。
……
【0024】ところで、成膜材料ガス、つまりシラン及びゲルマンガスの供給されている時間はパターニングされた絶縁膜の開口部、つまりSi基板15上にのみ、Si-Ge薄膜が堆積され、絶縁膜上にはエッチングガス、つまり塩酸ガスの影響により、成膜材料の核形成が極力抑えられた選択成長状態となる。この状態は臨界選択成長膜厚に達するまで保たれる。しかし、このまま膜堆積を続ける、つまりシラン及びゲルマンガスを供給し続けると、塩酸ガスを供給していても成膜材料の核形成が十分に抑えられなくなり、成膜材料の核が成長し続けて絶縁膜上にもSi-Ge薄膜の形成が始まってしまう。つまり、選択成長ができなくなる状態になる。
【0025】そこで、この実施例では、図2に示すように、成膜材料の核が大きく成長する前にシラン及びゲルマンガスの供給を一旦止め、エッチングガスとしての塩酸ガスは流し続けることによるエッチング効果により、絶縁膜上に形成された成膜材料の核を除去する工程を施した。この工程により、絶縁膜上は成膜材料の核形成がなされていない初期の状態に戻る。そして、この工程の後に引き続きシラン及びゲルマンガスを供給して成膜を始めればパターニングされた絶縁膜の開口部にはSi-Ge薄膜の堆積が始まるが、絶縁膜上には改めて成膜材料の核形成が始まるため、選択成長が可能となる。
【0026】以上の工程を繰り返すことにより、臨界選択成長膜厚よりも厚いSi-Ge薄膜の成長を行いたいときでも選択成長させることが可能となる。……」

(1c)図2には、反応炉内に塩酸ガスを流し続け、同時にシランガス及びゲルマンガスの供給をパルス周期で行うことが示されている。

上記記載事項(1a)-(1c)によれば、刊行物1には、
「基板を処理する方法であって:
反応炉内に前記基板を備える段階であって、前記基板は絶縁膜がパターニングされた表面を有する、段階;並びに
前記反応炉内に塩酸(HCl)ガスを流し続け、同時にシランガス及びゲルマンガスの供給をパルス周期で行うことにより、前記パターニングされた絶縁膜の開口部においてSi-Ge膜を選択的に形成する段階;
を有する方法。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

(2)刊行物2
(2a)「BACKGROUND OF THE INVENTION
Field of the Invention
[0002] Embodiments of the invention generally relate to deposition of silicon- containing films, and more particularly to silicon compound compositions and related processes to deposit silicon-containing films.

Description of the Related Art
[0003] Atomic layer epitaxy (ALE) offers meticulous control of film thickness by growing single atomic layers upon a crystal lattice. ALE is employed to develop many group IV semiconductor materials, such as silicon, germanium, silicon germanium, silicon carbon and silicon germanium carbon. ……
……
[0005] Source gases used during silicon deposition include lower silanes (e.g., silane, dichlorosilane and tetrachlorosilane) as well as higher silanes (e.g., disilane, hexachlorodisilane and trisilane). Silane and dichlorosilane are the most common source gases used during Si-ALE, such as described in U.S. Patent Publication Number 20020052077. These lower silanes require the substrate to be maintained at high temperatures, often in the range of 800-1 ,000℃. Higher silanes are utilized as source gases to lower the temperature needed during Si-ALE. ……
……
[0006] Si-ALE with supplemental etchants has also been realized. U.S. Patent Publication Number 20020127841 teaches the combination of dichlorosilane and hydrogen chloride to accomplish selective silicon growth. Supplemental etchants are generally halogenated and/or radical compounds (e.g., HCl or ・Cl) that necessitate high reactivity. Therefore, hazardous and toxic conditions are often associated with etchant use.」

[0007] Therefore, there is a need to provide silicon-containing compounds that provide both a source chemical for silicon deposition and a source chemical as an etchant. The silicon-containing compounds should be versatile to be applied in a variety of silicon deposition techniques.」
(当審による翻訳;以下、同様である。
「本発明の背景
本発明の分野
[0002]本発明の実施形態は、一般的には、シリコン含有膜の堆積に関し、更に詳細には、シリコン化合物の合成物及びシリコン含有膜を堆積させる関連した方法に関する。

関連技術の説明
[0003] 原子層エピタキシー(ALE)は、単一原子層を結晶格子上に成長させることによって膜厚の正確な制御を与える。ALEは、多くのIV族半導体材料、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、シリコンカーボン及びシリコンゲルマニウムカーボンを開発するために使われている。 ……
[0005]シリコン堆積の間に用いられる供給源ガスは、低級シラン(例えば、シラン、ジクロロシラン及びテトラクロロシラン)、高級シラン(例えば、ジシラン、ヘキサクロロジシラン及びトリシラン)を含んでいる。シランやジクロロシランは、米国特許公表第20020052077号に記載されるように、Si-ALEの間に用いられる最も一般的な供給源ガスである。これらの低級シランは、しばしば800‐1,000℃の範囲の高温で維持される基板を必要とする。高級シランは、Si-ALEの間に必要とされる温度を低下させる供給源ガスとして用いられている。……
……
[0006]補助的エッチング剤によるSi-ALEも実現した。米国特許公表第20020127841号には、選択性シリコン成長を達成するためにジクロロシランと塩化水素の組合わせが教示されている。補助的エッチング剤は、通常は、高反応性を必要とするハロゲン化及び/又はラジカル化合物(例えば、HCl又は・Cl)である。それ故、エッチング剤使用には危険で有毒な状態をしばしば伴う。

[0007]それ故、シリコン堆積のための供給源化学剤とエッチング剤としての供給源化学剤双方を与えるシリコン含有化合物を供給することが求められている。シリコン含有化合物は、種々のシリコン堆積技術において適用するのに有用でなければならない。」)

(2b)「[0037] Embodiments of the invention may use processes with an etchant source and a silicon source incorporated into the silicon compound. …… However, supplemental etchants can also be used with the silicon compounds and are demonstrated in various embodiments of the invention. Supplemental etchants can include: CHF_(3), CF_(4), C_(4)F_(8), CH_(2)F_(2), ClF_(3), Cl_(2), F_(2), Br_(2), NF_(3), HCl, HF, HBr, XeF_(2), NH_(4)F, (NH_(4))(HF_(2))and SF_(6). For example, H_(3)SiSiH_(2)SiH_(2)SiCl_(2)H and HCl are used during the growth of a silicon-containing film.」
([0037]本発明の実施形態は、エッチング剤源とシリコン源がシリコン化合物へ取込まれた方法を用いることができる。……しかしながら、補助的エッチング剤は、シリコン化合物と共に用いることができ、本発明の様々な実施形態で示されている。補助的エッチング剤は、CHF_(3)、CF_(4)、C_(4)F_(8)、CH_(2)F_(2)、ClF_(3)、Cl_(2)、F_(2)、Br_(2)、NF_(3)、HCl、HF、HBr、XeF_(2)、NH_(4)F、(NH_(4))(HF_(2))及びSF_(6)を含むことができる。例えば、H_(3)SiSiH_(2)SiH_(2)SiCl_(2)H及びHClは、シリコン含有膜の成長の間に用いられる。」)

(2c)「[0047]……Therefore, any silicon compound, silicon source, silicon germanium source, silicon carbon source, alternative silicon source, alternative germanium source and alternative carbon source can be used solely or in combination to deposit silicon-containing films.

[0048] Alternative silicon sources may include silanes (e.g., SiH_(4)) and halogenated silanes (e.g., H_(4-n)SiX_(n), where X is independently F, Cl, Br or I and n=1-4), for example, ClSiH_(3), Cl_(2)SiH_(2), Cl_(3)SiH and Cl_(4)Si.…… 」
(「[0047]……それ故、あらゆるシリコン化合物、シリコン源、シリコンゲルマニウム源、シリコンカーボン源、代替的なシリコン源、代替的なゲルマニウム源及び代替的なカーボン源は、シリコン含有膜を堆積させるために単独で又は組み合わせて用いることができる。

[0048]代替的なシリコン源は、シラン(例えば、SiH_(4))、ハロゲン化シラン(例えば、H_(4-n)SiX_(n)、ここで、Xは独立してF、Cl、Br又はIであり、n=1-4である。)、例えば、ClSiH_(3)、Cl_(2)SiH_(2)、Cl_(3)SiH及びCl_(4)Siを含むことができる。……」)

上記記載事項(2a)-(2c)によれば、刊行物2には、
「シリコン源と補助的エッチング剤を用いたシリコン含有膜の堆積方法において、シリコン源として、ClSiH_(3)、Cl_(2)SiH_(2)、Cl_(3)SiH及びCl_(4)Siの塩素化シランガスを使用し、補助的エッチング剤として、HCl、HF、HBrのHXガスを使用する方法。」(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

(2-2)対比・判断
本願補正発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1における「反応炉」、「絶縁膜がパターニングされた表面」、「塩酸(HCl)ガス」、「パターニングされた絶縁膜の開口部」、「Si-Ge膜」は、それぞれ本願補正発明1の「処理チャンバ」、「成長表面及び非成長表面」、「HXガス」、「成長表面」、「Si含有膜」に相当する。
また、引用発明1における「シランガス」は、本願補正発明1の「SiCl_(4)、SiHCl_(3)、SiH_(2)Cl_(2)、SiH_(3)Cl、Si_(2)Cl_(6)又はそれらの少なくとも2つの組み合わせを有する塩素化シランガス」と「Si含有ガス」である点において共通する。
さらに、引用発明1において、「前記反応炉内に塩酸(HCl)ガスを流し続け、同時にシランガス及びゲルマンガスの供給をパルス周期で行うこと
」によって、基板が、塩酸(HCl)ガス、シランガス及びゲルマンガスにさらされることは明らかである。

よって、両者は、
「基板を処理する方法であって、
処理チャンバ内に前記基板を備える段階であって、前記基板は成長表面及び非成長表面を有する、段階;並びに
前記基板をHXガスにさらし、同時にSi含有ガスのパルス周期に前記基板をさらすことにより、前記成長表面においてSi含有膜を選択的に形成する段階;
を有する方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明では、Si含有ガスが「SiCl_(4)、SiHCl_(3)、SiH_(2)Cl_(2)、SiH_(3)Cl、Si_(2)Cl_(6)又はそれらの少なくとも2つの組み合わせを有する塩素化シランガス」であり、且つ「前記基板が500℃乃至700℃の範囲内の温度に保たれる」のに対して、引用発明1では、そうではない点。

また、本願補正発明2は、本願補正発明1における「Si含有膜」が「Si膜又はSiGe膜」である点でのみ異なり、引用発明1における「Si-Ge膜」は、本願補正発明2における「SiGe膜」に相当する。
よって、本願補正発明2と引用発明1とは、上記と同様の一致点および相違点を有する。

上記相違点1について検討する。
刊行物2には、シリコン源と補助的エッチング剤を用いたシリコン含有膜の堆積方法において、シリコン源として、ClSiH_(3)、Cl_(2)SiH_(2)、Cl_(3)SiH及びCl_(4)Siの塩素化シランガスを使用し、補助的エッチング剤として、HCl、HF、HBrのHXガスを使用する方法が記載されている。しかし、上記記載事項(2a)([0005])によれば、低級シラン(例えば、シラン、ジクロロシラン及びテトラクロロシラン)により、シリコン堆積を行う際には、800-1000℃の高温に基板を維持する必要がある旨記載されており、該記載事項を勘案すると、引用発明1におけるSi含有ガスとして、ClSiH_(3)、Cl_(2)SiH_(2)、Cl_(3)SiH及びCl_(4)Siの塩素化シラン(いずれも低級シラン)を適用し、且つ基板温度を500℃乃至700℃の範囲内の温度に保たれる」ようにすることが容易に想到し得るとは認められない。
よって、本願補正発明1、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2-22に係る発明、及び本願補正発明2は、刊行物1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2-3)まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

[3]本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし24に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載されたとおりのものであるところ、その請求項23に係る発明は以下のとおりである。

「基板を処理する方法であって:
処理チャンバ内に前記基板を備える段階であって、前記基板はエピタキシャルSi成長表面及び非成長表面を有する、段階;並びに
Si_(2)Cl_(6)ガスのパルスに前記基板を周期的にさらしながら、前記基板をHClガスに連続的に晒すことにより、前記Si成長表面においてエピタキシャルSi膜を選択的に形成する段階であって、前記基板は、500℃乃至700℃の範囲内の温度に保たれる、段階;
を有する方法。」(以下、「本願発明3」という。)

そして、本願発明3と引用発明1とを対比すると、引用発明1における「反応炉」、「絶縁膜がパターニングされた表面」、「塩酸(HCl)ガス」、「パターニングされた絶縁膜の開口部」は、それぞれ、本願発明3の「処理チャンバ」、「エピタキシャルSi成長表面及び非成長表面」、「HClガス」、「Si成長表面」に相当する。
また、引用発明1における「シランガス」、「Si-Ge膜」は、本願発明3の「Si_(2)Cl_(6)ガス」、「エピタキシャルSi膜」と、それぞれ、「Si含有ガス」、「エピタキシャルSi含有膜」である点で共通する。
さらに、引用発明1において、「前記反応炉内に塩酸(HCl)ガスを流し続け、同時にシランガス及びゲルマンガスの供給をパルス周期で行うこと
」によって、基板が、塩酸(HCl)ガス、シランガス及びゲルマンガスに晒されることは明らかである。

よって、両者は、
「基板を処理する方法であって、
処理チャンバ内に前記基板を備える段階であって、前記基板はエピタキシャルSi成長表面及び非成長表面を有する、段階;並びに
Si含有ガスのパルスに前記基板を周期的にさらしながら、前記基板をHClガスに連続的に晒すことにより、前記Si成長表面においてエピタキシャルSi含有膜を選択的に形成する段階;
を有する方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点2)
本願発明3では、Si含有ガスが「Si_(2)Cl_(6)ガス」であり、且つ「前記基板は、500℃乃至700℃の範囲内の温度に保たれる」のに対し、引用発明1では、そうではない点。

(相違点3)
上記エピタキシャルSi含有膜が、本願発明3では「エピタキシャルSi膜」であるのに対し、引用発明1では「Si-Ge膜」である点。

上記相違点2について検討すると、シリコン源と、エッチング剤としてのHClガスを用いたシリコン含有膜の堆積方法において、シリコン源として「Si_(2)Cl_(6)ガス」を用い、且つ「前記基板は、500℃乃至700℃の範囲内の温度に保たれる」ることは、刊行物1、2のいずれにも記載されておらず、該相違点が容易に想到し得るとは認められない。
したがって、上記相違点3について検討するまでもなく、本願発明3は、刊行物1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[4]むすび
以上のとおり、本願発明3は、刊行物1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そして、上記[2]のとおり、本願請求項1-22、24に係る発明も、刊行物1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2013-12-26 
出願番号 特願2008-529019(P2008-529019)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 粟野 正明越本 秀幸  
特許庁審判長 鈴木 正紀
特許庁審判官 石川 好文
豊永 茂弘
発明の名称 Si含有膜の選択的堆積のための断続的堆積処理方法  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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