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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K |
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管理番号 | 1283405 |
審判番号 | 不服2012-8000 |
総通号数 | 171 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-05-01 |
確定日 | 2014-01-28 |
事件の表示 | 特願2006-525561「高脂血症治療剤」拒絶査定不服審判事件〔2005年9月1日国際公開、WO2005/079797、平成19年8月16日国内公表、特表2007-523049、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.出願の経緯 本願は、2005年2月18日(パリ条約による優先権主張 2004年2月19日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成19年10月16日に手続補正書が提出され、平成23年3月11日付けで拒絶理由が通知され、同年5月30日に意見書及び手続補正書が提出され、平成24年1月24日付けで拒絶査定され、同年5月1日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1?6に係る発明は、平成23年5月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6にそれぞれ記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 【請求項1】 ピタバスタチン、ピタバスタチンのラクトン環形成体及びピタバスタチンの塩から選ばれるピタバスタチン類、及びイコサペント酸又はそのエステル誘導体を有効成分とする高脂血症治療剤。 【請求項2】 ピタバスタチン類が、ピタバスタチンカルシウムである請求項1記載の高脂血症治療剤。 【請求項3】 イコサペント酸のエステル誘導体が、イコサペント酸エチルである請求項1又は2記載の高脂血症治療剤。 【請求項4】 血中トリグリセリド低下剤である請求項1?3のいずれか1項記載の高脂血症治療剤。 【請求項5】 ピタバスタチン、ピタバスタチンのラクトン環形成体及びピタバスタチンの塩から選ばれるピタバスタチン類、及びイコサペント酸又はそのエステル誘導体並びに薬学的に許容される担体を含有する高脂血症治療用組成物。 【請求項6】 高脂血症治療剤の製造のための、ピタバスタチン、ピタバスタチンのラクトン環形成体及びピタバスタチンの塩から選ばれるピタバスタチン類、及びイコサペント酸又はそのエステル誘導体の使用。 3.原査定の拒絶理由の概要 原査定は、「この出願については、平成23年3月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべき」というものであるところ、当該理由1とは概略以下のとおりである。 本願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.Takashi Yanoほか“EFFECTS OF ETHYL-ALL-CIS-5,8,11,14,17-ICOSAPENTAENOATE(EPA-E), PRAVASTATIN AND THEIR COMBINATION ON SERUM LIPIDS AND INTIMAL THICKENING OF CUFF-SHEATHED CAROTID ARTERY IN RABBITS”,Life Sciences,1997年,Vol.61,No.20,2007?2015頁 2.中村典雄,「Eicosapentaenoic acid(EPA)とHMG-CoA reductase inhibitor併用療法について -脂肪酸代謝からみた併用意義-」,循環 5月号,Vol.207(Vol.21, No.4),2000年4月1日,メジカルセンス,22?25頁 3.中谷矩章,「血栓性動静脈疾患の臨床研究の進歩 治療学-薬物療法 抗高脂血症薬」,日本臨牀,57巻7号,1999年7月,110(1570)?116(1576)頁 4.特許第2569746号公報(平成9年) 4.当審の判断 (1)刊行物の記載事項 ア.刊行物2 刊行物2には、以下の事項が記載されている。 「1.はじめに 魚油に多量に含まれる多価不飽和脂肪酸(PUFA)の1つであるEPAは,以前から基礎的,臨床的および疫学的検討により動脈硬化性疾患をはじめとするさまざまな病態に有効であることが確立されているが,血清脂質改善作用では特にトリグリセライド(TG)に対する低下作用が強いといわれている。また3-hydroxy-3-methyl-glutaryl-Co enzyme A reductase inhibitor(HMG-CoA RI)は,現在高脂血症治療薬として広く用いられており,近年in vitroおよびin vivoにおけるHMG-CoA RIの脂肪酸代謝へ及ぼす報告も知られている。そこで本稿では,HMG-CoA RIの脂肪酸代謝に及ぼす影響について概説し,併せてPUFAの1つであるEPAの併用効果について報告する。 2.方法および結果 HMG-CoA RIの脂肪酸代謝への影響を表1に示す。in vitroではω-3系,ω-6系脂肪酸の増加が認められている。またHMG-CoA RIを高脂血症患者に投与したところ投与3,12カ月後において,血漿中のAA濃度の増加とEPA/AA濃度の低下が認められた(表2)。この血漿脂肪酸の変化は,AAの性質から考えると,決して好ましい変化ではない。 一方,魚油カプセルとHMG-CoA RIとの併用効果に関する報告は,海外でいくつかみられており,いずれもTGの低下やVLDLの低下をもたらすようである。さらにわれわれは,EPAエチルエステルをHMG-CoA RIで平均30カ月間治療中の14例の高脂血症患者に投与し,血清脂質および血漿脂肪酸濃度を検討した。この結果,総コレステロール,TGのさらなる低下,HDL-Cの上昇を認め,血漿EPA濃度の増加とEPA/AAの有意な増加を認めた(表3)。 3.考察 HMG-CoA RIとEPAとの併用治療は高脂血症,特にTG,総コレステロールとも高値である場合には選択しやすい組み合わせであると考えられる。また血漿AA濃度の増加といった脂肪酸濃度の変化の是正という観点からも有用な治療法と考えられる。…… 4.おわりに 以上によりHMG-CoA RIを投与している高脂血症患者においては脂肪酸濃度の是正と虚血性心疾患の予防効果をさらに高める可能性としてEPAとの併用は効果が期待できるものと考えられる。」(22頁左欄1行?25頁左欄3行) イ.刊行物2に記載された発明 上記摘示した事項からみて、刊行物2には、「HMG-CoA RIを投与している高脂血症患者にEPAエチルエステル投与した結果、総コレステロール、TGのさらなる低下、HDL-Cの上昇が認め」られることが記載されていることから、 「HMG-CoA RIとEPAエチルエステルとを組み合わせて高脂血症に適用すること」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 なお、引用発明と同様の発明は刊行物1や3にも記載されている。 (2)対比・判断 ア.請求項1 (ア)対比 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と引用発明とを対比する。 本願発明1における「ピタバスタチン、ピタバスタチンのラクトン環形成体及びピタバスタチンの塩から選ばれるピタバスタチン類」は、本願明細書の段落0002に記載されているとおり、HMG-CoAリダクターゼ阻害剤、すなわち引用発明におけるHMG-CoA RIに該当し、また、引用発明におけるEPAエチルエステルとは、イコサペント酸エチルエステルのことであることは当業者に自明である。 そうすると、両者は「HMG-CoAリダクターゼ阻害剤、及びイコサペント酸又はそのエステル誘導体を有効成分とする高脂血症治療剤」の点で一致するが、以下の点で相違する。 相違点: 本願発明1では、HMG-CoAリダクターゼ阻害剤として、「ピタバスタチン、ピタバスタチンのラクトン環形成体及びピタバスタチンの塩から選ばれるピタバスタチン類」と特定されているが、引用発明ではそのような特定がなされていない点 (イ)判断 上記相違点について検討する。 刊行物2には、HMG-CoAリダクターゼ阻害剤、すなわちHMG-CoA RIとして、シンバスタチンやプラバスタチンが挙げられているが、ピタバスタチン類については全く記載されていない。また、刊行物1にはHMG-CoAリダクターゼ阻害剤としてプラバスタチンが記載されているのみであり、さらに、刊行物3ではHMG-CoA還元酵素阻害薬(すなわちHMG-CoAリダクターゼ阻害剤)として、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチンが挙げられているのみであり、やはりピタバスタチン類については全く触れられていない。 一方、刊行物4には、「キノリン環を有するメバロノラクトン誘導体、それらに対応するジヒドロキシカルボン酸及びそれらの塩」について記載されており、これは「ピタバスタチン、ピタバスタチンのラクトン環形成体及びピタバスタチンの塩」を含むものである(例えば、11欄25?27行の「(e)(E)-3,5-ジヒドロキシ-7-〔4'-(4-フルオロフェニル)-2'-シクロプロピル-キノリン-3'-イル〕-ヘプト-6-エン酸」や、24?25頁の表11の化合物番号I-520)。また、これらの化合物がHMG-CoAリダクターゼ阻害活性を有することも記載されている(5欄22?27行、27欄の表3-2)。しかしながら、イコサペント酸(又はそのエステル)との組み合わせることについては記載されていない。 ここで、ピタバスタチンはキノリン環を有する点で他のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤であるシンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチンとは異なる化学構造を有する化合物である。そして刊行物4によりHMG-CoAリダクターゼ阻害剤としてピタバスタチン類が公知であるとしても、HMG-CoAリダクターゼ阻害剤であればいかなるものであってもその性質は全く同じというものではなく、したがって、イコサペント酸(又はそのエステル)と組み合わせた場合の高脂血症治療剤としての効果も必ずしも同じではないものと認められる。 そして、本願明細書の実施例(段落0022?0029及び図1)においては、血中トリグリセリドの低下試験の結果について統計学的処理をした結果、ピタバスタチンカルシウム及びEPA-E(イコサペント酸エチルエステル)の併用群では、ピタバスタチン単独群に比べ、大幅に血中トリグリセリドが低下したこと、及びその効果は相乗効果であることを確認している。 さらに、平成23年5月30日付け意見書及び審判請求書において、請求人はピタバスタチン以外のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤であるアトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン(各50mg/kgで投与)との比較試験を行った結果を提出しており、その結果によれば、10mg/kgで投与したピタバスタチンのみがイコサペント酸エチルとの組み合わせで、高脂血症治療(血中トリグリセリド濃度の低下)において統計学的に有意な相乗効果が得られていることを確認している。 これらの高脂血症治療における「ピタバスタチン、ピタバスタチンのラクトン環形成体及びピタバスタチンの塩、及びイコサペント酸又はそのエステル誘導体」の組み合わせの効果は格別なものと認められる。 そうすると、引用発明におけるHMG-CoAリダクターゼ阻害剤として「ピタバスタチン、ピタバスタチンのラクトン環形成体及びピタバスタチンの塩」を採用することにより本願発明1となすことは、刊行物1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものということはできない。 イ.請求項2?4 請求項2?4は、直接または間接的に請求項1を引用するものであるところ、請求項1に係る発明のすべての特徴を含むものであるから、上記請求項1について述べた理由と同じ理由により、これらの発明を、刊行物1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものということはできない。 ウ.請求項5及び6 請求項5及び6に係る発明は、いずれも「ピタバスタチン、ピタバスタチンのラクトン環形成体及びピタバスタチンの塩、及びイコサペント酸又はそのエステル誘導体」を有効成分とする点及び「高脂血症治療」をその用途とする点で請求項1に係る発明と同じであるところ、上記請求項1について述べた理由と同じ理由により、これらの発明を、刊行物1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものということはできない。 (3)まとめ 以上のことから、請求項1?6に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。 5.むすび 以上のとおり、本願については、原査定の拒絶の理由を検討してもその理由によって拒絶をすべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-01-16 |
出願番号 | 特願2006-525561(P2006-525561) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A61K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 原口 美和、高橋 樹理 |
特許庁審判長 |
松浦 新司 |
特許庁審判官 |
星野 紹英 齋藤 恵 |
発明の名称 | 高脂血症治療剤 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |