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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02K
管理番号 1283412
審判番号 不服2013-16162  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-21 
確定日 2014-01-28 
事件の表示 特願2009-509134「駆動案内装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月16日国際公開、WO2008/123287、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年3月26日(優先権主張平成19年3月30日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成24年10月29日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成24年11月6日)、これに対し、平成25年1月7日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年5月13日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成25年5月21日)、これに対し、平成25年8月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1-3に係る発明(以下、請求項1記載の発明を「本願発明」という。)は、平成25年8月21日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
リニアモータによって、案内ガイドに案内されて移動する移動ユニットを備える駆動案内装置であって、
前記移動ユニットは、
通電によって磁界を発生する可動子と、
前記可動子に対して前記案内ガイドが固定される基台とは反対側に設けられるテーブルと、
を有し、
前記可動子と前記テーブルとの間に、前記可動子で生じた熱を放熱する放熱構造を備える駆動案内装置において、
前記放熱構造は、前記テーブルと前記可動子の間に設けられる複数のフィンを有するヒートシンクによって構成され、
前記ヒートシンクには、幅方向の両端と中央部の3箇所にそれぞれ、前記ヒートシンクにおいて放熱しきれない熱を前記テーブルに伝える伝熱経路としての壁部が前記ヒートシンクの上面から突出して形成され、
各壁部の上面が前記テーブルの下面に固定されるとともに、
各壁部間に、前記壁部よりも高さの低い前記複数のフィンが、前記壁部と平行に設けられており、
前記テーブルは、
熱膨張係数の低い材料から構成されることを特徴とする駆動案内装置。
【請求項2】
前記テーブルの熱膨張係数は、
10.0×(10^(-6)/K)以下であることを特徴とする請求項1に記載の駆動案内装置。
【請求項3】
前記テーブルには、
黒色表面処理が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動案内装置。」

上記補正は、補正前の請求項1を引用する補正前の請求項2を引用する補正前の請求項5を補正後の請求項1とし、補正前の請求項1、2を削除し、補正前の請求項3、4を補正後の請求項2、3に繰り上げる補正であって、各請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を変更するものではないから、補正前の請求項1、2を削除するものであり、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。


3.原査定の理由の概要
平成24年10月29日付の拒絶の理由1の概要は以下のとおりである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」として、請求項1に対して引用例1?2、請求項2に対して引用例1?2、請求項3に対して引用例1?2、請求項4に対して引用例1?3、請求項5に対して引用例1?5、請求項6に対して引用例1?6を挙げている(引用例1は特開2004-289911号公報、引用例2は特開2005-79368号公報、引用例3は特開平6-260541号公報、引用例4は特開2001-112210号公報、引用例5は特開2004-320879号公報、引用例6は特開2004-312983号公報)。
なお、平成24年10月29日付の拒絶の理由2(特許法第36条第6項第2号)は、平成25年1月7日付手続補正書による補正により解消された。


4.当審の判断
(1)引用例
(ア)原査定の拒絶の理由で引用した引用例1(特開2004-289911号公報)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

1-a「固定台に平行に対向配置されたテーブルを移動自在に案内支持するガイドレールとスライダよりなるリニアガイドと、
前記固定台上に垂直方向に互いに間隔を置いて対向配設した磁性体からなる二つの界磁ヨークと該界磁ヨークに沿って交互に磁極が異なる複数の永久磁石よりなるリニアモータ界磁部と、
前記リニアモータ界磁部間に空隙を介して前記リニアガイドと平行に配置した電機子コアと該電機子コアに巻装された電機子コイルよりなるリニアモータ電機子部と、
を備えたリニアスライダにおいて、
前記リニアモータ電機子部は、前記テーブルとの対向面側に該電機子部を固定するための電機子取付板を設けてあり、
前記電機子コイルは、前記電機子取付板との対向面側にコイル導体の渡り線及び中性点の接続処理を容易にするための結線基板を設けると共に、前記固定台との対向面側に第1冷却フィンを設けたことを特徴とするリニアスライダ。」(【請求項1】)

1-b「前記テーブルの内部に移動方向に貫通するように設けた冷却通路と、該冷却通路内に収納するように前記電機子取付板に固定した第2冷却フィンを設けたことを特徴とする請求項1?3までの何れか1項に記載のリニアスライダ。」(【請求項4】)

1-c「従来、吸引力相殺形のリニアモータにより、テーブルを固定台に対して自在に移動させることのできるリニアスライダは、図3のようになっている。なお、図3は従来技術を示すリニアスライダの正断面図である。
図3において、1は固定台、2は固定台1上で左右両端に設けたガイドレール、3はガイドレール2と対でリニアガイドを構成するスライダである。4はリニアモータ、5は固定台1と垂直方向に互いに対向して固定した平板状の界磁ヨーク、6は界磁ヨーク5上に沿って(紙面と垂直方向)交互に磁極が異なるように複数配設した永久磁石、7は電機子を固定するための電機子取付板、8は永久磁石6と磁気的空隙を介して対向して設けられ、かつ、電磁鋼板を永久磁石6の高さ方向に積層して成る電機子コア、9は電機子コア8の巻線収納部に巻回して成る電機子コイルであり、界磁ヨーク5と永久磁石6とで固定子(リニアモータ界磁部)を構成し、電機子コア8と電機子コイル9とで可動子(リニアモータ電機子部)を構成している。
また、10は電機子の下部に設けられ、電機子コイルを構成するコイル導体の渡り線及び中性点の接続処理を容易にするためのガラスエポキシ材でできた結線基板、11は電規子コイル9および結線基板10を固定するモールド樹脂、15は電機子固定板7の上に設けたテーブルである。電機子固定板7は、テーブル15側から雄ねじを有するボルトねじ16を貫通穴15aに通した後、電機子固定板7に設けた雌ねじ7aにねじ込んでテーブル15に締結される。それから、電機子コア8は電機子コア8の下部側からボルトねじ13を貫通穴8aに通して電機子固定板7に設けた雌ねじ7bにねじ込み、電機子固定板7に締結される。なお、リニアモータ4は可動子の移動方向の位置を検出するために、一般にリニアスケールとセンサヘッドより構成される光学式リニアエンコーダが設けられるが、図3ではその図示を省略している。
このような構成のリニアモータ4において、図示しない電源より電機子コイル9に電流を印加すると、電機子と界磁の電磁作用により、リニアモータ4は永久磁石の長手方向に沿って推力を発生し、直線運動を行う(例えば、特許文献1を参照)。」(【0002】)

1-d「図2は本発明の第2実施例を示すリニアスライダの正面図である。
図において、14は第2冷却フィン、15bは冷却通路である。
第2実施例が第1実施例と異なる点は、テーブル15の内部に移動方向に沿って貫通するように設けた冷却通路15bと、該冷却通路15b内に収納するように電機子取付板7に固定した第2冷却フィン14を設けた点である。
このように第2実施例は、テーブル15の冷却通路15bの内部に収納するように電機子取付板7に第2冷却フィン14を設ける構成にしたので、第1実施例の構成においてモータの推力を更に上げ、電機子部の発熱量の増加に伴い冷却性能に限界が生じた場合に、電機子部の発生した熱の一部が電機子取付板側に伝熱したとしても、電機子取付板7に設けた第2冷却フィン14により、効果的に放熱させることができ、テーブルへの熱変形の影響を防止することができる。」 (【0010】-【0011】)

上記記載及び図面を参照すれば、可動子とテーブルで移動ユニットを構成している。
上記記載及び図面を参照すれば、可動子に対してガイドレールが固定される固定台とは反対側にテーブルが設けられている。
上記記載及び図面を参照すれば、テーブルは所定の材料から構成されている。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「リニアモータによって、ガイドレールに案内支持されて移動する移動ユニットを備えるリニアスライダであって、
前記移動ユニットは、
電流を印加すると界磁との電磁作用により推力を発生する可動子と、
前記可動子に対して前記ガイドレールが固定される固定台とは反対側に設けられるテーブルと、
を有し、
前記テーブルの内部の冷却通路に、前記可動子で生じた熱を放熱する冷却フィンを備えるリニアスライダにおいて、
前記冷却フィンは、前記テーブルの内部の冷却通路に設けられる複数のフィンによって構成され、
前記テーブルは、
所定の材料から構成されるリニアスライダ。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(イ)同じく、査定の拒絶の理由で引用した引用例6(特開2004-312983号公報)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

2-a「本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、テーブル等の可動体に対して大きな推力を与えることができると共に、リニアガイドとリニアモータとが一体に組合わさってコンパクトに構成されており、安価に製作し得ると共に取り扱いも容易なリニアモータアクチュエータを提供することにある。」(【0011】)

2-b「一方、前記テーブル構造体3は、前記軌道レールの案内通路内に配置されると共にこの案内通路内を自在に往復動する一対のスライダ3a,3bと、これらスライダ3a,3bを所定の間隔をおいて相互に連結する結合天板3cとから構成されている。かかる結合天板3cは長辺を軌道レール1の長手方向に合致させた略長方形状に形成されており、長手方向の両端部には軌道レール1の案内通路12内に位置しているスライダ3a,3bが夫々固定される一方、結合天板3cそれ自体は前記スライダ3a,3bに搭載されて軌道レール1の案内通路12の外側に位置している。また、前記結合天板3cに固定された一対のスライダ3a,3bの間には前記電機子5が設けられており、かかる電機子5は結合天板3cから吊り下げられて軌道レール1の案内通路12内に位置している。」(【0023】)

2-c「図9は本発明を適用したリニアモータアクチュエータの第2実施例を示すものであり、スライダ3a(3b)を軌道レール1の長手方向と直交する方向に切断した断面図を示している。この第2実施例では、軌道レール1、スライダ3a,3b、界磁マグネット4及び電機子5の構成は前記第1実施例と全く同じであるが、結合天板2の構造が第1実施例の結合天板3cと異なっている。すなわち、この第2実施例の結合天板2は幅方向の両端部に一対の縦ウェブ20,20を有しており、この縦ウェブ20に対して可動体の取付面が形成されている。一対の縦ウェブ20,20の間には凹所が形成されており、かかる凹所には放熱フィン21が等間隔で複数立設されている。また、結合天板2の放熱量を高めるため、かかる結合天板2の裏面側にも放熱フィン21が設けられている。
前記結合天板2は熱伝導性に優れたアルミニウム合金で製作されており、そのような結合天板2に対して断熱材を挟むことなく電機子5を直接固定することにより、かかる電機子5で発生した熱エネルギは結合天板2に流入し、前記放熱フィン21によって周辺雰囲気に放熱される。各放熱フィン21は軌道レール1内におけるテーブル構造体3の移動方向に沿って立設されており、テーブル構造体3が軌道レール1に沿って往復運動を行うと、互いに隣接する放熱フィン21の間を周辺雰囲気が流動し、その分だけ結合天板2から雰囲気中への放熱が促進されるようになっている。これにより、電機子5において発生した熱エネルギはそこに蓄積されることなく結合天板2へと連続的に流入し、電機子コア50の昇温を抑えることができるようになっている。その結果、長時間連続してテーブル構造体3を軌道レール1の案内通路12内で往復動させた場合であっても、電機子5における通電抵抗の上昇を抑えることができ、リニアモータの推力が低下するのを防止することができるようになっている。」(【0039】-【0040】)

上記記載及び図面を参照すれば、縦ウェブに対して可動体の取付面が形成されるのであるから、縦ウェブの上面が前記可動体の下面に固定され、結合天板において放熱しきれない熱があれば可動体に縦ウェブを介して伝えるものといえる。
上記記載及び図面を参照すれば、一対の縦ウェブの間に前記一対の縦ウェブよりも高さの低い放熱フィンが、前記一対の縦ウェブと平行に設けられている。

(ウ)更に、前置報告書に周知例として挙げた特開2006-74975号公報(以下「文献7」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

3-a「ステージ3の裏面に三相コイルが固定されている。三相コイルは、図1に示すように、U相、V相、W相の3つのコイル5U,5V,5Wからなり、ステージ3の移動方向<A>に沿って等間隔に配置されている。
コイル5U?5Wのそれぞれは、永久磁石6に対面して配置される扁平形(略トラック形状)の巻き線コイルであり、図3に示すように、コイルボビンを兼ね、ガラスエポキシ樹脂などからなる薄板形状の補強部材51の外周に、ウエット巻きにより巻き線を幾重にも巻いて形成されている。ここで「ウエット巻き」とは、巻き線を巻き込んで所定のコイル形状を形作り、その巻き線の隙間にエポキシ樹脂などを浸透させてコイル形状を維持したままで巻き線同士を固着させる巻き線方法である。なお、空芯のウエット巻きでもよいし、あるいは自己融着巻き線を使った巻き線でもよい。
コイル5U?5Wのそれぞれは、図1に示すように、ステージ移動方向<A>に長い側部5Aと、永久磁石6にほぼ直交するステージ幅方向<B>に長い部分5Bとを有し、ステージ幅方向<B>に長い部分5Bがリニアモータの推進力に寄与するコイル部分である。
コイル5U?5Wのそれぞれは、2つの側部5Aとその両端のコーナー部でステージ3の裏面に固定されている。この固定は、図3に示すように、コイル5U?5Wからの発熱を熱容量が大きいステージ3に逃がすために、熱伝導性固着材としてのコイル固着フィルム52を介して行われている。なお、コイル固着フィルム52に代えて、焼付塗装、電着-塗装あるいは薄い樹脂板を用いることができる。」(【0031】-【0032】)

3-b「このようにしてコイル5U?5Wと熱的に密に固着されるステージ3に、コイル5U?5Wからの熱を有効に放熱するためにフィンを備えることが望ましい。たとえば図3に示すように、ステージ裏面のコイル固定部分とスライドユニット42の固定部分との間に幾つかのフィン3Aを設けるとよい。」(【0034】)

3-c「図3に示すように、コイル5Wが固定されているステージ3の裏面には凹部3Bが形成されている。図1の例では、凹部3Bの幅方向<B>の寸法が、コイルの2つの側部5Aの内側エッジの距離とほぼ同等になっているが、これより多少短くてもよい。また、凹部3Bのステージ移動方向<A>の寸法は、3つのコイル5U?5Wのステージ移動方向<A>と直交する6つの直線部分5Bの全てが凹部3Bを横切るように規定することが望ましい。このとき、凹部3Bのステージ移動方向<A>の端部が、隣接するコイル5Uまたは5Wの直線部分5Bから十分離れ、これにより凹部3Bによって永久磁石6とコイル5U?5Wによる電磁場が乱されないことが、さらに望ましい。
本実施の形態では、凹部3Bが設けられていることにより、コイル5U?5Wおよび補強部材51とステージ3との間に空隙が形成されている。
凹部3Bの深さ、すなわちステージ3のコイル固定面から凹部3B内のコイル対向面までの高さ方向の距離は、永久磁石6とコイル5U?5Wによる電磁界によって凹部3B内のコイル対向面で渦電流が生じない、あるいは、生じてもステージ3の温度上昇に殆ど寄与しない程度に規定されている。
言い換えると、各コイル5U?5Wにステージ最大推進力を得るための最大規定電流を流したときに、凹部3B内のコイル対向面の表面磁束が1000ガウス以下となるように凹部3Bの深さが規定されている。
なお、コイル5U?5W自体は、前述したように補強部材51を有しウエット巻きにより形成されていることから強度的には十分であるが、さらに強固にステージ3と固定して変形を防止したい場合は、図3に示すように、凹部3B内のほぼ中央部に突起3Cを設け、この突起3Cと補強部材51のほぼ中央付近を固着させるとよい。ただし、この突起3Cにより電磁界が乱されることがないように、その寸法を規定し、かつ、コイル5U?5Wのとくに直線部分5Bからの距離を十分確保する必要がある。」(【0035】-【0037】)

上記記載及び図面を参照すれば、ステージの幅方向の両端と中央部の3箇所にそれぞれ突起が設けられている。


(2)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ガイドレール」、「案内支持」、「リニアスライダ」、「電流を印加すると界磁との電磁作用により推力を発生する」、「固定台」、「冷却フィン」は、それぞれ本願発明の「案内ガイド」、「案内」、「駆動案内装置」、「通電によって磁界を発生する」、「基台」、「放熱構造」に相当する。

その機能をも考慮すると、引用発明の「前記テーブルの内部の冷却通路に、前記可動子で生じた熱を放熱する冷却フィン」は、本願発明の「前記可動子と前記テーブルとの間に、前記可動子で生じた熱を放熱する放熱構造」に相当し、引用発明の「前記冷却フィンは、前記テーブルの内部の冷却通路に設けられる複数のフィンによって構成され」は、本願発明の「前記放熱構造は、前記テーブルと前記可動子の間に設けられる複数のフィンを有するヒートシンクによって構成され」に相当する。

したがって、両者は、
「リニアモータによって、案内ガイドに案内されて移動する移動ユニットを備える駆動案内装置であって、
前記移動ユニットは、
通電によって磁界を発生する可動子と、
前記可動子に対して前記案内ガイドが固定される基台とは反対側に設けられるテーブルと、
を有し、
前記可動子と前記テーブルとの間に、前記可動子で生じた熱を放熱する放熱構造を備える駆動案内装置において、
前記放熱構造は、前記テーブルと前記可動子の間に設けられる複数のフィンを有するヒートシンクによって構成される駆動案内装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
複数のフィンを有するヒートシンクに関し、本願発明は、幅方向の両端と中央部の3箇所にそれぞれ、ヒートシンクにおいて放熱しきれない熱をテーブルに伝える伝熱経路としての壁部が前記ヒートシンクの上面から突出して形成され、各壁部の上面がテーブルの下面に固定されるとともに、各壁部間に、前記壁部よりも高さの低い複数のフィンが、前記壁部と平行に設けられているのに対し、引用発明は、このような構成を有していない点。
〔相違点2〕
テーブルに関し、本願発明は、熱膨張係数の低い材料から構成されるのに対し、引用発明は、所定の材料から構成されるが、熱膨張係数については特定がない点。


(3)判断
相違点1について
本願発明は、幅方向の両端と中央部の3箇所にそれぞれ、ヒートシンクにおいて放熱しきれない熱をテーブルに伝える伝熱経路としての壁部が前記ヒートシンクの上面から突出して形成され、各壁部の上面がテーブルの下面に固定されることにより、ヒートシンクの幅方向の両端のみでなく、中央部にも伝熱経路としての壁部を有することにより、ヒートシンクの幅方向のいずれの部分においてもテーブルに熱を伝熱させやすい作用効果を奏し、かつ、最も熱変形しやすいテーブルの中央部が壁部によって固定されて支持される構成となっているため、テーブルの熱変形を抑制することができ装置の強度を確保できる作用効果を奏し(平成25年12月9日付回答書「2.(1)」参照)、また、各壁部間に、前記壁部よりも高さの低い複数のフィンが、前記壁部と平行に設けられることにより、ヒートシンクの上面からフィンの先端までの距離は、ヒートシンクの上面から壁部を介したテーブルまでの距離よりも短くなって、可動子で発生した熱は、壁部を通じてテーブルへ伝わるより前に、まずフィンの先端に到達し放熱され、フィンで放熱しきれなかった熱が壁部を介してテーブルへ伝熱されるという作用効果を奏する(審判請求書「3.(2)参照」)。
一方、引用発明は、1-cにあるように、電機子固定板がテーブル側から雄ねじを有するボルトねじを貫通穴に通した後、電機子固定板に設けた雌ねじにねじ込んでテーブルに締結されることにより、電機子固定板がテーブルを支持しており、冷却フィンが幅方向の両端と中央部の3箇所にテーブル下面に固定されるための壁部を全く有しておらず、当然に壁部よりも高さの低い複数のフィンが前記壁部と平行に設けられていない。
本願発明と放熱に関し技術的内容が近似する引用例6は、「可動子(「電機子」が相当)を直接固定するヒートシンク(「結合天板」が相当)には、幅方向の両端にそれぞれ、前記ヒートシンクにおいて放熱しきれない熱があれば前記テーブル(「テーブル等の可動体」が相当)に伝える伝熱経路としての壁部(「縦ウェブ」が相当)が前記ヒートシンクの上面から突出して形成され、各壁部の上面が前記テーブルの下面に固定されるとともに、各壁部間に、前記壁部よりも高さの低い複数のフィン(「放熱フィン」が相当)が、前記壁部と平行に設けられて」はいるものの、幅方向の中央部には壁部(「縦ウェブ」が相当)が設けられてはいないから、テーブルを幅方向の中央部で支持できず、また、2-cに「前記結合天板2は熱伝導性に優れたアルミニウム合金で製作されており」、「互いに隣接する放熱フィン21の間を周辺雰囲気が流動し、その分だけ結合天板2から雰囲気中への放熱が促進されるようになっている」とあるように、放熱は専らフィン(「放熱フィン」が相当)を用いて行い、壁部(「縦ウェブ」が相当)からテーブルへの放熱は想定していない。
同様に、本願発明と放熱に関し技術的内容が近似する文献7は、「テーブル(「ステージ」が相当)の幅方向の両端と中央部の3箇所にそれぞれ壁部(「突起」が相当)が設けられ、テーブルの幅方向の両端の壁部はコイルの放熱とコイルの固定を行い、テーブルの中央部の壁部は補強部材と固着されコイルの変形を防止するとともに、各壁部間の外に、複数のフィンが設けられている」ものの、ヒートシンク自体が存在せずにテーブルに直接複数のフィンが設けられ、また、テーブルの中央部の壁部はコイルの変形を防止するがコイルの放熱は行わない。
引用発明において、壁部がないためにテーブルと固定されてはいなかった複数のフィンを有するヒートシンクを、テーブルへの固定・放熱及びテーブルの変形防止のために、「幅方向の両端と中央部の3箇所にそれぞれ、ヒートシンクにおいて放熱しきれない熱をテーブルに伝える伝熱経路としての壁部が前記ヒートシンクの上面から突出して形成され、各壁部の上面をテーブルの下面に固定させる」とともに、フィンによる放熱とテーブルへの伝熱のために、「各壁部間に、前記壁部よりも高さの低い複数のフィンを、前記壁部と平行に設ける」ことは、引用発明に壁部からテーブルへの伝熱との思想が無いから動機が存在せず、しかも相違点1の構成は引用例6にも文献7にも記載も示唆も無く、その他の引用例にも記載も示唆も無い。
そうであれば、引用発明において、複数のフィンを有するヒートシンクを、幅方向の両端と中央部の3箇所にそれぞれ、ヒートシンクにおいて放熱しきれない熱をテーブルに伝える伝熱経路としての壁部が前記ヒートシンクの上面から突出して形成され、各壁部の上面がテーブルの下面に固定されるとともに、各壁部間に、前記壁部よりも高さの低い複数のフィンが、前記壁部と平行に設けられている構成とすることは、当業者が容易に考えられたものとすることはできない。

相違点2について
一般に、伝達させたくない物理量(例えば電力)が存在するとき、当該物理量に対して抵抗(例えば電気抵抗)を介在させることは慣用手段であり、また、熱変形の抵抗となるようにテーブルの熱膨張係数を小さくすることは周知の事項(必要があれば引用例3【0014】参照)であるから、引用発明においても、1-dにあるようにテーブルの熱変形を防止したいのであれば、テーブルを熱膨張係数の小さい材料とすることは当業者であれば容易に考えられることと認められる

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。また、本願発明が当業者が容易に発明することができたものではないので、本願発明の発明特定事項を全て含む請求項2?3に係る発明についても、当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。


5.むすび
以上のとおり、本願については、原査定の特許法第29条第2項の規定に基づく拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-01-10 
出願番号 特願2009-509134(P2009-509134)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H02K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 仁科 雅弘  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 藤井 昇
槙原 進
発明の名称 駆動案内装置  
代理人 和久田 純一  
代理人 世良 和信  

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