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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1283448
審判番号 不服2012-4452  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-07 
確定日 2014-01-09 
事件の表示 特願2007- 49505「動線追跡システム、及び、端末装置、固定通信装置、動線管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月18日出願公開、特開2008-217074〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
この出願は,平成19年2月28日の出願であって,平成23年7月29日付けの拒絶理由の通知に対して,平成23年8月30日に意見書の提出とともに手続補正がなされ,平成23年12月6日付けの拒絶査定に対して平成24年3月7日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成25年3月15日付けの当審の拒絶理由の通知に対して,平成25年5月20日に意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成25年5月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「複数の無線タグと,端末装置と,固定通信装置と,動線管理装置とを有し,
前記端末装置は,前記複数の無線タグそれぞれと通信を行い,前記複数の無線タグそれぞれとの応答時間を検出し,検出した前記複数の応答時間と当該端末装置の識別情報とを前記固定通信装置に送信し,
前記固定通信装置は,当該端末装置から供給された前記複数の応答時間と当該端末装置の識別情報とを前記動線管理装置に通知し,
前記動線管理装置は,
前記複数の無線タグの位置と,前記複数の応答時間から求まる,前記複数の無線タグそれぞれと当該端末装置との前記複数の距離と,に基づいて前記識別情報が示す当該端末装置の位置を検出し,記憶し,記憶された位置を追跡することにより当該端末装置の移動経路及び停止位置を検出し,
前記端末装置の移動経路及び停止位置に配置された商品を関連付けてデータベース化し,
前記端末装置の現在の位置と当該検出された移動経路とに基づいて,前記端末装置が移動する位置を予測し,当該予測された位置に応じた商品情報を前記端末装置に送信し,
前記端末装置は,前記動線管理装置から送信された商品情報を表示させる購買動線追跡システム。」

3.当審における拒絶の理由について
当審における平成25年3月15日付けで通知した拒絶理由の概要は,つまり,本願発明は,引用文献1?3の刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。

4.当審の判断

4-1.引用例について

(1)引用例1について
平成25年3月15日付けで通知した拒絶理由で引用した引用文献1(特開2002-132886号公報,以下「引用例1」という。)には,以下のことが記載されている。(以下「引用例1摘記事項」という。)
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,例えばショッピングセンタなどで,ショッピングカートを介して店側が顧客(買物客)の移動経路などのマーケティング情報を取得し,かつ各顧客ごとに必要な商品情報などを提供するショッピングカートシステムに関する。」
(イ)「【0010】
【発明の実施の形態】(ショッピングカートシステムの基本構成)図1は,本発明のショッピングカートシステムの基本構成を示す。ここでは,ショッピングセンタなどで利用されている一般的なショッピングカートを例に説明する。
【0011】図において,店舗の床11には,複数のIDタグ12が埋め込まれる。この床11の上を移動するショッピングカート13の底部には,IDタグ12との通信を行うアンテナを含むIDリーダ14が取り付けられる。なお,IDリーダ14は1つに限らず,ショッピングカート13の直進方向に対して前後に2つ取り付けたり,4つのIDリーダをショッピングカート13の四隅に取り付けてもよい。なお,IDリーダを2つ以上取り付けた場合の機能については後述する。IDリーダ14との通信圏内に入ったIDタグ12は,電力の供給を受けてそれぞれ固有のIDデータを送信する。IDリーダ14が受信したIDデータは,ショッピングカート13に取り付けた入出力/処理装置15に転送される。【0012】この入出力/処理装置15には,IDデータを実空間における位置情報に変換するIDデータ処理部,その位置情報を店舗内の情報処理サーバ16に送信し,情報処理サーバ16から送信された商品情報などを受信する送受信部,商品情報などを表示する表示部などが設けられる(詳しくは後述する)。なお,入出力/処理装置15にIDデータ処理部を設けず,IDデータをそのまま情報処理サーバ16に転送し,情報処理サーバ16で実空間における位置情報に変換してもよい。」
(ウ)「【0015】このように,IDタグ12は電源をもたず,IDリーダ14から電磁誘導方式により供給される電力により動作し,それぞれ固有のIDデータを応答する構成になっている。IDリーダ14が受信したIDデータは,図1に示す入出力/処理装置15(または情報処理サーバ16)のIDデータ処理部に転送され,IDデータと実空間との関係を示すマッピングテーブルとの照合により,ショッピングカート13の位置情報(二次元座標)に変換される。以上は,IDタグを利用した位置測定システムの基本的な構成および動作である。」
(エ)「【0023】(ショッピングカートシステムの機能構成)図6は,本発明のショッピングカートシステムの機能構成の一例を示す。図において,ショッピングカート13には,IDリーダ14,IDリーダに受信されたIDデータを位置情報に変換するIDデータ処理部61,顧客が挿入する顧客カードから顧客IDを読み取る顧客カード読取部62,商品情報などを表示する表示部63,情報処理サーバ16との通信を行う送受信部64が備えられる。なお,図1に示す入出力/処理装置15は,IDデータ処理部61,顧客カード読取部62,表示部63,送受信部64を含む。
【0024】情報処理サーバ16には,登録された各顧客の個人情報(移動経路,購入商品など)を蓄積する顧客データベース71,ショッピングセンタの売場位置と商品情報(お勧め情報,バーゲン情報,試食情報,在庫情報など)を対応付けて蓄積する商品データベース72,ショッピングカートの入出力/処理装置15との通信を行う送受信部73,IDデータ処理部61で得られたショッピングカートの位置情報を時系列で処理してその移動経路を割り出す移動経路処理部74,移動経路処理部74から各顧客の移動経路を入力し,レジ端末81から各顧客の購入商品内容を入力し,顧客ごとに移動経路と購入商品内容とを集計して顧客データベース71に蓄積する顧客情報管理部75,移動経路処理部74から各顧客の移動経路を入力し,その進行方向に対応する売場の商品情報を商品データベース72から取り出し,各顧客のショッピングカート宛てに送信する商品情報処理部76が備えられる。」
(オ)「【0027】ここで,情報処理サーバ16では,商品データベース72から例えば顧客の位置と進行方向に応じた商品情報(お勧め情報,バーゲン情報,試食情報など)を取り出し,顧客IDを宛先とするショッピングカート13に送信する。ショッピングカート13の送受信部64は,顧客IDを照合して自カート宛ての商品情報を受信し,表示部63に表示する。なお,商品情報は,視覚的な表示だけでなく,例えば音声などにより知らせるようにしてもよい。」
(カ)「【0028】また,時系列で記録された位置情報から,顧客の移動経路とどの売場で立ち止まったかがわかるので,各顧客の買物動向を探るマーケティング情報としても活用することができる。買物を終えた顧客は最後に会計で清算を行うが,このとき顧客カードの提示を受けてレジ端末81に顧客IDを読み取らせ,顧客IDと購入商品を情報処理サーバ16に転送し,顧客情報管理部75で集計して顧客データベース71に記録する。これにより,顧客ごとに移動経路と購入商品の関係を割り出し,より緻密なマーケティング情報としても活用することもできる。」

(2)引用発明について
ア 引用例1摘記事項の(イ)(ウ)の記載によれば,引用例1の「IDデータ」は,そのまま「情報処理サーバ16」に転送され,位置情報に変換してもよいものであり,「情報処理サーバ」は,「IDデータが情報処理サーバ16のIDデータ処理部に転送され,IDデータと実空間との関係を示すマッピングテーブルとの照合により,ショッピングカート13の位置情報(二次元座標)に変換される」ものであってよい。
イ してみると,引用例1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「ショッピングセンタで,ショッピングカートを介して店側が顧客の移動経路のマーケティング情報を取得し,各顧客ごとに必要な商品情報を提供するショッピングカートシステムであって,
店舗の床11には,複数のIDタグ12が埋め込まれ,床11の上を移動するショッピングカート13の底部には,IDタグ12との通信を行うアンテナを含むIDリーダ14が取り付けられ,IDタグ12が送信するIDデータをIDリーダ14が受信し,IDデータは,情報処理サーバ16に転送され,情報処理サーバ16で実空間における位置情報に変換するものであり,IDデータが,情報処理サーバ16のIDデータ処理部に転送され,IDデータと実空間との関係を示すマッピングテーブルとの照合により,ショッピングカート13の位置情報に変換されるものであり,
ショッピングカート13には,IDリーダ14,顧客が挿入する顧客カードから顧客IDを読み取る顧客カード読取部62,商品情報などを表示する表示部63,情報処理サーバ16との通信を行う送受信部64が備えられ,
情報処理サーバ16には,IDデータ処理部61で得られたショッピングカートの位置情報を時系列で処理してその移動経路を割り出す移動経路処理部74から各顧客の移動経路を入力し,その進行方向に対応する売場の商品情報を商品データベース72から取り出し,各顧客のショッピングカート宛てに送信する商品情報処理部76が備えられ,
情報処理サーバ16では,顧客の位置と進行方向に応じた商品情報を取り出し,顧客IDを宛先とするショッピングカート13に送信すると,ショッピングカート13は商品情報を受信し,表示部63に表示するものであり,
時系列で記録された位置情報から,顧客の移動経路とどの売場で立ち止まったかがわかるので,各顧客の買物動向を探るマーケティング情報としても活用することができること。」

(3)引用例2について
平成25年3月15日付けで通知した拒絶理由で引用した引用文献2(特開平4-260228号公報,以下「引用例2」という。)には,以下のことが記載されている。
(以下「引用例2摘記事項」という。)
(ア)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は,移動無線方式を利用して移動体の位置を検知する移動体測位システムに関するものである。」
(イ)「【0003】この種の移動体測位システムとしては,図2に示すように,一定の場所に設置された固定局(あるいは統制局)2と,車両などの移動体3に搭載され固有のアドレス(以下,IDコードと呼ぶ)が設定された複数の移動局1とからなり,図3に示すように固定局2によりIDコードを特定して各移動局1を個別に呼び出し,移動局1からの応答により移動局1の位置を検知するものがある。なお,上記移動局1の位置を検出するために,固定局2が夫々異なる場所に設置された複数の受信局を備え,固定局2からの呼出しに応じて移動局1から返信される応答信号の各受信局における受信時間の遅れにより移動局1の位置を検知するようにしてある。」

(4)引用例2記載事項について
引用例2摘記事項によれば,引用例2には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例2記載事項」という。)
「移動局の位置を検出するために,固定局が夫々異なる場所に設置された複数の受信局を備え,固定局からの呼出しに応じて移動局から返信される応答信号の各受信局における受信時間の遅れにより移動局の位置を検知すること。」

(5)引用例3について
平成25年3月15日付けで通知した拒絶理由で引用した引用文献3(特開2006-185293号公報,以下「引用例3」という。)には,以下のことが記載されている。
(以下「引用例3摘記事項」という。)
(ア)「【請求項1】店舗の入出口および売場毎に設置され,顧客が保持している無線タグから顧客識別情報を読み取る読み取り手段と,読み取った顧客識別情報に基づき各顧客の店舗内での移動経路および立ち寄った売場での滞在時間を格納する第1のデータベースと,格納した移動経路および売場毎の滞在時間に基づき各顧客が興味を示す商品を推定し,その推定した商品の情報を第2のデータベースに格納する手段とを備えることを特徴とする顧客情報収集システム。」

(6)引用例3記載事項について
引用例3摘記事項によれば,引用例3には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例3記載事項」という。)
「各顧客の店舗内での移動経路および立ち寄った売場での滞在時間をデータベースに格納し,格納した移動経路および売場毎の滞在時間に基づき各顧客が興味を示す商品を推定し,その推定した商品の情報をデータベースに格納すること。」

4-2.対比
引用発明と本願発明とを比較する。
(ア)引用発明の「ショッピングカート13」には,顧客が挿入する顧客カードから顧客IDを読み取る顧客カード読取部62,商品情報などを表示する表示部63,情報処理サーバ16との通信を行う送受信部64が備えられ,「情報処理サーバ16」では,顧客の位置と進行方向に応じた商品情報を取り出し,顧客IDを宛先とするショッピングカート13に送信すると,ショッピングカート13は商品情報を受信し,表示部63に表示する。
つまり,引用発明は,「情報処理サーバ16」が,顧客の位置と進行方向に応じた商品情報を取り出してショッピングカート13の表示部に商品情報を表示する。
してみると,引用発明の「ショッピングカート13」と「情報処理サーバ16」とは,後記する点で相違するものの,本願発明の「端末装置」と「動線管理装置」に相当する。
(イ)引用発明は,店舗の床11に複数のIDタグ12が埋め込まれ,床11の上を移動するショッピングカート13の底部には,IDタグ12との通信を行うアンテナを含むIDリーダ14が取り付けられ,IDタグ12が送信するIDデータをIDリーダ14が受信し,IDデータは,情報処理サーバ16に転送され,情報処理サーバ16で実空間における位置情報に変換するものであり,IDデータが,情報処理サーバ16のIDデータ処理部に転送され,IDデータと実空間との関係を示すマッピングテーブルとの照合により,ショッピングカート13の位置情報に変換される。
つまり,引用発明の「ショッピングカート13」は,読み取った「IDデータ」を,「情報処理サーバ16」に転送すると,「情報処理サーバ16」は,「ショッピングカート13」の位置を検出する。
してみると,引用発明と本願発明とは,「端末装置」が,「動線管理装置」に「端末装置の位置を検出するための情報を送信する」という点で共通する。
(ウ)引用発明の「情報処理サーバ16」は,IDデータ処理部61で得られたショッピングカートの位置情報を時系列で処理してその移動経路を割り出す移動経路処理部74から各顧客の移動経路を入力し,その進行方向に対応する売場の商品情報を商品データベース72から取り出し,各顧客のショッピングカート宛てに送信する商品情報処理部76が備えられ,顧客の位置と進行方向に応じた商品情報を取り出し,顧客IDを宛先とするショッピングカート13に送信すると,ショッピングカート13は商品情報を受信し,表示部63に表示する。
ここで引用発明は,時系列で位置情報を処理して移動経路を割り出すことから,検出した位置を記憶して追跡して移動経路を割り出すことが明らかである。
そして,引用発明の,「割り出された移動経路の進行方向に対応する売場の商品情報」を取得することは,本願発明の,「端末装置の現在の位置と検出された移動経路とに基づいて,端末装置が移動する位置を予測し,予測された位置に応じた商品情報」を取得することに相当する。
してみると,引用発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「端末装置の識別情報」と「端末装置の位置を検出するための情報」とから,「端末装置の位置を検出し,記憶し,記憶された位置を追跡することにより端末装置の移動経路を検出し,端末装置の現在の位置と検出された移動経路とに基づいて,端末装置が移動する位置を予測し,予測された位置に応じた商品情報を端末装置に送信し,端末装置は,動線管理装置から送信された商品情報を表示させる」という点で共通する。
(エ)そして,引用発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,上記(ア)?(ウ)からなる「購買動線追跡システム」である点で共通する。

以上(ア)?(エ)のことから,引用発明と本願発明とは以下の点で一致し,また相違する。

[一致点]
「端末装置と,動線管理装置とを有し,
端末装置は,端末装置の識別情報と端末装置の位置を検出するための情報とを動線管理装置に通知し,
動線管理装置は,
端末装置の識別情報と端末装置の位置を検出するための情報とから,端末装置の位置を検出し,記憶し,記憶された位置を追跡することにより端末装置の移動経路を検出し,
端末装置の現在の位置と検出された移動経路とに基づいて,端末装置が移動する位置を予測し,予測された位置に応じた商品情報を端末装置に送信し,端末装置は,動線管理装置から送信された商品情報を表示させる購買動線追跡システム。」

[相違点1]
本願発明は,「複数の無線タグ」と「固定通信装置」とを有し,「端末装置」が,「複数の無線タグそれぞれと通信を行い,複数の無線タグそれぞれとの応答時間を検出し,検出した複数の応答時間と端末装置の識別情報とを固定通信装置に送信する」ものであり,「固定通信装置」が,「端末装置から供給された複数の応答時間と端末装置の識別情報とを動線管理装置に通知する」ものであり,「動線管理装置」が,「複数の無線タグの位置と,複数の応答時間から求まる,複数の無線タグそれぞれと端末装置との複数の距離と,に基づいて識別情報が示す端末装置の位置を検出する」のに対して,引用発明は,ショッピングカートが顧客IDとIDタグのIDデータを情報処理サーバに送信すると,情報処理サーバはIDデータとマッピングテーブルの照合により,そのショッピングカートの位置情報に変換するものである点。
[相違点2]
本願発明は,「動線管理装置」が「端末装置の移動経路及び停止位置を検出」するものであり,「端末装置の移動経路及び停止位置に配置された商品を関連付けてデータベース化」するのに対して,引用発明は,時系列で記録された位置情報から,顧客の移動経路とどの売場で立ち止まったかがわかることから各顧客の買物動向を探るマーケティング情報としても活用することは記載されるものの,「端末装置の移動経路及び停止位置に配置された商品を関連付けてデータベース化」することは記載されていない点。

4-3.判断
上記各相違点について以下に検討する。

[相違点1]について。
相違点1に係る事項は,つまり,
まず,「ショッピングカート」つまり「端末装置」の「位置を検出するための構成」が,
引用発明では,
「情報処理サーバ」が,
「顧客IDを有するショッピングカートが検出したIDタグのIDデータとマッピングテーブルとを照合して,所定顧客のショッピングカートの位置を検出する」という構成であるのに対して,
本願発明では,
「動線管理装置」が,
「複数の無線タグの位置と,複数の応答時間から求まる,複数の無線タグそれぞれと端末装置との複数の距離と,に基づいて識別情報が示す端末装置の位置を検出する」という構成である点で相違し,
さらに,端末装置の識別情報と位置を特定するための情報とが,「端末装置」から「固定通信装置」を経由して「動線管理装置」に送信される点で相違するものと整理できる。
以下順次検討する。
まず,引用例2記載事項によれば,引用例2には,再掲すると,「移動局の位置を検出するために,固定局が夫々異なる場所に設置された複数の受信局を備え,固定局からの呼出しに応じて移動局から返信される応答信号の各受信局における受信時間の遅れにより移動局の位置を検知すること。」との構成が記載されている。
ここで,固定局と複数の受信局とは,固定された施設であり,移動局は移動体であるから,引用例2には,「移動体と固定施設との間の無線の応答信号の遅れにより移動体の位置を検知する」との構成が記載されている。
引用発明の位置の検出と,引用例2記載事項の位置の検出と,本願発明の位置の検出とは,いずれも固定施設側で移動体の位置を非接触で検出するための構成である点で共通する。
してみると,引用発明の,「情報処理サーバ」の「位置を検出するための構成」に引用例2記載事項の上記の構成を適用することにより,「移動体である所定顧客のショッピングカートと,固定施設との間の無線の応答信号の遅れにより,所定顧客のショッピングカートの位置を検知する」よう構成することは,当業者が容易に想到することができたものである。
ここで,以下(ア)?(ウ)のことが言える。
(ア)引用例2記載事項によれば,引用例2では,固定施設側である固定局の呼出しに応じて移動体である移動局が応答し,固定施設側である受信局で受信すること,つまり「固定施設側の呼出しに移動体が応答することにより応答信号の遅れを検出する」ものである。
ここで,引用例2とは逆に,「移動体の呼出しに固定施設側が応答することにより応答信号の遅れを検出する」ことは周知の事項である。(以下「周知の事項A」という。)
例えば,特開2004-215258号公報(以下「周知例1」という。)には,「無線通信システムにおいて無線通信装置の位置を決定する技術に関する」(【0001】)ものであって,図1の記載を参照して,【0017】段落には「本実施形態においては,送信機110からの信号を解析するために1または複数の検出ユニット130を用いる。この検出ユニット130をサービスエリア101全体に点在する複数の既知の位置(検出ポイント120)に移動する。検出ポイント120の各々において,検出ユニット130は信号125(125A,125B,125C)を送信機110の一部または全てから受信する。」と記載され,【0020】段落には,「あるいは,検出ユニット130は,通信遅延時間を計測する機能を有していてもよい。遅延時間もまた送信機110までの距離の指標となり得るからである。遅延時間の測定は相互的であってもよい。具体的には,検出ユニット130は送信機110に対し検出ユニット130からの「ping」に対して応答するように要求し,ラウンドトリップタイムを取得し,この値から距離を推定する。」と記載されたうえで,【0021】段落には,「検出ユニット130は,算出した自端末の位置を決定するために,複数の計算方法を用いる。検出ユニット130は,既知の検出ポイント120Aにおいて,それぞれの手法で得られた位置を比較することにより,各計算方法の相対的な信頼性を決定する。複数の計算方法とは,具体的には,三角測量法,最近接近傍法,最小多角形法である。」と記載されている。
例えば,特開2006-317213号公報(以下「周知例2」という。)には,【0001】段落に,「本発明は,電波の伝搬時間から装置間の距離や相対位置を測定する距離測定装置に関し,特に,インパルス電波の伝搬時間から高分解能に距離を測定する装置に関する。」と記載され,図20の記載を参照して【0046】段落には,「以上は,2台の装置間の距離計測を高分解能化する方法として説明したが,これを応用して,図20に示すように,位置が既知の送受信機A1,A2,A3に対して,位置が未知の送受信機Mにおいて,M-A1間距離L1,M-A2間距離L2,M-A3間距離L3を高分解能で測定すれば,以下の連立方程式を解くことで送受信機Mの位置を高分解能に測定できる。」と記載されている。
以上,周知の事項Aを参照すれば,呼出しと応答とのそれぞれを,移動体と固定施設のいずれが受け持つよう構成するかは,当業者が適宜選択しうる設計的事項(以下「設計的事項1」という。)であると認められること。
(イ)呼出しに応答するのものとして,無線タグを用いることは周知の事項である。(以下「周知の事項B」という。)
例えば,特開2005-157709号公報(以下「周知例3」という。)には,図1や図3の記載を参照して,【0011】段落に,「非接触ICタグとの通信による位置検知は3個以上の非接触ICタグと通信を行ない,その非接触ICタグとの応答時間差から非接触ICタグからの距離を算出することにより確定できる位置検知を繰り返すことで記入軌跡を電子データ化できる。」と記載され,【0017】段落に,「電子ペン1は一般的なペンの外観を有しているか,ペンキャップのように記入要具に取り付けることができる。内蔵された電波送受信機能により非接触ICタグ2と通信することができる。」と記載され,【0034】段落に,「まず記入対象物4上の任意の一点を基準点(0,0)として以下の手順で設定する。(1)電子ペン1から送信された電波により非接触ICタグ201,202,203からの返信を受ける。(2)各非接触ICタグからの返信時間差から距離(a,b,c)を算出する。(3)各タグからの距離(a,b,c)をもつ点を基準点(0,0)として設定する。」と記載されている。
例えば,特開2006-267687号公報(以下「周知例4」という。)には,【0168】段落に,「(付記7) 撮影機能を有し,無線ICタグを搭載した対象物を撮影することが可能な情報処理装置において, 該撮影機能を動作した場合に,該無線ICタグへ撮影対象物が存在するか否かをチェックする撮影対象物チェック信号を生成する撮影対象物チェック信号生成部と,該撮影対象物チェック信号を送信し,該撮影対象物チェック信号に対する無線ICタグからの応答信号を受信可能とする信号送受信部と,該信号送受信部において,該撮影対象物チェック信号を送信してから該応答信号を受信するまでの応答時間を測定する応答時間計測部と,該応答時間に基づいて,無線ICタグと情報処理装置との距離を算出する距離算出部と,該距離算出部において算出した該距離と無線ICタグが有する撮影制限距離を比較して,該距離が該撮影制限距離より大きい場合には撮影機能を動作可能に制御し,該距離が該撮影制限距離より小さい場合には撮影機能の動作を禁止制御する制御部と,を有することを特徴とする情報処理装置。」と記載されている。
以上,周知の事項Bを参照すれば,呼出しに応答するのものとして,無線タグを用いることは,当業者が適宜選択しうる設計的事項(以下「設計的事項2」という。)であると認められること。
(ウ)引用例2の位置の検知は,複数の応答信号の受信時間の遅れにより位置を検知するものであるところ,複数の受信時間の遅れから,複数箇所からの複数の距離を求めて移動体の位置を決めることは,上記(ア),(イ)の周知例1?3に記載されるとおり,周知の事項(以下「周知の事項C」という。)であると認められること。
以上,(ア)?(ウ)のことから,引用発明に引用例2記載事項,設計的事項1,2及び周知の事項Cを適用することにより,「情報処理サーバ」の「位置を検出するための構成」を,「移動体である所定顧客のショッピングカートと複数の無線タグとの間の応答信号の遅れにより,複数の無線タグそれぞれの位置と,所定顧客のショッピングカートと無線タグとの複数の距離とにより所定顧客のショッピングカートの位置を検知する」よう構成すること,つまり,「位置を検出するための構成」を,「複数の無線タグの位置と,複数の応答時間から求まる,複数の無線タグそれぞれと端末装置との複数の距離と,に基づいて識別情報が示す端末装置の位置を検出する」よう構成することは,当業者が容易に想到することができたものである。
そして,このような「位置を検出する構成」となるように,「端末装置」を,「複数の無線タグそれぞれと通信を行い,複数の無線タグそれぞれとの応答時間を検出し,検出した複数の応答時間と端末装置の識別情報とを送信する」よう構成することも,当業者が容易に想到することができたものである。
さらに,「端末装置」と「動線管理装置」との間を「固定通信装置」を介して情報の送受信をするよう構成することは,当業者が適宜なし得る設計的事項(以下「設計的事項3」という。)であるものと認められる。
してみると,引用発明に引用例2記載事項,設計的事項1,2,3及び周知の事項Cを適用することにより,「固定通信装置」を有するよう構成し,「端末装置」を,「複数の無線タグそれぞれと通信を行い,複数の無線タグそれぞれとの応答時間を検出し,検出した複数の応答時間と端末装置の識別情報とを固定通信装置に送信する」よう構成し,「固定通信装置」を,「端末装置から供給された複数の応答時間と端末装置の識別情報とを動線管理装置に通知する」よう構成したうえで,「動線管理装置」を「複数の無線タグの位置と,複数の応答時間から求まる,複数の無線タグそれぞれと端末装置との複数の距離と,に基づいて識別情報が示す端末装置の位置を検出する」よう構成し,もって相違点1に係る発明の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

[相違点2]について。
引用例3記載事項によれば,引用例3には,再掲すれば,「各顧客の店舗内での移動経路および立ち寄った売場での滞在時間をデータベースに格納し,格納した移動経路および売場毎の滞在時間に基づき各顧客が興味を示す商品を推定し,その推定した商品の情報をデータベースに格納すること。」との事項が記載されている。
つまり,引用例3は,各顧客の店舗内での移動経路と立ち寄った売場とが特定され,さらに移動経路と立ち寄った売場の商品が特定されてデータベースに格納されることが明らかである。
してみると,引用発明に引用例3記載事項を適用することにより,「情報処理サーバ」を「各顧客の店舗内での移動経路と立ち寄った売場と」を特定し「各顧客の移動経路と立ち寄った売場の商品」を特定して「データベースに格納される」よう構成し,もって相違点2に係る,「動線管理装置」が「端末装置の移動経路及び停止位置を検出」し「端末装置の移動経路及び停止位置に配置された商品を関連付けてデータベース化」するとの構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

以上のとおり,本願発明における上記相違点1,2に係る構成は,引用発明,引用例2記載事項,引用例3記載事項,設計的事項及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして,本願発明の作用効果も,引用発明,引用例2記載事項,引用例3記載事項,設計的事項及び周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願発明は,引用発明,引用例2記載事項,引用例3記載事項,設計的事項及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2記載事項,引用例3記載事項,設計的事項及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願は当審で通知した上記拒絶理由によって拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2013-11-11 
結審通知日 2013-11-12 
審決日 2013-11-27 
出願番号 特願2007-49505(P2007-49505)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 貝塚 涼  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 石川 正二
手島 聖治
発明の名称 動線追跡システム、及び、端末装置、固定通信装置、動線管理装置  
代理人 伊東 忠彦  
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