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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B25J |
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管理番号 | 1283470 |
審判番号 | 不服2013-5060 |
総通号数 | 171 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-03-18 |
確定日 | 2014-01-09 |
事件の表示 | 特願2008-104677「ロボットハンド」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月 5日出願公開、特開2009-255207〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯と本件発明 本願は平成20年4月14日に出願され、平成24年4月17日付拒絶理由通知に対して平成24年6月22日に意見書と手続補正書が提出されたが、平成24年12月11日付で拒絶すべき旨の査定がなされたものである。本件審判は、該拒絶査定の取消を求めて平成25年3月18日に請求され、同日に特許請求の範囲と明細書に対する手続補正書が提出された。その後、当審による平成25年6月7日付審尋に対して平成25年8月7日に回答書が提出されている。 2.平成25年3月18日付手続補正の却下の決定 【結論】 平成25年3月18日付手続補正を却下する。 【理由】 2.1 補正内容 平成25年3月18日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲と明細書の段落7を補正対象とするところ、補正前後の特許請求の範囲を、補正箇所に下線を付して示すと次のとおりである。 (1)補正前 「ロボットアームに取り付けられてワークをピッキングするロボットハンドであって、 互いに独立的にワークをピッキングする第1および第2のピッキング手段と、 ワークをピッキングした前記第1のピッキング手段が他の部材と干渉することを防止するために、当該第1のピッキング手段をピッキング位置から退避位置に移動させるとともに、前記第2のピッキング手段を前記ピッキング位置に移動させる駆動手段と、 前記ピッキング位置における第1または第2のピッキング手段と収容部に収容されているワークとを結ぶ直線に沿って、当該ピッキング位置の第1または第2のピッキング手段を往復移動させる往復移動手段と、を有し、 前記第1および第2のピッキング手段は、ワークを吸着する吸着パッドをそれぞれ含み、同一平面上に異なる向きに配置されており、 前記駆動手段は、前記平面に垂直な一の揺動軸周りに前記第1および第2のピッキング手段を揺動させる揺動機構を含み、 前記往復移動手段が前記第1のピッキング手段を引き上げた後、前記駆動手段が前記平面に垂直な一の揺動軸周りに前記第1のピッキング手段を揺動させて前記退避位置に移動させることを特徴とするロボットハンド。」 (2)補正後 「ロボットアームに取り付けられてワークをピッキングするロボットハンドであって、 部品箱に収容されているワークを互いに独立的にピッキングする第1および第2のピッキング手段と、 ワークをピッキングした前記第1のピッキング手段が他の部材と干渉することを防止するために、当該第1のピッキング手段をピッキング位置から前記部品箱の上部の退避位置に移動させるとともに、前記第2のピッキング手段を前記ピッキング位置に移動させる駆動手段と、 前記ピッキング位置における第1または第2のピッキング手段と前記部品箱に収容されているワークとを結ぶ直線に沿って、当該ピッキング位置の第1または第2のピッキング手段を往復移動させる往復移動手段と、を有し、 前記第1および第2のピッキング手段は、ワークを吸着する吸着パッドをそれぞれ含み、同一平面上に異なる向きに配置されており、 前記駆動手段は、前記平面に垂直な一の揺動軸周りに前記第1および第2のピッキング手段を揺動させる揺動機構を含み、 前記往復移動手段が前記第1のピッキング手段を引き上げた後、前記駆動手段が前記平面に垂直な一の揺動軸周りに前記第1のピッキング手段を揺動させて前記退避位置に移動させることを特徴とするロボットハンド。」 2.2 補正の適否 特許請求の範囲に対する本件補正は、ワークが部品箱に収容されていること、及び、退避位置が部品箱の上部にあることを特定することを含むものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する、特許請求の範囲の縮減を目的とするものに該当する。 また、明細書の段落7に対する本件補正は、特許請求の範囲に対する補正との整合を図ることを目的とする、形式的なものである。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 2.3 補正発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、上記2.1(2)に記載した事項により特定されるとおりのものである。 2.4 刊行物に記載された発明または事項 原査定の拒絶理由に示された文献であって、本願の出願日前に国内において頒布された以下の刊行物1には、以下の記載がなされている。 刊行物1: 特開昭58-45885号公報 2.4.1 刊行物1 (1)刊行物1の記載 a.(第1ページ右下欄第1?4行) 「本発明は自動機械化装置用作業装置特に各種産業用ロボットの作用部に用い、部品の移動、各種加工、組立に使用する作業装置に関するものである。」 b.(第2ページ右上欄第9?14行) 「本発明にあってはブラケット(9)部、すなわち、スクリュー杆(3)及びガイド杆(5)の先端部のブラケット(9)にハウジング(10)が設けられ、該ハウジング(10)内のスクリュー杆(3)先端にクラッチ(a)を内装した作業装置(40)が設けられる。」 c.(第2ページ左下欄第16行?右下欄第2行) 「・・・したがって、スクリュー杆(3)をパルスモーター(1)で回転させることにより回転体(17)を所定角度回転させることができるものである。 更に上記回転体(17)の周囲に物品固定部材、例えば吸盤(21)、把持部(22)等を設けて作業装置(40)が形成される。」 d.(第3ページ左上欄第12?19行) 「さらに第1図示のごとく構成すると、パルスモーター(1)(1a)(1b)の制御で、上記回転体(17)部を左右、上下、前後に自由に移動させることができ、さらにクラッチ(a)及びパルスモーター(1)のパルスを制御して回転体(17)を所定の角度に回転させ、必要とする物品固定部材、その他の加工部材等を使用することができる。」 e.(第1図) 回転体(17)には複数の吸盤(21)が同一平面上に異なる向きに配置され、回転体(17)が該平面に垂直な一の揺動軸周りにパルスモーター(1)によって回転することが、理解される。 (2)刊行物1記載の発明 上記において、吸盤が部品を取り上げる、すなわちピッキングするための手段であること、及び、ピッキングする際は、ピッキング位置にある吸盤が、収容位置にある部品に向けて直線に沿って往復し、そのための往復駆動手段を有していること、は当業者にとって自明である。また、吸盤が部品を吸着する吸着パッドを含むことは、いうまでもない。そして、回転体が揺動する際は、ピッキング位置にあった第1の吸盤が退避位置に移動するとともに、新たな第2の吸盤がピッキング位置に移動することは、容易に理解される。 そこで、摘記事項a?d及び認定事項eを補正発明の記載に沿って整理すると、刊行物1には次の発明が記載されているということができる。 「産業用ロボットに取り付けられて部品をピッキングする作業装置であって、 部品をピッキングする複数の吸盤と、 第1の吸盤をピッキング位置から退避位置に移動させるとともに、第2の吸盤を前記ピッキング位置に移動させる回転体と、 前記ピッキング位置における吸盤と部品とを結ぶ直線に沿って、当該ピッキング位置の吸盤を往復移動させる往復移動手段と、を有し、 前記複数の吸盤は、部品を吸着する吸着パッドをそれぞれ含み、同一平面上に異なる向きに配置されており、 前記回転体は、前記平面に垂直な一の揺動軸周りに前記第1および第2の吸盤を揺動させるパルスモーターを含み、 前記回転体が前記平面に垂直な一の揺動軸周りに前記第1の吸盤を揺動させて前記退避位置に移動させる、作業装置。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。) 2.5 対比 補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「産業用ロボット」は「ロボットアーム」と呼ぶことができるものであり、後者の「部品」、「作業装置」、「吸盤」、「回転体」、「パルスモーター」が、前者の「ワーク」、「ロボットハンド」、「ピックアップ手段」、「駆動手段」、「揺動機構」にそれぞれ相当することは明白である。また、後者の「吸盤」は複数あるから、「第1のピッキング手段」及び「第2のピッキング手段」と呼ぶことができる。 そうしてみると、補正発明と刊行物1記載の発明とは、以下の点において一致及び相違するものと認められる。 <一致点> 「ロボットアームに取り付けられてワークをピッキングするロボットハンドであって、 ワークをピッキングする第1および第2のピッキング手段と、 ワークをピッキングした前記第1のピッキング手段が当該第1のピッキング手段をピッキング位置から退避位置に移動させるとともに、前記第2のピッキング手段を前記ピッキング位置に移動させる駆動手段と、 前記ピッキング位置における第1または第2のピッキング手段とワークとを結ぶ直線に沿って、当該ピッキング位置の第1または第2のピッキング手段を往復移動させる往復移動手段と、を有し、 前記第1および第2のピッキング手段は、ワークを吸着する吸着パッドをそれぞれ含み、同一平面上に異なる向きに配置されており、 前記駆動手段は、前記平面に垂直な一の揺動軸周りに前記第1および第2のピッキング手段を揺動させる揺動機構を含み、 前記駆動手段が前記平面に垂直な一の揺動軸周りに前記第1のピッキング手段を揺動させて前記退避位置に移動させる、ロボットハンド。」である点。 <相違点1> ワークが、前者では部品箱に収容され、互いに独立的にピッキングされるのに対し、後者ではこのようなものか、明らかでない点。 <相違点2> 駆動手段が、前者では第1のピッキング手段が他の部材と干渉することを防止するために、これを退避位置に移動させるのに対し、後者ではこのような目的で移動させていない点。 <相違点3> 退避位置が、前者では部品箱の上部であるのに対し、後者ではどこか明らかでない点。 <相違点4> 駆動手段が、前者では往復移動手段が前記第1のピッキング手段を引き上げた後に第1のピッキング手段を退避位置に移動させるのに対し、後者ではこのようなものか不明である点。 2.6 当審の判断 以下、上記各相違点について検討する。 2.6.1 <相違点1>について ワークを部品箱に収容しておき、ロボットアームでワークをピッキングするときは、ワークを部品箱に収容したままの状態で、ロボットアームの位置を制御することで、一つずつ取り出すことは、例を挙げるまでもなくロボットによるワーク取扱い上、従来周知かつ慣用の事項である。ワークを一つずつ取り出すことは、互いに独立的にピッキングすることにほかならない。 したがって、刊行物1記載の発明においてワークを部品箱に収容し、互いに独立的にピッキングすることは、単に周知慣用の技術を適用するものにすぎない。 2.6.2 <相違点2>について 平成24年12月11日付拒絶の査定の備考欄に示された周知例である特開昭62-176783号公報には、複数設けられた「真空吸着器(15)」の1つがワークを吸着した際に、未だワークを吸着していない他の「真空吸着器(15)」がワークを吸着することを妨げない位置にワークを吸着したものを「取付体16」により揺動させて退避位置に移動させる点、少なくとも示唆されている。複数設けられたワークを吸着する手段のうち、他のワーク吸着手段の吸着動作を妨げないようにするために、既にワークを吸着した手段が退避位置に移動させることは従来周知である。 そうすると、刊行物1記載の発明において、複数設けられた「吸盤」の1つが他の「吸盤」と干渉することを防止するために、退避位置に移動させる点は、上記従来周知の事項を適用することで当業者が容易になし得たものであり困難性はない。 2.6.3 <相違点3>について 2.6.1にて示したとおり、周知慣用の技術にならって部品箱からワークをピッキングする場合、退避位置が、部品箱の上部となることは必然である。 2.6.4 <相違点4>について 上記周知例とした例示した特開昭62-176783号公報記載「真空吸着器(15)」は、以下のとおりのものであるから、ワークを吸着する手段が引き上げられた後に退避位置に移動させる点は、従来周知である。 「次に前述した実施例の作用を説明する。第3図はこれからワーク31を吸着しようとする状態の真空吸着器15の状態を示しており、電磁弁20は通電して外気としゃ断した位置の状態にしておく。この時圧縮スプリング27によりピストン26は下方に押し出され、球体29は重力によりシリンダ部分28のテーパー穴に乗った状態である。この状態からワーク31を吸着するため本把持装置を降下させていくとピストン26がワーク31にぶつかって圧縮スプリングを押し上げてゆき、ついには第4図に示す状態となる。 この時シリンダ28の内部にあった空気が矢印で示すように球体29を押し上げて外部を放出し、それが終了した所で球体29がテーパー孔28aに再び乗る事になる。この状態から把持装置を上昇させると球体29がテーパー孔28aと密接して外気がシリンダ内に侵入することを防止し、圧縮スプリング27によりピストン26が下方に押されて動き、シリンダ部分28の内部に真空状態が形成されて第5図に示すようにワーク31が吸着される。そしてこの真空吸着器15を複数備えた回転板16をモータ1で回転させて上述の同様の動作を行なわせることにより、順次ワーク31を吸着させていくものである。」(第3ページ左上欄第13行?同ページ右上欄第16行) そうすると、刊行物1記載の発明において、「吸盤」が引き上げられた後に退避位置に移動させるようにすることは、上記従来周知の事項を適用することで当業者が容易になし得たものであり、困難性はない。 2.6.5 補正発明の作用効果について 補正発明には、刊行物1記載の発明及び従来周知の事項に基づいて普通に予測される範囲を超える、格別の作用効果を見いだすことはできない。 したがって、補正発明は刊行物1記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 2.7 まとめ 以上のとおり、補正発明は特許出願の際に独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願の発明について 3.1 本件発明 2.に示したとおり、平成25年3月18日付の手続補正は却下すべきであるから、本願の請求項1に係る発明は、2.1(1)に示す、平成24年6月22日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(以下、「本件発明」という。) 3.2 刊行物に記載された発明または事項 刊行物およびそれらに記載された発明または事項は、2.4に示すとおりである。 3.3 対比と判断 本件発明は、補正発明より、2.2に示した特定事項を除いたものに相当する。 そうすると、本件発明の特定事項をすべて含む補正発明が刊行物1記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は刊行物1記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきである。 よって、結論のとおり審決する。 . |
審理終結日 | 2013-10-24 |
結審通知日 | 2013-10-29 |
審決日 | 2013-11-27 |
出願番号 | 特願2008-104677(P2008-104677) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B25J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柿崎 拓 |
特許庁審判長 |
豊原 邦雄 |
特許庁審判官 |
長屋 陽二郎 久保 克彦 |
発明の名称 | ロボットハンド |
代理人 | 八田国際特許業務法人 |