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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1283471
審判番号 不服2013-8088  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-02 
確定日 2014-01-09 
事件の表示 特願2012-136277「筐体、半導体製造装置および搬送ロボット」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月20日出願公開、特開2012-182500〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成20年11月10日(優先権主張平成19年11月21日、日本国)を国際出願日とする特願2009-542521号の一部を平成24年6月15日に新たな特許出願としたものであって、同24年9月24日付けで拒絶の理由が通知され、同24年11月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同25年2月7日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、同25年5月2日に本件審判の請求がされ、同時に特許請求の範囲及び明細書を補正対象書類とする手続補正(以下「本件補正」という。)がされ、その後、当審の平成25年7月29日付け審尋に対して同25年9月26日に回答書が提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書について補正をするものであって、補正前後の請求項1の記載を、補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1)補正前の請求項1
「 【請求項1】
上部に設置したフィルタを通過した清浄なダウンフローの気流を外部と隔離する筐体であって、
昇降機構を有する胴体と、前記胴体の上で水平方向に回転自在な第1アームと、前記第1アームの先端上で水平方向に回転自在な第2アームと、前記第2アームの先端上で水平方向に回転自在なハンドとを有しており前記ハンドに搭載した基板を搬送する搬送ロボットを前記筐体内に備え、
前記筐体は、
平面視した場合に略矩形であり、
前記矩形の長辺の一方に対応する側壁には、
カセットオープナを取り付けるための開口が複数個設けられており、
前記搬送ロボットは、
前記側壁に設けられた両端の開口の間であって、かつ、当該側壁寄りに配置され、
前記第1アームの長さは、
前記第1アームの回転軸である第1アーム回転軸と前記側壁との距離よりも長く、
前記第1アームの長さと前記第2アームの長さとの和は、
前記第2アームの先端が前記矩形の短辺を越えることが可能な長さであること
を特徴とする筐体。」
(2) 補正後の請求項1
「 【請求項1】
上部に設置したフィルタを通過した清浄なダウンフローの気流を外部と隔離する筐体であって、
昇降機構を有する胴体と、前記胴体の上で水平方向に回転自在な第1アームと、前記第1アームの先端上で水平方向に回転自在な第2アームと、前記第2アームの先端上で水平方向に回転自在なハンドとを有しており前記ハンドに搭載した基板を搬送する搬送ロボットを前記筐体内に備え、
前記筐体は、
平面視した場合に略矩形であり、
前記矩形の長辺の一方に対応する側壁には、
カセットオープナを取り付けるための開口が複数個設けられており、
前記搬送ロボットは、
前記側壁に設けられた両端の開口の間であって、かつ、当該側壁寄りに配置され、
前記第1アームの長さは、
前記第1アームの回転軸である第1アーム回転軸と前記側壁との距離よりも長く、かつ、前記第1の側壁と対向する第2の側壁の近傍へ到達する長さであり、
前記第1アームの長さと前記第2アームの長さとの和は、
前記第2アームの先端が前記矩形の短辺を越えることが可能な長さであること
を特徴とする筐体。」
2 補正の適否
請求項1における補正は、第1アームの長さを「第1の側壁と対向する第2の側壁の近傍へ到達する長さ」と限定事項を付加するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることは明らかである。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。
(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正がされた明細書及び図面の記載からみて、上記1の(2)の補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
(2)刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本件優先日前に頒布された刊行物である特開2003-188231号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載がある。
ア 段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶基板製造装置や半導体製造装置等において、基板やウェーハ等のワークを搬送するために用いるワーク搬送用ロボット及びこのロボットを備えたワーク加工装置に関するものである。」
イ 段落【0053】?【0061】
「【0053】図1ないし図3において、Aはアーム機構駆動装置、B及びCはそれぞれ前段側アーム機構及び後段側アーム機構、Dはハンドであり、これらによりワーク搬送用ロボットRが構成されている。なお図2に示したWは、ハンドDの上に保持されたワーク(例えば半導体ウェハ)である。
【0054】図3に示したように、アーム機構駆動装置Aは、円筒状に形成されたケーシング1を備えている。ケーシング1は駆動装置Aの機構部を収容するためのもので、図示のケーシング1は、正方形状に形成された底板101と、該底板に下端が着脱可能に固定された円筒状の筒状部102とからなり、筒状部102はその軸線O-Oを垂直方向に向けた状態で配置されている。ケーシング1の底板101の四隅には、ロボットを取付け箇所に固定するためのボルトを挿通する取付け孔103が形成されている。またケーシング1の筒状部102の下端寄りの部分の外面には、1対の把手104,104が固定されている。
【0055】ケーシング1の内側には、上下方向に延びる支柱2が設けられていて、この支柱2に昇降フレーム3が昇降自在に支持され、ケーシング1と昇降フレーム3とにより、アーム機構を支持する支持フレーム4が構成されている。
【0056】更に詳述すると、支柱2は、図5に示されているように、ケーシング1と中心軸線を共有する円筒面の形状を呈する外周面201と、ケーシングの中心軸線と平行に延びる平坦な側面202と、ケーシングの軸線方向に延びる溝203とを有している。溝203は、側面202側に開口するように設けられていて、該溝203の両側に、ケーシングの中心軸線と平行に延びる対のレール取付け面202a,202aが形成されている。支柱2は、その下端をケーシングの底板101に固定することにより、ケーシング1に対して固定され、対のレール取付け面202a,202aに、互いに平行に配置された対のガイドレール5,5が固定されている。支柱2の上端及び下端寄りの位置には、溝203の上端及び下端をそれぞれ終端する端部壁204及び205が形成されている。
【0057】ガイドレール5,5にはそれぞれスライダ6,6がスライド自在に結合され、これらのスライダ6,6に昇降フレーム3が固定されている。図示の例では、ガイドレール5,5がそれぞれ鳩尾状の断面形状を有するように形成されていて、昇降フレーム3に固定されたスライダ6,6にそれぞれ設けられた断面鳩尾状の溝にガイドレール5,5がスライド自在に嵌合されている。
【0058】この例では、支柱2と、ガイドレール5,5と、スライダ6,6とにより、昇降フレーム3をケーシング1に対して昇降自在に支持する昇降フレーム支持機構が構成されている。
【0059】支柱2の上端側及び下端側の端部壁204及び205にはそれぞれ軸受8及び9(図3及び図6参照)が取り付けられ、これらの軸受により、支柱2の溝203内を上下方向(垂直方向)に延びるネジ棒(図示の例ではボールネジ)10が支持されている。昇降フレーム3の下端には、溝203内に挿入された張り出し部301が形成され、この張り出し部301に固定されたナット(図示の例ではボールナット)11にネジ棒10が螺合されている。ケーシング1内の下部には昇降用モータ12が、その出力軸を下方に向けた状態で配置されている。昇降用モータ12は、ケーシング1の底板101に架台13を介して固定され、モータ12の回転軸に取り付けられた歯付きプーリ14と、ボールネジ10の下端に取り付けられた歯付きプーリ15とに歯付きベルト16が巻き掛けされている。
【0060】したがって、モータ12が駆動されると、その回転がプーリ14とベルト16とプーリ15とを介してネジ棒10に伝達され、このネジ棒の回転により、ナット11が昇降フレーム3とともに昇降させられる。この例では、ネジ棒10及びナット11からなる螺進機構と、昇降用モータ12と、プーリ14及び15と、ベルト16とにより、昇降フレーム3をケーシングの中心軸線に沿って昇降させる昇降機構が構成されている。
【0061】上記のように、対のガイドレール5,5に対して共通に支柱2を設けて、この支柱2に対のガイドレールを取り付ける構造にしておくと、対のガイドレール5,5をケーシング1内に組み込む前に、支柱2を衝として所定の位置関係に位置決め固定した後に、支柱2をガイドレール5,5とともにケーシング1内に挿入する組み立て方法をとることができるため、2本のガイドレールを位置決めしたり、固定したり、ガイドレール相互間の位置関係の微調整を行ったりする面倒な作業を狭いケーシング内で行う必要がなく、対のガイドレールを精度良く位置決めして取り付ける作業を容易に行うことができる。」
ウ 段落【0082】?【0086】
「【0082】図4及び図5に示したように、昇降フレーム3の上部に前段側アーム駆動用モータ60がその出力軸を上方に向けた状態で取り付けられ、モータ60の出力軸に歯付きプーリ61が取り付けられている。歯付きプーリ61とプーリ23とに歯付きベルト62が巻き掛けされ、モータ60の回転がプーリ61とベルト62とプーリ23とを介して減速機20の入力部に伝達されている。この例では、プーリ23及び61とベルト62とにより、前段側アーム駆動用モータ60の回転を前段側アーム用減速機20の入力部に伝達する前段側アーム用伝導機構が構成され、この伝導機構と減速機20とにより、モータ60の回転を前段側アームBの一端に伝達する前段側アーム用動力伝達装置が構成されている。
【0083】昇降フレーム3の上部にはまた、ハンド駆動用モータ65(図3参照)が取り付けられ、このハンド駆動用モータ65の出力軸に歯付きプーリ66が取り付けられている。歯付きプーリ66とハンド駆動軸の下端に取り付けられた歯付きプーリ27とに歯付きベルト67が巻き掛けされ、ハンド駆動用モータ65の回転がプーリ66とベルト67とプーリ27とを介してハンド用駆動軸24に伝達されている。
【0084】本実施形態では、プーリ27及び66とベルト67とにより、ハンド駆動用モータ65の回転をハンド用駆動軸24に伝達する第1のハンド用伝導機構が構成され、前段側アームBの中空部内に配置されたプーリ28及び48とベルト56とにより、前段側アームの中空部内でハンド用駆動軸24の回転をハンド用中継軸45に伝達する第2のハンド用伝導機構が構成されている。また、後段側アームCの中空部内に配置されたプーリ46及び53とベルト57とにより、後段側アームの中空部内でハンド駆動用中継軸45の回転をハンド用減速機50の入力部に伝達する第3のハンド用伝導機構が構成され、上記第1ないし第3のハンド用伝導機構と減速機50とにより、ハンド駆動用モータ65の回転を前段側アームの中空部内及び後段側アームの中空部内を通してハンドDの一端に伝達するハンド用動力伝達装置が構成されている。
【0085】図4及び図5に示すように、昇降フレーム3の上部には、後段側アーム駆動用モータ70が取り付けられ、このモータ70の出力軸に歯付きプーリ71が取り付けられている。歯付きプーリ71と後段側アーム用駆動軸30の下端に取り付けられた歯付きプーリ35とに歯付きベルト72が巻き掛けされ、モータ70の回転がプーリ71とベルト72とプーリ35とを介して後段側アーム用駆動軸30に伝達されるようになっている。
【0086】この例では、プーリ35及び71とベルト72とにより、後段側アーム駆動用モータ70の回転を後段側アーム用駆動軸30に伝達する第1の後段側アーム用伝導機構が構成されている。またプーリ36と、ベルト55と、プーリ44とにより、前段側アームBの中空部内で後段側アーム用駆動軸30の回転を後段側アーム用減速機43の入力部に伝達する第2の後段側アーム用伝導機構が構成され、上記第1及び第2の後段側アーム用伝導機構と減速機43とにより、後段側アーム駆動用モータ70の回転を前段側アームの中空部内で後段側アーム用減速機の入力部に伝達する後段側アーム用動力伝達装置が構成されている。」
エ 段落【0089】?【0090】
「【0089】上記のワーク搬送用ロボットにおいては、前段側アーム駆動用モータ60を駆動することにより、前段側アームBをエンドレスに回動させることができる。また後段側アーム駆動用モータ70(図4参照)を駆動することにより、後段側アームCを、エンドレスに回動させることができる。更に、ハンド駆動用モータ65(図3参照)を回転させることにより、ハンドDをエンドレスに回動させることができる。
【0090】したがって、前段側アームB,後段側アームC及びハンドDのそれぞれの回動量と回動方向とを適宜に制御することにより、ハンドDを種々の方向に移動させることができる。」
オ 段落【0112】?【0121】
「【0112】本発明に係わるワーク搬送用ロボットは、半導体製造装置や液晶製造装置等のワーク加工装置において、ウェハや液晶基板等のワークを搬送するために用いられる。図9は本実施形態のワーク搬送用ロボットを備えたワーク加工装置の一例を示したもので、同図において80は長手方向に対向する対の側壁80a,80bと、これらの側壁の対向方向に対して直角な方向(奥行き方向)に相対する対の側壁80c,80dとを有する直方体状のトランスファチャンバ、81はトランスファチャンバ80の一つの側壁80aに接続されたロードロックチャンバ、82A及び82Bは一定の距離を隔てた状態で水平方向に並設されて、ロードロックチャンバ81が接続されたトランスファチャンバの側壁80aと直交する他の側壁80cに接続された2つのプロセスチャンバであり、トランスファチャンバ80内に本発明に係わるロボットRが配置されている。
【0113】図示のロボットRは、2つのプロセスチャンバ82A,82Bの中心Oa,Oa´間の水平方向距離を2等分する位置を両プロセスチャンバの並設方向に対して直角な方向に延びる直線Oc-Oc上の位置で、かつトランスファチャンバの相対する側壁80c,80dの対向方向の片側(図示の例ではプロセスチャンバ82A,82Bが取り付けられていない方の側壁80d側)に偏った位置に前段側アームBの回動中心(第1の軸線O_(1)-O_(1))を位置させた状態で配置されている。
【0114】半導体製造装置等のワーク加工装置において、ワークの中心位置及び向きを常に一定にしてプロセスチャンバー内に搬入する必要がある場合には、トランスファチャンバ80内にまちまちの向きで搬入されるワークの向きを一定の向きに揃えるための装置(アライナ装置と呼ばれる。)をトランスファチャンバ内に配置しておく必要がある。図9に示した例では、ロボットRの側方のデッドペースにアライナ装置83が配置されている。図示のアライナ装置83は、半導体ウェハを保持して回転させるターンテーブル83Aと、該ターンテーブルを回転させる駆動機構と、ターンテーブル83Aに保持されたウェハのノッチ(V字形の切欠)またはオリフラ(オリエンテーションフラット)の位置を検出するセンサと、検出したウェハのノッチまたはオリフラの位置を規定の方向に向けるようにターンテーブル83Aの回転を制御する制御装置とを備えたものである。アライナ装置83は、ロボットRによりウェハを保持してプロセスチャンバに搬入、搬出する際に、ロボットのハンドの移動を妨げることがないように、そのターンテーブル83Aをロードロックチャンバ81及びプロセスチャンバ82A,82Bのそれぞれの搬入、搬出口よりも下方に位置させた状態で設けられている。
【0115】図9に示したように、トランスファチャンバ80内にアライナ装置83が設けられる場合には、ロボットRのハンドDに保持した状態でロードロックチャンバ81を通してトランスファチャンバ80内に搬入したウェハを先ずアライナ装置83のターンテーブル83Aの上方に配置し、その状態でロボットRの昇降フレーム3を下降させて、ウェハをアライナ装置のターンテーブル83A上に載せる。ロボットのハンドをアライナ装置83から退避させた後、アライナ装置83のターンテーブルを回転させながらウェハのノッチ位置またはオリフラの位置を検出し、検出したノッチまたはオリフラを規定の向きに向けた状態でターンテーブル83Aを停止させる。その後、ロボットRのハンドDによりアライナ装置83A上のウェハを受け取り、該ウェハをプロセスチャンバ82Aまたは82Bに搬入して所定の処理を行わせる。
【0116】図10(A)ないし(E)は、図9のワーク加工装置において、一方のプロセスチャンバ82A内のウェハ(ワーク)Wを他方のプロセスチャンバ82B内に搬送する際のロボットの動きを順を追って示している。なお図10においてはアライナ装置83の図示が省略されている。
【0117】この例では、図10(A)の過程で一方のプロセスチャンバ82A内のウェハWを受け取り、図10(B)の過程でウェハWをプロセスチャンバ82Aから搬出している。その後、図10(C)及び(D)の過程でウェハWを横方向(プロセスチャンバの並設方向)に平行移動させて、他方のプロセスチャンバ82Bの前まで移動させ、図10(E)の過程でウェハをプロセスチャンバ82B内に搬入している。
【0118】上記のように、本実施形態によれば、ロボットをチャンバの並設方向に移動させることなく、定位置に固定したままで複数のチャンバ内へのワークの搬入、搬出を行わせることができるため、ロボットをチャンバの並設方向に移動させる移動台を省略して搬送装置の構成を簡単にすることができ、半導体等の製造装置の小形化を図ることができる。
【0119】ワークを一方向にのみ移動させるように構成されていた従来のロボットを図9に示すようなワーク加工装置に用いる場合には、ロボットをトランスファチャンバ内でプロセスチャンバの並設方向に移動させる必要があるため、アライナ装置83を配置するためにトランスファチャンバ内に余分のスペースを確保する必要があり、製造装置が大形になるのを避けられなかったが、本実施形態のように、前段側アーム及び後段側アームとハンドとをエンドレスに回動させるように構成した場合には、上記のように、ロボットをチャンバの並設方向に移動させることなく、定位置に固定したままで複数のチャンバ内へのワークの搬入、搬出を行わせることができるため、図9に示したように、ロボットRの側方に形成されたデッドスペースにアライナ装置を配置することで、トランスファチャンバの小形化を図ることができる。
【0120】更に、本実施形態のように、各アームB,C及びハンドDをエンドレスに回動させることができるようにしておくと、各アーム及びハンドの変位の自由度を高めることができるため、常にワークを許容される最短の経路で目標位置に移動させるように各アーム及びハンドを制御して、ワークの移動に要する時間を短縮することができる。
【0121】また本実施形態のように、前段側アームBの回動中心である第1の軸線O_(1)-O_(1)がケーシング1の中心軸線O-Oに対して一定の偏倚距離ΔDだけ偏倚した位置を垂直方向に延びるように前段側アームの回動中心を設定すると、ロボットをワーク加工装置のトランスファチャンバ内に配置して、トランスファチャンバとロードロックチャンバとの間でのワークの受け渡しと、トランスファチャンバとプロセスチャンバとの間でのワークの受け渡しとを行わせるために用いる場合に、前段側アームBの回動中心とケーシング1の中心とを結ぶ直線の方向に相対するチャンバの対向壁部間の距離L(トランスファチャンバの奥行き方向の内法寸法、図9参照)を、前段側アームの回動中心をケーシングの中心に一致させた場合に比べて、偏倚距離ΔD分だけ短縮することができるため、ワーク加工装置のトランスファチャンバの小形化を図ることができる。またワーク加工装置がクリーンルーム内に配置される場合には、クリーンルームの容積の縮小を図ることができる。」
カ 段落【0123】?【0125】
「【0123】図9に示した例では、トランスファチャンバー80を備えて、該トランスファチャンバー内でロボットを稼働させるようにしたワーク加工装置に本発明に係わるワーク搬送用ロボットを適用したが、トランスファチャンバを設けることなく、ロボット設置ステーション上のオープンスペースにワーク搬送用ロボットを設置して、クリーンルーム内の大気雰囲気中でロボットを稼働させるワーク加工装置にも本発明のワーク搬送用ロボットを適用することができる。
【0124】クリーンルーム内の大気雰囲気中でロボットを稼働させるワーク加工装置は、例えば、図9においてトランスファチャンバ80を、該トランスファチャンバ80の底板と同じ長方形の形状に形成されたロボット設置ステーションで置き換えた構成を有する。この場合、ロボット設置ステーションの一方の長辺部の近傍にワーク加工部(図9のプロセスチャンバに相当する部分で、ワークに所定の加工を施す部分)が少なくとも一つ配置される。複数のワーク加工部が設けられる場合には、図9に示したプロセスチャンバ82A,82Bと同様に、該複数のワーク加工部が長方形のロボット設置ステーションの一方の長辺に沿って並べて配置される。また、図9に示したロードロックチャンバ81の位置には、加工すべきワークを待機させておくための設備、例えば、多数のワークを上下に多段に並べて収容するカセットを保持したカセットステージが設置される。また本発明に係わるワーク搬送用ロボットは、そのケーシングをロボット設置ステーションの他方の長辺部に近接させた状態で配置されて、ワーク加工部へのワークの搬入と該ワーク加工部からのワークの搬出とを行う。
【0125】このように構成すると、図9に示したワーク加工装置において、トランスファーチャンバの奥行き寸法を縮小できたのと同様に、前段側アームBの回動中心の偏倚距離ΔL分だけ、ロボット設置ステーションの奥行き寸法を小さくすることができるため、ワーク加工装置の小形化を図って、クリーンルームの容積の縮小を図ることができる。」
キ ここで、ワーク搬送用ロボットRの前段側アームB、後段側アームC、ハンドDが水平方向に回転自在なものであり、また、前段側アームBの先端上に後段側アームCが設けられ、後段側アームCの先端上にハンドDが設けられていることは明らかである。
また、図面の図9、図10を参照すると、トランスファチャンバ80の一対の側壁80c、80dは、他方の一対の側壁80a、80bよりも長いことが見て取れる。また、前段側アームBの長さは前段側アームBの回動軸線O_(1)-O_(1)と側壁80dとの距離より長く、かつ、側壁80dと対向する側壁80cの近傍へ到達する長さであることが理解できる。
ク 刊行物記載の発明
上記アないしオの摘記事項、及び図面の図9、図10を参照しつつキの認定事項より、刊行物には、次の発明が記載されていると認める。
「トランスファチャンバ80であって、
昇降フレーム3と、昇降フレーム3の上で水平方向に回転自在な前段側アームBと、前記前段側アームBの先端上で水平方向に回転自在な後段側アームCと、前記後段側アームCの先端上で水平方向に回転自在なハンドDとを有しており前記ハンドDに保持されたウェハを搬送するワーク搬送用ロボットRを前記トランスファチャンバ80内に備え、
前記トランスファチャンバ80は、
一対の側壁80c、80dが、他方の一対の側壁80a、80bよりも長い直方体状であり、
前記ワーク搬送用ロボットRは、
当該側壁80d寄りに配置され、
前記前段側アームBの長さは、
前記前段側アームBの回動軸線O_(1)-O_(1)と側壁80dとの距離より長く、かつ、側壁80dと対向する側壁80cの近傍へ到達する長さであり、
前記ワーク搬送用ロボットRの前記ハンドDは、側壁80aに接続されたロードロックチャンバ81を通してウェハをトランスファチャンバ80内に搬入することができるトランスファチャンバ80。」(以下「刊行物記載の発明」という。)
(3)対比
補正発明と刊行物記載の発明とを対比する。
刊行物記載の発明の「トランスファチャンバ80」、「前段側アームB」、「後段側アームC」、「ハンドD」、「ワーク搬送用ロボットR」は、それぞれ、補正発明の「筐体」、「第1アーム」、「第2アーム」、「ハンド」、「搬送ロボット」に相当する。
刊行物記載の発明の「昇降フレーム3」は「昇降機構を有する胴体」と呼ぶことができる。また、刊行物記載の発明の「ハンドDに保持されたウェハ」は補正発明の「ハンドに搭載した基板」に相当する。
刊行物記載の発明の「一対の側壁80c、80dが、他方の一対の側壁80a、80bよりも長い直方体状」は、補正発明の「平面視した場合に略矩形」に相当する。
刊行物記載の発明の「側壁80d」は補正発明の「矩形の長辺の一方に対応する側壁」に相当する。
刊行物記載の発明の「前段側アームBの回動軸線O_(1)-O_(1)と側壁80dとの距離より長く、かつ、側壁80dと対向する側壁80cの近傍へ到達する長さ」は、補正発明の「第1アームの回転軸である第1アーム回転軸と第1の側壁との距離よりも長く、かつ、前記第1の側壁と対向する第2の側壁の近傍へ到達する長さ」に相当する。
刊行物記載の発明の「ワーク搬送用ロボットRの前記ハンドDは、側壁80aに接続されたロードロックチャンバ81を通してウェハをトランスファチャンバ80内に搬入することができる」は、「第1アームの長さと第2アームの長さとの和は、ハンドが矩形の短辺を越えて基板を搬送することが可能な長さ」という限りで、補正発明の「第1アームの長さと第2アームの長さとの和は、前記第2アームの先端が矩形の短辺を越えることが可能な長さ」と共通する。
以上のとおりであるので、両者は、次の「筐体」で一致している。
「筐体であって、
昇降機構を有する胴体と、前記胴体の上で水平方向に回転自在な第1アームと、前記第1アームの先端上で水平方向に回転自在な第2アームと、前記第2アームの先端上で水平方向に回転自在なハンドとを有しており前記ハンドに搭載した基板を搬送する搬送ロボットを前記筐体内に備え、
前記筐体は、
平面視した場合に略矩形であり、
前記搬送ロボットは、
矩形の長辺の一方に対応する側壁寄りに配置され、
前記第1アームの長さは、
前記第1アームの回転軸である第1アーム回転軸と前記側壁との距離よりも長く、かつ
、前記第1の側壁と対向する第2の側壁の近傍へ到達する長さであり、
前記第1アームの長さと前記第2アームの長さとの和は、
前記ハンドが矩形の短辺を超えて基板を搬送することが可能な長さである筐体。」
そして、両者は、次の点で相違している。
ア <相違点1>
筐体内の雰囲気に関して、補正発明では、「上部に設置したフィルタを通過した清浄なダウンフローの気流を外部と隔離する」ものであると特定しているのに対し、刊行物記載の発明では、そのようなダウンフローの気流があるのかどうか不明な点。
イ <相違点2>
矩形の長辺の一方に対応する側壁に関して、補正発明では、「カセットオープナを取り付けるための開口が複数個設けられており」、搬送ロボットは、「側壁に設けられた両端の開口の間」の配置されるものであるとしているのに対して、刊行物記載の発明では、側壁80dに開口が設けられているのかどうか不明な点。
ウ <相違点3>
搬送ロボットの第1アームの長さと第2アームの長さとの和に関して、補正発明では、「第2アームの先端が前記矩形の短辺を越えることが可能な長さ」としているのに対し、刊行物記載の発明では、ワーク搬送用ロボットRのハンドDは、側壁80aに接続されたロードロックチャンバ81を通して半導体ウェハをトランスファチャンバ80内に搬入することができるものである点。
(4)相違点の検討
上記各相違点について、以下検討する。
ア <相違点1>について
基板を搬送する搬送ロボットを有する筐体を上部に設置したフィルタを通過した清浄なダウンフローの気流により外部と隔離することは原査定の拒絶の理由に引用された本件優先日前に頒布された刊行物である特開2005-197542号公報(段落【0020】?【0022】参照)に見られるように従来周知の事項である。
そして、刊行物記載の発明も、刊行物における摘記事項カに「図9に示した例では、トランスファチャンバー80を備えて、該トランスファチャンバー内でロボットを稼働させるようにしたワーク加工装置に本発明に係わるワーク搬送用ロボットを適用したが、・・・クリーンルーム内の大気雰囲気中でロボットを稼働させるワーク加工装置にも本発明のワーク搬送用ロボットを適用することができる。・・・このように構成すると、図9に示したワーク加工装置において、トランスファーチャンバの奥行き寸法を縮小できたのと同様に、前段側アームBの回動中心の偏倚距離ΔL分だけ、ロボット設置ステーションの奥行き寸法を小さくすることができるため、ワーク加工装置の小形化を図って、クリーンルームの容積の縮小を図ることができる。」と記載されているように、ワーク搬送用ロボットRを大気雰囲気中で用いることが示唆されているところ、基板の搬送は清浄な雰囲気で行われなければならないことがこの種の装置において当然望まれていることであることからすれば、上記従来周知の構成を刊行物記載の発明に適用し、当該トランスファチャンバ80を大気圧下で用いた場合には、筐体であるトランスファチャンバ80の上部にもクリーンユニットを設置し、それにより上部に設置したフィルタを通過した清浄なダウンフローの気流によりトランスファチャンバ80内を外部と隔離することは、当業者にとって格別困難なことではない。
イ <相違点2>について
筐体における矩形の長辺に対応する側壁にカセットオープナを取り付けるための複数の開口を設けることは原査定の拒絶の理由に引用された本件優先日前に頒布された上記刊行物である特開2005-197542号公報(図面の図2参照)に見られるように従来周知の事項である。してみれば、刊行物記載の発明においても、側壁80dにカセットオープナを取り付けるための複数の開口を設けることに格別の困難性はない。そして、ワーク搬送用ロボットRはトランスファチャンバ80の長辺方向中央に設置するものであることからすれば、刊行物記載の発明において複数の開口を側壁80dに設けた場合には、ワーク搬送用ロボットRは側壁80dの複数の開口の間に設けられることになる。
ウ <相違点3>について
搬送ロボットの第1アームの長さと第2アームの長さとの和を「第2アームの先端が前記矩形の短辺を越えることが可能な長さ」と特定することの技術的意義は、短辺に基板を搬送することにあるところ、刊行物記載の発明においても、ワーク搬送用ロボットRのハンドDは、短辺である側壁80aに接続されたロードロックチャンバ81を通して半導体ウェハをトランスファチャンバ80内に搬入することができるものである。
したがって、上記相違点3は実質的な相違点ではない。
エ 平成25年9月26日付けの回答書における補正案について
請求人は、平成25年9月26日付け回答書において補正案を提示している。この補正案を検討すべき法律的根拠はないものの、念のため検討する。
上記回答書における補正案では、第1アームの長さに関して「第1の側壁と対向する第2の側壁の近傍へ到達する長さ」から「第1アームの先端が側壁と対向する側壁の近傍へ到達する長さ」とし、第1アームの長さと第2アームの長さとの和に関して「第2アームの先端が矩形の短辺を越えることが可能な長さ」から「第1アームと第2アームとを伸ばしきらないように略直線状に伸ばした姿勢で前記第2アームの先端が矩形の短辺の近傍へ到達する長さ」と特定するものである。
上記補正案における補正事項について検討すると、前者においては、第1アームの長さを「第1の側壁と対向する第2の側壁の近傍へ到達する長さ」と特定しても、「第1アームの先端が側壁と対向する側壁の近傍へ到達する長さ」と特定しても、技術的意義に変更はない。
また、後者について検討すると、ロボットにおいて、複数のアームを伸ばしきらないで用いるべきことは、原査定の拒絶の理由に引用された本件優先日前に頒布された上記刊行物である特開2007-152490号公報(段落【0047】及び図面の図3(b)参照)に見られるように従来周知の事項であることから、刊行物記載の発明においても、側壁80aのロードロックチャンバ81にもワーク搬送用ロボットRにおける複数のアームをのばしきらないで半導体ウェハを搬送するようにすること、すなわち、前段側アームBと後段側アームCを伸ばしきらないように伸ばした姿勢で行えるようにすることは、当業者にとって格別困難なことではない。
したがって、上記回答書における補正案を仮に採用したとしても、そのことによっては、当該補正案に示された特許請求の範囲に係る発明を当業者が容易に発明することができないものとすることはできない。
オ 補正発明の作用効果について
補正発明が奏する作用効果は、刊行物記載の発明及び上記従来周知の事項から当業者が予測できる程度のものであって格別のものではない。
(5)補正却下におけるむすび
以上のとおり、補正発明は、刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし25に係る発明は、平成24年11月12日付け手続補正書により補正がされた特許請求の範囲及び明細書、出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された事項により特定されるとおりのものであると認めるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、上記第2の1の(1)の補正前の特許請求の範囲の請求項1に示したとおりである。
2 対比及び判断
本件発明は、前記第2の2で述べたとおり、補正発明の発明特定事項から、前記限定事項が省かれたものである。
そうすると、上記第2の2の(4)で検討したとおり、本件発明は、刊行物記載の発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 むすび
以上のとおりであるので、本件発明は、刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件出願の請求項2乃至25に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-05 
結審通知日 2013-11-12 
審決日 2013-11-25 
出願番号 特願2012-136277(P2012-136277)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 崇文  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 長屋 陽二郎
久保 克彦
発明の名称 筐体、半導体製造装置および搬送ロボット  
代理人 酒井 宏明  

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