ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D |
---|---|
管理番号 | 1283488 |
審判番号 | 不服2012-14283 |
総通号数 | 171 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-07-25 |
確定日 | 2014-01-10 |
事件の表示 | 特願2006-544952「噴射攪拌工法および噴射攪拌装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月18日国際公開、WO2006/051865〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成17年11月10日(優先権主張平成16年11月11日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成24年4月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年7月25日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成23年8月29日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、平成23年8月29日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲又は図面によると、次のものであると認める。 「下端にセメントミルクを主成分とする地盤改良用媒体を噴射する第一の噴射部と、反応材を噴射する第二の噴射部とを設け、さらに前記第一と第二の噴射部よりも上段に圧縮空気と水とを混合噴射する対向する口からなる第三の噴射部を設けた多重管ロッドを地盤中に押圧進入または給進させ、地盤中から前記多重管ロッドを回転させながら引き上げつつ、所定の範囲内に前記第三の噴射部から圧縮空気と水を噴射して地盤改良範囲を円筒形に噴射切削し、切削した排泥を、掘削孔を通して地表に排出させるとともに、前記第一の噴射部のノズルから地盤改良用媒体を噴射し、さらに第二の噴射部のノズルから地盤改良用媒体を固める反応材を噴射し、所定径の杭を構築する噴射攪拌工法において、 排泥を地盤改良用媒体として再利用するために、エアージャンクション(混気ジェット現象)により地盤硬化材として用いられるセメントミルクおよび反応材が排泥と共に切削孔から外部に排出される事を防止するように、切削破砕された円筒形切削部の上部の土と水とからなる泥土を地表に排出させ、水を含んだ泥土からなる前記噴射切削した排泥から一定粒径以上の固形物を分離除去し、前記地盤改良用媒体と混合して混合媒体を形成し圧送ポンプで圧送して第一の噴射部から地盤改良用媒体として噴射することを特徴とする噴射攪拌工法」 なお、平成23年8月29日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1には、「地盤硬化材として用いられるセメントミルクおよび硬化材」とあるが、本願明細書をみると、「地盤硬化材として用いるセメントミルク」(段落【0006】)、「硬化材等の地盤改良用媒体」(段落【0008】)、「硬化材であるセメントミルク」(段落【0017】)とあるように、「セメントミルク」と「硬化材」は同義であるので、上記「セメントミルクおよび硬化材」の「硬化材」は誤記と認められる。 そして、多重管ロッドからは、セメントミルクと土と水と反応材が噴射されるが、土と水は再利用されるので、セメントミルク以外では「反応材」が排出を防止すべきものである。よって上記「硬化材」は「反応材」の誤記と認められ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)を上記のように認定した。 3.刊行物の記載 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-169277号公報(以下「刊行物1」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。) ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、地盤改良工事でスラリー等の泥水を再資源化して利用する工法に関し、特に、スラリーを適切且つ速やかに造粒固化して再利用の難しかった汚泥を再資源化してスラリーの発生した工事現場での使用を可能にする地盤改良工法に関する。 【0002】 【従来の技術】 地盤改良工事や地盤掘削工事等の土工事では、セメント又はベントナイトを含む高含水率の泥水が多量に発生する場合があり、こうしたセメント又はベントナイト含有泥水は、従来、再利用のしにくさから、産業廃棄物として、そのまま又は脱水後処分されていた。しかし、管理型最終処分場の残余容量急減や、汚泥の大量不法投棄による自然環境破壊などが大きな社会問題となっており、産業廃棄物の最終処分場確保が難しくなってきていることから、再資源化を含むその処理方法が近年大きな問題となっている。 【0003】 例えば、地盤改良工事では、コラムジェットグラウト工法等を用いると、地中に改良体を形成する過程で、セメント等を含む泥水(以下、スラリーという。)が多量に発生していた。このような従来の地盤改良工法の一例を図3に示す。図3は従来の地盤改良工法による地盤改良状態説明図である。 【0004】 前記図3に示す従来の地盤改良工法は、いわゆるコラムジェットグラウト(CJG)工法であり、改良の必要のある軟弱な地盤50に穿設したガイド孔51へ三重管構造のロッド10を挿入し、三重管のうち一つの流路を水の供給路とし、そのロッド10下部から圧縮空気と共に横方向に噴射した超高圧水により地盤50を切削する一方、三重管内の他の流路をセメントと水とからなるグラウトの供給路とし、ロッド10の下端部から横方向へ高圧噴射したグラウトを地盤50中の軟弱土と混合させ、地中に円柱状の固結体を形成して地盤50の改良を図るものである。 この地盤改良工法では、セメントと水と土砂とを含むスラリー(泥水)40が多量に発生し、噴射物の圧力によりロッド10とガイド孔51との隙間を介して地上へ排出される。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 従来の地盤改良工事は以上のように行われており、工事で発生した前記スラリーについては、近年、再資源化が図られるようになっている。再資源化を図る場合、泥水をバキューム車でそのまま吸引収集したり、現場で脱水・乾燥・添加剤等処理して運送可能な程度まで水分を落としたりした後、運搬され、処理施設で水切り・乾燥・脱水、良質土混合などの物理的処理と、セメント系・石灰系・高分子系添加物等の添加による化学的処理が行われ、得られた処理済材を盛り土、路床材、埋め戻し材等に再利用していた。 【0006】 しかし、こうした従来の処理方法は、再資源化処理の各工程が各々独立しており、各工程毎の処理を順次行って再資源化処理を進めていく必要があり、再資源化に時間がかかるという課題を有していた。このため、処理済材を元の泥水が排出された同じ工事現場で用いることは難しく、他所で用いる他なくなることから、保管、運搬等にも別途費用がかかってしまうという課題を有していた。 【0007】 また、高含水汚泥を処理した処理済材は、泥水の排出された状況の差(工事箇所や掘削深さ、工法等の違い)に基づく含水率や土質、成分等の違いにより性状が異なるなど、品質にばらつきがあり、安定且つ均一な性状を求める用途には利用しにくいという課題を有していた。 【0008】 本発明は前記課題を解決するためになされたもので、生じた泥水に対し速やかに固化処理を行い、均質な材料に再資源化して現場で再利用でき、廃棄物の排出をなくすと共に、再資源化に伴うコスト上昇を抑制できる地盤改良工法を提供することを目的とする。」 イ.「【0013】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の一実施の形態を図1及び図2に基づいて説明する。図1は本実施の形態に係る地盤改良工法による地盤改良状態説明図、図2は本実施の形態に係る地盤改良工法における固化処理機及びCJGプラントの配置状態説明図である。 前記各図において本実施形態に係る地盤改良工法は、改良工事現場の地盤50に挿入したロッド10先端部から超高圧水を圧縮空気と共に地盤50中に横方向へ噴射させながらロッド10を回転させると共に引上げて地盤50を切削し、且つ生じたスラリー40を地上に排出し、同時に噴射する硬化剤を地盤切削部分に充填して切削部分に円柱状の固結体を造成する一方、地上に出てきたスラリー40を固化処理機20に投入し、固化処理機20で造粒固化して粒状の改良固化体とし、この改良固化体を硬化剤の一部として混練後ロッド10に供給して利用するものである。 【0014】 地盤改良工程部分については、前記従来同様のコラムジェットグラウト(CJG)工法によるものであり、ロッド10及びその挿入装置(図示を省略)等については詳細な説明を省略する。このCJG工法による地盤改良のためにロッド挿入装置とは別にCJGプラント11が現場に設置される。CJGプラント11は、硬化剤の一部となる土砂または改良固化体の粒度調整を行うサイクロンと、粒度調整後の土砂または改良固化体を水や増強剤(セメント)と共に混練するミキサと、混練されて得られたグラウトをロッド10に送出すグラウトポンプとを少なくとも備えるものである。 なお、スラリー40を造粒固化する方法及び固化処理機20は、公知技術(特開平9-294998号公報、特開平11-76990号公報、特開2000-70997号公報など)に基づくものである。 【0015】 前記固化処理機20は、原料と添加剤を混合造粒する計量器付き混合造粒機と、原料が入るホッパーと、原料を分別する振動スクリーンと、分別された汚泥を混合造粒機に投入するスクリューコンベアと、添加剤を収容する添加剤タンクと、この添加剤タンクから供給された添加剤を混合造粒機に投入する添加剤計量ビンと、混合造粒機から排出された処理済材を受ける製品シュートと、これらの各機械装置を収容設置される移動可能なユニットフレームとを備える前記公知技術に記載される構成であり、詳細な説明を省略する。この固化処理機20は移動可能となっており、各工事現場に運んで現場毎で処理作業を行える。 【0016】 この固化処理機20の他、地上に排出されたスラリーを汲上げるポンプ30と、ポンプ30で汲上げられたスラリー40を貯溜する貯留槽31と、貯溜槽31内のスラリーを固化処理機20へ移送、投入する移送機(バックホー)32と、固化処理機20から改良固化体をCJGプラント11へ搬出するベルトコンベア33とを用いる。 【0017】 次に、本実施形態に係る地盤改良工法を適用する地盤改良工事における泥水固化処理工程及び地盤への再投入工程について説明する。まず、地盤改良工程として、前記従来同様、地中に挿入したロッド10先端部から超高圧水を圧縮空気と共に地盤50中に横方向へ噴射させながらロッド10を回転させると共に引上げて地盤50を切削する。同時にロッド10先端部から硬化剤を横方向に高圧噴射し、硬化剤を切削部分に充填して切削部分に円柱状の固結体を造成していく。工事当初の硬化剤は、あらかじめ用意された土砂と水、増強材(セメント)とを混練したグラウトとなっており、CJGプラント11からロッド10に供給されている。 一方、地盤切削により生じたスラリーは圧力により地上に排出され、地上に出てきたスラリー40はポンプ30で汲上げられ、貯留槽31に貯溜される。貯溜槽31内のスラリーは移送機32で固化処理機20へ移送される。 【0018】 固化処理機20において、スラリーはホッパーを経て振動スクリーンで異物を除去された後、計量され、あらかじめ設定された添加率に基づいて固化用の添加剤を添加される。これらスラリー及び添加剤は混合造粒機で撹拌混合される過程で造粒固化し、改良固化体として形成される。得られた改良固化体は、固化処理機20からベルトコンベア33でCJGプラント11へ搬出される。この改良固化体搬出まではスラリー投入から約5分かかる。 【0019】 搬出された改良固化体はCJGプラント11のサイクロンで粒度調整後、水と増強材と共にミキサに投入され、混練されてグラウトとされる。このグラウトがグラウトポンプでロッド10に供給され、硬化剤として地中に噴射される。 こうして地中から地上に排出されたスラリー40が地上で処理されて硬化剤の一部として利用される循環利用状態が確立し、硬化剤の一部として別の土砂等をCJGプラント11へ投入する必要はなくなると共に、外部への廃棄物排出も発生しない。地盤改良工事終了後、余った改良固化体は他所へ移送して前記同様の硬化剤の一部とされるほか、盛土や路床材等に用いることができ、無駄なく有効活用できる。」 ウ.「【0022】 【発明の効果】 以上のように本発明によれば、工事現場で発生する従来再利用しにくかった泥水を、多様な性状の泥水を極短時間で安定した固形粒状材料とする泥水再資源化技術に基づき、短時間で造粒固化して安定且つ均質な改良固化体とし、現場で直ちに再利用することにより、泥水を廃棄物として排出せずに済み、且つ現場で改良固化体を利用できるために改良固化体の運送や保管の必要がなく、また、工事途中から改良固化体で置換えられることで工事用に別途用意する土砂材料を必要最小限にとどめることができ、泥水再資源化に伴う工事コスト上昇を抑えられるという効果を奏する。さらに、現場で使用しきれずに余った改良固化体は他所でも用いることができ、無駄なく有効活用できるという効果を有する。」 エ.【図1】及び【図3】を参照すると、ロッド10の下部において、超高圧水が噴射する部分と、超高圧水が噴射する部分の下方に、硬化剤が噴出する部分があることがみてとれる。 オ.上記ア.ないしエ.からみて、刊行物1には、 「改良工事現場の地盤50に挿入した三重管構造のロッド10下部から超高圧水を圧縮空気と共に地盤50中に横方向へ噴射させながらロッド10を回転させると共に引上げて地盤50を切削し、且つ生じたスラリー40を噴射物の圧力によりロッド10とガイド孔51との隙間を介して地上に排出し、同時にロッド10の下端部であって、超高圧水が噴射する部分の下方から横方向へ高圧噴射する硬化剤を地盤切削部分に充填して切削部分に円柱状の固結体を造成するコラムジェットグラウト工法を用いる一方、地上に出てきたスラリー40を固化処理機20に投入し、固化処理機20で造粒固化して粒状の改良固化体とし、この改良固化体を硬化剤の一部として混練後ロッド10に供給して利用する地盤改良工法であって、 工事当初の硬化剤は、あらかじめ用意された土砂と水、増強材(セメント)とを混練したグラウトであるが、 地上に出てきたスラリー40は、振動スクリーンで異物を除去された後、固化用の添加剤を添加されて、混合造粒機で造粒固化し、改良固化体として形成され、 形成された改良固化体は、サイクロンで粒度調整後、水と増強材と共にミキサに投入され、混練されてグラウトとされ、このグラウトがグラウトポンプでロッド10に供給され、硬化材として地中に噴射されることにより、 地中から地上に排出されたスラリー40が地上で処理されて硬化剤の一部として利用される循環利用状態が確立し、硬化剤の一部として別の土砂等を投入する必要はなくなると共に、外部への廃棄物排出も発生しない、地盤改良工法。」の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているものと認める。 (2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-257210号公報(以下「刊行物2」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている。 ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、所望の径の杭を構築することができる噴射攪拌工法に関する。」 イ.「【0006】 【発明が解決しようとする課題】 このような噴射撹拌工法では、地盤中に噴射ノズルから地盤硬化材と共にエアーを噴射して土壌と地盤硬化材を撹拌する。このとき、エアージャンクション(混気ジェット現象)と呼ばれる現象により、地盤硬化材として用いられるセメントミルクが外部に吸い出される。こうして、地盤中の地盤硬化材の一部が硬化前に掘削孔から吸い出されて、外部に排出される。 このため、所望の径の杭を構築するために必要とする地盤硬化材の量が不足し、充分な距離まで地盤硬化材が含浸しない現象が生じ、実際に予定していた径よりも小径の杭となってしまう事態が発生していた。 【0007】 本発明は上記課題を解決し、地盤硬化材の硬化を促進し、地盤硬化材の流出を防ぎ所望の径の杭を構築することができる噴射攪拌工法を提供することを目的とする。」 ウ.「【0009】 【発明の実施の形態】 以下本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。 図1は、本発明の噴射攪拌工法を示したものである。 図1において、1はボーリングマシンの多重管ロッドを示したもので、多重管ロッド1は、図示しないボーリングマシン本体により昇降操作されるものである。 多重管ロッド1には、最下端部に互いに逆向きに噴射ノズル(噴射部)2,3が上下に設けられており、これら噴射ノズル2,3は、上下に所定の間隔で設けられている。上記上部側の噴射ノズル2からは、エアーと共にセメントを主成分とする地盤改良用媒体を噴射し、下部側の噴射ノズル3からは、地盤改良用媒体の主成分であるセメントミルクを固める性質のある反応材を噴射するように構成されている。セメントミルクを固める性質のある反応材としては、水ガラス系の珪酸ソーダが用いられる。珪酸ソーダの割合は、水に対して30ないし50%の割合で溶液が作られている。 【0010】 次に、噴射撹拌工法を用いて杭を構築する場合を説明する。 多重管ロッド1を地盤4中に給進させ、多重管ロッド1を回転させながら所定の速度で引き上げる。そして、上部側の噴射ノズル2からエアーと共にセメントを主成分とする地盤改良用媒体を噴射する。この段階では、下部側の噴射ノズル3からはまだ反応材は噴射しない。そして、上部側の噴射ノズル2が噴射を開始した地盤の深さに、下部側の噴射ノズル3が達したとき、下部側の噴射ノズル3から噴射を開始する。下部側の噴射ノズル3からは、反応材として水ガラス系の珪酸ソーダを噴射する。下部側の噴射ノズル3からは、反応材を連続または間歇的に地盤中に噴射する。こうして、地盤改良用媒体のセメントミルクを反応材によって早期に硬化させる。 【0011】 図2は、本発明の噴射撹拌工法のフローチャートを示したものである。 まず、地盤の施工位置にボーリングマシンを設置する(a1)。次に、ボーリングマシンにより計画深度まで、削孔する(a2)。そして、多重管ロッド1を回転させながら上部の噴射口(噴射ノズル2)よりセメントミルクとエアーを高圧で噴射する(a3)。 次に、所定の速度で多重管ロッド1を引き上げる(a4)。下部の噴射口(噴射ノズル3)が、最初に上部の噴射口(噴射ノズル2)からセメントミルクとエアーを噴出した位置に達した所より、下部の噴射口(噴射ノズル3)から反応材(溶液)を高圧で噴射する(a5)。そして、上部の噴射口(噴射ノズル2)からセメントミルクとエアーを、下部の噴射口(噴射ノズル3)から反応材を計画造成長まで噴射して造成する(a6)。最後に、ロッドを引き抜いて、造成を完了する(a7)。」 エ.「【0013】 【発明の効果】 以上述べたように、本発明による噴射攪拌工法によれば次のような効果を奏することができる。 地盤中に多重管ロッドを給進させ、該地盤中から該多重管ロッドを回転させながら引き上げると共に、該多重管ロッドに設けられた噴射ノズルから高圧でセメントを主成分とする地盤改良用媒体を地盤中に噴射させて地盤を攪拌し所定径の杭を構築して地盤を改良する工法において、上記多重管ロッドの下端部に、それぞれノズルを設けた噴射部を上下に設け、所定の造成長さの範囲内で、上段側の噴射部からエアーと共に地盤改良用媒体を噴射して所定径の杭を構築するとともに、下段側の噴射部から上記地盤改良用媒体に対して、セメントミルクを固める性質がある反応材を噴射して、上記地盤改良用媒体を早期に硬化させて所定径の杭を構築するので、セメントミルクの流出を防ぎ、所定径の杭を構築することができる。セメントミルクの流出を防ぐことができるので、セメントミルクが充分に含浸した杭を構築することができる。」 オ.上記ア.ないしエ.の点からみて、刊行物2には、 「所望の径の杭を構築することができる噴射攪拌工法において、 地盤中に噴射ノズルから地盤硬化材と共にエアーを噴射して土壌と地盤硬化材を撹拌するとき、エアージャンクション(混気ジェット現象)と呼ばれる現象により、地盤硬化材として用いられるセメントミルクが硬化前に掘削孔から吸い出されて、外部に排出されるので、所望の径の杭を構築するために必要とする地盤硬化材の量が不足し、充分な距離まで地盤硬化材が含浸しない現象が生じ、実際に予定していた径よりも小径の杭となってしまう事態が発生するという課題を解決するために、 多重管ロッド1には、最下端部に互いに逆向きに噴射ノズル(噴射部)2,3が上下に設けられており、これら噴射ノズル2,3は、上下に所定の間隔で設けられ、上部側の噴射ノズル2からは、エアーと共にセメントを主成分とする地盤改良用媒体を噴射し、下部側の噴射ノズル3からは、地盤改良用媒体の主成分であるセメントミルクを固める性質のある反応材を噴射するように構成されるもので、 噴射撹拌工法を用いて杭を構築するには、 多重管ロッド1を地盤4中に給進させ、多重管ロッド1を回転させながら所定の速度で引き上げ、上部側の噴射ノズル2からエアーと共にセメントを主成分とする地盤改良用媒体を噴射し、そして、上部側の噴射ノズル2が噴射を開始した地盤の深さに、下部側の噴射ノズル3が達したとき、下部側の噴射ノズル3から反応材として水ガラス系の珪酸ソーダの噴射を開始して、反応材を連続または間歇的に地盤中に噴射することにより、地盤改良用媒体のセメントミルクを反応材によって早期に硬化させる、噴射撹拌工法。」の技術事項(以下「技術事項1」という。)が記載されている。 (3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-303542号公報(以下「刊行物3」という。)には、図とともに次の事項が記載されている。 ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、軟弱地盤の改良、建設構造物基礎等を目的として施工される地盤硬化材注入工法において、定型均一なる良質な地盤改良体を形成し得る高圧ジェット噴射混合処理工法いわゆるジェットグラウト工法で使用する高圧ジェット噴射混合処理工法用装置に関するものである。」 イ.「【0009】 【発明が解決しようとする課題】しかし、前記従来の三重管工法(コラムジェトグラウト工法)では、水・エアー噴射ノズル11は1個のみである。その結果、地盤の切削能力には限界があるので、注入管1の引上速度には限界がある。ちなみに、水・エアー噴射ノズル11から周囲を圧縮空気で包合され噴射される超高圧水の超高圧ポンプの能力は、70リットル/min 400kgf/cm2 であるとして、回転数5?6rpm 、引上速度は16?25min /m が適切とされた。 【0010】しかし、最近の建設工事の規模拡大に伴い、高圧噴射攪拌工法による地盤改良工事も大深度での施工が多くなり、施工の迅速化が要求される。さらに、大深度になると、注入管の継ぎ足しや注入管へのスイベルの着脱作業が必然的に増加する。 【0011】これに対して、前記のように水・エアー噴射ノズル11が1個では、注入管の継ぎ足しや注入管へのスイベルの着脱作業での注入作業停止の間では、注入管の各流路が解放される結果、この水・エアー噴射ノズル11に土砂が逆流して閉塞するおそれがある。結果、施工性が悪くなる等の問題があった。 【0012】また、超高圧水(ウォータージェット)で地盤を切削し、スライムを排出すると同時に、超高圧硬化材や硬化材としてのセメントミルクを注入し、しかも、圧縮空気を併用しているため、エアリフトによりセメント分を含んだ泥水が排出されることになる。その排出されるセメント分を補うため、さらに大量のセメントミルクを注入しなければならない。」 ウ.「【0025】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の高圧ジェット噴射混合処理工法用装置の1実施形態を示すモニター部分全体の縦断側面図、図2は同上上部ノズルボデー部分の縦断側面図、図3は同上平面的説明図、図4は同下部ノズルボデー部分の縦断側面図、図5は同上平面図で、1bは注入管本体部の下端に取り付けるモニターである。 【0026】なお、図示は省略するが、注入管本体部は、超高圧水流路を形成する内管、硬化材流路を形成する中管、圧縮空気流路を形成する中管の多重管で構成し、上部ノズルボデー33aと下部ノズルボデー33bの組み合わせからなるモニター1bも前記これら内管、中管、外管に端部が嵌合する管を有する多重管構造で、中管ジョイント47、内管ジョイント48を有し、内部に超高圧水流路6、硬化材流路7、圧縮空気流路8を形成する。 【0027】本発明はモニター1bは、上部ノズルボデー33aと調整管43と下部ノズルボデー33bとかなり、上部ノズルボデー33aの下端に調整管43が、調整管43の下端に下部ノズルボデー33bが着脱自在に嵌着する。ちなみに、上部ノズルボデー33aと調整管43と下部ノズルボデー33bとの長さの比は、2:9?27:1程度とした。モニター1bの全長は1,200 ?3,200 mm程度である。 【0028】そしてモニター1bの上部ノズルボデー33aでは、高圧水ノズル9と空気ノズル10を組合わせる水・エアー噴射ノズル11は注入管全体の軸直方向で相互に反対方向に向くように対に、しかも、上下で位置を多少ずらせるようにして設け、高圧水ノズル9は前記の双方の水・エアー噴射ノズル11のそれぞれのものが超高圧水流路6に連通し、また、空気ノズル10はそれぞれを圧縮空気流路8に連通させた。 【0029】(略) 【0030】(略) 【0031】前記のごとく、下部ノズルボデー33bは前記上部ノズルボデー33aの先端に調整管43を介して嵌着するもので、調整管43は上部ノズルボデー33aの硬化材流路7に連通する硬化材流路7′を中央に形成し、下部ノズルボデー33bではこの硬化材流路7′に連通する硬化材流路7″を中央に形成した。 【0032】そして下部ノズルボデー33bは硬化材ノズル12を硬化材流路7″に連通させて設けるが、この硬化材ノズル12は注入管全体の軸直方向で相互に反対方向に向くように対に、しかも、上下で位置を多少ずらせるようにして設けた。図中44は硬化材ノズル12の固定を行うノズルナット、45はオーリング、46はスナップリングである。 【0033】このようにして水・エアー噴射ノズル11と硬化材ノズル12は、上部ノズルボデー33aと下部ノズルボデー33bとの間に調整管43を介在させることで、相互間に上下にある程度の長さの間隔を存してなるものとなる。 【0034】(略) 【0035】特に、水・エアー噴射ノズル11からは、周囲を圧縮空気により包合された超高圧水が噴射され、これが地中の土粒子を撹乱することにより人為的空間を作り、この空隙部に、次には硬化材ノズル12から噴出される硬化材が充填される。 【0036】前記水・エアー噴射ノズル11はこれを注入管の軸直方向で相互に反対方向に向くように対に設けたので、この2つの水・エアー噴射ノズル11から圧縮空気2を伴った超高圧水3を噴射して2方向を同時切削する。モニター内には40MPaの圧力がかかった液体が流れるので、各高圧水ノズルからの吐出は十分強度のあるものとなる。 【0037】また、硬化材ノズル12も注入管全体の軸直方向で相互に反対方向に向くように対に、しかも、上下で位置を多少ずらせるようにして設けたので、多くの硬化材を短時間で幅広く吐出できる。また、この硬化材に対してもモニター内には40MPaの圧力がかかった液体が流れるので、各硬化材ノズル12からの吐出は十分強度のあるものとなる。 【0038】さらに、水・エアー噴射ノズル11からの周囲を圧縮空気により包合された超高圧水が噴射と、硬化材ノズル12からの硬化材の噴射を相互の間隔を十分離したので超高圧水と硬化材の混合が防止でき、エアリフトによりセメント分を含んだ泥水が排出されるのを極力防止できる。」 エ.「【0039】 【発明の効果】以上述べたように本発明の高圧ジェット噴射混合処理工法用装置は、水・エアー噴射ノズル2つおよび硬化材ノズル2つを設けることで、引上速度を短縮することができ、施工性能が向上するとともに、ノズルの目詰まりによる作業効率の低下のおそれも少なく、さらに、使用する硬化材のそのほとんどが地中に残留することから必要量を注入すればよく、硬化材としてのセメント注入量を減らすこができ、排泥水の量は確実に減り、その結果、無駄な排泥の処理が必要でなくなり、セメント分の廃棄も減らすことができるものである。」 オ.上記ア.ないしエ.からみて、刊行物3には、 「定型均一なる良質な地盤改良体を形成し得る高圧ジェット噴射混合処理工法いわゆるジェットグラウト工法で使用する高圧ジェット噴射混合処理工法用装置において、 従来の三重管工法(コラムジェトグラウト工法)では、水・エアー噴射ノズル11は1個のみであるので、地盤の切削能力には限界があることから、注入管1の引上速度には限界があり、 また、超高圧水(ウォータージェット)で地盤を切削し、スライムを排出すると同時に、超高圧硬化材や硬化材としてのセメントミルクを注入し、しかも、圧縮空気を併用しているため、エアリフトによりセメント分を含んだ泥水が排出されることになり、その排出されるセメント分を補うため、さらに大量のセメントミルクを注入しなければならないので、 水・エアー噴射ノズル11はこれを注入管の軸直方向で相互に反対方向に向くように対に設けて、この2つの水・エアー噴射ノズル11から圧縮空気2を伴った超高圧水3を噴射して2方向を同時切削し、 さらに、水・エアー噴射ノズル11からの周囲を圧縮空気により包合された超高圧水の噴射と、硬化材ノズル12からの硬化材の噴射とを相互の間隔を十分離したので超高圧水と硬化材の混合が防止でき、エアリフトによりセメント分を含んだ泥水が排出されるのを極力防止できる、高圧ジェット噴射混合処理工法用装置」の技術事項(以下「技術事項2」という。)が記載されている。 4 対比 本願発明と刊行物発明とを対比する。 (1)刊行物発明の「硬化剤」及び「グラウト」,「超高圧水」,「三重管構造のロッド10」,「スラリー40」,「ガイド孔」,「グラウトポンプ」,「コラムジェットグラウト工法」は、それぞれ本願発明の「地盤改良用媒体」及び「地盤硬化材」,「水」,「多重管ロッド」,「排泥」,「掘削孔」,「圧送ポンプ」,「噴射撹拌工法」に相当する。 (2)刊行物発明の硬化剤は、「あらかじめ用意された土砂と水、増強材(セメント)とを混練したグラウト」、及び「形成された改良固化体」を「サイクロンで粒度調整後、水と増強材と共にミキサに投入され、混練され」た「グラウト」であるので、刊行物発明の硬化剤のうち、「水」と「増強材(セメント)」を混練したものが、本願発明の「セメントミルク」に相当し、そして刊行物発明の硬化剤は、本願発明の「セメントミルクを主成分とする地盤改良用媒体」に相当する。 (3)刊行物発明における「ロッド10下端部」の「硬化剤」を「横方向へ高圧噴射する」部分は、「地盤改良用媒体を噴射する第一の噴射部」に相当する。 また、刊行物発明の硬化剤は「ロッド10の下端部であって、超高圧水を噴射する部分よりも下方から横方向へ高圧噴射」されるので、「ロッド10下端部」の「硬化剤」を「横方向へ高圧噴射する」部分よりも上段に「ロッド10下部」の「超高圧水を圧縮空気と共に」「横方向へ噴射」する部分が配置している。 そうすると、刊行物発明の「ロッド10下部」の「超高圧水を圧縮空気と共に」「横方向へ噴射」する部分は、「ロッド10下端部」の「硬化剤」を「横方向へ高圧噴射する」部分の配置も含めて考えると、本願発明の「第一の噴射部よりも上段に圧縮空気と水とを混合噴射する対向する口からなる第三の噴射部」とは、「第一の噴射部よりも上段に圧縮空気と水とを混合噴射する対向する口からなる別の噴射部」で共通する。 (4)刊行物発明の「改良工事現場の地盤50に挿入した三重管構造のロッド10下部から超高圧水を圧縮空気と共に地盤50中に横方向へ噴射させながらロッド10を回転させると共に引上げて地盤50を切削」することは、本願発明の「多重管ロッドを地盤中に押圧進入または給進させ、地盤中から前記多重管ロッドを回転させながら引き上げつつ、所定の範囲内に前記第三の噴射部から圧縮空気と水を噴射して地盤改良範囲を円筒形に噴射切削し」に相当する。 (5)刊行物発明の「地盤50を切削し、生じたスラリー40を噴射物の圧力によりロッド10とガイド孔51との隙間を介して地上に排出」することは、本願発明の「切削した排泥を、掘削孔を通して地表に排出させる」ことに相当する。 (6)刊行物発明の「同時にロッド10の下端部であって、超高圧水が噴射する部分の下方から横方向へ高圧噴射する硬化剤を地盤切削部分に充填して切削部分に円柱状の固結体を造成するコラムジェットグラウト工法」は、本願発明の「前記第一の噴射部のノズルから地盤改良用媒体を噴射し」、「所定径の杭を構築する噴射撹拌工法」に相当する。 (7)刊行物発明の「地中から地上に排出されたスラリー40が地上で処理されて硬化剤の一部として利用される循環利用状態が確立し」ていることは、本願発明の「排泥を地盤改良用媒体として再利用する」ことに相当する。 (8)上記(4)からみて、刊行物発明の「改良工事現場の地盤50に挿入した三重管構造のロッド10下部から超高圧水を圧縮空気と共に地盤50中に横方向へ噴射させながらロッド10を回転させると共に引上げて地盤50を切削し、生じたスラリー40を噴射物の圧力によりロッド10とガイド孔51との隙間を介して地上に排出」することは、本願発明の「切削破砕された円筒形切削部の上部の土と水とからなる泥土を地表に排出させ」ることに相当する。 (9)刊行物発明の「振動スクリーンで異物を除去」することは、本願発明の「一定粒径以上の固形物を分離除去」することに相当するので、刊行物発明の「地上に出てきたスラリー40は、振動スクリーンで異物を除去された後、固化用の添加剤を添加されて、混合造粒機で造粒固化し、改良固化体として形成され、形成された改良固化体は、サイクロンで粒度調整後、水と増強剤と共にミキサに投入され、混練されてグラウトとされ、このグラウトがグラウトポンプでロッド10に供給され、硬化材として地中に噴射される」ことは、本願発明の「水を含んだ泥土からなる前記噴射切削した排泥から一定粒径以上の固形物を分離除去し、前記地盤改良用媒体と混合して混合媒体を形成し圧送ポンプで圧送して第一の噴射部から地盤改良用媒体として噴射すること」に相当する。 (10)上記(1)ないし(9)からみて、本願発明と刊行物発明とは、 「下端にセメントミルクを主成分とする地盤改良用媒体を噴射する第一の噴射部と、さらに前記第一の噴射部よりも上段に圧縮空気と水とを混合噴射する口からなる別の噴射部を設けた多重管ロッドを地盤中に押圧進入または給進させ、地盤中から前記多重管ロッドを回転させながら引き上げつつ、所定の範囲内に前記別の噴射部から圧縮空気と水を噴射して地盤改良範囲を円筒形に噴射切削し、切削した排泥を、掘削孔を通して地表に排出させるとともに、前記第一の噴射部のノズルから地盤改良用媒体を噴射し、所定径の杭を構築する噴射攪拌工法において、 排泥を地盤改良用媒体として再利用するために、切削破砕された円筒形切削部の上部の土と水とからなる泥土を地表に排出させ、水を含んだ泥土からなる前記噴射切削した排泥から一定粒径以上の固形物を分離除去し、前記地盤改良用媒体と混合して混合媒体を形成し圧送ポンプで圧送して第一の噴射部から地盤改良用媒体として噴射する噴射攪拌工法」で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点1〕本願発明は、反応材を噴射する第二の噴射部を、第三の噴射部よりも下段に設け、第二の噴射部のノズルから地盤改良用媒体を固める反応材を噴射するのに対し、刊行物発明は、反応材を噴射する第二の噴射部が設けられていない点。 〔相違点2〕別の噴射部が、本願発明は対向する口からなる第三の噴射部なのに対し、刊行物発明は、口が1つしかなく、対向していない点。 〔相違点3〕本願発明は、エアージャンクション(混気ジェット現象)により地盤硬化材として用いられるセメントミルクおよび反応材が排泥と共に切削孔から外部に排出される事を防止するのに対し、刊行物発明は、地盤硬化材として用いられるセメントミルクが切削孔から外部に排出される点。 5.判断 そこで、上記相違点について検討する。 (1)相違点1 ア.刊行物2には、上記「3.(2)オ.」で示した技術事項1が記載されており、技術事項1の「下部側の噴射ノズル3」は、「上部側の噴射ノズル2」から噴射されたセメントを早期に硬化させる反応材を噴射するので、本願発明の「第二の噴射部」に相当するものである。 そして刊行物発明及び技術事項1は共に、外部に排出されるセメントミルクに関するものであり、そして刊行物発明においても、エアージャンクション(混気ジェット現象)と呼ばれる現象により、地盤硬化材として用いられるセメントミルクが硬化前に掘削孔から吸い出されて、外部に排出されるという課題も当然存在するので、刊行物2に接した当業者であれば、刊行物発明のセメントミルクを当該課題を改善しようとして、刊行物発明に技術事項1を適用することは、当業者であれば容易に思い付くことであって、刊行物発明の超高圧水が噴射する部分の下方である硬化剤を高圧噴射する部分よりもさらに下方に、技術事項1の噴射ノズル3を設けることにより、上記相違点1に係る本願発明の構成と成すことは、当業者ならば容易に想到し得たことと認める。 (2)相違点2 刊行物3には、上記「3.(3)オ.」で示した技術事項2が記載されており、技術事項2の「軸直方向で相互に反対方向に向くように対に設け」た「水・エアー噴射ノズル11」は、本願発明の「圧縮空気と水とを混合噴出する対向する口からなる第三の噴射部」に相当する。 刊行物発明と技術事項2は共に、外部に排出されるセメントミルクに関するものであることから、刊行物発明の超高圧水が噴射する部分の形状として、上記技術事項2の「軸直方向で相互に反対方向に向くように対に設け」た「水・エアー噴射ノズル11」の形状を用いることにより、上記相違点2に係る本願発明の構成と成すことは、当業者ならば容易に想到し得たことと認める。 (3)相違点3 上記(1)で検討したように、反応材を噴射する第二の噴射部を設けることが当業者であれば容易に想到し得たことであり、セメントミルクを早期に硬化させることは、結果的にエアージャンクションによりセメントミルク等が外部に吸い出されること防止できることを意味するものであるので、上記相違点3に係る本願発明の構成となることは自明であり、相違点3に係る本願発明の構成とすることも、当業者ならば容易に想到し得たことと認める。 (4)効果について 本願発明の奏する効果は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載さえれた技術事項1及び刊行物3に記載された技術事項2から、当業者であれば予測できた範囲のものである。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術事項1及び刊行物3に記載された技術事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術事項1及び刊行物3に記載された技術事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-10-28 |
結審通知日 | 2013-11-05 |
審決日 | 2013-11-20 |
出願番号 | 特願2006-544952(P2006-544952) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E02D)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 昌哉 |
特許庁審判長 |
高橋 三成 |
特許庁審判官 |
中川 真一 住田 秀弘 |
発明の名称 | 噴射攪拌工法および噴射攪拌装置 |
代理人 | 広瀬 文彦 |