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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1283595
審判番号 不服2012-23483  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-28 
確定日 2014-01-06 
事件の表示 特願2007-282593「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 5月21日出願公開、特開2009-110320〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成19年10月31日の出願であって、平成24年4月20日付けで拒絶理由の通知がなされ、同年6月11日付けで手続補正書の提出がなされ、同年8月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年11月28日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書の提出がなされ、当審において、平成25年7月22日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、同年9月24日付けで回答書の提出がなされたものである。



第2 平成24年11月28日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年11月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成24年11月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に変更する補正事項を含むものである。

そして、補正前の請求項1及び補正後の請求項1の各記載は、それぞれ、以下のとおりである。

なお、<補正後の請求項1>における下線は補正箇所を表している。

<補正前の請求項1>
「受信した映像信号を表示する表示部と、前記表示部の表示の調整を行う操作部と、を具える表示装置であって、
周囲の状況を検出する検出器と、
正規のユーザであることを表す情報を格納するメモリと、
通常動作モードにおいて接続される情報処理装置からの情報信号に従って前記表示装置を通常の状態で動作させ、
前記情報処理装置が使用されていない可能性がある状態が検出された場合に、前記表示装置を防犯動作モードに移行させ、
前記防犯動作モードにおいてユーザによって前記操作部を用いて前記正規のユーザであることを表す情報が入力された場合には、前記防犯動作モードを解除し、
前記防犯動作モードにおいて前記検出器によって人が検出されかつ前記操作部に対して前記正規のユーザであることを表す所定の操作がされない場合には、警報動作モードに移行させ、警報動作を行う制御部と、
を有することを特徴とする表示装置。」

<補正後の請求項1>
「受信した映像信号を表示する表示部と、前記表示部の表示の調整を行う操作ボタンと、を具える表示装置であって、
周囲の状況を検出する検出器と、
正規のユーザであることを表す情報を格納するメモリと、
通常動作モードにおいて接続される情報処理装置からの情報信号に従って前記表示装置を通常の状態で動作させ、
前記情報処理装置が使用されていない可能性がある状態が検出された場合に、前記表示装置を防犯動作モードに移行させ、
前記防犯動作モードにおいてユーザによって前記操作ボタンを用いて前記正規のユーザであることを表す情報が入力された場合には、前記防犯動作モードを解除し、
前記防犯動作モードにおいて前記検出器によって人が検出されかつ前記人の検出の後で所定時間内に前記操作ボタンを用いて前記正規のユーザであることを表す所定の操作がされない場合には、警報動作モードに移行させ、警報動作を行う制御部と、
を有することを特徴とする表示装置。」


2.本件補正に対する判断
本件補正のうちの上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明の「操作部」を「操作ボタン」に限定し、「前記操作部に対して」を「前記人の検出の後で所定時間内に前記操作ボタンを用いて」に限定したものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。


2.1 補正後の発明
本件補正発明は、上記「1.」の<補正後の請求項1>の欄に転記したとおりのものである。


2.2 引用文献
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-97233号公報(以下、「引用文献1」という)には、下記の事項が記載されている。

A.「【0014】図1に示す本実施形態の表示装置1は、表示部11と、センサ部12と、リーダ部13と、表示制御部14とを備え、情報処理装置2から表示データを入力して画面に表示する。表示中にオペレータ3が画面の前から離れるとセンサ部12がこれを検出して表示内容が分からなくなるように表示状態を変え、オペレータ3が戻ったことをセンサ部12で検出し、且つバーコードを記録したカード4で本人確認を行うと表示状態を元に戻すことにより、スクリーンセーバ機能を表示装置1のみで行える構成となっている。このため、表示装置1に接続されている情報処理装置2での対応は必要としない。
【0015】表示部11は、CRT等の表示デバイスを含んでおり、情報処理装置2からの表示データaと表示制御部14からの輝度制御信号bとを入力し、表示データaの内容を表示デバイスの画面上に表示する。このとき、表示の明るさは輝度制御信号bの大小で決まり、輝度制御信号bが大きいときは表示が明るく表示内容を理解できるが、輝度制御信号bの出力が小さいときは表示が暗く表示内容を判読できない状態となる。
【0016】センサ部12は、赤外線を用いた反射型の人体検知用の赤外線センサであり、赤外線を出力する発光部121と、オペレータ3で反射された赤外線を受信検出する受光部122とで構成されており、受光部122が反射光を検出している場合は検出信号cをリーダ部13に出力し、反射光を検出できない場合には離席信号eを表示制御部14に出力する。
【0017】リーダ部13は、カード挿入口に挿入されたカード4の所定位置に記録されているバーコードを読み取る入力部131と、読み取ったバーコードデータの照合を行う照合部132とで構成されている。入力部131は、センサ部12から検出信号cを入力するとバーコードの読み取りができる状態となり、この状態のときカード4が挿入されるとバーコードを数値データに変換して照合部132へ出力した後、バーコード読み取り不可の状態となる。この読み取り不可の状態は検出信号cがいったん消滅してから再入力されるか、照合部132から再活性化の指示を受けるまで継続する。照合部132は、入力部131からの数値データを記憶保持するレジスタメモリを含み、入力部131から数値データの転送を受けるとレジスタメモリに記憶されている数値データとの照合を行い、照合結果に応じて次に示す処理を行う。入力部131からの入力データとレジスタメモリの記憶データとが一致した場合、許可信号dを表示制御部14に出力する。入力データと記憶データとが一致しない場合には、レジスタメモリに記憶データがないときは入力データをレジスタメモリに記憶して許可信号dを出力し、記憶データがあるときは許可信号dを出力せずに、入力部131に再活性化を指示しバーコード読み取り可能な状態として処理を終了する。電源投入直後はレジスタメモリに記憶データがない状態にあり、入力部131で読み取られた入力データ(カード4の所定の位置にバーコードとして印刷されているオペレータ個人を識別する固有の識別情報)がレジスタメモリに記憶される。」

B.「【0020】まず、図2を参照してオペレータが電源投入の操作を行い、表示データが明るく表示されるまでの操作と制御信号の流れを以下に説明する。オペレータ3は、表示装置1の画面の前に座り情報処理装置2に電源投入操作を行う。情報処理装置2は、あらかじめ決められた処理を実行して初期画面の表示データa1を表示部11へ出力する。情報処理装置2への電源投入操作により表示装置1も動作状態となり、発光部121は赤外線fをオペレータ3に向けて出力する。赤外線fはオペレータ3で反射し、反射光gが受光部122へ入力される。受光部122は、反射光gを検出するとオペレータ3が在席していると判断し、オペレータ3の存在を示す検出信号cをリーダ部13の入力部131へ出力する。検出信号cが入力されると、入力部131はバーコードの読み取り可能な状態となるので、オペレータ3はリーダ部13へバーコードが印刷されたカード4を挿入する。入力部131は、カード4のバーコードを読み取り数値データに変換し、オペレータ3固有の識別情報hとして照合部132へ出力した後、バーコード読み取り不可の状態となりカード4を挿入口から排出する。照合部132は、入力部131からの識別情報hとレジスタメモリの記憶データとの照合を行う。このとき、電源投入後の初めての照合でありレジスタメモリに記憶データはないので、識別情報hをレジスタメモリに記憶した後、使用を許可することを示す許可信号dを表示制御部14へ出力する。表示制御部14は、許可信号dを入力すると出力レベルを大とした輝度制御信号b1を表示部11へ出力し、表示部11は、情報処理装置2からの表示データa1を明るい状態で表示してオペレータ3が視認可能な状態となる。
【0021】ここで、使用中にオペレータが離席したときの制御信号の流れと状態の変化とを図3を参照して説明する。オペレータ3が離席すると、発光部121からの赤外線fは反射されないため、受光部122は反射光を受信できなくなる。受光部122は、反射光が受信できないとオペレータ3が離席したと判断し、オペレータ3の不在を示す離席信号eを表示制御部14へ出力する。表示制御部14は、離席信号eを入力すると出力レベルを小とした輝度制御信号b0を表示部11へ出力する。表示部11は、表示制御部14から輝度制御信号b0を入力すると輝度を低下させ、情報処理装置2から入力される表示データa2を外部から視認不可の状態とする。なお、離席時にオペレータ3はカード4を携帯する。
【0022】最後に、オペレータが離席後に復帰して離席前の作業を継続するときの制御信号の流れと状態の変化とを図4を参照して説明する。オペレータ3が離席している状態から戻り着席すると、発光部121からの赤外線fはオペレータ3が在席しているために反射し、受光部122は反射光gを検出して検出信号cを入力部131へ出力する。入力部131は、検出信号cが入力されるとバーコードの読み取りができる状態となり、オペレータ3が挿入したカード4のバーコードを読み取り、オペレータ3固有の識別情報hを照合部132へ出力してカード4を挿入口から排出する。照合部132は、入力部131からの識別情報hとレジスタメモリの記憶データとの照合を行う。このとき、レジスタメモリには離席前の使用開始時に記憶したオペレータ3の固有の識別情報が記憶されており、照合結果は一致する。照合部132は、現在着席しているのは使用中に離席し席に戻ったオペレータ3であると判断し、使用を許可する許可信号dを表示制御部14へ出力する。表示制御部14は、許可信号dを入力すると出力レベルを大とした輝度制御信号b1を表示部11へ出力する。表示部11は、情報処理装置2からの表示データa3をオペレータ3が視認可能な明るい状態で表示する。なお、照合結果が不一致の場合には、照合部132は、許可信号dを出力することなく入力部131をバーコードの読み取りができる状態に復帰させる。」

C.「【0031】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の表示装置は、装置内にオペレータの存在の有無を検出するオペレータ検出手段と、固有の識別情報を読み取り照合する本人確認手段とを備え、表示装置のみで機密保護を含むスクリーンセーバ機能を実現できるため、接続される情報処理装置にかかわらず、画面の長寿命化,省電力化および機密保護の機能を発揮できる効果がある。」

ここで、上記引用文献1の記載事項について検討する。
(あ)上記A.の段落【0014】には、表示装置1が表示部11、センサ部12、リーダ部13、表示制御部14を備えることが記載されている。

(い)上記A.の段落【0015】には、表示部11が情報処理装置2からの表示データaを表示し、表示制御部14からの輝度制御信号bにより表示の明るさが制御されることが記載されている。

(う)上記A.の段落【0014】には、センサ部12が表示装置の前のオペレータの存在を検出することが記載されている。

(え)上記A.の段落【0017】には、入力部131によりカードから識別情報が読み取られることと、照合部132によりオペレータの識別情報が記憶されることが記載されている。

(お)上記B.の段落【0020】には、使用が許可されると、表示制御部14は、輝度制御信号のレベルを大きくして表示部11の表示データa1を視認可能な状態にすることが記載されている。

(か)上記B.の段落【0021】には、オペレータの離席が判断されると、表示制御部14は、輝度制御信号のレベルを小さくして表示部11の表示データa1を視認不可な状態にすることが記載されている。

(き)上記B.の段落【0022】には、オペレータの離席後にオペレータの着席が検出されて入力部によるカードの読み取りが可能になってから、入力部に挿入されたカードから読み取った識別情報が照合部に記憶したオペレータの識別情報と一致した場合には、表示制御部14は、輝度制御信号のレベルを大きくして表示部11の表示データa1を視認可能な状態にすることが記載されている。

よって、上記(あ)乃至(き)及び関連図面の記載から、引用文献1には、実質的に下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

「情報処理装置からの表示データを表示し、表示制御部からの輝度制御信号により表示の明るさが制御される表示部と、
表示装置の前のオペレータの存在を検出するセンサ部と、
カードから識別情報を読み取る入力部と、
オペレータの識別情報を記憶する照合部と、
使用が許可されると、輝度制御信号のレベルを大きくして前記表示部の表示データを視認可能な状態とし、
オペレータの離席が判断されると、輝度制御信号のレベルを小さくして前記表示部の表示データを視認不可な状態とし、
オペレータの離席後にオペレータの着席が検出されて前記入力部によるカードの読み取りが可能になってから、前記入力部に挿入されたカードから読み取った識別情報が前記照合部に記憶したオペレータの識別情報と一致した場合には、輝度制御信号のレベルを大きくして前記表示部の表示データを視認可能な状態とする前記表示制御部と、
を備える表示装置。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-271334号公報(以下、「引用文献2」という)には、下記の事項が記載されている。

D.「【0008】表示装置は、好適にはセキュリティ・コードを入力するエントリ手段を含む。本発明の好適な実施例の場合、エントリ手段は、複数の押しボタンを持つキー・パッドを含む。リセット手段は、好適にはキー・パッドの押しボタンからの割込みを受信するために複数の割込み入力を持つプロセッサを含む。セキュリティ・コードは、このプロセッサを通してユーザによってプログラミング、再プログラミングされる。
【0009】プロセッサは、好適には1つ以上の押しボタンからの割込みに応答して表示画面に表示された画像の1つ以上の画像パラメータを変更するために駆動回路を制御するように設定される。従って、プロセッサはキー・パッドに2つの機能を持たせるように設定することができる。第1に、表示装置が通常の動作の時、ユーザの好みに従って、表示画面に表示される画像のパラメータを調整するためにキー・パッドを使用することができる。第2に、表示装置が待機モードの時、通常の動作に復帰するようにセキュリティ・コードを表示装置に入力するためにキー・パッドを使用できる。」

よって、上記D.の記載から、引用文献2には下記の事項(以下、「引用文献2に記載された事項」という)が記載されている。

「通常の動作の時に表示画面に表示される画像のパラメータの調整を行い、待機モードの時に通常の動作に復帰するセキュリティ・コードを入力する複数の押しボタンを表示装置に備えること。」

(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-106527号公報(以下、「引用文献3」という)には、下記の事項が記載されている。

E.「次に上記実施例の動作について説明する。上記実施例において、業務実行可能状態にて離席キー3が操作されると状態制御回路5によってガード信号dが生成されこれがORゲート6を通じてゲート回路4に入力され、離席キー3の再があるまであらゆるキー入力を無効にする。・・・中略・・・予め登録してある暗証番号を入力するとこれがゲート回路4で識別され、その結果発生される暗証番号信号aによって状態制御回路5がガード状態を解除し業務実行を可能とする。入力された暗証番号が予め登録されたものと違う場合は、誤入力とみなし、誤入力が何回か続くと、状態制御回路5はロック信号eを発生し、ゲート回路4によってある特定番号を除く入力を不可能にし、主制御回路及びメモリ7が装置全体をロックし警報状態にする。したがってこの状態で警報器9内のブザーが鳴動し、出力部10、回路制御部11の制御を停止する。」(公報第2頁左下欄第5行乃至右下欄第7行)

よって、上記E.の記載から、引用文献3には下記の事項(以下、「引用文献3に記載された事項」という)が記載されている。

「暗証番号を入力することでガード状態が解除される装置において、暗証番号の誤入力が続くと装置全体をロックして警報状態にすること。」


2.3 対比
(1)本件補正発明と引用発明との対応関係について
(ア)引用発明の「情報処理装置からの表示データ」は、表示装置が情報処理装置から受信した信号であり、表示部に映像として表示されるものであるから、引用発明の「表示部」は、本件補正発明の「受信した映像信号を表示する表示部」に相当している。

(イ)引用発明の「センサ部」は、表示装置に備えられたものであり、かつ、表示装置の前にオペレータが存在することを検出するものであるから、本件補正発明の「周囲の状況を検出する検出器」に相当している。

(ウ)本件補正発明では、「正規のユーザ」は、メモリに正規のユーザであることを表す情報が格納されたユーザであることから、引用発明において照合部に識別情報が記憶されたオペレータは、本件補正発明の「正規のユーザ」に相当し、また、引用文献1の段落【0017】には、オペレータの識別情報が照合部内のレジスタメモリに記憶されることが記載されているので、引用発明も「正規のユーザであることを表す情報を格納するメモリ」を備えているといえる。

(エ)本件補正発明の「通常動作モード」は、「接続される情報処理装置からの情報信号に従って前記表示装置を通常の状態で動作」させるモードであるところ、引用発明でも「使用が許可されると、輝度制御信号のレベルを大きくして前記表示部の表示データを視認可能な状態」とすることで、情報処理装置からの表示データが表示部に表示されて、オペレータが表示装置を使用できる通常の状態となることから、引用発明の「使用が許可されると、輝度制御信号のレベルを大きくして前記表示部の表示データを視認可能な状態」とすることは、本件補正発明の「通常動作モードにおいて接続される情報処理装置からの情報信号に従って前記表示装置を通常の状態で動作」させることに相当している。

(オ)一般に、情報処理装置は、オペレータが表示装置を見ながら使用するものであるから、表示装置の前にオペレータが存在していなければ、該情報処理装置は使用されていない可能性が高いといえる。そして、引用発明では、センサ部が表示装置の前のオペレータの存在を検出しており、また、オペレータの離席は該センサ部で検出することは明らかであるから、引用発明の「オペレータの離席が判断されると」は、本件補正発明の「前記情報処理装置が使用されていない可能性がある状態が検出された場合」に相当している。
また、引用文献1の上記C.の段落【0031】には、スクリーンセーバにより機密保護の機能を発揮させることが記載されているところ、引用発明の「輝度制御信号のレベルを小さくして前記表示部の表示データを視認不可な状態」とは該スクリーンセーバを意味するものであり、機密保護の機能は防犯機能をも意味するものであるから、引用発明は、オペレータの離席が判断されると、スクリーンセーバの状態にすることで防犯の機能を持たせているといえる。
よって、引用発明の「オペレータの離席が判断されると、輝度制御信号のレベルを小さくして前記表示部の表示データを視認不可な状態」とすることは、本件補正発明の「前記情報処理装置が使用されていない可能性がある状態が検出された場合に、前記表示装置を防犯動作モードに移行」させることに相当している。

(カ)引用発明において、入力部にカードが挿入される時は、「表示部の表示データを視認不可な状態」なので上記(オ)の記載から防犯動作モードになっているといえ、また、引用発明の「挿入されたカードから読み取った識別情報が前記照合部に記憶したオペレータの識別情報と一致した場合には、輝度制御信号のレベルを大きくして前記表示部の表示データを視認可能な状態とする」ことは、上記(ウ)乃至(オ)の記載から、正規のユーザであることを表す情報が入力されると、防犯動作モードを解除して通常動作モードに移行することであると解される。
よって、本件補正発明の「制御部」と引用発明の「表示制御部」は、「前記防犯動作モードにおいてユーザによって前記正規のユーザであることを表す情報が入力された場合には、前記防犯動作モードを解除」している点で共通しているといえる。

(2)本件補正発明と引用発明の一致点について
上記の対応関係から、本件補正発明と引用発明は、下記の点で一致する。

(一致点)
「受信した映像信号を表示する表示部を具える表示装置であって、
周囲の状況を検出する検出器と、
正規のユーザであることを表す情報を格納するメモリと、
通常動作モードにおいて接続される情報処理装置からの情報信号に従って前記表示装置を通常の状態で動作させ、
前記情報処理装置が使用されていない可能性がある状態が検出された場合に、前記表示装置を防犯動作モードに移行させ、
前記防犯動作モードにおいてユーザによって前記正規のユーザであることを表す情報が入力された場合には、前記防犯動作モードを解除する制御部と、
を有することを特徴とする表示装置。」

(3)本件補正発明と引用発明の相違点について
本件補正発明と引用発明は、下記の点で相違する。

(相違点1)
本件補正発明は、表示装置が「表示部の表示の調整を行う操作ボタン」を有しているのに対し、引用発明はそのような構成を有していない点。

(相違点2)
本件補正発明は、防犯動作モードを解除するための情報の入力は「前記操作ボタンを用いて」行われるものであるのに対して、引用発明はそのような入力を行う構成にはなっていない点。

(相違点3)
本件補正発明の制御部は、「前記防犯動作モードにおいて前記検出器によって人が検出されかつ前記人の検出の後で所定時間内に前記操作ボタンを用いて前記正規のユーザであることを表す所定の操作がされない場合には、警報動作モードに移行させ、警報動作を行う」ものであるの対し、引用発明の制御部はそのような制御を行っていない点。


2.4 当審の判断
(1)相違点1及び2について
引用発明の「表示部」は、「表示制御部からの輝度制御信号により表示の明るさが制御」できる構成となっており、また、表示装置において、表示装置自体に備えられたボタンにより明るさ等のパラメータを調整できるように構成することは引用文献を示すまでもなく周知技術であるところ、引用文献2には、「通常の動作の時に表示画面に表示される画像のパラメータの調整を行い、待機モードの時に通常の動作に復帰するセキュリティ・コードを入力する複数の押しボタンを表示装置に備えること。」が記載(上記引用文献2に記載された事項参照)されており、該「待機モード」は正規のユーザであることを表すセキュリティ・コードが入力されなければ解除できないことから防犯としての機能も果たしている。
してみると、引用発明と引用文献2に記載された事項とは、防犯動作モードを解除するために正規のユーザであることを表す情報を表示装置へ入力する構成である点で共通しており、該情報を入力するための構成としてカードによる入力以外にユーザによるボタンを用いた入力も一般的であることを鑑みれば、引用発明に引用文献2に記載された事項を採用して、通常動作モード時には表示部の表示を制御するためのボタンを表示装置に設けるとともに、防犯動作モード時には該ボタンを用いて正規のユーザであることを表す情報を入力し、防犯動作モードの解除を行うように構成することには、格別な困難性は認められない。
よって、引用発明に引用文献2に記載された事項を採用して、相違点1及び2を構成することは、当業者が格別困難なくなし得たことである。

(2)相違点3について
引用発明では、オペレータの着席が検出されると、入力部によるカードの読み取りが可能になり、入力部に挿入されたカードから読み取った識別情報と照合部に記憶した識別情報の一致を確認することで、ユーザ認証が行われる構成になっているが、引用文献1には、入力部によるカードの読み取りが可能になった時点からユーザ認証を行うまでの時間制限を設けることや、ユーザ認証できなかった場合に警報動作を行う警報動作モードへ移行することは記載されていない。
しかしながら、引用文献3には、「暗証番号を入力することでガード状態が解除される装置において、暗証番号の誤入力が続くと装置全体をロックして警報状態にすること。」が記載(上記引用文献3に記載された事項参照)されており、該「暗証番号を入力すること」はユーザ認証を行うことであるから、該ユーザ認証の分野においてユーザ認証ができなかった場合に警報動作を行うことは、引用文献3に記載されているといえる。また、同様のユーザ認証ができなかった場合に警報動作を行うことは、例えば、特開平11-154387号公報(段落【0017】乃至【0020】には、規定時間内に暗証番号が入力されると正常な動作状態に切り替わり、規定時間内に暗証番号が入力されないと警告音を発生させることが記載されている)に記載されているように周知技術にすぎない。
さらに、ユーザ認証の分野において正規のユーザであることを表す情報の入力時間を制限することも、上記特開平11-154387号公報(段落【0017】乃至【0020】には、規定時間内に暗証番号が入力されると正常な動作状態に切り替わり、規定時間内に暗証番号が入力されないと警告音を発生させることが記載されている)に記載されているだけでなく、特開2004-136793号公報(段落【0038】乃至【0040】には、制限時間内に暗証番号が入力されるとセキュリティモードが解除され、制限時間内に暗証番号が入力されないと警告画面を表示し、警告画面の表示以外の機能を停止することが記載されている)にも記載されているように周知技術である。
してみると、センサによってユーザの着席が検出されてから、正規のユーザであることを表す情報の入力に基づくユーザ認証により防犯動作モードの解除を行う引用発明において、引用文献2に記載された事項及び上記周知技術を採用することで、表示装置に設けたボタンによる正規のユーザであることを表す情報の入力を所定時間内に制限すること、及び、該所定時間内にユーザ認証ができなかった場合に警報動作を行わせることは、当業者が容易に想到し得たものである。
よって、引用発明に引用文献2に記載された事項及び周知技術を採用することで、相違点3を構成することは、当業者が容易に発明できたものである。

(3)本願発明の作用効果について
本件補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、審判請求人は、回答書において、例えば、特許請求の範囲の請求項3の「検出器」を「人感センサ」に限定し、「前記情報処理装置が使用されていない可能性がある状態が検出された場合」を「前記情報処理装置が使用されていない可能性がある状態として前記人感センサによって人がいないことが検出された場合」に限定した「補正後の請求項6」を補正案として提示している。
しかしながら、引用発明の「センサ部」は「表示装置の前のオペレータの存在を検出する」ものであるから「人感センサ」といえ、上記2.3(1)(オ)に、
「一般に、情報処理装置は、オペレータが表示装置を見ながら使用するものであるから、表示装置の前にオペレータが存在していなければ、該情報処理装置は使用されていない可能性が高いといえる。そして、引用発明では、センサ部が表示装置の前のオペレータの存在を検出しており、また、オペレータの離席は該センサ部で検出することは明らかであるから、引用発明の『オペレータの離席が判断されると』は、本件補正発明の『前記情報処理装置が使用されていない可能性がある状態が検出された場合』に相当している。」と記載されているように、引用発明においても「情報処理装置が使用されていない可能性がある状態」を「人感センサによって人がいないことが検出された場合」としていると認められる。
してみると、審判請求人に補正案のとおりに補正する用意があるとしても、該補正案では進歩性を肯定することはできないため、当審よりさらなる通知をすべき特別な事情を見出すことはできない。


2.5 むすび
よって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 補正却下の決定を踏まえた検討

1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成24年6月11日付けの手続補正書の請求項1に記載されたとおりのものであり、上記「第2」の「1.」の<補正前の請求項1>の欄に転記したとおりのものである。


2.引用文献
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献の記載事項及び引用発明は、上記「第2」「2.」「2.2」に記載したとおりである。


3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」「2.」で検討した本件補正発明における限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要素を全て含み、さらに特定の点に限定を施したものに相当する本件補正発明が、上記「第2」「2.」「2.4」に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明、引用文献2に記載された事項、及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-30 
結審通知日 2013-11-05 
審決日 2013-11-18 
出願番号 特願2007-282593(P2007-282593)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸島 弘詩  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 田中 秀人
金子 幸一
発明の名称 表示装置  
代理人 川上 光治  
代理人 川上 光治  

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