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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 取り消して特許、登録 H04J
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04J
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 取り消して特許、登録 H04J
管理番号 1283615
審判番号 不服2013-3100  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-18 
確定日 2014-01-28 
事件の表示 特願2008-332228「選択的チャンネル送信を使用する多重チャンネル通信システムにおける送信のためのデータを処理するための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月23日出願公開、特開2009-165126、請求項の数(28)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由
第1.手続の経緯

本願は、2002年6月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2001年6月26日 米国)を国際出願日とする出願を2008年12月26日に分割した出願であって、平成23年11月30日付けで拒絶理由が通知され、平成24年5月7日付けで手続補正がなされ、平成24年10月5日付けで拒絶査定がされ、平成25年2月18日に拒絶査定不服審判が請求され、平成25年2月18日付けで手続補正がなされたものである。
そして、当審において平成25年4月16日付けで審査官により作成された前置報告書について平成25年7月5日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は平成25年10月4日付けで回答書を提出した。

なお、本願のパリ条約による優先権主張をしている対象の2001年6月26日に米国に出願された09/892379は2001年5月17日に米国に出願された09/860274のCIP出願であるが、請求の対象は09/892379のみに記載された内容であるので、パリ条約による優先権主張を認める。


第2.平成25年2月18日付け手続補正(以下、「本件補正」という)の適否

1.補正の内容

本件補正は、特許請求の範囲の請求項25、26、31、32を削除すると共に、請求項1を

「(i)多重チャンネル通信システムにおける多重送信チャンネル上で送信するデータを処理するための方法、該方法は下記を具備する:
(ii)データ送信に利用可能な複数の送信チャンネルの特性を推定する;
(iii)複数の送信チャンネルを1のグループに含める、或いは2つ以上のグループに分離する、各グループは、特定の符号化及び変調方式並びにデータ送信に使用する各グループでの送信チャネルの選択に使用される特定の閾値と関連する;並びに
(iv)各グループの送信チャンネルについて、
(iv-1)推定されたチャンネル特性及び各グループに関連した特定の閾値に基づいてデータ送信に使用する1つ以上の送信チャンネルを選択し、ここにおいて、各グループにおいて該閾値以上の送信チャネルが選択される、
(iv-2)規定された配分方式に従って1以上の選択された送信チャンネルに利用可能な送信パワー全体を配分し、
(iv-3)各グループに関連した特定の符号化及び変調方式に従って、1以上の選択された送信チャンネルに関するデータを符号化し且つ変調し、及び
(iv-4)配分された送信パワーに基づいて各選択された送信チャンネルに対する符号化され且つ変調されたデータを送信する。」

から

「(a1)多重チャンネル通信システムにおける多重送信チャンネル上で送信するデータを処理するための方法、該方法は下記を具備する:
(a2)データ送信に利用可能な複数の送信チャンネルの特性を推定する;
(a3)複数の送信チャンネルを1のグループに含める、或いは2つ以上のグループに分離する、各グループは、特定の符号化及び変調方式並びにデータ送信に使用する各グループでの送信チャネルの選択に使用される特定の閾値と関連する;並びに
(a4)各グループの送信チャンネルについて、
(a4-1)推定されたチャンネル特性及び各グループに関連した特定の閾値に基づいてデータ送信に使用する1つ以上の送信チャンネルを選択し、ここにおいて、各グループにおいて該閾値以上の送信チャネルが選択される、
(a4-2)規定された配分方式に従って1つ以上の選択された送信チャンネルに利用可能な送信パワー全体を配分し、
(a4-3)各グループに関連した特定の符号化及び変調方式に従って、1つ以上の選択された送信チャンネルに関するデータを符号化し且つ変調し、及び
(a4-4)配分された送信パワーに基づいて各選択された送信チャンネルに対する符号化され且つ変調されたデータを送信する。」(以下「補正発明」という)

と補正し、請求項2を

「各グループに利用可能な送信パワー全体が、グループおける1以上の選択された送信チャンネルに近似的に等しく配分される、請求項1記載の方法。」

から

「各グループに利用可能な送信パワー全体が、グループにおける1つ以上の選択された送信チャンネルに近似的に等しく配分される、請求項1記載の方法。」

と補正し、請求項3を

「各グループに利用可能な送信パワー全体が、グループにおける1以上の選択された送信チャンネルに非均一に配分される、請求項1記載の方法。」

から

「各グループに利用可能な送信パワー全体が、グループにおける1つ以上の選択された送信チャンネルに非均一に配分される、請求項1記載の方法。」

と補正し、請求項5を

「各グループにおける1以上の送信チャンネルが、規定された配分方式に従って配分された送信パワー全体を用いて実現される送信容量に基づいて選択される、請求項1記載の方法。」

から

「各グループにおける1つ以上の送信チャンネルが、規定された配分方式に従って配分された送信パワー全体を用いて実現される送信容量に基づいて選択される、請求項1記載の方法。」

と補正し、請求項8を

「各グループにおける1以上の送信チャンネルが閾値に基づいて更に選択され、及びここにおいて、各グループの閾値は該グループにおいて選択された送信チャネルのスループットを最大化するように選択される、請求項1記載の方法。」

から

「各グループにおける1つ以上の送信チャンネルが閾値に基づいて更に選択され、及びここにおいて、各グループの閾値は該グループにおいて選択された送信チャネルのスループットを最大化するように選択される、請求項1記載の方法。」

と補正し、請求項20を

「多重チャネル通信システムにおけるデータ送信を制御するための方法、該方法は下記を具備する:
複数の送信チャンネルを介して送信機からの複数の送信を受信する;
受信された送信に基づいて複数の送信チャンネルの特性を推定する;
推定されたチャンネル特性に基づいて対応する符号化及び変調方式並びに特定の閾値に基いてデータ送信に使用するための1つ以上の送信チャンネルとを選択する、ここにおいて、該閾値以上の送信チャンネルが選択される;
対応する符号化及び変調方式並びに1つ以上の選択された送信チャネルを示すチャンネル状態情報(CSI)を送信機に送出する、且つここにおいて、複数の送信チャンネルのために利用可能な送信パワー全体が、規定された配分方式に従って1つ以上の選択された送信チャンネルに配分され、且つここにおいて、配分された送信パワーに基づいて選択された各送信チャンネルを介してデータが送信される。」

から

「(b1)多重チャネル通信システムにおけるデータ送信を制御するための方法、該方法は下記を具備する:
(b2)複数の送信チャンネルを介して送信機からの複数の送信を受信する;
(b3)受信された送信に基づいて複数の送信チャンネルの特性を推定する;
(b4)推定されたチャンネル特性に基づいて対応する符号化及び変調方式並びに特定の閾値に基いてデータ送信に使用するための1つ以上の送信チャンネルとを選択する、ここにおいて、該閾値以上の送信チャンネルが選択される;
(b5)対応する符号化及び変調方式並びに1つ以上の選択された送信チャネルを示すチャンネル状態情報(CSI)を送信機に送出する、且つここにおいて、複数の送信チャンネルのために利用可能な送信パワー全体が、規定された配分方式に従って1つ以上の選択された送信チャンネルに配分され、且つここにおいて、配分された送信パワーに基づいて選択された各送信チャンネルを介してデータが送信される。」

と補正し、請求項22を

「CSIは、1つ以上の選択された送信チャンネルを識別するためのチャンネルマスクを具備する、請求項26記載の方法。」

から

「CSIは、1つ以上の選択された送信チャンネルを識別するためのチャンネルマスクを具備する、請求項20記載の方法。」

と補正し、請求項25(補正前の請求項27)を

「(i)多重チャンネル通信システムにおいて、データ送信に使用するための複数の送信チャンネルを選択するための方法、該方法は下記を具備する:
(ii)符号レートの組を規定する、ここで、各符号レートが送信の前にデータを符号化するために選択可能である;
(iii)設定点の組を規定する、ここで、各設定点はそれぞれの符号レートに対応し、且つ対応する符号レートで特定レベルの性能に要求される目標の信号対雑音プラス干渉比(SINR)を表示する;
(iv)各符号レートに関して、
(iv-1)データ送信に使用可能な1つ以上の送信チャンネルを識別する、ここにおいて、利用可能な送信パワー全体が規定された配分方式に従って1つ以上の識別された送信チャンネルに分配されるとき、1つ以上の識別された送信チャンネルは符号レートに対応する設定点を実現する、及び
(iv-2)1つ以上の識別された送信チャンネルと配分された送信パワーに基づいて符号レートに関する性能測定基準を決定する;
ここで、該性能測定基準は、識別された送信チャンネルによって実現される全体的なスループットである、
(iv-3)データ送信に使用するための1つ以上の該性能測定基準に従って、最高の性能を有する符号レートに関連した識別された送信チャンネルを選択する。」

から

「(d1)多重チャンネル通信システムにおける送信機ユニット、該送信機ユニットは下記を具備する:
(d2)データ送信に使用するために利用可能な複数の送信チャンネルに関するチャンネル状態情報(CSI)を受信するように、利用可能な送信チャンネルを1つのグループに含める、或いは2つ以上のグループに分離するように、ここにおいて、各グループはデータ通信に使用する各グループでの送信チャネルの選択に使用される特定の閾値、特定の符号化及び変調方式に関連する、且つ受信されたCSIに基づいてデータ送信に使用するために各グループにおける該特定の閾値以上で1つ以上の利用可能な送信チャンネルを選択するように、動作するコントローラー;並びに
(d3)コントローラーに結合され、及び変調シンボルを与えるための特定の符号化及び変調方式に基づいて各グループに関するデータを受信し、符号化し、変調するように動作し、規定された配分方式に従ってグループにおける1つ以上の選択された送信チャンネルに各グループのために利用可能な送信パワー全体を分配するように動作し、且つ配分された送信パワーに基づいて選択された各送信チャンネルに関する変調シンボルを送信するように動作する、送信データプロセッサ。」

と補正するものである。

2.補正の適否の判断

本件補正は、
請求項25、26、31、32を削除すること
請求項1、20、25について、各項目の符号を変更すること
請求項1、2、3、5、8について、「1以上の選択された送信チャネル」を「1つ以上の選択された送信チャネル」とすること
請求項22について、引用する請求項を「26」から「20」とすること
請求項25について、「1のグループ」を「1つのグループ」とし、(iii-1)と(iii-2)の項目を1つの項目で記載すること
請求項26、27、28について、請求項の削除に伴って引用請求項を修正すること
をその内容とするものであり、いずれも請求項の削除あるいは誤記の訂正と認められる。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号、第3号を目的とするものに該当する。


第3.本願発明

上記のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲の請求項1ないし28に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし28に記載された事項により特定されるとおりのものである。

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「(a1)多重チャンネル通信システムにおける多重送信チャンネル上で送信するデータを処理するための方法、該方法は下記を具備する:
(a2)データ送信に利用可能な複数の送信チャンネルの特性を推定する;
(a3)複数の送信チャンネルを1のグループに含める、或いは2つ以上のグループに分離する、各グループは、特定の符号化及び変調方式並びにデータ送信に使用する各グループでの送信チャネルの選択に使用される特定の閾値と関連する;並びに
(a4)各グループの送信チャンネルについて、
(a4-1)推定されたチャンネル特性及び各グループに関連した特定の閾値に基づいてデータ送信に使用する1つ以上の送信チャンネルを選択し、ここにおいて、各グループにおいて該閾値以上の送信チャネルが選択される、
(a4-2)規定された配分方式に従って1つ以上の選択された送信チャンネルに利用可能な送信パワー全体を配分し、
(a4-3)各グループに関連した特定の符号化及び変調方式に従って、1つ以上の選択された送信チャンネルに関するデータを符号化し且つ変調し、及び
(a4-4)配分された送信パワーに基づいて各選択された送信チャンネルに対する符号化され且つ変調されたデータを送信する。」


第4.引用例

原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前である平成11年11月16日に公開された特開平11-317723号公報(以下「引用例1」という)には、次の事項が記載(下線は当審が付与)されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般的に、通信システムに関し、更に特定すれば、離散マルチ・トーン・システム(discrete multi-tone communication system)を構成する方法に関するものである。」

「【0003】離散マルチ・トーン(DMT:Discrete Multi-Toned)とは、ツイストペア接続のような通信チャネルの使用可能帯域幅を、多数の周波数サブチャネルに分割するマルチ・キャリア技術のことである。これらのサブチャネルは、周波数ビン(frequency bin) またはキャリアとも呼ばれている。DMT技術は、ANSIT1E1.4(ADSL)委員会によって、ADSLシステムに用いるために採用されている。ADSLでは、DMTを用いて、エンド・ユーザに向かう下流伝送に26kHzから1.1MHzまでの250個の別個の4.3125KHzサブチャネルを発生し、エンドユーザによる上流伝送のために26kHzから138kHzまでの25個のサブチャネルを発生する。各ビンには、各伝送と共に送るある数のビットが割り当てられる。ADSLシステムに対してビン毎に割り当てられるビット数は、0,および2ないし15ビットである。」

「【0021】図6ないし図9は、本発明を実施する他の方法を示す。図6のステップ601において、ADSLチャネルの分析を行う。一実施例では、チャネル分析は、初期状態におけるあるチャネルのSNRを返す。通常、チャネル分析および図6のステップは、初期化プロセスの一部として行われる。しかしながら、図6のステップをリアル・タイムで実行する他の実施態様も、本発明によって予見される。
【0022】チャネル分析ステップからのSNR値に基づいて、ステップ602において、当該チャネルに関連するどのビンが良好なビンかについて判定を行う。良好なビンとは、最少量のデータを送信可能な、予め規定されたSNRを満足するビンと定義する。例えば、表2のSNR基準(SNRref)値は、ビンに2ビットのデータを割り当て、かつ特定のBERを維持するためには、ビンは少なくとも14のSNRを有する必要があることを示す。SNRが14未満のチャネルがある場合、最小数のビットを送信するものの、表のBERを維持することができないチャネルであることを示す。通常、ビンが予め規定されたBERを満たしつつ、最少量のデータを送信可能であれば、良好なビンとして定義される。
【0023】次に、ステップ603において、チャネル内の劣悪なビンを全て識別する。劣悪なビンとは、予め規定された性能基準を満たすことができないビンのことである。一実施例では、特定のキャリアについて、予め規定されたBERの範囲内でデータを送信できないと判定された場合、劣悪なビンとして識別される。通常、この識別を得るには、特定のチャネルのSNRを、最少値の送信量のSNRrefと比較し、指定された基準が満たされるか否かについて判定を行う。例えば、SNRからSNRrefを減じて-5以下となるキャリアを全て、劣悪なビンとするという基準が考えられる。したがって、図2の表を用いる場合、SNRが9以下である全てのチャネルが、劣悪なビンとして分類されることになる。通常、劣悪なビンには、データを全く割り当てることができない。
【0024】次に、ステップ604において、マージナル・ビン(marginal bin)のセットを識別する。マージナル・ビンのサブセットとは、以前に良好なビンとも劣悪なビンとも判定されていないビンと定義する。前述の例では、マージナル・ビンは、9ないし14のSNR値を有する。その理由は、SNRが14以上のキャリアは良好なキャリアであり、SNRが9以下のキャリアは劣悪なビンとするからである。マージナル・ビンには、他の定義も同様に使用可能である。例えば、5ビットを搬送できないビンを全てマージナル・ビンとして定義したり、あるいはSNRref値間の間隔に基づいて定義することが望ましい場合もある。
【0025】次に、ステップ605において、劣悪なビンに割り当てた送信パワーを削減する。固定量だけパワーを削減したり、あるいは倍率に基づいてパワーを削減することができる。劣悪なビンの送信パワーを固定量だけ削減させる一例としては、フィルタ応答を変化させ、劣悪なビンを減衰させることであう。倍率によって劣悪なビンのパワーを削減させる一例は、その周波数領域におけるキャリアに0.10を乗算することであろう。劣悪なビンに関連する送信パワーを削減することにより、データが送信される可能性がない場合、使用パワーが減少する。これは、全てのビン上で送信パワーを維持することを指定する、またはマージナル・ビン上では少量のデータを送信することを提案する従来技術の方法に対する利点である。
【0026】次に、ステップ606において、マージナル・ビン上のパワーを増大させる。通常、劣悪なビンのパワーを削減することによって得られる量だけ、マージナル・ビンのパワーを増大させることにより、システム全体のパワーには変化を生じさせない。一実施例では、得られるパワーは、全てのマージナル・ビンに均等に与えるように使用する。他の例では、得られるパワーは、各ビンのSNRに基づいて、いずれかのマージナル・ビンに割り当てることも可能である。更に別の実施例では、割り当てられるパワーに対して最大のビット容量増加を得ることができるマージナル・ビンに、得られたパワーを追加する。
【0027】次に、ステップ620において、パワー・レベルが上昇した各マージナル・ビンについて、パワー増大の結果、マージナル・ビンが良好なビンとなったか否かについて判定を行う。この判定は、マージナル・ビンに対するチャネル分析によって推定または決定し、送信パワー増大後のSNR値が、データ転送に対応するのに充分か否かについて判定を行うことができる。マージナル・ビンが改善され、良好なビンと判定された場合、フローはステップ607に進み、新たに識別された良好なビンを、そのように識別する。マージナル・ビンのパワーが増大したものの、未だマージナルであると判定された場合、フローはステップ608に進む。ステップ608において、このビンを劣悪なビンとして識別し、フローはステップ305に進み、ここで新たに識別された劣悪なビンのパワーを削減する。尚、ステップ608において、ビンのマージナル・ステータスを維持し、更にパワーを増大し、良好なビンを作成しようとすることも可能である。しかしながら、マージナル・ビンの少なくともいくつかを劣悪なビンとして識別し、割り当てのために余分なパワーを解放してマージナル・ビンのSNRを改善するために使用し、ステップ608において劣悪なビンとして識別しないようにする必要がある。次に、ステップ609において、良好なビンとして定義された全てのビン上で、データを送信する。」

上記によれば、引用例1には、

「離散マルチ・トーン・システムを構成する方法であって、
離散マルチ・トーンとは、多数の周波数サブチャネルに分割するマルチ・キャリア技術のことであり、これらのサブチャネルは、周波数ビンと呼ばれ、
チャネル分析ステップからのSNR値に基づいて、ステップ602において、当該チャネルに関連するどのビンが良好なビンかについて判定を行い、
良好なビンとは、最少量のデータを送信可能な、予め規定されたSNRを満足するビンと定義し、
ステップ603において、チャネル内の劣悪なビンを全て識別し、劣悪なビンとは、予め規定された性能基準を満たすことができないビンのことであり、
通常、この識別を得るには、特定のチャネルのSNRを、最少値の送信量のSNRrefと比較し、指定された基準が満たされるか否かについて判定を行い、例えば、SNRからSNRrefを減じて-5以下となるキャリアを全て、劣悪なビンとし、
ステップ604において、マージナル・ビン(marginal bin)のセットを識別し、マージナル・ビンのサブセットとは、以前に良好なビンとも劣悪なビンとも判定されていないビンと定義し、
ステップ605において、劣悪なビンに割り当てた送信パワーを削減し、
ステップ606において、マージナル・ビン上のパワーを増大し、劣悪なビンのパワーを削減することによって得られる量だけ、マージナル・ビンのパワーを増大させることにより、システム全体のパワーには変化を生じさせず、
ステップ620において、パワー・レベルが上昇した各マージナル・ビンについて、パワー増大の結果、マージナル・ビンが良好なビンとなったか否かについて判定を行い、この判定は、マージナル・ビンに対するチャネル分析によって推定または決定し、送信パワー増大後のSNR値が、データ転送に対応するのに充分か否かについて判定を行うことができ、マージナル・ビンが改善され、良好なビンと判定された場合、フローはステップ607に進み、新たに識別された良好なビンを、そのように識別し、マージナル・ビンのパワーが増大したものの、未だマージナルであると判定された場合、フローはステップ608に進み、このビンを劣悪なビンとして識別し、フローはステップ305に進み、ここで新たに識別された劣悪なビンのパワーを削減し、
ステップ609において、良好なビンとして定義された全てのビン上で、データを送信する
方法」

が記載されている。(以下「引用発明」という)


第5.本願発明と引用発明の対比

引用発明の「離散マルチ・トーン・システム」は、本願発明の「多重チャンネル通信システム」に、
引用発明の「ビン」は、「周波数サブチャネル」であるから、本願発明の「送信チャンネル」に、
引用発明の「SNR値」は、本願発明の「送信チャンネルの特性」に、
それぞれ相当する。

引用発明の「予め規定されたSNR」と「SNRref」はいずれも「特定の閾値」である。

引用発明では、特定のチャネルのSNRを「SNRref」(以下「特定の閾値」という)および「SNRref-5」(以下「第2の閾値」という)と比較することで「良好なビン」「マージナル・ビン」「劣悪なビン」の3種類に判定(以下「1回目の判定」という)し、システム全体のパワーには変化を生じさせずに、「劣悪なビン」のパワーを削減する量だけ「マージナル・ビン」のパワーを増大させて「マージナル・ビン」が「良好なビン」となったかどうかを判定(以下「2回目の判定」という)し、1回目の判定と2回目の判定のいずれかで「良好なビン」と判定されたビン上でデータを送信するから、パワー配分する送信チャンネルは、「第2の閾値」に基づいて選択された送信チャンネルであって、「特定の閾値」に基づいて選択された送信チャンネルではない。

また、引用発明では、2回目の判定により、未だマージナルであると判定されたビンを劣悪なビンとして識別し、識別された劣悪なビンのパワーを削減しているが、ここで削減された「劣悪なビンのパワー」について、再度、他に配分することにより全体のパワーに変化を生じさせないようにしているかどうか明らかでない。

したがって、本願発明と引用発明は、

「(a1)多重チャンネル通信システムにおける多重送信チャンネル上で送信するデータを処理するための方法、該方法は下記を具備する:
(a2)データ送信に利用可能な複数の送信チャンネルの特性を推定する;
(a4)各グループの送信チャンネルについて、
(a4-1)推定されたチャンネル特性及び各グループに関連した特定の閾値に基づいてデータ送信に使用する1つ以上の送信チャンネルを選択し、ここにおいて、各グループにおいて該閾値以上の送信チャネルが選択される、
(a4-2)送信チャンネルに送信パワーを配分し、
(a4-3)1つ以上の選択された送信チャンネルに関するデータを送信する。」

で一致し、下記の点で相違する。

相違点1

引用発明は、送信チャンネルに「グループ」が無く、「複数の送信チャンネルを1のグループに含める、或いは2つ以上のグループに分離」することが無く、「各グループは、特定の符号化及び変調方式並びにデータ送信に使用する各グループでの送信チャネルの選択に使用される特定の閾値と関連する」ことも無い点。

相違点2

パワー配分に際し、本願発明は、「規定された配分方式」に従って「選択された送信チャンネル」に送信パワー「全体」を配分しているのに対し、引用発明は、「第2の閾値に基づいて選択された送信チャンネル」に対してパワー配分を行うことで試行錯誤的な処理を行っており、送信パワー「全体」を配分しているのかどうかも明らかではない点。


第6.当審の判断

相違点1について

特開平11-55210号公報(以下「引用例2」という)には、

「【0014】送信側グループ毎サブキャリア選択手段21は、受信側のグループ毎使用サブキャリア指定手段91からフィードバックされるグループ毎指定サブキャリア情報信号K1に基づき、シリアル・パラレル変換手段10から出力されるパラレル信号B1の送信に用いるサブキャリアを、N/M個のグループごとにL波ずつ選択する。
【0015】ここで、図2に示すように、全サブキャリア数をN、各グループ内のサブキャリア数をMとする。また、各グループのサブキャリア間の周波数間隔が最大になるようにグループ化する。その目的は、移動通信伝搬環境における遅延波(反射波)の遅延量とサブキャリアの周波数間隔との間に図4に示すような相関関係があるので、サブキャリア間の相関が小さくなるようにサブキャリア間の周波数間隔を大きくし、サブキャリアの選択送信による効果を高めるためである。
【0016】受信側グループ毎指定サブキャリア選択手段51は、グループ毎使用サブキャリア指定手段91から送信側に送出したグループ毎指定サブキャリア情報信号K1に基づき、サブキャリア信号E1からN/M個のグループごとにL波ずつ受信するサブキャリア信号を選択する。
【0017】グループ毎使用サブキャリア指定手段91は、サブキャリア信号品質測定手段80の測定結果情報J1に基づいて、M波のサブキャリアからなる各グループごとにL波のサブキャリアを信号伝送用として指定し、そのグループ毎指定サブキャリア情報信号K1を送信側グループ毎指定サブキャリア選択手段21および受信側グループ毎指定サブキャリア選択手段51に送出する。
【0018】図3は、グループ毎使用サブキャリア指定手段91および送信側グループ毎サブキャリア選択手段21の動作例を示す。ここでは、全サブキャリア数Nが12、各グループ内のサブキャリア数Mが4、グループ数N/Mが3、グループごとに選択するサブキャリア数Lが2の場合を示す。図中、カッコ内の表記は(グループ番号,グループ内サブキャリア番号)であり、(1,1)?(3,4)の12のサブキャリアがあり、サブキャリア信号品質測定手段80でそれぞれの受信電力が測定される。
【0019】グループ毎使用サブキャリア指定手段91は、各グループごとにサブキャリアの受信電力の大きい方から2つのサブキャリアを指定する。ここでは、(1,1)、(1,2)、(2,2)、(2,3)、(3,1)、(3,3)のサブキャリアが指定される。送信側グループ毎指定サブキャリア選択手段21では、この指定されたサブキャリアを選択してパラレル信号B1の送信に用いる。受信側グループ毎指定サブキャリア選択手段51でも同様に、サブキャリア信号E1から指定されたサブキャリア信号を選択する。」

の記載があるから、

「全サブキャリア数をN、各グループ内のサブキャリア数をMとして、各グループのサブキャリア間の周波数間隔が最大になるようにグループ化し、
グループ毎使用サブキャリア指定手段91は、サブキャリア信号品質測定手段80の測定結果情報J1に基づいて、M波のサブキャリアからなる各グループごとにL波のサブキャリアを信号伝送用として指定し、そのグループ毎指定サブキャリア情報信号K1を送信側グループ毎指定サブキャリア選択手段21および受信側グループ毎指定サブキャリア選択手段51に送出し、
グループ毎使用サブキャリア指定手段91は、各グループごとにサブキャリアの受信電力の大きい方から2つのサブキャリアを指定する。」

が引用例2に記載されている。

つまり、引用例2によれば、「全サブキャリアをグループ化」し、「グループ毎にサブキャリアを指定」して送信側に送出することは記載されているが、「各グループに対する単一の符号化及び変調方式の使用」については記載されておらず、サブキャリアの指定方法も「大きい方から2つ」であって、閾値との比較は行っていない。

そして、本願明細書には、(下線部は当審が付与)

「【0029】
本発明の観点に従って、一方において実施の複雑さを低減させながら高い性能を実現するための規定された方法で、データ送信に使用するための送信チャンネルの組を選択し、且つ選択された送信チャンネルへ利用可能な送信パワー全体を配分するための技術が提供される。実施形態において、単一の符号化及び変調方式は、各グループにおける全ての選択された送信チャンネルのために使用される。この符号化及び変調方式は、選択された送信チャンネルに対して受信機システムで実現されるSNRの分配に基づいて、選択されてもよい。各グループに対する単一の符号化及び変調方式の使用は、送信機システムでの符号化/変調処理及び受信機システムでの相補的復調/復号処理の複雑性を大きく低減させる。」

の記載があるように、「各グループに対する単一の符号化及び変調方式の使用」により送信機システム及び受信機システムでの「複雑性を大きく低減させる」という効果もあるから、当業者が容易に発明をすることができたといえない。

相違点2について

引用例2は、パワーの配分に関する記載は無い。

そして、出願人が審判請求書で記載するように、「送信パワーの配分の事前処理を極めて簡単化」するという効果も認められるから、当業者が容易に発明をすることができたといえない。

相違点1、相違点2ともに当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。


第7.まとめ

上記のとおり、請求項1については、原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
請求項2?19は、請求項1を直接あるいは間接的に引用して記載しており、少なくとも上記の相違点1と相違点2を含むから、同様の理由により原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

請求項20は、少なくとも相違点2と同様の相違点を有するから、同様の理由により原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
請求項21?24は、請求項20を引用して記載しているから、同様の理由により原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

請求項25は、上記の相違点1と相違点2と同様の相違点を有するから、同様の理由により原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
請求項26?28は、請求項25を直接あるいは間接的に引用して記載しているから、同様の理由により原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-01-10 
出願番号 特願2008-332228(P2008-332228)
審決分類 P 1 8・ 573- WY (H04J)
P 1 8・ 571- WY (H04J)
P 1 8・ 121- WY (H04J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高野 洋太田 龍一  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 佐藤 聡史
吉田 隆之
発明の名称 選択的チャンネル送信を使用する多重チャンネル通信システムにおける送信のためのデータを処理するための方法及びシステム  
代理人 岡田 貴志  
代理人 中村 誠  
代理人 野河 信久  
代理人 福原 淑弘  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 峰 隆司  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 堀内 美保子  
代理人 白根 俊郎  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 佐藤 立志  
代理人 井関 守三  
代理人 竹内 将訓  
代理人 河野 直樹  
代理人 砂川 克  
代理人 井上 正  
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