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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K
管理番号 1283716
審判番号 不服2011-26916  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-13 
確定日 2014-01-16 
事件の表示 特願2005-503615「発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月23日国際公開、WO2004/081140〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、2004年3月12日を国際出願日とする国際特許出願(優先権主張:平成15年3月13日及び同年8月5日、特願2003-68959号及び特願2003-286742号)であって、以降の手続の経緯は以下のとおりである。

平成17年 8月23日 国内書面提出
同日 手続補正書
平成19年 3月 7日 出願審査請求
平成22年10月 4日付け 拒絶理由通知
平成22年12月13日 意見書・手続補正書
平成23年 4月13日付け 拒絶理由通知
平成23年 6月15日 意見書・手続補正書
平成23年 9月 9日付け 拒絶査定
平成23年12月13日 本件審判請求
同日 手続補正書
平成23年12月21日付け 審査前置移管
平成24年 1月13日付け 前置報告書
平成24年 1月20日付け 審査前置解除
平成24年 9月24日付け 審尋
平成24年11月24日 回答書
平成25年 7月10日付け 拒絶理由通知
平成25年 9月17日 意見書・手続補正書

第2 当審がした拒絶理由通知の概要
当審が平成25年7月10日付けでした拒絶理由通知の概要は、以下のとおりのものである。
<拒絶理由通知>
「第3 拒絶理由
しかるに、本願は以下の拒絶理由を有するものである。

理由1:(省略)
理由2:(省略)
理由3:本願の請求項1ないし18に係る各発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。



・・(中略)・・
3.理由3について
上記1.及び2.で説示したとおり、本願の請求項1ないし18及び明細書の発明の詳細な説明には記載不備があるが、理由3につき検討するにあたり、本願発明は、上記第2で示した各請求項に記載された事項で特定されるとおりのものであるとして、検討を行う。(以下、請求項の項番に従い「本願発明1」?「本願発明18」という。)

刊行物:
1.特開2002-134790号公報
(以下、上記刊行物1を「引用例」という。)
・・(中略)・・
してみると、上記引用例には、上記(ア-1)ないし(ア-8)の記載からみて、
「半導体発光素子から照射される青色光に対して光透過性を有し、且つ前記半導体発光素子から照射される青色光を吸収して黄色光に変換する蛍光体及び半導体発光素子の発光を散乱する光散乱物質を含み、かつAl(OCH_(3))_(3)、Al(OC_(2)H_(5))_(3)、Al(iso-OC_(3)H_(7))_(3)、Al(OC_(4)H_(9))_(3)などの金属アルコキシドの加水分解重合により得られたメタロキサンゾルによって形成される半導体発光素子を被覆するためのメタロキサンゲル層」
に係る発明(以下、「引用発明1」という。)が記載され、また、
「一対の配線導体と、該一対の配線導体の一方の端部に固着された半導体発光素子と、前記半導体発光素子を被覆する光透過性のメタロキサンゲル層とを備えた半導体発光装置において、前記メタロキサンゲル層は、引用発明1のものであることを特徴とする半導体発光装置」
に係る発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
(なお、以下「引用発明1」及び「引用発明2」を併せて「引用発明」ということがある。)

イ.本願各発明との対比・判断
・・(中略)・・
(ウ)本願発明4ないし18について
・・(中略)・・
(d)小括
以上のとおり、本願発明4ないし18については、いずれも引用発明2と同一である。」

第3 当審の判断
当審は、通知した上記拒絶理由3と同一の理由により、本願は、拒絶すべきものである、と判断する。以下詳述する。

1.本願に係る発明
本願に係る発明は、平成25年9月17日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14の各項に記載された事項で特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は、請求項1に記載された以下の事項で特定されるとおりのものである。
「発光素子と、前記発光素子からの光の少なくとも一部を吸収し発光する発光膜と、樹脂と、を備える発光装置であって、
前記発光膜は、少なくとも無機蛍光体とバインダ部材とで構成され、
前記バインダ部材は少なくとも金属元素の酸化水酸化物を含有し、
前記金属元素の酸化水酸化物は、アルミニウムの酸化水酸化物、若しくはイットリウムの酸化水酸化物であり、
前記アルミニウムの酸化水酸化物は、
AlOOHの化学式で表され、ベーマイト構造を有し、又は、
(AlOOH)・xH_(2)Oの化学式で表され、擬ベーマイト構造を有し、
前記イットリウムの酸化水酸化物は、YOOH・xH_(2)Oの化学式で表され、
前記バインダ部材はゲル状であり、
前記バインダ部材は空隙を有し、前記空隙は前記樹脂により埋められていることを特徴とする発光装置。」
(以下、「本願発明」という。)

2.引用例に記載された事項
上記拒絶理由通知で引用した引用例(特開2002-134790号公報)には、以下の事項が記載されている。

(a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対の配線導体と、該一対の配線導体の一方の端部に固着された半導体発光素子と、前記半導体発光素子を被覆する光透過性のメタロキサンゲル層とを備えた半導体発光装置において、
前記メタロキサンゲル層は、前記半導体発光素子から照射される青色光に対して光透過性を有し、且つ前記半導体発光素子から照射される青色光を吸収して黄色光に変換する蛍光体を含み、且つ金属アルコキシドの加水分解重合により得られたメタロキサンゾル又は金属アルコキシドと有機樹脂との無機・有機複合体の加水分解重合により得られたメタロキサンゾル又はセラミック前駆体ポリマーから成るメタロキサンゾルによって形成されると共に、前記半導体発光素子と前記配線導体とを強固に密着し、
前記蛍光体は、一般式が(Y_(1-x),Gd_(x))_(3)(Al_(1-y),Ga_(y))_(5)O_(12):Ce_(z),Pr_(w)で表され、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.001≦z≦0.5及び0.001≦w≦0.5であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】 金属アルコキシドは、Si(OCH_(3))_(4)、Si(OC_(2)H_(5))_(4)、Si(i-OC_(3)H_(7))_(4)、Si(t-OC_(4)H_(9))_(4)、Ti(OCH_(3))_(4)、Ti(OC_(2)H_(5))_(4)、Ti(iso-OC_(3)H_(7))_(4)、Ti(OC_(4)H_(9))_(4)、Zr(OCH_(3))_(4)、Zr(OC_(2)H_(5))_(4)、Zr(OC_(3)H_(7))_(4)、Zr(OC_(4)H_(9))_(4)、Al(OCH_(3))_(3)、Al(OC_(2)H_(5))_(3)、Al(iso-OC_(3)H_(7))_(3)、Al(OC_(4)H_(9))_(3)から選択された1種又は2種以上である請求項1に記載の半導体発光装置。
・・(中略)・・
【請求項4】 前記メタロキサンゲル層は、前記メタロキサンゾルを前記半導体発光素子の融点よりも低い温度で乾燥・加熱硬化して形成された請求項1?3の何れか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項5】 前記メタロキサンゲル層は、メタロキサン(metaloxane)結合を主体とする透明な固形の金属酸化物又は金属酸化物と有機樹脂とのハイブリッド体である請求項1?4の何れか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項6】 半導体発光素子は、窒化ガリウム系化合物半導体より成る発光波長ピーク約430nm?約480nmの青色LEDチップである請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項7】 前記半導体発光素子の上面に形成された電極と前記一対の配線導体とをボンディングワイヤにより電気的に接続し、前記半導体発光素子、前記電極及び前記電極に接続された前記ボンディングワイヤの端部を前記メタロキサンゲル層により被覆する請求項1?6の何れか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項8】 前記一対の配線導体の一方の端部にカップ部を形成し、前記半導体発光素子を前記カップ部の底部に固着した請求項1?7の何れか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項9】 一方の主面にカップ部が形成された絶縁性基板を備え、該絶縁性基板の一方の主面に沿って互いに反対方向に延びる前記一対の配線導体を形成し、前記カップ部の底部にて前記一対の配線導体の一方に前記半導体発光素子を固着した請求項1?7の何れか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項10】 前記配線導体は前記絶縁性基板の一方の主面から側面に沿って他方の主面に延びる請求項9に記載の半導体発光装置。
【請求項11】 前記メタロキサンゲル層は更に封止樹脂により封止され、前記半導体発光素子から照射される光は、前記メタロキサンゲル層内を通過した後、前記封止樹脂の外部に放出される請求項1?10の何れか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項12】 前記半導体発光素子から放射された光成分の一部が前記メタロキサンゲル層に達して前記メタロキサンゲル層内で異なる波長に波長変換された光と、波長変換されない前記半導体発光素子からの光とが混合して前記封止樹脂を通して外部に放出される請求項11に記載の半導体発光装置。
【請求項13】 特定の発光波長を吸収する光吸収物質、前記半導体発光素子の発光を散乱する光散乱物質又はメタロキサンゲル層のクラックを防止する結合材を前記メタロキサンゲル層内に配合した請求項1?12の何れか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項14】 一対の配線導体の一方の端部にカップ部を形成する工程と、
前記カップ部の底部に半導体発光素子を固着する工程と、
前記半導体発光素子の上面に形成された電極と前記一対の配線導体とをボンディングワイヤにより電気的に接続する工程と、
一般式が(Y_(1-x),Gd_(x))_(3)(Al_(1-y),Ga_(y))_(5)O_(12):Ce_(z),Pr_(w)(0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.001≦z≦0.5及び0.001≦w≦0.5)で表され且つ前記半導体発光素子から照射される光を吸収して他の発光波長に変換する蛍光体と、金属アルコキシド又はセラミック前駆体ポリマーから成るメタロキサンゾルとを前記カップ部内に注入して、前記半導体発光素子、前記電極及び前記電極に接続された前記ボンディングワイヤの端部を被覆する工程と、
前記メタロキサンゾルを乾燥・加熱硬化してメタロキサンゲル層を形成する工程と、
前記メタロキサンゲル層を更に封止樹脂により封止する工程とを含み、
前記メタロキサンゲル層は、前記半導体発光素子及び前記配線導体と強固に密着することを特徴とする半導体発光装置の製法。
【請求項15】 絶縁性基板の一方の主面にカップ部を形成する工程と、
前記絶縁性基板の一方の主面に沿って互いに反対方向に延びる一対の配線導体を形成する工程と、
前記カップ部の底部にて前記一対の配線導体の一方に半導体発光素子を固着する工程と、
前記半導体発光素子の上面に形成された電極と前記一対の配線導体とをボンディングワイヤにより電気的に接続する工程と、
一般式が(Y_(1-x),Gd_(x))_(3)(Al_(1-y),Ga_(y))_(5)O_(12):Ce_(z),Pr_(w)(0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.001≦z≦0.5及び0.001≦w≦0.5)で表され且つ前記半導体発光素子から照射される光を吸収して他の発光波長に変換する蛍光体と、金属アルコキシド又はセラミック前駆体ポリマーから成るメタロキサンゾルとを前記カップ部内に注入して、前記半導体発光素子、前記電極及び前記電極に接続された前記ボンディングワイヤの端部を被覆する工程と、
前記メタロキサンゾルを乾燥・加熱硬化してメタロキサンゲル層を形成する工程と、
前記メタロキサンゲル層を更に封止樹脂により封止する工程とを含み、
前記メタロキサンゲル層は、前記半導体発光素子及び前記配線導体と強固に密着することを特徴とする半導体発光装置の製法。
【請求項16】 前記メタロキサンゲル層は、前記メタロキサンゾルを前記半導体発光素子の融点よりも低い温度で乾燥・加熱硬化して形成される請求項14又は15に記載の半導体発光装置の製法。」

(b)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体発光装置、特に半導体発光素子から照射される光を波長変換して外部に放出する半導体発光装置及びその製法に属する。」

(c)
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】(R_(1-x),Sm_(x))_(3)(Al_(y)Ga_(1-y))_(5)O:Ce(RがY及びGdのうち少なくとも何れか1つの元素で0≦x≦1、0≦y≦1)で表される蛍光体(15a)を含有する保護樹脂層(15)で半導体発光素子(2)を包囲し、更に全体を封止樹脂(8)で包囲する従来の半導体発光装置(30)では、実用上種々の問題が生ずる。
・・(中略)・・
【0007】第2の問題は、半導体発光素子(2)から発生する青色光によって保護樹脂層(15)が劣化することである。一般に、炭素、水素、酸素、窒素等の元素が網目状に結合した有機高分子化合物によって構成される保護樹脂層(15)は、エネルギーの大きな光(即ち、波長の短い光)が照射されると、有機高分子の繋ぎ目が切断され、各種の光学的特性及び化学的特性が劣化することが知られている。青色光を発する窒化ガリウム系化合物半導体発光素子は、黄緑色光や赤色光を発するGaP系やGaAlAs系、GaAlInP系化合物半導体発光素子よりも発光波長が短いため、保護樹脂層(15)は光強度の強い半導体発光素子(2)の周囲から次第に黄変し着色現象が発生する。このため、半導体発光素子(2)が発した光は着色部で吸収され減衰する。更に、保護樹脂層(15)の劣化に伴って耐湿性が低下すると共にイオン透過性が増大するため、半導体発光素子(2)自体も劣化し、その結果、半導体発光装置(30)の発光強度は相乗的に低減する。
【0008】第3の問題は、保護樹脂層(15)の耐熱性が低いため黄変・着色し、半導体発光素子(2)から照射された光が減衰する点にある。窒化ガリウム系化合物半導体発光素子は順方向電圧が高いため、比較的低い順方向電流でも電力損失が大きく、作動時に素子温度はかなり上昇する。一般に、樹脂は高温に加熱されると次第に劣化して黄変・着色を起こすことが知られている。従って、窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を半導体発光素子(2)として半導体発光装置(30)に用いると、高温となる半導体発光素子(2)と接する部分から保護樹脂層(15)が次第に黄変・着色するため、半導体発光装置(30)の発光強度は次第に低下する。
・・(中略)・・
【0011】以上のように、窒化ガリウム系化合物の半導体発光素子(2)の周囲をイットリウム(Y)・アルミニウム(Al)・ガーネット(YAG)系の蛍光体(15a)を混合した樹脂で封止する従来の半導体発光装置(30)は、白色発光が可能でありながらも信頼性と演色性に難があるため、長寿命で自然な色彩表現が可能な優れた半導体発光装置とは成り得なかった。
【0012】本発明は、優れた耐環境性及び演色性を有する半導体発光装置及びその製法を提供することを目的とする。」

(d)
「【0019】金属アルコキシドより得られるメタロキサンゾルは、化学式がM(OR)_(n)(M:金属、R:アルキル基)で表される有機金属化合物である金属アルコキシドをアルコール等の溶媒に分散させ、水と微量の触媒とを滴下して混合することにより部分的に加水分解重合反応を生じさせ、その結果生成した金属化合物のポリマーが溶媒に分散した状態となった液体として生成される。金属アルコキシドは、シリコン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等の単一金属アルコキシド又は複数の金属アルコキシドより成る複合金属アルコキシドを用いる。例えば、金属アルコキシドは、Si(OCH_(3))_(4)、Si(OC_(2)H_(5))_(4)、Si(i-OC_(3)H_(7))_(4)、Si(t-OC_(4)H_(9))_(4)、Ti(OCH_(3))_(4)、Ti(OC_(2)H_(5))_(4)、Ti(iso-OC_(3)H_(7))_(4)、Ti(OC_(4)H_(9))_(4)、Zr(OCH_(3))_(4)、Zr(OC_(2)H_(5))_(4)、Zr(OC_(3)H_(7))_(4)、Zr(OC_(4)H_(9))_(4)、Al(OCH_(3))_(3)、Al(OC_(2)H_(5))_(3)、Al(iso-OC_(3)H_(7))_(3)、Al(OC_(4)H_(9))_(3)から選択された1種又は2種以上である。金属アルコキシドの官能基の一部を修飾して有機樹脂モノマーを導入した無機・有機複合体を用いることができる。・・(中略)・・
【0020】これらのメタロキサンゾルは通常液体であるが、対象物に塗布し空気中で放置乾燥して固化(ゲル化)させた後に加熱硬化すると、メタロキサン(metaloxane)結合を主体とした金属酸化物又は金属酸化物と有機樹脂とのハイブリッド体の透明なガラス状の固形体(メタロキサンゲル)を生成する。半導体発光素子(2)の融点よりもはるかに低い温度である170℃前後で加熱硬化でき、半導体発光素子(2)の特性を劣化させない低温領域で丈夫なメタロキサンゲル層(10)を形成できる。特定の発光波長を吸収する光吸収物質、半導体発光素子(2)の発光を散乱する光散乱物質又はメタロキサンゲル層(10)のクラックを防止する結合材をメタロキサンゲル層(10)内に配合してもよい。
【0021】形成されたメタロキサンゲル層(10)は、下記の優れた特性を備えている。
[1]耐湿性に優れ、内部に水分を浸透させず、半導体発光素子(2)を劣化させない。
[2]有害イオンの浸透を防ぐイオンバリア効果が高いため、半導体発光装置の外部や蛍光体(10a)からの有害イオンで半導体発光素子(2)を劣化させない。
[3]耐候性に優れ、高温環境下及び短波長光照射下でも黄変・着色を起こさず、半導体発光素子(2)の発光を減衰させない。
[4]メタロキサンゲル中の金属原子が、金属及び半導体表面の自然酸化物層の酸素原子と強固に結合するので、半導体発光素子(2)、配線導体(3,4)及び酸化物系の蛍光体(10a)との密着性がよい。」

(e)
「【0024】前記半導体発光装置(20)は以下の工程により形成する。最初に一対の配線導体(3,4)の一方の端部にカップ部(3a)を形成し、カップ部(3a)の底部(3b)に窒化ガリウム系の半導体発光素子(2)を接着剤で固着する。図1に示すように、カップ部(3a)はカソード側の配線導体(3)の端部に半導体発光素子(2)の高さより深く形成される。固着した半導体発光素子(2)の上面には、一対の電極(2a,2b)が形成され、電極(2a,2b)と配線導体(3,4)とをボンディングワイヤ(5,6)により電気的に接続する。
【0025】次に、金属アルコキシド又はセラミック前駆体ポリマーから成るメタロキサンゾルをカップ部(3a)内に注入する。このとき、一般式が(Y_(1-x),Gd_(x))_(3)(Al_(1-y),Ga_(y))_(5)O_(12):Ce_(z),Pr_(w)(0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.001≦z≦0.5及び0.001≦w≦0.5)で表される前記製法により生成した蛍光体(10a)の粉末をメタロキサンゾルに混合し注入する。蛍光体(10a)を含むメタロキサンゾルは、半導体発光素子(2)、電極(2a,2b)及び電極(2a,2b)に接続されたボンディングワイヤ(5,6)の端部を被覆し、空気中でメタロキサンゾルを乾燥後、半導体発光素子(2)の融点よりもはるかに低い温度の170℃前後で加熱硬化してメタロキサンゲル層(10)をカップ部(3a)内に形成する。このため、メタロキサンゲル層(10)は半導体発光素子(2)及び配線導体(3,4)と強固に密着する。
【0026】更に、メタロキサンゲル層(10)外側を光透過性の封止樹脂(8)で封止して図1に示す半導体発光装置(20)が形成される。封止樹脂(8)は、液状で透明なエポキシ樹脂を成形型(図示せず)に注入した後に、メタロキサンゲル層(10)、配線導体(3,4)の上端部(9a,9b)及びボンディングワイヤ(5,6)をエポキシ樹脂中に浸漬して所定の位置に固定し、エポキシ樹脂を加熱硬化して形成される。
【0027】前記製法で形成された半導体発光装置(20)の配線導体(3,4)間に電圧を印加し半導体発光素子(2)に通電して半導体発光素子(2)を発光させると、半導体発光素子(2)から照射される光は、メタロキサンゲル層(10)内を通過した後、封止樹脂(8)の外部に放出される。このとき、半導体発光素子(2)から放射された青色光成分の一部がメタロキサンゲル層(10)内の蛍光体(10a)によって波長の長い黄色光に波長変換され、波長変換されない半導体発光素子(2)からの青色光成分と混合して白色光となり、封止樹脂(8)の先端部に形成されたレンズ部(8a)によって集光されて半導体発光装置(20)の外部に放出される。
【0028】本実施の形態では、半導体発光素子(2)の発光波長と蛍光体(10a)の励起波長とがほぼ一致するため、波長変換効率の高い明るい半導体発光装置が得られる。また、メタロキサンゾルに混合する蛍光体(10a)粉末量を調整し、メタロキサンゲル層(10)内の分布濃度を変更することにより半導体発光装置(20)の発光色の色調を調整することができる。更に、蛍光体(10a)の製造時に配合する原料の添加量を調整し蛍光体(10a)の結晶構造を一部変更して発光波長の分布をシフトすることも可能である。このようにすれば半導体発光装置(20)の発光色を更に異なる色調に調整することができる。例えばGa(ガリウム)の添加量を多くすると長波長側にシフトすることができる。」

(f)【図1】(第9頁左上欄)





(g)【図5】(第9頁下段)





3.検討

(1)引用例に記載された発明
上記引用例には、「一対の配線導体と、該一対の配線導体の一方の端部に固着された半導体発光素子と、前記半導体発光素子を被覆する光透過性のメタロキサンゲル層とを備えた半導体発光装置において、前記メタロキサンゲル層は、前記半導体発光素子から照射される青色光に対して光透過性を有し、且つ前記半導体発光素子から照射される青色光を吸収して黄色光に変換する蛍光体を含み、且つ金属アルコキシドの加水分解重合により得られたメタロキサンゾル又は金属アルコキシドと有機樹脂との無機・有機複合体の加水分解重合により得られたメタロキサンゾル又はセラミック前駆体ポリマーから成るメタロキサンゾルによって形成されると共に、前記半導体発光素子と前記配線導体とを強固に密着し、前記蛍光体は、一般式が(Y_(1-x),Gd_(x))_(3)(Al_(1-y),Ga_(y))_(5)O_(12):Ce_(z),Pr_(w)で表され、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.001≦z≦0.5及び0.001≦w≦0.5であることを特徴とする半導体発光装置」が記載され(摘示(a)の【請求項1】参照)、当該「金属アルコキシド」として、「Al(OCH_(3))_(3)、Al(OC_(2)H_(5))_(3)、Al(iso-OC_(3)H_(7))_(3)、Al(OC_(4)H_(9))_(3)」を使用することも記載されている(摘示(a)の【請求項2】参照)。
そして、引用例には、上記「メタロキサンゲル層」が「メタロキサンゾルを前記半導体発光素子の融点よりも低い温度で乾燥・加熱硬化して形成された」ものであり、「メタロキサン(metaloxane)結合を主体とする透明な固形の金属酸化物」であることも記載されており(摘示(a)の【請求項4】及び【請求項5】参照)、さらに当該「半導体発光素子の融点よりも低い温度で乾燥・加熱硬化して形成」することが、「対象物に塗布し空気中で放置乾燥して固化(ゲル化)させた後に」「半導体発光素子・・の融点よりもはるかに低い温度である170℃前後で加熱硬化する」ことであることも記載されている(摘示(d)の【0020】参照)。
また、引用例には、「メタロキサンゾルを前記半導体発光素子の融点よりも低い温度で乾燥・加熱硬化して形成された」「メタロキサンゲル層(10)外側を光透過性の封止樹脂(8)で封止して図1に示す半導体発光装置(20)が形成される。封止樹脂(8)は、液状で透明なエポキシ樹脂を成形型(図示せず)に注入した後に、メタロキサンゲル層(10)、配線導体(3,4)の上端部(9a,9b)及びボンディングワイヤ(5,6)をエポキシ樹脂中に浸漬して所定の位置に固定し、エポキシ樹脂を加熱硬化して形成される」ことも記載されている(摘示(f)の【0025】及び【0026】参照)。
なお、上記「一般式が(Y_(1-x),Gd_(x))_(3)(Al_(1-y),Ga_(y))_(5)O_(12):Ce_(z),Pr_(w)で表され」る「蛍光体」は、「無機蛍光体」であることが当業者に自明である。
してみると、上記引用例には、上記(a)ないし(g)の記載からみて、
「半導体発光素子、半導体発光素子から照射される青色光に対して光透過性を有し、且つ前記半導体発光素子から照射される青色光を吸収して黄色光に変換する無機蛍光体を含み、かつAl(OCH_(3))_(3)、Al(OC_(2)H_(5))_(3)、Al(iso-OC_(3)H_(7))_(3)、Al(OC_(4)H_(9))_(3)などの金属アルコキシドの加水分解重合により得られたメタロキサンゾルの170℃程度での加熱硬化によって形成される半導体発光素子を被覆するためのメタロキサンゲル層及び封止樹脂とを含む半導体発光装置において、前記封止樹脂がメタロキサンゲル層の表面を封止している半導体発光装置」
に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(2)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「半導体発光素子」、「半導体発光素子から照射される青色光に対して光透過性を有し、且つ前記半導体発光素子から照射される青色光を吸収して黄色光に変換する・・層」及び「封止樹脂」は、それぞれ、本願発明における「発光素子」、「発光素子からの光の少なくとも一部を吸収し発光する発光膜」及び「樹脂」に相当し、また、引用発明における「無機蛍光体」及び「半導体発光装置」は、それぞれ、本願発明における「無機蛍光体」及び「発光装置」に相当する。
そして、引用発明における「メタロキサンゲル」は、メタロキサンゲル層を半導体発光素子などと強固に密着させる(摘示(e)【0025】参照)とともに、その層中で蛍光体粒子を固着させるものであることが明らかであるから、本願発明における「バインダ部材」及び「バインダ部材はゲル状であり」に相当する。
してみると、本願発明と引用発明とは、
「発光素子と、前記発光素子からの光の少なくとも一部を吸収し発光する発光膜と、樹脂と、を備える発光装置であって、
前記発光膜は、少なくとも無機蛍光体とバインダ部材とで構成され、
前記バインダ部材はゲル状であることを特徴とする発光装置。」
で一致し、以下の2点で一応相違する。

相違点1:「発光膜」の「バインダ部材」につき、本願発明では「前記バインダ部材は少なくとも金属元素の酸化水酸化物を含有し、前記金属元素の酸化水酸化物は、アルミニウムの酸化水酸化物、若しくはイットリウムの酸化水酸化物であり、前記アルミニウムの酸化水酸化物は、AlOOHの化学式で表され、ベーマイト構造を有し、又は、(AlOOH)・xH_(2)Oの化学式で表され、擬ベーマイト構造を有し、前記イットリウムの酸化水酸化物は、YOOH・xH_(2)Oの化学式で表され」るものであるのに対し、引用発明では「Al(OCH_(3))_(3)、Al(OC_(2)H_(5))_(3)、Al(iso-OC_(3)H_(7))_(3)、Al(OC_(4)H_(9))_(3)などの金属アルコキシドの加水分解重合により得られたメタロキサンゾルの170℃程度での加熱硬化によって形成される半導体発光素子を被覆するためのメタロキサンゲル」である点
相違点2:「発光膜」の「バインダ部材」につき、本願発明では「空隙を有し、前記空隙は前記樹脂により埋められている」のに対し、引用発明では、空隙の有無及び空隙が樹脂により埋められているか否かにつき、特定されていない点

(3)各相違点に係る検討

ア.相違点1について
上記相違点1につき検討すると、引用発明の「メタロキサンゲル」は、上記のとおり、「(アルミニウムの)金属アルコキシドの加水分解重合により得られたメタロキサンゾルの170℃程度での加熱硬化によって形成される」ものである。
そして、アルミニウムのアルコキシドからメタロキサンゲルを加水分解重合及び加熱硬化により形成した場合、70℃以下の温度でのアルコキシドの加水分解重合により水酸化アルミニウム又はその初期重合物を含むメタロキサンゾルが形成され、さらに生成したメタロキサンゾルを150?300℃の範囲で加熱硬化することによりα-AlO(OH)なる化学式で表されるベーマイトが形成されることは、当業者の周知技術である(必要ならば下記参考文献の第249?250頁「3・2・17[214]水酸化アルミニウム」の欄及び特にその欄中の「製法」の部分参照。)し、また、生成したベーマイトが300℃以下の温度で空気中で安定に存在することも当業者に周知の事項である(必要ならば下記参考文献の第248頁「図3.16」など参照)。
してみると、引用発明における上記方法で形成したメタロキサンゲルは、170℃程度の温度でメタロキサンゾルを加熱硬化してメタロキサンゲルを形成し、それ以上の温度への加熱は行っていないから、形成されたメタロキサンゲルは、α-AlO(OH)なる化学式で表されるベーマイト構造を有するものと理解するのが自然である。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点であるとはいえない。

参考文献:日本化学会編「新実験化学講座8 無機化合物の合成[I]」昭和58年2月20日(初版第3刷)、丸善株式会社発行、第247?251頁

イ.相違点2について
上記相違点2につき検討すると、引用発明におけるメタロキサンゲル層の形成方法は、蛍光体粒子などを添加混合したメタロキサンゾル組成物を発光素子を被覆するように適用した上で加熱硬化する(上記摘示(e)【0025】参照)点で本願発明の発光膜の形成方法と同一であり、加熱条件についても、上記ア.で示したベーマイト生成範囲内である170℃程度であるから、引用発明におけるメタロキサンゲル(層)においても空隙を有するものと理解するのが自然である。
また、引用発明における「封止樹脂」は、封止が微小な被封止部材の変形・破損及び部材間の位置関係などの装置構造の変化などを防止するためになされるものであることから、微小な空隙・凹部などに確実に侵入することができる程度の十分に低い粘度を有するものを使用すべきであることが当業者の技術常識である。
そして、引用発明では、上記のとおり空隙を有するものと認められる加熱硬化されたメタロキサンゲル層の表面に対して型内の液状封止樹脂の表面に接触させて沈降させるようにして浸漬した後、封止樹脂を硬化してメタロキサンゲル層表面を被覆・封止しているのである(摘示(e)【0026】参照)から、上記十分に低い粘度を有する液状の封止樹脂は、メタロキサンゲル層の空隙部に侵入して、さらに硬化することにより、メタロキサンゲル層の空隙部を埋めているものと理解するのが自然である。
してみると、引用発明においても、メタロキサンゲル(層)は空隙を有し、その空隙は封止樹脂により埋められているものと認められる。
したがって、上記相違点2についても、実質的な相違点であるとはいえない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本願発明と引用発明とは実質的な相違がなく同一であり、本願発明は、上記引用例に記載された発明である。

4.審判請求人の主張について
なお、審判請求人は、平成25年9月17日付け意見書において、
(a)「(1)刊行物1では、メタロキサンゲル層が半導体発光素子を被覆している構成が記載されています。また刊行物1には、「金属アルコキシド」として、「Al(OCH_(2))_(3)、Al(OC_(2)H_(5))_(3)、Al(iso-OC_(3)H_(7))_(3)、Al(OC_(4)H_(9))_(3)」が記載されています。また、加熱温度として「170℃前後で加熱硬化」することが記載されています。
(2)審判官殿は、「Al(OCH_(3))_(3)、Al(OC_(2)H_(5))_(3)、Al(iso-OC_(3)H_(7))_(3)、Al(OC_(4)H_(9))_(3)などの金属アルコキシドの加水分解重合により得られたメタロキサンゾルによって形成される」「メタロキサンゲル」であると指摘されます。
(3)まず、Al(OCH_(3))_(3)、Al(OC_(2)H_(5))_(3)、Al(iso-OC_(3)H_(7))_(3)、Al(OC_(4)H_(9))_(3)は、加水分解により水酸化アルミニウムの状態のままであると思われます。ここで、下記のように加水分解によって、水酸化アルミニウムとメタノールが形成されます。
Al(OCH_(3))_(3)+3H_(2)O → Al(OH)_(3) + 3CH_(3)OH↑
次に刊行物1に記載されているように「170℃前後の加熱」であると、メタノール(CH_(3)OH)が蒸発します。メタノールの沸点は「64.7℃」です。よってメタノールが蒸発するだけで、水酸化アルミニウム自体はそのままの組成を維持しているものと思われます。
ちなみに、Al(OCH_(3))_(3)以外のAl(OC_(2)H_(5))_(3)、Al(iso-OC_(3)H_(7))_(3)、Al(OC_(4)H_(9))_(3)については、メタノールに変わって、エタノール(C_(2)H_(5)OH:沸点78.37℃)、プロパノール(C_(3)H_(7)OH:沸点97.15℃)、ブタノール(C_(4)H_(9)OH:沸点117℃)が蒸発します。
(4)これに対し本願発明は、さらに加熱を加えているため、酸化水酸化物のゲル状態となっています(本願明細書の[化学式7]参照)。実施例には「240℃、30min(分)」で本硬化を行ったことが記載されています(本願明細書の段落【0256】参照)。また、水酸化物から酸化水酸化物になる際に架橋等がなされています。
Al(OC_(3)H_(7))_(3)+3H_(2)O → Al(OH)_(3) + 3C_(3)H_(7)OH↑
加熱
Al(OH)_(3) → AlOOH + H_(2)O↑
なお、本願発明のゲルを更に加熱すると「Al_(2)O_(3)」が生成されます。この化学式は下記の通りです。
加熱
2AlOOH → Al_(2)O_(3) + H_(2)O↑
以上から、刊行物1には「水酸化アルミニウム」しか開示されていないのに対し、本願は、さらに一歩進んだ「酸化水酸化物」である点で、両者は相違します。」
及び
(b)「(5)さらに、本願は酸化水酸化物のゲル状のものに空隙が形成されることを確認し、その空隙に樹脂を含浸させることで、光取り出し効率を向上させるという新たな作用効果も見出しております。このような構成及びこれによって得られる顕著な効果は、刊行物1には記載も示唆もされていません。」
と主張する(意見書「第4 理由3について」の欄)。
しかるに、上記(a)の主張は、上記3.(3)ア.で説示したとおりの理由により、明らかに当を得ないものである。
次に、上記(b)の主張につき本願明細書(平成25年9月17日付け手続補正後のもの、以下同)及び図面の記載に基づき検討すると、本願明細書には、硬化後のバインダ部材に空隙が生じることは多数記載されている(【0013】、【0053】、【0068】、【0305】など)ものの、いかなる構造(独立又は連通、ネットワーク状など)・形状(クラック状、管状など)の空隙が発生するのか及びいかなる作用機序により当該空隙が発生するのかにつき、当業者が客観的に認識することができる記載又は示唆はない。
また、本願明細書には、上記空隙の存在により光の取り出し効率が低下する理由として、空隙には空気が含まれており、無機バインダと空気との屈折率の差により界面で反射が起きることが挙げられている(【0399】参照)。
しかしながら、そうであるならば、埋設する樹脂についても無機バインダ(アルミニウム酸化水酸化物)と略同等の屈折率を有するもの以外の樹脂につき同様の現象が生起することが当業者に自明であるから、極めて限られた樹脂であることを要するところ、本願明細書には、どのような埋設樹脂を選択するのか記載又は示唆されていないし、あるシリコーン樹脂を埋設樹脂として使用した場合につき「比較例5」とされ(【0397】?【0402】参照)、本願発明の範囲外のものであることが示唆されている。
なお、本願明細書には、無機バインダ層の表面の少なくとも一部を被覆するように樹脂層を設けることにより、光取り出し効率の向上が図られることが記載されている(【0075】参照)が、本願明細書には、無機バインダの空隙はそのままに樹脂を被覆した場合とその空隙に樹脂を含浸させた上で被覆した場合との光取り出し効率の向上に係る効果上の差異を客観的に認識することができる記載又は示唆もない。
さらに、本願明細書には、従来技術として、樹脂を蛍光体のバインダとした場合には樹脂が経時劣化し、また、シリカを蛍光体のバインダとした場合であっても経時的に着色劣化し、光の取り出し効率及び発光出力が低下することを問題点とし(【0004】及び【0009】?【0011】参照)、本願発明では、光の取り出し効率を改善し、発光素子からの紫外線等により劣化し難い蛍光被膜を有する信頼性に優れた発光装置を提供することを課題にしている(【0012】参照)ところ、上記バインダ部材の空隙が発光素子部又はその近傍まで到達するように連通している場合において、樹脂の含浸により樹脂が発光素子部又はその近傍で硬化するものとなり、その発光素子部又はその近傍に存する樹脂は経時劣化し、光の取り出し効率及び発光出力が低下するものと理解するのが自然であって、本願発明に係る解決課題に対応する効果を奏し得ないものと認められる。
してみると、本願明細書の記載に基づいて、「酸化水酸化物のゲル状のものに空隙が形成されることを確認」されたこと及び「その空隙に樹脂を含浸させること」と「光取り出し効率を向上させるという新たな作用効果」との因果関係につき、当業者が客観的に認識することができるものとはいえない。
したがって、上記(b)の主張は、本願明細書(及び図面)の記載に基づかないものであり、当を得ないものである。
よって、審判請求人の上記主張は、いずれも当を得ないものであり、採用することができず、上記3.の当審の検討結果を左右するものではない。

5.当審の判断のまとめ
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではない。

第4 むすび
結局、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条の規定により特許をすることができないものであるから、その余につき検討するまでもなく、本願は、特許法第49条第2号に該当し、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-12 
結審通知日 2013-11-19 
審決日 2013-12-02 
出願番号 特願2005-503615(P2005-503615)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (C09K)
P 1 8・ 537- WZ (C09K)
P 1 8・ 536- WZ (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 浩子  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 菅野 芳男
橋本 栄和
発明の名称 発光装置  
代理人 豊栖 康司  
代理人 豊栖 康弘  
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