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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1283744
審判番号 不服2012-22969  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-20 
確定日 2014-02-04 
事件の表示 特願2007-305556「渉外営業支援システム及びその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月11日出願公開、特開2009-129312、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成19年11月27日の出願であって,平成24年5月15日付けで拒絶理由が通知され,平成24年7月12日に意見書の提出とともに手続補正がされ,平成24年9月4日付けで拒絶査定がされ,平成24年11月20日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成24年7月12日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
(以下「本願発明」という。)
「営業員が訪問先で携帯端末を用いて参照するためのウェブサイトを提供する渉外営業支援システムであって,
顧客情報及び持出用事前登録データ,並びに該顧客情報に関連付けられた顧客の取引情報を格納するセキュリティ保護された,イントラネット内にある第1の格納手段と,
所望の顧客情報と持出用事前登録データとを訪問先で参照するための選択指示を受け取る事前登録手段と,
前記選択指示により選択された顧客情報及び持出用事前登録データと,前記顧客情報及び前記持出用事前登録データに対応する前記顧客の取引情報とを前記第1の格納手段から抽出し,前記抽出された顧客情報をマスキングして,前記持出用事前登録データ及び前記顧客の取引情報と共に,イントラネット外にある第2の格納手段に格納する顧客情報マスキング手段と,
前記第2の格納手段に格納された前記顧客情報,前記持出用事前登録データ,及び前記顧客の取引情報を表示するための前記ウェブサイトを提供するウェブサイト提供手段と
を備えることを特徴とする渉外営業支援システム。」

第3 原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由は,以下のとおりである。
【拒絶理由通知】
「この出願の請求項1-9に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2001-338228号公報
2.特開2007-241917号公報
3.特開2002-99707号公報
4.特開2004-54304号公報
5.特開2006-106965号公報
6.特開2007-4694号公報
7.特開2006-330794号公報
8.特開2003-167997号公報
9.特開2004-110152号公報
備考:
上記刊行物1-3には,営業担当者が顧客の情報を参照するためのWebサーバを設けることが記載されている。持ち出す情報を事前に登録すること(上記刊行物4)や,マスキング処理を行うこと(上記刊行物5,6),件数を制限すること(上記刊行物7)は,当業者にとって容易である。また,管理者向けの確認機能や,シミュレーション機能は,いずれも当業者にとって周知技術(必要ならば,それぞれ上記刊行物8,9等参照。)であり,当業者が必要に応じて採用する事項である。
(以下略)」
【拒絶査定】
「この出願については,平成24年5月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって,拒絶をすべきものです。
なお,意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
備考:
セキュリティ保護を要する情報を,イントラネット内の格納手段に配するとともに,外部から利用する情報を,イントラネット外の格納手段に配することは,例えば,特開2000-76218号公報,特開2002-140239号公報,特開2002-24104号公報,特開2002-149465号公報にも記載のように,当業者が普通に採用する事項に過ぎない。
(以下略)」

第4 当審の判断
1.引用例の記載事項
(1)引用例1について
原査定の拒絶の理由で引用された「特開2001-338228号公報」(以下「引用例1」という。)には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例1摘記事項」という。)
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,営業活動を支援するための情報を電気通信網を介して提供する営業支援システムに関する。」
(イ)「【0016】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る営業支援システムは,図1に示すように,ポータルWebサーバ10と,第1Webサーバ20と,第2Webサーバ30と,第3Webサーバ40とから構成されており,互いに第1ネットワーク50を介して接続されている。また,第1Webサーバ20は,第2ネットワーク51を介してマスターデータベース60に接続されている。また,ポータルWebサーバ10は,ストレージ部11と,Webサーバ部12とから構成されている。また,第1ネットワーク50は,ゲートウエイ52を介してインターネットに接続されている。
【0017】以下,各部を具体的に説明する。ポータルWebサーバ10のストレージ部11は,ポータルサイトを構成するWebページを格納している。ここでポータルサイトとは,多数の関連リンクを集積したWebページを意味している。Webサーバ部12は,ゲートウエイ52と第1ネットワーク50とを介してインターネットから到来したアクセス要求を受けて,ストレージ部11に格納されているWebページを提供する。
【0018】第1Webサーバ20は,本発明の第1閲覧サーバに相当しており,事前に設定されたルールに従ってマスターデータベース60から顧客データの抽出を行い,第1営業支援情報としてデータベース(第1データベース)に蓄積している。また,この第1Webサーバ20は,ゲートウエイ52と第1ネットワーク50とを介してインターネットから到来したアクセス要求を受けて,蓄積した第1営業支援情報を提供する。
【0019】ここで,抽出のためのルールは,営業登録情報としての顧客名及び顧客の住所等の連絡先情報を選択的に取得するものである。本実施の形態においては,さらにこの第1営業支援情報としてマスターデータベース60から抽出されたデータに関連づけて,営業担当者によって入力される営業実績データや,顧客窓口で受け付けられた応対履歴(顧客応対情報)等が設定されている。」
(ウ)「【0022】ゲートウエイ52は,インターネットを介して到来した情報の取得要求に関するデータ等を第1ネットワークに伝達し,また第1ネットワークから外部のネットワークに対して送信すべきデータをインターネットを介して送信する。このゲートウエイ52は,また,いわゆるファイアウオールとしても動作しており,例えば営業担当者の所持する携帯型パーソナルコンピュータのIPアドレスを事前に管理して,当該IPアドレスからの要求にのみ応じて,当該IPアドレスに対するデータのみをインターネットを介して送信する。」
(エ)「【0024】具体的に,本実施の形態のポータルサイトを構成するWebページ上のインタフェース画像は,図2に示すように,第1Webサーバ20へのアクセス動作に関連づけられた複数の第1ボタンオブジェクト(a1?a5)が配置されている。この第1ボタンオブジェクトの組(第1ボタン群)Aには,営業活動情報と,顧客に関する文書情報,顧客の契約に関する情報(顧客契約書情報),顧客外部情報,顧客からの反応(「お客様の声」)等にリンクされたものがある。」

そうすると,引用例1には,以下の発明が記載されている。
(以下「引用例1発明」という。)
「営業活動を支援する営業支援システムであって,
ポータルWebサーバ10と,第1Webサーバ20とが第1ネットワーク50を介して接続され,第1Webサーバ20は,第2ネットワーク51を介してマスターデータベース60に接続され,ポータルWebサーバ10は,ストレージ部11と,Webサーバ部12とから構成され,第1ネットワーク50は,ゲートウエイ52を介してインターネットに接続されるものであり,
Webサーバ部12は,ゲートウエイ52と第1ネットワーク50とを介してインターネットから到来したアクセス要求を受けて,ストレージ部11に格納されているWebページを提供し,
第1Webサーバ20は,事前に設定されたルールに従ってマスターデータベース60から顧客データの抽出を行い,第1営業支援情報としてデータベース(第1データベース)に蓄積し,ゲートウエイ52と第1ネットワーク50とを介してインターネットから到来したアクセス要求を受けて,蓄積した第1営業支援情報を提供するものであり,
抽出のルールは,営業登録情報としての顧客名及び顧客の住所等の連絡先情報を選択的に取得するものであり,
ゲートウエイ52は,インターネットを介して到来した情報の取得要求に関するデータ等を第1ネットワークに伝達し,また第1ネットワークから外部のネットワークに対して送信すべきデータをインターネットを介して送信し,営業担当者の所持する携帯型パーソナルコンピュータの要求に応じたデータのみをインターネットを介して送信するものであり,
ポータルサイトを構成するWebページ上のインタフェースで,第1Webサーバ20へのアクセス動作に関連づけられた複数の第1ボタンオブジェクト(a1?a5)が配置され,第1ボタンオブジェクトの組(第1ボタン群)Aには,顧客に関する文書情報,顧客の契約に関する情報(顧客契約書情報)等にリンクする,
営業支援システム。」

(2)引用例2について
原査定の拒絶の理由で引用された「特開2007-241917号公報」(以下「引用例2」という。)には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例2摘記事項」という。)
(ア)「【0001】この発明は,営業担当者の営業活動を支援する営業支援システムに関するものである。」
(イ)「【0006】そこで本発明は,営業担当者以外の第3者による携帯通信端末からのアクセスを防止して機密性の高い顧客情報の漏洩を防止する営業支援システムを提供することを目的とする。」
(ウ)「【0012】本発明によれば,携帯通信端末に固有の固有情報と営業担当者ごとに識別される識別情報とを用いて認証を行うことにより,営業担当者が所有する携帯通信端末からのみ営業支援システムにアクセスすることができるので,仮に第3者に識別情報が漏洩,盗難されても,第3者が所有する携帯通信端末からアクセスすることはできず,機密性の高い顧客情報の漏洩を防止することができる。」
(エ)「【0054】<顧客情報>
訪問予定の顧客,若しくは訪問予定外の診断,補修,リフォーム等が必要と思われる顧客の顧客情報を営業担当者Pが参照する場合,又は顧客訪問後に営業担当者Pが営業活動の情報を登録する際に顧客の検索を行う場合には,図5(c)の「メニュー」画面上で,「顧客情報」を選択決定して,図6(a)に示すような「参照顧客検索」画面を表示する。営業担当者Pは,参照したい顧客情報に対応する「お客様名」,「電話番号」,「邸コード」,「メニュー」の各検索条件項目の少なくとも1つの入力欄に各項目に対応する情報を入力して「検索」表示を選択決定する。
【0055】尚,図6(a)に示すように,「メニュー」の検索条件項目には「▼」のマークが付されたプルダウンメニューが備えられ,「太陽光発電」,「バス洗面トイレ」,「塗装」,・・・などの各項目と引渡し日からの築年数とを組み合わせた各営業項目を選択するようになっている。また,検索条件項目を複数選択して入力した場合には,その検索条件項目がAND条件(論理積)で検索されるようになっている。
【0056】検索条件項目に入力された入力情報は認証用サーバ12に送信され,さらに,この入力情報が送受信手段121,131を介して営業管理サーバ13の制御手段132aに送信され,制御手段132aは管理用データベース133内の該当する顧客情報を検索して,認証用サーバ12にその顧客情報を送信する(図2を参照)。
【0057】そして,認証用サーバ12は,送信された顧客情報に基づいて該当件数などの情報を抽出すると共にWebページを生成して携帯電話11に送信する。
【0058】これによって,図6(b)に示すように,携帯電話11には「検索結果」画面が表示され,該当する件数,邸コード(画面上の「222222」,「222221」),及び各邸コードに対応する顧客の氏名が表示される。
【0059】そして,営業担当者Pが参照したい顧客の邸コードにカーソルを合わせて決定ボタン116eを押下げることにより,営業担当者Pが参照したい顧客を特定する特定情報が認証用サーバ12に送信され,認証用サーバ12はその特定情報に基づいて営業管理サーバ13から送信された顧客情報を抽出すると共に抽出した情報に基づいてWebページを生成して携帯電話11に送信する(図2を参照)。
【0060】これによって,図6(c)に示すように,携帯電話11には「顧客情報」画面が表示される。この「顧客情報」画面には,「邸コード」,「入居者名」,「電話番号」,「図面」,「履歴」などの各種項目が表示される。
【0061】また,「電話番号」項目には「発信」表示が備えられ,この表示の選択決定により参照している顧客情報の顧客に電話することができる。
【0062】一方,「図面」項目には「参照」表示が備えられ,この表示を選択決定することにより,認証用サーバ12は営業管理サーバ13から送信された図面情報を抽出すると共に抽出した情報に基づいてWebページを生成して携帯電話11に送信する。
【0063】この図面に関するWebページには,図7(a)に示すように,顧客の邸の見取り図が表示される。また,表示された見取り図を決定ボタン116eにより選択決定すると,図7(b)に示すような拡大縮小画面に遷移する。この画面では,携帯電話11の接続ボタン116bの押下げにより画面右上の「+」,「-」,「□」,・・・などが表示された操作モードを選択して,見取り図の拡大,縮小,スクロールなどの各種操作を行うことができる。尚,画面右下に表示された「取消」表示を携帯電話11の起動ボタン116dの押下げにより選択決定することにより,図6(c)の「顧客情報」画面へ遷移させることができる。
【0064】他方,図6(c)に示すように,「履歴」項目には「参照」表示が備えられ,この表示を選択決定することにより,認証用サーバ12は営業管理サーバ13から送信された履歴情報を抽出すると共に抽出した情報に基づいてWebページを生成して携帯電話11に送信する。
【0065】これによって,図8に示すように,携帯電話11には「履歴情報一覧」画面が表示される。
【0066】この「履歴情報一覧」画面には,「見込情報」,「DM発送情報」,「受付履歴情報」,「リフォーム情報」,「訪問履歴情報」の各項目が表示されていると共に,その各項目に対応する見込み発掘日やダイレクトメールの発送日,受付依頼の受付日とその受付内容,リフォームの完工日とリフォーム部分を示すメニュー,訪問日とその内容がそれぞれ表示される。
【0067】営業担当者Pは,この各項目に表示された年月日を携帯電話11の4方向ボタン116cにより選択でき,営業担当者Pが参照したい項目の年月日を選択決定することにより,認証用サーバ12は営業管理サーバ13から送信された履歴項目の情報を抽出すると共に抽出した情報に基づいてWebページを生成して携帯電話11に送信する。
【0068】これにより,携帯電話11には,図9(a)?(e)に示すような各履歴項目の詳細情報に関するWebページ画面のいずれか1つが表示されるようになっている。」

そうすると,引用例2には,以下の発明が記載されている。
(以下「引用例2発明」という。)
「営業担当者の営業活動を支援する営業支援システムであって,
営業担当者以外の第3者による携帯通信端末からのアクセスを防止して機密性の高い顧客情報の漏洩を防止する営業支援システムを提供すべく,携帯通信端末に固有の固有情報と営業担当者ごとに識別される識別情報とを用いて認証を行うものであり,
訪問予定の顧客の顧客情報を営業担当者Pが参照する場合,携帯電話の「メニュー」画面上で,「顧客情報」を選択決定し「参照顧客検索」画面を表示し,参照したい顧客情報に対応する「お客様名」,「電話番号」,「邸コード」,「メニュー」などの情報を入力して「検索」表示を選択決定すると,入力情報は認証用サーバ12に送信され,営業管理サーバ13の制御手段132aに送信され,管理用データベース133内の該当する顧客情報を検索して,認証用サーバ12にその顧客情報を送信し,認証用サーバ12は,送信された顧客情報に基づいて該当件数などの情報を抽出すると共にWebページを生成して携帯電話11に送信し,携帯電話に「検索結果」画面が表示され,該当する件数,邸コード及び対応する顧客の氏名が表示され,
営業担当者Pが参照したい顧客の邸コードにカーソルを合わせて決定ボタン押下すると顧客を特定する特定情報が認証用サーバ12に送信され,認証用サーバ12はその特定情報に基づいて営業管理サーバ13から送信された顧客情報を抽出すると共に抽出した情報に基づいてWebページを生成して携帯電話11に送信し,携帯電話11には「顧客情報」画面が表示され,「顧客情報」画面には,「邸コード」,「入居者名」,「電話番号」,「図面」,「履歴」などの各種項目が表示され,「履歴」項目には「参照」表示が備えられ,
この表示を選択決定することにより,認証用サーバ12は営業管理サーバ13から送信された履歴情報を抽出すると共に抽出した情報に基づいてWebページを生成して携帯電話11に送信し,携帯電話11には「履歴情報一覧」画面が表示され,
「履歴情報一覧」画面には,「見込情報」,「DM発送情報」,「受付履歴情報」,「リフォーム情報」,「訪問履歴情報」の各項目が表示され,営業担当者Pが,各項目に表示された年月日を選択でき,選択決定することにより,認証用サーバ12は営業管理サーバ13から送信された履歴項目の情報を抽出すると共に抽出した情報に基づいてWebページを生成して携帯電話11に送信し,携帯電話11には,各履歴項目の詳細情報に関するWebページ画面が表示される営業支援システム。」

(3)引用例3について
原査定の拒絶の理由で引用された「特開2002-99707号公報」(以下「引用例3」という。)には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例3摘記事項」という。)
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,営業活動支援方法,その営業活動支援方法のプログラムを記録した記録媒体,および営業活動支援システムに関する。」
(イ)「【0037】次に,これらの各ページについて説明する。営業員が特定の顧客訪問の前に,まず,携帯端末4の電源をONすると,自動的に携帯端末4から営業員支援コンピュータ1へアクセスされ,携帯端末4のディスプレイ52には,トップページ61が表示される。このトップページ61は図示されていないが,携帯端末4を携行する当該営業員のIDとパスワードをチェックする画面であり,営業員が携帯端末4のキーボード53からこれらを入力することにより,営業員支援コンピュータ1でチェックが行なわれ,これらが正しいと,図6(a)のメインメニューページ62が表示される。そこで,営業員が,顧客に関する情報を取得したい場合に,「2.営業情報支援」を選択すると,図6(c)の営業情報支援メニューページ64が表示され,更に,「2.得意先照会」を選択すると,図7(c)の得意先紹介ページ70(その1)が表示され,得意先コードを入力すると,図7(d)の得意先紹介ページ70(その2)が表示され,得意先の詳細情報を知ることができる。同様にして,図6(b)の営業情報支援メニューページ64で,「1.在庫照会」を選択して,表示される画面に従って商品コードを入力することにより,在庫情報を知ることができる(図7(a),(b)の在庫照会ページ69)。尚,得意先コードや商品コードを入力する方法として,これらのコードを直接入力する方法の他,ドロップダウンメニューを利用して,このドロップダウンメニューに掲載されたコードの中から選択する方法を用いることもできる。
【0038】また,営業員が顧客訪問の前に,自らが担当する特定顧客に対する商談経過状況を知りたい場合,図6(a)のメインメニューページ62で,「3.営業活動支援」を選択すると,図6(d)の営業活動支援メニューページ65が表示されるので,「1.商談経過照会」を選択すると,図8(a)の商談経過照会ページ71(その1)が表示され,得意先コードおよび案件の中から適合するものを選ぶと,図8(b)の商談経過照会ページ71(その2)が表示されるので,自らが担当する特定顧客に対する商談経過を知ることができる。同様にして,自らの営業活動に対する各種の分析結果を知りたい場合に,図6(d)の営業活動支援メニューページ65で,「2.定期訪問分析照会」を選択すると,図8(c)の定期訪問分析照会ページ72が表示され,また,図6(d)の営業活動支援メニューページ65で,「3.活動時間分析照会」を選択すると,図8(d)の活動時間分析照会ページ73が表示されるので,自らの営業活動に対する各種の分析結果を知ることができる。尚,営業員が顧客訪問に際し,上述したWebページで必要と思われるWebページ情報を複数ページ分まとめて,顧客訪問の前に携帯端末4のメモリーにダウンロードしておくことも可能である。このようにすることにより,顧客訪問時に必要なデータを速やかに参照することができると共に,顧客訪問時に,Webページへの無線通信状態悪化によるアクセス不良が生じたときの,情報取得不能状態を回避することができる。」

そうすると,引用例3には,以下の発明が記載されている。
(以下「引用例3発明」という。)
「営業員が,特定の顧客訪問の前に,得意先コード入力による得意先詳細情報や,得意先コード及び案件選択による特定顧客の商談経過情報を,携帯端末にダウンロードできる営業活動支援システム。」

(4)引用例4について
原査定の拒絶の理由で引用された「特開2004-54304号公報」(以下「引用例4」という。)には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例4摘記事項」という。)
(ア)「【課題】販売担当者がターゲティング対象とする顧客を登録することにより,該顧客に応じた最適な販売支援情報を販売担当者に対し提供できるようにする。
【解決手段】サーバ装置20は,入力受付手段20a,抽出手段20b,送信手段20cを有し,販売担当者11が使用する端末装置10にネットワーク1を介して接続され,顧客に関する個別情報を登録した顧客DB21,商談案件に関する事例を前記個別情報に関連付けて登録した事例DB22にアクセス可能とする。サーバ装置20は,販売担当者11がターゲティング対象とする顧客情報の入力を端末装置10から受け付け,受け付けた顧客に応じた個別情報を顧客DB21から抽出するとともに,該個別情報に応じた事例を事例DB22から抽出する。サーバ装置20は,前記抽出した個別情報と事例とを含む顧客に応じた最適ツール30(販売支援情報)を生成し,生成した最適ツール30を端末装置10に送信する。」

そうすると,引用例4には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例4記載事項」という。)
「販売担当者の端末装置がネットワークを介して顧客に関する個別情報を登録した顧客DBにアクセス可能であり,サーバ装置は,販売担当者が対象とする顧客情報を端末装置から受け付けると個別情報を顧客DBから抽出し,最適な販売支援情報を生成して端末装置に送信すること。」

(5)引用例5について
原査定の拒絶の理由で引用された「特開2006-106965号公報」(以下「引用例5」という。)には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例5摘記事項」という。)
(ア)「【0006】 しかしながら,従来の販売管理システムにおいては,以下のような問題点があった。 従来,前述の特許文献1に記載されているように,POSレジスタは,顧客が商品を購入するときに,その顧客の個人情報をレジスタの画面上に表示していた。このことにより,店員がその表示内容を参照し,各顧客に対して効果的な接客を行うことを可能にしていたが,その反面,接客に必要のない顧客の個人情報までもが自動的にレジスタ画面に表示されてしまうために,第三者がその画面上の顧客の個人情報を覗く機会を増加させ,その結果,顧客の個人情報の漏洩に繋がる可能性があった。」
(イ)「【0019】
情報管理サーバ20は,店舗等,または店舗等の依頼を受けて顧客の個人情報の管理業務を行う事業者により管理される情報処理装置であって,顧客に係る種々の情報を蓄積・管理する。この情報管理サーバ20は,例えば,POSシステムのストアコンピュータの機能を備えていてよい。例えば,情報管理サーバ20は,
・顧客の個人情報(氏名,性別,生年月日,住所,郵便番号,電話番号,FAX番号,メールアドレス,ポイントサービスの獲得ポイント数等)
・顧客の商品の購入履歴(品目,購入時期,購入店舗等)
・商品情報(商品のコード情報,商品名,商品の値段)
・販売端末10の画面表示の制御情報
といった顧客に係る各種情報を蓄積・管理する。
ここで,販売端末10の画面表示の制御情報とは,販売端末10による顧客の個人情報の画面表示動作を制御するためのものである。
例えば,この販売端末10の画面表示の制御情報には,
・「個人情報のうち特定の項目(例えば氏名,住所)を隠蔽(マスク)する」
・「個人情報(例えば住所,電話番号)の一部/全部を隠蔽する」
・「個人情報を一定時間のみ表示し,その後,隠蔽する」
といったようなものがある。」

そうすると,引用例5には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例5記載事項」という。)
「接客に必要のない顧客の個人情報がレジスタ画面に表示されることによる顧客の個人情報の漏洩を避けるために,販売端末の画面表示を,個人情報のうち特定の項目をマスクしたり,個人情報の一部/全部をマスクすること。」

(6)引用例6について
原査定の拒絶の理由で引用された「特開2007-4694号公報」(以下「引用例6」という。)には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例6摘記事項」という。)
(ア)「【要約】【課題】データベース2に記憶された個人情報のうち支援端末5の表示器34に表示許可する項目9を簡単に変更,設定,解除可能とする。
【解決手段】各顧客の個人情報を記憶したデータベース2が設けられたデータベースサーバ3に,個人情報の各項目9の表示可否を含む開示条件を記憶する開示条件メモリ10が設けられている。そして,個人情報における開示条件が表示不可と指定された項目をマスクした表示用個人情報42a,42bが作成されて,各支援端末5へ送信され,この支援端末の表示器34に表示される。」

そうすると,引用例6には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例6記載事項」という。)
「個人情報における開示条件が表示不可と指定された項目をマスクした表示用個人情報を作成して各支援端末5へ送信し表示すること。」

(7)引用例7について
原査定の拒絶の理由で引用された「特開2006-330794号公報」(以下「引用例7」という。)には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例7摘記事項」という。)
(ア)「【0010】 本発明の顧客管理装置は,前記電子ファイルに施す保護強度を実現するために,耐タンパー化技術を利用することを特徴とする。これにより,電子ファイルに施すセキュリティを実現することができる。本発明の顧客管理装置は,電子証明書,スマートカード及びICカードのうちの少なくとも一つを利用することによりユーザの顧客情報の利用資格を証明する証明手段をさらに備える。これにより,ユーザの顧客情報利用資格の証明をすることができる。本発明の顧客管理装置は,利用者の有する資格に基づき前記電子ファイル内の顧客情報の利用範囲を制限する制限手段をさらに具備する。」

そうすると,引用例7には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例7記載事項」という。)
「顧客管理装置が,利用者の有する資格に基づき電子ファイル内の顧客情報の利用範囲を制限すること。」

(8)引用例8について
原査定の拒絶の理由で引用された「特開2003-167997号公報」(以下「引用例8」という。)には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例8摘記事項」という。)
(ア)「【要約】【課題】重要事項の説明を必要とする顧客に対してもれなく説明を実施することができ,さらに重要事項の説明を顧客に対して実施したか否かを容易に確認することができる顧客情報管理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】金融商品の取引における顧客情報を管理する顧客情報管理システムであって,顧客情報は,顧客に関する情報である顧客属性情報と,顧客との接触内容である営業日報情報を含み,顧客属性情報は,顧客が金融商品毎の重要事項の説明を必要としているか否かの情報を含み,営業日報情報は,顧客に対して重要事項の説明が実施されたか否かの情報を含み,営業日報情報の保存時に,顧客属性情報と営業日報情報を照合し,顧客が必要としている重要事項の説明が実施されていない場合に通知を行う。」

そうすると,引用例8には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例8記載事項」という。)
「重要事項の説明を顧客に対して実施したか否かを確認することができる顧客情報管理システム。」

(9)引用例9について
原査定の拒絶の理由で引用された「特開2004-110152号公報」(以下「引用例9」という。)には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例9摘記事項」という。)
(ア)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は通信システムに関し,例えば,Webページを利用して,資産運用を行ったり,資産運用のアドバイスを行ったりする場合などに適用して好適なものである。」
(イ)「【0014】図1において,当該ECシステム10は,提案端末13,14と,投資端末15,16と,ネットワーク17と,ECサイト18とを備えている。」
(ウ)「【0025】(A-1-1)ECサイトの内部構成例
図2において,当該ECサイト18は,通信部20と,ユーザ認証部21と,情報収集部22と,ページ生成部23と,ページ読み出し部24と,シミュレーション対応部25と,決済処理部26と,データベース27とを備えている。」
(エ)「【0062】
シミュレーション対応部25は,専門アドバイザ(例えば,U21)が提案した資産配分(提案資産配分)に対応した資産運用を行った場合,所定時間後(例えば,1ヶ月後,3ヶ月後,1年後など)に,その資産保有者の資産状況がどのように変化するかをシミュレーションによって予測する機能を持つ部分である。予測結果はいったんデータベース27に保存され,ページ生成部23によるWebページ(予測ページ)生成の基礎となる。このときページ生成部23が生成した予測ページは,前記PP11,PP12などと同様,特定の資産保有者(ここでは,U11)の個人用WebページPP1の一構成要素となる。」

そうすると,引用例9には,以下の事項が記載されている。
(以下「引用例9記載事項」という。)
「Webページを利用して,資産運用を行ったり,資産運用のアドバイスを行ったりする通信システムであって,ECシステム10は,提案端末13,14と,投資端末15,16と,ネットワーク17と,ECサイト18とを備え,ECサイト18は,通信部20と,ユーザ認証部21と,情報収集部22と,ページ生成部23と,ページ読み出し部24と,シミュレーション対応部25と,決済処理部26と,データベース27とを備え,シミュレーション対応部25は,専門アドバイザが提案した資産配分(提案資産配分)に対応した資産運用を行った場合,所定時間後に,その資産保有者の資産状況がどのように変化するかをシミュレーションによって予測する機能を持つ通信システム。」

2.対比
以下,引用例1発明と本願発明とを対比する。
(ア)引用例1発明は,「ポータルWebサーバ10と,第1Webサーバ20とが第1ネットワーク50を介して接続され,第1Webサーバ20は,第2ネットワーク51を介してマスターデータベース60に接続され,ポータルWebサーバ10は,ストレージ部11と,Webサーバ部12とから構成され,第1ネットワーク50は,ゲートウエイ52を介してインターネットに接続され,Webサーバ部12は,ゲートウエイ52と第1ネットワーク50とを介してインターネットから到来したアクセス要求を受けて,ストレージ部11に格納されているWebページを提供」するものであって,「第1Webサーバ20は,事前に設定されたルールに従ってマスターデータベース60から顧客データの抽出を行い,第1営業支援情報としてデータベース(第1データベース)に蓄積し,ゲートウエイ52と第1ネットワーク50とを介してインターネットから到来したアクセス要求を受けて,蓄積した第1営業支援情報を提供」するものである。
してみると,引用例1発明の,「マスターデータベース60」,「第1Webサーバ20の第1データベース」,及び「ポータルWebサーバ10やゲートウエイ52」は,それぞれ,後記する点で相違するものの,本願発明の,「第1の格納手段」,「第2の格納手段」,及び「ウェブサイト提供手段」に相当する。
(イ)引用例1発明の,「マスターデータベース60」は,第1Webサーバ20が事前に設定されたルールに従って「データベース60」から「顧客データ」の抽出を行って第1営業支援情報としてデータベース(第1データベース)に蓄積されるものであり,ポータルサイトを構成するWebページ上のインタフェースで,第1Webサーバ20へのアクセス動作に関連づけられた複数の第1ボタンオブジェクト(a1?a5)が配置され,第1ボタンオブジェクトの組(第1ボタン群)Aは,「顧客に関する文書情報」,「顧客の契約に関する情報(顧客契約書情報)」等にリンクする。
つまり,引用例1発明の「マスターデータベース60」は,少なくとも第1Webサーバ20により抽出される「顧客データ」であって,「顧客に関する文書情報」や「顧客の契約に関する情報」を有する。
してみると,引用例1発明の「マスターデータベース60」と,本願発明の「第1の格納手段」とは,「顧客情報や顧客情報に関連付けられた顧客の取引情報を格納する」という点で共通する。
(ウ)引用例1発明は,第1Webサーバ20が,事前に設定されたルールに従ってマスターデータベース60から顧客データの「抽出」を行い,第1営業支援情報としてデータベース(第1データベース)に蓄積するものであって,「抽出」のルールは,営業登録情報としての顧客名及び顧客の住所等の連絡先情報を「選択的に取得」するものである。
してみると,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「選択された顧客情報と取引情報とを第1の格納手段から抽出し,第2の格納手段に格納」する手段を有する点で共通する。
(エ)引用例1発明は,第1Webサーバ20の第1営業支援情報をデータベース(第1データベース)に蓄積し,ゲートウエイ52と第1ネットワーク50とを介してインターネットから到来したアクセス要求を受けて,蓄積した第1営業支援情報を提供するものであり,ゲートウエイ52は,インターネットを介して到来した情報の取得要求に関するデータ等を第1ネットワークに伝達し,また第1ネットワークから外部のネットワークに対して送信すべきデータをインターネットを介して送信し,営業担当者の所持する携帯型パーソナルコンピュータの要求に応じたデータのみをインターネットを介して送信するものである。
してみると,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「第2の格納手段に格納された顧客情報や顧客の取引情報を表示するためのウェブサイトを提供するウェブサイト提供手段を備える」という点で共通する。
(オ)以上,(ア)?(エ)のことから,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するもの,「営業員が訪問先で携帯端末を用いて参照するためのウェブサイトを提供する渉外営業支援システム」である点で共通する。

以上(ア)?(オ)のことから,引用例1発明と本願発明とは,以下の点で一致し,また相違する。
[一致点]
「営業員が訪問先で携帯端末を用いて参照するためのウェブサイトを提供する渉外営業支援システムであって,
顧客情報や顧客情報に関連付けられた顧客の取引情報を格納する第1の格納手段と,
選択された顧客情報と取引情報とを第1の格納手段から抽出し,第2の格納手段に格納する手段と,
第2の格納手段に格納された顧客情報や顧客の取引情報を表示するためのウェブサイトを提供するウェブサイト提供手段を備えることを特徴とする渉外営業支援システム。」
[相違点1]
本願発明が,「所望の顧客情報と持出用事前登録データとを訪問先で参照するための選択指示を受け取る事前登録手段」を有し,「第1の格納手段」が,「顧客情報及び持出用事前登録データ,並びに該顧客情報に関連付けられた顧客の取引情報」を有するものであり,格納する手段が,「選択指示により選択された顧客情報及び持出用事前登録データと,顧客情報及び持出用事前登録データに対応する顧客の取引情報とを第1の格納手段から抽出し,抽出された,顧客情報,持出用事前登録データ及び顧客の取引情報を第2の格納手段に格納」するものであり,「ウェブサイト提供手段」が,「第2の格納手段に格納された顧客情報,持出用事前登録データ,及び顧客の取引情報を表示」するものであるのに対し,引用例1発明は,そのような構成になっていない点。
[相違点2]
本願発明が,「第1の格納手段」が「セキュリティ保護されたイントラネット内」のものであり,「第1の格納手段から抽出された顧客情報をマスキングして,イントラネット外にある第2の格納手段に格納」するのに対し,引用発明は,そのような構成になっていない点。

3.判断
ア[相違点1]について
(ア)引用例4記載事項によれば,引用例4には,再掲すれば,「販売担当者の端末装置がネットワークを介して顧客に関する個別情報を登録した顧客DBにアクセス可能であり,サーバ装置は,販売担当者が対象とする顧客情報を端末装置から受け付けると個別情報を顧客DBから抽出し,最適な販売支援情報を生成して端末装置に送信すること。」との事項が記載されている。
(イ)つまり,引用例4には,販売担当者が顧客を訪問する前に顧客に関する個別情報が顧客DBに登録されることが記載されており,引用例4は,「販売担当者が持ち出す情報を事前に登録」するものであると言える。
(ウ)しかし,引用例4には,どのような情報がどのように登録されるのかは記載されていなことから,引用例4が「販売担当者が持ち出す情報を事前に登録」するものであるとしても「選択された顧客情報と取引情報とを第1の格納手段から抽出し第2の格納手段に格納する」ものである引用例1発明が開示する事項の範囲にとどまること,第1,第2の格納手段に格納される情報や第1の格納手段から抽出して第2の格納手段に格納する情報に関する具体的な事項は記載されておらず示唆もされていないこと,以上のことから,引用例1発明と引用例4記載事項とを組み合わせたとしても,相違点1に係る事項に到達しないことから,相違点1に係る発明特定事項の構成とすることが当業者想到容易であったとは言えない。
(エ)一方,引用例3発明によれば,引用例3には,再掲すれば,「営業員が,特定の顧客訪問の前に,得意先コード入力による得意先詳細情報や,得意先コード及び案件選択による特定顧客の商談経過情報を,携帯端末にダウンロードできる営業活動支援システム。」との発明が記載されている。
(オ)引用例3発明は,営業員が,特定の顧客訪問の前に,得意先詳細情報や,特定顧客の商談経過情報を,携帯端末で得意先コード入力したり得意先コード及び案件選択したりすることにより,携帯端末にダウンロードするものであるから,本願発明の,「所望の顧客情報と持出用事前登録データとを訪問先で参照するための選択指示を受け取る」ことや,顧客訪問時に「顧客情報,持出用事前登録データを表示」することに対応する。
(カ)しかしながら,仮に,引用例1発明と引用例3発明とを組み合わせるとしても,引用例1発明には,顧客名及び顧客の住所等の連絡先情報を選択的に取得するための手段,つまり「事前登録手段」を示す記載も示唆する記載も見当たらない。
してみると,引用例1発明と引用例3発明とを組み合わせたとしても,「所望の顧客情報と持出用事前登録データとを訪問先で参照するための選択指示を受け取る事前登録手段」を有する構成とし,この「事前登録手段」で,選択指示された「顧客情報及び持出用事前登録データと,顧客情報及び持出用事前登録データに対応する顧客の取引情報とを第1の格納手段から抽出し,抽出された,顧客情報,持出用事前登録データ及び顧客の取引情報を第2の格納手段に格納」するよう構成しようとする動機付けが働かないことから,相違点1に係る発明特定事項が当業者想到容易であったとは言えない。
(キ)また,引用例3,4を除く,その他引用例2,5?9にも,上記「販売担当者が持ち出す情報を事前に登録」することや格納される情報の内容は特定されておらず,その開示は,引用例3,4の開示に及ばないことから,相違点1に係る発明特定事項が,その他引用例から当業者想到容易であったとは言えない。
以上(ア)?(キ)のことから,相違点1に係る発明特定事項が,引用例2?9から当業者想到容易であったとは言えない。

イ[相違点2]について
(ア)引用例5記載事項によれば,引用例5には,再掲すれば,「接客に必要のない顧客の個人情報がレジスタ画面に表示されることによる顧客の個人情報の漏洩を避けるために,販売端末の画面表示を,個人情報のうち特定の項目をマスクしたり,個人情報の一部/全部をマスクすること。」との事項が記載されている。
また,引用例6記載事項によれば,引用例6には,再掲すれば,「個人情報における開示条件が表示不可と指定された項目をマスクした表示用個人情報を作成して各支援端末5へ送信し表示すること。」との事項が記載されている。
つまり,引用例5,6には,「個人情報を保護するために端末に表示される情報の一部をマスキング処理する」ことが記載されている。
(イ)原査定の拒絶査定で例示文献として引用された,特開2000-76218号公報,特開2002-140239号公報,特開2002-24104号公報,特開2002-149465号公報には,「セキュリティ保護を要する情報を,イントラネット内の格納手段に配するとともに,外部から利用する情報を,イントラネット外の格納手段に配する」ことが記載されている。
(ウ)上記(ア)のとおり,引用例5,6に「個人情報を保護するために端末に表示される情報の一部をマスキング処理する」ことが記載され,上記(イ)のとおり,例示文献に「セキュリティ保護を要する情報を,イントラネット内の格納手段に配するとともに,外部から利用する情報を,イントラネット外の格納手段に配する」ことが記載されているとしても,これらのことから,「イントラネット内の格納手段の情報をマスキング処理してイントラネット外の格納手段に配する」との構成,つまり本願発明の,「第1の格納手段」が「セキュリティ保護されたイントラネット内」のものであり,「第1の格納手段から抽出された顧客情報をマスキングして,イントラネット外にある第2の格納手段に格納する」との構成には到達しない。
そして,本願発明は,この構成を採用することにより,外部の通信環境に接続されている情報照会サーバに格納される顧客情報そのものがマスキングされるので,第三者からなりすましログインなど不正にアクセスされた場合でも顧客を特定することができないという,引用例から予測できない効果を奏する。
(エ)以上(ア)?(ウ)のことから,相違点2に係る発明特定事項は,引用例5,6及び原査定の拒絶査定の例示文献から当業者想到容易であったとは言えない。
(オ)また,その他引用例2?4,7?9を参照しても,相違点2に係る事項は記載も示唆もされていないから,相違点2に係る発明特定事項が,その他引用例から当業者想到容易であったとは言えない。
以上(ア)?(オ)のことから,相違点2に係る発明特定事項が,引用例2?9から当業者想到容易であったとは言えない。

4.引用例2発明,引用例3発明との対比,判断
本願発明を引用例2発明や引用例3発明と対比,判断しても,引用例2発明や引用例3発明から当業者想到容易であったとは言えない。

5.その他請求項について
本願の請求項2?4に係る発明は,本願発明を引用し,さらに発明特定事項を付加し,又は発明特定事項を減縮するものであるから,本願発明と同様に引用例1発明,引用例2発明,又は引用例3発明,及び引用例4?9記載事項から当業者想到容易であったとは言えない。
本願の請求項5?8,9に係る発明は,本願発明の方法の発明を特定し,又はプログラムの発明を特定することから,本願発明と同様の理由で当業者想到容易であったとは言えない。

第5 むすび
以上のとおり,この出願の発明は,刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶する理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-01-21 
出願番号 特願2007-305556(P2007-305556)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 篠原 功一  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 須田 勝巳
手島 聖治
発明の名称 渉外営業支援システム及びその方法  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 藤原 弘和  
復代理人 濱中 淳宏  

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