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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F23D
管理番号 1283756
審判番号 不服2012-5728  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-29 
確定日 2014-01-15 
事件の表示 特願2006-212193「段階的霧化による液体燃料の燃焼方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月15日出願公開、特開2007- 40698〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年8月3日(パリ条約による優先権主張、2005年8月4日、フランス共和国)の出願であって、平成23年7月11日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成23年10月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年11月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成24年3月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、さらに当審において平成24年7月26日付けで書面による審尋がなされ、平成24年10月24日付けで回答書が提出され、平成25年1月23日付けで平成24年3月29日付けの手続補正を却下する決定がなされ、平成25年2月6日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知されたのに対し、平成25年7月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成25年7月10日付けの手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「 【請求項1】
液体燃料(4)と接触させて霧化用ガスの主要流(3)を注入することにより前記液体燃料のスプレー(10)を生成させる工程を含む、液体燃料の燃焼方法であって、霧化用ガスの少なくとも1つの二次流(1、5)を、前記スプレーが前記燃料の燃焼を行うために酸化剤の噴流と接触する前に、前記スプレー(10)の二次霧化を生じさせるために同心状に前記スプレー(10)の近傍に注入する液体燃料の燃焼方法であって、
前記霧化用ガスの二次流(1、5)を、液体燃料の注入方向に対して60°以下の角度で、前記液体燃料の注入方向に向かって集束する斜め方向に注入することを特徴とする液体燃料の燃焼方法。」

3.引用文献1
(1)引用文献1の記載
本願の優先日前に頒布され、当審拒絶理由に引用された刊行物である国際公開第2004/094902号(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。当審仮訳の作成にあたって、特表2006-523817号公報を参照した。

(ア)「Une des caracteristiques ……entre 15 et 30 %.」(3ページ第32行ないし第4ページ第8行、「e」は原文では「e」にアクサン・テギュ記号が付されている。)
〈当審仮訳〉
「 本発明による方法の本質的な特徴の1つは、それが、バーナーのランスから噴霧された形態で排出される液体燃料の燃焼方法に関するものであるということである。この噴霧形態の液体燃料のジェットは、液体燃料の加圧排出、または液体燃料をその排出前または排出中に噴霧用ガスと混合することのようないずれもの噴霧方法によっても得ることができる。かくして、好ましい態様によると、噴霧形態の液体燃料のジェットは、液体燃料ジェットの周りに噴霧用ガスを同軸的に注入することにより得られる。噴霧用ガスは、空気または酸素のような酸化性ガス、または窒素のような不活性ガス、または水蒸気から選ぶことができる。この好ましい態様によると、噴霧用ガスジェットの質量流量は、液体燃料ジェットの質量流量の、有利には5?40%であり、より好ましくは15?30%である。」

(イ)「La figure 1 est ……est de l'air.」(第5ページ第32行ないし第8ページ第25行)
〈当審仮訳〉
「 図1は、本発明による方法を実施するための燃焼アセンブリの一例の部分概略平面図であり、図2は、対応する概略断面図である。この燃焼アセンブリは、3つのブロック21、31および41がそれぞれ差し込まれた円筒穴2、3および4を有する耐火ブロック1内に置かれている。
ブロック21は、
22のところに現れるダクト(すなわちインジェクタ)211(このダクト211は、液体燃料212を受け入れる)、
22のところに現れ、液体燃料212が注入されるダクト211の周りに同心的に配置されたダクト(すなわちインジェクタ)221(このダクト221は、噴霧用ガス222を受け入れる)、および
22のところに現れ、噴霧用ガス222が注入されるダクト221の周りに同心的に配置されたダクト(すなわちインジェクタ)231(このダクト231は、22のところで直径D_(G)を有する。それは、囲包する一次酸化剤232を受け入れる)を備える。
好ましくは円筒状のブロック31は、ダクト(すなわちインジェクタ)32により貫通され、そのオリフィスは該ブロック内の33のところに現れる。このダクト(すなわちインジェクタ)32は、33のところで、D_(1)に等しい直径を有し、このダクト32の中心は、ダクト211の中心から距離l_(1)のところに位置する。ダクト32は、囲包する一次酸化剤とは異なる一次酸化剤(34)を受け入れる。
好ましくは円筒状のブロック41は、ダクト(すなわちインジェクタ)42により貫通され、そのオリフィスは該ブロック内の43のところに現れる。このダクト(すなわちインジェクタ)42は、43のところで、D_(2)に等しい直径を有し、このダクト42の中心は、ダクト211の中心から距離l_(2)のところに位置する。ダクト42は、二次酸化剤44を受け入れる。
このシステムを操作するために、一次酸化剤34および232並びに二次酸化剤44について同じ酸化剤源を用いることができ、対応するダクト32、231および42の直径は、所望の燃焼のタイプに依存して異なるか、同じである注入速度を設定するように選ばれる。
有利な態様によると、酸化剤を注入するためのダクトの端部は、耐火ポート内に後退している。
本発明による方法を実施するために、液体燃料を燃焼させることができる一方、NOxの生成をなお制限することができる。さらに、本発明による方法は、火炎の安定性と方法の熱的フレキシビリティを制御することができるという利点を有する。これは、装填物の性質と、炉の形状に依存して、小体積または大体積の火炎を使用すること、または炉内のある点で熱移動を制御すること、またはクラウンの温度を均一にすること等が好ましくあり得るからである。本発明によると、このフレキシビリティは、二次酸化剤ジェットと一次酸化剤ジェットとの間で、好ましくは二次酸化剤ジェットと、囲包する一次酸化剤ジェットとは異なる第2の一次酸化剤ジェットとの間で、総酸化剤流の分布を制御することにより達成される。総酸化剤流が分布される様態のこの制御は、また、ステージング(staging)と呼ばれる。

図1および図2に示す構成を有するバーナーを使用したが、これは、さらに、
液体燃料ジェット211から距離l_(1)のところに位置し、燃料インジェクタ211に対し第1の一次酸化剤インジェクタ31と対称的な第2の一次酸化剤インジェクタと、
液体燃料インジェクタ211から距離l_(2)のところに位置し、燃料インジェクタ211に対し第1の二次酸化剤インジェクタ42と対称的な第2の二次酸化剤インジェクタ
を備えるものであった。
5つのジェットは、すべて、同じ面内にある。バーナーのパワーは、2MWであった。6mの長さと1.5m×2mの断面積を有する炉内にバーナーを取り付けた。l_(2)/D_(2)比は、14.6であり、l_(1)/D_(G)比は、2であり、l_(1)/l_(2)比は、0.26であった。
注入された燃料は、以下の組成:
87.9重量%のC;
10.02重量%のH;
0.67重量%のO;
0.39重量%のN;および
0.98重量%のS
を有する重質燃料油であった。
その動粘度は、100℃で39mm^(2)/sであり、その密度は、980kg/m^(3)であり、その総カロリー値は、9631kcal/gであった。
噴霧用ガスは、酸素であるか、空気であった。
本発明の方法を実施することにより、種々の一次および二次インジェクタ間で総酸化剤流の分布を制御することによって火炎の形状を修飾することが可能であった。すなわち、総酸化剤流の75%を二次酸化剤インジェクタに注入することにより、大体積の火炎が得られた。同様に、注入を通じてこのパーセンテージを改変することにより、火炎の体積を減少させることができる。すなわち、装填物の性質と、バーナーが炉内に取り付けられる場所に依存して、本発明の方法を用いて、火炎の体積を調節することができる。
図3は、二次インジェクタ中に注入される総酸化剤流の種々の割合(二次インジェクタ中に注入される総酸化剤流の50、65および75%)についてのバーナーからの距離の関数としての、火炎により炉の炉床に移行されるパワーを示す。実質的なステージング(一次インジェクタ中よりも多くの量の、二次インジェクタ中への酸化剤の注入)は、バーナーに近接したパワーを減少させ、移行をインジェクタから離間して増加させる。すなわち、本発明による方法を通じて、熱移行プロファイルを改変させることができる。このことは、本発明の方法の1つの利点である。この方法は、種々のタイプの炉の形状に適合させることができるからである。図3に示す例の場合、噴霧用ガスは酸素であった。
図4は、炉の長手軸に沿った炉のクラウン温度を、二次インジェクタに注入された総酸化剤流の種々の割合(二次インジェクタに注入された総酸化剤流の50、65および75%)についてのバーナーからの距離の関数として示すものである。実質的なステージングがクラウン温度の均一性を改善することを見ることができる。図4に示す例の場合、噴霧用ガスは、空気であった。
図5は、放出されたNOxの量を、噴霧用ガスの種類、すなわち酸素および空気について、二次インジェクタに注入された(ステージング)総酸化剤の比率の関数として示すものである。噴霧用ガスとして酸素を使用することに関する曲線は、黒四角で示されている。実質的なステージングにより、NOxの放出は、噴霧用ガスが酸素である場合200ppmであり、噴霧用ガスが空気である場合300ppmであることを見ることができる。」

(2)引用文献1記載の事項
上記(1)(イ)並びに図1及び図2の記載から、以下の事項が分かる。

(ウ)上記(1)(イ)並びに図1及び図2の記載から、引用文献1には、液体燃料212の燃焼方法が記載されていることが分かる。

(エ)上記(1)(イ)並びに図1及び図2の記載によれば、液体燃料212が注入されるダクト211のすぐ外側の周りに同心的に配置されたダクト221に噴霧用ガス222が注入されるものであるから、引用文献1に記載された液体燃料212の燃焼方法は、液体燃料212と接触させて噴霧用ガス222を注入することにより前記液体燃料212のスプレーを生成させる工程を含むものであることが分かる。

(オ)上記(1)(イ)並びに図1及び図2の記載によれば、噴霧用ガス222が注入されるダクト221のさらに外側に同心的に配置されたダクト231、ダクト32及びダクト42から、それぞれ囲包する一次酸化剤232、囲包する一次酸化剤とは異なる一次酸化剤34及び二次酸化剤44が注入されることから、引用文献1に記載された液体燃料212の燃焼方法において、噴霧用ガス222は、前記スプレーが前記燃料の燃焼を行うために酸化剤の噴流と接触する前に、前記スプレーの霧化を生じさせるために同心状に前記スプレーの近傍に注入するものであることが分かる。

(カ)図2において、液体燃料212が注入されるダクト211及び噴霧用ガス222が注入されるダクト221は、上下方向に直線状に延びているから、引用文献1に記載された液体燃料212の燃焼方法において、噴霧用ガス222は、液体燃料の注入方向に対して0°の角度で、前記液体燃料の注入方向と平行な方向に注入されるものであることが分かる。

(3)引用文献1記載の発明
上記(1)及び(2)並びに図1及び図2から、引用文献1には次の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているといえる。

「液体燃料212と接触させて噴霧用ガス222を注入することにより前記液体燃料212のスプレーを生成させる工程を含む、液体燃料の燃焼方法であって、噴霧用ガス222を、前記スプレーが前記燃料の燃焼を行うために酸化剤の噴流と接触する前に、前記スプレーの霧化を生じさせるために同心状に前記スプレーの近傍に注入する液体燃料の燃焼方法であって、
前記噴霧用ガス222を、液体燃料の注入方向に対して0°の角度で、前記液体燃料の注入方向と平行な方向に注入する液体燃料の燃焼方法。」

4.引用文献2
(1)引用文献2の記載
本願の優先日前に頒布され、当審拒絶理由に引用された刊行物である実願昭47-18581号(実開昭48-94574号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

(ア)「 本考案は、焼却炉の燃焼室で焼却処理される潤滑油、ガソリン、シンナー、アセトンなどの可燃性廃液を微粒子状に粉砕しながら供給する可燃性廃液供給装置に関する。」(明細書第1ページ第16行ないし第19行)

(イ)「以下本考案の実施例を図面に基づき説明する。
上縁にフランジ1を有し、この内部を空気取入れ口2として開口せる有底筒状の空気噴出管3の底壁13の中央部に主噴気孔4を穿設するとともに、この主噴気孔4の周囲にこれを二重に取囲む状態に多数の副噴気孔5を穿設し、上記空気噴出管3にこの上側から挿通してきた可燃性廃液供給管6の下端部の廃液供給口7をこれよりも大径である前記主噴気孔4の下端縁4aよりもやや下方に突出させてなるものである。
第3図乃至第5図のものは各々別実施例の要部を示し、第3図のものは各副噴気孔5をこの各噴気軸線5aが主噴気孔4の下側で交わる状態に傾斜状に穿設したものである。」(明細書第3ページ第14行ないし第4ページ第7行)

(ウ)「 次に、その作用を説明すると、可燃性廃液供給管6には可燃性廃液が連続的に供給され、空気噴出管3には空気が連続的に強制送風され、この空気の一部は主噴気孔4を通過し、残りは副噴気孔5を通過する。主噴気孔4を通過する空気は、この狭くしぼられた主噴気孔4を高速度で通過し、その下端縁4aから外部に急激に拡散しながら噴出する。廃液供給口4はこの噴出空気に取囲まれており、その廃液供給口4から送り出される可燃廃液はその噴出空気のエゼクター作用により積極的に吸引されながら拡散して細かく粉砕され、さらに副噴気孔5、12、14から噴出する空気同士の主噴気口4、11の直下における衝突飛散により、今一度微粉砕され、空気との混合接触が良好で非常に燃焼しやすい霧状となって連続的に噴出されてゆく。」(明細書第4ページ第16行ないし第5ページ第11行)

(2)引用文献2記載の事項
上記(1)(ア)ないし(ウ)並びに図1ないし3の記載から、以下の事項が分かる。

(エ)上記(1)(イ)及び第3図には、副噴気孔5をこの噴気孔軸線5aが主噴気口4の下側で交わる状態に傾斜状に穿設した旨が記載され、第3図には、副噴気口5を、可燃性廃液供給管6及び主噴気口4に対して傾斜して設けることが記載されているから、引用文献2記載の可燃性廃液の燃焼方法は、副噴気口5から噴出する空気の流れを、可燃性廃液の供給方向に対して傾斜させ、前記可燃性廃液の供給方向に向かって集束する斜め方向に噴出するものであることが分かる。

(3)引用文献2記載の技術
上記(1)及び(2)並びに図1ないし3の記載から、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「可燃性廃液の燃焼方法において、可燃性廃液を主噴気孔4から噴出する空気の流れで粉砕混合したのち、さらに副噴射口5から噴出する空気の流れで微粉砕して混合するに際し、副噴気口5から噴出する空気の流れを、可燃性廃液の供給方向に対して傾斜させ、前記可燃性廃液の供給方向に向かって集束する斜め方向に噴出するという技術。」

5.対比
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「液体燃料212」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「液体燃料」に相当し、以下同様に、「噴霧用ガス222」は「霧化用ガス」に、「酸化剤」は「酸化剤」に、それぞれ相当する。
そして、「液体燃料と接触させて噴霧用ガスを注入することにより前記液体燃料のスプレーを生成させる工程を含」むという限りにおいて、引用文献1記載の発明において「液体燃料212と接触させて噴霧用ガス222を注入することにより前記液体燃料212のスプレーを生成させる工程を含」むことは、本願発明において「液体燃料と接触させて霧化用ガスの主要流を注入することにより前記液体燃料のスプレーを生成させる工程を含」むことに相当する。
また、「霧化用ガスを、前記スプレーが前記燃料の燃焼を行うために酸化剤の噴流と接触する前に、前記スプレーの霧化を生じさせるために同心状に前記スプレーの近傍に注入する」という限りにおいて、引用文献1記載の発明において「噴霧用ガス222を、前記スプレーが前記燃料の燃焼を行うために酸化剤の噴流と接触する前に、前記スプレーの霧化を生じさせるために同心状に前記スプレーの近傍に注入する」ことは、本願発明において「霧化用ガスの少なくとも1つの二次流を、前記スプレーが前記燃料の燃焼を行うために酸化剤の噴流と接触する前に、前記スプレーの二次霧化を生じさせるために同心状に前記スプレーの近傍に注入する」ことに相当する。
さらに、「前記霧化用ガスを、液体燃料の注入方向に対して60°以下の角度で、注入する」という限りにおいて、引用文献1記載の発明において「前記噴霧用ガス222を、液体燃料の注入方向に対して0°の角度で、前記液体燃料の注入方向と平行な方向に注入する」ことは、本願発明において「前記霧化用ガスの二次流を、液体燃料の注入方向に対して60°以下の角度で、前記液体燃料の注入方向に向かって集束する斜め方向に注入する」ことに相当する。

よって、本願発明と引用文献1記載の発明とは、
「液体燃料と接触させて霧化用ガスを注入することにより前記液体燃料のスプレーを生成させる工程を含む、液体燃料の燃焼方法であって、霧化用ガスを、前記スプレーが前記燃料の燃焼を行うために酸化剤の噴流と接触する前に、前記スプレーの霧化を生じさせるために同心状に前記スプレーの近傍に注入する液体燃料の燃焼方法であって、
前記霧化用ガスを、液体燃料の注入方向に対して60°以下の角度で、注入する液体燃料の燃焼方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
「液体燃料と接触させて噴霧用ガスを注入することにより前記液体燃料のスプレーを生成させる工程を含」み、「霧化用ガスを、前記スプレーが前記燃料の燃焼を行うために酸化剤の噴流と接触する前に、前記スプレーの霧化を生じさせるために同心状に前記スプレーの近傍に注入する」液体燃料の燃焼方法であって、「前記霧化用ガスを、液体燃料の注入方向に対して60°以下の角度で、注入する」ことに関し、
本願発明においては、「液体燃料と接触させて霧化用ガスの主要流を注入することにより前記液体燃料のスプレーを生成させる工程を含」み、「霧化用ガスの少なくとも1つの二次流を、前記スプレーが前記燃料の燃焼を行うために酸化剤の噴流と接触する前に、前記スプレーの二次霧化を生じさせるために同心状に前記スプレーの近傍に注入する」液体燃料の燃焼方法であって、「前記霧化用ガスの二次流を、液体燃料の注入方向に対して60°以下の角度で、前記液体燃料の注入方向に向かって集束する斜め方向に注入する」のに対し、
引用文献1記載の発明においては、「液体燃料212と接触させて噴霧用ガス222を注入することにより前記液体燃料212のスプレーを生成させる工程を含」み、「噴霧用ガス222を、前記スプレーが前記燃料の燃焼を行うために酸化剤の噴流と接触する前に、前記スプレーの霧化を生じさせるために同心状に前記スプレーの近傍に注入する」液体燃料の燃焼方法であって、「前記噴霧用ガス222を、液体燃料の注入方向に対して0°の角度で、前記液体燃料の注入方向と平行な方向に注入する」点(以下、「相違点」という。)。

6.判断
上記相違点について検討する。
本願発明と引用文献2記載の技術とを対比すると、引用文献2記載の技術における「可燃性廃液」はその技術的意義からみて、本願発明における「液体燃料」に相当し、以下同様に、「主噴気孔4から噴出する空気の流れ」は「霧化用ガスの主要流」に、「副噴射口5から噴出する空気の流れ」は「霧化用ガスの二次流」に、それぞれ相当する。
したがって、引用文献2記載の技術を本願発明の用語を用いて表現すると、

「液体燃料の燃焼方法において、液体燃料を霧化用ガスの主要流で粉砕混合したのち、さらに霧化用ガスの二次流で微粉砕して混合するに際し、霧化用ガスの二次流を、液体燃料の供給方向に対して傾斜させ、前記液体燃料の供給方向に向かって集束する斜め方向に噴出するという技術。」
ということができる。

そして、引用文献1記載の発明において、液体燃料の霧化促進及び均一化という一般的な課題解決のために、引用文献2記載の技術を適用することによって、噴霧用ガス222を主要流と二次流の2段階に分けて注入し、酸化剤の噴流と接触する前に、液体燃料212のスプレーを生成させ、その際に、噴霧用ガスの二次流を、液体燃料212の注入方向に対して傾斜させ、液体燃料212の注入方向に向かって集束する斜め方向に注入することによって、上記相違点に係る本願発明の特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到することができたものである。
なお、本願発明において、霧化用ガスの二次流の注入方向と液体燃料の注入方向を60°以下の角度に特定した点に関し、その範囲の内外で格別に有利な効果を奏するものとは認められず、一般的に実験により数値範囲を好適化するという程度のことは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないから、この点に進歩性は認められない。
また、審判請求人は、平成25年7月10日付け意見書において、引用文献2記載の技術における「主噴気孔4から噴出する空気」及び「副噴射口5から噴出する空気」は、酸素含有ガスである点で、本願発明における「霧化用ガス」とは異なる旨を主張している。
しかし、本願発明の発明特定事項には、霧化用ガスが酸素を含有しない旨の特定はないから、同主張は特許請求の範囲の記載に基づくものではなく、失当である。
そして、引用文献1には、噴霧用ガスは、空気または酸素のような酸化性ガス、または窒素のような不活性ガス、または水蒸気から選ぶことができる旨が記載されている(上記3(1)(ア)参照。)ところ、引用文献1記載の発明において、噴霧用ガスに不活性ガスを選ぶことは、単なる設計上の事項にすぎない。

さらに、本願発明は、全体構成でみても、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものでもない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-16 
結審通知日 2013-08-20 
審決日 2013-09-03 
出願番号 特願2006-212193(P2006-212193)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F23D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 麻乃  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 金澤 俊郎
藤原 直欣
発明の名称 段階的霧化による液体燃料の燃焼方法  
代理人 竹内 将訓  
代理人 野河 信久  
代理人 河野 哲  
代理人 福原 淑弘  
代理人 村松 貞男  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 峰 隆司  
代理人 岡田 貴志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 井関 守三  
代理人 佐藤 立志  
代理人 中村 誠  
代理人 高倉 成男  
代理人 砂川 克  
代理人 河野 直樹  
代理人 白根 俊郎  
代理人 幸長 保次郎  

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