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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1283759
審判番号 不服2012-8594  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-10 
確定日 2014-01-15 
事件の表示 特願2008-549483「照明システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月19日国際公開、WO2007/081484、平成21年 6月11日国内公表、特表2009-522618〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
(1)手続の経緯
本願は、2006年12月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年1月4日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年11月1日に手続補正がなされ、同年12月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年5月10日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、当審において、平成25年4月16日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月23日付けで手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審における平成24年10月12日付け審尋に対して平成25年1月16日付けで回答書を提出し、当審拒絶理由に対して同年7月23日付けで意見書を提出している。

(2)本願発明
本願の請求項1ないし20に係る発明は、平成25年7月23日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載の事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、平成25年7月23日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものであると認める。

「少なくとも可視光と紫外(UV)光を含む光を放射する光源と、前記光源からの光を受光するように配置され前記光源から受光した可視光を拡散するディフューザとを備え、
前記ディフューザが拡散膜を支持するガラス基板を有し、前記拡散膜が無機顔料粒子を含有するフリットを有し、
前記ディフューザが0.100を超える拡散特性F(Q)と少なくとも57%の可視光の透過率とを有し、
前記拡散特性F(Q)は、F(Q)=1/[4({θmax-θmin}/W)^(2)+1]によって定義され、Wは明度-拡散角プロットにおけるピークの半値幅(HWHM)であり、θmaxは明度-拡散角プロットにおける最大値をとる角度であり、θminは明度-拡散角プロットにおけるテール(tails)のうちの少なくとも1つの最小値をとる角度であり、
前記無機顔料粒子が、二酸化セリウム、酸化亜鉛及び二酸化珪素のうちのいずれか1つ以上を含有し、
前記無機顔料粒子の平均粒子サイズが0.5μmを超えず、前記拡散膜の厚さが約0.5μmから10.0μmである、
ことを特徴とする照明システム。」(以下「本願発明」という。)

2 刊行物の記載事項
当審拒絶理由で引用した「本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2004-513483号公報(以下「引用例」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている(下線は審決で付した。)。
(1)「【0001】
本発明は、発光型ディスプレイおよびランプに関するものであり、発光型ディスプレイおよびランプの明るさおよび/またはコントラストを増強するための要素に関する。
【0002】
背景
情報ディスプレイは、手持ち式デバイスからラップトップコンピュータまで、テレビからコンピュータモニターまで、自動車ダッシュボードディスプレイから記号の用途まで、多くの用途がある。これらのディスプレイの多くは、情報を直接に表示するか(セグメント化またはピクシレーテッド発光デバイスを備えるディスプレイの場合など)、または情報を視認者に表示するパネルを照らすか(液晶ディスプレイおよびバックライト付きグラフィックスの場合など)の何れかの内部照明に依る。発光デバイスの明るさの増大は、かかるディスプレイの視認性を増大させる。しかしながら、明るさを容易に増大させる能力を制限することがある最大電力要求条件などの制約がある場合がある。例えば、バックライト付き液晶ディスプレイを備えるラップトップコンピュータモニターはしばしば、光源に電力供給するために内部バッテリを用いる。光源からの光出力の増大は、バッテリの大量の排流になることがある。電力要求条件を低減させてバッテリ寿命を伸ばすために、マイクロプリズム光学フィルムを用いて、例えば、一般に視認されない広い角度の光をより一般的な視認範囲にわたる、より狭い角度円錐に方向変換(redirect)した。これにより、同じまたはより少ないバッテリ電力を用いたまま、ディスプレイの見掛の明るさを増大させる。望ましくない偏光状態を有する光を再循環させるのを助け(他の場合なら吸収されて消滅する)、それによって有効な光を有意に増大させることができる液晶ディスプレイ用の反射偏光子もまた開発されている。これらの場合、発光デバイスを出た光を方向変換または再利用することによって、ディスプレイの明るさを増大させた。
【0003】
発明の概要
本発明は、発光デバイスからより多くの光を結合することによって発光デバイスおよび発光デバイスを用いて照らされたディスプレイの明るさを増強することを考察する。これは、発光デバイスを既に出た光を方向変換および/または再循環させる周知の明るさ増強の試みと異なっている。本発明をこのように用いて、発光デバイスへの電力の供給の増大を必要とせずに、発光デバイスから放射される光の量を増大させることができる。
【0004】
視認者またはディスプレイパネルの方向に光を放射する発光デバイスは概して、1つ以上の透過層を通して光を放射する。放射された光は、これらの層によって導入された境界面の1つ以上において内部全反射しやすい。本発明は、かかる境界面の1つにおいて内部全反射を阻止してより多くの光が視認者の方向に伝送されることを可能にする要素を提供する。発光デバイスそれ自体が情報ディスプレイである場合、本発明はまた、解像度を維持し、および/またはディスプレイのピクセルまたはセグメント間のコントラストを増強する要素を提供する。
【0005】
一態様において、本発明は、視認者の方向に透過層を通して光を放射するように配置された発光体を備える発光デバイスと、ほかの場合なら内部全反射される透過層中に放射された光の少なくとも一部分を視認者の方向に誘導するように配置された嵩拡散体と、を提供する。例えば、嵩拡散体を、発光体と透過層との間にまたは透過層と視認者との間に配置することができる。透過層は、発光体が上に形成された基材(ガラスまたはプラスチックフィルムなど)であってもよく、または、例えば、発光体の上に形成されるかまたは積層された保護層などの層であってもよい。発光体は、エレクトロルミネセンス発光体や、発光ポリマーデバイス、燐光物質ベースの発光体などの有機発光体など、何れの適した発光体であってもよい。
【0006】
別の態様において、本発明は、基材と、基材を通して光を放射するように配置された有機発光体と、基材と有機発光体との間に配置され、発光デバイス中の有機発光体から放射された光の内部全反射を阻止するフラストレータ要素と、を備える発光デバイスを提供する。フラストレータ要素は、嵩拡散体、表面拡散体、微細構造化表面、反射防止コーティング、またはこれらおよび/または内部全反射を阻止するために用いることができる他の要素の何れの適した組合せであってもよい。
【0007】
更に別の態様において、本発明は、発光デバイスの一部として含有された1つ以上の透過層を通して光を放射することができる発光体と、1つ以上の透過層によって作られた1つ以上の境界面で内部全反射を阻止することによって発光デバイスの明るさを増大させる手段と、を備える発光デバイスを提供する。
【0008】
更に別の態様において、本発明は、バックライトを用いて照らされるとき情報を表示することができるディスプレイ要素を照らすためのバックライトを備えるバックライト付きディスプレイを考察する。バックライトは、透過層を通して光を放射するように配置された発光デバイスと、前記発光デバイスと前記透過層との間に配置され、内部全反射を阻止するフラストレータ要素とを備え、それによって、フラストレータ要素のないほかの場合の同じバックライトと比較したとき、より多くの光をバックライトから結合する。
【0009】
別の態様において、本発明は、透過層を通して光を放射するように配置され、それによって情報を視認者に表示することができる複数の独立して動作可能な発光デバイスと、前記発光デバイスの少なくとも1つと前記透過層との間に配置され、少なくとも1つの発光デバイスから放射された光の内部全反射を阻止するフラストレータ要素と、を含む情報ディスプレイを提供する。
【0010】
本発明の明るさ増強要素はまた、ディスプレイ内の光を方向変換、再循環、または他の仕方で管理する光学要素と組み合わせられてもよい。」

(2)「【0011】
詳細な説明
本発明は概して、明るさを増強し、および/またはディスプレイのコントラストを増強する要素を備える改善された発光型ディスプレイに関する。
【0012】
図1は、発光体112および1つ以上の光透過層114を備える発光デバイス110の代表的な図を示す。デバイス110は、発光体112が視認者118の方向に透過層114を通して光を放射することができるように作られる。デバイス110の視認者側の面は通常、前面と称されてもよいが、反対側の面は、相応して裏面と称される。視認者118と透過層114との間に、透過層114より低い屈折率を有する領域116がある。領域116は一般に空気を含有し、完全に空気で構成されてもよいが、同様に、様々なフィルム(例えば、グレア防止フィルムまたはコーティング、スマッジ防止フィルムまたはコーティング)、光学要素(例えば、偏光子、フィルター、波長板、レンズ、プリズム状フィルムなど)、タッチスクリーンなどのユーザインタフェースデバイスの他、単独でまたは組み合わせて配置された他の要素であって、透過層114と前記要素との間に空隙を有してまたは有さずに、および/または領域116の別個の要素間に空隙を有して配置された他の要素を含有することができる。空隙が別個の要素間に存在しないことが好ましいとき、光学接着剤(optical adhesive)を用いて前記要素を互いに接着することができる。
【0013】
デバイス110の動作中に、発光体112から視認者の方向に放射された光の一部分は、光が透過層114の1つ以上の中で内部全反射される角度で透過層114に入ることがある。光の内部全反射(TIR)は、媒体中で進む光がより低い屈折率の媒体との境界面に直面する時に生じることがある周知の現象であり、その境界面での光の入射角は臨界角を超える。従って、発光体112から視認者118までの光路において、光が屈折率の減少を経る何れの境界面も、内部全反射の起こり得る表面である。かかる内部全反射は、光が視認者118に達するのを妨げることがあり、デバイス110の明るさを低減させることがある。本発明は、とりわけ、TIRを阻止することによって、より多くの光をディスプレイから結合する要素を備えることによってより明るい発光型ディスプレイを作製することを考察する。
【0014】
発光デバイス110には、エレクトロルミネセンス(EL)デバイス、有機エレクトロルミネセンスデバイス(OLED)、無機発光ダイオード(LED)、燐光物質ベースのバックライト、燐光物質ベースの直視型ディスプレイ、例えば、ブラウン管(CRT)およびプラズマディスプレイパネル(PDP)、電界放射ディスプレイなど、何れの適した発光デバイスなどを挙げることができる。発光デバイスは、バックライトまたは直視型ディスプレイであってもよく、それは、白色光、単色光、多色、または完全色(例えば、RGB、または赤、緑、青)を放射することができ、それはまた、セグメント化(例えば、低解像度)またはピクシレーテッド(例えば、高解像度)ディスプレイであってもよい。
【0015】
発光体112は、何れかの適した材料、材料のセット、適切に刺激されたときに光を放射するように配置されている成分または成分の群であってもよい。実施例には、電界にかけるときに光を放射する無機エレクトロルミネセンス(EL)材料(例えば、電位が陽極と陰極との間に印加される時に光が生み出されるように、EL材料を陽極と陰極との間に配置することができる)、紫外線に露光するときに可視光を放射する燐光材料、および他の材料などがある。典型的な発光体は、OLEDを作製する材料を含有する発光体である。OLED発光体は一般に、陽極と陰極との間に挟まれた有機発光材料を含有する層状構造体である。当技術分野に周知であるように、陰極と有機発光体との間に配置された電子伝達および/または注入材料、陽極と有機発光体との間に配置された正孔移動(hole transport)および/または注入材料など、他の層が存在してもよい。有機発光材料には、小分子発光材料、発光ポリマー、ドープ発光ポリマー、および現在わかっているかまたは今後開発される他のかかる材料および材料の組合せ、などが挙げられる。OLEDデバイスが陽極と陰極との間に印加された電界にかけられるとき、電子および正孔を生じて前記デバイス中に注入することができる。電子/正孔対は、有機発光材料中で合わせることができ、前記再結合で得られたエネルギーは、例えば、特定の色または可視光を生じさせることができる。生じた光は概して、等方的に放射される。
【0016】
異なった光の色を放射するOLEDデバイスを隣接して配置し、前記デバイスを独立してアドレス可能にすることによって多色OLEDディスプレイを作製することができる。多色OLEDディスプレイはまた、カラーフィルタを用いて、色の純度を改良し、色のコントラストを増強するか、または白色光または他の単色OLEDが用いられる時に色を導入するかの何れかによって、作製されてもよい。
【0017】
再び図1を参照すると、透過層114は、視認者に達するように意図された光の波長の、透明であるかまたは少なくとも十分に透過性である発光デバイス内の発光体と視認者との間に配置された何れの層であってもよい。例えば、透過層には、発光体または発光デバイスを作動するための他のデバイスが上に形成されるガラスまたはプラスチック基板などが挙げられる(例えば、薄膜トランジスタ)。透過層にはまた、透明電極、保護層、バリア層、カラーフィルター、波長板、偏光子、および発光デバイス内に見いだされる他の何れかの適した透過層などが挙げられる。一般に、透過層114と発光体112との間に空隙は存在しないが、介在層が存在してもよい。
【0018】
本発明によって、より多くの光を視認者の方向にデバイスから結合するかまたは方向変換するために内部全反射を阻止する要素が、発光デバイスに含有されてもよい。再び図1を参照すると、かかる要素(この明細書中で「TIRフラストレータ」と呼ばれる)が、発光体112と透過層114との間、透過層114と視認者118との間、および/または別個の透過層114の間にまたは1つ以上の透過層114中に配置されてもよい。以下の考察により詳細に説明したように、TIRフラストレータには、嵩拡散体、表面拡散体、微細構造体、埋込微細構造体、層状構造体、ルーバー付き構造体、およびこれらの組合せ、などが挙げられる。
【0019】
図2を、発光型ディスプレイデバイス内の光の閉じ込め(light trapping)の概念を例示するために用いることができる。一般性を失わずに、図2は、例えば、ガラス基板220上に配置されたOLEDデバイス212を備える発光型ディスプレイ210を示す。OLEDデバイス212は、有機発光体層214、透明陽極216、および陰極218を備える。ディスプレイ210と視認者222との間の間隔は、この実施例では空気である。有機発光体214を、光が広範囲の角度にわたって放射される、等方性光源として示すことができる。ディスプレイ210の裏の方向に放射された光を前方へ方向変換することができるように、陰極218は一般に反射性である。ガラス基板220は、空気より高屈折率を有し(空気の屈折率が約1であり、ガラスの一般的な屈折率が約1.5である)、透明陽極216が一般に、ガラス基板220より高屈折率を有する。典型的な透明陽極には、一般に約1.8の屈折率を有する、酸化スズインジウム(ITO)などの透明導電性酸化物などがある。
【0020】
従って、図2において、視認者の方向に放射された光は、TIRが起きることがある2つの境界面、すなわち陽極/基板の境界面および基板/空気の境界面にぶつかる。それ故に、光線の少なくとも3つのタイプを調べることができる。先ず、光線Aは、陽極/基板の境界面または基板/空気の境界面の何れかでTIRの臨界角より小さい角度で放射された光を表す。光線Bは、陽極/基板の境界面でTIRの臨界角より小さいが、基板/空気の境界面でTIRの臨界角より大きい角度で放射された光を表す。光線Bは従って、ディスプレイ内に「閉じ込められる(trapped)」と考えることができる。光線Cは、陽極/基板の境界面でTIRの臨界角より大きい角度で放射された光を表す。光線Cは同様に、ディスプレイ内に「閉じ込められる(trapped)」と考えることができる。本発明によって、TIRフラストレータを用いて、陽極/基板の境界面または基板/空気の境界面などにおいて、光が視認者の方向に伝播するときにTIRが起こることがある何れかまたはすべての境界面でTIRを阻止することができる。
【0021】
図2に示した状態を取り上げ、ガラス基板(1.51の屈折率)、ITO陽極(1.8の屈折率)および有機発光体(1.7の屈折率)を用いて、以下の内容を計算することができる。ITO/ガラス境界面(図2の216/220の境界面)において、(発光層214の法線から測定した)約63°以上の角度で有機発光体から放射された光が、内部全反射される。これは、放射強度の約46%を占める。ガラス/空気境界面において、約36°?約63°の角度で有機発光体から放射された光は、内部全反射される(より大きな角度で放射された光が、ITO/ガラス境界面でのTIRのためにこの境界面に達しない)。これは、放射強度の付加的な35%を占める。このため、ディスプレイ210を通して最終的に伝送された光の強さは、有機発光体214によって生み出された光の約19%である。特定した境界面の1つまたは両方においてTIRの少なくとも一部分を阻止することは、透過光の全量を増大させる大きなポテンシャルを提供する。
【0022】
図2に示した状態は、OLEDディスプレイより概して多く適用される。より一般的な状態は、発光材料が、透明導電性材料など、高屈折率の材料を通して、次いで基板を通して、次に、空気を通して視認者の方向に光を放射するように配置され、基板の屈折率が高屈折率の材料の屈折率より小さく、基板の屈折率が空気の屈折率より大きい状態である。
【0023】
図3(a)および(b)は、発光型ディスプレイ310および310’内のフラストレータとしての嵩拡散体の使用を示す。発光型ディスプレイ310および310’は各々、基板320および前記基板上に配置された発光デバイス312を備え、デバイス312は、発光体層314、透明電極層316、および裏電極層318を有する。
【0024】
図3(a)は、基板320上に配置され、ディスプレイ310の前面に位置した嵩拡散体330を示す。嵩拡散体を、母材、またはバインダー中に配置された散乱中心(scattering centers)を有すると記載することができる。散乱中心と母材との間の屈折率の差は好ましくは、その入射角のためにほかの場合なら内部全反射される視認者の方向に向かう光の一部分を散乱させるのに十分に大きい。図3(a)において、嵩拡散体330の母材は好ましくは、基板320の屈折率と大体同じかまたはより高い屈折率を有する。これは、光線を基板/嵩拡散体の境界面でTIRなしに嵩拡散体330に入らせることができる。垂直またはほぼ垂直入射で嵩拡散体330に入る光線は概して、散乱中心によって遮られていない観測者の方向を通ることができる。ほかの場合なら基板/空気の境界面で内部全反射される角度で伝播する光線が、嵩拡散体330に入り、散乱され得る。散乱光の少なくとも一部分を臨界角より小さい角度で視認者に方向変換し、従ってデバイスから結合することができ、それによって明るさを増大させることができる。臨界角より大きな角度で散乱された光を、嵩拡散体330内で内部全反射して散乱プロセスを繰り返すことができ、それによって、更により多くの光をディスプレイデバイスから結合することができる。
【0025】
図3(b)は、ディスプレイ310’の基板320と発光デバイス312との間に配置された嵩拡散体340を示す。嵩拡散体340の母材は好ましくは、透明電極層316の屈折率と大体同じかより大きな屈折率を有する。これは、光線を透明電極/嵩拡散体の境界面でTIRなしに嵩拡散体340に入らせることができる。嵩拡散体340に入る光線は概して、散乱中心によって遮られない観測者の方向を通ることができる。ほかの場合なら電極/基板の境界面で内部全反射される角度で伝播する光線を、嵩拡散体340に入らせ、散乱させることができる。散乱光の少なくとも一部分を臨界角より小さい角度で視認者の方向に方向変換し、従って、デバイスから結合することができ、それによって明るさを増大させることができる。臨界角より大きな角度で散乱された光を嵩拡散体/基板の境界面で内部全反射して散乱プロセスを繰り返すことができ、それによってディスプレイ装置から更により多くの光を結合することができる。
【0026】
発光デバイス内でほかの場合ならTIRの可能性がない角度で放射された光(例えば、垂直またはほぼ垂直な入射光)の有意な比率が散乱される相対的に小さい機会を有するように、典型的な嵩拡散体は、散乱中心の十分に低い密度を有する。更に、より大きな入射角(例えば、臨界角より大きい角度)で放射された光の一部分を視認者の方向に散乱し、それによって視認者の方向にデバイスから高い角度の光を結合することができるように、典型的な嵩拡散体は、散乱中心の十分に高い密度を有する。嵩拡散体要素内の低い角度の入射光線対高い角度の入射光線の光路差の性質のために、低い角度の入射光線は、より高い角度の入射光よりも、平均してより少ない時間をとり、平均して拡散体内の短い距離を移動するので、高い角度の入射光線より散乱中心にぶつかる可能性が統計学的にそれほど高くない。更に、嵩拡散体の厚さを通して最初に通過する時に散乱中心にぶつからない高い角度の入射光線が、嵩拡散体/基板の境界面でまたは嵩拡散体/空気の境界面(または他の適用可能な境界面)で内部全反射されることがあり、視認者の方向に層から散乱される別の機会を有することがある。
【0027】
図3(a)および(b)に示したような嵩拡散体のTIRフラストレータは、何れの適した手段によって提供されてもよい。例えば、適した嵩拡散体をフィルムとして提供し、光学接着剤の使用によって基板におよび/または発光デバイスにおよび/または他の成分に接着することができる。典型的な光学接着剤は、ディスプレイ構造体内の光学接着剤層のすぐ後ろに位置している発光デバイスの層の屈折率と大体同じかまたはより大きい屈折率を有する。別の実施例として、嵩拡散体は、適切な光学接着剤または接着に適した他の適した接着剤またはバインダー中に配置された、低屈折率の粒子、高屈折率の粒子、気泡、ボイド、相分離材料の領域などを含有してもよい。この場合、嵩拡散体が、基板、透明電極、光学フィルム、または他の成分などの発光デバイスの層上にコートされてもよく、デバイスの一部分をデバイスの別の部分に、または、ディスプレイの前面に任意に提供されてもよいような付加的な光学フィルムまたは他の成分に接着するために用いられてもよい。他の実施態様において、嵩拡散体は、基板または基板の一部に拡散されたまたはその中に他の仕方で配置された粒子または気泡を含有してもよい。例えば、粒子をガラスフリット中に配置し、適切にコートし、平らにし、焼成して、ガラス基板、または、嵩拡散TIRフラストレータの働きをするガラス基板上の層を形成してもよい。同様に、粒子を、ポリマー基板に、または、嵩拡散TIRフラストレータの働きをする基板上のポリマー層に形成され得るバインダー中に混合することができる。」

(3)「【0028】
上に記載したように、嵩拡散体TIRフラストレータは一般に、母材またはバインダー中に配置された散乱部位を含有する。母材料には、望ましい波長について透過性である何れの適した材料をも、含めることができる。母材料は好ましくは、嵩拡散体の下のディスプレイ内の隣接した層の屈折率と大体同じかまたはより高い屈折率を有する。母材料の実施例には、光学接着剤、熱可塑性樹脂、フォトポリマー、熱硬化材料、エポキシ、ポリイミド、ナノ複合材料などがある。嵩拡散母材(volume diffuser matrix)は、単一の、均質材料であってもよく、または母材は、1以上の材料を含有することができる。例えば、母材の組成が、母材の厚さにわたって変化して、嵩拡散体の厚さにわたって母材の屈折率、透過率、および/または他の性質を変えることができる。かかる厚さの変えられた構造体は、本明細書中で、層状構造体と称される。別の実施例として、母材の組成は、嵩拡散体の水平位置に応じてより高い、およびより低い屈折率の交互領域、より高いおよびより低い光学密度の領域、および/または他の性質の領域を有するなど、嵩拡散体の平面において変化することができる。かかる水平方向に変化された構造体は、本明細書中で、ルーバー付き構造体(louvered constructions)と称される。ルーバー付き構造体は、高い角度の入射光の光路を変え、例えば、有意の量で低い角度の入射光に悪影響を及ぼすことなく、高い角度の入射光のTIRを阻止するのに有用である場合がある。嵩拡散体内の散乱部位の場合と同様に、高い角度の入射光は、低い角度の入射光よりルーバー付き構造体内の「領域-領域」光学変動のより多くの標本を抽出する傾向がある。
【0029】
散乱中心は、嵩拡散体の母材中に配置された、粒子、ボイド(例えば、気泡またはポケット)、相分散材料などを含有することができる。明記されない場合、用語「粒子」「散乱部位」、および「散乱体」は、嵩拡散体内の散乱部位に対して同じ意味で用いられる。概して、より効率的な散乱は、散乱部位と母材との間の屈折率の差がより大きい時に生じることがある。1種以上の散乱体もまた、用いることができる。例えば、高屈折率の粒子タイプおよび低屈折率の粒子タイプを、同じ嵩拡散体中で用いることができる。粒子の配合量は概して、適用に依存する。例えばランプ、またはバックライトの適用において、粒子の配合量は好ましくは、嵩拡散体を有さないディスプレイに比較してディスプレイから視認者の方向により多くの光を結合するのに十分に高く、望ましい量の垂直なおよびほぼ垂直な光を、遮られずに嵩拡散体中を通過させるのに十分に低い。粒子の配合量は、嵩拡散体の厚さ、ディスプレイ内の嵩拡散体の位置、散乱体の屈折率、散乱体の寸法、母材の材料、およびディスプレイの他の要素、特定のディスプレイの適用、他のかかる問題、に依存することがある。
【0030】
散乱中心は、母材の全体にわたって分散するためおよび嵩拡散体を通して伝播する光との望ましい相互作用のために、何れの適した寸法であってもよい。典型的な散乱体は、散乱される光の波長のオーダーまたはより大きく、嵩拡散体の厚さより少なくとも幾分小さい。散乱体は、例えば、球形、針状、平坦、細長などの何れの望ましい形状であってもよい。散乱体はまた、母材中で特定の方向に方向付けられてもよい。例えば、嵩拡散体は、それらの長軸がフィルムの厚さ方向と整列された、母材および複数の細長エアポケット、または円筒状ボイドを有する微孔性フィルムであってもよい。別の実施例として、嵩拡散体は、拡散体の厚さ方向にまたは拡散体の平面の軸に沿ってなどの特定の方向に沿って共線状に方向付けられた複数の細長い散乱体を含有することができる。嵩拡散体内に方向付けられている細長または針状散乱体は、不整な視認性質をもたらすことができ、例えば、垂直方向により狭い範囲にわたって増強された明るさを提供したまま、水平方向に広範囲の視認角度にわたって増強された明るさを提供することができる。
【0031】
特に適した嵩拡散体には、Minnesota Mining and Manufacturing Company製の商品名3M 1472-4として入手できる微孔性ポリプロピレンフィルムなどの微孔性フィルム、およびMinnesota Mining and Manufacturing Company製の透明接着テープ上の裏材用に用いられたような高温押出セルロースアセテートフィルム、粒子対バインダーの重量または容量の率が1%?50%、粒度が1ミクロン未満?10ミクロン以上である、TiO_(2)、Sb_(2)O_(3)、Al_(2)O_(3)、ZrSiO_(4)などの白色無機粒子の分散された、アクリル、熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フォトポリマー、光学接着剤、およびかかる他の材料などの適した透過性バインダ、粒子対バインダーの重量または容量の率が1%?50%、粒度が1ミクロン未満?10ミクロン以上である、ポリスチレン粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子(概して商品名テフロンとして入手できる)、および他の粒子などの有機粒子の分散されたアクリル、熱可塑性樹脂、PET、フォトポリマー、光学接着剤、およびその他の透過性バインダーなどの適した透過性バインダ、およびポリエチレン中に分散されたポリスチレンなどの相分離複合材などがある。バインダー中に分散された粒子を含有する嵩拡散体は一般に、PETまたはポリカーボネートフィルムまたは他の適したフィルム上に溶液コーティングまたは別の方法で適したコーティングをすることによって形成されてもよい。嵩拡散体の厚さは変化することができ、一般的な厚さは、約1ミクロン?50ミクロンの範囲である。粒度は、粒子タイプおよび他の問題点に応じて変化することができ、一般的な粒度が、約1ミクロン以下?10ミクロンの範囲である。約1?5ミクロンの範囲の粒度が、色の分散を低減させるために好ましいことがある。
【0032】
典型的なTIRフラストレータにはまた、表面拡散体などがある。図4(a)および(b)は、表面拡散体を備える発光型ディスプレイの実施例を示す。図4(a)は、発光デバイス412、光透過性基板414、および表面拡散体416を備える発光型ディスプレイ410を示す。透過性基板414は、デバイス412と表面拡散体416との間に配置される。表面拡散体416は好ましくは、望ましい波長の光に対して実質的に透過性であると共に基板414の屈折率に近いかそれ以上の屈折率を有する材料から作製される。表面拡散体416は、視認者の方向に方向付けられた粗表面を有する。」

(4)上記(1)ないし(3)から、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。
「ディスプレイパネルの方向に光を放射する発光デバイスから1つ以上の光透過層を通して放射された光は、これらの層によって導入された境界面の1つ以上において内部全反射するので、かかる境界面の1つにおいて内部全反射を阻止してより多くの光が視認者の方向に伝送されるようにする、液晶ディスプレイおよびバックライト付きグラフィックスなど情報を視認者に表示するパネルを照らす内部照明などのランプの明るさを増強する要素を備える発光型ディスプレイのランプであって、
前記発光デバイスは発光体および1つ以上の光透過層を備え、
前記光透過層は、視認者に達するように意図された光の波長の、透明であるかまたは少なくとも十分に透過性である発光デバイス内の発光体と視認者との間に配置された何れの層であり、発光体または発光デバイスを作動するための他のデバイスが上に形成されるガラス基板であり、透明電極、保護層、バリア層、カラーフィルター、波長板、偏光子、および発光デバイス内に見いだされる他の何れかの適した透過層などを含み、
前記発光体は、ガラス基板上に配置されたOLEDデバイスであり、光が広範囲の角度にわたって放射される等方性光源である屈折率が1.7の有機発光体層、屈折率がガラス基板の1.51より高い1.8の酸化スズインジウムからなる透明導電性酸化物の透明陽極、および、発光型ディスプレイの裏の方向に放射された光を前方へ方向変換することができるように反射性である陰極を備えており、
前記要素は、より多くの光を視認者の方向に方向変換するために内部全反射を阻止する、嵩拡散体からなるTIRフラストレータと呼ばれる要素であって、ガラス基板の前面上に配置され、母材中に配置された散乱中心を有し、例えば、散乱中心となる粒子をガラスフリット中に配置し、適切にコートし、平らにし、焼成して、ガラス基板上に、嵩拡散TIRフラストレータの働きをする層を形成したものであり、
前記嵩拡散体としては、粒子対バインダーの重量または容量の率が1%?50%、粒度が1ミクロン未満?10ミクロン以上である、TiO_(2)、Sb_(2)O_(3)、Al_(2)O_(3)、ZrSiO_(4)などの白色無機粒子の分散された、アクリル、熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フォトポリマー、光学接着剤、およびかかる他の材料などの適した透過性バインダがあり、
前記嵩拡散体の厚さは変化することができ、一般的な厚さは、約1ミクロン?50ミクロンの範囲であり、
嵩拡散体の散乱中心となる前記粒子の粒度は、粒子タイプおよび他の問題点に応じて変化することができ、一般的な粒度が、約1ミクロン以下?10ミクロンの範囲であり、
ほかの場合なら基板/空気の境界面で内部全反射される角度で伝播する光線が、嵩拡散体に入り、散乱され、散乱光の少なくとも一部分を臨界角より小さい角度で視認者に方向変換し、従ってデバイスから結合することができ、それによって明るさを増大させることができ、臨界角より大きな角度で散乱された光を、嵩拡散体内で内部全反射して散乱プロセスを繰り返すことができ、それによって、更により多くの光をデバイスから結合することができるようにした、発光型ディスプレイのランプ。」(以下「引用発明」という。)

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「有機発光体層」、「ガラス基板上に、嵩拡散TIRフラストレータの働きをする層を形成したもの」、「『嵩拡散TIRフラストレータの働きをする層』、『嵩拡散体』」、「ガラス基板」、「TiO_(2)、Sb_(2)O_(3)、Al_(2)O_(3)、ZrSiO_(4)などの白色無機粒子」、「ガラスフリット」、「嵩拡散体の散乱中心となる前記粒子の粒度」、「前記嵩拡散体の厚さ」及び「発光型ディスプレイのランプ」は、それぞれ、本願発明の「光源」、「ディフューザ」、「拡散膜」、「ガラス基板」、「無機顔料粒子」、「フリット」、「平均粒子サイズ」、「拡散膜の厚さ」及び「照明システム」に相当する。

(2)OLEDデバイスの有機発光体層が発する光が少なくとも可視光又は紫外(UV)光を含むことは当業者に自明であるから、引用発明の「光源(有機発光体層)」と本願発明の「少なくとも可視光と紫外(UV)光を含む光を放射する光源」とは、「少なくとも可視光又は紫外(UV)光を含む光を放射する」点で一致する。

(3)引用発明の「ディフューザ」は、「ガラス基板」上に、「拡散膜(嵩拡散TIRフラストレータの働きをする層)」を形成したものであり、「ガラス基板」上に配置されたOLEDデバイスの等方性光源である屈折率が1.7の「光源(有機発光体層)」から広範囲の角度にわたって放射される光のより多くを視認者の方向に方向変換するために内部全反射を阻止する「拡散膜(嵩拡散体)」からなるTIRフラストレータと呼ばれる要素であって、「ガラス基板」の前面上に配置され、母材中に配置された散乱中心を有し、例えば、散乱中心となる粒子を「フリット(ガラスフリット)」中に配置し、適切にコートし、平らにし、焼成して、「ガラス基板」上に形成したものであるから、本願発明の「ディフューザ」と、「前記光源からの光を受光するように配置され前記光源から受光した可視光を拡散する」点及び「拡散膜を支持するガラス基板を有」する点で一致する。

(4)引用発明の「拡散膜(嵩拡散TIRフラストレータの働きをする層)」は、散乱中心となる粒子を「フリット(ガラスフリット)」中に配置し、適切にコートし、平らにし、焼成して、「ガラス基板」上に形成したものであるから、本願発明の「『無機顔料粒子を含有するフリットを有』する『拡散膜』」と、「粒子を含有するフリットを有」する点で一致する。

(5)引用発明の「拡散膜の厚さ(前記嵩拡散体の厚さ)」の範囲「約1ミクロン?50ミクロン」と、本願発明の「拡散膜の厚さ」の範囲「約0.5μmから10.0μm」とは、「約1μmから10.0μm」の範囲で一致する。

(6)上記(1)ないし(5)からみて、本願発明と引用発明とは、
「少なくとも可視光又は紫外(UV)光を含む光を放射する光源と、前記光源からの光を受光するように配置され前記光源から受光した可視光を拡散するディフューザとを備え、
前記ディフューザが拡散膜を支持するガラス基板を有し、前記拡散膜が粒子を含有するフリットを有し、
前記拡散膜の厚さが約1μmから10.0μmである照明システム。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
明度-拡散角プロットにおけるピークの半値幅(HWHM)をWとし、明度-拡散角プロットにおける最大値をとる角度をθmaxとし、明度-拡散角プロットにおけるテール(tails)のうちの少なくとも1つの最小値をとる角度をθminとしたとき、拡散特性F(Q)をF(Q)=1/[4({θmax-θmin}/W)^(2)+1]によって定義すると、前記ディフューザの拡散特性F(Q)が、
本願発明では「0.100を超える」のに対し、引用発明では0.100を超えるかどうか明らかでない点。

相違点2:
本願発明では、前記ディフューザの可視光の透過率が57%以上であり、前記拡散膜の厚さの上限が10.0μmであり、前記粒子が、二酸化セリウム、酸化亜鉛及び二酸化珪素のうちのいずれか1つ以上を含有する無機顔料粒子であり、その平均粒子サイズが0.5μmを超えないのに対して、
引用発明では、前記ディフューザの可視光の透過率が57%以上かどうか明らかでなく、前記拡散膜の厚さの上限は50μmであり、前記粒子が、二酸化セリウム、酸化亜鉛及び二酸化珪素のうちのいずれか1つ以上を含有する無機顔料粒子であるかどうか明らかでなく、その一般的な平均粒子サイズは約1ミクロン以下?10ミクロンの範囲である点。

相違点3:
前記光源が放射する光が、
本願発明では、少なくとも可視光と紫外(UV)光を含むのに対して、
引用発明では、可視光と紫外(UV)光の両方を含むか一方しか含まないか明らかでない点。

4 判断
上記相違点1ないし3について検討する。
(1)相違点1及び2について
ア プロファイル関数としてP(w;e)=[1+4(e/W)^(2)]^(-1)によって定義されるローレンツ関数は本願の優先日前に周知である(以下「周知技術1」という。当審拒絶理由で引用した特開2001-83109号公報の【0020】、【0021】及び図6の記載参照。)。

イ 式F(Q)=1/[4({θmax-θmin}/W)^(2)+1]によって定義される拡散特性Fが0.100を超える拡散膜は本願の優先日前に周知である(以下「周知技術2」という。例.当審拒絶理由で引用した特開2003-315544号公報(【0071】の「120°」及び「90°」の拡散角、図4のIが最小値の角度「-90°」及びIが最大値の角度「0°」参照。)、当審拒絶理由で引用した特開2005-140966号公報(図5参照。)、特開平10-48404号公報(【0067】及び図41の「41f」参照。))。

ウ バックライトの拡散層における全光線透過率としては70%以上、さらには85%以上であることが好ましく、少なくとも可視光の透過率が75%以上であるものは本願の優先日前に周知である(以下「周知技術3」という。例.当審拒絶理由で引用した国際公開02/06859号(請求項7参照。)、特開2001-354792号公報(【0034】、【0083】参照。)、特開2004-78188号公報(【0026】参照。))。

エ 厚さ10μm程度の拡散層に含有させる粒子として、酸化セリウム(CeO^(2))ビーズやシリカ粒子であって、その平均粒径が5nmないし0.1μm程度のものは、本願の優先日前に周知である(以下「周知技術4」という。例.当審拒絶理由で引用した特開平11-183712号公報(【0014】、【0028】参照。)、当審拒絶理由で引用した特開2004-354558号公報(【0022】?【0033】参照。))。

オ 引用発明では、前記「拡散膜の厚さ(前記嵩拡散体の厚さ)」は変化することができ、一般的な厚さは、約1ミクロン?50ミクロンの範囲とされており、「拡散膜(嵩拡散体)」の散乱中心となる粒子としては、「無機顔料粒子(TiO_(2)、Sb_(2)O_(3)、Al_(2)O_(3)、ZrSiO_(4)などの白色無機粒子)」が挙げられており、その「平均粒子サイズ(粒度)」は、粒子タイプおよび他の問題点に応じて変化することができ、一般的な「平均粒子サイズ」が、約1ミクロン以下?10ミクロンの範囲であるとされているところ、上記アないしエからみて、引用発明において、約1ミクロン?50ミクロンの範囲とされている前記「拡散膜の厚さ」をその範囲内の10μm程度とし、「拡散膜(嵩拡散体)」の散乱中心となる粒子を、「無機顔料粒子」として一般的な酸化セリウム(CeO^(2))ビーズやシリカ粒子とし、その「平均粒子サイズ」を約1ミクロン以下の5nmないし0.1μm程度とし、少なくとも可視光の透過率が75%以上になるようにするとともに、明度-拡散角プロットにおけるピークの半値幅(HWHM)をWとし、明度-拡散角プロットにおける最大値をとる角度をθmaxとし、明度-拡散角プロットにおけるテール(tails)のうちの少なくとも1つの最小値をとる角度をθminとしたとき、拡散特性F(Q)をF(Q)=1/[4({θmax-θmin}/W)^(2)+1]によって定義したとき、このようにした「ディフューザ(ガラス基板上に、嵩拡散TIRフラストレータの働きをする層を形成したもの)」の拡散特性F(Q)が0.100を超えるようになすこと、すなわち、引用発明において、上記相違点1及び2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術1ないし周知技術4に基づいて容易に想到することができた程度のことである。

(2)上記相違点3について
ア 紫外光と可視光を含む光を放射する有機EL素子(OLED)は、本願の優先日前に周知である(以下「周知技術5」という。例.特開平11-233264号公報(【0035】「第1有機EL素子16の発光波長域を紫外線帯域及び可視光帯域に設定」参照。)、特開平11-329727号公報(【請求項1】参照。)、特表2001-503183号公報(23頁8?10行参照。))。

イ 上記アからみて、引用発明において、ディスプレイパネルの方向に光を放射する発光デバイスの発光体を紫外光と可視光の両方を含む光を放射するものとなすこと、すなわち、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明となすことは、当業者が周知技術5に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(3)効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術1ないし周知技術5の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

(4)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術1ないし周知技術5に基づいて容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
本願発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術1ないし周知技術5に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-16 
結審通知日 2013-08-20 
審決日 2013-09-02 
出願番号 特願2008-549483(P2008-549483)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 最首 祐樹後藤 亮治  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 西村 仁志
鉄 豊郎
発明の名称 照明システム  
代理人 山田 大樹  
代理人 中村 哲平  
代理人 金山 慎太郎  
代理人 大森 純一  
代理人 折居 章  
代理人 金子 彩子  
代理人 吉田 望  
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