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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1283775
審判番号 不服2012-21213  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-26 
確定日 2014-01-15 
事件の表示 特願2005-373192「スペクトル資源の高度化された割り当てを含む情報送信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月13日出願公開、特開2006-187005〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続
本願は、平成17年12月26日(パリ条約による優先権主張2004年12月24日、欧州特許庁)の外国語書面出願であって、 平成18年1月17日付で翻訳文が提出され、平成18年2月16日付で手続補正書が提出され、平成20年9月1日付で審査請求がなされ、平成23年6月8日付(起案日)で拒絶理由の通知がなされ、平成23年12月8日付で意見書・手続補正書が提出され、平成24年6月20日付(起案日)で拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成24年10月26日付で請求された拒絶査定不服審判であって、その審判請求と同時に手続補正書が提出され、前置報告書の内容について審判請求人の意見を求めるために、平成25年3月11日付(起案日)で審尋がなされている。

第2.平成24年10月26日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年10月26日付の手続補正(以下「本件補正」ともいう)を却下する。

[理由]
1.本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の記載は、平成23年12月8日付手続補正書により補正された以下のとおりのものである。

「【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
通信チャネルによって互いにリンクされた少なくとも2つのトランシーバ間で情報を送信するための方法であって、該情報は、動作周波数を有する少なくとも1つの搬送信号によって搬送され、該情報を送信するための方法は、周波数選択ステップであって、該周波数選択ステップの過程で、前記動作周波数が、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動的に選択される、周波数選択ステップ、を含み、
前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信及び前記第2の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信に、同じ伝送方式が使用される、
情報を送信するための方法。
【請求項2】
前記第1の周波数間隔は、分離幅と呼ばれる幅であって、該分離幅と前記第1の周波数間隔の幅との比率が所定のしきい値を超えるように選ばれた幅を有する分離間隔によって前記第2の周波数間隔から分離されることを特徴とする、請求項1に記載の情報を送信するための方法。
【請求項3】
前記第2の周波数間隔に含まれる前記周波数が、前記第1の周波数間隔に含まれる前記周波数よりも高い場合には、前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数は、前記周波数選択ステップの過程で、あらかじめ定義された高品質のサービスを必要とすると識別された通信に割り当てられることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載の情報を送信するための方法。
【請求項4】
通信状態評価ステップであって、該通信状態評価ステップの過程で、前記通信チャネルに影響を与える前記通信状態を表す少なくとも1つのパラメータが評価される、通信状態評価ステップ、を含み、前記第2の周波数間隔に含まれる前記周波数が、前記第1の周波数間隔に含まれる前記周波数よりも高い場合には、前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数は、前記周波数選択ステップの過程で、前記評価されたパラメータがあらかじめ定義されたしきい値を超えないチャネルを通じて実行される通信に割り当てられることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の情報を送信するための方法。
【請求項5】
移動度評価ステップであって、該移動度評価ステップの過程で、前記トランシーバの1つの移動度を表す少なくとも1つの速度値が計算される、移動度評価ステップ、を含み、前記第2の周波数間隔に含まれる前記周波数が、前記第1の周波数間隔に含まれる前記周波数よりも高い場合において、前記計算された速度値があらかじめ定義されたしきい値を超えるときは、前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数が、前記周波数選択ステップの過程で割り当てられることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の情報を送信するための方法。
【請求項6】
少なくとも2つの近接した無線基地局及び少なくとも1つの移動端末を含み、前記第2の周波数間隔に含まれる前記周波数が前記第1の周波数間隔に含まれる前記周波数よりも高い、携帯電話電気通信システムで使用されることを目的とし、前記情報を送信するための方法は、前記移動端末によって実行されるチャネル監視ステップを含み、該チャネル監視ステップの過程で、前記移動端末は、前記第1の周波数間隔及び前記第2の周波数間隔に含まれる周波数に関連したチャネル状態が、該周波数がその移動端末の現在のアクティブな基地局と通信するための動作周波数として選択されるのに適しているかを解析し、その情報を送信するための方法は、基地局切り換えステップであって、該基地局切り換えステップの過程で、前記チャネル監視ステップの期間中に、前記第2の周波数間隔に含まれる周波数で適したものが見つからなかった場合に、前記移動端末が、自身のアクティブな基地局を変更するように要求する、基地局切り換えステップ、をさらに含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の情報を送信するための方法。
【請求項7】
少なくとも1つの無線基地局及び少なくとも2つの移動端末を含む携帯電話電気通信システムで使用されることを目的とし、前記情報を送信するための方法は、
前記移動端末によって実行されるチャネル監視ステップであって、該チャネル監視ステップの過程で、各移動端末は、前記第1の周波数間隔及び前記第2の周波数間隔に含まれる周波数が、その移動端末の現在のアクティブな基地局と通信するための動作周波数として選択されるのに適しているかを解析する、チャネル監視ステップと、
チャネル状態報告ステップであって、該チャネル状態報告ステップの過程で、各移動端末は、自身が実行した前記チャネル監視ステップの調査結果を前記基地局に報告する、チャネル状態報告ステップと、
前記無線基地局によって実行される周波数割り当てステップであって、該周波数割り当てステップの過程で、利用可能な周波数の1つが各移動端末に割り当てられて、該端末が前記無線基地局と通信することを可能にする、周波数割り当てステップと、
を含む、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の情報を送信するための方法。
【請求項8】
前記第2の周波数間隔に含まれる前記周波数が、前記第1の周波数間隔に含まれる前記周波数よりも高い場合には、前記割り当てステップの過程で実行される前記割り当ては、前記第2の周波数間隔から選択された周波数を優先的に割り当てることによって実行される、請求項7に記載の情報を送信するための方法。
【請求項9】
前記チャネル状態報告ステップ及び前記周波数割り当てステップは、所与の移動端末と前記無線基地局との間で確立された同じ通信の期間中に繰り返し実行されることを特徴とする、請求項7又は8のいずれか1項に記載の情報を送信するための方法。
【請求項10】
動作周波数切り換えステップであって、該動作周波数切り換えステップの過程で、前記動作周波数は、前に選択された周波数から新たに選択された周波数に切り換えられ、このような切り換えは、前記前に選択された周波数で送信される前記信号を次第に減衰させること、及び前記新たに選択された周波数で送信される前記信号を次第に増幅することを同時に行うことによって徐々に実行される、動作周波数切り換えステップ、をさらに含む、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の情報を送信するための方法。
【請求項11】
前記情報を送信するための方法によれば、前記第2の周波数間隔は、サブミリ波長に対応する値を有する周波数を含む、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の情報を送信するための方法。
【請求項12】
前記情報を送信するための方法によれば、前記第1の周波数間隔又は前記第2の周波数間隔は、互いに異なる各第1の帯域幅及び第2の帯域幅を特色として備える、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の情報を送信するための方法。
【請求項13】
動作周波数を有する少なくとも1つの搬送信号によって情報が搬送される通信チャネルにより互いにリンクされることを目的とした少なくとも2つのトランシーバを含む電気通信システムであって、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から前記動作周波数を動的に選択するための周波数選択手段、を含み、
前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信及び前記第2の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信に、同じ伝送方式が使用される、
電気通信システム。
【請求項14】
少なくとも1つの無線基地局及び少なくとも2つの移動端末を備え、前記電気通信システムは、
各移動端末に含まれて、前記第1の周波数間隔及び前記第2の周波数間隔に含まれる周波数が、その移動端末の現在のアクティブな基地局と通信するための動作周波数として選択されるのに適しているかを解析することを前記移動端末に可能にするためのチャネル監視手段と、
各移動端末に含まれて、前記チャネル監視手段によって実行された前記解析の調査結果を前記基地局に報告することを前記移動端末に可能にするためのチャネル状態報告手段と、
前記無線基地局に含まれて、前記無線基地局と通信するために利用可能な周波数の1つを各移動端末に割り当てるための周波数割り当て手段と、
を含む、請求項13に記載の電気通信システム。
【請求項15】
動作周波数を有する少なくとも1つの搬送信号によって情報が搬送される通信チャネルによりトランシーバにリンクされることを目的とした電気通信デバイスであって、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から前記動作周波数を動的に選択するための周波数選択手段、を含み、
前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信及び前記第2の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信に、同じ伝送方式が使用される、
電気通信デバイス。
【請求項16】
少なくとも1つの無線基地局を備える携帯電話電気通信システムで使用されることを目的とし、前記電気通信デバイスは、
前記第1の周波数間隔及び前記第2の周波数間隔に含まれる周波数が、その電気通信デバイスの現在のアクティブな基地局と通信するための動作周波数として選択されるのに適しているかを解析することを前記電気通信デバイスに可能にするためのチャネル監視手段と、
該チャネル監視手段によって実行された前記解析の調査結果を前記基地局に報告することを前記電気通信デバイスに可能にするためのチャネル状態報告手段と、
をさらに含み、
前記周波数選択手段は、前記電気通信デバイスによって送信された報告に答えて、前記基地局により発行された周波数選択信号によって制御されるようになっている、
請求項15に記載の電気通信デバイス。」

2.本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
通信チャネルによって互いにリンクされた少なくとも2つのトランシーバ間で情報を送信するための方法であって、該情報は、動作周波数を有する少なくとも1つの搬送信号によって搬送され、該情報を送信するための方法は、周波数選択ステップであって、該周波数選択ステップの過程で、前記動作周波数が、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動的に選択される、周波数選択ステップ、を含み、
前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信及び前記第2の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信に、同じ伝送方式が使用され、
前記周波数選択ステップにおいて、相手局から通知されるチャネル状態を表す制御情報に基づき第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動的に動作周波数が選択される、
情報を送信するための方法。
【請求項2】
通信チャネルによって互いにリンクされた少なくとも2つのトランシーバ間で情報を送信するための装置であって、該情報は、動作周波数を有する少なくとも1つの搬送信号によって搬送され、該情報を送信するための装置は、周波数選択手段であって、該周波数選択手段において、前記動作周波数が、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動的に選択される、周波数選択手段、を含み、
前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信及び前記第2の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信に、同じ伝送方式が使用され、
前記周波数選択手段において、相手局から通知されるチャネル状態を表す制御情報に基づき第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動的に動作周波数が選択される、
情報を送信するための装置。
【請求項3】
前記第1の周波数間隔は、分離幅と呼ばれる幅であって、該分離幅と前記第1の周波数間隔の幅との比率が所定のしきい値を超えるように選ばれた幅を有する分離間隔によって前記第2の周波数間隔から分離されることを特徴とする、請求項2に記載の情報を送信するための装置。
【請求項4】
前記第2の周波数間隔に含まれる前記周波数が、前記第1の周波数間隔に含まれる前記周波数よりも高い場合には、前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数は、前記周波数選択手段において、あらかじめ定義された高品質のサービスを必要とすると識別された通信に割り当てられることを特徴とする、請求項2又は3のいずれか1項に記載の情報を送信するための装置。
【請求項5】
通信状態評価手段であって、該通信状態評価手段において、前記通信チャネルに影響を与える前記通信状態を表す少なくとも1つのパラメータが評価される、通信状態評価手段、を含み、前記第2の周波数間隔に含まれる前記周波数が、前記第1の周波数間隔に含まれる前記周波数よりも高い場合には、前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数は、前記周波数選択手段において、前記評価されたパラメータがあらかじめ定義されたしきい値を超えないチャネルを通じて実行される通信に割り当てられることを特徴とする、請求項2ないし4のいずれか1項に記載の情報を送信するための装置。
【請求項6】
移動度評価手段であって、該移動度評価手段において、前記トランシーバの1つの移動度を表す少なくとも1つの速度値が計算される、移動度評価手段、を含み、前記第2の周波数間隔に含まれる前記周波数が、前記第1の周波数間隔に含まれる前記周波数よりも高い場合において、前記計算された速度値があらかじめ定義されたしきい値を超えるときは、前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数が、前記周波数選択手段において割り当てられることを特徴とする、請求項2ないし5のいずれか1項に記載の情報を送信するための装置。
【請求項7】
少なくとも2つの近接した無線基地局及び少なくとも1つの移動端末を含み、前記第2の周波数間隔に含まれる前記周波数が前記第1の周波数間隔に含まれる前記周波数よりも高い、携帯電話電気通信システムで使用されることを目的とし、前記情報を送信するための装置は、前記移動端末によって実行されるチャネル監視手段を含み、該チャネル監視手段において、前記移動端末は、前記第1の周波数間隔及び前記第2の周波数間隔に含まれる周波数に関連したチャネル状態が、該周波数がその移動端末の現在のアクティブな基地局と通信するための動作周波数として選択されるのに適しているかを解析し、その情報を送信するための装置は、基地局切り換え手段であって、該基地局切り換え手段において、前記チャネル監視手段の期間中に、前記第2の周波数間隔に含まれる周波数で適したものが見つからなかった場合に、前記移動端末が、自身のアクティブな基地局を変更するように要求する、基地局切り換え手段、をさらに含む、請求項2ないし6のいずれか1項に記載の情報を送信するための装置。
【請求項8】
少なくとも1つの無線基地局及び少なくとも2つの移動端末を含む携帯電話電気通信システムで使用されることを目的とし、前記情報を送信するための装置は、
前記移動端末によって実行されるチャネル監視手段であって、該チャネル監視手段において、各移動端末は、前記第1の周波数間隔及び前記第2の周波数間隔に含まれる周波数が、その移動端末の現在のアクティブな基地局と通信するための動作周波数として選択されるのに適しているかを解析する、チャネル監視手段と、
チャネル状態報告手段であって、該チャネル状態報告手段において、各移動端末は、自身が実行した前記チャネル監視手段の調査結果を前記基地局に報告する、チャネル状態報告手段と、
前記無線基地局によって実行される周波数割り当て手段であって、該周波数割り当て手段において、利用可能な周波数の1つが各移動端末に割り当てられて、該端末が前記無線基地局と通信することを可能にする、周波数割り当て手段と、
を含む、請求項2ないし7のいずれか1項に記載の情報を送信するための装置。
【請求項9】
前記第2の周波数間隔に含まれる前記周波数が、前記第1の周波数間隔に含まれる前記周波数よりも高い場合には、前記割り当て手段において実行される前記割り当ては、前記第2の周波数間隔から選択された周波数を優先的に割り当てることによって実行される、請求項8に記載の情報を送信するための装置。
【請求項10】
前記チャネル状態報告手段及び前記周波数割り当て手段は、所与の移動端末と前記無線基地局との間で確立された同じ通信の期間中に繰り返し実行されることを特徴とする、請求項8又は9のいずれか1項に記載の情報を送信するための装置。
【請求項11】
動作周波数切り換え手段であって、該動作周波数切り換え手段において、前記動作周波数は、前に選択された周波数から新たに選択された周波数に切り換えられ、このような切り換えは、前記前に選択された周波数で送信される前記信号を次第に減衰させること、及び前記新たに選択された周波数で送信される前記信号を次第に増幅することを同時に行うことによって徐々に実行される、動作周波数切り換え手段、をさらに含む、請求項2ないし10のいずれか1項に記載の情報を送信するための装置。
【請求項12】
前記情報を送信するための装置によれば、前記第2の周波数間隔は、サブミリ波長に対応する値を有する周波数を含む、請求項2ないし11のいずれか1項に記載の情報を送信するための装置。
【請求項13】
前記情報を送信するための装置によれば、前記第1の周波数間隔又は前記第2の周波数間隔は、互いに異なる各第1の帯域幅及び第2の帯域幅を特色として備える、請求項2ないし12のいずれか1項に記載の情報を送信するための装置。
【請求項14】
動作周波数を有する少なくとも1つの搬送信号によって情報が搬送される通信チャネルにより互いにリンクされることを目的とした少なくとも2つのトランシーバを含む電気通信システムであって、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から前記動作周波数を動的に選択するための周波数選択手段、を含み、
前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信及び前記第2の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信に、同じ伝送方式が使用される、
電気通信システム。
【請求項15】
少なくとも1つの無線基地局及び少なくとも2つの移動端末を備え、前記電気通信シス
テムは、
各移動端末に含まれて、前記第1の周波数間隔及び前記第2の周波数間隔に含まれる周波数が、その移動端末の現在のアクティブな基地局と通信するための動作周波数として選択されるのに適しているかを解析することを前記移動端末に可能にするためのチャネル監視手段と、
各移動端末に含まれて、前記チャネル監視手段によって実行された前記解析の調査結果を前記基地局に報告することを前記移動端末に可能にするためのチャネル状態報告手段と、
前記無線基地局に含まれて、前記無線基地局と通信するために利用可能な周波数の1つを各移動端末に割り当てるための周波数割り当て手段と、
を含む、請求項14に記載の電気通信システム。
【請求項16】
動作周波数を有する少なくとも1つの搬送信号によって情報が搬送される通信チャネルによりトランシーバにリンクされることを目的とした電気通信デバイスであって、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から前記動作周波数を動的に選択するための周波数選択手段、を含み、
前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信及び前記第2の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信に、同じ伝送方式が使用される、
電気通信デバイス。
【請求項17】
少なくとも1つの無線基地局を備える携帯電話電気通信システムで使用されることを目的とし、前記電気通信デバイスは、
前記第1の周波数間隔及び前記第2の周波数間隔に含まれる周波数が、その電気通信デバイスの現在のアクティブな基地局と通信するための動作周波数として選択されるのに適しているかを解析することを前記電気通信デバイスに可能にするためのチャネル監視手段と、
該チャネル監視手段によって実行された前記解析の調査結果を前記基地局に報告することを前記電気通信デバイスに可能にするためのチャネル状態報告手段と、
をさらに含み、
前記周波数選択手段は、前記電気通信デバイスによって送信された報告に答えて、前記基地局により発行された周波数選択信号によって制御されるようになっている、
請求項16に記載の電気通信デバイス。」

3.審判請求人の主張
平成24年10月26日付審判請求書において、審判請求人は同日付の手続補正について以下のとおり主張している。

『1.本願発明の説明
以下、本審判請求書において、同日付提出の手続補正書における請求項を「新請求項」と称し、拒絶査定時の請求項すなわち平成23年12月8日付提出の手続補正書における請求項を「旧請求項」と称します。

・・・

新請求項1は、旧請求項1において、周波数選択ステップの構成をさらに限定するものです。
新請求項2は、旧請求項1において、周波数選択ステップの構成をさらに限定した上で、発明の対象を方法から装置へと変更するものです。
新請求項3?13は、旧請求項2?12の項番を繰り下げるとともに、発明の対象を方法から装置へと変更するものです。
新請求項14?17は、旧請求項13?16の項番を繰り下げるものです。

2.補正の根拠の明示
新請求項1の「周波数選択ステップにおいて、相手局から通知されるチャネル状態を表す制御情報に基づき第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動的に動作周波数が選択される」という構成、および、新請求項2における対応する構成は、出願当初の明細書の図4等の記載に基づくものです。図4にはチャネル状態を通知する構成が開示されています。
その他の補正は、記載形式を変更するものであり、発明の特徴を変更するものではないため、新規事項の追加はありません。
また、新請求項1および2の補正は、旧請求項1に定義されている周波数選択ステップの構成についての限定的減縮に該当します。』

4.本件補正の目的についての検討
本件補正の目的が、特許法第17条の2第4項第1?4号に掲げる事項に適合するか、以下に検討する。

本件補正は、請求項の数を補正前の16個から補正後の17個とする補正、いわゆる増項補正を含むものである。
ここで、特に、補正後の請求項2である、

「【請求項2】
通信チャネルによって互いにリンクされた少なくとも2つのトランシーバ間で情報を送信するための装置であって、該情報は、動作周波数を有する少なくとも1つの搬送信号によって搬送され、該情報を送信するための装置は、周波数選択手段であって、該周波数選択手段において、前記動作周波数が、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動的に選択される、周波数選択手段、を含み、
前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信及び前記第2の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信に、同じ伝送方式が使用され、
前記周波数選択手段において、相手局から通知されるチャネル状態を表す制御情報に基づき第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動的に動作周波数が選択される、
情報を送信するための装置。」

に関する手続補正について、審判請求人は上記したとおり「新請求項2は、旧請求項1において、周波数選択ステップの構成をさらに限定した上で、発明の対象を方法から装置へと変更するものです。」と主張している。しかしながら、補正前の請求項1には、それに対応する補正後の請求項1が存在するから、補正前の請求項1と補正後の請求項2が対応するものとは認めることができないことに加え、補正前の請求項1に係る発明は方法の発明であるのに対し、補正後の請求項2に係る発明は物の発明であるから、補正後の請求項2に関する手続補正は、補正前の請求項1との関係において、特許法第17条の2第4項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものとは認められない。加えて、この補正後の請求項2に関する手続補正は、補正前の請求項1以外の請求項、すなわち、補正前の請求項2?16との関係においても、特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められない。また、この手続補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものとも認められない。

更に、補正後の請求項3?13に関する手続補正について、審判請求人は上記したとおり「新請求項3?13は、旧請求項2?12の項番を繰り下げるとともに、発明の対象を方法から装置へと変更するものです。」と主張しているが、補正前の請求項2?12に係る発明は方法の発明であるのに対し、補正後の請求項3?13に係る発明は物の発明であるから、補正後の請求項3?13に関する手続補正についても、上記補正後の請求項2に関する手続補正と同様の理由で、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものとも認められない。

よって、本件補正は、少なくとも、補正後の請求項2?12に関する手続補正について、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。

5.補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
平成24年10月26日付手続補正書による手続補正は上記のとおり却下された。したがって、本願の請求項1?16に係る発明は、平成18年2月16日付及び平成23年12月8日付手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?16に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は請求項1に記載された次のとおりである。(以下「本願発明」という。)

「【請求項1】
通信チャネルによって互いにリンクされた少なくとも2つのトランシーバ間で情報を送信するための方法であって、該情報は、動作周波数を有する少なくとも1つの搬送信号によって搬送され、該情報を送信するための方法は、周波数選択ステップであって、該周波数選択ステップの過程で、前記動作周波数が、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動的に選択される、周波数選択ステップ、を含み、
前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信及び前記第2の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信に、同じ伝送方式が使用される、
情報を送信するための方法。」

第4.引用例、引用発明
1.引用例
原審が引用した特開2000-49637号公報(以下「引用例」という。)には以下の記載がある。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二重帯域送受信装置(dual band transceiver)及び二重帯域伝送方法(dual band transmission method)に関する。」
「【0002】
【従来の技術】データの高速伝送の要求が高まり、データレートが高い通信装置が盛んに開発されている。近年、特にマイクロ波帯及びミリ波帯の周波数帯域が注目されている。私的な(許可が不要な)周波数帯域では、様々な民生的な応用が考えられる。例えば国によっては、約800MHz帯、約2.4GHz帯、5?6GHz、約10GHz帯、約24GHz帯、59?64GHzは、事実上許可が不要な周波数帯域、又は産業、科学、医療(industrial, scientific, medical:以下、ISMという。)用の周波数帯域と考えられている。ISM帯域では、例えば出力レベルが小電力でなければならない等の幾つかの制限が設けられている。」
「【0003】全ての帯域は、無線信号の伝搬の仕方において、見通線通信(line on sightcommunication:以下、LOS通信という。)と見通線外通信(non-line on sight communication:以下、NLOS通信という。)に分類することができ、殆どの無線通信がLOSである。」
「【0004】LOS又は高反射短距離通信において満足な通信を行うことができる周波数帯域は、アンテナの物理的寸法、及び利用可能な又は許可された送信電力の観点からは10GHzを超える高周波帯域である。したがって、少なくとも2つの異なる帯域、すなわちNLOS伝送のための帯域とLOS伝送のための帯域に適用できる送受信機の技術が必要である。」
「【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、見通線通信用と見通線外通信用の2つの異なる周波数帯域で伝送を行う二重帯域送受信装置及び二重帯域伝送方法を提供することである。」
「【0012】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するための本発明の中心となる技術的な思想は、NLOS通信用の低い周波数帯域を、LOS用の高い周波数帯域の中間周波数となるように設定し、また、変調パラメータを、伝送周波数帯域の切換に対応して変更するようにしている。」
「【0025】本発明に係る二重帯域伝送方法では、ベースバンド信号処理回路において、伝送データを第1の中間周波数の変調信号に変調し、第1の中間周波数の変調信号を第2の中間周波数の変調信号にアップコンバートする。第1の中間周波数の変調信号又は第2の中間周波数の変調信号を第1の伝送周波数帯域又は第2の伝送周波数帯域で伝送する。ここで、第1の伝送周波数帯域は、第2の伝送周波数帯域の第2の中間周波数に対応し、ベースバンド信号処理回路における変調パラメータの変更と同時に、第1の伝送周波数帯域と第2の伝送周波数帯域の切換を行うこと。」
「【0026】また、この二重帯域伝送方法では、第1の伝送周波数帯域と第2の伝送周波数帯域のいずれか一方で、変調信号を伝送するように制御する。」
「【0027】制御ステップは、チャンネル特性、伝送ビットエラーレート及び/又はユーザ選択に基づいて実行される。」
「【0028】第1の伝送周波数帯域は、例えば10GHz以下であり、第2の伝送周波数帯域は、例えば10GHz以上である。また、第1の伝送周波数帯域は、例えば5GHzから6GHzまでの間であり、第2の伝送周波数帯域は、例えば24GHz帯である。」
「【0029】また、この二重帯域伝送方法では、アップコンバートの制御と同時に、ベースバンド信号処理回路で用いられる変調度を制御する。」
「【0030】また、この二重帯域伝送では、第1の伝送周波数帯域と第2の伝送周波数帯域の切換に基づいて、ベースバンド信号処理手段で用いられる変調方式を切り換える。」
「【0031】また、この二重帯域伝送方法では、第1の伝送周波数帯域を用いて伝送するときは、ベースバンド信号処理手段が例えば4相位相偏移変調、差動4相位相偏移変調、8相位相偏移変調又は差動8相位相偏移変調を用いるように制御する。」
「【0032】また、この二重帯域伝送方法では、第2の伝送周波数帯域を用いて伝送するときには、ベースバンド信号処理手段が例えば4相位相偏移変調、差動4相位相偏移変調、8相位相偏移変調、差動8相位相偏移変調、16値振幅変調又は64値振幅変調を用いるように制御する。」
「【0033】また、この二重帯域伝送方法では、伝送チャンネルの帯域幅が一定となうようにベースバンド信号処理回路及びアップコンバートを制御する。」
「【0034】また、この二重帯域伝送方法では、アップコンバートの電力レベルを制御する。」
「【0035】ベースバンド信号処理回路は、例えば直交周波数分割多重方式を用いる。」
「【0036】また、この二重帯域伝送方法では、記第1の伝送周波数帯域と第2の伝送周波数帯域で伝送するときは、互いに異なるアンテナを用いる。」
「【0037】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る二重帯域送受信装置及び二重帯域伝送方法について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明を適用した二重帯域送受信機(a dualband transceiver)の具体的な構成を示すブロック図である。」
「【0038】この二重帯域送受信機は、図1に示すように、データを第1の中間周波数IF1のデータに変調するベースバンド信号処理回路1と、ベースバンド信号処理回路1からの変調されたデータ(以下、単に変調データという。)を第2の中間周波数IF2の変調データにアップコンバートする第1のRF回路2と、第2の中間周波数IF2の変調データを第3の中間周波数IF3の変調データにアップコンバートする第2のRF回路3と、第2の中間周波数IF2の変調データ、第3の中間周波数IF3の変調データをそれぞれ送信するアンテナ4,5と、第2の中間周波数IF2の変調データを切り換えてアンテナ4又は第2のRF回路3に供給する切換スイッチ6と、切換スイッチ6等を制御する制御回路8とを備える。」
「【0039】ベースバンド信号処理回路1は、制御回路8に制御の下に、後述する所定の変調方式によって、入力されるデータを第1の中間周波数IF1の変調データに変調して、第1のRF回路2に供給する。第1のRF回路2は、アップコンバータからなり、ベースバンド信号処理回路1からの変調データの搬送波の周波数を、第1の中間周波数IF1から第2の中間周波数IF2にアップコンバートして、切換スイッチ6に供給する。」
「【0040】切換スイッチ6は、第2の中間周波数IF2の搬送波を有する変調データを、制御回路8の制御の下に、アンテナ4又は第2のRF回路3に供給する。アンテナ4は、切換スイッチ6を介して供給される第2の中間周波数IF2の搬送波を有する変調データを空中に送出する。したがって、アンテナ4から送出される変調データの伝送周波数帯域RF1は、第2の中間周波数IF2に対応している。」
「【0041】一方、第2のRF回路3は、アップコンバータからなり、切換スイッチ6を介して供給される変調データの搬送波の周波数を、第2の中間周波数IF2から第3の中間周波数IF3にアップコンバートして、アンテナ5に供給する。ここで、第3の中間周波数IF3は、第2の中間周波数IF2よりも高い。そして、アンテナ5は、第3の中間周波数IF3の搬送波を有する変調データを空中に放出する。したがって、アンテナ5から送出される変調データの伝送周波数帯域RF2は、第3の中間周波数IF3に対応している。」
「【0042】切換スイッチ6は、制御回路8によって制御されるスイッチ駆動回路7によって駆動される。すなわち、制御回路8は、スイッチ駆動回路7を介して切換スイッチ6の切換動作を制御して、空中の伝送が伝送周波数帯域RF1で行われるか、伝送周波数帯域RF2で行われるかを決定する。また、制御回路8は、伝送周波数帯域RF1を用いて伝送するときは、第2のRF回路3の電源をオフにする、すなわち動作を停止する制御を行う。」
「【0043】さらに、制御回路8は、ベースバンド信号処理回路1で用いられる変調方式(modulation technique)及び/又は変調度(modulation depth)を選択的に変更する。また、制御回路8は、第1のRF回路2の出力の電力レベルを制御する。」
「【0044】ここで、制御回路8の具体的な動作について説明する。」
「【0045】制御回路8には、図1に示すように、複数の情報、例えばチャンネル品質(channel quality)、ユーザ選択(user preference)、チャンネル有効性(channel availability)、ビットエラーレート(bit error rate、以下、BERという。)等に基づき、例えばベースバンド信号処理回路1の変調方式及び変調度、第1のRF回路2の出力の電力レベル、伝送周波数帯域RF1,RF2を選択するための切換スイッチ6を同時に制御する。」
「【0046】したがって、この二重帯域送受信機は、2つの伝送周波数帯域RF1,RF2を切り換え選択して伝送を行うことができる。ここで、伝送周波数帯域RF1は、伝送周波数帯域RF2よりも低く、例えば10GHz以下である。」
「【0047】一般のアップ/ダウンコンバータに対する要求、及びより周波数が高い相互変調積(intermodulation product)及び混変調(images)を最小にするために、低い伝送周波数帯域器RF1は、高い伝送周波数帯域RF2に対して特別な比率となるように選択し、例えば50%以上とする。この結果、高い伝送周波数帯域器RF2を、例えば10GHz以上とし、この帯域は、見通線通信(line on sight communication:以下、LOS通信という。)に適している。本発明を適用した二重帯域送受信機を備える2つの通信装置は、LOS動作においてはお互いを見通せ、利用可能な最大周波数、例えば伝送周波数帯域RF2で動作するように、自動的に切り換わる。」
「【0048】ところで、高い周波数帯域での通信では、アンテナ5の利得を高くすることができ、周波数が高くなるほど、アンテナ素子の幾何学的な寸法を小さくすることができる。このことによって、LOSチャンネルが実現でき、また、利得が高いアンテナが利用可能になり、反射波の物理的な減衰が非常に大きく、LOSチャンネルは、見通線外(non-line on sight:以下、NLOSという。)チャンネルと比較して、より優位である。したがって、本発明を適用した二重帯域送受信機を備える通信装置では、制御回路8の制御によって変調度を高めることができ、スペクトル効率(spectral efficiency)を高めることができるとともに、ユーザのデータレートを高めることができる。そして、ユーザが角を曲がり、LOS通信ができなくなると、制御回路8は、例えば受信されるチャンネルの品質、BER、有効性によって、そのチャンネル品質が劣化又は切断されることを検出する。」
「【0049】制御回路8は、例えば受信チャンネルのBERに基づいてチャンネル品質が次第に劣化していることを検出すると、伝送周波数帯域をRF2からRF1に切り換える制御を行う。すなわち、制御回路8は、第2のRF回路3を停止させ、第1のRF回路2を最終段として動作させる。この結果、LOS通信からNLOS通信に切り換わる。このNLOS通信では、例えば室内等の環境においては、電波は、壁を通り抜けることができる。この場合、制御回路8は、ベースバンド信号処理回路1で用いられる変調方式を後述するように変更するとともに、その変調度を低下させ、チャンネルの帯域幅を一定とする。この結果、データレートは低下するが、ユーザは、通信を継続することができ、通信が完全に遮断されることはない。」
「【0050】ここで、低い伝送周波数帯域RF1は、例えば800MHz帯、2.4GHz帯、5?6GHz帯であり、高い伝送周波数帯域RF2は、それらに対応して、例えば10GHz帯、17GHz帯、24?60GHz帯である。特に、室内環境において、高速のデータレートが要求されるときは、伝送周波数帯域RF1は5?6GHz帯、伝送周波数帯域RF2は24?60GHzが好ましい。」
「【0051】本発明を適用した二重帯域送受信機を用いた通信装置は、20?30GHzの範囲において一定の帯域幅を有するように設計されている。この周波数チャンネルにおいては、ビットレートが高いOFDM(直交周波数分割多重)の技術を用いることができる。NLOS通信の場合、OFDMの副搬送波の変調方式としては、例えば位相偏移変調(Phase Shift Keying:PSK)、差動位相偏移変調(Differential Shift Keying:DPSK)、4相PSK(Quadrature PSK:QPSK)、DQPSK、8PSK又はD8相PSKを用いることができる。伝送周波数帯域RF2を用いたLOS通信では、変調方式として、例えばQPSK、DQPSK、8PSK、D8PSK、16PSK、D16PSK、16値直交振幅変調(16 Quadrature Amplitude Modulation:16QAM)、64QAMを用いることができる。この場合、空中でのデータレートは、帯域幅が一定ならば、伝送周波数帯域RF1(NLOS通信)では90Mb/sまでであり、伝送周波数帯域RF2(LOS通信)では150Mb/sまで高めることができる。」
「【0052】図1に示すように、互いに異なる伝送周波数帯域RF1,RF2に対しては、互いに異なるアンテナ4,5が用いられ、これらのアンテナ5,6は、それぞれ1つ以上のアンテナ素子を備え、適応又はスマートアンテナからなる。」
「【0053】なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、例えば上述の実施例では記憶装置11、ユーザインタフェース12、制約解決装置13、コマンド発生器14を、個々に装置としているが、これらを1つのコンピュータで実現してもよい。」
「【0054】
【発明の効果】本発明では、ベースバンド信号処理回路において、伝送データを第1の中間周波数の変調信号に変調し、この第1の中間周波数の変調信号を第2の中間周波数の変調信号にアップコンバートする。そして、例えばチャンネル品質に基づいて、第1の中間周波数の変調信号又は第2の中間周波数の変調信号を第1の伝送周波数帯域又は第2の伝送周波数帯域で伝送する。このとき、第1の伝送周波数帯域と第2の伝送周波数帯域の切換と同時に、ベースバンド信号処理回路における変調パラメータを変更する。これにより、本発明では、LOS通信では、高い伝送データレートを実現することができるとともに、例えばユーザが角の曲がってNLOS通信に切り換わったときでも、通信を継続することができる。」
「【図1】



2.記載事項の検討
ここで、上記引用例の記載について検討する。

第一に、上記段落【0001】の「本発明は、二重帯域送受信装置(dual band transceiver)及び二重帯域伝送方法(dual band transmission method)に関する。」との、段落【0026】に「また、この二重帯域伝送方法では、第1の伝送周波数帯域と第2の伝送周波数帯域のいずれか一方で、変調信号を伝送するように制御する。」との、段落【0037】の「以下、本発明に係る二重帯域送受信装置及び二重帯域伝送方法について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明を適用した二重帯域送受信機(a dualband transceiver)の具体的な構成を示すブロック図である。」と記載されていることからみて、引用例記載の発明は「第1の伝送周波数帯域と第2の伝送周波数帯域のいずれか一方で、変調信号を伝送する二重帯域送受信装置を用いた二重帯域伝送方法」である。
第二に、上記段落【0025】に「本発明に係る二重帯域伝送方法では、ベースバンド信号処理回路において、伝送データを第1の中間周波数の変調信号に変調し、第1の中間周波数の変調信号を第2の中間周波数の変調信号にアップコンバートする。第1の中間周波数の変調信号又は第2の中間周波数の変調信号を第1の伝送周波数帯域又は第2の伝送周波数帯域で伝送する。」との記載からみて、引用例記載の発明では「伝送データは、第1の伝送周波数帯域の第1の中間周波数の変調信号として、又は、第2の伝送周波数帯域の第2の中間周波数の変調信号として伝送される」ものである。
第三に、上記段落【0050】の「ここで、低い伝送周波数帯域RF1は、例えば800MHz帯、2.4GHz帯、5?6GHz帯であり、高い伝送周波数帯域RF2は、それらに対応して、例えば10GHz帯、17GHz帯、24?60GHz帯である。」との記載からみて、引用例記載の発明の「第1の伝送周波数帯域は、800MHz帯、2.4GHz帯、5?6GHz帯のいずれかであり、第2の伝送周波数帯域は、10GHz帯、17GHz帯、24?60GHz帯のいずれかである」ものである。
第四に、上記段落【0047】の「一般のアップ/ダウンコンバータに対する要求、及びより周波数が高い相互変調積(intermodulation product)及び混変調(images)を最小にするために、低い伝送周波数帯域器RF1は、高い伝送周波数帯域RF2に対して特別な比率となるように選択し、例えば50%以上とする。この結果、高い伝送周波数帯域器RF2を、例えば10GHz以上とし、この帯域は、見通線通信(line on sight communication:以下、LOS通信という。)に適している。本発明を適用した二重帯域送受信機を備える2つの通信装置は、LOS動作においてはお互いを見通せ、利用可能な最大周波数、例えば伝送周波数帯域RF2で動作するように、自動的に切り換わる。」との、段落【0048】の「ところで、高い周波数帯域での通信では、アンテナ5の利得を高くすることができ、周波数が高くなるほど、アンテナ素子の幾何学的な寸法を小さくすることができる。このことによって、LOSチャンネルが実現でき、また、利得が高いアンテナが利用可能になり、反射波の物理的な減衰が非常に大きく、LOSチャンネルは、見通線外(non-line on sight:以下、NLOSという。)チャンネルと比較して、より優位である。したがって、本発明を適用した二重帯域送受信機を備える通信装置では、制御回路8の制御によって変調度を高めることができ、スペクトル効率(spectral efficiency)を高めることができるとともに、ユーザのデータレートを高めることができる。そして、ユーザが角を曲がり、LOS通信ができなくなると、制御回路8は、例えば受信されるチャンネルの品質、BER、有効性によって、そのチャンネル品質が劣化又は切断されることを検出する。」との、段落【0049】の「制御回路8は、例えば受信チャンネルのBERに基づいてチャンネル品質が次第に劣化していることを検出すると、伝送周波数帯域をRF2からRF1に切り換える制御を行う。すなわち、制御回路8は、第2のRF回路3を停止させ、第1のRF回路2を最終段として動作させる。この結果、LOS通信からNLOS通信に切り換わる。このNLOS通信では、例えば室内等の環境においては、電波は、壁を通り抜けることができる。この場合、制御回路8は、ベースバンド信号処理回路1で用いられる変調方式を後述するように変更するとともに、その変調度を低下させ、チャンネルの帯域幅を一定とする。この結果、データレートは低下するが、ユーザは、通信を継続することができ、通信が完全に遮断されることはない。」との記載からみて、引用例記載の発明は「見通線通信(LOS通信)を行っているときに受信チャンネルのBERに基づいてチャンネル品質が次第に劣化していることを検出すると、伝送周波数帯域を第2の伝送周波数帯域から第1の伝送周波数帯域に切り換え、見通線外通信(NLOS通信)を行う」ものである。
第五に、上記段落【0051】の「本発明を適用した二重帯域送受信機を用いた通信装置は、20?30GHzの範囲において一定の帯域幅を有するように設計されている。この周波数チャンネルにおいては、ビットレートが高いOFDM(直交周波数分割多重)の技術を用いることができる。NLOS通信の場合、OFDMの副搬送波の変調方式としては、例えば位相偏移変調(Phase Shift Keying:PSK)、差動位相偏移変調(Differential Shift Keying:DPSK)、4相PSK(Quadrature PSK:QPSK)、DQPSK、8PSK又はD8相PSKを用いることができる。伝送周波数帯域RF2を用いたLOS通信では、変調方式として、例えばQPSK、DQPSK、8PSK、D8PSK、16PSK、D16PSK、16値直交振幅変調(16 Quadrature Amplitude Modulation:16QAM)、64QAMを用いることができる。この場合、空中でのデータレートは、帯域幅が一定ならば、伝送周波数帯域RF1(NLOS通信)では90Mb/sまでであり、伝送周波数帯域RF2(LOS通信)では150Mb/sまで高めることができる。」との記載からみて、引用例記載の発明は「第2の伝送周波数帯域を用いる見通線通信(LOS通信)と、第1の伝送周波数帯域を用いる見通線外通信(NLOS通信)のいずれにおいてもOFDM(直交周波数分割多重)を用いる」ものである。

3.引用発明
上記「2.記載事項の検討」で述べたところからみて、引用例には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「第1の伝送周波数帯域と第2の伝送周波数帯域のいずれか一方で、変調信号を伝送する二重帯域送受信装置を用いた二重帯域伝送方法であって、
伝送データは、第1の伝送周波数帯域の第1の中間周波数の変調信号として、又は、第2の伝送周波数帯域の第2の中間周波数の変調信号として伝送され、
第1の伝送周波数帯域は、800MHz帯、2.4GHz帯、5?6GHz帯のいずれかであり、第2の伝送周波数帯域は、10GHz帯、17GHz帯、24?60GHz帯のいずれかであり、
通線通信(LOS通信)を行っているときに受信チャンネルのBERに基づいてチャンネル品質が次第に劣化していることを検出すると、伝送周波数帯域を第2の伝送周波数帯域から第1の伝送周波数帯域に切り換え、見通線外通信(NLOS通信)を行うものであって、
第2の伝送周波数帯域を用いる見通線通信(LOS通信)と、第1の伝送周波数帯域を用いる見通線外通信(NLOS通信)のいずれにおいてもOFDM(直交周波数分割多重)を用いる、
二重帯域伝送方法。」

第5.対比
本願発明と引用発明を対比する。

1.「通信チャネルによって互いにリンクされた少なくとも2つのトランシーバ間で情報を送信するための方法であって・・・情報を送信するための方法。」
引用発明は「第1の伝送周波数帯域と第2の伝送周波数帯域のいずれか一方で、変調信号を伝送する二重帯域送受信装置を用いた二重帯域伝送方法」であるから、この「二重帯域伝送方法」には最低2つの「二重帯域送受信装置」が必要である。また、引用発明は「第1の伝送周波数帯域と第2の伝送周波数帯域のいずれか一方で、変調信号を伝送する」ものであり、「伝送データは、第1の伝送周波数帯域の第1の中間周波数の変調信号として、又は、第2の伝送周波数帯域の第2の中間周波数の変調信号として伝送され」るものであるから、引用発明の、この最低2つの「二重帯域送受信装置」は「第1の伝送周波数帯域の第1の中間周波数の変調信号として、又は、第2の伝送周波数帯域の第2の中間周波数の変調信号」という「通信チャネルによって互いにリンクされ」ているということができる。更に、引用発明は「・・・変調信号を伝送する・・・二重帯域伝送方法」であって、加えて、「伝送データは、第1の伝送周波数帯域の第1の中間周波数の変調信号として、又は、第2の伝送周波数帯域の第2の中間周波数の変調信号として伝送され」るものであるから、引用発明も「伝送データ」という「情報を」この最低2つの「二重帯域送受信装置」の間で「送信するための方法」ということができる。
結局、引用発明と本願発明は「通信チャネルによって互いにリンクされた少なくとも2つのトランシーバ間で情報を送信するための方法であって・・・情報を送信するための方法。」である点で一致する。

2.「該情報は、動作周波数を有する少なくとも1つの搬送信号によって搬送され」
引用発明は「第1の伝送周波数帯域と第2の伝送周波数帯域のいずれか一方で、変調信号を伝送する」ものであり、「伝送データは、第1の伝送周波数帯域の第1の中間周波数の変調信号として、又は、第2の伝送周波数帯域の第2の中間周波数の変調信号として伝送され」るものであるから、引用発明と本願発明は「該情報は、動作周波数を有する少なくとも1つの搬送信号によって搬送され」という点で一致する。

3.「該情報を送信するための方法は、周波数選択ステップであって、該周波数選択ステップの過程で、前記動作周波数が、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動的に選択される、周波数選択ステップ、を含み」
まず、本願発明の「前記動作周波数が、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動的に選択される」の「第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数」と「動的に選択される」が、具体的にどのような意味を持つのか、本願明細書及び図面の記載に基づいて以下検討する。
ここで、本願明細書に、

「【背景技術】
【0002】
このような送信方法は、現在、無線電気通信システム、たとえば複数の無線基地局が別の複数の移動端末と通信することを目的とした携帯電話システムで使用されている。現在使用されている携帯電話システムは、たとえばGSM(移動体通信用グローバルシステム(Global System for Mobiles)の略語)のようないわゆる第2世代のもの、又は、UMTS(汎用移動電気通信システム(Universal Mobile Telecommunication System)の略語)のような第3世代のものである。GSMは、[824.2MHz?893.8MHz]の周波数帯域で動作し、UMTSは、[1920MHz?2170MHz]の周波数帯域で動作する。」
「【0063】
図6は、携帯電話電気通信システムCSYST2における、本発明の別の実施形態を示している。この携帯電話電気通信システムCSYST2は、少なくとも1つの無線基地局BS0及び整数N個の移動端末MT1…MTNを含む。本発明のこの実施形態では、基地局BS0は、第1の周波数間隔に含まれる周波数f1を有するパイロット信号ps1、及び、第2の周波数間隔に含まれる周波数f2を有するパイロット信号ps2を定期的にブロードキャストすることを目的とする。各移動端末MTk(k=1からN)は、少なくとも1つのチャネル監視ステップを実行するためのチャネル監視手段を含む。このチャネル監視ステップの過程で、当該移動端末MTkは、上記周波数f1及びf2が、当該移動端末MTkの現在のアクティブな基地局と通信するための動作周波数として選択するのに適しているかを解析する。このチャネル監視ステップの調査結果は、各端末MTkに含まれるメモリ手段に記憶された表TABkに記憶される。図6に示す実施形態では、各端末MTk(k=1からN)は、さらに、少なくとも1つのチャネル状態報告ステップを実行するための、図示しないチャネル状態報告手段も含む。このチャネル状態報告手段は、たとえば、少なくとも1つの無線周波数モジュール及び少なくとも1つの送信アンテナに接続されたベースバンドユニットである。このチャネル状態報告ステップの過程で、当該移動端末MTkは、自身が実行したチャネル監視ステップの調査結果を、少なくとも1つの報告信号Rptkを送信することによって基地局BS0に報告する。」
「【0064】
本発明のこの実施形態では、無線基地局BS0は、図1に示すトランシーバの1つと同様のものであり、少なくとも1つの周波数割り当てステップを実行するための周波数割り当て手段FALMBSを含む。この周波数割り当てステップの過程で、利用可能な周波数の1つが、各移動端末MTk(k=1からN)に割り当てられ、それによって、上記移動端末MTkは、無線基地局BS0と通信することが可能になる。当該割り当ては、たとえば、基地局BS0に含まれるメモリ手段に記憶された表TABBSの内容に従って第2の周波数間隔から選択された周波数を優先的に割り当てることにより行われるが、チャネル解析手段CHAMBSにより周波数割り当て手段FALMBSに提供されたそれ以外の情報に従って第2の周波数間隔から選択された周波数を優先的に割り当てることによっても行われる。このチャネル解析手段CHAMBSは、いくつかの実施形態では、図1及び図2に関してすでに説明したような表TABBSを含むことができる。したがって、周波数割り当て手段FALMBSは、送信部TRBS及びアンテナANTBSを介して、周波数選択信号Fselkを各移動端末MTk(k=1からN)へ配信し、当該端末MTkに、この選択信号Fselkによって表された周波数を使用して基地局BS0と通信するように命令する。」

と記載されているように、本願発明は「無線基地局BS0」と「移動端末MTk(k=1からN)」が存在するような「携帯電話システム」を前提としており、このような「携帯電話システム」では、一つの「無線基地局BS0」に複数の「移動端末MTk(k=1からN)」が接続されたときや、「移動端末MTk(k=1からN)」がある「無線基地局」から他の「無線基地局」の間でハンドオーバされるときにでも通信を維持出来るように、複数の周波数の中から一つの周波数を「移動端末MTk(k=1からN)」に割り当てる機能を有しているのが通常である。すなわち、本願発明の「前記動作周波数が、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動的に選択される」の「第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数」とは、「第1の周波数間隔」と「第2の周波数間隔」にそれぞれ1つづつの「周波数」が含まれるという意味ではなく、「第1の周波数間隔」と「第2の周波数間隔」にそれぞれ複数づつの「周波数」が含まれている意味であって、その結果、本願発明の「・・・周波数の中から動的に選択される」とは、2つの周波数のいずれかを動的に選択するという意味ではなく、複数の周波数の中から動的に選択するという意味であると認めることができる。
更に、本願明細書に、

「【0039】
図1は、無線電気通信システムSYSTを図的に示している。この無線電気通信システムSYSTは、通信チャネルによって互いにリンクされることを目的とした少なくとも2つのトランシーバTRA及びTRBを含む。この通信チャネルを通じて、情報が、動作周波数を有する少なくとも1つの搬送信号Csgによって搬送されることになる。本発明のこの実施形態では、各トランシーバTRA及びTRBは、以下に示すような第1の基準周波数f1、第2の基準周波数f2、及び第3の基準周波数f3をそれぞれ中心にした隣接しない第1の周波数間隔、第2の周波数間隔、及び第3の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動作周波数を動的に選択するための周波数選択手段(CHAMA、FALMA、RFMA1、RFMA2、RFMA3)及び(CHAMB、FALMB、RFMB1、RFMB2、RFMB3)を含む。」
「【0042】
本発明のこの実施形態は、3つの分離した周波数間隔の1つで利用可能な周波数の適応した選択を提供する。これら3つの分離した周波数間隔の第1のものは、たとえば、第2の間隔及び第3の間隔よりも低い周波数を含み、したがって、上記第1の間隔に含まれる周波数は、見通し外(NLOS)通信状態で情報を搬送するのに特によく適している。第2の間隔に含まれる周波数は、高いデータレートの通信中に情報を搬送するのに特によく適しており、第3の間隔に含まれる周波数は、さらによく適している。周波数選択手段(CHAMA、FALMA、RFMA1、RFMA2、RFMA3)及び(CHAMB、FALMB、RFMB1、RFMB2、RFMB3)によって実行される動的な選択により、上述した理由から供給不足である第1の間隔に含まれる周波数の使用を、このような使用が不可避である特定の状況に制限することが可能になる。第2の間隔及び第3の間隔に含まれる周波数の使用は、それ以外で好ましいものである。」
「【0043】
本発明のこの実施形態では、各トランシーバTRA及びTRBは、各関連した送信機が受けることになる通信状態を解析して、選択信号SELA及びSELBを周波数割り当て手段FALMA及びFALMBに提供するためのチャネル解析手段CHAMA及びCHAMBを含む。この周波数割り当て手段FALMA及びFALMBは、動作周波数が適切に
調整されるように、選択信号SELA及びSELBの内容を、制御信号(Csa1、Csa2、Csa3)及び(Csb1、Csb2、Csb3)の対応する値に変換するためのものである。」
「【0044】
詳細には、対応する端末によってサポートされる通信があらかじめ定義された高品質のサービスの生成を必要とすることに、チャネル解析手段CHAMA及びCHAMBが気付くと、上記チャネル解析手段CHAMA及びCHAMBによって生成された選択信号SELA及びSELBの内容は、動作周波数が第1の周波数間隔から選択されるように命令する。これは、高品質サービスに加入している特権ユーザ、又は、第1の周波数間隔から選択された比較的低い周波数の割り当てを必要とする特定のアプリケーションのユーザを自動的且つ適切に取り扱う簡単でコスト効率の良い方法である。」
「【0045】
本発明のこの実施形態では、チャネル解析手段CHAMA及びCHAMBは、通信チャネルに影響を与える通信状態を表す少なくとも1つのパラメータ(Ma1、Ma2、Ma3)及び(Mb1、Mb2、Mb3)を評価するための手段も含む。この少なくとも1つのパラメータは、たとえば、第1の周波数間隔、第2の周波数間隔、及び第3の周波数間隔に対応する第1の基準周波数f1、第2の基準周波数f2、及び第3の基準周波数f3で送信機TRA又はTRBにより受信されたパイロット信号に関して測定された電力値である。評価されたパラメータが、所与の通信チャネルのあらかじめ定義されたしきい値未満になったことに、チャネル解析手段CHAMA及びCHAMBが気付いた時、すなわち、このチャネルを通じて通信を確立又は維持するには通信状態があまりにも悪い時、チャネル解析手段CHAMA及びCHAMBによって生成された選択信号SELA及びSELBの内容は、この通信チャネルに関連した周波数間隔を廃棄して、それよりもすぐ下の低い周波数間隔から動作周波数を選択するように命令する。これは、比較的低い周波数の割り当てを必要とする悪い通信状態又は悪化している通信状態を自動的且つ適切に取り扱う簡単でコスト効率の良い方法である。」

との記載からみて、本願発明の「前記動作周波数が、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動的に選択される」の「動的に選択される」とは、上記段落【0045】に記載される「評価されたパラメータが、所与の通信チャネルのあらかじめ定義されたしきい値未満になったことに、チャネル解析手段CHAMA及びCHAMBが気付いた時、すなわち、このチャネルを通じて通信を確立又は維持するには通信状態があまりにも悪い時、チャネル解析手段CHAMA及びCHAMBによって生成された選択信号SELA及びSELBの内容は、この通信チャネルに関連した周波数間隔を廃棄して、それよりもすぐ下の低い周波数間隔から動作周波数を選択するように命令する。」にもみられるような、通信中であっても通信状態があまりにも悪い時には選択を行うことを指すものと認めることができる。

以上のことを前提として、本願発明の「該情報を送信するための方法は、周波数選択ステップであって、該周波数選択ステップの過程で、前記動作周波数が、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数の中から動的に選択される、周波数選択ステップ、を含み」という部分と、引用発明を比較する。

まず、引用発明の「第1の伝送周波数帯域は、800MHz帯、2.4GHz帯、5?6GHz帯のいずれかであり、第2の伝送周波数帯域は、10GHz帯、17GHz帯、24?60GHz帯のいずれかであ」って、引用発明が用いる「第1の伝送周波数帯域」である800MHz帯、2.4GHz帯、5?6GHz帯と、「第2の伝送周波数帯域」である10GHz帯、17GHz帯、24?60GHz帯は、本願発明の「第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔」と同様に、互いに隣接していないものと認めること、及び、引用発明の「第1の伝送周波数帯域」「第2の伝送周波数帯域」と本願発明の「第1の周波数間隔」「第2の周波数間隔」がそれぞれ対応することを認めることができる。
また、引用発明は「伝送データは、第1の伝送周波数帯域の第1の中間周波数の変調信号として、又は、第2の伝送周波数帯域の第2の中間周波数の変調信号として伝送され」るものであって、「通線通信(LOS通信)を行っているときに受信チャンネルのBERに基づいてチャンネル品質が次第に劣化していることを検出すると、伝送周波数帯域を第2の伝送周波数帯域から第1の伝送周波数帯域に切り換え、見通線外通信(NLOS通信)を行うものであ」るから、引用発明と本願発明は「周波数選択ステップ」を有する点、及び、その「周波数選択ステップ」において、「前記動作周波数が、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔」の中から「動的に選択される」点では一致するが、本願発明の「第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数」とは、「第1の周波数間隔」と「第2の周波数間隔」にそれぞれ複数づつの「周波数」が含まれているものであるのに対し、引用発明は「伝送データは、第1の伝送周波数帯域の第1の中間周波数の変調信号として、又は、第2の伝送周波数帯域の第2の中間周波数の変調信号として伝送され」るもの、すなわち、「第1の伝送周波数帯域」には「第1の中間周波数」という一つの周波数のみが、また、「第2の伝送周波数帯域」には「第2の中間周波数」という一つの周波数のみが含まれている点で相違している。

4.「前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信及び前記第2の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信に、同じ伝送方式が使用される」
本願発明の「伝送方式」が、具体的にどのような意味を持つのか、本願明細書及び図面の記載に基づいて以下検討する。
ここで、本願明細書に、

「【0040】
各トランシーバTRA及びTRBは、この例では、所与の伝送方式に従って変調及び符号化されたベースバンド信号Bdsa及びBdsbの配信又は受信を目的としたベースバンドユニットBBUA及びBBUBを含む。この所与の伝送方式は、この電気通信システムの配備前に定義されていることになる。このような方式は、たとえば、CDMA(符号分割多元接続(Code Division Multiple Access)の略語)方式又はTDMA(時分割多元接続(Time Division Multiple Access)の略語)方式とすることができる。ベースバンドユニットBBUA及びBBUBは、したがって、選択された伝送方式に従ってベースバンド信号Bdsa及びBdsbの符号化、復号、変調、及び復調を行うのに必要なすべてのハードウェアを好都合に含む。」

と記載されているところからみて、本願発明における「伝送方式」とは「CDMA(符号分割多元接続(Code Division Multiple Access)の略語)方式」「TDMA(時分割多元接続(Time Division Multiple Access)の略語)方式」というように、多重化を行うための手法を指している。

これに対し、引用発明は「第2の伝送周波数帯域を用いる見通線通信(LOS通信)と、第1の伝送周波数帯域を用いる見通線外通信(NLOS通信)のいずれにおいてもOFDM(直交周波数分割多重)を用いる」ものであって、OFDM(直交周波数分割多重)も多重化を行う手法であるから、引用発明と本願発明は「前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信及び前記第2の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信に、同じ伝送方式が使用される」点で一致している。

第6.一致点・相違点
上記「第5.対比」で述べたところからみて、本願発明と引用発明は以下の点で一致し、相違する。

[一致点]
「通信チャネルによって互いにリンクされた少なくとも2つのトランシーバ間で情報を送信するための方法であって、該情報は、動作周波数を有する少なくとも1つの搬送信号によって搬送され、該情報を送信するための方法は、周波数選択ステップであって、該周波数選択ステップの過程で、前記動作周波数が、隣接しない少なくとも第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔の中から動的に選択される、周波数選択ステップ、を含み、
前記第1の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信及び前記第2の周波数間隔から選択された動作周波数での信号の送信に、同じ伝送方式が使用される、
情報を送信するための方法。」

[相違点]
本願発明の「第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数」とは、「第1の周波数間隔」と「第2の周波数間隔」にそれぞれ複数づつの「周波数」が含まれているものであるのに対し、引用発明は「伝送データは、第1の伝送周波数帯域の第1の中間周波数の変調信号として、又は、第2の伝送周波数帯域の第2の中間周波数の変調信号として伝送され」るもの、すなわち、「第1の伝送周波数帯域」には「第1の中間周波数」という一つの周波数のみが、また、「第2の伝送周波数帯域」には「第2の中間周波数」という一つの周波数のみが含まれている点。

第7.当審の判断
しかし、携帯電話システムに関する技術において、多元接続を周波数分割多元接続(FDMA)で実現することは例を挙げるまでもなく極めて良く用いられていること(以下「周知技術」という。)にすぎない。そして、引用例段落【0009】【0010】に従来例として「移動通信装置」や「セルラ電話機」について言及があること、引用例段落【0002】に例示される800MHz帯はUMTS,GSM,CDMA等の携帯電話システムで用いられる周波数帯であることからみて、引用発明はその周波数帯に複数のチャネルを有する携帯電話システムにも適用できるものであって、引用発明において、多元接続を周波数分割多元接続(FDMA)で実現することを採用し、本願発明のように「第1の周波数間隔及び第2の周波数間隔内に含まれる周波数」において、「第1の周波数間隔」と「第2の周波数間隔」にそれぞれ複数づつの「周波数」が含まれているものとし、更に、それらの中から1つを選択するように構成することは、当業者が容易に想到し得たことにすぎない。
また、本願発明の奏する作用効果も当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明、および、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第8.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明、および、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2?16に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-12 
結審通知日 2013-08-20 
審決日 2013-09-02 
出願番号 特願2005-373192(P2005-373192)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久松 和之  
特許庁審判長 松尾 淳一
特許庁審判官 江口 能弘
奥村 元宏
発明の名称 スペクトル資源の高度化された割り当てを含む情報送信方法  
代理人 梶並 順  
代理人 田口 雅啓  
代理人 曾我 道治  
代理人 大井 一郎  

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