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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1283932 |
審判番号 | 不服2012-21250 |
総通号数 | 171 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-10-26 |
確定日 | 2014-01-22 |
事件の表示 | 特願2009-541567「安全な電話バンキングのための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月26日国際公開、WO2008/076776、平成22年 4月30日国内公表、特表2010-514272〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は,2007年12月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年12月15日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成24年6月19日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年10月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。 その請求項1に係る発明は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,平成24年10月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める(以下,「本願発明」という。)。 「【請求項1】 第1の通信インターフェースによって電話機からデュアルトーン多重周波数(DTMF)トーンを受け取ることと, 前記電話機から受け取った前記DTMFトーンを暗号化することと, 第2の通信インターフェースによってセキュリティサーバへ前記暗号化されたDTMFトーンを送ることと, 前記第1の通信インターフェースによって受け取った第1のDTMFトーンを第1の記号に変換することと, 複数の変換表から擬似ランダム的に変換表を選択することと, 前記選択された翻訳表を用いて前記第1の記号を第2の記号に変換することと, 前記第2の記号を第2のDTMFトーンに変換することと, 前記暗号化されたDTMFトーンとして前記第2のDTMFトーンを送ることと,を備える,スモールフォームファクタの電話セキュリティ装置上で動作する方法。」 2.引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された実願平2-76413号(実開平4-34053号)のマイクロフィルム(以下,「引用例」という。)には,「DTMF信号通信機器」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「 [産業上の利用分野] 本考案は,dual tone multi-frequency(DTMF)信号を利用した安全性・信頼性の高いデータ通信を行うことのできるDTMF信号通信機器に関する。 [従来の技術] 電話機から交換機に対して出力される選択信号の一規格としてDTMF信号がある。 このDTMF信号を利用することで簡易なデータ通信が可能となることから,これを利用した多様な機器(以下,DTMF信号通信機器という)が市場に提供されている。例えば,従来より知られるDTMF信号通信機器として,電話機に録音された通話内容を外出先から聞き取ることができる留守番電話機,外出先から作動及び停止が制御できるエアコンディショナー等がある。 [考案が解決しようとする課題] DTMF信号通信機器の普及に伴ってDTMF信号の送信機及び受信機が手軽に入手可能となり,DTMF信号を利用したデータ通信の利用が盛んとなった。 しかし,その反面,正当な利用者以外の第三者がDTMF信号通信機器を操作し,あるいはDTMF信号を用いたデータ通信内容を知ることが可能となった。 この様なDTMF信号を利用したデータ通信の安全性・信頼性の低下を防止するため,暗唱番号等を確認した後にのみデータ通信を許可するDTMF信号通信機器等が提案されているが,複数回のアクセスにより暗唱番号が解読される可能性があり万全とはいい難い。 本考案は上記課題を解決するためになされたもので,DTMF信号を利用した簡易なデータ通信の安全性・信頼性を高めることのできるDTMF信号通信機器を提供することを目的としている。」(1頁20行?3頁14行) (2)「第2図は,本考案の一実施例であるDTMF信号通信機器10のブロック図である。 図示するごとくDTMF信号通信機器10は,DTMF信号によるデータを受信するDTMF信号受信機器20と電話回線30との間に接続されて使用される。 DTMF信号通信機器10は,電話回線30の極性反転を検出する極性反転検出回路10a,該極性反転検出回路10aの検出結果に応じて接点切替を実行する切替リレー10b,DTMF信号をディジタル信号に変換するA/D変換器10c,後述する機能を有するデコーダ10d,該デコーダ10dのディジタル出力をDTMF信号に変換するD/A変換器10e及びタイマ10fから構成される。 ここで極性反転検出回路10aは,DTMF信号受信機器20がオフフック状態となったときに電話回線30に発生する極性の反転を検出する回路で,DTMF信号を利用したデータ通信の開始時期を検出する役割を果たす。その検出出力は図示するごとく切替リレー10bの励磁電流となり,極性反転の以前においては切替リレー10bを非励磁状態に,極性反転後においては励磁状態にする。([当審注]:「電話回線40」は「電話回線30」の誤記と認められる。) 切替リレー10bは,DTMF信号受信機器20と電話回線30の接続状態を切り替えるもので,両者の接続状態を直接的あるいはA/D変換器10cやデコーダ10d等を介在させて間接的の何れかに択一的に決定する。第2図には,極性反転検出回路10aにより電話回線30の極性反転が検出される以前の状態,すなわち切替リレー10bの励磁コイルが非通電の状態を示している。このとき,その接点は図示するごとく,DTMF信号受信機器20と電話回線30を直接的に接続する位置にある。そして,極性反転検出回路10aにより公衆電話回線30の極性反転が検出されると,励磁コイルへの励磁電流が通電され,その接点は切り替わってA/D変換器10c等を介在させた間接的接続状態となる。([当審注]:「DTMF信号受信機機20」,「公衆電話回線40」は,それぞれの「DTMF信号受信機器20」,「公衆電話回線30」の誤記と認められる。) この様に適宜通信回路に介在されるA/D変換器10c,デコーダ10d及びD/A変換器10eは,次のようにして電話回線30から入力されたDTMF信号を他のDTMF信号に変換する。 まず,電話回線30から入力されたDTMF信号は,A/D変換器10cによってそのDTMF信号(x)の表現している情報「x」に変換される。例えばA/D変換器10cは,数字「1」を表す周波数信号(1)が入力されると,これをディジタル信号「1」に変換する。 こうして入力されたDTMF信号の表現している情報「x」が判明すると,次段のデコーダ10dによりその情報「x」は,所定の規則性に則り他の情報「y」に変更される。本実施例においてデコーダ10dは,一種のシフト回路によりDTMF信号により表現される情報「x」を所定値「α」だけシフトさせる。第3図は,このデコーダ10dの機能を簡潔に図示したものである。 なお,所定値「α」とは,タイマ10fから出力される一定時間,例えば24時間の経過毎に出力される信号にしたがい,デコーダ10dが内部において順次加算していく変数である。 すなわち,第3図に示すごとく入力された情報「x」は,その時の所定値「α」に応じて別異の情報「y」に変更される。しかもこの別異の情報は,24時間毎に更新されることになる。 この様にしてデコーダ10dから別異の情報「y」が出力されると,その情報「y」を入力するD/A変換器10eは情報「y」を表現する周波数のDTMF信号(y)を出力してDTMF信号受信機器20へ出力する。すなわち,D/A変換器10eは,通常のDTMF信号発振器と同一の機能を有する。」(7頁7行?10頁18行) (3)「以上のごとく構成されるDTMF信号通信機器10により,次のような効果が明らかである。 まず,従来のDTMF信号受信機器20に対して本実施例のDTMF信号通信機器10に接続しようとも,DTMF信号受信機器20は電話回線30から呼び出し信号を受信してオフフック状態となり,通信可能状態となる。 すなわち,本実施例のDTMF信号通信機器10は,極性反転検出回路10a及び切替リレー10bを内蔵し,呼び出し信号等の通信プロトコルに準拠した信号を直接的にDTMF信号受信機器20に入力させる。このため,DTMF信号通信機器10の存在に影響されることなく,DTMF信号受信機器20は従来同様のデータ通信が可能となる。 そして,DTMF信号受信機器20がオフフック状態となったとき,極性反転検出回路10aの検出結果に応じて切替リレー10bが作動し,A/D変換器10c等が介在する。この状態においてDTMF信号通信機器10は,DTMF信号受信機器20の暗唱番号を24時間毎に変更する効果を奏する。 すなわち,実際に電話回線30から入力されたDTMF信号(x)は,第3図に示したごとく別異のDTMF信号(y)に変換され,しかもその内容はタイマ10f及びデコーダ10dの機能により24時間毎に更新される。例えば,DTMF信号受信機器20の暗唱番号がDTMF信号(1234)であったとすると,DTMF信号受信機器20にその番号(1234)を入力するためには,α=1であるときには電話回線30からDTMF信号(D123)を送信しなければならない。そして,24時間経過した後には自動的にα=2となり,電話回線30からDTMF信号(CD12)を送信しなければ,DTMF信号受信機器20にDTMF信号(1234)を入力することができない。 この様に,DTMF信号通信機器10を接続するだけで,自動的にDTMF信号受信機器20の暗唱番号を変更したと同様の効果が得られる。これにより,第三者が複数回のアクセスによりDTMF信号受信機器20の暗唱番号を解読しようとしても,解読は不可能となり,データ通信の安全性が高まる。 更に,上記の暗唱番号ばかりでなく,DTMF信号通信機器10の介在により,データ通信の内容も総て一定規則性によりDTMF信号の組合せが変更される。 従って,第三者がDTMF信号受信機器20へのデータ通信内容を不法に受信しようとも,受信したDTMF信号自体は何らの情報を表現したものではなく,情報の秘密性が保持される。」(10頁19行?13頁10行) (4)「なお,上記実施例ではDTMF信号通信機器10をDTMF信号受信機器20に単独的に接続し,利用する場合について説明した。従ってこの場合には,DTMF信号受信機器20に必要な情報を送信する際してDTMF信号通信機器10の組合せ変更の規則性を前もって知り,これと逆の組合せ変更の規則性により処理したDTMF信号を送信する必要がある。 そこで,この様な煩雑な前処理を自動化するために,第4図に示すごとく他の実施例のDTMF信号通信機器40をDTMF信号を送信するDTMF信号送信機器50と電話回線30との間に接続してもよい。この時,DTMF信号送信機器50に接続されるDTMF信号通信機器40の内蔵するデコーダは,第3図に示したデコードの規則性と全く逆の組合せ変更を実行するものである。 また,第3図及び第4図では,DTMF信号を送信しあるいは受信する一方向通信の機器に対して本考案のDTMF信号通信機器を利用する実施例を示したが,本考案のDTMF信号通信機器を入出力の両方に設けることで双方向通信の機器に簡単に応用することもできる。 第5図は,双方向通信を実行する2つのDTMF信号送受信機器60にそれぞれ前述のDTMF信号通信機器10及びDTMF信号通信機器40をパラレルに接続し,双方向通信システムを構築した一例である。」(13頁11行?14頁17行) 上記摘記及び図面の記載並びにこの分野における技術常識を考慮すると, (a)上記(1),(3)の記載によれば,DTMF信号を利用したデータ通信の安全性・信頼性を高めるために,電話回線上を異なるDTMF信号として伝送し,受信側で元のDTMF信号に戻すものであり,上記(4)の記載及び第4図,第5図の記載によれば,送信側では,元のDTMF信号を異なるDTMF信号とするために,受信側と逆の変更処理が行われていることは自明である。すなわち,受信側のDTMF信号通信機器10と送信側のDTMF信号通信機器40とは,同様の構成を有するものであって,DTMF信号通信機器40が内蔵するデコーダはDTMF信号通信機器10が内蔵するデコーダ10dのデコードの規則性と全く逆の組合せ変更を実行するものであると認められる。 したがって,DTMF信号通信機器40は,DTMF信号送信機器50又はDTMF信号送受信機器60からDTMF信号を受け取り,内蔵するデコーダ等により受け取った前記DTMF信号を他のDTMF信号に変更し,電話回線30を介してDTMF信号受信機器20(又は他のDTMF信号送受信機器60)側へ当該他のDTMF信号を送っていることは明らかである。 よって,引用例には,「DTMF信号送信機器からDTMF信号を受け取ることと,前記DTMF信号送信機器から受け取った前記DTMF信号を他のDTMF信号に変更することと,DTMF信号受信機器側へ前記変換されたDTMF信号を送ること」が記載されていると認められる。 (b)上記(2)の第6?8,10,11段落,上記(3)の第5段落及び第3図の記載によれば,DTMF信号通信機器10に入力されたDTMF信号(例えば,数字「1」を表す周波数信号(1)。)は,A/D変換器によってそのDTMF信号(x)の表現している情報「x」(例えば,ディジタル信号「1」。)に変換され,当該情報「x」はデコーダにより所定の規則に則り別異の情報「y」に変更され,D/A変換器によって情報「y」を表現する周波数のDTMF信号(y)を出力されるところ,上記(a)のとおりDTMF信号通信機器40が内蔵するデコーダはこれとは逆の変更を行うものであるから,DTMF信号通信機器40においては上述の処理におけるxとyとが入れ替わるものであることは明らかである。 したがって,引用例には,「受け取ったDTMF信号を対応するディジタル信号に変換することと,前記ディジタル信号を別異のディジタル信号に変更することと,前記別異のディジタル信号を対応するDTMF信号に変換することと,前記他のDTMF信号として前記変換されたDTMF信号を送ること」が記載されていると認められる。 (c)上記(2)の第8?11段落,上記(3)の第5?8段落及び第3図の記載によれば,情報「x」(送信側では情報「y」。)を情報「y」(送信側では情報「x」。)に変更する複数の組合せ変更の規則性のうち使用される組合せ変更の規則性がタイマの値に基づいて特定されるといえる。 したがって,引用例には,「複数の組合せ変更の規則性から使用する組合せ変更の規則性を特定すること」が記載されていると認められる。また,当該特定された組合せ変更の規則性を用いて前記「ディジタル信号」を前記「別異のディジタル信号」に変更するものであることは明らかである。 (d)上記(a)?(c)の各動作は,DTMF信号通信機器(40)上で動作する方法といえる。 以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が開示されていると認める。 「DTMF信号送信機器からDTMF信号を受け取ることと, 前記DTMF信号送信機器から受け取った前記DTMF信号を他のDTMF信号に変更することと, DTMF信号受信機器側へ前記変更されたDTMF信号を送ることと, 受け取ったDTMF信号を対応するディジタル信号に変換することと, 複数の組合せ変更の規則性から使用する組合せ変更の規則性を特定することと, 前記特定された組合せ変更の規則性を用いて前記ディジタル信号を別異のディジタル信号に変更することと, 前記別異のディジタル信号を対応するDTMF信号に変換することと, 前記他のDTMF信号として前記変換されたDTMF信号を送ること,を備える,DTMF信号通信機器上で動作する方法。」 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると, (1)引用発明のDTMF信号送信機器50は電話回線30を介して通信を行うものであり,また,引用例の従来の技術に関する記載(上記「2.」の項の(1)参照。)にも鑑みれば,DTMF信号送信機器50は電話機を含み得ることは明らかである。 また,引用例にはインターフェースについて言及されていないが,装置間のデータのやり取りをインターフェースを介して行うことは技術常識であり,当該インターフェースを「第1の通信インターフェース」,「第2の通信インターフェース」と称することは任意である。 (2)引用例の従来の技術に関する記載や効果の記載(上記「2.」の項の(1)及び(3)参照。)に鑑みれば,引用発明の「変更」は,情報の秘密性を保持するためのものであるから,「暗号化」といえる。同様に,引用発明の「DTMF信号通信機器40」は,電話回線上の情報の秘密性を保持するための装置であるから,「電話セキュリティ装置」ということができる。 (3)本願発明の「デュアルトーン多重周波数(DTMF)トーン」,「記号」と引用発明の「DTMF信号」,「ディジタル信号」とは,表現が異なるのみであって,実質的な差異は無い。そして,暗号化前の「DTMFトーン」及び「記号」と暗号化後のそれらとを,「第1の・・・」,「第2の・・・」と称して区別することは任意である。 (4)本願発明の「セキュリティサーバ」と引用発明の「DTMF信号受信機器20側」とは,暗号化されたDTMFトーン(変更されたDTMF信号。)の「宛先」である点で一致している。 (5)まず,本願発明は「変換表」と「翻訳表」との異なる用語を使用しているが,「前記選択された翻訳表」との記載からも明らかなように,また,国際出願時の請求項6ではいずれも「translation table」とされていることからも明らかなように,「翻訳表」は「変換表」を意味していると認められる。 そして,本願発明の「複数の変換表から擬似ランダム的に変換表を選択することと,前記選択された翻訳表を用いて前記第1の記号を第2の記号に変換することと」と引用発明の「複数の組合せ変更の規則性から使用する組合せ変更の規則性を特定することと,前記特定された組合せ変更の規則性を用いて前記ディジタル信号を別異のディジタル信号に変更すること」とは,下記の相違点2は別として,「複数の変換の規則から変換の規則を選択することと,前記選択された変換の規則を用いて前記第1の記号を第2の記号に変換すること」の点で一致している。 したがって,本願発明と引用発明とを対比すると,両者は,以下の点で一致し,また,相違している。 (一致点) 「第1の通信インターフェースによって電話機からデュアルトーン多重周波数(DTMF)トーンを受け取ることと, 前記電話機から受け取った前記DTMFトーンを暗号化することと, 第2の通信インターフェースによって宛先へ前記暗号化されたDTMFトーンを送ることと, 前記第1の通信インターフェースによって受け取った第1のDTMFトーンを第1の記号に変換することと, 複数の変換の規則から変換の規則を選択することと, 前記選択された変換の規則を用いて前記第1の記号を第2の記号に変換することと, 前記第2の記号を第2のDTMFトーンに変換することと, 前記暗号化されたDTMFトーンとして前記第2のDTMFトーンを送ることと,を備える,電話セキュリティ装置上で動作する方法。」 (相違点1) 「宛先」に関し,本願発明は「セキュリティサーバ」であるのに対し,引用発明は「DTMF信号受信機器20側」である点。 (相違点2) 「複数の変換の規則から変換の規則を選択することと,前記選択された変換の規則を用いて前記第1の記号を第2の記号に変換すること」に関し,本願発明は「複数の変換表から擬似ランダム的に変換表を選択することと,前記選択された翻訳表を用いて前記第1の記号を第2の記号に変換することと」とであるのに対し,引用発明は用いる変換の規則として「擬似ランダム的に変換表を選択する」構成を備えていない点。 (相違点3) 「電話セキュリティ装置」に関し,本願発明は「スモールフォームファクタ」のものであるのに対し,引用発明は当該事項が明らかにされていない点。 以下,上記各相違点についての検討する。 (相違点1について) 本願明細書の【0038】,【0057】等の記載に照らせば,本願発明の「セキュリティサーバ」は,銀行等に関連したものであって,顧客との電話のトランザクションを容易にするものといえ,DTMFトーンによりユーザの個人の識別番号(PIN)等を受信するものを含むことは明らかであるところ,DTMF信号を用いた電話バンキングは周知(例えば,原審の拒絶理由に引用された特開平7-177128号公報の【0069】?【0092】,図17,19参照。)である。そして,引用例の効果に関する記載(上記「2.」の項の(3)の第6段落参照。)に照らせば,引用発明は電話回線上での暗唱番号の通信を変更したDTMF信号により行うことで安全性・信頼性を高めることを包含することは明らかであるから,引用発明を周知の電話バンキングに適用し,変更したDTMF信号の宛先を「セキュリティサーバ」とすることは当業者が適宜なし得ることに過ぎない。 (相違点2について) 暗号化に係る変換において,秘匿性を高めるために複数の変換表から擬似ランダム的に変換表を選択することは周知(例えば,特開平11-338347号公報の【0002】?【0004】,【0007】?【0009】,池野信一・小山謙二「現代暗号理論」社団法人電子情報通信学会(平成9年11月15日初版第6刷発行)27頁?34頁,特開平9-93242号公報の【要約】参照。)であり,秘匿性を高めることは暗号化における一般的な課題であるから,引用発明において使用する組合せ変更の規則性を特定するに際して「複数の変換表から擬似ランダム的に変換表を選択する」ようにすることは,当業者が容易になし得ることである。 (相違点3について) 本願明細書には「スモールフォームファクタ」の定義が明らかにされていないが,本願明細書全体の記載に照らして,電話機に近接して電話線上に接続し得る程度の小型の装置を意味すると解される。そして,引用例にはDTMF信号通信機器の大きさは明らかにされていないが,DTMF信号送信機器と電話回線との間に接続し得るものであって,主にA/D変換器,デコーダ,D/A変換器により構成されることからみて小型の装置とし得ることは自明であり,また,上記特開平7-177128号公報に開示された保安電話デバイス(STD)も電話機と電話機のハンドセットとの間に接続し得る程度の大きさであることにも鑑みれば,相違点3は格別ではない。 そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。 4.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-08-26 |
結審通知日 | 2013-08-27 |
審決日 | 2013-09-09 |
出願番号 | 特願2009-541567(P2009-541567) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 梶尾 誠哉 |
特許庁審判長 |
菅原 道晴 |
特許庁審判官 |
竹井 文雄 山本 章裕 |
発明の名称 | 安全な電話バンキングのための方法および装置 |
代理人 | 佐藤 立志 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 幸長 保次郎 |
代理人 | 竹内 将訓 |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 白根 俊郎 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 砂川 克 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |