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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23Q
管理番号 1283970
審判番号 不服2013-6530  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-10 
確定日 2014-01-23 
事件の表示 特願2008-244663「工作機械のミル主軸」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月 8日出願公開、特開2010- 76016〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成20年9月24日の特許出願であって、同25年1月9日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成25年4月10日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされるとともに特許請求の範囲について手続補正書が提出され、同25年9月19日付けで当審から拒絶の理由が通知され、同25年11月1日に意見書とともに特許請求の範囲についてさらに手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成25年11月1日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その記載は以下のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「 【請求項1】
横型マシニングセンタもしくは5軸加工機に装備されるミル主軸であって、
主軸のハウジング内に装備される前部の2個の軸受と後部の1個の軸受と、軸受により回転自在に支持されるスピンドルと、スピンドルを駆動するモータを備え、
ハウジングに設けられて各軸受にエアーとともに潤滑油を供給する潤滑油供給口と、ハウジングに設けられて前部の2個の軸受と後部の1個の軸受に設けられて各軸受に供給されたミスト状の潤滑油を排出する独立した排出通路と、ハウジングの排出通路に連結されて排出された潤滑油をドレンパンへ導く複数のフレキシブルチューブとを備え、
前記排出通路と前記フレキシブルチューブから構成される排出経路により潤滑油を加工エリア外に配設されたドレンパンに複数のフレキシブルチューブにより直接に回収する全損式油滑手段を備え、
各軸受は2系統の専用の排出経路を備えるとともに、
2系統の専用の排出経路の一方の系統の排出経路の間を連結する連結通路を備える横型マシニングセンタもしくは5軸加工機のミル主軸。」

第3 引用刊行物記載の発明
これに対して、当審での平成25年9月19日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された下記刊行物には、以下の発明、あるいは事項が記載されていると認められる。
刊行物1:特開2004-162872号公報

1 刊行物1に記載された事項
刊行物1には、「軸受潤滑油回収装置」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は理解の便のため、当審で付したものである。

ア 特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
ハウジングに対して縦軸を回転自在に支持する軸受にその一方の側面側から搬送エアを用いて供給された潤滑油を回収する装置であって、
前記ハウジングに、前記軸受の他方の側面側から前記搬送エアを排出する搬送エア排出路と、排出用エア入口および同出口を有する潤滑油排出路と、上端開口が前記搬送エア排出路に連通するとともに下方に伸び、かつ下端開口が前記潤滑油排出路に連通する滴下潤滑油回収路とが設けられており、前記ハウジング内における前記滴下潤滑油回収路の下方の部分に、前記滴下潤滑油回収路の下端開口を開放する第1の位置と同じく閉鎖する第2の位置との間で切り替えられる弁体が配され、軸受潤滑時に、重力または付勢手段の付勢力により前記弁体が前記第1位置に切り替えられて潤滑油が前記搬送エア排出路および前記滴下潤滑油回収路を通って前記潤滑油排出路内に溜まり、潤滑油排出時に、前記潤滑油排出路の排出用エア入口から送り込まれた排出用エアの圧力により前記弁体が前記第2位置に切り替えられるとともに、前記潤滑油排出路内に溜まった潤滑油が排出用エアとともに前記排出用エア出口から排出されることを特徴とする軸受潤滑油回収装置。」

イ 段落【0001】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は軸受潤滑油回収装置に関し、たとえば立形主軸を有する工作機械の主軸装置において、固定ハウジングに対して主軸を回転自在に支持する軸受にその一方の側面側から搬送エアを用いて供給された潤滑油を回収する装置に関する。

ウ 段落【0019】
「【0019】
図1および図2において、鉛直状態の立形主軸(1)は固定ハウジング(2)内に配され、主軸軸受(3)によって固定ハウジング(2)に対して回転自在に支持されている。この例の場合、主軸軸受(3)は、スラスト方向およびラジアル方向の荷重を受けるアンギュラ玉軸受である。なお、図示は省略したが、アンギュラ玉軸受からなりかつ固定ハウジング(2)に対して主軸(1)を回転自在に支持する主軸軸受(3)は複数設けられており、上下両方向のスラスト荷重を受けうるように組み合わせて配置されている。」

エ 段落【0021】
「【0021】
固定ハウジング(2)に、主軸軸受(3)にその一方の側面側から搬送エアを用いて潤滑油を供給する給油路(6)と、主軸軸受(3)の他方の側面側から前記搬送エアを排出する搬送エア排出路(7)と、排出エア入口および同出口(いずれも図示略)を有する潤滑油排出路(8)と、上端開口が搬送エア排出路(7)に連通するとともに下方に伸び、かつ下端開口が潤滑油排出路(8)に連通する滴下潤滑油回収路(9)とが設けられている。」

オ 段落【0022】?【0024】
「【0022】
給油路(6)は、主ハウジング部材(4)の内周寄りの部分に位置するとともに上下方向に伸び、かつ下端が最下部の主軸軸受(3)の若干上方に至る幹部分(6a)と、幹部分(6a)から分岐しかつ先端が主ハウジング部材(4)の内周面における主軸軸受(3)の一方の側面側に開口した枝部分(6b)とよりなる。給油路(6)の枝部分(6b)の先端は、主軸軸受(3)の外輪(3a)間に配置されたカラー(11)に形成されかつ先端が主軸軸受(3)側を向いて開口したノズル状穴(12)の基端に通じている。そして、潤滑油は、搬送エアを用いて給油路(6)内に送り込まれ、ノズル状穴(12)を通って一方の側面側からオイルエア潤滑方式またはオイルミスト潤滑方式により主軸軸受(3)に供給されるようになっている。
【0023】
搬送エア排出路(7)は、給油路(6)の幹部分(6a)の径方向外方に位置するとともに上下方向に伸び、かつ下端が最下部の主軸軸受(3)の若干下方に至る幹部分(7a)と、幹部分(7a)から分岐しかつ先端が主ハウジング部材(4)の内周面における主軸軸受(3)の他方の側面側(供給側とは反対の側面側)に開口した枝部分(7b)とよりなる。
【0024】
潤滑油排出路(8)は、固定ハウジング(2)の外周寄りの部分に位置するとともに搬出エア入口から下方に伸び、かつ下端が下部ハウジング部材(5)の下端部に至るエア導入側部分(8a)と、エア導入側部分(8a)の下端に連なって径方向内方に伸び、かつ滴下潤滑油回収路(9)の下方を通る横向き部分(8b)と、横向き部分(8b)の先端に連なって搬出エア出口に向かって伸びるエア排出側部分(8c)とよりなる。」

カ 段落【0026】
「【0026】
固定ハウジング(2)における滴下潤滑油回収路(9)の下方で、かつプラグ(14)の下端と横向き部分(8b)との間の部分に、滴下潤滑油回収路(9)の下端開口を開放する第1の位置(図1参照)と同じく閉鎖する第2の位置(図2参照)との間で切り替えられる球状の弁体(16)が、上下動自在に配されている。なお、前記第2位置に切り替えられた弁体(16)は、プラグ(14)の下端面における貫通穴(14a)の周囲の部分に形成された凹球面状弁座(14b)に密着するようになっている。また、プラグ(14)における貫通穴(14a)内周面の上端部に内向きフランジ(14c)が形成され、この内向きフランジ(14a)と弁体(16)との間に圧縮コイルばね(17)(付勢手段)が配置されている。したがって、弁体(16)は、自身が受ける重力および圧縮コイルばね(17)の付勢力により、通常は第1位置にある。弁体(16)の重量および圧縮コイルばね(17)の付勢力は、潤滑油排出時に潤滑油排出路(8)の排出用エア入口から送り込まれた排出用エアの圧力により弁体(16)が第2位置に切り替えられるとともに、潤滑油排出路(8)内に溜まった潤滑油が排出用エアとともに前記排出用エア出口から排出されるような大きさとなされている。・・・(後略)」

キ 段落【0029】
「【0029】
潤滑油排出時には、潤滑油の供給が停止されるとともに、所定圧力に加圧された排出用エアが排出用エア入口から潤滑油排出路(8)内に送り込まれる。すると、排出用エアの圧力により、弁体(16)が第2位置に切り替わって弁座(14b)に密着し、滴下潤滑油回収路(9)の下端開口が閉鎖される。そして、潤滑油排出路(8)内に溜まった潤滑油が排出用エアとともに排出用エア出口から排出される。したがって、固定ハウジング(2)の下方に使用済み潤滑油が滴下することが防止される。たとえば立形マシニングセンタに適用した場合、前記排出用エア出口を、配管を介して潤滑油回収槽などに接続しておけば、使用済み潤滑油は自動的に潤滑油回収槽に送られ、カバーで覆われた加工室内に排出されることはなく、ワークへの付着が防止される。しかも、主軸(1)先端部の周囲には特許文献2に記載されているような種々の機器を配置する必要がなく、ワークとの干渉のおそれがない。」

2 刊行物1記載の発明
上記摘記事項エの潤滑油を供給する手段についての記載、及び摘記事項ウの「主軸(1)を回転自在に支持する主軸軸受(3)は複数設けられており」の記載を合理的に考えれば、複数の各軸受はいずれも潤滑が必要であることから、各複数の主軸軸受(3)にそれぞれ潤滑油を供給する手段が設けられているものと認められる。
そこで、刊行物1の上記摘記事項アないしキを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて本願発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。)
「工作機械に装備される主軸装置であって、
主軸装置のハウジング(2)内に装備される複数の主軸軸受(3)と、軸受により回転自在に支持される立形主軸(1)を備え、
ハウジング(2)に設けられて各軸受に搬送エアを用いて潤滑油を供給する給油路(6)と、ハウジング(2)に設けられて複数の主軸軸受(3)に設けられて各軸受に供給されたミスト状の潤滑油を排出する潤滑油排出路(8)とそれに連通する滴下潤滑油回収路(9)と、ハウジング(2)の潤滑油排出路(8)に連結されて排出された潤滑油を潤滑油回収槽へ導く配管とを備え、
前記潤滑油排出路(8)と前記配管から構成される排出経路により潤滑油を潤滑油回収槽に配管により直接に回収する手段を備える工作機械の主軸装置。」

第4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物1発明の「主軸装置」は本願発明の「ミル主軸」または「主軸」に相当することは、その機能及び技術常識に照らして明らかであり、以下同様に、「立形主軸(1)」は「スピンドル」に、「ハウジング(2)」は「ハウジング」に、「給油路(6)」は「潤滑油供給口」に、「搬送エアを用いて潤滑油を供給する」は「エアーとともに潤滑油を供給する」に、「潤滑油排出路(8)とそれに連通する滴下潤滑油回収路(9)」または「潤滑油排出路(8)」はいずれも「排出通路」に、「潤滑油回収槽」は「ドレンパン」にそれぞれ相当することも明らかである。
また、刊行物1発明の「潤滑油を」「直接に回収する手段」は、潤滑油回収槽に回収するものであることから、本願発明の「潤滑油を」「直接に回収する全損式油滑手段」に相当するということができる。
次に、刊行物1発明の「工作機械」と本願発明の「5軸加工機」とは、工作機械、である限りにおいて共通する。同様に、刊行物1発明の「複数の主軸軸受(3)」と本願発明の「前部の2個の軸受と後部の1個の軸受」とは、複数の軸受、である限りにおいて共通し、刊行物1発明の「配管」と本願発明の「フレキシブルチューブ」とは、配管、である限りにおいて共通する。

したがって、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「工作機械に装備されるミル主軸であって、
主軸のハウジング内に装備される複数の軸受と、軸受により回転自在に支持されるスピンドルを備え、
ハウジングに設けられて各軸受にエアーとともに潤滑油を供給する潤滑油供給口と、ハウジングに設けられて複数の軸受に設けられて各軸受に供給されたミスト状の潤滑油を排出する排出通路と、ハウジングの排出通路に連結されて排出された潤滑油をドレンパンへ導く配管とを備え、
前記排出通路と前記配管から構成される排出経路により潤滑油をドレンパンに配管により直接に回収する全損式油滑手段を備える工作機械のミル主軸。」

そして、本願発明と刊行物1発明とは、以下の6点で相違している。
<相違点1>
本願発明の工作機械は、5軸加工機であるのに対し、刊行物1発明の工作機械は、そのようなものか不明である点。
<相違点2>
複数の軸受に関し、本願発明の軸受は、前部の2個の軸受と後部の1個の軸受であるのに対し、刊行物1発明の複数の軸受は、そのようなものか不明である点。
<相違点3>
本願発明は、スピンドルを駆動するモータを備えるのに対し、刊行物1発明は、そのようなものか明らかではない点。
<相違点4>
本願発明においては、各軸受に設けられた排出通路が(各軸受毎に)独立しているのに対し、刊行物1発明は、そのように独立しているか不明である点。
<相違点5>
本願発明においては、潤滑油を加工エリア外に配設されたドレンパンへ導く配管は複数のフレキシブルチューブであるのに対し、刊行物1発明の潤滑油を潤滑油回収槽(ドレンパン)へ導く配管は、そのようなものか不明であり、また、潤滑油回収槽(ドレンパン)が加工エリア外に配設されているかも明らかでない点。
<相違点6>
本願発明においては、各軸受は2系統の専用の排出経路を備えるとともに、2系統の専用の排出経路の一方の系統の排出経路の間を連結する連結通路を備えるのに対し、刊行物1発明はそのようなものではない点。

第5 相違点の検討
1 <相違点1>について
刊行物1発明は、立形主軸(1)を備えることから縦型の工作機械と認められるところ、縦型の工作機械を5軸加工機として構成することは、例えば、実願平2-87411号(実開平4-45642号)のマイクロフィルム(第1図及び第2図等に示される5軸工作機51を参照)に示されるように従来周知の事項であり、かかる従来周知の事項を刊行物1発明に適用することは何ら困難なことではない。

2 <相違点2>について
工作機械のスピンドルを支持する複数の軸受を前部の2個の軸受と後部の1個の軸受とすることは、例えば、当審の拒絶理由通知にて示した特開平7-24687号公報(当審の拒絶理由通知の刊行物3、図1等参照)に示されるように従来周知の事項である。そしてかかる従来周知の事項を刊行物1発明に適用して相違点2に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

3 <相違点3>について
刊行物1には、立形主軸(1)(スピンドル)を駆動する手段は明記されていないが、技術常識を踏まえれば、刊行物1発明も立形主軸(1)はモータにより駆動されているものと考えられるから、相違点3は実質的な差異ではない。
仮に相違点3が実質的な差異であるとしても、工作機械においてスピンドルを駆動するモータを備えることは、例えば、当審の拒絶理由通知にて示した特開2001-90739号公報(当審の拒絶理由通知の刊行物2、電動モータ(11)等参照)に示されるように従来周知の事項であり、かかる従来周知の事項を刊行物1発明に適用することは何ら困難なことではない。

4 <相違点4,5>について
刊行物1発明は、各軸受に設けられた排出通路が(潤滑油回収槽に至るまで合流することなく)独立しているかは明らかではない。しかしながら、一般に、複数の排出通路を末端の排出箇所まで独立させるか、あるいは途中で合流してまとめるかは、配管系の簡素化の要請と配管系の詰まりにくさを勘案して当業者が適宜選択し得る事項に過ぎない。
また、排出通路をフレキブルチューブとすることも、例えば、当審の拒絶理由通知にて示した特開平10-249670号公報(当審の拒絶理由通知の刊行物4、段落【0027】等参照)に示されるように従来周知の事項であり、かかる従来周知の事項を刊行物1発明に適用することは何ら困難なことではない。
さらに、上記摘記事項第3の1のキにて摘記したように、刊行物1には「カバーで覆われた加工室内に排出されることはなく、ワークへの付着が防止される。しかも、主軸(1)先端部の周囲には・・・種々の機器を配置する必要がなく」との記載があり、潤滑油回収槽(ドレンパン)を加工エリア外に配設することの示唆があるといえる。
以上により、相違点4,5はいずれも格別なものとはいえない。

5 <相違点6>について
まず、相違点6のうち、本願発明において各軸受は2系統の専用の排出経路を備えることについて検討する。本願発明において各軸受が2系統の排出経路を備えることの技術的意義については、本件明細書に「【0024】 図6は本発明の更に他の実施例を示す説明図である・・・各軸受は2系統の排出経路を備えるので、ミル主軸の姿勢が種々に変化しても、潤滑油は確実に排出される。」と記載されている。
しかしながら、一般に排出経路において、排出経路の位置が変化し排出されにくくなることが起こり得ることは、当業者が容易に予見し得ることであり、また、その対策として排出経路を2系統、すなわち冗長系とすることは、ごく一般的な対策である。よって、相違点6のうち上記の点については、格別想到困難なことではない。
次に、相違点6のその余の点、すなわち、2系統の専用の排出経路の一方の系統の排出経路の間を連結する連結通路を備える点について検討する。
2系統の(冗長系をなす)排出経路の間を連通させることは、排出経路の冗長性をより確実なものとするため当業者が自然に採用し得ることともいえるが、さもなくとも、このような手段は、例えば、登録実用新案第3028286号公報に「【0015】 図3及び図4に示すように、円板44の各排水孔46は、円板の被脱水物の接触する側面に設けた細溝48により他の排水孔46に連通されている。この細溝48により排水孔46の1つが詰まって水分が通過しない場合にも、その水分は、細溝48を通り他の排水孔から外部へ排出され・・・」と記載され、さらに、特開2008-117584号公報に「【0022】・・・該上蓋20内の左右の防爆用ガスフィルター21,21は、該蓋本体1裏面の該連通路50と該上蓋20の該連通路50が上下方向で合体した連通路50の左右端の上方に存することとなるので、左右のガス排出口23,23のいずれか一方が詰まっても、その詰まった側の一群の排気通路6,6,6から導出されるガスは、該相互連通路50を介してその他方のガスフィルター21を介してガス排出口23から一括排気ができ、上記の課題が解決され、安定な蓄電池が確保される。」と記載されているように従来周知の事項である。そして、刊行物1発明において、冗長性の確実化というごく一般的な目的のため、かかる従来周知の事項を適用することは、当業者であれば格別困難ではない、というべきである。
以上により、上記従来周知の事項を刊行物1発明に適用して相違点6に係る本願発明の特定事項とすることも、当業者が容易に想到し得たものである。

6 本願発明の効果について
上記相違点1ないし相違点6を総合的に勘案しても、刊行物1発明及び上記従来周知の事項から当業者が予測できない格別な効果が生じるとは考えられない。

7 小括
したがって、本願発明は、刊行物1発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、したがって拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-20 
結審通知日 2013-11-26 
審決日 2013-12-09 
出願番号 特願2008-244663(P2008-244663)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 真  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 刈間 宏信
長屋 陽二郎
発明の名称 工作機械のミル主軸  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  

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