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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C03B
管理番号 1283977
審判番号 不服2013-19466  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-07 
確定日 2014-01-23 
事件の表示 特願2005-187810「光学素子用プリフォーム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月5日出願公開、特開2006-265087〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成17年6月28日(優先権主張 平成16年12月13日、平成17年2月23日)の出願であって、平成22年12月10日付けで拒絶理由が通知され、平成23年2月9日付けで意見書および手続補正書が提出され、同年11月29日付けで拒絶理由が通知され、平成24年2月1日付けで意見書および手続補正書が提出され、同年7月31日付けで拒絶理由が通知され、同年10月9日付けで意見書および手続補正書が提出されたが、平成25年7月1日付けで拒絶査定されたので、同年10月7日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1?11に係る発明は、平成24年10月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「上面視において所定の直径を有するほぼ円形状を呈し、側面視において下向きに凸曲線及び上端側にほぼ水平な直線を有する偏平型半円形状を、該凸曲線の最下部から該直線への距離が該偏平型半円形状の所定の高さとなるように、呈し、上面に凹状面を、底面に凸状面を備える光学ガラス素子成形用プリフォーム(軟化状態のプリフォームを除く)において、
前記上面視でほぼ円形状のほぼ中心位置において上面の凹状面は、凹状面最下部を形成し、
前記ほぼ中心位置に対応する底面の中心位置において底面の凸状面は、凸状面最下部を形成し、
前記偏平型半円形状の前記高さの、前記上面視においてほぼ円形状の前記直径に対する比が、0.2から0.9であることを特徴とする光学ガラス素子成形用プリフォーム。」

3 刊行物に記載された発明
(1)引用例1の記載事項
これに対し、本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開平7-69650号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、軟化状態のガラスを加圧成形することにより、非球面ガラスレンズなどの高精度な光学素子、あるいは、その前段に用意されるリヒートプレス成形用素材を得るための、光学素子の製造方法に関する。」
(イ)「【0031】・・・
[実施例2]図3は、本発明の第2の実施例における光学素子の製造方法の工程全体を説明するための解説図である。ここでは、大気中で、予備成形が行なわれ、窒素雰囲気中で、最終成形がなされる。図3において、1Gは溶融ガラス塊であり、1Mは中間成形体であり、1Bは光学素子成形用ガラス素材であり、1Eは成形光学素子である。」
(ウ)「【0040】その後、・・・中間成形体1Mをプレス成形し、レヒートプレス(審決注:「レヒート」は「リヒート」の誤記と認める。)のための光学素子成形用ガラス素材1Bを得る。・・・。このようにして得られた光学素子成形用ガラス素材1Bは中心肉厚:3mm、直径:15mm、曲率半径R:23mmの両凹形状をしている。」
(エ)「【0042】このようにして得られた光学素子成形用ガラス素材1Bは、・・・成形された光学素子成形用ガラス素材1Bを、冷却中において成形型とガラスとの密着を保つために必要とする加圧をしなかったため、その面精度がニュートンリング5本以上もあり、・・・であった。従って、そのままで、これを光学素子として使用することは不可能であるが、リヒートプレスのための光学素子成形用ガラス素材として使用するには、十分な精度を保っていると評価できる。」
(オ)「【0043】続いて、この光学素子成形用ガラス素材1Bを、従来から知られている成形方法により、従来の装置を用いてプレス成形し、成形光学素子1Eを得た。」
(カ)「【0060】・・・
[実施例4]本実施例では、実施例2の場合と同様、溶融光学ガラスを、第1の型2の凹形状の成形面で受け、それを、凸形状の成形面を有する第2の型3でプレス成形して、例えば、全体として、ほぼメニスカス形状とした中間成形体1Mを成形するが、その後は、実施例2の場合と異なり、プレス状態のまま、両成形型2、3を反転させ、上に来た第1の型2を除き、中間成形体1Mを第2の型3の凸形状の成形面に残す。そして、この中間成形体1Mを、第2の型3から取出し、実施例2と同様に、次の光学素子のプレス成形のプロセスにもたらすのである。・・・。」
(キ)「【0066】・・・このようにして得られた中間成形体は、例えば、中心肉厚:4mm、直径:14mm、凸面の曲率半径R:25mm、凹面の曲率半径R:23mmの凹メニスカス形状をしている。
【0067】この中間成形体1Mは、次に、ケーシング9内の上下一対の成形型を用いて、実施例2と同様に、プレス成形され、光学素子として完成される。」
(ク)「【0072】なお、上記実施例の説明では、レンズ形状が両面凹レンズであったが、凸メニスカスレンズや凹メニスカスレンズであってもよいことは勿論である。」

(2)引用例1に記載された発明
記載事項(ア)によれば、引用例1には、「高精度な光学素子、あるいは、その前段に用意されるリヒートプレス成形用素材を得るための光学素子の製造方法」に関する発明が記載されており、同(イ)?(オ)には、当該発明の具体例である実施例2として、光学素子成形用ガラス素材1Bについて記載されている。
この光学素子成形用ガラス素材1Bは、同(ウ)によれば、直径15mmで、両凹形状をしているので、上面視において直径15mmの円形状、側面視において上面と下面が凹面を備えたもので、同(ウ)(エ)によれば、中間成形体1Mをプレス成形後に冷却してニュートンリングが測定できる程度になっているので、冷却固化したものであるといえ、同(オ)によると、従来の装置を用いてプレス成形し、成形光学素子1Eを得るために使用するものである。
したがって、引用例1の実施例2には、「上面視において直径15mmの円形状、側面視において上面と下面が凹面を備え、冷却固化され、成形光学素子を得るために使用する光学素子成形用ガラス素材」に関する発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されている。

4 対比と判断
(1)対比
本願発明と引用例1発明とを比較する。
引用例1発明における「光学素子成形用ガラス素材」は、「冷却固化され、成形光学素子を得るために使用」されるので、本願発明における「光学ガラス素子成形用プリフォーム(軟化状態のプリフォームを除く)」に相当する。
また、引用例1発明の「光学素子成形用ガラス素材」は、上面視において直径15mmの円形状であるので、本願発明の「光学ガラス素子成形用プリフォーム」とは、「上面視において所定の直径を有するほぼ円形状を呈し」ている点で共通する。
したがって、本願発明と引用例1発明とは、「上面視において所定の直径を有するほぼ円形状を呈した光学ガラス素子成形用プリフォーム(軟化状態のプリフォームを除く)」という点で一致し、次の点で相違する。
本願発明の光学ガラス素子成形用プリフォームは、
「(a)側面視において下向きに凸曲線及び上端側にほぼ水平な直線を有する偏平型半円形状を、該凸曲線の最下部から該直線への距離が該偏平型半円形状の所定の高さとなるように、呈し、上面に凹状面を、底面に凸状面を備え、
(b)前記上面視でほぼ円形状のほぼ中心位置において上面の凹状面は、凹状面最下部を形成し、前記ほぼ中心位置に対応する底面の中心位置において底面の凸状面は、凸状面最下部を形成し、
(c)前記偏平型半円形状の前記高さの、前記上面視においてほぼ円形状の前記直径に対する比が、0.2から0.9である」のに対し、
引用例1発明の光学ガラス素子成形用プリフォームは、側面視において上面と下面が凹面を備えている点(以下「相違点」という。)。

(2)判断
一般に光学ガラス素子には、両面凹型、両面凸型あるいは片面凹片面凸型の形状のものがあることは明らかであって、引用例1の同(ク)にも、「実施例の説明では、・・・両面凹レンズであったが、・・・凹メニスカスレンズであってもよい」とされ、凹メニスカスレンズ(光学素子)の成形への適用が示されている。
また、原査定の拒絶の理由で引用した特開平5-17165号公報には、「【0002】
【従来の技術】レンズ、プリズムなどのガラス製の光学素子を安価で高精度に製造する方法としては、プレス成形で製造する技術が特公平2-16251号公報、特開昭61-21927号公報、特開昭64-87524号公報、特開昭63-45134号公報などに数多く報告されている。これらの方法の特徴は、最終形状に近似した形状と表面粗さを有するプリフォームをあらかじめ形成し、これを最終形状を有する型の中に入れガラスが軟化する温度まで加熱した後、プレス成形して最終形状を有する光学素子を製造するものである。」
と記載されているように、光学ガラス素子成形用プリフォームは、最終的に成形される光学ガラスの形状に近似した形状とすることは通常行われている公知の事項である。
そうすると、引用例1発明を凹メニスカスレンズの成形に適用し、プリフォームであるガラス素材も凹メニスカス形状とすることは、当業者が容易になしうることであるところ、本願発明の(a)、(b)の点は、凹メニスカス形状の特定そのものであるから、結局、引用例1発明及び公知の事項に基づいて、本願発明の(a)、(b)を導くことは当業者が容易になし得るところである。
また、(c)の「偏平型半円形状の前記高さの、前記上面視においてほぼ円形状の前記直径に対する比」を「0.2?0.9」とすることに関しては、この比率は通常の凹メニスカス形状のレンズを包含する寸法であって、上記のとおり、プリフォームは最終的に形成される光学ガラスの形状に近似する対応した形状とするのであるから、プリフォームにおいても上記の比率を「0.2?0.9」と特定することに格別の技術的な意味があるとは認められないので、当業者の設計事項であると認める。
したがって、引用例1発明において、上記相違点の構成を採用することは、当業者が容易に想到するところであり、その効果も格別のこととすることはできない。

5 結論
以上のとおりであるので、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-20 
結審通知日 2013-11-26 
審決日 2013-12-10 
出願番号 特願2005-187810(P2005-187810)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 貴之藤代 佳  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 川端 修
吉水 純子

発明の名称 光学素子用プリフォーム  
代理人 正林 真之  

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