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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B |
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管理番号 | 1284104 |
審判番号 | 不服2012-23167 |
総通号数 | 171 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-11-22 |
確定日 | 2014-01-27 |
事件の表示 | 特願2006-202422「発光装置、レーザディスプレイ、内視鏡」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月 7日出願公開、特開2008- 23262〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年7月25日の出願であって、平成23年10月26日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月21日に意見書の提出がなされたが、平成24年8月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成25年9月10日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月8日に手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成25年11月8日付けの手続補正書の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「光源と、前記光源からの光を伝播する導光部材と、を備えた発光装置において、 前記光源は、500nm未満の波長域に発光ピーク波長を有する光を出射し、 前記導光部材は、前記光源からの光により励起し発光する、2種以上の希土類元素がドープされ、且つ、前記希土類元素からの光をレーザ発振させることなく出射するフッ化物ガラス系の光ファイバ(前記希土類元素からの光と同波長のレーザ光を出射する導光部材を除く。)である、 ことを特徴とする発光装置。」 第3 刊行物の記載 1 当審拒絶理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-233123号公報(以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。 (1)「【請求項8】 波長を有する光を発する固体光源と、 該固体光源から発せられた発射光が照射され、該発射光の波長が変換されて赤色光が出射される赤色用可視波長下方変換材料と、 前記固体光源から発せられた発射光が照射され、該発射光の波長が変換されて緑色光が出射される緑色用可視波長下方変換材料と、 青色光を発する青色用の固体光源と、 前記赤色光、前記緑色光、および、前記青色光の3色光を組合せて、任意の画像を作成する画像作成機構とを備えた、プロジェクタ装置。」 (2)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところが、メタルハイドロランプに代表される気体光源は、高い光度が得られるが、発光体が電極を有する真空管であるために、点光源にならないので、光の収束性が低い。また、メタルハイドロランプは、寿命が短く、発熱量、および、消費電力も大きいという問題がある。これに対し、特開平2-118624号公報では、プロジェクタ部と光源部とを分離した装置が提案されている。しかしながら、その装置は、プロジェクタ部においては小型化されているが、プロジェクタ装置全体としては、以前と同様に、大型で、かつ、発熱量および消費電力が大きい。 【0004】本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光源光の収束性を高めることにより小型化されたプロジェクタ装置を提供することである。 【0005】また、本発明のさらなる目的は、長寿命で、発熱量および消費電力が低減されたプロジェクタ装置を提供することである。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明の第1の局面のプロジェクタ装置は、光を発する固体光源と、固体光源から発せられた光を利用して、任意の画像を作成する画像作成機構とを備えている。 【0007】上記の構成によれば、固体光源を用いて光源光の収束性を高めることにより、光源光の収束性が低い気体光源を用いる場合に比較して、可視光光源装置を小型化することができる。」 (3)「【0020】本発明の第1?第3それぞれの局面のプロジェクタ装置は、固体光源が半導体レーザを含んでいてもよい。 【0021】上記の構成によれば、半導体レーザを固体光源に用いることにより、従来のメタルハライドランプなどの気体光源に比較して、可視光光源装置を長寿命にし、かつ、可視光光源装置の発熱量および消費電力を低減することができる。 【0022】本発明の第1?第3それぞれの局面のプロジェクタ装置は、固体光源がLEDを含んでいてもよい。」 (4)「【0024】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。 【0025】(実施の形態1)図1には、本実施の形態の可視光光源装置の概略構成が示されている。本実施の形態の可視光光源装置は、図1に示すように、励起用固体光源として青色の光を出射する半導体レーザ10と、その半導体レーザ10から出射された光を光ファイバに導くためのコリメートレンズ11と、可視波長となるように光の波長を変換する可視波長下方変換材料がドーピングされたコアを有する光ファイバ12と、励起用の半導体レーザ10から出射された光の波長より長波長の光のみを透過させる波長フィルタ13とを備えている。 【0026】このような本実施の形態の可視光光源装置においては、半導体レーザ10から出射された光が、コリメートレンズ11により光ファイバ12に導かれる。また、光ファイバ12に導かれた光は、コアにドーピングされた可視波長下方変換材料を励起し、その励起された可視波長下方変換材料により可視光に波長変換されて、波長フィルタ13に対して光ファイバ12から出射される。なお、可視光に波長変換されない励起光は波長フィルタ13でカットされる。」 (5)「【0060】(実施の形態6)図7には、本実施の形態の液晶プロジェクタ装置の模式図が示されている。本実施の形態の液晶プロジェクタ装置は、波長455nmの青色光を出射する半導体レーザ120を1機、波長395nmの青色光を出射する半導体レーザ121を2機備えている。また、半導体レーザ120,121それぞれから出射された光は、コリメートレンズ122を透過して、3つの光ファイバに導かれる。 【0061】この3つの光ファイバは、通常の光ファイバ123と、励起光を緑色に変換する波長下方変換材料がドーピングされたコアを有する光ファイバ124と、励起光を赤色に変換する波長下方変換材料がドーピングされたコアを有する光ファイバ133とから構成されている。 【0062】光ファイバ123に入射した光はそのまま出射し、また、光ファイバ124,133に入射した波長変換されて出射された光は、励起用半導体レーザ124,133の波長より長波長の光を透過させる波長フィルタ126を透過して、液晶パネルに導く集光レンズ125に導かれる。集光レンズ125を透過した光は、液晶パネル127,128,129、ダイクロイックプリズム130、投光用レンズ131を介して、スクリーン132へ投影される。スクリーン132には、液晶パネル127,128,129において、適宜、赤色、緑色、青色の3原色が組み合わせられて、任意の画像が映し出される。 【0063】本実施の形態の液晶プロジェクタ装置の駆動電力は、120Wであり、現状のメタルハイドロランプを用いた液晶プロジェクタの1/3である。また、光源の寿命は10000時間であり、液晶プロジェクタ装置の大きさは従来に比べて1/3となる。したかって、本実施の形態の液晶プロジェクタ装置によれば、低消費電力、長寿命および小型化が実現されている。 【0064】なお、青色光源には半導体レーザを用いたが、光源はこれに限るものではなく、半導体LEDでもよい。 【0065】また、励起用半導体レーザは395nmを用いたが、波長はこれに限るものではなく、500nm以下の波長を有するレーザ、LEDを用いればよい。半導体レーザ120,121から出射される励起光が500nmより長波長になると、青色の光を得ることができなくなるため、液晶プロジェクタにおいてフルカラーで画像を表示することができなくなる。」 (6)「【0069】 【発明の効果】本発明によれば、固体光源を用いて光源光の収束性を高めることにより、光源光の収束性が低い気体光源を用いる場合に比較して、プロジェクタ装置を小型化することができる。」 (7)図1は、以下のものである。 (8)図7は、以下のものである。 2 引用文献に記載された発明 (1)上記1(1)によれば、 引用文献には、 「波長を有する光を発する固体光源と、 該固体光源から発せられた発射光が照射され、該発射光の波長が変換されて赤色光が出射される赤色用可視波長下方変換材料と、 前記固体光源から発せられた発射光が照射され、該発射光の波長が変換されて緑色光が出射される緑色用可視波長下方変換材料と、 青色光を発する青色用の固体光源と、 前記赤色光、前記緑色光、および、前記青色光の3色光を組合せて、任意の画像を作成する画像作成機構とを備えた、プロジェクタ装置。」 が記載されているものと認められる。 (2)また、上記1(4)の記載を踏まえて、図1を見ると、 引用文献には、上記(1)の「プロジェクタ装置」において赤色光を出射する、 「青色の光を出射するLEDと、 そのLEDから出射された光を光ファイバに導くためのコリメートレンズと、 可視波長下方変換材料がドーピングされたコアを有する光ファイバと、 励起用のLEDから出射された光の波長より長波長の光のみを透過させる波長フィルタとを備えた、 可視光光源装置。」 が記載されているものと認められる。 (3)上記1(3)及び(5)の記載に照らせば、 上記(2)の「LED」は、 500nm以下の波長を有するLEDであってもよいものと認められる。 (4)上記1(4)及び(5)の記載に照らせば、 上記(2)の「光ファイバ」は、 励起用のLEDから出射された光を赤色光に変換する波長下方変換材料がドーピングされたコアを有する光ファイバであってもよいものと認められる。 (5)また、上記1(5)の記載を踏まえて、図7を見ると、 上記(1)の「波長を有する光を発する固体光源」からの光は、波長下方変換材料がドーピングされたコアを有する光ファイバに導かれ、「青色光を発する青色用の固体光源」からの光は、通常の光ファイバに導かれることが把握できる。 (6)上記(1)ないし(5)から、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「500nm以下の波長を有するLEDと、 そのLEDから出射された光を光ファイバに導くためのコリメートレンズと、 励起用のLEDから出射された光を赤色光に変換する波長下方変換材料がドーピングされたコアを有する光ファイバと、 励起用のLEDから出射された光の波長より長波長の光のみを透過させる波長フィルタとを備えた、 可視光光源装置。」 第4 対比・判断 1 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「LED」は本願発明の「光源」に相当し、以下同様に、 「光ファイバ」は「導光部材」及び「光ファイバ」に、 「ドーピング」は「ドープ」に、 「可視光光源装置」は「発光装置」に、それぞれ、相当する。 (2)引用発明の「LED」が、500nm以下の波長域において発光ピーク波長を有する光を出射することが当業者にとって明らかであることに照らせば、 引用発明と本願発明とは「光源と、前記光源からの光を伝播する導光部材と、を備えた発光装置において、 前記光源は、500nm未満の波長域に発光ピーク波長を有する光を出射し」という点で一致する。 (3)ア 引用文献の記載によれば(摘記(2)を参照。)、引用発明は、「固体光源」を用いることにより、従来のメタルハイドロランプに代表される気体光源と比較して、光の収束性を高め、発熱量を低減することのできるものであって、メタルハイドロランプがブロードな波長の光を出射するものであることに照らせば、引用発明の「光ファイバ」から、レーザ光のようにシャープな赤色の波長が出射されると、作成される画像がメタルハイドロランプの場合と色合いが異なったり、スペックルノイズの発生するおそれのあることは、当業者にとって明らかである(例えば、特開2005-338520号公報の【0002】及び【0007】を参照。)。 イ また、引用文献に「青色光を発する青色用の固体光源」からの光を通常の光ファイバに導くことが記載されていること(摘記(5)を参照。)に照らせば、この光ファイバは、青色光をレーザ発振させることなく出射するものであることは、当業者にとって明らかである。 ウ そして、引用発明の「赤色光」は、上記イの「青色光」とともに一つの画像を作成すること、及び引用発明の「光ファイバ」が共振器等のレーザ発振させるための手段を備えていないことに照らせば、引用発明の「光ファイバ」も、上記イの「通常の光ファイバ」と同様に、赤色光をレーザ発振させることなく出射するものであることは、当業者にとって明らかである。 エ してみると、引用発明と本願発明とは「前記導光部材は、前記光源からの光により励起し発光する、波長変換材料がドープされ、且つ、前記波長変換材料からの光をレーザ発振させることなく出射する光ファイバ(前記希土類元素からの光と同波長のレーザ光を出射する導光部材を除く。)である」点で共通する。 (4)以上のことから、本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。 <一致点> 「光源と、前記光源からの光を伝播する導光部材と、を備えた発光装置において、 前記光源は、500nm未満の波長域に発光ピーク波長を有する光を出射し、 前記導光部材は、前記光源からの光により励起し発光する、波長変換材料がドープされ、且つ、前記波長変換材料からの光をレーザ発振させることなく出射する光ファイバ(前記希土類元素からの光と同波長のレーザ光を出射する導光部材を除く。)である、 発光装置。」 (5)一方で、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。 <相違点1> 波長変換材料に関し、 本願発明は、「2種以上の希土類元素」であるのに対して、 引用発明は、どのような材料であるのか不明である点。 <相違点2> 光ファイバに関し、 本願発明は、「フッ化物ガラス系の光ファイバ」であるのに対して、 引用発明は、そのようなものであるか否か不明である点。 2 判断 (1)上記<相違点1>について検討する。 ア 引用発明の「光ファイバ」のコアに、どのような波長下方変換材料をドーピングするかは、当業者が引用発明を実施する際に、適宜定めるべき事項であるところ、 従来のメタルハイドロランプがブロードな波長の光を出射するものであることに照らせば、メタルハイドロランプの場合と同じような波長の光が出射されるように、複数の波長下方変換材料を組合わせることは、当業者が容易に着想し得たことである。 イ そして、複数の希土類元素をドーピングした照明用の光ファイバは、当審拒絶理由で引用した特開2006-71776号公報(【特許請求の範囲】を参照。)、特開2006-3598号公報(【特許請求の範囲】を参照。)及び特開2004-224604号公報(【特許請求の範囲】及び【0036】を参照。)の他に、特開平10-167755号公報(【0010】の表1を参照。)に記載されているように、本願の出願時点で周知である(以下「周知技術1」という。)。 ウ してみると、引用発明の「光ファイバ」のコアに、2種以上の希土類元素をドーピングすることで、所望の色合いの赤色光が出射されるようにすることに、格別の困難性は認められない。 イ 以上の検討によれば、引用発明において、上記<相違点1>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術1に基づいて容易になし得たことである。 (2)上記<相違点2>について検討する。 ア フッ化物ガラス系の光ファイバが、当審拒絶理由で引用した特開平11-109152号公報(【0002】、【0014】及び【0029】を参照。【0029】には、コアに2種類の希土類元素を添加することが記載されている。)特開昭63-228115号公報(第2頁左下欄を参照。)の他に、国際公開第2005/093860号(段落0052を参照。)及び特開2005-159075号公報(【0018】を参照。)に記載されているように、本願の出願時点で周知である(以下「周知技術2」という。)ことに照らせば、 引用発明の「光ファイバ」を、フッ化物ガラス系の光ファイバとすることに、格別の困難性は認められない。 イ 以上の検討によれば、引用発明において、上記<相違点2>に係る本 願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術2に基づいて容易になし得たことである。 (3)効果 本願発明の奏する効果は、当業者が引用発明、周知技術1及び2から予測し得る範囲内のものである。 (4)平成25年11月8日に提出の意見書(第2頁)における主張 請求人が、以下のように主張しているので、この点について検討する。 「液晶等のバックライトや照明装置などには、光をレーザ発振させて出射するものも提案されていますので(注1、注2)、液晶等のバックライトや照明装置などであることは、光がレーザ発振することなく出射していることの理由にはなりません。」 請求人が指摘するように、光をレーザ発振させて出射させる照明装置等のあることは、上記「1(3)」の判断を左右するものではない。 よって、請求人の上記主張は、採用できない。 3 進歩性についてのまとめ 本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-12-02 |
結審通知日 | 2013-12-03 |
審決日 | 2013-12-17 |
出願番号 | 特願2006-202422(P2006-202422) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 傍島 正朗 |
特許庁審判長 |
江成 克己 |
特許庁審判官 |
松川 直樹 星野 浩一 |
発明の名称 | 発光装置、レーザディスプレイ、内視鏡 |
代理人 | 吉澤 敬夫 |
代理人 | 蟹田 昌之 |